論説文構成:談話構造の設計(講義編)

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Module 6 では、文法的に正確で、まとまりのある基本的な段落を作成するスキルを学びました。Module 7 では、その基礎の上に立ち、より本格的な英文ライティング、特に自分の意見や主張を論理的に展開し、読み手を説得することを目的とした「論説文(Argumentative Essay / Persuasive Essay)」あるいは「小論文」の構成方法を探求します。優れた論説文は、単に正しい文や関連するアイデアが並んでいるだけではありません。そこには、読者を効果的に導き、主張の妥当性を納得させるための、計算された構造的な設計、すなわち「談話構造 (Discourse Structure)」が存在します。この講義では、英語の論説文(アカデミックエッセイ)で標準的に用いられる「序論-本論-結論」の三部構成を基本とし、それぞれの部分がどのような役割を果たし、どのように連携して全体の論旨を形成していくのか、その「設計図」の描き方を学びます。

目次

1. 論説文構成とは何か? – 考えを効果的に伝える「設計図」

1.1. なぜ「構成(設計)」が重要なのか?

家を建てる時、いきなりレンガを積み始める人はいません。まず、どのような家を建てたいのか、部屋の配置はどうするか、といった詳細な「設計図」を作成します。文章、特に論理性が重視される論説文を書く際も同様です。

  • 思考の整理: 文章構成を考えるプロセスは、自分自身の思考を整理し、明確化するプロセスでもあります。何が主要な主張で、それを支える論拠は何か、どのような順序で提示するのが最も効果的か、といった点を事前に計画することで、議論の焦点が定まります。
  • 読みやすさの向上: 明確な構成を持つ文章は、読み手にとって「道筋」が見えやすく、筆者の思考の流れをスムーズに追うことができます。どこで何が述べられているかが分かりやすいため、内容理解が容易になります。
  • 説得力の強化: 論理的な順序で主張と根拠が提示され、全体として一貫性のある構成になっていれば、その議論はより説得力を持ちます。構成の乱れは、内容の信頼性まで損なう可能性があります。
  • 効率的な執筆: 事前に構成を設計しておくことで、書いている途中で迷ったり、話が逸れたりするのを防ぎ、より効率的に執筆を進めることができます。

1.2. 談話構造 (Discourse Structure) の視点

文章全体の構成を、単なる部分(序論、本論、結論)の足し合わせとしてではなく、それぞれの部分が特定の機能を持ち、相互に関連し合いながら、文章全体の目的(例:読者を説得する)を達成するために組織化された一つのまとまり、すなわち「談話構造」として捉える視点が重要です。個々の段落(Module 6)がしっかりしていることに加え、それらがどのように配置され、連携しているかが文章全体の質を決定します。

1.3. 目標:論理的で説得力のある文章の「型」を学ぶ

この講義の目標は、英語の論説文(アカデミックエッセイ)を書く上で基本となる**「序論-本論-結論」という三部構成の「型」を理解し、それぞれの部分に求められる要素と役割を学び、実際に自分の主張に合わせて文章全体の構成を設計(デザイン)**できるようになることです。この「型」は絶対的なものではありませんが、論理的で分かりやすい文章を書くための非常に有効な枠組みとなります。

2. 序論 (Introduction) – 読者を引き込み、道筋を示す

序論は、文章の「顔」であり、読者が最初に接する部分です。ここで読者の興味を引きつけ、文章全体のテーマと筆者の主張を明確に提示することが極めて重要です。

2.1. 序論の目的と役割

  1. 注意喚起 (Hook): 読者の興味や関心を引きつけ、「この文章を読んでみたい」と思わせる。
  2. 背景提示 (Background): これから論じる主題について、読者が理解するために必要な最低限の背景情報や文脈を提供する。
  3. 主題導入 (Topic Introduction): この文章が具体的に何についての議論なのか、その主題(トピック)を明確に示す。
  4. 主張提示 (Thesis Statement): 文章全体を通して筆者が展開する中心的な主張、論点、意見を明確に述べる。これが序論の最も重要な役割であり、文章全体の方向性を示す。
  5. (任意)構成予告 (Outline Statement / Roadmap): 本論でどのような論点を、どのような順序で展開していくのかを簡潔に予告する(必須ではないが、長い文章では有効)。

2.2. 序論の構成要素

効果的な序論は、一般的に以下の要素を、この順序(または類似の順序)で含みます。

  • (a) フック (Hook): 読者の心をつかむための最初の仕掛け。
    • 例:
      • 印象的な問いかけ: What would society look like if everyone had a universal basic income?
      • 驚くべき事実や統計: According to recent studies, plastic waste in the ocean now outweighs fish.
      • 短い逸話 (Anecdote): (個人的すぎないもの) Imagine a world where...
      • 関連する引用 (Quotation): 有名な言葉など。
      • 一般的な通念や背景から始める: Technology has dramatically changed our lives in recent decades.
    • 注意: フックは主題と密接に関連している必要があります。単に奇をてらうだけでは逆効果です。
  • (b) 背景情報 (Background Information): フックから主題へと自然に繋げるための橋渡し。主題に関する一般的な情報や、議論の文脈を簡潔に提供します。広すぎず、狭すぎず、本論の理解に必要な範囲に留めます。
  • (c) 主題提示 (Topic Introduction): この文章が扱う具体的な主題を明確にします。「このエッセイでは、〇〇について論じる」ということを示唆します。
  • (d) 主張提示 (Thesis Statement): 序論の核心であり、通常は序論の最後の文に置かれます。
    • 定義: 文章全体を通して筆者が論証し、読者に受け入れてもらいたい中心的な主張・論点・意見
    • 良い Thesis Statement の特徴:
      • 明確 (Clear) かつ具体的 (Specific): 曖昧さがなく、何についてどのような主張をするのかがはっきりしている。論じる範囲が限定されている。
      • 論証可能 (Arguable): 単なる事実の記述ではなく、議論や証明の対象となりうる主張であること。異なる意見が存在しうるような論点。
      • 簡潔 (Concise): 通常、1文(長くても2文)で簡潔にまとめられている。
      • 文章全体の方向性を示す: これから本論でどのような議論が展開されるのかを予告する(ロードマップの役割)。
    • 例: While globalization offers economic benefits, its negative impacts on local cultures and environments require careful management through international cooperation. (主張+主要な論点を示唆)

2.3. 効果的な Thesis Statement の作り方

  1. 問いを立てる: まず、自分が論じたいテーマについて、具体的な「問い」を立ててみます。(例: Does social media improve or harm communication?)
  2. 自分の立場(答え)を決める: その問いに対する自分の明確な「答え」や「立場」を考えます。これが主張の核となります。(例: Social media harms genuine communication.)
  3. 理由・論点を付け加える: なぜそう考えるのか、その主要な理由や論点を簡潔に付け加えます。(例: …because it promotes superficial interactions and reduces face-to-face contact.)
  4. 洗練させる: 全体を一つの明確で簡潔な文にまとめ、必要であれば表現を洗練させます。(例: Although social media connects people globally, it ultimately harms genuine communication by promoting superficial interactions and reducing meaningful face-to-face contact.)

Thesis Statement はエッセイ全体の方向性を決める羅針盤です。時間をかけて慎重に作成しましょう。

3. 本論 (Body Paragraphs) – 主張を支え、議論を展開する

本論は、序論で提示した Thesis Statement を具体的に展開し、論証する部分であり、エッセイの本体です。通常、複数の段落で構成されます。

3.1. 本論の目的と役割

  • Thesis Statement で示した主張を裏付けるための、複数の具体的な論点 (Points / Arguments) を提示する。
  • 各論点を、信頼できる論拠 (Support / Evidence)(事実、データ、例、専門家の意見、理由付けなど)を用いて詳細に説明・証明する。
  • 読者が主張に納得できるよう、論理的かつ一貫した流れで議論を展開する。

3.2. 本論の各段落の構成 (PIE / PEEL モデルなど)

本論を構成する個々の段落も、それ自体がまとまりのある単位として機能する必要があります。各段落は、通常、Thesis Statement を構成する一つの側面や論点に焦点を当てます。その構成モデルとして、PIE や PEEL といった考え方が参考になります。

  • P – Point (論点):
    • その段落の中心的な論点(Thesis Statement を支持する理由や側面)を明確に示すトピックセンテンス (Topic Sentence)。通常、段落の冒頭に置かれます。
    • 例 (Thesis: School uniforms promote equality.) → Body Paragraph 1 Topic Sentence: First, school uniforms reduce socioeconomic disparities visible among students.
  • I/E – Illustration / Evidence / Example (例証・論拠):
    • トピックセンテンスで述べた論点を具体的に裏付ける情報。これが段落の「肉」となる部分です。
    • 種類: 事実、データ、統計、引用、研究結果、具体的な事例、経験談(客観性に注意)、詳細な説明、理由付けなど。
    • 具体性: できるだけ具体的で、説得力のある論拠を選びます。
  • E – Explanation (説明):
    • 提示した論拠 (I/E) が、なぜ、どのようにトピックセンテンス (P) を支持するのか、その論理的な繋がりを明確に説明します。論拠を提示しただけでは不十分で、その論拠が持つ意味合いや主張との関連性を解説する必要があります。
  • L – Link (結び): (任意)
    • 段落の内容を簡潔にまとめたり、トピックセンテンスの論点を再度強調したり、あるいは次の段落への繋がりを示唆したりする文。必ずしも必要ではありませんが、流れを整える効果があります。

この <Point → Evidence → Explanation> という流れを意識することで、論理的で説得力のある支持段落を作成できます。

3.3. 段落間の論理的な繋がりと順序

本論が複数の段落で構成される場合、それらの段落をどのような順序で配置し、どのように繋ぐかが重要になります。

  • 論理的な順序:
    • 重要度順: 最も重要な論点から、あるいは最も弱い論点から順に述べる。
    • 時系列順: 歴史的な展開やプロセスの説明など。
    • 比較対照: 類似点と相違点を項目別に、あるいは対象別に比較する。
    • 原因→結果: 原因を分析し、その結果を述べる。
    • 一般→具体: 一般的な原則から具体的な事例へ。
    • Thesis Statement で予告した順序に従う。
  • 段落間の接続: 段落と段落の繋がりをスムーズにし、論理の流れを示すために、**適切な接続表現(談話標識)**を段落の冒頭(または前の段落の終わり)に効果的に用います。
    • 例: FirstlySecondlyFurthermoreMoreoverIn additionAnother important point is...HoweverOn the other handIn contrastThereforeAs a resultConsequently など。

3.4. 論拠の質(再確認)

本論で提示する論拠は、主張を効果的に支持するために、信頼でき(Reliable)、主張と関連があり(Relevant)、そして主張を裏付けるのに十分(Sufficient) である必要があります。(Module 5 批判的分析 参照)

4. 結論 (Conclusion) – 議論を締めくくり、印象に残す

結論は、エッセイ全体の議論をまとめ上げ、読者に最終的なメッセージを伝え、強い印象を残すための重要な部分です。

4.1. 結論の目的と役割

  1. 文章全体の議論を効果的に締めくくる
  2. 序論で提示した中心的な主張 (Thesis Statement) を読者に再認識させる。
  3. 本論で展開した主要な論点を簡潔に要約する。
  4. 議論の意義や重要性を強調する。
  5. 読者に持続的な印象考えるきっかけを与える。
  6. (場合によっては)将来への展望、提案、行動の呼びかけなどを行う。

4.2. 結論の構成要素

典型的な結論は、以下の要素を含みます。

  • (a) Thesis Statement の再提示 (Restatement of Thesis):
    • 序論で述べた Thesis Statement を、同じ意味内容を保ちつつ、異なる言葉や表現で言い換えて再度提示します。単なるコピー&ペーストは避けます。
    • 例: In summary, while challenges remain, the adoption of renewable energy is not merely an option but a necessity for a sustainable future. (序論の主張を要約的に再提示)
  • (b) 主要論点の要約 (Summary of Main Points):
    • 本論で展開した主要な論点や根拠を、非常に簡潔に(通常は1〜2文程度で)まとめ、主張がどのように支持されたかを振り返ります。詳細に立ち入りすぎないように注意します。
  • (c) 最終的な考察・提言 (Concluding Remarks / Final Thought):
    • 議論全体を踏まえて、筆者の最終的な考えを示します。単なる要約に終わらず、議論の意義を強調したり、将来への示唆を与えたり、読者に問いかけたり、行動を促したりするなど、文章を力強く締めくくるための「一押し」を加えます。
    • 例 (意義の強調): Thus, fostering intercultural understanding is essential for building a truly harmonious global society.
    • 例 (将来への示唆): Further research is needed to fully explore the long-term consequences.
    • 例 (行動の呼びかけ): It is time for each of us to take action, however small, to protect our planet.

4.3. 結論で避けるべきこと

  • 新しい論点や情報の導入: 結論は議論をまとめる場であり、ここで本論で触れなかった全く新しいアイデアや詳細な情報を持ち出すべきではありません。
  • 序論や本論の単なる繰り返し: 特に Thesis Statement や主要論点は、表現を変えて示す工夫が必要です。
  • 謝罪や自信のなさを示す表現: I may not be an expert, but... や This is just my opinion, but... のような表現は、結論の説得力を弱めるため避けます。
  • 尻切れトンボ: 要約だけで終わらず、最終的な考察やメッセージを加えることで、より印象深い結論になります。

5. 一貫性 (Coherence) と結束性 (Cohesion) の重要性

効果的な論説文を作成するためには、これまで見てきた構成(骨格)の明確さに加えて、文章全体を通したアイデアの一貫性 (Coherence) と、文や段落間のスムーズな結束性 (Cohesion) が不可欠です。

  • 一貫性 (Coherence): 文章全体のアイデアや議論が、論理的に矛盾なく、一つの中心的なテーマに向かってまとまっていること。明確な Thesis Statement と、それを支持する論理的な本論展開、そしてそれらをまとめる結論によって達成されます。
  • 結束性 (Cohesion): 文と文、段落と段落が、指示語、代用、接続表現、語彙的連想といった結束装置によって、文法的・意味的にスムーズに結びついていること。これにより、文章の流れが自然になります。

良い構成設計(談話構造)は一貫性を生み出し、適切な結束装置の使用は結束性を高めます。この両方が揃って初めて、質の高い論説文が完成します。

6. 論説文構成スキルの意義

6.1. 大学入試(英作文・小論文)での必須スキル

自由英作文や課題英作文、英語小論文といった形式の入試問題では、単に英語が書けるだけでなく、「論理的に考え、それを説得力のある構成で表現できるか」が厳しく評価されます。「序論-本論-結論」という基本的な構成力は、高得点を取るための必須条件です。

6.2. アカデミック・ライティングの基礎

大学でのレポート作成、卒業論文、研究論文の執筆など、あらゆるアカデミック・ライティングにおいて、明確な主張(Thesis)、論拠に基づく論証、そして一貫した論理構成は基本中の基本です。ここで学ぶ構成スキルは、大学での学術的な活動を行う上での foundational な能力となります。

6.3. 論理的思考とコミュニケーション能力の向上

自分の考えを論理的に構成し、序論・本論・結論という枠組みの中で整理し、他者に分かりやすく伝える練習は、単なるライティング技術の向上にとどまらず、論理的思考力、分析力、問題解決能力、そして効果的なコミュニケーション能力そのものを鍛えることに繋がります。

7. まとめ:構成力は思考を形にする力

英語で説得力のある論説文を書くためには、単に文法的に正しい文を並べるだけでは不十分であり、明確な談話構造(構成)を設計することが不可欠です。標準的な「序論-本論-結論」の三部構成を理解し、それぞれの部分が果たすべき役割(序論での主題・主張提示、本論での論点展開・支持、結論での要約・再主張)を意識することが重要です。

特に、文章全体の方向性を示すThesis Statementを序論で明確に打ち立て、本論の各段落でトピックセンテンスを掲げて具体的な論拠でそれを支持し、接続表現で段落間をスムーズに繋ぎ、最後に結論で議論を効果的に締めくくる、という一連の流れを構築する能力が求められます。

この論説文構成スキルは、大学入試を突破し、アカデミックな世界で成功するための鍵であると同時に、皆さんが社会に出てからも必要とされる、論理的に思考し、それを他者に効果的に伝えるための普遍的な力となります。思考を明確な「形」にする力、それが構成力なのです。

次の「論説文構成:演習編」では、実際に Thesis Statement やトピックセンテンスを作成したり、エッセイのアウトラインを設計したりする実践的な練習を通して、この重要なスキルを身につけていきます。

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