「苦手リスト」の作り方と潰し方：弱点克服をゲーム化してモチベーションを維持する

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「数学の、あの単元だけがどうしても分からない…」

「英語は、とにかく文法が苦手で、長文も読めない気がする…」

「世界史は、カタカナの人名が多すぎて、もうお手上げだ…」

大学受験を乗り越える上で、誰にでも一つや二つは存在する「苦手」な科目や分野。その存在に気づいてはいるものの、「どこから手をつけていいか分からない」「やってもどうせできない」と、つい目をそむけ、後回しにしてしまっていませんか？

しかし、その苦手科目こそが、あなたの成績全体の伸びを妨げている最大の原因であり、同時に、**正しく向き合うことさえできれば、あなたの学力を最も大きく飛躍させてくれる「宝の山」**でもあるのです。

この記事では、その漠然とした「苦手」を、具体的な「倒すべき課題」のリストに変え、一つひとつ着実に克服し、そのプロセスで大きな達成感を得ながらモチベーションを維持していくための、**「苦手リスト」の作り方と、その「潰し方」**について、詳しく解説していきます。

なぜ、苦手科目の克服は後回しにされがちなのか？

まず、なぜ私たちが苦手なことから逃げてしまうのか、その理由を理解することから始めましょう。

「何がわからないのか」すら、わからないという状態

「数学が苦手」と一言で言っても、その原因は人それぞれです。「計算スピードが遅い」のか、「公式を覚えていない」のか、「公式の使い方が分からない」のか、「問題文の意味が理解できない」のか。

このように、「何が」原因で、「どこが」分からないのかが自分でもはっきりしていないため、どこから手をつけて良いか分からず、行動への第一歩が踏み出せないのです。

成果が見えにくく、精神的な負担が大きい

得意科目の勉強は、「できる」という喜びや、点数が上がるという目に見える成果があるため、楽しく感じられます。

一方、苦手科目の勉強は、すぐには問題が解けるようにならず、成果が見えにくい期間が続きます。分からないことと向き合い続けるのは、精神的にも大きな負担となり、「やっても無駄だ」という無力感に繋がりやすいため、どうしても避けたくなってしまうのです。

「やりっぱなし」では、いつまでたっても克服できない

勇気を出して苦手分野の勉強に取り組んでみても、その場限りの学習で終わらせてしまうと、苦手は克服できません。

「一度解説を読んで分かった気になったけど、次に同じ問題が出たら、また解けなかった」という経験はありませんか？苦手分野は、その場しのぎの学習では太刀打ちできません。着実に、そして繰り返し学習していくための「仕組み」が必要なのです。

すべては「書き出す」ことから始まる – 「苦手リスト」作成の絶大な効果

この、手ごわい「苦手」という課題に立ち向かうための、最初の、そして最も重要な一歩が、「苦手リスト」を作成することです。

効果1：漠然とした不安を、具体的な課題に変える

「数学が苦手だ…」という漠然とした不安は、私たちを思考停止にさせます。しかし、それを紙に書き出し、「二次関数の平方完成」「三角関数の加法定理」「ベクトルの内分点の公式」といった具体的な項目に分解することで、不安は対処可能な「課題」に変わります。敵の正体が見えれば、具体的な対策を立てることができます。

効果2：やるべきことが明確になり、行動への第一歩が踏み出せる

リストアップすることで、「今日は、まずこの平方完成のやり方だけを復習してみよう」というように、今やるべきことが明確になります。目標が具体的で小さくなることで、行動への心理的なハードルが大きく下がり、最初の一歩を踏み出しやすくなります。

効果3：克服した項目が増えていくことで、成長を実感できる

これが、モチベーションを維持する上で最も強力な効果です。作成した苦手リストの項目を一つひとつ克服し、完了の印をつけていく。その印が増えていく様子を見ることで、「自分は着実に弱点を克服し、成長している」という達成感を、目で見て実感することができます。

【ステップ1・作成編】あなたの「苦手」を洗い出す具体的な方法

では、実際に「苦手リスト」を作成していきましょう。

準備するもの：ノート、付箋、または表計算ソフト

自分が管理しやすいツールを用意しましょう。いつでも見返せるように、専用のノートを一冊用意するのがおすすめです。

材料1：これまでの模試や定期テストの結果

間違えた問題や、点数が著しく低かった大問は、あなたの弱点を客観的に示してくれる最高の資料です。成績表の分野別成績なども参考にしましょう。

材料2：使っている参考書や問題集の目次

教科書や参考書の目次は、その教科の全体像を示しています。目次の各項目を見ながら、「この単元は自信があるか？」「この言葉の意味を、自分の言葉で説明できるか？」と自問自答してみましょう。少しでも不安を感じる項目は、すべて苦手リストの候補です。

「単元レベル」から「問題レベル」まで、できるだけ細かく書き出す

リストを作成する際のコツは、できるだけ具体的に、細かく分解していくことです。

悪い例: 「数学が苦手」
良い例（分解プロセス）:
1. （科目レベル）→「数学ⅠAが苦手」
2. （大単元レベル）→「『場合の数と確率』が特に苦手」
3. （小単元レベル）→「円順列の考え方が分からない」「同じものを含む順列の計算ができない」
4. （問題レベル）→「基礎問題精講の例題8番が、解説を読んでも理解できない」
ここまで細かく分解することで、本当に対処すべき課題がピンポイントで明らかになります。

【ステップ2・分析編】リストアップした苦手に「優先順位」をつける

洗い出した苦手項目を、すべて同時に克服しようとするのは不可能です。限られた時間の中で、最も効果的に成績を上げるために、取り組むべき順番、つまり**「優先順位」**をつけます。

なぜ優先順位付けが必要なのか？

すべての苦手項目が、同じ重要度を持っているわけではありません。入試での配点が高い分野もあれば、そうでない分野もあります。また、他の多くの単元の土台となっている基礎的な分野もあれば、比較的独立した分野もあります。リソース（あなたの時間と労力）を、最も効果的な場所に集中投下するために、優先順位付けは不可欠です。

判断基準1：「重要度」- 志望校の入試での配点や頻出度

配点の高さ: 志望校の入試で、配点が大きい科目・分野の苦手は、克服した時の得点アップへの貢献度が大きいため、優先順位は高くなります。
頻出度: 過去問を分析し、頻繁に出題されている分野の苦手は、優先的に対策すべきです。

判断基準2：「影響度」- その単元が、他の単元の土台となっていないか

例: 英語の「5文型」や、数学の「式の展開・因数分解」などは、その後の多くの単元の学習の土台となります。こうした基礎的な分野の苦手は、放置すると他の単元の理解にも悪影響を及ぼすため、影響度が非常に高いと言えます。このような苦手は、最優先で克服すべきです。

「重要度」と「現在の苦手度」で、取り組むべき順番を決める

洗い出したリストの各項目について、「重要度（高・中・低）」と「苦手度（高・中・低）」を評価し、「重要度が高く、かつ苦手度も高い」項目から順番に取り組んでいくのが、最も効果的な戦略です。

【ステップ3・実践編】一つひとつの苦手を「潰す」ための行動計画

優先順位が決まったら、いよいよリストの上から一つひとつ、苦手を克服（＝潰して）いきます。

「潰す」ための3つの基本行動（理解→定着→演習）

一つの苦手を完全に克服するためには、以下の3つのステップを踏むことが基本となります。

理解 (Input): なぜそれが分からなかったのか、原因を突き止め、正しい知識や考え方をインプットする。
定着 (Repeat): 理解した内容を、忘れないように、基本的な問題を繰り返して脳に定着させる。
演習 (Output): 定着した知識を、少し違う角度の問題で試し、本当に「使える」知識になっているかを確認する。

行動1【理解】：なぜ分からなかったのか、原因の根本まで戻る

基礎への回帰: 多くの苦手は、より前の段階の基礎知識の抜けが原因です。高校の範囲で分からなければ、勇気を持って中学校の範囲に戻りましょう。 教科書や、簡単な解説が載っている参考書をじっくりと読み直します。
質問の活用: 自力で理解できない場合は、すぐに先生や友人に質問に行きましょう。この時、「苦手リスト」を見せながら、「このリストの、この部分が分からないのですが…」と具体的に質問するのが効果的です。

行動2【定着】：簡単な問題を、完璧に解けるまで繰り返す

反復練習: 理解した後は、その単元の最も基本的な問題を、何も見ずに、かつスラスラと解けるようになるまで、何度も繰り返します。「3日間、毎日同じ問題を5問ずつ解く」など、期間と量を決めて取り組むと良いでしょう。
目的: 知識を「知っている」レベルから、「いつでも使える」レベルへと引き上げることが目的です。

行動3【演習】：少しレベルを上げた問題で、使える知識になっているか確認する

実戦確認: 基本的な問題が完璧になったら、これまで使っていた問題集の、少し難易度の高い演習問題や、別の問題集の同じ単元の問題に挑戦してみます。
最終チェック: これが解けるようになれば、その苦手項目は「使える知識」になったと言えます。

【ステップ4・継続編】モチベーションを維持する「達成感」の作り方

苦手克服は、時に辛い作業です。そのプロセスを乗り越えるために、自分自身で「達成感」を演出し、モチベーションを維持する工夫が不可欠です。

「苦手リスト」を「クリア済みリスト」に変えていく

これが、最もシンプルで強力な方法です。

完了の印をつける: ステップ3の行動計画をやり遂げ、一つの苦手項目を克服できたら、リストのその項目に、思い切り二重線を引いたり、大きな花丸をつけたり、マーカーで色を塗ったりしましょう。
「クリア！」と書き込む: 日付と共に、「6/12 CLEAR!」のように、完了したことを記録します。
効果: 消されていく、あるいは完了マークが増えていくリストを見ることで、「自分は着実に弱点を克服している」という成長が目に見えて分かり、次の課題に取り組む勇気が湧いてきます。

小さな目標達成ごとに、自分へのご褒美を設定する

小さなご褒美: 「苦手リストの項目を一つ潰せたら、好きなお菓子を食べる」「3つ潰せたら、30分だけ好きな動画を見る」など、小さなご褒美を用意します。
大きなご褒美: 「今月中に、リストの最優先項目をすべて潰せたら、欲しかった文房具を買う」など、月単位での大きなご褒美も効果的です。

克服のプロセス自体を、学習ログとして記録し、自信に繋げる

成長の記録: 苦手リストとは別に、学習ログ（勉強記録）をつけている場合は、「〇〇（苦手項目）の克服に、合計で10時間使った。その結果、模試でこの分野の問題が解けるようになった！」といったように、努力のプロセスと成果を記録しておきましょう。
自信の根拠: この記録は、後から見返した時に、「自分は、あれだけ苦手だったことを、これだけの努力で克服できたんだ」という、揺るぎない自信の根拠となります。

【具体例で見る】数学の「ベクトル」が苦手なA君の克服プロセス

A君の「苦手リスト」作成と優先順位付け

A君は、模試の結果から、数学の「ベクトル」が壊滅的であること、そしてベクトルは志望校での配点も高いことを把握しました。彼は、「ベクトル」を最優先の克服課題と設定し、さらに細かく苦手項目をリストアップしました。

(×) ベクトルの内積の定義が曖昧
(×) 位置ベクトルの考え方が分からない
(△) ベクトルの成分計算はできるが、ミスが多い

A君が立てた「ベクトル克服」のための1ヶ月計画

【理解】: まず、中学校の「図形」の範囲と、高校の教科書で「ベクトル」の定義を読み直す。（1週間）
【定着】: 学校で使っている問題集の、最も基本的な計算問題と例題だけを、毎日5問ずつ解き、完璧に解けるようにする。（2週間）
【演習】: 『基礎問題精講』のベクトルの章に挑戦する。（1週間）

計画実行後のリストの変化と、A君が得た達成感

1ヶ月後、A君の苦手リストは、完了マークで埋まっていきました。彼は、あれだけ嫌いだったベクトルが、「分かる」ようになったことで、数学全体への苦手意識も和らぎ、大きな自信と達成感を得ることができました。

結論

苦手科目の克服は、受験勉強の中で最も大変で、そして最も成長を実感できる、やりがいのあるプロセスです。

「苦手リスト」は、その困難な道のりを、着実に一歩ずつ進むための、あなただけの地図であり、コンパスです。そして、克服した印が増えていくそのリストは、あなたの努力の軌跡が刻まれた、世界に一つだけの成長の記録となります。

受験本番、不安になった時にそのリストを見返せば、「自分は、あんなに苦手だったことを、これだけ乗り越えてきたんだ」という事実が、あなたに大きな勇気と自信を与えてくれるはずです。

まずは、あなたが一番「嫌だなぁ」と感じている科目について、ノートを1ページ開いて、小さな「苦手リスト」を作ってみることから始めてみませんか。