【共通テスト 英語】Module 3: 物語文・ブログ記事の文脈構造読解

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【本記事の目的と概要】

本モジュールは、共通テストリーディングの中でも特に、物語(Narrative Story)やブログ記事、体験談といった、時間の流れや登場人物の心情が絡む文章(主として大問3、大問5など)を解き明かすための戦略的読解法を習得することを目的とします。これらの問題は、単に情報を検索するだけでなく、文脈のダイナミクスを捉える能力を要求します。具体的には、**「登場人物の心情と関係性の追跡」「記事の構造分析」「時系列の再構築」「場面転換の識別」「比喩・暗示の解釈」**という5つの核心的スキルに焦点を当てます。これらのスキルを体系的に学ぶことで、物語の深層を読み解き、設問の意図を正確に捉え、安定して高得点を獲得するための思考回路を構築します。


目次

12. 物語文における登場人物の心情曲線と関係性の追跡

12.1. 「感情」を読み解くことが物語理解の鍵

  • 登場人物の感情を可視化する
    • 物語文の問題、特に登場人物の行動理由や心情を問う設問では、物語の進行に伴うキャラクターの感情の変化、すなわち**「心情曲線」**を追跡することが極めて重要です。
    • 感情は、ポジティブ(喜び、期待、安堵)、ネガティブ(悲しみ、怒り、失望、不安)、ニュートラル(平静、無関心)の3つに大別できます。物語を読みながら、登場人物が今どの感情状態にあるかを常に意識することが、深い読解につながります。
  • 感情を示すシグナル(手がかり)
    • 形容詞・副詞happysadexciteddisappointedanxiouscalmlyangrily など、感情を直接的に示す語。
    • 動詞smiledcriedlaughedshouted など、感情が表出する行動を示す語。
    • 身体的反応her face blazing red with embarrassmenteyes filled with tears of disappointment など、感情に伴う身体の変化の描写。
    • 発言内容: 台詞の中に含まれる感嘆符(!?)や、言葉そのもののトーン。
  • 【実践例:2023年度本試験 大問5 “Becoming an Artist”】
    • この物語の主人公Lucyの心情曲線を追跡してみましょう。
    1. 冒頭(期待)Lucy smiled in anticipation.(期待に胸を膨らませて微笑んだ)→ ポジティブ
    2. 落選時(失望・当惑)her face blazing red with embarrassment, abruptly sat down again.(当惑で顔を真っ赤にして、突然座り込んだ)、eyes filled with tears of disappointment.(失望の涙で目をいっぱいにした)→ ネガティブ
    3. 母のアドバイス後(不満・混乱)her art left her feeling unsatisfied. She couldn't understand what her mother meant.(彼女の絵は彼女に不満を感じさせた。母の言った意味が理解できなかった)→ ネガティブ
    4. 友人の絵を描いた時(楽しさ・没頭)She drew quickly, enjoying her friend's expression so much that she didn't really think about what she was doing.(彼女は友人の表情を楽しみながら素早く描いた)→ ポジティブ
    5. 結末(深い理解)It had caught Cathy exactly, not only her odd expression but also her friend's kindness and her sense of humor — the things that are found under the surface.(それはキャシーを正確に捉えていた。奇妙な表情だけでなく、友人の優しさやユーモアのセンス、つまり表面下にあるものまで)→ ポジティブ(成熟・本質的理解)
    • このように心情の変遷を追うことで、「Lucyがどのようにして芸術の本質を理解するに至ったか」という物語の核心が見えてきます。
  • 登場人物の関係性を追跡する
    • 登場人物同士の関係性(親子、友人、ライバルなど)と、その関係性が物語を通じてどう変化するかも重要なポイントです。
    • Lucyと父親の関係:父親はcopy as accurately as possible(できるだけ正確に模写する)よう助言し、技術的な側面を重視します。Lucyも please her father(父を喜ばせたい)と思っています。
    • Lucyと母親の関係:母親は翻訳家という職業を通して、capture not only the meaning, but also the spirit of the original(意味だけでなく、原作の精神も捉える)ことの重要性を説き、芸術の「本質」に関する助言を与えます。
    • この対比的な関係性を理解することが、Lucyの成長物語を深く読み解く鍵となります。

13. ブログ記事の構造分析:筆者の主張・体験・推奨の切り分け

13.1. ブログ記事の典型的な構造

  • ブログ記事やオンラインの体験談は、多くの場合、以下の3つの要素で構成されています。これらの要素を意識的に切り分けて読むことで、筆者の意図を正確に把握できます。
    1. 導入(主張・問題提起): なぜこの記事を書いているのか、読者に何を伝えたいのかが示されます。「〜は素晴らしい体験だった」「〜という問題がある」など。
    2. 本文(具体的な体験談): 筆者が実際に体験した出来事が、時系列に沿って具体的に語られます。
    3. 結論(推奨・感想・まとめ): 体験を踏まえた上での、読者への推奨(You should...)、全体の感想、学んだことなどが述べられます。
  • 【実践例:2021年度追試験 大問3A “Sunny Mountain Park”】
    • 導入(主張)Sunny Mountain Park: A Great Place to Visit というタイトルと、冒頭の I had a fantastic time there... から、筆者がこの遊園地を非常に気に入っていることがわかります。
    • 本文(具体的な体験談)We couldn't wait to try the roller coaster, but first we took the train... 以降、園内での具体的な行動が時系列で語られます。
    • 結論(推奨・感想)Sunny Mountain Park is amazing! Our first visit certainly won't be our last. という文で、改めて強い推奨と再訪の意志を示して締めくくっています。

13.2. 体験、事実、意見、推奨の識別

  • ブログ記事を読む際には、Module 2で学んだ「事実と意見の識別」がさらに重要になります。
    • 体験(事実)I joined one of them and made a jewellery box from an egg carton.(ワークショップに参加し、卵パックで宝石箱を作った)
    • 意見(感想)it turned out lovely.(素敵に仕上がった)
    • 推奨I strongly suggest that you avoid the weekend crowds, though.(週末の混雑は避けることを強く勧めます)
  • 設問が「筆者は何をしたか(fact)」を問うているのか、「筆者はどう感じたか(opinion)」を問うているのか、「筆者は何を勧めているか(recommendation)」を問うているのかを正確に見極め、対応する部分を本文から探し出すことが必要です。

14. 時系列整理の技術:出来事の発生順序を正確に再構築する手法

14.1. 時系列問題は得点源である

  • 物語文や伝記文では、出来事の発生順序を問う「並べ替え問題」が頻出します。これは、一見複雑に見えますが、時間を示す表現を手がかりに、客観的に正解を導き出せるため、対策すれば安定した得点源になります。
  • 焦って感覚で解くのではなく、本文の記述を元に、簡単な時系列メモを作成することが確実な解法につながります。

14.2. 時系列再構築のアルゴリズム

  1. 時間マーカーのスキャニング: 本文を読む際に、時間を示す語句(agolaterwhenafterat the age of ...In 1927The following dayなど)に印をつけながら読み進めます。
  2. 基準点の設定: 物語の「現在」はどこか、回想シーン(Flashback)はどこから始まっているかなど、時間の基準点を把握します。
  3. イベントのプロット: 設問で与えられた選択肢の出来事を、時間マーカーを頼りに時系列に沿ってメモにプロット(配置)していきます。
  4. 論理的な前後関係の確認: 直接的な時間マーカーがない場合でも、「Aが起こったから、Bが起こった」という因果関係や論理的な前後関係から順序を判断します。
  • 【実践例:2021年度本試験 大問5 “Maki’s Kitchen”】
    • この物語は、現在のレストランのシーンと、過去の回想シーンが入り混じる複雑な構造をしています。
    • 設問: 出来事を正しい順序に並べ替える問題。
    • 思考プロセス:
      1. 時間マーカーに注目:
        • at the age of 19: マキが家業を継ぎ始めた時。
        • After he recovered: 父が回復した後。
        • a few weeks earlier: 友人たちがマキを訪ねる計画を立てた時。
        • 20th high school reunion last month: 最近、高校の同窓会があった。
        • After graduation: 高校卒業後、3人は別々の道へ。
        • Exactly one year after graduation: タクヤが故郷に戻った時。
      2. 時系列メモの作成:
        • (A) 高校卒業
        • (B) タクヤ、俳優を目指すも挫折
        • (C) マキ、大学進学を諦め家業を継ぐ(卒業の約1年後)
        • (D) タクヤ、マキの勧めでカフェで働き始める
        • (E) タクヤ、マキの励ましで独立し、コーヒー事業で成功
        • (F) カスミ、マキの勧めで化粧品会社で成功し、副社長になる
        • (G) カスミとタクヤが電話で再会を計画する(現在に近い過去)
        • (H) 友人たちがマキの店を訪れる(現在)
      3. 選択肢のプロット: 設問の選択肢(例:Maki starts working in her family business.Takuya is inspired to start his own business. など)を、作成した時系列メモの(A)〜(H)のどこに該当するかを判断し、並べ替えます。
    • このように、複雑な時系列も、時間マーカーを頼りに整理することで、客観的に正解を導き出すことができます。

15. 場面転換と視点移動の識別:物語のダイナミクスを捉える

15.1. 物語の「動き」を捉える

  • 物語は静的なものではなく、時間や場所、語り手の視点が絶えず動いています。この「動き」、すなわち**場面転換(Scene Change)視点移動(Perspective Shift)**を捉えることは、物語の全体像を正確に理解するために不可欠です。
  • 場面転換のシグナル
    • 時間的移動The next dayA few years laterThat evening などの時間表現。
    • 場所的移動She returned to New YorkBack at homeAs the train pulled into the station などの場所を示す表現。
    • パラグラフの区切り: 多くの場合、場面転換はパラグラフの変わり目で起こります。
  • 視点移動のシグナル
    • 物語が誰の目を通して語られているかに注意します。
    • Sora gazed out...Sora reminded herself...(ソラの視点)
    • "You've got to get ready for school," her mother said...(母親の視点・発言)
    • To my surprise, the crew member told me...(主人公”I”の視点)
    • 視点が切り替わることで、読者が得る情報や物語の雰囲気が変わることがあります。

16. 比喩・暗示的表現の解釈:字義的意味の背後にある意図の推論

16.1. 書かれていないことを読み取る力

  • 共通テストでは、本文に直接書かれてはいないものの、文脈から論理的に推測できること(Implication, Inference)を問う問題が出題されます。特に、比喩や象徴的な出来事、登場人物の含みのある発言などの解釈が求められます。

16.2. 推論問題へのアプローチ法

  1. 字義的意味の確認: まず、比喩や暗示的な表現が文字通り何を意味しているかを確認します。
  2. 文脈の精査: その表現が使われている前後の文脈を精査します。なぜ筆者(または登場人物)は、ここでこの表現を使ったのでしょうか。
  3. 論理的飛躍のない推論: 文脈を踏まえ、最も自然で論理的な解釈を導き出します。飛躍しすぎた解釈や、本文の内容と矛盾する解釈は誤りです。
  • 【実践例:2021年度本試験 大問5 “Maki’s Kitchen”】
    • 場面: 最後に友人たちがマキにカウンセリングの道を勧めるシーン。
    • 表現The irony is that you couldn't do the same for yourself,
    • 思考プロセス:
      1. 字義的意味: 「皮肉なのは、あなたが自分自身には同じことをできなかったことだ」という意味。
      2. 文脈の精査: 直前のタクヤの発言 You understand people incredibly well. You can identify others' strengths and show them how to make use of them.(君は驚くほど人をよく理解している。他人の強みを見つけて、それをどう活かすかを示すことができる)を踏まえる。
      3. 推論: マキは「他人の才能を見抜いて成功に導く」という素晴らしい才能を持っている。しかし、その才能を「自分自身のキャリアや進路を見つける」ことには使えていなかった。この**「他人にはできるのに、自分にはできていない」という対照的な状況**こそが「皮肉(irony)」であると推論できます。
    • この推論に基づけば、「マキは自分自身の才能に気づいていない」という趣旨の選択肢が正解となることが分かります。

【結論・要約】

物語文やブログ記事を攻略するためには、静的な情報を探すだけでなく、時間、場所、登場人物の心情といった動的な要素を追跡する視点が不可欠です。本モジュールで解説した心情曲線の追跡、記事構造の分析、時系列の再構築、場面転換の識別、そして暗示の解釈というスキルは、物語の多層的な意味を読み解き、設問の核心を突くための強力なツールとなります。特に時系列整理や登場人物の感情・関係性の変化は頻出するため、過去問演習を通じて、本文からこれらの情報を素早く、かつ正確に抜き出し、整理する訓練を重ねてください。

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