【共通テスト 英語】Module 6: 設問形式別・最終解法パターンの確立
当ページのリンクには広告が含まれています。
【本記事の目的と概要】
これまで5つのモジュールを通じて、共通テストリーディングを攻略するための個別の戦略的スキルを学んできました。本最終モジュールは、それらのスキルを統合し、**設問の形式ごとに最適化された「最終解法パターン」**として昇華させることを目的とします。試験本番の極度の緊張と時間的制約の中で、思考の迷いをなくし、半ば自動的に、かつ最も確実なプロセスで正答を導き出すための行動計画を確立します。内容一致、推論、意図・目的問題といった主要な設問タイプへのアプローチを再定義し、紛らわしい選択肢の最終的な見極め方、未知の語彙への対処法、そして本番を想定した総合演習の心構えまで、あなたの得点力を盤石にするための最後のピースを埋めていきます。
目次
29. 内容一致問題:選択肢の正誤を本文の根拠と精密に照合する技術
29.1. 内容一致問題の本質:「完全に支持されるか否か」
- 「本文の内容と一致する(あるいは、しない)ものを選べ」という形式の設問は、共通テストリーディングで最も基本的な、そして最も数多く出題される問題タイプです。
- この問題の本質は極めてシンプルです。**「その選択肢の主張する内容の全てが、本文中の記述によって100%支持されるか?」**という一点に尽きます。一部分だけ合っている、あるいは常識的に正しそう、といった曖昧な理由で選択してはいけません。
29.2. 精密照合のための最終アルゴリズム
- 選択肢の分解: まず、検証すべき選択肢の内容を、意味の塊ごとに分解します。(例:「Aは、Bという理由で、Cという場所で、Dをした」→[Aが][Bという理由で][Cという場所で][Dをした] の4つの要素に分解)
- キーワードのスキャン: 分解した要素からキーワードを特定し、本文の該当箇所をスキャニングで見つけ出します。
- 根拠箇所の特定と精読: 関連する記述が見つかったら、その一文、および前後の文脈を精読します。
- 完全照合の実行: 選択肢の全ての要素が、本文の記述と矛盾なく一致するかを厳密に照合します。特に、Module 1で学んだパラフレーズ(言い換え)に注意してください。
- 消去法の徹底: 一つでも本文の記述と矛盾する、あるいは本文中に根拠が見つからない要素があれば、その選択肢は不正解として確定し、消去します。このプロセスを繰り返し、完全に支持される唯一の選択肢を残します。
- 【実践例:2022年度追試験 大問6B “Recycling Plastic”】
- 設問: プラスチックに関する記述として正しいものを2つ選ぶ。
- 検証する選択肢(仮):
Products with Type 4 and 5 markings are heat resistant and are widely recycled.
(タイプ4と5の製品は耐熱性があり、広くリサイクルされている。) - 思考プロセス:
- 要素分解: [タイプ4と5は][耐熱性があり][広くリサイクルされている] の3要素。
- 根拠の探索:
- タイプ5(PP): 本文を見ると
has a high resistance to impact, heat, and freezing.
とあり、「耐熱性」は支持される。しかし、Only 3% of Type 5 is recycled.
とあり、「広くリサイクルされている」は明確に否定される。 - タイプ4(LDPE): 本文を見ると
Currently, very little Type 4 plastic is recycled.
とあり、こちらも「広くリサイクルされている」は否定される。
- タイプ5(PP): 本文を見ると
- 結論: 選択肢の要素の一部が本文の記述と矛盾するため、この選択肢は不正解であると確定できます。
30. 推論問題:本文の記述を基盤とした論理的飛躍のない推論の構築
30.1. 推論と妄想の境界線
- 推論問題(
It can be inferred that...
,The author implies that...
,Which is most likely true?
など)は、本文に直接書かれていないことを読み取る能力を問いますが、それは決して自由な憶測や妄想を許容するものではありません。 - 正しい推論とは、**「本文の記述を直接的な根拠として、そこから論理的に、かつ最小限の飛躍で導き出せる結論」**のことです。本文という土台から足が離れた瞬間に、それは不正解となります。
30.2. 論理的推論を構築するプロセス
- 根拠となる記述の特定: 推論の土台となる、本文中の客観的な事実や筆者の意見を特定します。
- 「もしAならば、Bだろう」の思考: 特定した根拠(A)から、「当然、論理的にこう考えられる(B)」という結論を導きます。
- 飛躍のチェック: 導き出した結論(B)が、根拠(A)から大きく飛躍していないか、常識や他の本文記述と矛盾しないかを検証します。
- 選択肢との照合: 自身の立てた推論と最も近い内容の選択肢を選びます。
- 【実践例:2024年度追試験 大問6B “Smart” Fabrics】
- 本文の記述:
acoustic fabric can be used for other purposes such as tracking respiratory (lung), pulse, and cardiac (heart) conditions.
(音響ファブリックは、呼吸、脈拍、心臓の状態を追跡するなどの目的で使える) さらに、accurately detected the wearer's heart signals.
(着用者の心臓信号を正確に検知した)。 - 設問(仮):
What can be inferred as a possible benefit of wearing an acoustic fabric?
- 思考プロセス:
- 根拠(A): この布は心臓の信号を正確に追跡できる。
- 論理的推論(B): もし心臓の状態を追跡できるのならば、不規則な心臓の活動(例えば不整脈)を持つ人がそれを早期に発見し、助けを得るのに役立つだろう。
- 飛躍のチェック: この推論は、医療への応用という自然な流れであり、論理的な飛躍は小さい。
- 選択肢照合:
A person with irregular cardiac activity can get help.
(不規則な心臓活動を持つ人が助けを得られる)という選択肢は、この論理的推論と合致する。 - 誤った飛躍の例: 「この布があれば、病院での心電図検査は不要になるだろう」→本文には病院の検査を代替できるとまでは書かれておらず、これは飛躍しすぎた解釈(妄想)です。
- 本文の記述:
31. 意図・目的問題:「なぜ」を問う設問への戦略的アプローチ
31.1. 筆者の「言いたいこと」を捉える
- 「筆者がAという事例を挙げた目的は何か?」「登場人物がBと言った意図は何か?」といった意図・目的を問う問題は、文や事例の局所的な意味だけでなく、それが文章全体の文脈の中で果たしている機能を理解しているかを試します。
- 解答の鍵は、**「その記述(事例や発言)が、直前・直後のどの主張をサポートするために存在しているのか?」**という視点を持つことです。
31.2. 目的特定のための思考法
- 対象箇所の特定: 設問で問われている事例や発言が、本文のどこにあるかを特定します。
- 直前・直後の文脈を確認: その記述の前後を読み、特にそのパラグラフ全体の主題(トピックセンテンス)が何かを把握します。
- 機能の分析: 対象の記述が、パラグラフの主題に対してどのような機能を果たしているかを考えます。
- 具体例として挙げられているのか?(主張の補強)
- 反対意見として挙げられているのか?(対比・譲歩)
- 新たな問題提起をしているのか?(議論の転換)
- 選択肢との照合: 分析した機能・目的と最も合致する選択肢を選びます。
- 【実践例:2021年度本試験 大問6A “Making Ice Hockey Safer”】
- 設問(仮):
Why does the author mention that coaches preferred tough players who played in spite of the pain?
(なぜ筆者は、コーチたちが痛みに耐えてプレーするタフな選手を好んだと述べているのか?) - 思考プロセス:
- 対象箇所の特定: 第3パラグラフに
In the past, coaches preferred tough players...
という記述がある。 - 直前の文脈: 直前には
players tend to worry about what their coach will think.
(選手はコーチがどう思うか心配しがちだ)とある。 - 機能の分析: 「選手がコーチの目を気にする」という主張の具体的な理由として、「なぜなら、昔のコーチはタフな選手を好んだからだ」と説明しています。これは、選手たちがなぜ怪我をしてもプレーを続けたのか(=軽傷だと自己判断したり、報告しなかったりしたのか)という、より大きな問題の背景を説明する役割を果たしています。
- 選択肢照合: 「選手が怪我を報告しなかった理由を説明するため」といった趣旨の選択肢が正解となります。
- 対象箇所の特定: 第3パラグラフに
- 設問(仮):
32. 紛らわしい選択肢の類型分析と回避策
- これまでのモジュールで触れてきた誤答選択肢のパターンを、最終確認として整理します。これらの「罠」の類型を知っておくことで、本番で迷った際の判断精度が格段に上がります。
- ① 部分的正解の罠 (Partially Correct Trap)
- 選択肢の前半は正しいが、後半が間違っている(あるいはその逆)パターン。選択肢は全体として100%正しくなければなりません。
- ② 単語の流用による罠 (Deceptive Word Reuse)
- 本文中のキーワードを巧みに使いながら、主語と目的語を入れ替えたり、因果関係を逆にしたりして、全く異なる意味の文を作り出しているパターン。単語だけを見て飛びつくとこの罠に陥ります。
- ③ 常識の罠 (Common Sense Trap)
- 選択肢の内容が、世間一般の常識としては正しい。しかし、本文中にはその記述や根拠が一切ないパターン。全ての判断は、あくまで本文を基準に行わなければなりません。
- ④ A/B混同の罠 (A/B Mix-up)
- 本文でAの特徴として述べられていることを、選択肢ではBの特徴であるかのようにすり替えるパターン。特に複数のプラン、人物、理論などを比較する文章で頻出します。
33. 未知の語彙への対処法:文脈からの意味推測の精度向上
- 共通テストでは、必ず未知の、あるいは意味を忘れてしまった単語に遭遇します。しかし、そこで思考を停止する必要はありません。文脈から意味を推測するスキルがあれば、多くの場合、問題を解く上で支障はありません。
- 語彙推測の4ステップ
- 品詞の特定: その単語が文中でどのような働きをしているか(名詞、動詞、形容詞、副詞)を判断します。
- 文脈の活用: その単語が含まれる文の他の部分や、前後の文脈から、プラスの意味かマイナスの意味か、どのような種類の事柄を指しているのか、大まかな意味の方向性を推測します。
- 語源的知識の活用: 接頭辞(
un-
,re-
,pre-
など)、接尾辞(-able
,-tion
,-ly
など)、語根(spect
=見る,port
=運ぶ など)の知識があれば、推測の精度が上がります。
- 例:
recyclability
という単語を知らなくても、re-
(再び)、cycle
(循環)、-ability
(できること)から、「再び循環させられること」→「リサイクルの可能性」といった意味を推測できます。
- 無視する勇気: 時には、その単語が分からなくても、文全体の意味や設問の解答には影響しない場合があります。一つの単語に固執せず、分かるところから大意を掴むことも重要です。
34. 全大問横断・模擬演習:時間制限下での総合的パフォーマンスの最適化
- これまで学んできた全てのスキルを統合し、本番同様の状況で最大のパフォーマンスを発揮するための最終段階です。これは、単に問題を解くのではなく、自身の思考プロセスと時間管理を客観的に分析し、最適化するための戦略的トレーニングです。
- 模擬演シューンの進め方
- 環境設定: 必ず80分の時間を計測し、途中で中断しない。静かで集中できる環境を確保する。
- 戦略の実行: Module 1で確立した、自身にとって最適な攻略順序(例:大問1→2→3→4→6→5)と時間配分を意識して問題を解き進める。
- スキルの意識的活用: 各大問に取り組む際に、本ガイドで学んだスキルを意識的に使います。
- 大問1-4: 「情報検索モード」。スキャニング、条件整理、Fact/Opinion識別を駆使。
- 大問5: 「物語追跡モード」。心情曲線、時系列、場面転換を意識。
- 大問6: 「論理構造分析モード」。パラグラフ・リーディング、ディスコースマーカー、抽象⇔具体の往還を意識。
- 終了後の「思考の再現」と分析(最重要):
- 解き終わったら、すぐに答え合わせをするのではなく、なぜその解答を選んだのか、自分の思考プロセスを再現してみます。
- 間違えた問題については、「なぜ間違えたのか」を徹底的に分析します。
- 時間不足?: どの問題に時間をかけすぎたか。
- 単語・文法力不足?: 語彙・構文の知識が原因か。
- スキル不足?: パラフレーズを見抜けなかったのか? 論理関係を誤解したのか? 選択肢の罠に気づかなかったのか?
- 戦略ミス?: 攻略順序や時間配分は適切だったか。
- この分析結果を元に、次の演習に向けた具体的な改善策(例:「次回は大問6に22分かけ、大問5を15分で処理しよう」「パラフレーズの言い換えノートを強化しよう」)を立てます。
【総括】
大学入学共通テストのリーディングは、単なる英語力を測る試験ではありません。それは、膨大な情報の中から必要なものを迅速かつ正確に抽出し、論理的に整理・統合・再構成するという、現代社会で必須となる情報処理能力を問う試験です。本ガイドで提示した6つのモジュールは、そのための具体的な思考法と行動計画です。これらの戦略を武器に、自信を持って演習を重ね、思考のパターンを身体に染み込ませてください。そうすれば、試験本番、あなたは冷静に、そして力強く、目の前の課題を乗り越えていくことができるはずです。健闘を祈ります。