- 本記事は生成AIを用いて作成しています。内容の正確性には配慮していますが、保証はいたしかねますので、複数の情報源をご確認のうえ、ご判断ください。
次に出会う文章を解けるように
- 解くために作られる試験問題は、客観的な採点基準が用意されている
- 全体を俯瞰して読むことで、何が問われ、何を答えるのか、見えてくる
- 「背景知識」や「教養」で誤魔化さず、本文に依拠することで誤答を防ぐ
次に出会う文章を解けるように
本モジュールの目的と構成
記述答案において字数制限は単なる形式的な条件ではなく、解答者の思考の精度を測定する装置として機能する。指定された字数の中で過不足なく情報を配置するには、本文の情報を階層化し、必須の情報と補足的な情報を区別し、限られた字数に最適な情報量を収める判断が求められる。字数が足りなければ必要な情報が欠落し、字数を超過すれば冗長な表現や不要な情報を含んでいることになる。いずれの場合も、情報の取捨選択の判断が適切でなかったことを意味する。字数制限は解答者に対して、情報の優先順位を明確にし、表現を洗練させることを要求する。記述問題で高得点を獲得する受験生は、字数制限を制約ではなく、自らの理解の深さを示す機会として捉えている。字数内に収めるために情報を削るのではなく、必要十分な情報を選び取り、それを最適な表現で記述する能力が問われているのである。
本モジュールは以下の4つの層で構成される:
字数制限への対応力を確立することで、設問が要求する情報を本文から的確に抽出し、その情報の重要度を判断して階層化できるようになる。指定された字数に応じて、含めるべき情報と省略可能な情報を適切に選別できるようになる。同一の内容を異なる字数で表現し分ける技術を習得し、字数制限に柔軟に対応できるようになる。作成した答案の情報量と字数のバランスを自己評価し、必要に応じて修正できるようになる。これらの能力は、入試の記述問題において高得点を獲得するために不可欠であり、同時に学術的な文章を書く際にも転用可能な汎用的技術である。字数制限への対応力は、限られた紙幅で論旨を伝える論文執筆、要点を簡潔に伝えるビジネス文書の作成など、様々な場面で活用される。
字数制限のある記述問題に取り組む際、最初に行うべきことは本文の論理構造を正確に把握することである。設問が求める情報が本文のどこに存在し、その情報が他の情報とどのような関係で結びついているかを認識しなければ、適切な取捨選択は不可能である。本文の論理構造を把握するとは、主張と根拠の関係、原因と結果の関係、抽象と具体の関係、対比と並列の関係などを識別し、情報間の階層性を認識することを意味する。論理構造の把握が不十分なまま答案を作成すると、必要な情報が欠落したり、不要な情報を含めたりする失敗が生じる。設問の要求を正確に理解し、その要求に対応する情報を本文から特定する技術は、情報の取捨選択を行う際の判断基準となる。字数制限が厳しい問題ほど、論理構造の把握が重要になる。限られた字数の中で必要十分な情報を選び取るには、本文全体の中で各情報がどのような位置を占めているかを正確に認識していなければならない。本源層では、字数制限を意識した情報抽出の前提となる、本文の論理構造の把握方法を確立する。
記述問題において高得点を獲得するには、設問が何を求めているのかを正確に理解することが出発点となる。設問の文言を漫然と読み流すと、要求される情報を見落としたり、要求されていない情報を含めたりする失敗が生じる。設問の要求を正確に分析することで、本文のどの部分に着目すべきかが明確になり、情報の取捨選択の判断基準が得られる。設問分析の精度が低い受験生は、設問が求めていない情報を長々と記述し、肝心の情報が欠落した答案を作成してしまう。設問の要求分析によって、本文から抽出すべき情報の範囲と種類が限定され、効率的な情報収集が可能になる。また、答案に含めるべき要素が明確になることで、字数配分の計画を立てやすくなる。要求分析の精度が答案の質を決定するため、この技術の習得は記述問題への対応において最も優先される。
設問文とは、解答者に対する指示を含む文であり、その構造を分解することで要求される情報の種類と範囲が明確になる。設問文を構造的に分析しない場合、表面的な読み取りにとどまり、設問の意図を取り違える危険がある。多くの受験生が陥りやすい誤解として、設問文を一つのまとまりとして漠然と把握し、個別の構成要素を識別しないという傾向がある。設問文には複数の条件が含まれていることが多く、一つでも見落とすと不完全な答案となる。設問文の構造分解は、記述問題に取り組む際の最初の作業であり、この作業を省略すると、その後の全ての工程に悪影響が及ぶ。設問文は、対象指定部、操作指定部、形式指定部の三つの要素から構成される。対象指定部とは、答案で扱うべき対象を指定する部分であり、傍線部の語句や本文中の概念などが該当する。操作指定部とは、対象に対して行うべき操作を指定する部分であり、「説明せよ」「理由を述べよ」「具体例を挙げよ」などの動詞句が該当する。形式指定部とは、答案の形式を指定する部分であり、字数制限や「本文に即して」などの条件が該当する。これら三つの要素を識別することで、設問の要求が明確になる。対象指定部が不明確な場合は解答範囲が拡散し、操作指定部の理解が不十分な場合は答案の方向性が誤り、形式指定部を無視すると減点対象となる。
この構造から、設問文を分析する具体的な手順が導かれる。第一に、設問文中の疑問詞や指示語を特定し、対象指定部を抽出する。「なぜ」「どのように」「何を」などの疑問詞は操作の種類を示し、「傍線部」「筆者の主張」などの指示語は対象を示す。第二に、動詞句を特定し、操作指定部を抽出する。「説明せよ」は内容の記述を、「理由を述べよ」は因果関係の記述を、「論じよ」は論証を含む記述を要求する。第三に、字数制限や条件句を特定し、形式指定部を抽出する。「八十字以内で」「本文の表現を用いて」「具体例を含めて」などの条件は答案の形式を規定する。
例えば、「傍線部『近代的自我の確立』とはどのようなことか、筆者の論旨を踏まえて百二十字以内で説明せよ」という設問では、対象指定部は「傍線部『近代的自我の確立』」であり、操作指定部は「どのようなことか説明せよ」であり、形式指定部は「筆者の論旨を踏まえて」「百二十字以内で」である。この設問は、傍線部の語句の内容説明を求めており、本文の論旨との整合性と字数制限が条件となる。「筆者の論旨を踏まえて」という条件は、一般的な定義ではなく本文における文脈を考慮した説明を求めていることを示す。また、「筆者が『言語は思考を規定する』と主張する根拠を、本文に即して六十字以内で述べよ」という設問では、対象指定部は「『言語は思考を規定する』という主張の根拠」であり、操作指定部は「述べよ」であり、形式指定部は「本文に即して」「六十字以内で」である。この設問は根拠の説明を求めており、本文からの引用または言い換えと字数制限が条件となる。六十字という短い字数制限は、根拠の核心部分のみを簡潔に記述することを要求している。さらに、「傍線部の比喩表現が示す内容を、対比される概念との関係を明らかにしながら、百字以内で説明せよ」という設問では、対象指定部は「傍線部の比喩表現が示す内容」であり、操作指定部は「説明せよ」であり、形式指定部は「対比される概念との関係を明らかにしながら」「百字以内で」である。この設問は比喩の解読と対比構造の提示を求めており、二つの要素を含める必要がある。形式指定部の「対比される概念との関係を明らかにしながら」は、単に比喩を解読するだけでなく、対比構造を示すことが必須条件であることを意味する。最後に、「筆者の『共同体』観と『個人』観の関係について、両者の緊張関係を示す本文中の表現を引用しながら、百五十字以内で論じよ」という設問では、対象指定部は「筆者の『共同体』観と『個人』観の関係」であり、操作指定部は「論じよ」であり、形式指定部は「両者の緊張関係を示す本文中の表現を引用しながら」「百五十字以内で」である。この設問は二つの概念の関係についての論証を求めており、引用の義務と字数制限が条件となる。「論じよ」という操作指定は、単なる説明ではなく、主張と根拠を含む論証的な記述を要求している。以上により、設問文を構造的に分解することで、答案に含めるべき要素が明確になり、情報の取捨選択における判断基準が得られる。
操作指定部に含まれる動詞句は、答案の内容と構成を規定する。「説明せよ」「理由を述べよ」「論じよ」といった動詞句は、それぞれ異なる種類の情報と構成を要求する。操作指定の類型を正確に理解しなければ、設問の要求に合致しない答案を作成してしまう。受験生が陥りやすい誤解として、全ての設問に対して同じような説明的な記述で対応しようとする傾向がある。しかし、「理由を述べよ」という設問に対して内容説明を行っても、設問の要求を満たしたことにはならない。操作指定を取り違えることは、設問適合性という最も根本的な評価基準で減点される原因となる。操作指定は大きく四つの類型に分類される。第一の類型は内容説明型であり、「説明せよ」「どのようなことか」などが該当する。この類型は、対象となる語句や概念の内容を記述することを求める。第二の類型は理由説明型であり、「なぜか」「理由を述べよ」などが該当する。この類型は、ある事態が生じる原因や、ある主張が成り立つ根拠を記述することを求める。第三の類型は論証型であり、「論じよ」「考えを述べよ」などが該当する。この類型は、主張とその根拠を論理的に展開することを求める。第四の類型は比較型であり、「違いを述べよ」「共通点を挙げよ」などが該当する。この類型は、複数の対象の相違点または共通点を記述することを求める。操作指定の類型を誤認すると、求められていない情報を記述したり、必要な情報を欠落させたりする失敗が生じる。
この類型化から、操作指定に対応する答案構成の手順が導かれる。第一に、設問の動詞句を特定し、四つの類型のいずれに該当するかを判定する。第二に、類型に応じた情報の種類を確認する。内容説明型は対象の定義や特徴、理由説明型は原因や根拠、論証型は主張と論拠の組み合わせ、比較型は差異や共通性の情報が必要となる。第三に、類型に応じた答案構成を計画する。内容説明型は「X とは〜ということ」、理由説明型は「〜だから」「〜ため」、論証型は「〜であり、〜である。したがって〜」、比較型は「X は〜であるのに対し、Y は〜である」といった構成が基本となる。
例えば、「筆者の言う『存在論的不安』とはどのようなものか、六十字以内で説明せよ」という設問は内容説明型に該当する。この設問は、「存在論的不安」という語句の内容を記述することを求める。答案は「存在論的不安とは、〜という状態のことである」という構成をとる。必要な情報は、この語句の定義または特徴であり、発生原因や解決策は求められていない。六十字という制限から、定義の核心部分のみを記述する。また、「筆者はなぜ『科学的合理性には限界がある』と主張するのか、八十字以内で述べよ」という設問は理由説明型に該当する。この設問は、主張の根拠を記述することを求める。答案は「〜であるから」「〜のため」という構成をとる。必要な情報は、主張を支える理由や論拠であり、主張の内容の詳細な説明は求められていない。主張自体は設問に明示されているため、答案では根拠に字数を集中させる。さらに、「『伝統の継承』と『革新の追求』の関係について、筆者の見解を百二十字以内で論じよ」という設問は論証型に該当する。この設問は、二つの概念の関係についての筆者の見解を、論拠を含めて記述することを求める。答案は「筆者は〜と捉えている。〜だからである」という構成をとる。必要な情報は、見解の内容とその根拠の両方である。「論じよ」という操作指定により、見解を示すだけでなく、その根拠も示す必要がある。最後に、「筆者の考える『本来的な自由』と『放縦』の違いを、九十字以内で述べよ」という設問は比較型に該当する。この設問は、二つの概念の差異を記述することを求める。答案は「本来的な自由は〜であるのに対し、放縦は〜である」という構成をとる。必要な情報は、各概念の特徴と両者の対照であり、一方のみの説明では不十分である。九十字という制限では、両概念に均等に字数を配分し、対比構造を明示する。以上により、操作指定の類型を正確に把握することで、答案に含めるべき情報の種類と構成が明確になり、字数内での情報配置の計画が立てられる。
設問の要求を分析した後、次に行うべきことは本文中における該当情報の所在を特定することである。設問が求める情報は本文の一箇所に集中している場合もあれば、複数箇所に分散している場合もある。情報が分散している場合、それらを統合して答案を構成する必要があり、所在の特定が不十分だと必要な情報が欠落する。情報の所在特定は、答案作成の効率と精度を左右する重要な作業である。情報の所在特定は、本文全体の論理構造を把握した上で行われなければならない。論理構造を把握することで、設問が求める情報が本文のどの部分に存在する可能性が高いかを推定でき、効率的な情報収集が可能になる。また、情報間の論理関係を認識することで、答案における情報の配置順序や接続関係も決定できる。所在特定の精度が答案の完成度を決定するため、この技術の習得は情報の取捨選択において不可欠である。
傍線部を含む設問では、傍線部の内容を理解するために、その前後の文脈を分析することが必要となる。傍線部は本文から切り離された独立した単位ではなく、文脈の中で特定の意味を持つ。多くの受験生が陥りやすい誤解として、傍線部の語句だけを見て一般的な意味を答えようとする傾向がある。しかし、同じ語句であっても文脈が異なれば意味も異なる。文脈を無視して傍線部のみを解釈すると、本文における意味を取り違える危険がある。傍線部の意味は常に文脈によって規定されており、本文に即した解釈が求められる。傍線部と文脈の関係には、いくつかの典型的なパターンがある。第一のパターンは、傍線部が主張であり、その前後に根拠が存在する場合である。この場合、設問が「なぜか」と問うならば、前後の根拠を答案に含める必要がある。第二のパターンは、傍線部が抽象的な表現であり、その前後に具体例が存在する場合である。この場合、設問が内容説明を求めるならば、具体例を参照して抽象表現を言い換える必要がある。第三のパターンは、傍線部が比喩表現であり、本文中に比喩の意味を示す記述が存在する場合である。この場合、比喩を非比喩的な表現に置き換えて答案を構成する必要がある。第四のパターンは、傍線部が結論であり、本文中に結論に至る論証過程が存在する場合である。この場合、設問の要求に応じて、論証過程の一部または全体を答案に含める必要がある。
この分類から、傍線部と文脈の関係を分析する手順が導かれる。第一に、傍線部を含む文を読み、傍線部が文中でどのような機能を持つかを判定する。主張か根拠か、抽象か具体か、比喩か非比喩かなどを判定する。第二に、傍線部の直前直後の文を読み、傍線部との論理関係を確認する。接続語や指示語を手がかりに、順接・逆接・因果・例示などの関係を特定する。第三に、傍線部を含む段落全体を読み、段落内での傍線部の位置づけを確認する。段落の主題文か支持文か、結論か前提かなどを判定する。第四に、必要に応じて隣接する段落も参照し、傍線部に関連する情報が他の段落に存在するかを確認する。
例えば、「傍線部『言語の牢獄』とはどのようなことか」という設問において、傍線部の直前に「私たちは言語を用いて思考する限り、言語によって規定された範囲内でしか思考できない」という記述がある場合を考える。傍線部は比喩表現であり、直前の文がその意味内容を示している。答案は直前の記述を用いて比喩を解読する。傍線部のみを見て「言語に関する施設」などと解釈すると誤答となる。比喩表現の設問では、非比喩的な言い換えが求められる。また、「傍線部『この逆説的な事態』とはどのようなことか」という設問において、傍線部の直前に「自由を追求するほど不自由になる」「規則に従うことで初めて自由が可能になる」という二つの記述がある場合を考える。傍線部の指示内容は直前の二つの記述に存在する。「逆説的」という語から、一見矛盾する二つの事態の共存を記述する必要があることが分かる。指示語「この」は直前の内容を指すため、参照範囲は傍線部の直前に限定される。さらに、「傍線部について、筆者がそのように考える理由を述べよ」という設問において、傍線部が段落の冒頭に位置し、その段落の後半に複数の具体例と論拠が存在する場合を考える。傍線部は主張であり、同一段落内に根拠が存在する。答案には段落後半の論拠を含める必要がある。傍線部の言い換えのみでは理由の説明にならない。主張の後に根拠が続くという論説文の典型的構造を認識する。最後に、「傍線部の意味を説明せよ」という設問において、傍線部が段落の末尾に位置し、その段落全体が傍線部の内容を詳述している場合を考える。傍線部は段落の結論であり、段落全体が傍線部の説明となっている。答案には段落の要点を圧縮して含める必要があり、傍線部の語句の言い換えだけでは不十分である。段落末尾の傍線部は、段落全体の要約であることが多い。以上により、傍線部と文脈の関係を分析することで、答案に必要な情報の所在が明確になり、適切な情報収集が可能になる。
設問が求める情報が本文の複数箇所に分散している場合、それらを統合して答案を構成する必要がある。情報が分散している場合としては、同一の概念について本文の異なる箇所で異なる側面が論じられている場合、対比される二つの概念がそれぞれ異なる箇所で説明されている場合、主張とその根拠が異なる段落に存在する場合などがある。多くの受験生が陥りやすい誤解として、傍線部の周辺のみを参照し、本文の他の箇所に存在する関連情報を見落とすという傾向がある。分散情報の統合は、本文全体を踏まえた包括的な答案を作成するために必要な技術である。分散情報の統合においては、各情報の本文内での位置と役割を把握し、それらを論理的な順序で配置することが求められる。単に情報を羅列するのではなく、情報間の論理関係を明示する接続表現を用いて、統合された答案を構成する。また、字数制限がある場合、全ての情報を同等に扱うことはできず、重要度に応じた取捨選択が必要となる。統合の際には、各情報の重要度を判断し、優先順位をつけることが求められる。
この要請から、分散情報を統合する手順が導かれる。第一に、設問の要求に関連する情報を本文から全て抽出し、それぞれの所在を記録する。第二に、抽出した情報間の論理関係を分析する。同一概念の異なる側面なのか、対立する概念なのか、主張と根拠なのかなどを判定する。第三に、論理関係に基づいて情報を配列する。因果関係があれば原因から結果へ、対比関係があれば並列的に、包含関係があれば上位概念から下位概念へと配列する。第四に、字数制限に応じて情報を取捨選択する。設問の要求に直接対応する情報を優先し、補足的な情報は字数に余裕がある場合にのみ含める。
例えば、「筆者の考える『教養』とは何か」という設問において、第三段落で「教養とは知識の量ではない」と否定的に定義され、第七段落で「教養とは自己と世界に対する批判的な視点を持つことである」と肯定的に定義されている場合を考える。否定的定義と肯定的定義の両方が必要である。答案は「教養とは単なる知識の蓄積ではなく、自己と世界を批判的に捉える視点を持つことである」のように統合する。否定と肯定の両面を示すことで、概念の輪郭が明確になる。また、「筆者の『近代批判』の内容を説明せよ」という設問において、第二段落で「近代は合理性を過度に重視した」、第五段落で「近代は個人の自律を強調するあまり共同体を解体した」、第八段落で「近代は進歩の観念に囚われ歴史の複雑さを見失った」と述べられている場合を考える。三つの批判点が分散している。答案は「筆者の近代批判は、合理性の過度な重視、共同体の解体、進歩観念への囚われという三点から構成される」のように統合し、字数に応じて各点の詳細を調整する。批判点を網羅することで、筆者の近代批判の全体像を示す。さらに、「傍線部『この転換』の内容を、転換前と転換後を明らかにして説明せよ」という設問において、転換前の状態が第四段落で、転換後の状態が第六段落で説明されている場合を考える。二つの段落から情報を抽出して対比的に配置する。答案は「〜から〜への転換」という構成をとり、両段落の要点を圧縮して含める。転換前と転換後の対比を明示することで、転換の内容が明確になる。最後に、「筆者が『言語の創造性』について述べていることをまとめよ」という設問において、言語の創造性の定義が第二段落に、その具体例が第四段落に、その限界が第七段落に存在する場合を考える。三つの観点が分散している。設問が「述べていること」を求めているため、定義・具体例・限界の全てを含める必要があるが、字数制限に応じて各観点への配分を調整する。「まとめよ」という操作指定は、分散した情報の統合を求めている。以上により、分散情報を統合することで、本文全体を踏まえた包括的な答案が構成可能になり、情報の欠落を防ぐことができる。
本文の論理構造を把握するためには、情報間の関係を図式的に整理することが有効である。図式化とは、本文中の情報を抽象化し、情報間の論理関係を視覚的に表現することである。図式化によって、本文の全体像が把握しやすくなり、設問が求める情報がどの部分に位置するかが明確になる。論理構造の図式化は、複雑な論説文を読解する際に特に有効な技術である。図式化は、読解の補助手段であると同時に、答案構成の設計図としても機能する。図式を参照しながら答案を構成することで、論理的な一貫性を持った記述が可能になる。また、字数制限がある場合、図式を見ながら情報の優先順位を判断することで、適切な取捨選択が可能になる。
論説文においては、筆者の主張とその根拠の関係を図式化することが、本文の論理構造を把握する上で最も有効である。主張とは筆者が読者に伝えたい中心的な見解であり、根拠とは主張を支える論拠や証拠である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、主張と根拠を区別せずに本文の内容を漠然と把握する傾向がある。しかし、主張と根拠を明確に区別しなければ、設問が理由を問うているのか内容を問うているのかに応じた答案構成ができない。主張と根拠の関係を明確にすることで、本文の論証構造が把握でき、設問に対する答案の構成も容易になる。主張と根拠の関係は、論説文の骨格を形成するものであり、この関係を把握することが読解の核心である。主張と根拠の関係は、単純な一対一対応ではなく、複層的な構造を持つ場合が多い。一つの主張に対して複数の根拠が存在する場合、根拠がさらに下位の根拠によって支えられている場合、複数の主張が一つの結論を導く場合などがある。これらの複層的な構造を図式化することで、情報の重要度と相互関係が明確になり、字数制限に応じた取捨選択の判断が可能になる。複層構造の把握は、情報の階層化において不可欠である。
この必要性から、主張・根拠関係を図式化する手順が導かれる。第一に、本文中の主張を特定する。「〜である」「〜すべきだ」「〜と言えよう」などの表現が主張の標識となる。第二に、各主張に対応する根拠を特定する。「〜だからである」「というのは」「その証拠に」などの表現が根拠の標識となる。第三に、主張と根拠の対応関係を矢印で表現する。根拠から主張への矢印は、根拠が主張を支持することを示す。第四に、根拠の下位構造を確認する。根拠がさらに別の根拠によって支えられている場合、その関係も図式に含める。
例えば、本文が「現代社会において読書は不可欠である(主張)。批判的思考力を養うからである(根拠 1)。また、他者への共感能力を高めるからである(根拠 2)」という構造を持つ場合を考える。図式は「根拠 1→主張、根拠 2→主張」となる。設問が「筆者が読書を重視する理由」を問う場合、根拠 1 と根拠 2 の両方を答案に含める必要がある。複数の根拠がある場合、字数制限に応じて全てを含めるか選択するかを判断する。また、本文が「芸術は社会を変革する力を持つ(主張)。芸術は既存の価値観を問い直す機能を持つ(根拠 1)。というのは、芸術は日常的な知覚を異化するからである(根拠 1 の根拠)」という構造を持つ場合を考える。図式は「根拠 1 の根拠→根拠 1→主張」となる。設問の字数が短い場合は「根拠 1→主張」の関係のみを記述し、字数に余裕がある場合は根拠 1 の根拠も含める。根拠の下位構造は、字数に余裕がある場合の補足情報となる。さらに、本文が「個人の自由は絶対的なものではない(主張 1)。自由には責任が伴う(主張 2)。したがって、自由の行使には社会的配慮が必要である(結論)」という構造を持つ場合を考える。図式は「主張 1+主張 2→結論」となる。設問が結論についての説明を求める場合、主張 1 と主張 2 の両方を踏まえて答案を構成する必要がある。複数の主張から導かれる結論を説明する際は、前提となる主張にも言及する。最後に、本文が「言語相対性仮説には一定の妥当性がある(主張)。色彩語彙の多寡が色彩認知に影響するという実験結果がある(根拠 1)。しかし、全ての思考が言語に規定されるわけではない(留保)。非言語的な思考も存在するからである(留保の根拠)」という構造を持つ場合を考える。図式は「根拠 1→主張」「留保の根拠→留保」となる。設問が筆者の見解全体を問う場合、主張と留保の両方を含める必要がある。筆者の見解が留保を含む場合、その留保も答案に反映させる。以上により、主張・根拠関係を図式化することで、本文の論証構造が明確になり、答案に含めるべき情報とその配置順序が把握できる。
論説文においては、対比構造と並列構造が頻繁に用いられる。対比構造とは、二つ以上の概念を差異に注目して並べる構造であり、「A は X であるが、B は Y である」という形式をとる。並列構造とは、二つ以上の概念を共通性または同等性に注目して並べる構造であり、「A も B も Z である」という形式をとる。多くの受験生が陥りやすい誤解として、対比構造を見落とし、一方の概念のみを取り上げて答案を構成する傾向がある。しかし、対比を含む設問では両方の概念への言及が必須である。これらの構造を図式化することで、概念間の関係が明確になり、設問に対する答案構成が容易になる。対比と並列の構造は、筆者の論点を整理し、読者の理解を促進するために用いられる。対比構造は、筆者の主張を際立たせるために用いられることが多い。対比される二項のうち一方が筆者の支持する立場であり、他方が批判の対象となる立場である場合が典型的である。並列構造は、同一カテゴリーに属する複数の要素を列挙する場合に用いられる。設問が対比や並列を含む本文内容について問う場合、構造を正確に把握していなければ、答案が一面的になったり、要素の欠落が生じたりする。構造の把握が不十分だと、重要な情報を見落とす危険がある。
この必要性から、対比・並列構造を図式化する手順が導かれる。第一に、対比または並列の標識となる表現を特定する。「一方」「他方」「これに対して」などは対比の標識、「また」「さらに」「第一に、第二に」などは並列の標識となる。第二に、対比または並列される要素を抽出する。対比の場合は二項の差異を明確にし、並列の場合は各要素の共通点を確認する。第三に、対比は二項の対応関係を、並列は要素の列挙として図式化する。第四に、図式を参照しながら、設問の要求に応じて必要な情報を選択する。
例えば、本文が「近代的な時間意識では、時間は直線的に進行し過去には戻れない。これに対して、前近代的な時間意識では、時間は循環的であり、季節や祭事の反復として経験される」という対比構造を持つ場合を考える。図式は「近代的時間意識:直線的・不可逆」対「前近代的時間意識:循環的・反復的」となる。設問が両者の違いを問う場合、二項の対応する特徴を並列的に記述する。対比の両項に均等に言及することで、違いが明確になる。また、本文が「コミュニケーションの機能は三つある。第一に、情報伝達の機能である。第二に、関係構築の機能である。第三に、自己表現の機能である」という並列構造を持つ場合を考える。図式は「コミュニケーションの機能:①情報伝達、②関係構築、③自己表現」となる。設問が機能について問う場合、三要素を漏れなく含め、字数に応じて各要素の説明量を調整する。並列される要素は全て同等の重要度を持つ。さらに、本文が「真の教養は、単なる知識の蓄積とは異なる。知識は外部から獲得されるものであるが、教養は内面的な変容を伴う。知識は忘却されうるが、教養は人格の一部となる」という対比構造を持つ場合を考える。図式は「知識:外部獲得・忘却可能」対「教養:内面変容・人格の一部」となる。設問が教養の特徴を問う場合、知識との対比を通じて教養の特徴を記述する。対比によって、教養の独自性が浮き彫りになる。最後に、本文が「科学技術の発展は、便益とリスクの両面を持つ。便益としては、生活の効率化、医療の進歩、コミュニケーションの拡大がある。リスクとしては、環境破壊、プライバシーの侵害、人間関係の希薄化がある」という対比と並列の複合構造を持つ場合を考える。図式は「便益:①効率化、②医療進歩、③コミュニケーション拡大」対「リスク:①環境破壊、②プライバシー侵害、③関係希薄化」となる。設問の要求に応じて、便益とリスクのいずれかに焦点を当てるか、両者の対比を記述するかを判断する。複合構造では、設問の要求に応じて焦点を絞る。以上により、対比・並列構造を図式化することで、概念間の関係が明確になり、設問の要求に応じた情報選択と答案構成が可能になる。
設問が本文のどの部分に対応するかを正確に把握することは、情報の取捨選択の前提となる。設問によっては本文の一部分のみを参照すればよい場合もあれば、本文全体を踏まえる必要がある場合もある。設問と本文の対応関係を見誤ると、必要な情報を見落としたり、不要な情報を含めたりする失敗が生じる。対応関係の把握は、情報収集の効率と答案の精度を決定する。設問と本文の対応関係は、設問の形式によって異なるパターンを示す。傍線部を含む設問は傍線部周辺を重点的に参照すればよい場合が多いが、傍線部の概念が本文全体で論じられている場合は広い範囲を参照する必要がある。「筆者の主張」「本文全体」という表現を含む設問は、本文全体を踏まえた答案構成が必要となる。対応関係を正確に把握することで、情報収集の範囲と深度を適切に設定できる。
局所参照型設問とは、本文の特定部分を参照すれば解答可能な設問である。傍線部の内容説明、傍線部の理由説明、特定の語句の意味説明などがこのタイプに該当する。多くの受験生が陥りやすい誤解として、局所参照型設問においても本文全体を参照しようとし、不要な情報を含めてしまう傾向がある。局所参照型設問では、参照範囲を適切に限定することで、効率的な情報収集と答案作成が可能になる。参照範囲を広げすぎると不要な情報を含めてしまい、狭めすぎると必要な情報が欠落する。局所参照型設問においても、参照範囲の設定には注意が必要である。傍線部の直前直後だけでなく、傍線部を含む段落全体、場合によっては隣接する段落まで参照範囲を広げる必要がある場合がある。また、傍線部に含まれる概念が本文の他の部分で定義されている場合、その定義部分も参照範囲に含める必要がある。参照範囲の設定が狭すぎると情報が欠落し、広すぎると不要な情報を含めてしまう。適切な参照範囲の設定は、経験と判断力を要する作業である。
この課題から、局所参照型設問への対応手順が導かれる。第一に、傍線部または対象となる語句を特定し、その文法的・意味的特徴を確認する。指示語を含む場合は指示内容を、比喩表現の場合は解読の必要性を確認する。第二に、傍線部を含む文、その前後の文を読み、傍線部との論理関係を確認する。第三に、傍線部を含む段落全体を読み、段落内での傍線部の位置づけを確認する。第四に、必要に応じて参照範囲を拡大または限定し、設問の要求に対応する情報を特定する。
例えば、「傍線部『この矛盾』とは何を指すか」という設問において、傍線部の直前に「個人の自由を尊重するほど社会は不安定になり、社会の安定を重視するほど個人の自由は制限される」という記述がある場合を考える。参照範囲は傍線部の直前の一文である。「この矛盾」は指示語「この」を含むため、直前の内容を指す。答案は「個人の自由の尊重と社会の安定の追求が両立しないこと」となる。指示語を含む傍線部は、その指示内容を特定することが解答の核心となる。また、「傍線部『言語の恣意性』とはどのようなことか」という設問において、傍線部を含む段落に定義が見当たらず、本文の冒頭部で言語の恣意性について詳しい説明がなされている場合を考える。参照範囲を冒頭部まで拡大する必要がある。傍線部周辺のみを参照すると情報が不足する。答案は冒頭部の説明を用いて構成する。概念の定義が傍線部から離れた位置にある場合、参照範囲を拡大する。さらに、「傍線部について、筆者がそのように述べる理由を説明せよ」という設問において、傍線部を含む段落の後半に「〜だからである」で始まる説明が存在する場合を考える。参照範囲は傍線部を含む段落の後半である。「〜だからである」以降の内容を答案に含める。段落の冒頭部や他の段落の情報は、直接の理由でなければ含める必要はない。接続表現は参照範囲を特定する手がかりとなる。最後に、「傍線部の意味を説明せよ」という設問において、傍線部が段落の末尾に位置し、その段落全体が傍線部の内容を詳述している場合を考える。参照範囲は傍線部を含む段落全体である。段落全体が傍線部の説明となっているため、段落の要点を圧縮して答案を構成する。段落末尾の傍線部は、段落全体を参照範囲とすることが多い。以上により、局所参照型設問においては、参照範囲を適切に設定することで、必要十分な情報を効率的に収集できる。
全体参照型設問とは、本文全体を踏まえなければ解答できない設問である。「筆者の主張を要約せよ」「本文の論旨を踏まえて」「本文全体を通じて筆者が述べていることを」などの表現を含む設問がこのタイプに該当する。多くの受験生が陥りやすい誤解として、全体参照型設問においても傍線部周辺のみを参照し、本文全体の論旨を踏まえない答案を作成する傾向がある。全体参照型設問では、本文全体の論理構造を把握した上で、核心的な情報を抽出して答案を構成する必要がある。本文の一部のみを参照した答案は、設問の要求を満たさない。全体参照型設問に対応するためには、本文を読みながら情報を階層化しておくことが有効である。筆者の最も重要な主張は何か、それを支える主要な根拠は何か、具体例や補足的な説明はどの部分かを識別しながら読むことで、答案作成時に核心的な情報を選択しやすくなる。字数制限がある場合、最上位の主張と主要な根拠を優先し、具体例や補足は字数に余裕がある場合にのみ含める。全体参照型設問では、情報の階層化が特に重要である。
この課題から、全体参照型設問への対応手順が導かれる。第一に、本文全体を読み、各段落の要点を把握する。各段落が主張・根拠・具体例・結論のいずれの機能を持つかを判定する。第二に、本文の最も重要な主張(中心的主張)を特定する。中心的主張は結論部に明示されることが多いが、序論や本論の中で繰り返し述べられることもある。第三に、中心的主張を支える主要な根拠を特定する。複数の根拠がある場合、設問の要求と字数制限に応じて選択または圧縮する。第四に、特定した主張と根拠を論理的な順序で配置し、答案を構成する。
例えば、「筆者の考える『真の自由』とは何か、本文全体を踏まえて説明せよ」という設問の場合を考える。本文全体から「真の自由」に関連する記述を抽出する。序論での問題提起、本論での分析、結論での定義などを統合して答案を構成する。一箇所からの引用では不十分であり、本文全体を踏まえた統合的な説明が必要となる。「本文全体を踏まえて」という条件は、分散した情報の統合を求めている。また、「本文の論旨を踏まえて、傍線部の意味を説明せよ」という設問の場合を考える。傍線部の局所的な文脈だけでなく、本文全体の論旨を考慮して説明する必要がある。傍線部の語句が本文全体のテーマとどのように関連するかを示す答案が求められる。論旨との関連を示すことで、傍線部の意味が本文の中で持つ重要性が明らかになる。さらに、「筆者の主張を百五十字以内で要約せよ」という設問の場合を考える。本文全体の論理構造を把握し、中心的主張とその根拠を圧縮して記述する。各段落の内容を均等に含めるのではなく、主張の核心部分を優先する。字数制限が厳しいため、具体例や補足的説明は省略する。要約では、情報の階層化に基づく取捨選択が不可欠である。最後に、「本文で筆者が批判している立場を明らかにした上で、筆者自身の見解を説明せよ」という設問の場合を考える。本文全体から批判対象と筆者の見解の両方を抽出する必要がある。批判対象が本文前半で、筆者の見解が後半で述べられている場合、両者を対比的に配置して答案を構成する。批判と見解の両方を含めることが、設問の要求を満たす条件となる。以上により、全体参照型設問においては、本文全体の論理構造を把握した上で核心的な情報を選択することで、設問の要求に応える答案が構成できる。
設問の要求を分析し、本文における情報の所在を特定した後、次に行うべきことは各情報の重要度を判定することである。字数制限がある記述問題では、全ての情報を答案に含めることはできない。設問の要求に対する重要度を判定し、優先順位を決定することで、適切な取捨選択が可能になる。重要度の判定は、取捨選択の核心となる作業であり、この判定の精度が答案の質を決定する。情報の重要度は、設問との関連性、本文における位置づけ、情報間の論理関係によって決定される。設問が直接求めている情報は最も重要度が高く、設問に間接的に関連する情報、補足的な情報の順に重要度が下がる。本文において主張として提示されている情報は根拠よりも重要度が高く、根拠は具体例よりも重要度が高い場合が多い。ただし、設問が理由を求めている場合は根拠の重要度が高くなるなど、設問の種類によって重要度の順位は変動する。重要度の判定は、設問の要求に応じて柔軟に行う必要がある。
答案に含める情報は、必須情報と補足情報に区別できる。必須情報とは、それがなければ答案が成立しない、または著しく不完全になる情報である。補足情報とは、答案をより充実させるが、なくても答案として成立する情報である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、補足情報を詳しく記述し、必須情報が不十分になるという傾向がある。字数制限が厳しい場合は必須情報のみを含め、字数に余裕がある場合は補足情報も加える。この区別は、取捨選択における最も基本的な判断基準である。必須情報と補足情報の区別は、設問の要求に照らして行う。設問が「定義を述べよ」と求めている場合、定義に相当する情報は必須であり、定義に至った背景や具体例は補足となる。設問が「理由を述べよ」と求めている場合、理由に相当する情報は必須であり、理由の詳細な説明や他の理由との比較は補足となる。この区別を明確にすることで、字数制限に応じた取捨選択の判断が可能になる。必須情報の欠落は大きな減点となり、補足情報の欠落は軽微な減点にとどまる。
この原理から、必須情報と補足情報を区別する手順が導かれる。第一に、設問の操作指定を確認し、どのような種類の情報が求められているかを把握する。第二に、本文から抽出した情報を、設問の要求に直接対応する情報とそれ以外に分類する。直接対応する情報が必須情報の候補となる。第三に、必須情報の候補が複数ある場合、本文における位置づけと情報間の論理関係を考慮して優先順位を決定する。第四に、字数制限と必須情報の分量を比較し、補足情報を含める余地があるかを判断する。
例えば、「傍線部『文化相対主義』とは何か、六十字以内で説明せよ」という設問の場合を考える。文化相対主義の定義が必須情報であり、文化相対主義が生まれた歴史的背景や、文化相対主義に対する批判は補足情報である。六十字という制限では定義のみを記述し、背景や批判は含めない。定義の核心部分を簡潔に示すことが求められる。また、「筆者が『言語は思考を規定する』と主張する理由を、百字以内で述べよ」という設問の場合を考える。主張を支える理由・根拠が必須情報であり、主張の内容の詳細な説明や主張の帰結は補足情報である。百字という制限では、最も重要な理由を一つないし二つ記述し、理由の詳細な説明は含めない。理由の核心を簡潔に示すことが優先される。さらに、「傍線部について、筆者の見解を百二十字以内で論じよ」という設問の場合を考える。筆者の見解の内容が必須情報であり、見解を支える根拠も必須情報に近い重要度を持つ。百二十字という制限では、見解の核心部分と主要な根拠の両方を含める。見解に対する筆者自身の留保や他の論者との比較は補足情報となる。「論じよ」という操作指定は、根拠も必須情報に含めることを示唆する。最後に、「傍線部の比喩表現が示す内容を、対比される概念との関係を明らかにしながら説明せよ」という設問の場合を考える。比喩の意味内容と対比構造の両方が必須情報である。設問文に「対比される概念との関係を明らかにしながら」という条件があるため、対比構造を示さなければ設問の要求を満たさない。形式指定部の条件は、必須情報の範囲を規定する。以上により、必須情報と補足情報を区別することで、字数制限に応じた取捨選択の判断が明確になり、必要十分な情報を含む答案が構成できる。
本文中の情報は、相互に独立して存在するのではなく、階層的な構造を形成している。上位の情報は抽象度が高く、下位の情報は具体的または詳細である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、全ての情報を同等に扱い、階層性を考慮せずに答案を構成する傾向がある。しかし、字数制限がある場合、階層の上位にある情報を優先し、下位の情報は字数に余裕がある場合にのみ含める。この階層構造を認識することで、字数制限に応じて適切なレベルの情報を選択できる。字数が少ない場合は上位の情報を、字数が多い場合は下位の情報まで含めるという判断が可能になる。階層構造の認識は、字数に応じた情報量の調整において不可欠である。情報の階層構造は、抽象度の軸と論理関係の軸から捉えられる。抽象度の軸では、一般的な主張が上位、具体的な事例が下位となる。論理関係の軸では、結論が上位、その根拠や前提が下位となる。ただし、設問が理由を求めている場合、論理的には下位にある根拠を優先して記述する必要があるため、設問の要求に応じて階層の活用方法を調整する必要がある。階層構造の認識は、設問の要求と連動させて活用する。
この原理から、情報の階層構造を活用する手順が導かれる。第一に、本文から抽出した情報を抽象度の高い順に配列する。最も抽象的な情報(主張・結論)を上位に、具体的な情報(事例・詳細)を下位に配置する。第二に、情報間の論理関係を確認する。上位の情報が下位の情報によって支持されているか、下位の情報が上位の情報を具体化しているかを判定する。第三に、設問の要求と字数制限に応じて、どの階層までの情報を含めるかを決定する。第四に、選択した階層の情報を論理的な順序で配置し、答案を構成する。
例えば、設問が「筆者の主張を述べよ」であり、字数が六十字以内の場合を考える。情報階層の最上位にある主張のみを記述する。主張を支える根拠や具体例は含めない。「筆者は〜と主張する」という構成で、主張の核心部分を簡潔に示す。最上位の情報に焦点を絞ることで、字数制限に対応する。また、設問が「筆者の主張を根拠を含めて述べよ」であり、字数が百字以内の場合を考える。情報階層の上位二層(主張と主要な根拠)を記述する。「筆者は〜と主張する。〜だからである」という構成で、主張と根拠を示す。具体例は含めない。上位二層の情報を含めることで、主張の論理的裏付けを示す。さらに、設問が「筆者の議論を詳しく説明せよ」であり、字数が百五十字以内の場合を考える。情報階層の三層(主張・根拠・具体例または詳細)を記述する。主張と根拠に加えて、根拠を支える具体例や詳細な説明を含める。「詳しく」という指定は、下位層の情報も含めることを求めている。最後に、設問が「筆者の結論に至る論証過程を説明せよ」であり、字数が二百字以内の場合を考える。論理関係の軸に注目し、前提から結論に至る過程を段階的に記述する。結論のみでなく、結論を導く各段階の論拠を含める。情報階層の観点では、通常は結論より下位にある根拠や前提を優先して記述する。「論証過程」という指定は、論理の展開を示すことを求めている。以上により、情報の階層構造を認識することで、字数制限に応じた適切なレベルの情報選択が可能になり、過不足のない答案が構成できる。
体系的接続
本文の論理構造を把握し、設問が求める情報を特定した後、次に行うべきことは抽出した情報を重要度によって階層化し、字数制限に応じて取捨選択することである。情報の階層化とは、各情報を設問への関連性と本文における位置づけに基づいて序列化することである。取捨選択とは、階層化された情報の中から、字数制限内に収まる範囲で最も重要な情報を選び、それ以外を除外することである。情報の階層化と取捨選択は、字数制限のある記述問題において最も実践的な技術であり、本モジュールの中核をなす。階層化なしに取捨選択を行うと、重要な情報を落としたり、不要な情報を含めたりする失敗が生じる。分析層では、情報を階層化する基準と、取捨選択を行う際の判断方法を体系的に習得する。階層化の基準を明確に持つことで、迷いなく情報を選別できるようになり、答案作成の効率と精度が向上する。
情報を階層化するためには、明確な基準が必要である。基準なく情報を並べても、どの情報を優先すべきかの判断ができない。情報階層化の基準は、設問との関連性、本文における重要度、論理的必要性の三つの観点から設定される。これらの観点を総合的に適用することで、各情報に対して優先順位を付けることができる。優先順位が明確になれば、字数制限に応じてどこまでの情報を含めるかの判断が容易になる。情報階層化の基準を理解することは、取捨選択を行うための前提条件である。基準を内面化することで、様々な設問に対して一貫した判断が可能になる。
情報階層化の第一の基準は、設問との関連性である。設問が直接求めている情報は最も優先度が高く、設問に間接的に関連する情報、設問との関連が薄い情報の順に優先度が下がる。多くの受験生が陥りやすい誤解として、本文中で詳しく説明されている情報を重要だと判断し、設問との関連性を考慮しない傾向がある。しかし、本文で重要な位置を占める情報であっても、設問が求めていなければ答案に含める必要はない。設問の要求を正確に分析することで、各情報の設問関連性を判定できる。設問関連性は、情報の取捨選択において最も重視すべき基準である。設問関連性による階層化は、設問の操作指定と対象指定を手がかりに行う。操作指定が「理由を述べよ」であれば、理由・根拠に該当する情報が最も関連性が高く、結論や帰結は関連性が低くなる。操作指定が「内容を説明せよ」であれば、対象の定義・特徴に該当する情報が最も関連性が高く、背景や評価は関連性が低くなる。対象指定が特定の概念であれば、その概念に直接言及する情報が最も関連性が高く、他の概念への言及は関連性が低くなる。設問関連性の判定は、設問分析の結果を活用して行う。
この基準から、設問関連性を判定する手順が導かれる。第一に、設問の操作指定を確認し、どのような種類の情報が求められているかを把握する。第二に、本文から抽出した各情報について、操作指定が求める種類に該当するかを判定する。該当する情報を「直接関連」とする。第三に、直接関連する情報を補足・詳細化する情報を「間接関連」とする。第四に、設問の対象に言及していない情報を「低関連」とする。
例えば、「筆者が『現代社会は孤独を生む』と主張する理由を述べよ」という設問に対して、本文から抽出した情報が「A:現代社会では人間関係が希薄化している」「B:技術の発展が対面コミュニケーションを減少させた」「C:孤独は精神的健康に悪影響を与える」「D:筆者は孤独への対策を提案している」である場合を考える。A と B は「理由」に該当するため直接関連、C は主張の帰結であり間接関連、D は対策であり低関連である。答案には A と B を優先して含める。理由を問う設問では、主張を支える根拠が最も重要な情報となる。また、「傍線部『言語相対性仮説』の内容を説明せよ」という設問に対して、本文から抽出した情報が「A:言語が思考を規定するという考え」「B:サピアとウォーフが提唱した」「C:色彩語彙の実験が根拠とされる」「D:言語相対性仮説への批判も存在する」である場合を考える。A は定義に該当するため直接関連、B は提唱者であり間接関連、C は根拠であり間接関連、D は批判であり低関連である。答案には A を中心に構成し、字数に応じて B や C を追加する。内容説明では定義が最も重要な情報となる。さらに、「筆者の『自由』観を述べよ」という設問に対して、本文から抽出した情報が「A:自由とは自己決定の能力である」「B:自由は責任を伴う」「C:放縦は自由ではない」「D:古代ギリシアでは自由は政治参加と結びついていた」である場合を考える。A、B、C は筆者の自由観に該当するため直接関連、D は歴史的背景であり間接関連である。答案には A、B、C を含め、字数に余裕があれば D を追加する。筆者の見解を問う設問では、筆者の主張に直接関わる情報が優先される。最後に、「傍線部について、筆者がそのように考える根拠を述べよ」という設問に対して、本文から抽出した情報が「A:傍線部と同じ段落に『〜だからである』で始まる文がある」「B:傍線部の二段落前に関連する事実が述べられている」「C:傍線部の後に筆者の結論がある」である場合を考える。A は直接の根拠であり直接関連、B は間接的な根拠であり間接関連、C は帰結であり低関連である。答案には A を中心に構成し、必要に応じて B を追加する。根拠を問う設問では、「〜だからである」で始まる記述が最も直接的な情報となる。以上により、設問関連性を基準に情報を階層化することで、答案に優先して含めるべき情報が明確になる。
情報階層化の第二の基準は、本文における位置づけである。筆者が主張として提示している情報は重要度が高く、主張を支える根拠、根拠を例示する具体例の順に重要度が下がる傾向がある。多くの受験生が陥りやすい誤解として、具体例や詳細な説明を重視し、それらが支えている主張を見落とす傾向がある。しかし、具体例は主張を補強するものであり、主張なしに具体例を記述しても答案としては不完全である。ただし、これは一般的な傾向であり、設問の種類によっては根拠や具体例が優先される場合もある。本文内位置づけは、設問関連性と組み合わせて活用する基準である。本文内位置づけによる階層化は、情報が主張・根拠・具体例・補足のいずれの機能を持つかを判定することで行う。主張は筆者の見解を示す情報であり、「〜である」「〜と考える」「〜すべきだ」などの表現が標識となる。根拠は主張を支持する情報であり、「〜だからである」「というのは」「その証拠に」などの表現が標識となる。具体例は根拠を例示する情報であり、「たとえば」「具体的には」「〜の場合」などの表現が標識となる。補足は主題から外れる情報や付加的な情報であり、「ちなみに」「なお」「余談だが」などの表現が標識となる。接続表現は情報の機能を判定する重要な手がかりである。
この基準から、本文内位置づけを判定する手順が導かれる。第一に、各情報を除く文の述語表現を確認し、主張・根拠・具体例・補足のいずれかに分類する。第二に、接続表現を確認し、前後の文との論理関係から分類を補正する。第三に、段落内での位置を確認し、段落冒頭や末尾に位置する情報は主張である可能性が高いと判断する。第四に、設問の要求に応じて、優先順位を調整する。設問が理由を求めている場合は根拠を、具体例を求めている場合は具体例を優先する。
例えば、本文中に「現代人は時間に追われている。効率化が進むほど時間の密度が高まるからである。たとえば、電子メールの普及によって返信への期待が即時化し、待ち時間が生産性の損失と見なされるようになった」という記述がある場合を考える。「現代人は時間に追われている」は主張、「効率化が進むほど時間の密度が高まる」は根拠、「電子メールの普及によって〜」は具体例である。設問が主張の内容を問う場合は主張を中心に、理由を問う場合は根拠を中心に、具体的にはと問う場合は具体例を中心に答案を構成する。本文内位置づけと設問の要求を対応させることで、適切な情報選択ができる。また、本文中に「科学的方法論には限界がある。観察と実験によって検証できるのは反復可能な現象に限られ、一回性の歴史的事象や主観的な経験は科学の対象となりにくい。このことは、人間存在の根本的な問いに科学が十分に答えられないことを意味する」という記述がある場合を考える。「科学的方法論には限界がある」は主張、「観察と実験によって〜科学の対象となりにくい」は根拠、「人間存在の根本的な問いに〜」は主張の帰結または補足である。設問が限界の内容を問う場合は主張と根拠を、帰結を問う場合は最後の文を中心に答案を構成する。帰結は主張から導かれる結論であり、設問によっては重要な情報となる。さらに、本文中に「言語は透明な媒体ではない。私たちは言語を通じて世界を把握するが、言語はすでに特定の世界解釈を含んでいる。日本語の敬語体系は、上下関係を前提とした社会観を反映している」という記述がある場合を考える。「言語は透明な媒体ではない」は主張、「言語はすでに特定の世界解釈を含んでいる」は主張の言い換えまたは根拠、「日本語の敬語体系は〜」は具体例である。設問が言語観の内容を問う場合は最初の二文を、具体例を求める場合は敬語の例を中心に答案を構成する。主張の言い換えは、主張の内容を別の角度から示すものであり、主張と同等の重要度を持つ。最後に、本文中に「教育の目的は知識の伝達だけではない。むしろ、批判的思考力を養い、既存の知識を問い直す能力を育てることが重要である。ちなみに、この見解はソクラテスの産婆術にまで遡ることができる」という記述がある場合を考える。「教育の目的は知識の伝達だけではない」は主張(否定形)、「批判的思考力を養い〜育てることが重要である」は主張(肯定形)、「ソクラテスの産婆術にまで遡る」は補足である。設問が教育観を問う場合は最初の二文を中心に答案を構成し、補足の情報は字数に余裕がある場合にのみ含める。「ちなみに」で始まる記述は補足であり、優先度は低い。以上により、本文内位置づけを基準に情報を階層化することで、情報の重要度の一一般的な序列が把握できる。
情報を階層化した後、次に行うべきことは字数制限に応じた情報量の調整である。同一の設問に対しても、六十字と百二十字では含めるべき情報量が異なる。字数と情報量の適切な対応を理解することで、過不足のない答案を構成できる。字数と情報量の対応は、答案作成の計画段階で把握しておくべき知識である。字数と情報量の対応は、情報の単位と字数の関係を把握することで理解できる。情報の最小単位は一つの命題であり、これを表現するには通常二十字から四十字程度が必要となる。複数の命題を論理的に接続するには、接続表現と追加の文字数が必要となる。字数制限から逆算して、含めることができる命題の数を推定できる。この推定に基づいて、情報の取捨選択を計画する。
字数制限は設問によって様々であるが、典型的な字数帯ごとに含めるべき情報量の目安がある。多くの受験生が陥りやすい誤解として、字数制限に関わらず同じ量の情報を詰め込もうとする傾向がある。しかし、六十字で三つの論点を述べようとすると各論点の説明が不十分になり、百五十字で一つの論点のみを述べると冗長な答案となる。この目安を把握することで、情報の取捨選択における判断が容易になる。字数別の情報量目安は、経験的に確立された実践的な知識である。字数別の情報量目安は、経験的な法則として以下のように整理できる。三十字から五十字程度の場合、含めることができるのは一つの核心的命題である。言い換えや修飾語を省き、最も重要な情報のみを簡潔に記述する。六十字から八十字程度の場合、含めることができるのは一つの命題とその補足、または二つの関連する命題である。簡潔な接続表現を用いて二つの情報を結合できる。百字から百二十字程度の場合、含めることができるのは二つから三つの命題と、それらを結ぶ論理関係である。主張と根拠、または対比する二つの概念を示すことができる。百五十字から二百字程度の場合、含めることができるのは三つから四つの命題と、より詳細な論理展開である。主張・根拠・具体例の三層構造、または複数の根拠を示すことができる。
この目安から、字数別の答案構成を計画する手順が導かれる。第一に、字数制限を確認し、上記の目安から含めることができる情報量を推定する。第二に、階層化した情報から、推定した情報量に応じて必要な情報を選択する。第三に、選択した情報を論理的に配置し、下書きを作成する。第四に、下書きの字数を確認し、過不足があれば情報または表現を調整する。
例えば、「傍線部の意味を四十字以内で説明せよ」という設問の場合を考える。四十字では一つの命題のみを記述できる。傍線部の意味の核心部分を抽出し、「〜とは〜ということ」という構成で簡潔に示す。補足説明や根拠は含めない。核心部分のみに焦点を絞ることで、短い字数でも設問の要求を満たす答案が作成できる。また、「筆者が批判する立場を七十字以内で述べよ」という設問の場合を考える。七十字では一つの命題とその補足を記述できる。批判対象の立場を示し、その問題点を簡潔に付記する。「〜という立場であり、これは〜という点で問題がある」という構成が可能である。立場の内容と問題点の両方を含めることで、批判の要点が明確になる。さらに、「筆者の主張とその根拠を百字以内で述べよ」という設問の場合を考える。百字では主張と根拠の二つを記述できる。「筆者は〜と主張する。〜だからである」という構成で、主張と主要な根拠を示す。複数の根拠がある場合は最も重要なものを選択する。主張と根拠の両方を含めることが設問の要求であるため、両者に均等に字数を配分する。最後に、「傍線部について、筆者の見解を百五十字以内で論じよ」という設問の場合を考える。百五十字では主張・根拠・具体例または詳細の三層を記述できる。「筆者は〜と考える。その根拠は〜である。たとえば〜」という構成で、見解を多面的に示す。「論じよ」という操作指定は、主張と根拠の両方を含める論証的な記述を求めている。以上により、字数別の情報量目安を把握することで、取捨選択の判断が容易になり、字数に応じた適切な答案構成が可能になる。
字数制限に対応するためには、同一の情報をより少ない字数で表現する圧縮の技術と、より多くの字数で詳細に表現する展開の技術の両方が必要である。圧縮は字数が足りない場合に、展開は字数が余る場合に用いる。多くの受験生が陥りやすい誤解として、圧縮は単に語句を削ることだと考える傾向がある。しかし、効果的な圧縮は情報の本質を維持しながら表現を簡潔にすることであり、単なる削除とは異なる。圧縮と展開は、字数調整の基本的な技術である。情報の圧縮は、冗長な表現の削除、複文から単文への変換、抽象化による複数情報の統合などの方法で行う。冗長な表現とは、意味に貢献しない修飾語や言い換えであり、これを削除しても情報量は変わらない。複文から単文への変換は、接続表現や従属節を省略することで字数を削減する。抽象化は、複数の具体例を上位概念で置き換えることで字数を削減する。情報の展開は、抽象的な表現の具体化、根拠の追加、詳細な説明の付加などの方法で行う。圧縮と展開の技術は、論述層で詳細に扱うため、ここでは基本的な考え方を示す。
この技術から、圧縮と展開を適用する手順が導かれる。第一に、下書きを作成し、字数を計測する。第二に、字数が超過している場合は圧縮を、字数が不足している場合は展開を適用する。第三に、圧縮の場合は、冗長表現の削除、複文の単文化、抽象化の順に適用する。展開の場合は、詳細説明の追加、根拠の追加、具体例の追加の順に適用する。第四に、再度字数を計測し、適切な範囲に収まるまで調整を繰り返す。
例えば、「現代社会において、科学技術の発展は人々の生活を便利にしてきたが、同時に環境問題という深刻な課題を生み出してきた」(六十二字)を圧縮する場合を考える。冗長な「現代社会において」を削除し、「科学技術の発展は生活を便利にしたが、環境問題を生み出した」(三十五字)とできる。「人々の」「深刻な課題」などの修飾語も削除することで、さらに圧縮が可能である。また、「言語は思考を規定する」(十一字)を展開する場合を考える。「言語は思考を規定する。私たちは言語の範囲内でしか世界を把握できず、言語に存在しない概念は認識されにくい」(五十四字)のように、根拠と詳細を追加する。展開により、主張の内容がより明確になり、説得力が増す。さらに、「筆者は自由を重視している」(十四字)を展開する場合を考える。「筆者は人間にとって自由が本質的な価値であると考えている。ただし、自由には責任が伴い、他者の自由を侵害しない範囲でのみ行使されるべきだと主張している」(八十一字)のように、内容の詳細と条件を追加する。筆者の見解をより正確に表現するために、条件や限定を含める。最後に、「近代合理主義の限界として、第一に理性の過信がある。第二に感情や身体性の軽視がある。第三に文化や伝統への無関心がある」(五十八字)を圧縮する場合を考える。具体的な三点を抽象化し、「近代合理主義は理性を過信し、人間の非合理的側面や文化的背景を軽視した」(四十二字)とできる。具体的な列挙を上位概念で置き換えることで、字数を削減しつつ情報の本質を維持する。以上により、情報の圧縮と展開の技術を習得することで、様々な字数制限に柔軟に対応できる。
情報を階層化し、字数と情報量の対応を把握した後、実際に取捨選択を行う際には具体的な判断基準が必要である。取捨選択の判断は、機械的に行うことができず、設問の要求、情報の重要度、字数制限の三者を総合的に考慮して行われる。判断基準を明確に持つことで、迷いなく情報を選別できる。判断基準が曖昧なまま取捨選択を行うと、重要な情報を落としたり、不要な情報を含めたりする失敗が生じる。判断基準を意識的に適用することで、一貫性のある取捨選択が可能になる。判断基準の明確化は、答案作成の効率と精度を高めるために不可欠である。
取捨選択においては、まず削除可能な情報を特定することが有効である。削除可能な情報とは、答案から除外しても設問の要求を満たす情報である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、本文に書かれている情報は全て重要だと考え、削除することに抵抗を感じる傾向がある。しかし、設問の要求に対して直接関連しない情報は、答案に含める必要がない。削除可能な情報を特定することで、残すべき情報が明確になる。削除可能な情報の特定は、消去法的なアプローチであり、必須情報の確保を前提とする。削除可能な情報には典型的なカテゴリがある。第一に、設問の対象と直接関連しない情報である。設問が特定の概念について問う場合、その概念に言及しない情報は削除可能である。第二に、既に含めた情報の単なる言い換えである。同じ内容を異なる表現で繰り返す必要はない。第三に、具体例の羅列において最小限度を超える部分である。一つの根拠を例示するのに複数の具体例は通常不要である。第四に、補足的な背景情報である。本論とは直接関係しない歴史的経緯や他の論者への言及は、字数が限られる場合に削除可能である。これらのカテゴリを認識することで、削除候補を効率的に特定できる。
この基準から、削除可能な情報を特定する手順が導かれる。第一に、抽出した情報を設問の対象との関連性で分類し、関連の薄い情報を削除候補とする。第二に、類似した内容の情報がないかを確認し、重複がある場合はいずれかを削除候補とする。第三に、具体例が複数ある場合、最も説得力のあるものを残し、他を削除候補とする。第四に、背景情報や補足情報を削除候補とする。第五に、削除候補を除外した場合に設問の要求が満たされるかを確認し、満たされるならば削除を確定する。
例えば、「傍線部『文化資本』の意味を六十字以内で説明せよ」という設問に対して、「A:文化資本とは特定の文化的知識や能力のこと」「B:ブルデューが提唱した概念」「C:教育達成に影響を与える」「D:経済資本とは区別される」という情報がある場合を考える。A は定義であり必須、B は提唱者であり補足、C は効果であり間接関連、D は区別であり補足である。六十字という制限では、A を中心に構成し、B・C・D は削除候補となる。A のみで設問の要求(意味の説明)は満たされる。定義さえ示せば、設問の要求は満たされる。また、「筆者の環境問題への見解を八十字以内で述べよ」という設問に対して、「A:環境問題は経済活動の副産物である」「B:経済成長と環境保全は両立可能である」「C:技術革新がその鍵となる」「D:欧州では再生可能エネルギーが普及している」「E:日本でも太陽光発電が増加している」という情報がある場合を考える。A・B・C は筆者の見解の核心、D と E は具体例である。八十字という制限では、A・B・C を含め、D と E は削除候補となる。具体例の両方を削除しても見解の説明は可能である。具体例は見解の補強であり、見解の核心ではない。さらに、「傍線部について、筆者がそう考える理由を百字以内で述べよ」という設問に対して、「A:第一の理由は〜」「B:第二の理由は〜」「C:なお、この見解は〜の影響を受けている」という情報がある場合を考える。A と B は理由であり必須、C は背景情報であり補足である。百字という制限では、A と B を含め、C は削除候補となる。理由の説明に C は必須ではない。背景情報は理由とは異なるカテゴリの情報である。最後に、「筆者の『自由』の定義を五十字以内で述べよ」という設問に対して、「A:自由とは自己決定の能力である」「B:すなわち、他者に強制されずに行動を選択できること」「C:自由は近代以降に重視されるようになった」という情報がある場合を考える。A と B は同内容の異なる表現であり、いずれか一方で十分である。C は歴史的背景であり削除候補である。五十字という制限では、A または B のいずれかを含め、C は削除する。同内容の言い換えは、一方のみで足りる。以上により、削除可能な情報を特定することで、残すべき情報が明確になり、効率的な取捨選択が可能になる。
取捨選択においては、削除可能な情報を特定すると同時に、必須情報が確実に確保されているかを確認する必要がある。必須情報とは、それがなければ設問の要求を満たさない情報である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、削除可能な情報を削ることに集中するあまり、必須情報の確保がおろそかになる傾向がある。必須情報が欠落した答案は、たとえ字数を満たしていても不完全である。必須情報の確保は、取捨選択における最優先事項である。必須情報は設問の種類によって異なる。内容説明を求める設問では対象の定義または核心的特徴が必須であり、理由説明を求める設問では理由・根拠が必須であり、比較を求める設問では比較対象の両方に関する情報が必須であり、論証を求める設問では主張と根拠の両方が必須である。必須情報を特定し、それが答案に含まれているかを確認することで、不完全な答案を防ぐことができる。設問の操作指定から必須情報を特定することが、確保の第一歩である。
この原理から、必須情報を確保する手順が導かれる。第一に、設問の操作指定から必須情報の種類を特定する。第二に、本文から抽出した情報の中で、特定した種類に該当するものを必須情報とする。第三に、答案の下書きに必須情報が全て含まれているかを確認する。第四に、必須情報が欠落している場合は追加し、必要に応じて他の情報を削除して字数を調整する。
例えば、「傍線部『脱構築』とは何かを説明せよ」という設問の場合を考える。必須情報は「脱構築」の定義または核心的特徴である。答案に定義が含まれていなければ、設問の要求を満たさない。脱構築の例や効果を記述しても、定義がなければ不完全である。「とは何か」という問いは、定義を求めている。また、「筆者が伝統を重視する理由を述べよ」という設問の場合を考える。必須情報は伝統を重視する理由・根拠である。筆者の伝統観を詳しく説明しても、理由が示されなければ設問の要求を満たさない。「理由を述べよ」という操作指定は、根拠の記述を求めている。さらに、「『自由』と『平等』の関係について、筆者の見解を述べよ」という設問の場合を考える。必須情報は「自由」と「平等」の両方に言及する情報、およびその「関係」を示す情報である。一方のみの説明では設問の要求を満たさない。「関係について」という指定は、両概念への言及と、両者の関係性の記述を求めている。最後に、「筆者の主張を根拠を含めて論じよ」という設問の場合を考える。必須情報は主張と根拠の両方である。主張のみ、または根拠のみでは設問の要求を満たさない。両者が論理的に接続されている必要がある。「根拠を含めて」という条件は、根拠が必須情報であることを明示している。以上により、必須情報を確保することで、設問の要求を確実に満たす答案が構成できる。
情報の階層化と取捨選択の原則を理解した後、実際に情報を選択する際の具体的な手法を習得する必要がある。理論的な理解と実践的な技術は異なり、実際の問題に取り組む中で手法を身につけることが重要である。実践的手法の習得は、原則の内面化を促進する。情報選択の実践的手法は、本文の読解から答案作成までの一連の過程に適用される。各段階で適切な手法を用いることで、効率的かつ正確な情報選択が可能になる。実践的手法は、情報の抽出、整理、選択の各段階に対応している。
本文から情報を抽出する際には、マーキング(印付け)と整理の技法が有効である。マーキングとは、重要な情報に線を引いたり、記号を付けたりして視覚的に識別できるようにすることである。整理とは、マーキングした情報を設問の要求に応じて分類・配列することである。多くの受験生が陥りやすい誤解として、マーキングを漠然と行い、情報の種類を区別しない傾向がある。しかし、主張と根拠を同じ記号でマーキングすると、後で区別が困難になる。マーキングと整理は、情報抽出の効率と精度を高める技法である。マーキングは情報の種類に応じて異なる記号を用いることで効果が高まる。主張には二重線、根拠には一重線、具体例には波線、対比のキーワードには囲みなど、一貫した記号体系を用いる。整理は余白やメモ欄に情報を書き出し、相互関係を矢印で示すことで行う。設問ごとに必要な情報をグループ化することで、答案作成時に参照しやすくなる。一貫した記号体系を用いることで、読み返しの際に情報を迅速に特定できる。
この技法から、マーキングと整理を行う手順が導かれる。第一に、本文を通読しながら、主張・根拠・具体例・対比などに異なる記号でマーキングする。第二に、設問を確認し、設問に関連するマーキング箇所を特定する。第三に、特定した箇所の情報を余白に書き出し、相互関係を整理する。第四に、整理した情報から、設問の要求と字数制限に応じて必要な情報を選択する。
例えば、本文に「現代社会は効率化を過度に追求している(主張)。生産性の向上が至上命題とされ、時間は経済的資源として管理される(根拠)。休息さえも、次の労働のための回復として位置づけられる(具体例)」とある場合を考える。主張に二重線、根拠に一重線、具体例に波線を引く。設問が「筆者の批判内容」を問う場合、主張と根拠をグループ化して整理する。マーキングにより、各情報の機能が一目で分かる。また、本文に対比構造「近代的な自我は自律的・自己完結的であるとされるが、実際の自我は関係性の中で形成される」とある場合を考える。「近代的な自我」と「実際の自我」を囲み、対比関係を矢印で示す。設問が「筆者の自我観」を問う場合、「実際の自我」を中心に、「近代的な自我」との対比を用いて答案を構成する。対比構造をマーキングにより可視化することで、両項の関係が明確になる。さらに、本文に複数の根拠「言語相対性仮説を支持する根拠として、第一に色彩語彙の実験がある。第二に、時間概念の言語間差異がある。第三に、数詞を持たない言語話者の数認知の特殊性がある」とある場合を考える。各根拠に番号を付けてマーキングする。設問が「根拠を一つ挙げて」と求める場合は最も説得力のある一つを、「根拠を述べよ」と求める場合は複数を選択する。複数の根拠を番号付きでマーキングすることで、選択が容易になる。最後に、本文の異なる段落に分散する関連情報がある場合を考える。各段落のマーキング箇所を余白に書き出し、論理的な順序で配列する。書き出した情報間の関係を矢印で示し、答案の構成を計画する。分散した情報を書き出すことで、統合の見通しが立つ。以上により、マーキングと整理の技法を用いることで、本文から効率的に情報を抽出し、設問に応じた選択が可能になる。
情報を整理した後、設問の要求と字数制限に応じて優先順位を決定する必要がある。優先順位決定は、情報を並べ替えるだけでなく、どこで区切り線を引くか(どこまでを含め、どこからを除外するか)を判断する作業である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、優先順位を決めずに重要そうな情報を全て詰め込もうとする傾向がある。しかし、字数制限がある以上、どこかで線を引く必要があり、その判断を明確にすることが重要である。区切り線の位置を決定することが、取捨選択の核心である。優先順位決定は、複数の基準を順序立てて適用することで行う。第一に設問関連性、第二に本文内位置づけ、第三に論理的必要性の順に基準を適用し、情報を並べ替える。次に、字数制限から逆算して含めることができる情報量を推定し、その量に応じて区切り線を引く。区切り線より上の情報を答案に含め、下の情報を除外する。基準の適用順序を明確にすることで、一貫した判断が可能になる。
この手順から、優先順位を決定する具体的なステップが導かれる。第一に、整理した情報を設問関連性で並べ替え、直接関連・間接関連・低関連の順に配列する。第二に、同じ関連性カテゴリ内の情報を本文内位置づけで並べ替え、主張・根拠・具体例・補足の順に配列する。第三に、字数制限から含めることができる情報量を推定し、区切り線の位置を仮決定する。第四に、区切り線より上の情報で設問の要求が満たされるかを確認し、必要に応じて区切り線を調整する。
例えば、「傍線部について説明せよ(八十字以内)」という設問に対して、情報 A(定義:直接関連・主張)、情報 B(補足:直接関連・補足)、情報 C(具体例:間接関連・具体例)、情報 D(背景:低関連・補足)がある場合を考える。優先順位は A>B>C>D となる。八十字では約二つの命題を含められるため、区切り線は B と C の間に引く。答案には A と B を含め、C と D は除外する。定義と補足で設問の要求は満たされる。また、「筆者の主張とその根拠を述べよ(百二十字以内)」という設問に対して、情報 A(主張:直接関連・主張)、情報 B(根拠 1:直接関連・根拠)、情報 C(根拠 2:直接関連・根拠)、情報 D(具体例:間接関連・具体例)がある場合を考える。優先順位は A>B=C>D となる。設問が「主張とその根拠」を求めているため、A・B・C の全てが必須情報となる。百二十字で三つの命題を含めるため、区切り線は C と D の間に引く。D は除外する。主張と根拠の両方を含めることが設問の要求である。さらに、「二つの概念の違いを述べよ(六十字以内)」という設問に対して、情報 A(概念 X の特徴:直接関連)、情報 B(概念 Y の特徴:直接関連)、情報 C(X の具体例:間接関連)、情報 D(Y の具体例:間接関連)がある場合を考える。A と B は両方とも必須情報であり、優先順位は A=B>C=D となる。六十字では約二つの命題を含められるため、区切り線は B と C の間に引く。A と B を対比的に記述し、C と D は除外する。両概念への言及が設問の要求である。最後に、「筆者の議論を要約せよ(二百字以内)」という設問に対して、情報 A(結論:直接関連・主張)、情報 B(第一の根拠:直接関連・根拠)、情報 C(第二の根拠:直接関連・根拠)、情報 D(具体例:間接関連・具体例)、情報 E(背景:低関連・補足)がある場合を考える。優先順位は A>B=C>D>E となる。二百字では四つから五つの命題を含められるため、区切り線は D と E の間に引く。A・B・C・D を含め、E は除外する。要約では結論と根拠を中心に構成する。以上により、優先順位決定の手順を適用することで、設問の要求と字数制限に応じた適切な情報選択が可能になる。
情報を選択した後、選択した情報を字数制限内で適切に配分する必要がある。情報配分とは、各情報にどの程度の字数を割り当てるかを決定することである。全ての情報を均等に配分するのではなく、重要度に応じて配分を調整することで、答案の焦点が明確になる。情報配分は、答案の説得力と明晰性を高めるための技術である。情報配分の調整は、答案の構成を計画する際に行う。選択した情報の中でも、設問の核心に関わる情報により多くの字数を配分し、補足的な情報には少ない字数を配分する。適切な配分により、読み手に対して何が最も重要かが伝わる答案となる。配分の調整は、情報の重要度を反映させる作業である。
選択した情報への字数配分は、情報の重要度に比例させるのが原則である。最も重要な情報には最も多くの字数を配分し、補足的な情報には最小限の字数を配分する。多くの受験生が陥りやすい誤解として、全ての情報を均等に扱い、結果として核心的な情報の説明が不十分になる傾向がある。これにより、答案の焦点が明確になり、採点者に対して理解を示すことができる。重要度に応じた配分は、答案の説得力を高める。字数配分の目安として、必須情報には総字数の六割から七割を、補足情報には三割から四割を配分する。必須情報が複数ある場合は、設問の操作指定に応じて配分を調整する。たとえば「理由を述べよ」という設問では理由により多く配分し、「内容を説明せよ」という設問では内容により多く配分する。設問の操作指定は、配分の方針を決定する手がかりとなる。
この原則から、字数配分を計画する手順が導かれる。第一に、選択した情報を必須情報と補足情報に分類する。第二に、総字数の六割から七割を必須情報に配分すると決定する。第三に、必須情報が複数ある場合、設問の操作指定に応じて各情報への配分を決定する。第四に、残りの字数を補足情報に配分する。第五に、配分に従って下書きを作成し、実際の字数を確認して調整する。
例えば、「傍線部の意味を、筆者の論旨を踏まえて百字以内で説明せよ」という設問において、情報 A(傍線部の意味:必須)と情報 B(論旨との関連:必須に準じる)を含める場合を考える。A に約六十字、B に約四十字を配分する。A を詳しく説明した上で、B によって論旨との関連を示す構成となる。傍線部の意味が中心であり、論旨との関連は補足的な位置づけとなる。また、「筆者が批判する立場とその理由を八十字以内で述べよ」という設問において、情報 A(批判対象:必須)と情報 B(理由:必須)を含める場合を考える。設問が「立場とその理由」を求めているため、両者に均等に配分する。A に約四十字、B に約四十字を配分する。「立場とその理由」という並列的な指定は、均等な配分を求めている。さらに、「傍線部について、対比される概念との関係を明らかにしながら百二十字以内で説明せよ」という設問において、情報 A(傍線部の内容:必須)、情報 B(対比概念:必須)、情報 C(両者の関係:必須)を含める場合を考える。C は設問で特に強調されているため、最も多く配分する。A に約三十字、B に約三十字、C に約六十字を配分する。「関係を明らかにしながら」という条件は、関係の説明を重視することを示している。最後に、「筆者の主張を、根拠を含めて百五十字以内で論じよ」という設問において、情報 A(主張:必須)、情報 B(根拠 1:必須)、情報 C(根拠 2:補足)を含める場合を考える。A に約五十字、B に約六十字、C に約四十字を配分する。主張と主要な根拠を中心に構成し、第二の根拠は簡潔に示す。「論じよ」という操作指定は、主張と根拠の論証的な構成を求めている。以上により、重要度に応じた字数配分を行うことで、答案の焦点が明確になり、設問の要求に的確に応える構成が可能になる。
答案は複数の構成要素(主張・根拠・具体例など)から成り、これらのバランスを調整することも重要である。特定の要素が過度に詳しく、他の要素が不足すると、答案全体としてのバランスが崩れる。多くの受験生が陥りやすい誤解として、得意な部分や書きやすい部分を詳しく書き、他の部分が不十分になる傾向がある。設問の要求に応じた適切なバランスを実現することで、完成度の高い答案となる。バランスの調整は、答案の完成度を高めるための仕上げの作業である。構成要素間のバランスは、設問の種類によって異なる。内容説明を求める設問では、対象の定義・特徴の記述が中心となり、根拠や具体例は補助的な位置づけとなる。理由説明を求める設問では、根拠の記述が中心となり、結論の再述は最小限に抑える。論証を求める設問では、主張と根拠のバランスが重要となり、両者が論理的に接続されている必要がある。設問の種類に応じたバランスを意識することで、的確な答案が作成できる。
この原則から、構成要素間のバランスを調整する手順が導かれる。第一に、設問の操作指定を確認し、中心となる構成要素を特定する。第二に、中心的な要素に最も多くの字数を配分することを決定する。第三に、下書きを作成し、各要素の実際の字数を確認する。第四に、バランスが崩れている場合は、過多な要素を圧縮し、不足している要素を展開する。
例えば、「傍線部『差延』の意味を説明せよ」という設問の場合を考える。内容説明が求められているため、意味の記述が中心となる。具体例や使用場面は補助的な位置づけであり、意味の記述に不足があれば優先して修正する。意味の説明が答案の核心である。また、「筆者が『民主主義の危機』と述べる理由を説明せよ」という設問の場合を考える。理由説明が求められているため、根拠の記述が中心となる。「民主主義の危機」自体の説明は最小限に抑え、危機と言える根拠を詳述する。理由の説明が答案の核心である。さらに、「筆者の主張を根拠を含めて論じよ」という設問の場合を考える。論証が求められているため、主張と根拠のバランスが重要である。主張のみが詳しく根拠が不足している場合は、根拠を追加する。根拠のみが詳しく主張が不明確な場合は、主張を明示する。主張と根拠の両方が答案の核心である。最後に、「二つの概念を対比して説明せよ」という設問の場合を考える。対比が求められているため、二つの概念への言及がバランスしている必要がある。一方のみが詳しく他方が不足している場合は、両者の記述量を均等に近づける。両概念への均等な言及が答案の要件である。以上により、構成要素間のバランスを調整することで、設問の要求に的確に応える答案が構成できる。
情報の階層化、取捨選択の判断基準、情報配分の調整を理解した後、これらを統合して実際の答案設計に適用する技術を習得する必要がある。字数別答案設計とは、与えられた字数制限に応じて、含めるべき情報と表現方法を計画的に決定することである。同一の設問に対しても、字数制限によって最適な答案構成は異なる。字数別答案設計は、情報の選択と表現の調整を同時に行う総合的な技術である。字数制限を確認し、含められる情報量を推定し、優先順位に従って情報を選択し、選択した情報を字数内に収める表現で記述するという一連の過程を、計画的に実行する。この技術を習得することで、様々な字数制限に柔軟に対応できるようになる。
三十字から六十字程度の短字数答案では、情報を極限まで圧縮し、核心部分のみを記述する必要がある。多くの受験生が陥りやすい誤解として、短い字数でも複数の論点を含めようとして、各論点の説明が不十分になる傾向がある。短字数答案では、一つの核心的命題を明確に示すことが最優先であり、補足的な情報は含めない。表現も最も簡潔な形式を選択し、冗長な修飾語や回りくどい言い回しを排除する。短字数答案の設計においては、設問の要求の核心を特定し、その核心に対応する一つの情報のみを選択することが重要である。複数の情報が必要に見える場合でも、最も重要な一つに絞り込む判断が求められる。また、表現においては、主述の関係を明確にし、不要な語句を徹底的に削除する。短字数答案は、情報選択の精度と表現の簡潔さが同時に試される。
この要請から、短字数答案を設計する手順が導かれる。第一に、設問の要求の核心を特定する。「何を最も答えるべきか」を明確にする。第二に、核心に対応する一つの情報を選択する。複数の候補がある場合は、設問への関連性が最も高いものを選ぶ。第三に、選択した情報を最も簡潔な表現で記述する。「〜とは〜である」「〜だからである」などの基本形式を用いる。第四に、字数を確認し、超過していれば表現を圧縮する。
例えば、「傍線部『アイロニー』の意味を四十字以内で説明せよ」という設問の場合を考える。核心は「アイロニー」の定義である。「アイロニーとは、表面上の意味と真意が異なる表現であり、批判や風刺の効果を持つ」(四十字)のように、定義の核心部分のみを記述する。具体例や歴史的背景は含めない。また、「筆者が『言語は透明ではない』と述べる理由を五十字以内で述べよ」という設問の場合を考える。核心は理由である。「言語はすでに特定の世界解釈を含んでおり、中立的な媒体として機能しないからである」(四十五字)のように、理由の核心部分のみを記述する。主張の再述は最小限にする。さらに、「傍線部『この逆説』の内容を三十字以内で述べよ」という設問の場合を考える。核心は指示内容である。「自由を追求するほど不自由になるという事態」(二十一字)のように、指示内容のみを簡潔に記述する。背景説明は含めない。最後に、「筆者の主張を五十字以内で述べよ」という設問の場合を考える。核心は主張である。「筆者は、効率化の過度な追求が人間性を損なうと批判し、余剰の価値を重視することを主張する」(四十九字)のように、主張の核心部分を簡潔に記述する。根拠は含めない。以上により、短字数答案では核心部分のみに焦点を絞り、最も簡潔な表現で記述することで、字数制限内に収めることができる。
八十字から百二十字程度の中字数答案では、二つから三つの命題を含め、それらを論理的に接続することができる。多くの受験生が陥りやすい誤解として、中字数を短字数の延長と考え、一つの命題を詳しく説明しようとする傾向がある。しかし、中字数では複数の命題を含めることが期待されており、単一の命題の詳述は冗長な印象を与える。中字数答案は、主張と根拠、または定義と補足説明など、複数の要素を組み合わせる構成が適切である。表現においては、接続表現を用いて論理関係を明示しながら、各命題を簡潔に記述する。中字数答案の設計においては、設問の要求に応じて二つから三つの情報を選択し、それらを論理的な順序で配置することが重要である。情報間の論理関係(因果、対比、補足など)を明確にし、適切な接続表現を用いることで、一貫性のある答案となる。また、各情報への字数配分を意識し、重要な情報により多くの字数を割り当てる。
この要請から、中字数答案を設計する手順が導かれる。第一に、設問の要求を分析し、必要な情報の種類と数を特定する。第二に、必要な情報を優先順位に従って選択する。二つから三つの情報を選ぶ。第三に、情報間の論理関係を確認し、配置順序を決定する。第四に、論理関係に応じた接続表現を選択する。第五に、各情報への字数配分を決定し、下書きを作成する。
例えば、「傍線部『文化相対主義』の内容を、その問題点を含めて百字以内で説明せよ」という設問の場合を考える。情報 A として定義、情報 B として問題点を選択する。「文化相対主義とは、文化の優劣を判断せず各文化を固有の価値体系として尊重する立場である。しかし、この立場は人権侵害などの普遍的批判を困難にするという問題を抱える」(九十字)のように構成する。また、「筆者が『近代的自我』を批判する理由を八十字以内で述べよ」という設問の場合を考える。情報 A として批判の理由、情報 B として理由の補足を選択する。「筆者は、近代的自我が自律的で自己完結的な存在として想定されている点を批判する。実際の自我は他者との関係の中で形成されるからである」(七十八字)のように構成する。さらに、「傍線部について、筆者の見解を百二十字以内で論じよ」という設問の場合を考える。情報 A として見解、情報 B として根拠、情報 C として帰結を選択する。見解に約五十字、根拠に約五十字、帰結に約二十字を配分し、「筆者は〜と考える。〜だからである。したがって〜」という構成で論じる。最後に、「二つの概念の違いを九十字以内で述べよ」という設問の場合を考える。情報 A として概念 X の特徴、情報 B として概念 Y の特徴を選択する。各概念に約四十五字を配分し、「X は〜であるのに対し、Y は〜である」という対比構成で記述する。以上により、中字数答案では複数の情報を論理的に接続し、設問の要求に応じた構成で記述することで、充実した答案を作成できる。
体系的接続
情報を選択し配分を決定した後、次に行うべきことは選択した情報を実際の文章として表現することである。同一の情報であっても、表現方法によって必要な字数は大きく異なる。字数制限に応じて表現を調整する技術を習得することで、選択した情報を過不足なく答案に収めることができる。表現の調整は単なる字数合わせではなく、答案の明晰性と説得力を高めるための技術でもある。冗長な表現を削除することで論旨が明確になり、適切な展開を加えることで理解が深まる。論述層では、冗長表現の削減、簡潔な言い換え、情報の圧縮と展開といった表現技術を体系的に習得する。これらの技術は、字数制限への対応だけでなく、明晰な文章を書くための汎用的な能力として機能する。
答案において字数を消費しながら情報量に貢献しない表現を冗長表現と呼ぶ。冗長表現を削減することで、同一の字数でより多くの情報を含めることができ、また答案の明晰性も向上する。冗長表現を識別し削減する技術は、字数制限への対応において最も基本的かつ効果的である。冗長表現の削減は、情報の内容を変えずに字数のみを削減する操作であるため、答案の正確性を損なうことなく字数を調整できる。冗長表現には典型的なパターンがあり、これらを認識することで効率的な削減が可能になる。冗長表現のパターンを内面化することで、下書きの段階から冗長を避けた文章が書けるようになる。
冗長表現にはいくつかの典型的なパターンがある。これらのパターンを認識することで、自分の文章に含まれる冗長表現を識別しやすくなる。多くの受験生が陥りやすい誤解として、丁寧に書こうとするあまり冗長な表現を多用する傾向がある。しかし、記述答案では簡潔さが求められており、冗長な表現は減点の対象となりうる。パターンの認識は、冗長表現の削減における第一歩である。第一のパターンは重複表現である。同じ意味の語句を繰り返し用いる表現であり、「まず最初に」「いまだに未解決」「約およそ」「後で後悔する」「各々それぞれ」などが該当する。重複表現は、一方の語句を削除しても意味が変わらない。第二のパターンは過剰修飾である。意味を限定しない修飾語を付加する表現であり、「基本的に」「一般的に」「ある意味では」「いわゆる」「ある種の」などが該当する。過剰修飾は、削除しても文の意味が変わらないか、むしろ明確になる。第三のパターンは回りくどい言い回しである。直接的に言えば短く済む内容を迂遠に表現するものであり、「〜ということができる」「〜であると言える」「〜であるということが指摘できる」「〜という側面がある」などが該当する。回りくどい言い回しは、直接的な表現に置き換えることで大幅に字数を削減できる。第四のパターンは不必要な前置きである。本論に入る前の導入的な表現であり、「ここで注目すべきは」「重要なのは」「言うまでもなく」「周知のように」などが該当する。不必要な前置きは、削除して本論から始めることで字数を削減できる。
この分類から、冗長表現を削減する手順が導かれる。第一に、下書きを読み直し、重複表現がないかを確認する。同じ語句や同じ意味の表現が繰り返されている場合、一方を削除する。第二に、修飾語を点検し、削除しても意味が変わらないものを削除する。第三に、述語表現を点検し、「〜ということができる」「〜であると考えられる」などを「〜である」に置き換える。第四に、文頭の前置きを点検し、本論に直接入れる場合は前置きを削除する。
例えば、「筆者は現代社会の問題点として、まず最初に効率化の過度な追求を挙げている」(三十七字)という文を修正する。「まず最初に」は重複表現である。「筆者は現代社会の問題点として効率化の過度な追求を挙げる」(三十一字)に修正する。六字削減。「まず」と「最初に」は同じ意味であり、一方で足りる。また、「基本的に、言語は思考を規定するものであると言うことができる」(三十二字)という文を修正する。「基本的に」は過剰修飾、「〜であると言うことができる」は回りくどい表現である。「言語は思考を規定する」(十二字)に修正する。二十字削減。修飾語と回りくどい言い回しの両方を削除することで、大幅な字数削減が可能になる。さらに、「ここで重要なのは、筆者が自由と責任の関係について独自の見解を示しているという点である」(四十四字)という文を修正する。「ここで重要なのは」と「〜という点である」は冗長である。「筆者は自由と責任の関係について独自の見解を示す」(二十八字)に修正する。十六字削減。前置きと結びの両方を削除することで、簡潔な表現になる。最後に、「筆者の主張をまとめるならば、結局のところ、現代人は真の自由を獲得していないということになるのである」(五十二字)という文を修正する。「筆者の主張をまとめるならば」「結局のところ」「〜ということになるのである」は冗長である。「筆者は、現代人は真の自由を獲得していないと主張する」(三十一字)に修正する。二十一字削減。複数の冗長表現を同時に削除することで、字数を大幅に削減できる。以上により、冗長表現のパターンを認識し削減することで、同一の情報をより少ない字数で表現できる。
冗長表現の削減は、単に語句を削除するだけでなく、文全体を再構成することでより効果的に行える。文の構造を見直し、より簡潔な構造に置き換えることで、大幅な字数削減が可能になる場合がある。多くの受験生が陥りやすい誤解として、個別の語句を少しずつ削ることに終始し、文全体の再構成に至らない傾向がある。文全体の再構成は、語句単位の削減よりも大きな効果をもたらすことが多い。効果的な削減のためには、何が情報として必要で、何が表現上の装飾であるかを区別する必要がある。情報として必要な部分は残し、表現上の装飾を削除または簡略化する。また、複数の文に分かれている内容を一文にまとめることで、接続表現や主語の繰り返しを削減できる場合がある。情報と装飾の区別は、効果的な削減の鍵である。
この原則から、効果的な削減を行う手順が導かれる。第一に、下書きの各文について、伝えるべき情報(命題)を抽出する。第二に、抽出した命題を表現するのに最小限必要な語句を特定する。第三に、特定した語句のみを用いて文を再構成する。第四に、複数の文が同一の主語を持つ場合、一文にまとめることを検討する。
例えば、「筆者は、言語というものは、単なるコミュニケーションの道具であるにとどまらず、私たちの思考そのものを形作る重要な役割を担っているのだと主張している」(七十五字)という文を修正する。伝えるべき命題は「言語は思考を形作る」である。「筆者は言語が思考を形作ると主張する」(二十一字)に再構成する。五十四字削減。命題の核心部分のみを残すことで、大幅な字数削減が可能になる。また、「現代社会においては、科学技術の発展によって様々な問題が解決される一方で、新たな問題が生み出されることも事実である。たとえば、情報技術の発達は利便性を向上させたが、プライバシーの侵害という新たな課題をもたらした」(百八字)という文を修正する。二文を一文にまとめ、具体例を省略する。「科学技術の発展は問題を解決する一方で新たな問題を生む」(三十二字)に再構成する。七十六字削減。具体例を省略し、主張の核心のみを残すことで、大幅な圧縮が可能になる。さらに、「筆者の考えによれば、自由とは、他者からの干渉を受けないという消極的な意味においてのみならず、自己の可能性を実現するという積極的な意味においても理解されるべきものである」(八十六字)という文を修正する。「筆者の考えによれば」「〜されるべきものである」は削減可能である。「自由とは他者からの非干渉だけでなく自己実現をも意味する」(三十五字)に再構成する。五十一字削減。対比構造を維持しながら、冗長な表現を削除することで簡潔になる。最後に、「このような筆者の主張は、従来の考え方とは異なる独自の視点を提示していると言える。従来の考え方では、理性と感情は対立するものとして捉えられてきたが、筆者は両者が相互に補完し合う関係にあることを指摘している」(百七字)という文を修正する。「このような筆者の主張は」「〜と言える」を削減し、対比構造を簡潔にする。「従来は理性と感情を対立と捉えたが、筆者は両者の相互補完を指摘する」(四十三字)に再構成する。六十四字削減。対比の要点のみを残すことで、論旨が明確になる。以上により、文全体を再構成することで、より効果的な字数削減が可能になる。
冗長表現の削減に加えて、同一の内容をより少ない字数で表現する言い換えの技術も重要である。言い換えとは、意味を変えずに異なる表現で置き換えることである。多くの受験生が陥りやすい誤解として、本文の表現をそのまま用いることが正確だと考える傾向がある。しかし、本文の表現が冗長な場合、簡潔な言い換えによって字数を削減しつつ情報を維持できる。より簡潔な言い換えを用いることで、字数を削減しつつ情報を維持できる。言い換えは、表現のバリエーションを持つことで可能になる技術である。簡潔な言い換えには、語彙の選択と文構造の変更の二つの側面がある。語彙の選択では、より短い語句で同じ意味を表現できる語彙を選ぶ。文構造の変更では、より少ない語句で同じ関係を表現できる構造に置き換える。両者を組み合わせることで、効果的な言い換えが可能になる。
語彙レベルの言い換えとは、長い表現をより短い語句で置き換えることである。多くの場合、複数の語からなる表現を一語で、または長い語を短い語で置き換えることができる。語彙の選択肢を多く持つことで、柔軟な言い換えが可能になる。語彙レベルの言い換えには、和語と漢語の使い分け、慣用表現の置き換え、抽象度の調整などの方法がある。和語は一般に漢語より長くなる傾向があり、適切な漢語に置き換えることで字数を削減できる場合がある。慣用表現は個別の語に置き換えることで短くなる場合がある。抽象度を上げることで、具体的な表現を包括的な語で置き換えられる場合がある。これらの方法を状況に応じて使い分けることで、効果的な言い換えができる。
この技術から、語彙レベルの言い換えを行う手順が導かれる。第一に、長い表現を特定し、同じ意味を持つより短い語句がないかを検討する。第二に、和語を漢語に置き換えることで短くなる場合は置き換える。第三に、慣用表現を分析し、核心的な意味を表す語に置き換える。第四に、複数の具体例を抽象的な上位概念で置き換えることを検討する。
例えば、「考えることができない」(十字)という表現を言い換える。「不可能」(三字)または「できない」(四字)に置き換える。七字または六字削減。否定の助動詞表現を漢語に置き換えることで、大幅な字数削減が可能になる。また、「様々な」(四字)という表現を言い換える。「諸」(一字)に置き換える。「様々な問題」(六字)は「諸問題」(四字)となる。二字削減。「様々な」という和語を「諸」という漢語に置き換えることで、簡潔になる。さらに、「〜することによって」(八字)という表現を言い換える。「〜により」(三字)または「〜で」(二字)に置き換える。五字または六字削減。手段を表す表現を短い形式に置き換えることで、字数を削減できる。最後に、「電話、メール、SNS などのコミュニケーション手段」(二十三字)という表現を言い換える。「通信手段」(四字)に置き換える。具体例を抽象化することで十九字削減。具体例の列挙を上位概念で置き換えることで、大幅な圧縮が可能になる。以上により、語彙レベルの言い換えを用いることで、表現を簡潔にし字数を削減できる。
構文レベルの言い換えとは、文の構造を変更することで同一の内容をより少ない字数で表現することである。日本語には同一の意味を表現する複数の構文があり、より簡潔な構文を選択することで字数を削減できる。構文の選択肢を持つことで、柔軟な表現調整が可能になる。構文レベルの言い換えには、能動態と受動態の変換、名詞化と動詞化の変換、従属節と主節の関係の変更などがある。一般に、能動態は受動態より短く、動詞表現は名詞化表現より短い傾向がある。ただし、文脈によっては受動態や名詞化が適切な場合もあり、字数削減のみを目的とした変換が不自然になる場合は避ける。自然さを保ちながら簡潔な構文を選択することが重要である。
この技術から、構文レベルの言い換えを行う手順が導かれる。第一に、受動態の文を能動態に変換できないかを検討する。第二に、名詞化表現を動詞表現に変換できないかを検討する。第三に、従属節を句に簡略化できないかを検討する。第四に、変換後の文が自然であるかを確認し、不自然な場合は元に戻す。
例えば、「この問題については筆者によって詳しく分析がなされている」(二十九字)という文を言い換える。受動態を能動態に変換し、名詞化を動詞化する。「筆者はこの問題を詳しく分析している」(二十字)に置き換える。九字削減。受動態から能動態への変換と、名詞化から動詞化への変換を組み合わせることで、効果的な字数削減が可能になる。また、「言語が思考を規定するということを筆者は主張している」(二十六字)という文を言い換える。名詞節「〜ということ」を省略する。「筆者は言語が思考を規定すると主張する」(二十二字)に置き換える。四字削減。「〜ということ」という名詞化表現を省略することで、簡潔になる。さらに、「科学技術が発展することによって、生活は便利になったが、同時に環境問題が深刻化した」(四十三字)という文を言い換える。従属節を句に簡略化する。「科学技術の発展により生活は便利になったが、環境問題も深刻化した」(三十八字)に置き換える。五字削減。「〜することによって」を「〜により」に簡略化することで、字数を削減できる。最後に、「筆者が指摘しているように、現代社会においては個人の自由が過度に強調される傾向がある」(四十四字)という文を言い換える。「筆者が指摘しているように」を省略し、主節を簡略化する。「筆者によれば現代社会は個人の自由を過度に強調する」(三十字)に置き換える。十四字削減。導入句を簡略化し、主節を能動態に変換することで、大幅な字数削減が可能になる。以上により、構文レベルの言い換えを用いることで、文の構造を変更して字数を削減できる。
冗長表現の削減と言い換えによる字数削減には限界がある。それ以上の字数削減が必要な場合、情報そのものを圧縮する技法を用いる。情報の圧縮とは、複数の情報を統合して表現したり、詳細な情報を抽象化して表現したりすることである。情報の圧縮は、表現の圧縮とは異なり、情報量自体を調整する操作である。情報の圧縮は表現の圧縮とは異なり、情報量自体を減少させる操作である。ただし、設問が求める核心的な情報は維持しながら、補足的な情報を省略または統合することで、必要な情報量を保ちつつ字数を削減できる。圧縮においては、何を残し何を省略するかの判断が重要である。
複数の関連する情報を一つの表現にまとめることで、字数を削減しつつ情報の本質を維持できる。統合は、共通する要素を抽出して一般化する操作である。多くの受験生が陥りやすい誤解として、複数の情報を全て個別に記述しようとし、結果として字数が超過する傾向がある。統合により、情報群の全体像を簡潔に示すことができる。複数情報の統合は、具体例の列挙を上位概念で置き換える場合、複数の根拠を要約的に示す場合、複数の特徴を包括的に表現する場合などに用いられる。統合により個々の情報の詳細は失われるが、情報群の全体像は維持される。字数が限られる場合、詳細より全体像を示すことが優先される。統合は、字数制限が厳しい場合に特に有効な技法である。
この技法から、複数情報を統合する手順が導かれる。第一に、関連する複数の情報を特定し、それらに共通する要素を抽出する。第二に、共通要素を表す上位概念または包括的表現を選択する。第三に、個別の情報を上位概念で置き換えた文を作成する。第四に、統合後の文が設問の要求を満たすかを確認する。
例えば、「筆者は効率化の追求、利益至上主義、時間の商品化を批判している」(三十二字)という文を統合する。三つの批判対象に共通する要素は「経済的価値の過度な重視」である。「筆者は経済的価値の過度な重視を批判する」(二十三字)に統合する。九字削減。三つの具体的な批判対象を、共通する上位概念で置き換えることで、簡潔な表現になる。また、「言語相対性仮説の根拠として、色彩語彙の実験、時間概念の言語差、数詞を持たない言語話者の認知特性がある」(五十二字)という文を統合する。三つの根拠を統合する。「言語相対性仮説は言語と認知の相関を示す複数の実証研究に基づく」(三十八字)に統合する。十四字削減。具体的な研究を「複数の実証研究」という上位概念で置き換えることで、簡潔になる。さらに、「筆者は、読書は批判的思考力を養い、他者への共感を深め、自己理解を促進すると主張する」(四十三字)という文を統合する。三つの効果を統合する。「筆者は読書が人間形成に不可欠であると主張する」(二十六字)に統合する。十七字削減。三つの具体的な効果を「人間形成」という上位概念で置き換えることで、大幅な圧縮が可能になる。最後に、「自由、平等、博愛という近代の理念」(十七字)という表現を統合する。「近代の三大理念」(八字)に統合する。九字削減。具体的な理念の列挙を、それらを包括する表現で置き換えることで、簡潔になる。以上により、複数情報を統合することで、情報の本質を維持しながら字数を大幅に削減できる。
個別の情報を抽象度の高い表現に置き換えることで、情報を圧縮できる。抽象化とは、具体的な事例や詳細な説明を、より一般的・包括的な表現で置き換えることである。抽象化は、情報の本質を維持しながら字数を削減する有効な技法である。抽象化は情報の圧縮に有効であるが、過度な抽象化は情報の空洞化を招く。設問が具体例を求めている場合や、抽象的な説明では答案として不十分な場合は、抽象化を控える必要がある。抽象化の適切な程度は、設問の要求と字数制限のバランスによって決まる。抽象化の程度は、設問の要求を満たす範囲で調整する。
この技法から、抽象化を適用する手順が導かれる。第一に、具体的な記述を特定し、それが表す一般的な概念を把握する。第二に、一般的な概念を表す語句を選択する。第三に、具体的記述を一般的語句で置き換える。第四に、抽象化後の表現が設問の要求を満たすかを確認し、不足がある場合は具体性を補う。
例えば、「電子メール、SNS、ビデオ通話などのデジタル技術」(二十五字)という表現を抽象化する。「デジタルコミュニケーション技術」(十三字)に抽象化する。十二字削減。具体的な技術の列挙を、それらを包括する概念で置き換えることで、簡潔になる。また、「ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどの古代ギリシア哲学者」(三十二字)という表現を抽象化する。「古代ギリシア哲学者たち」(十二字)に抽象化する。二十字削減。個人名の列挙を、それらを包括する表現で置き換えることで、大幅な圧縮が可能になる。さらに、「工場の煙による大気汚染、工業排水による水質汚濁、産業廃棄物による土壌汚染」(三十九字)という表現を抽象化する。「産業活動に起因する環境汚染」(十四字)に抽象化する。二十五字削減。具体的な汚染の種類を、それらを包括する概念で置き換えることで、大幅な圧縮が可能になる。最後に、「投票に行かない、政治に関心を持たない、政策を理解しようとしない」(三十三字)という表現を抽象化する。「政治的無関心」(七字)に抽象化する。二十六字削減。具体的な行動の列挙を、それらを包括する概念で置き換えることで、大幅な圧縮が可能になる。以上により、抽象化を用いることで、詳細な情報を簡潔に表現し、字数を削減できる。
字数制限に対して字数が不足する場合、情報を展開して字数を増やす必要がある。情報の展開とは、圧縮された情報を詳細に説明したり、抽象的な情報を具体化したりすることである。展開は、圧縮の逆の操作であり、字数が余る場合に用いる技法である。情報の展開は単なる字数稼ぎではなく、答案の説得力と明晰性を高めるための技術である。適切な展開により、読み手にとって理解しやすい答案となる。ただし、不必要な情報の付加は冗長となるため、設問の要求に応じた展開が必要である。展開は、答案の質を高める機会として捉える。
抽象的な表現を具体的な内容で補足することで、情報を展開できる。具体化とは、一般的・包括的な表現を、個別の事例や詳細な説明で敷衍することである。具体化は、抽象化の逆の操作であり、情報を詳細化する技法である。具体化は、抽象的な主張を理解しやすくする効果がある。また、具体例を示すことで主張の妥当性を示す論拠となる場合もある。字数が余る場合に適切な具体化を行うことで、答案の質を高めることができる。具体化は、説得力を高める効果的な技法である。
この技法から、具体化を適用する手順が導かれる。第一に、抽象的な表現を特定する。第二に、その表現が指す具体的な事例や内容を本文から抽出する。第三に、抽象的表現に続けて具体的内容を記述する。第四に、具体化が設問の要求に合致しているかを確認する。
例えば、「環境問題」(四字)という表現を具体化する。「大気汚染や水質汚濁などの環境問題」(十七字)に具体化する。十三字増加。抽象的な概念を具体例で補足することで、内容が明確になる。また、「筆者は科学技術を批判する」(十四字)という表現を具体化する。「筆者は科学技術が人間の自律性を損なうとして批判する」(二十八字)に具体化する。十四字増加。批判の理由を補足することで、批判の内容が明確になる。さらに、「言語は思考を規定する」(十一字)という表現を具体化する。「言語は、その語彙体系や文法構造を通じて話者の思考様式を規定する」(三十五字)に具体化する。二十四字増加。規定の仕組みを補足することで、主張の内容が明確になる。最後に、「近代の問題点」(七字)という表現を具体化する。「近代における合理性の過信と人間性の軽視という問題点」(二十八字)に具体化する。二十一字増加。問題点の内容を具体的に示すことで、主張が明確になる。以上により、具体化を用いることで、抽象的な表現を詳細に展開し、字数を増やすとともに答案の明晰性を高められる。
情報間の論理関係を明示的に記述することで、情報を展開できる。論理関係の明示とは、因果関係、対比関係、条件関係などを接続表現や説明句を用いて示すことである。論理関係の明示は、情報間のつながりを明確にする技法である。論理関係が暗黙のままでは、読み手が関係を誤解する可能性がある。論理関係を明示することで、答案の論理的な明晰性が向上する。また、論理関係の明示は採点者に対して理解の深さを示す効果もある。明示的な論理関係は、答案の説得力を高める。
この技法から、論理関係を明示する手順が導かれる。第一に、情報間の論理関係を把握する。因果、対比、条件、並列などのいずれかを特定する。第二に、論理関係を示す接続表現を選択する。第三に、接続表現を用いて情報を接続する。第四に、必要に応じて論理関係を説明する句を追加する。
例えば、「効率化が進む。時間に追われる」(十五字)という表現を展開する。因果関係を明示する。「効率化が進むことで、人々は時間に追われるようになる」(二十八字)に展開する。十三字増加。因果関係を明示することで、二つの事態のつながりが明確になる。また、「近代的自我は自律的。関係的自我は相互依存的」(二十三字)という表現を展開する。対比関係を明示する。「近代的自我が自律的で自己完結的であるのに対し、関係的自我は他者との相互依存の中で形成される」(四十九字)に展開する。二十六字増加。対比関係を明示することで、二つの概念の違いが明確になる。さらに、「言語が異なれば思考も異なる」(十五字)という表現を展開する。条件関係を明示する。「言語相対性仮説によれば、使用する言語が異なれば、それに応じて思考様式も異なることになる」(四十五字)に展開する。三十字増加。条件関係を明示し、仮説の名称を補足することで、主張の文脈が明確になる。最後に、「読書は思考力を養う。共感力を高める」(十八字)という表現を展開する。並列関係を明示し、共通点を示す。「読書は批判的思考力を養うとともに他者への共感力を高め、これらはいずれも人間形成に不可欠な能力である」(五十二字)に展開する。三十四字増加。並列関係を明示し、共通点を補足することで、読書の意義が明確になる。以上により、論理関係を明示することで、情報間のつながりを明確にし、答案の論理的明晰性を高めながら字数を増やせる。
冗長表現の削減、言い換え、圧縮、展開の各技法を習得した後、これらを実際の答案作成において適用する方法を習得する必要がある。表現調整は答案作成の最終段階で行われ、下書きを字数制限に合わせて調整する作業である。表現調整は、答案を完成させるための仕上げの作業である。表現調整は一度で完了するとは限らず、複数回の修正を経て最終的な答案が完成する。各技法を適切な順序で適用し、字数と内容のバランスを最適化することが目標となる。試行錯誤を通じて、最適な表現を見出すことが重要である。
字数が超過している場合、情報と表現の両面から削減を行う必要がある。削減の優先順位を明確にすることで、重要な情報を維持しながら字数制限に収めることができる。優先順位に従った削減が、効果的な調整の鍵である。字数超過時の削減は、表現の削減を優先し、次に情報の削減を行う。表現の削減は情報量を変えないため、まずこちらを試みる。表現の削減だけでは不十分な場合に、補足的な情報を削除する情報の削減を行う。情報の削減は最後の手段として位置づける。
この原則から、字数超過時の調整手順が導かれる。第一に、冗長表現を特定し削減する。重複表現、過剰修飾、回りくどい言い回しを削除する。第二に、語彙レベルの言い換えを行う。より短い語句への置き換えを行う。第三に、構文レベルの言い換えを行う。より簡潔な構文への変更を行う。第四に、なお超過している場合、補足情報を削除する。必須情報は維持し、補足情報から削除する。第五に、情報の圧縮を検討する。複数情報の統合や抽象化を行う。
例えば、下書きが百三十字で、字数制限が百字の場合(三十字超過)を考える。まず冗長表現を削減し、約十五字削減する。次に語彙の言い換えで約十字削減する。まだ五字超過している場合、補足情報を一つ削除する。段階的に削減することで、必要な情報を維持しながら字数制限に収める。また、下書きが九十字で、字数制限が六十字の場合(三十字超過)を考える。表現の削減だけでは不十分な可能性が高い。まず冗長表現と言い換えで約十五字削減する。次に補足情報を削除し、必要に応じて情報を圧縮して残り十五字を削減する。情報の削減も必要な場合は、補足情報から優先して削除する。さらに、下書きが二百字で、字数制限が百五十字の場合(五十字超過)を考える。具体例が複数ある場合、一つを残して他を削除する。根拠が複数ある場合、最も重要なものを残す。表現の削減と併せて五十字を削減する。情報の選別により、核心的な内容を維持しながら字数を調整する。最後に、下書きが七十字で、字数制限が五十字の場合(二十字超過)を考える。字数が短いため、情報の大幅な削減が必要になる可能性がある。必須情報のみを残し、補足的な説明は全て削除する。表現も最小限にする。短い字数制限では、核心部分のみに焦点を絞る。以上により、字数超過時に適切な手順で調整を行うことで、重要な情報を維持しながら字数制限に収められる。
字数が不足している場合、情報と表現の両面から展開を行う必要がある。展開は単なる字数稼ぎではなく、答案の質を高める機会と捉える。展開を通じて、答案の説得力と明晰性を高めることができる。字数不足時の展開は、まず必須情報が十分に記述されているかを確認し、不足があれば補充する。次に、論理関係の明示や具体化によって答案の明晰性を高める。必要に応じて補足情報を追加する。展開は、答案の質を高める方向で行う。
この原則から、字数不足時の調整手順が導かれる。第一に、必須情報が欠落していないかを確認し、欠落があれば追加する。第二に、論理関係が明示されているかを確認し、暗黙の場合は接続表現を追加する。第三に、抽象的な表現がある場合、具体化によって展開する。第四に、まだ不足している場合、設問に関連する補足情報を追加する。第五に、過剰な展開により冗長にならないよう注意する。
例えば、下書きが七十字で、字数制限が百字の場合(三十字不足)を考える。まず主張と根拠の両方が含まれているかを確認する。根拠が不足している場合は追加する。論理関係を明示する接続表現を追加する。必須情報の補充と論理関係の明示により、字数不足を解消する。また、下書きが四十字で、字数制限が八十字の場合(四十字不足)を考える。必須情報の確認に加えて、抽象的な表現を具体化する。「環境問題」を「大気汚染や水質汚濁などの環境問題」に展開するなど。具体化により、内容の明晰性を高めながら字数を増やす。さらに、下書きが百字で、字数制限が百五十字の場合(五十字不足)を考える。本文から関連する補足情報を追加する。筆者の見解の背景や帰結を記述する。論理関係をより詳細に説明する。補足情報の追加により、答案の充実度を高める。最後に、下書きが二十五字で、字数制限が五十字の場合(二十五字不足)を考える。核心的な情報の記述が簡潔すぎる可能性がある。定義や特徴をより詳細に記述し、必要に応じて例示を追加する。核心的な情報を詳細化することで、字数不足を解消する。以上により、字数不足時に適切な手順で調整を行うことで、答案の質を高めながら字数制限を満たせる。
体系的接続
答案を作成した後、それを客観的に評価し、必要に応じて修正する能力が求められる。自己評価とは、作成した答案が設問の要求を満たしているか、字数と情報量のバランスが適切かを判断することである。修正とは、自己評価の結果に基づいて答案を改善することである。自己評価と修正の能力は、答案の完成度を高め、安定した得点を確保するために不可欠である。下書きの段階では気づかなかった問題点も、客観的な視点で読み返すことで発見できる。批判層では、答案を自己評価する観点と方法、および評価に基づく修正の技術を習得する。自己評価と修正の技術は、答案作成の最終段階で適用され、答案の質を最終的に高める役割を果たす。
答案の自己評価は、複数の観点から行う必要がある。単一の観点のみで評価すると、他の側面での問題を見落とす可能性がある。体系的な観点を持つことで、漏れのない評価が可能になる。複数の観点を順に適用することで、答案の問題点を網羅的に発見できる。自己評価の観点は、設問適合性、情報の過不足、論理的一貫性、表現の適切性の四つに整理できる。これらの観点を順に確認することで、答案の問題点を特定し、修正の方向性を明確にできる。四つの観点は、重要度の順に配列されており、設問適合性が最も重要である。
設問適合性とは、答案が設問の要求に合致しているかどうかである。設問が求めているものと異なる内容を記述していないか、設問の条件を満たしているかを確認する。多くの受験生が陥りやすい誤解として、自分が知っている知識を詳しく書けば高得点になると考える傾向がある。しかし、設問が求めていない内容をいくら詳しく書いても、設問適合性の観点では評価されない。設問適合性は、答案評価において最も根本的な基準であり、これを満たさない答案は他の側面が優れていても高い評価を得られない。設問適合性の確認は、設問の操作指定、対象指定、形式指定の各要素について行う。操作指定については、求められている種類の情報(説明、理由、比較など)を記述しているかを確認する。対象指定については、指定された対象について記述しているかを確認する。形式指定については、字数制限や引用の条件などを満たしているかを確認する。三つの要素の全てを満たすことが、設問適合性の条件である。
この観点から、設問適合性を確認する手順が導かれる。第一に、設問の操作指定を再確認し、答案がその操作に対応しているかを確認する。「理由を述べよ」に対して理由が述べられているか、「説明せよ」に対して説明がなされているかなど。第二に、設問の対象指定を再確認し、答案がその対象について記述しているかを確認する。傍線部について問われているのに他の部分について記述していないかなど。第三に、設問の形式指定を再確認し、答案がその形式を満たしているかを確認する。字数制限を守っているか、引用の条件を満たしているかなど。
例えば、設問「傍線部『差延』の意味を説明せよ」に対して、答案が「デリダはこの概念を用いて西洋形而上学を批判した」と記述している場合を考える。操作指定は「意味を説明せよ」であるが、答案は意味ではなく使用目的を記述している。設問適合性に問題がある。意味の説明が求められているのに、使用目的を述べているため、設問の要求に応えていない。また、設問「筆者が伝統を重視する理由を述べよ」に対して、答案が「筆者は伝統を人間の根源的なアイデンティティの基盤と考える」と記述している場合を考える。操作指定は「理由を述べよ」であるが、答案は筆者の伝統観を記述しており、重視する理由が明示されていない。設問適合性に問題がある可能性がある。伝統観の説明と理由の説明は異なる。さらに、設問「本文に即して説明せよ」という条件があるのに、答案が一般論のみで本文の具体的な記述に言及していない場合を考える。形式指定を満たしていない。本文の表現を引用または言い換えて含める必要がある。「本文に即して」という条件は、本文の記述への言及を求めている。最後に、設問「対比される概念との関係を明らかにしながら」という条件があるのに、答案が一方の概念のみを説明している場合を考える。形式指定を満たしていない。対比構造を示す記述を追加する必要がある。両概念への言及と関係の明示が、条件を満たすために必要である。以上により、設問適合性を確認することで、設問の要求から逸脱した答案を修正できる。
情報の過不足とは、答案に含まれる情報が設問の要求に対して多すぎるか少なすぎるかである。情報が不足していると設問の要求を満たさず、情報が過剰だと字数を圧迫し核心的な情報の記述が不十分になる可能性がある。情報の過不足は、答案の完成度を左右する重要な要素である。情報の過不足の確認は、必須情報の有無と補足情報の適切性について行う。必須情報については、設問が求める全ての要素が含まれているかを確認する。補足情報については、設問に関連しない情報が含まれていないか、補足情報が必須情報を圧迫していないかを確認する。必須情報の確保が優先され、補足情報は字数に余裕がある場合にのみ含める。
この観点から、情報の過不足を確認する手順が導かれる。第一に、設問の要求から必須情報を特定し、答案にそれが含まれているかを確認する。第二に、含まれていない必須情報がある場合、追加の必要性を判断する。第三に、答案に含まれる各情報について、設問への関連性を評価する。第四に、関連性の低い情報がある場合、削除の必要性を判断する。
例えば、設問「筆者の主張とその根拠を述べよ」に対して、答案が主張のみを記述し根拠を含んでいない場合を考える。必須情報である根拠が不足している。根拠を追加する必要がある。「主張とその根拠」という設問は、両方の記述を求めている。また、設問「傍線部の意味を説明せよ」に対して、答案が傍線部の意味に加えて筆者の生涯や他の著作についても記述している場合を考える。補足情報が過剰である。関連性の低い情報を削除し、必須情報の記述を充実させる。設問に無関係な情報は削除すべきである。さらに、設問「二つの概念の違いを述べよ」に対して、答案が一方の概念のみを詳しく説明している場合を考える。もう一方の概念についての情報が不足している。両概念についてバランスよく記述する必要がある。比較の設問では両項への言及が必須である。最後に、設問「筆者の見解を百字以内で述べよ」に対して、答案が見解の核心を簡潔に述べ、具体例や背景を省略している場合を考える。字数制限を考慮すると、情報量は適切である可能性が高い。必須情報が含まれていれば問題ない。字数制限が厳しい場合は、核心のみで足りる。以上により、情報の過不足を確認することで、必要な情報を過不足なく含む答案に修正できる。
論理的一貫性とは、答案内の各要素が矛盾なく論理的に接続されていることである。情報が正しくても、それらが論理的に接続されていなければ、答案としての質は低くなる。論理的一貫性は、答案の説得力を決定する重要な要素である。論理的一貫性の評価は、情報間の接続関係と、全体の論理構成について行う。接続関係については、各文が前後の文と論理的につながっているかを確認する。論理構成については、答案全体が一貫した論理の流れを持っているかを確認する。接続関係と全体構成の両面から評価することで、論理的な問題点を発見できる。
論理的接続とは、文と文、情報と情報が論理的な関係で結びついていることである。接続が不適切だと、読み手は答案の論理を追うことができない。多くの受験生が陥りやすい誤解として、情報を並べれば答案になると考える傾向がある。しかし、情報間の論理関係が不明確だと、答案全体として何を主張しているのかが伝わらない。論理的接続は、答案の明晰性を決定する要素である。論理的接続の確認は、各文間の関係を点検することで行う。順接、逆接、因果、例示などの論理関係が明示されているか、または文脈から読み取れるかを確認する。接続が不明確な箇所があれば、接続表現を追加するか、文の順序を変更する。接続の明確化は、答案の論理的明晰性を高める効果的な方法である。
この観点から、論理的接続を確認する手順が導かれる。第一に、答案を文単位で分解し、各文の内容を把握する。第二に、隣接する文間の論理関係を特定する。順接、逆接、因果、例示のいずれかを判定する。第三に、論理関係が読み取りにくい箇所を特定する。第四に、必要に応じて接続表現を追加し、論理関係を明示する。
例えば、答案に「筆者は効率化を批判する。効率化によって人々は時間に追われるようになった」とある場合を考える。二文間の論理関係(因果の根拠提示)が明示されていない。「筆者は効率化を批判する。効率化によって人々は時間に追われるようになったからである」と修正する。「〜からである」を追加することで、因果関係が明確になる。また、答案に「言語は思考を規定する。言語と思考は独立している」とある場合を考える。二文が矛盾している。本文を再確認し、筆者の見解を正確に反映させる。例えば「言語は思考を規定する側面があるが、全ての思考が言語に依存するわけではない」など。矛盾する記述は、本文に基づいて修正する。さらに、答案に「自由とは自己決定の能力である。放縦は他者の自由を侵害する」とある場合を考える。二文間の論理関係が不明確である。「自由とは自己決定の能力である。ただし、自由は他者の自由を侵害しない範囲で行使されるべきであり、そうでない放縦とは区別される」と修正する。二文の関係を明示することで、論理的なつながりが明確になる。最後に、答案に「近代的自我は自律的である。筆者はこれを批判する。関係的自我を提唱する」とある場合を考える。三文間の接続が不十分である。「近代的自我は自律的とされるが、筆者はこの見方を批判し、他者との関係の中で形成される関係的自我を提唱する」と修正する。三文を一文にまとめ、論理関係を明示することで、流れが明確になる。以上により、論理的接続を確認し修正することで、答案の論理的明晰性を高められる。
全体構成とは、答案全体の論理的な流れと構造である。個々の文が論理的に接続されていても、全体としての構成が不適切だと、答案の説得力が低下する。全体構成は、答案の完成度を決定する要素である。全体構成の評価は、答案が設問の要求に対応する適切な構成を持っているかを確認することで行う。内容説明であれば定義・特徴の提示、理由説明であれば根拠の提示、論証であれば主張と根拠の組み合わせなど、設問に応じた構成になっているかを確認する。設問の種類に応じた構成パターンを意識することが重要である。
この観点から、全体構成を評価する手順が導かれる。第一に、設問の操作指定を確認し、適切な構成パターンを把握する。第二に、答案がその構成パターンに従っているかを確認する。第三に、構成が不適切な場合、情報の配置順序を変更する。第四に、必要に応じて導入や結論を調整する。
例えば、設問「理由を述べよ」に対して、答案が結論から始まり根拠で終わっている場合を考える。理由説明としては適切な構成である。「〜である。〜だからである」または「〜であるから、〜である」の形式になっているか確認する。理由説明では、主張と根拠の両方が含まれている必要がある。また、設問「内容を説明せよ」に対して、答案が背景の説明から始まり、肝心の内容説明が最後に簡略化されている場合を考える。構成が不適切である。内容説明を冒頭に配置し、背景は補足として後に回すか省略する。内容説明では、対象の定義や特徴が中心となるべきである。さらに、設問「対比して説明せよ」に対して、答案が一方の概念を長く説明した後に他方を簡単に述べている場合を考える。バランスが悪い。両概念への言及を均等にするか、対比構造を明示する表現(「〜であるのに対し」など)を用いる。対比の設問では、両項への均等な言及が求められる。最後に、設問「論じよ」に対して、答案が主張のみで根拠がない場合を考える。論証としての構成が不完全である。主張を支える根拠を追加する。「論じよ」という操作指定は、主張と根拠の両方を含む論証的な構成を求めている。以上により、全体構成を評価し修正することで、設問の要求に適合した論理的な答案を作成できる。
表現の適切性とは、答案の文章表現が適切であることである。論理的な内容であっても、表現が不適切だと減点の対象となったり、意図が正しく伝わらなかったりする。表現の適切性は、答案の伝達効果を決定する要素である。表現の適切性の評価は、文法的正確性、語彙の適切性、文体の統一性について行う。文法的正確性は主述の対応や助詞の使用が正しいかどうか、語彙の適切性は用語の意味や使用法が正しいかどうか、文体の統一性は答案全体が一貫した文体で書かれているかどうかである。三つの側面を順に確認することで、表現上の問題点を発見できる。
文法的正確性とは、文法規則に従った正しい文が書かれていることである。主述のねじれ、助詞の誤用、修飾関係の曖昧さなどは減点の対象となる。文法的正確性は、答案の基本的な品質を決定する要素である。文法的正確性の確認は、各文を点検することで行う。主語と述語が対応しているか、助詞の選択が適切か、修飾語の係り先が明確かを確認する。問題がある文は書き直す。文法的な誤りは、意図の伝達を妨げるため、優先して修正する必要がある。
この観点から、文法的正確性を確認する手順が導かれる。第一に、各文の主語と述語を特定し、対応しているかを確認する。第二に、助詞の使用を点検し、格関係が正しく表現されているかを確認する。第三に、修飾語が係る語を特定し、曖昧さがないかを確認する。第四に、問題のある箇所を特定し、文を書き直す。
例えば、「筆者の主張は、言語が思考を規定することを述べている」という文を確認する。主語「主張は」と述語「述べている」が対応していない。「筆者は、言語が思考を規定すると主張している」または「筆者の主張は、言語が思考を規定するということである」と修正する。主語と述語の対応を確認し、ねじれを解消する。また、「効率化の追求は時間の余裕がなくなる」という文を確認する。主語「効率化の追求は」と述語「なくなる」が対応していない。「効率化の追求によって時間の余裕がなくなる」または「効率化を追求すると時間の余裕がなくなる」と修正する。主語と述語の関係を明確にすることで、文の意味が明確になる。さらに、「筆者は読書の重要性について批判的思考力を養うと主張する」という文を確認する。文の構造が不明確である。「筆者は、読書が批判的思考力を養う点でその重要性を主張する」と修正する。文の構造を整理することで、意味が明確になる。最後に、「現代社会における問題を筆者は効率化の過度な追求が原因であると分析する」という文を確認する。文が複雑で係り受けが曖昧である。「筆者は現代社会の問題の原因を効率化の過度な追求に求める」と修正する。文を簡潔にすることで、係り受けが明確になる。以上により、文法的正確性を確認し修正することで、正確で明晰な答案を作成できる。
語彙の適切性とは、用語の意味や使用法が正しいことである。文体の統一性とは、答案全体が一貫した文体で書かれていることである。語彙と文体の適切性は、答案の品位と統一感を決定する要素である。語彙については、専門用語の定義が正確か、日常語と専門語の使い分けが適切かを確認する。文体については、敬体と常体が混在していないか、口語的表現が混じっていないかを確認する。語彙と文体の統一は、答案の一貫性を高める効果がある。
この観点から、語彙と文体を点検する手順が導かれる。第一に、専門用語や重要概念の使用法が本文と一致しているかを確認する。第二に、意味が曖昧な語や誤解を招きやすい語がないかを確認する。第三に、文末表現を点検し、敬体と常体が混在していないかを確認する。第四に、口語的表現や砕けた表現がないかを確認する。
例えば、答案に「筆者はこの問題をとても重要だと言っている」とある場合を考える。「とても」は口語的表現であり、「非常に」「きわめて」などに置き換える。「言っている」も「述べている」「主張している」に置き換える。口語的表現を書き言葉に置き換えることで、答案の品位が向上する。また、答案に「差延とは意味が決まらないことです。筆者はこれを用いて批判する」とある場合を考える。「です」(敬体)と「批判する」(常体)が混在している。「差延とは意味が確定しないことである。筆者はこの概念を用いて批判する」と統一する。文体の統一は、答案の一貫性を高める。さらに、答案に「この考え方はちょっと古い」とある場合を考える。「ちょっと」は口語的表現である。「やや」「いささか」または「古い側面がある」などに置き換える。口語的表現は、記述答案にふさわしくない。最後に、答案に「筆者のスタンスは〜」とある場合を考える。文脈によっては「スタンス」を「立場」「見解」に置き換える方が適切な場合がある。外来語の使用は必要最小限にする。外来語よりも和語や漢語を用いることで、答案の品位が向上する。以上により、語彙と文体を点検し修正することで、適切で統一感のある答案を作成できる。
自己評価によって複数の問題点が発見された場合、修正の優先順位を決定する必要がある。全ての問題点を同時に修正することは困難であり、重要度の高い問題から順に対処することが効率的である。優先順位を明確にすることで、限られた時間内で最大の効果を得られる。修正の優先順位は、問題の深刻度と修正の容易さによって決定される。設問適合性の問題は最も深刻であり、最優先で修正する。情報の過不足は次に重要であり、論理的一貫性、表現の適切性の順に対処する。深刻度の高い問題から順に修正することで、答案の質を効率的に高められる。
修正優先度は、その問題が答案の評価にどの程度影響するかによって決まる。設問の要求に合致していない答案は根本的な問題があり、他の側面が優れていても高い評価を得られない。修正優先度の判定は、効率的な修正のための指針となる。修正優先度の高い順に、設問適合性の問題、必須情報の欠落、論理的矛盾、補足情報の過剰、表現上の問題となる。限られた時間で修正を行う場合、優先度の高い問題から着手する。優先度の低い問題は、時間に余裕がある場合にのみ修正する。
この原則から、修正優先度を判定する手順が導かれる。第一に、設問適合性に問題がないかを確認する。問題があれば最優先で修正する。第二に、必須情報が欠落していないかを確認する。欠落があれば次に優先して追加する。第三に、論理的な矛盾や飛躍がないかを確認する。あれば修正する。第四に、補足情報が過剰でないかを確認する。過剰であれば削除を検討する。第五に、表現上の問題を修正する。
例えば、答案が「傍線部の意味を説明せよ」という設問に対して傍線部と異なる概念を説明している場合を考える。設問適合性の問題であり、最優先で修正する。傍線部の内容を正しく把握し直す。設問適合性の問題は、答案の根本に関わるため、最初に対処する。また、答案が設問に適合しているが、論理的接続が不明確な箇所がある場合を考える。接続表現を追加して論理関係を明示する。設問適合性が確保された後に修正する。論理的一貫性の問題は、設問適合性の次に対処する。さらに、答案が設問に適合し論理的にも問題ないが、敬体と常体が混在している場合を考える。文体を統一する。内容面の問題がないことを確認した後に修正する。表現上の問題は、内容面の問題の後に対処する。最後に、時間が限られている場合を考える。設問適合性と必須情報の確保を優先し、表現上の細かい問題は後回しにする。限られた時間では、優先度の高い問題に集中する。以上により、修正優先度を判定することで、限られた時間内で最も効果的な修正が可能になる。
効率的な修正とは、最小限の時間と労力で最大の改善効果を得る修正である。大幅な書き直しを要する修正と、部分的な修正で済む修正を区別し、状況に応じて適切な方法を選択する。効率的な修正は、限られた試験時間を有効に活用するために必要である。効率的な修正のためには、修正箇所を明確に特定し、修正方法を決定してから実行する。漫然と読み返して気づいた点を順次直すのではなく、計画的に修正を行う。計画的な修正は、修正の効率と精度を高める。
この原則から、効率的な修正を実行する手順が導かれる。第一に、自己評価に基づいて修正が必要な箇所をリストアップする。第二に、各修正箇所について、修正方法(書き直し、追加、削除、置き換え)を決定する。第三に、優先度の高い順に修正を実行する。第四に、修正後に再度評価し、新たな問題が生じていないかを確認する。
例えば、設問適合性に問題があり、答案の大部分を書き直す必要がある場合を考える。時間が許せば全面的に書き直す。時間が限られている場合は、核心部分のみを修正し、周辺部分は可能な範囲で調整する。大幅な修正が必要な場合は、核心部分を優先する。また、必須情報が一つ欠落している場合を考える。欠落している情報を追加する位置を決め、字数との兼ね合いで他の部分を削除するかどうかを判断する。情報の追加と字数調整を同時に行う。さらに、論理的接続が不明確な箇所がある場合を考える。接続表現を挿入する。挿入によって字数が増加する場合は、他の箇所で表現を圧縮する。接続表現の追加は、字数への影響を考慮して行う。最後に、複数の表現上の問題がある場合を考える。一箇所ずつ順に修正するのではなく、同種の問題(たとえば敬体と常体の混在)をまとめて修正する。同種の問題をまとめて修正することで、効率が向上する。以上により、効率的に修正を実行することで、限られた時間内で答案の質を最大限に高められる。
体系的接続
字数制限と情報の取捨選択は、記述問題において高得点を獲得するための核心的な技術である。このモジュールでは、設問の要求分析から始まり、情報の階層化と選別、字数に応じた表現調整、そして答案の自己評価と修正に至るまでの一連の技術を体系的に習得した。
本源層では、字数制限のある問題に取り組む前提として、本文の論理構造を把握する技術を確立した。設問の要求を分析し、対象指定・操作指定・形式指定の三要素を識別する方法を学んだ。設問文の構造分解と操作指定の類型化により、答案に含めるべき情報の種類が明確になった。本文における情報の所在を特定する技術として、傍線部と文脈の関係分析、分散情報の統合を習得した。傍線部が主張か根拠か、抽象か具体か、比喩か非比喩かを判定し、文脈から必要な情報を抽出する方法を確立した。論理構造を図式化する技術として、主張・根拠関係の図式化、対比・並列構造の図式化を学んだ。図式化により情報間の関係が可視化され、答案構成の設計図として活用できるようになった。設問と本文の対応関係として、局所参照型設問と全体参照型設問への対応方法を習得した。参照範囲を適切に設定することで、効率的な情報収集が可能になった。情報の重要度判定として、必須情報と補足情報の区別、情報の階層構造の認識を学んだ。重要度の判定により、字数制限に応じた取捨選択の判断基準が確立された。
分析層では、抽出した情報を重要度によって階層化し、字数制限に応じて取捨選択する技術を習得した。情報階層化の基準として、設問関連性と本文内位置づけの二つの基準を学んだ。設問関連性では、直接関連・間接関連・低関連の三段階で情報を分類する方法を確立した。本文内位置づけでは、主張・根拠・具体例・補足の四つの機能を識別する方法を学んだ。字数と情報量の対応として、字数別の情報量目安を把握した。三十字から五十字では一つの命題、六十字から八十字では二つの命題、百字から百二十字では主張と根拠、百五十字から二百字では三層構造が含められることを理解した。情報の圧縮と展開の基本的な考え方も習得し、字数調整の方向性を把握した。取捨選択の判断基準として、削除可能な情報の特定と必須情報の確保を学んだ。削除可能な情報のカテゴリ(関連の薄い情報、重複、過剰な具体例、補足的背景)を認識し、効率的な選別が可能になった。情報選択の実践的手法として、マーキングと整理の技法、優先順位決定の手順を習得した。情報配分の調整として、重要度に応じた字数配分と構成要素間のバランスを学んだ。字数別答案設計の実践として、短字数答案と中字数答案の設計方法を習得した。
論述層では、選択した情報を実際の文章として表現する際の技術を習得した。冗長表現の識別と削減として、重複表現、過剰修飾、回りくどい言い回し、不必要な前置きの四つのパターンを認識した。これらのパターンを識別し削減することで、情報量を維持しながら字数を削減できるようになった。効果的な削減の実践として、文全体を再構成する方法を学んだ。命題の核心部分を抽出し、最小限の語句で再構成することで、大幅な字数削減が可能になった。簡潔な言い換えとして、語彙レベルと構文レベルの両面から技術を習得した。語彙レベルでは、和語から漢語への置き換え、具体例の抽象化などを学んだ。構文レベルでは、能動態と受動態の変換、名詞化と動詞化の変換などを学んだ。情報の圧縮技法として、複数情報の統合と抽象化による圧縮を習得した。複数の関連情報を上位概念で置き換えることで、情報の本質を維持しながら大幅な字数削減が可能になった。情報の展開技法として、具体化と論理関係の明示を学んだ。抽象的な表現を具体例で補足し、情報間の論理関係を接続表現で明示することで、答案の明晰性を高めながら字数を増やせるようになった。表現調整の実践として、字数超過時と字数不足時それぞれの調整手順を確立した。
批判層では、作成した答案を客観的に評価し、修正する技術を習得した。自己評価の観点として、設問適合性、情報の過不足、論理的一貫性、表現の適切性の四つを設定した。これらの観点を順に確認することで、答案の問題点を網羅的に発見できるようになった。設問適合性の確認では、操作指定・対象指定・形式指定の三要素を満たしているかを点検する方法を学んだ。情報の過不足の確認では、必須情報の有無と補足情報の適切性を点検する方法を学んだ。論理的一貫性の評価として、論理的接続と全体構成の二つの側面を学んだ。文間の論理関係を確認し、接続表現を追加することで論理的明晰性を高める方法を習得した。全体構成では、設問の種類に応じた構成パターンに従っているかを確認する方法を学んだ。表現の適切性の評価として、文法的正確性と語彙・文体の点検を学んだ。主述の対応、助詞の使用、修飾関係を確認し、文法的な誤りを修正する方法を習得した。敬体と常体の統一、口語的表現の排除など、文体の統一についても学んだ。修正の優先順位として、問題の深刻度に応じた優先度判定を学んだ。設問適合性の問題を最優先とし、必須情報の欠落、論理的矛盾、補足情報の過剰、表現上の問題の順に対処する方法を確立した。効率的な修正の実行として、修正箇所のリストアップと計画的な修正の方法を学んだ。
これらの技術は相互に関連しており、一連の過程として適用される。設問を分析し、情報を抽出し、階層化して選択し、表現を調整し、自己評価して修正するという流れを繰り返し実践することで、字数制限のある記述問題に対する対応力が向上する。字数制限は単なる制約ではなく、情報の優先順位を明確にし、表現を洗練させる機会である。この認識のもとで技術を磨くことで、限られた字数の中で最大限の情報を的確に伝える答案を作成できるようになる。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 難易度 | ★★★★★ 発展 |
| 分量 | 多い |
| 字数制限の種類 | 30字〜200字まで多様 |
| 情報統合の必要性 | 高い |
早慶・難関私大
東大・京大・旧帝大
試験時間: 60分 / 満点: 100点
次の文章を読み、後の問いに答えよ。
現代社会において「効率」という価値は、あらゆる領域に浸透している。生産活動はもちろんのこと、教育、医療、さらには人間関係においてさえ、効率の論理が支配的な基準として機能している。この事態をどのように理解すべきだろうか。
効率とは、投入に対する産出の比率を最大化することである。同じ成果をより少ない資源で達成すること、あるいは同じ資源からより多くの成果を引き出すこと、それが効率の追求である。この原理は、資源の有限性という条件のもとで合理的な選択を可能にする点で、確かに有用性を持つ。しかし、効率の論理には固有の限界が存在する。
効率の追求が前提とするのは、投入と産出が明確に定義可能であり、かつ両者の比較が可能であるという条件である。工業生産においては、この条件は比較的容易に満たされる。原材料と労働時間を投入とし、製品の数量と品質を産出として測定できるからである。しかし、教育や医療、人間関係といった領域では、何を投入とし何を産出とするかが自明ではない。教育における「産出」とは何か。テストの点数か、思考力の涵養か、人格の陶冶か。これらは容易に数量化できず、相互に比較することも困難である。
にもかかわらず、現代社会は教育をも効率の論理に従わせようとする。学習時間に対する成績向上の比率を最大化すること、最短時間で資格を取得すること、費用対効果の高い進路を選択すること。こうした思考様式が教育を支配するとき、数量化困難な価値——たとえば、知的好奇心の喚起、批判的思考力の育成、他者への共感能力の涵養——は周縁化される。効率の論理は、測定可能なものを優先し、測定困難なものを排除する傾向を内包しているからである。
ここに効率の逆説が生じる。効率を追求することで、本来達成すべき目的そのものが見失われるのである。教育の本来の目的が人間形成にあるとすれば、テストの点数を効率的に上昇させることは、教育の手段の一部を目的と取り違えることに他ならない。【ア】手段の効率化が目的を侵食するという転倒は、効率の論理が自己完結的なシステムとして作動するときに必然的に生じる帰結である。
では、効率の論理を超える視座はどこに求められるか。私は、「余剰」の概念に注目したい。余剰とは、効率の観点からは無駄と見なされるものである。しかし、この「無駄」こそが、人間的な営みの本質に関わっている。読書において、試験に出ない部分を読むことは効率的ではない。しかし、その「無駄」な読書が知的好奇心を育み、予測不可能な発見をもたらす。対話において、結論に至らない議論は効率的ではない。しかし、その「無駄」な対話が相互理解を深め、新たな問いを生成する。
余剰は、効率の論理が排除しようとするものでありながら、創造性と人間性の源泉である。効率の追求は目的達成の手段として有効だが、余剰を完全に排除するとき、達成すべき目的そのものが空洞化する。【イ】効率と余剰は対立するものではなく、両者の適切な均衡こそが求められるのである。
問一 傍線部【ア】「手段の効率化が目的を侵食する」とはどういうことか、本文に即して80字以内で説明せよ。
問二 傍線部【イ】「効率と余剰は対立するものではなく、両者の適切な均衡こそが求められる」について、筆者がそのように主張する根拠を、「効率」と「余剰」それぞれの特質を踏まえて120字以内で述べよ。
次の文章を読み、後の問いに答えよ。
言語と思考の関係は、哲学および言語学における古典的な問題である。言語は思考の単なる表現手段にすぎないのか、それとも言語が思考を規定するのか。この問いに対する応答として、言語相対性仮説がある。
言語相対性仮説とは、使用する言語の構造が話者の世界認識を規定するという主張である。この仮説は、アメリカの言語学者エドワード・サピアとベンジャミン・リー・ウォーフによって提唱されたことから、サピア=ウォーフ仮説とも呼ばれる。彼らによれば、言語は透明な媒体ではなく、すでに特定の世界解釈を含んでいる。私たちは言語を通じて世界を把握するが、その言語がすでに世界を特定の仕方で分節しているのである。
この仮説を支持する証拠として、しばしば色彩語彙の研究が挙げられる。言語によって色彩を表す語彙の数と範囲は異なる。ある言語では青と緑を区別する別個の語彙が存在するが、別の言語では両者を包括する単一の語彙しか存在しない。研究によれば、こうした語彙の違いは、話者の色彩認知に影響を与える。色彩を区別する語彙を持つ話者は、その区別をより迅速かつ正確に認知する傾向がある。
しかし、言語相対性仮説には重大な批判も存在する。【ウ】最も根本的な批判は、この仮説が言語間の翻訳可能性を説明できないというものである。もし言語が思考を完全に規定するならば、異なる言語の間での翻訳は原理的に不可能となるはずである。ある言語に存在しない概念を、別の言語で表現することはできないことになる。しかし、実際には翻訳は可能である。日本語に存在しなかった概念も、外来語の導入や新語の創造によって表現可能となる。このことは、思考が言語に完全に規定されているわけではないことを示唆している。
また、言語習得以前の乳児や、言語を持たない動物にも、一定の認知能力が存在することが知られている。乳児は言語を習得する以前から、物体の永続性や因果関係を認識する。動物は言語を持たないにもかかわらず、問題解決や道具使用といった思考を要する行動を示す。これらの事実は、思考が言語に先立って存在しうることを示している。
【エ】以上の検討から、言語と思考の関係について次のように結論できる。言語は思考を完全に規定するわけではないが、思考に対して一定の影響を与える。言語相対性仮説の強いバージョン——言語が思考を完全に決定する——は支持されないが、弱いバージョン——言語が思考に影響を与える——は妥当性を持つ。私たちは言語によって思考を制約されているが、同時に言語を超えて思考する可能性をも保持しているのである。
問一 傍線部【ウ】「最も根本的な批判は、この仮説が言語間の翻訳可能性を説明できないというものである」について、この批判の内容を60字以内で説明せよ。
問二 傍線部【エ】「以上の検討から、言語と思考の関係について次のように結論できる」とあるが、筆者の結論を、その根拠とともに100字以内で述べよ。
次の文章を読み、後の問いに答えよ。
近代という時代は、しばしば「理性の時代」と特徴づけられる。デカルトに始まる近代哲学は、理性によって確実な知識を基礎づけることを目指した。科学革命は自然界に潜む法則を理性によって解明し、啓蒙思想は理性の光によって迷信と偏見を打破しようとした。こうした理性への信頼は、近代社会の制度設計にも反映されている。法治主義、民主主義、市場経済——これらはいずれも、個人の理性的判断を前提とする制度である。
しかし、二十世紀以降、近代的理性への信頼は様々な方向から揺らいでいる。フロイトの精神分析は、意識の背後に無意識の領域が存在し、人間の行動が意識的な理性によって制御されていないことを明らかにした。非合理的な欲動や抑圧された記憶が、私たちの思考と行動に影響を与えている。マルクスの思想は、理性的であると自認する思考が、実際には社会的・経済的条件によって規定されていることを暴露した。イデオロギーとは、特定の階級の利害を普遍的真理として偽装するものである。ニーチェは、真理への意志の背後に権力への意志を見出した。客観的真理の追求と見なされてきた営みが、実は支配と服従の関係に規定されている。
【オ】これらの思想は、理性の自律性という近代的前提を根底から問い直すものであった。理性は自己透明であり、自らの判断を反省的に吟味できると考えられてきた。しかし、理性の背後に無意識が、理性の外部に社会的規定性が、理性の底に権力への意志が存在するならば、理性による自己反省はどこまで信頼できるのか。
とはいえ、理性批判を徹底することには固有の困難が伴う。理性を批判する議論それ自体が、理性的な論証の形式をとらざるをえないからである。無意識の存在を論証するフロイトの理論は、理性的な推論によって構築されている。イデオロギー批判を展開するマルクスの議論は、論理的な一貫性を主張する。権力への意志を暴露するニーチェの思想は、説得力のある論述として提示される。理性批判は理性を用いてなされるという逆説が、ここに存在する。
【カ】この逆説は、理性を全面的に否定することも、無批判に信頼することも、ともに不適切であることを示している。理性は確かに限界を持ち、無意識や社会的規定性や権力関係に影響される。しかし、そうした限界を認識すること自体が理性の働きである。理性は自らの限界を反省できる能力を持つ。限界づけられた理性は、自らの限界を意識しながら機能するとき、盲目的な理性よりもむしろ信頼に値する。近代的理性への素朴な信頼に戻ることはできないが、理性を放棄することもできない。私たちに可能なのは、自
(このモジュールの演習問題は第3問までとする)
| 難易度 | 配点 | 大問 |
|---|---|---|
| 標準 | 25点 | 第1問 |
| 発展 | 25点 | 第2問 |
| 難関 | 50点 | 第3問 |
| 得点 | 判定 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 80点以上 | A | 過去問演習へ進む |
| 60-79点 | B | 弱点分野を補強後、再挑戦 |
| 40-59点 | C | 講義編を復習後、再挑戦 |
| 40点未満 | D | 講義編を再学習 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 傍線部の比喩的な内容を、文脈に即して具体化する能力 |
| 難易度 | 標準 |
| 目標解答時間 | 12分 |
問一は「どういうことか」という内容説明問題。傍線部【ア】「手段の効率化が目的を侵食する」を具体的に説明する必要がある。直前の「教育の本来の目的が人間形成にあるとすれば、テストの点数を効率的に上昇させることは、教育の手段の一部を目的と取り違えることに他ならない」という具体例が直接的な手がかりとなる。問二は「なぜか」という理由説明問題。「効率」と「余剰」のそれぞれの特質を対比的に説明し、なぜ両者の均衡が必要なのかを論じる構成が求められる。
問一では、「手段の効率化」と「目的の侵食」の具体的内容を本文から抽出する。「手段」=テストの点数上昇、「目的」=人間形成。これを「手段が目的にとって代わる」という構造で説明する。問二では、「効率」の特質(測定可能なものを優先)と「余剰」の特質(測定困難だが創造性や人間性の源泉)を抽出する。そして、「効率のみを追求すると余剰が排除され、目的が空洞化する」という論理で、両者の均衡の必要性を説明する。
問一は80字以内。「教育において人間形成という本来の目的が見失われ、テストの点数向上という手段が目的化してしまうこと」を核に構成する。問二は120字以内。「効率は測定可能な成果を追求するが、余剰は創造性など人間性の源泉であり、効率追求で余剰を排除すると目的自体が空洞化するため、両者の均衡が必要」という論理で構成する。
手順1:問一は内容説明、問二は理由説明と設問形式を特定。
手順2:問一は傍線部直前の具体例から「手段」と「目的」の内容を特定。
手順3:問二は「効率」と「余剰」の対比的な特質を本文から抽出。
手順4:問二では、両者の均衡が必要な理由を「目的の空洞化」という点から説明する構成を設計。
問一:
本来の目的を達成するための手段である効率化の追求が、それ自体目的となり、測定しやすい成果を優先するあまり、人間形成といった本来の目的が見失われてしまうこと。(78字)
問二:
効率の追求は測定可能な成果を最大化するが、創造性や人間性の源泉である余剰を排除する傾向を持つ。しかし、余剰を完全に排除すると達成すべき目的自体が空洞化するため、手段としての効率と目的を支える余剰の均衡が必要だから。(113字)
正解の論拠:
問一:本文の「教育の本来の目的が人間形成にあるとすれば、テストの点数を効率的に上昇させることは、教育の手段の一部を目的と取り違えることに他ならない」という具体例を一般化し、「手段の目的化」と「本来の目的の喪失」を説明している。
問二:本文の「効率の論理は、測定可能なものを優先」と「余剰は、創造性と人間性の源泉である」という特質を対比し、「余剰を完全に排除するとき、達成すべき目的そのものが空洞化する」という論理で、両者の均衡の必要性を説明している。
誤答の論拠:
問一:「効率が目的になること」という説明だけでは、なぜそれが「目的を侵食する」のかが不明確。
問二:「効率も余剰もどちらも大事だから」という漠然とした説明では、両者の特質と関係性が説明されていない。
この解法が有効な条件:
抽象的な傍線部の説明問題では、直後の具体例を一般化する手法が有効。対立する二つの概念の関係を問う問題では、それぞれの特質を対比的に説明し、両者の関係性を論じる構成が有効。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 本文の論理構造を正確に把握し、主張と根拠を抽出する能力 |
| 難易度 | 発展 |
| 目標解答時間 | 13分 |
問一は「内容を説明せよ」という内容説明問題。言語相対性仮説への「最も根本的な批判」の内容を60字以内で説明する。第四段落が解答の根拠となる。問二は「結論を、その根拠とともに」という複合的な要求。最終段落の結論と、それを支える本文全体の根拠(第三段落の支持証拠、第四・五段落の批判・反証)を統合して100字以内で記述する必要がある。
問一では、「もし言語が思考を完全に規定するならば、異なる言語の間での翻訳は原理的に不可能となるはずである。しかし、実際には翻訳は可能である」という部分が批判の核心である。これを60字に圧縮する。問二では、結論「言語は思考を完全に決定しないが影響は与える(弱い仮説は妥当)」と、その根拠「支持証拠(色彩認知)」「反証(翻訳可能性、非言語的思考)」を抽出する。100字という制限から、根拠は簡潔にまとめる。
問一は「言語が思考を完全に規定するなら翻訳は不可能なはずだが、実際には可能であるという矛盾点を指摘する批判」のように構成する。問二は「言語は思考を完全に決定するわけではないが影響は与えるという結論。なぜなら、翻訳が可能であり非言語的な思考も存在する一方で、言語が認知に影響を与える事実もあるから」という論理で構成する。
手順1:問一は第四段落、問二は最終段落と本文全体が参照範囲と特定。
手順2:問一は「仮説の前提から導かれる帰結」と「現実」の矛盾が批判の核心と把握。
手順3:問二は結論(弱い仮説の支持)と、その両義的な根拠(支持証拠と反証)を抽出。
手順4:各設問の字数制限に合わせて、必須要素を圧縮・統合して記述。
問一:
言語が思考を完全に規定するなら翻訳は不可能になるはずだが、実際には翻訳が可能であるという事実との矛盾を指摘する批判。(59字)
問二:
言語は思考を完全に決定しないが影響は与える。なぜなら、翻訳の可能性や非言語的思考の存在が前者を、言語による認知への影響が後者をそれぞれ裏付けるから。(93字)
正解の論拠:
問一:言語相対性仮説(強いバージョン)の論理的帰結(翻訳不可能)と、経験的事実(翻訳可能)との矛盾を的確に指摘している。
問二:最終段落の結論「弱いバージョンは妥当性を持つ」と、その根拠となる本文全体の議論(支持証拠と反証)をバランスよく統合して説明している。
誤答の論拠:
問一:「翻訳が難しいから」という解答では、なぜそれが「根本的な批判」になるのかが不明確。
問二:結論のみを述べ、根拠に触れていない答案や、根拠の一方(支持または反証)のみに言及した答案は設問の要求を満たさない。
この解法が有効な条件:
批判の内容を問う問題では、批判対象の論理的帰結と現実との矛盾を指摘する構成が有効。複数の根拠を踏まえた結論を問う問題では、結論と各根拠を因果関係で結び、簡潔に統合する構成が有効。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 概念定義の把握、筆者の認識の特定、論旨の統合的記述能力 |
| 難易度 | 難関 |
| 目標解答時間 | 20分 |
三つの設問は、文章全体の論理構造を段階的に問う構成となっている。問一は「教養」の定義(第一段落)、問二は現代社会における教養の状況(第三段落前半)、問三は教養の意義についての最終的な結論(第三段落後半)を問う。問三は「本文全体の論旨を踏まえ」という指示があり、文章全体の構造を反映した記述が求められる。
問一は第一段落の「真の教養とは〜」以下の定義を抽出する。問二は第三段落の「現代社会は即効性のある実用的な知識ばかりを求める〜教養の価値を脅かしている」という部分を抽出する。問三は、問二で捉えた現代社会の状況(実用性偏重、予測不能な時代)を前提とし、それに対する教養の意義(特定の目的に縛られない自由な精神の活動、人間らしく生きるための羅針盤)を結論として記述する構成を考える。
問一は選択肢問題であり、本文の定義と一致するウを選択。問二も選択肢問題であり、本文の記述と一致するアを選択。問三は100字の記述問題。まず「実用性が重視される予測不能な現代」という背景を簡潔に示し、次に「特定の目的に縛られない自由な精神活動としての教養」という特性を述べ、最後に「人間らしく生きるための指針となる」という結論(意義)を示す、という三段階の構成で記述する。
手順1:問一・問二は選択肢問題。それぞれ第一、第三段落の該当箇所と照合して正解を特定。
手順2:問三は記述問題。本文の論理構造「現代社会の問題点(前提)→教養の意義(結論)」を把握。
手順3:前提(実用性偏重・予測不能な時代)、教養の特性(非実用的・自由な精神活動)、結論(生きる指針)の三要素を抽出。
手順4:三要素を論理的に結合し、100字以内で記述する。
問一:ウ
問二:ア
問三:(解答例)
実用性が重視され変化の激しい現代において、特定の目的に縛られない自由な精神活動としての教養は、自己の価値観を相対化し、人間が人間らしく生きるための普遍的な指針となるから。(98字)
正解の論拠:
問一:選択肢ウは第一段落の定義と完全に一致する。
問二:選択肢アは第三段落前半の記述と一致する。
問三:解答例は、現代社会の状況(前提)、教養の特性、教養の意義(結論)という本文の論理構造を正確に反映している。「羅針盤」を「指針」と言い換えるなど、適切な表現調整も行われている。
誤答の論拠:
問三:「教養は大切だから」といった抽象的な解答や、教養の定義のみを述べる解答は、論旨全体を踏まえた結論の説明になっていない。
この解法が有効な条件:
文章全体の論旨を問う記述問題では、序論・本論・結論の論理構造を把握し、特に結論部分の主張を、そこに至る文脈(前提や背景)と関連付けて説明する構成が有効。