【基盤 英語】モジュール18:受動態の形態と識別

当ページのリンクには広告が含まれています。
目次

本モジュールの目的と構成

英文を読んでいると、”The window was broken.”のような文に出会う。この文の主語”the window”は動作の主体ではなく、動作を受ける側である。能動態の文では「誰が何をしたか」が明示されるが、受動態では「何がどうされたか」が前面に出る。この違いは単なる語順の変化ではなく、書き手が読み手に何を伝えたいかという情報構造の選択に直結する。受動態の形態を正確に識別できなければ、主語が動作主なのか被動作主なのかを取り違え、文意の根本的な誤読に至る。とりわけ入試長文では、受動態が多用される学術的・論説的な英文が頻出し、受動態の識別ができないまま読み進めると、因果関係や論理展開を正確に追跡できなくなる。本モジュールは、受動態の形態的特徴を正確に把握し、能動態との識別を確実に行える能力の確立を目的とする。

本モジュールは以下の層で構成される:

統語:受動態の形態的構造の把握 → 受動態は「be動詞+過去分詞」という形態的特徴を持つが、進行形受動態・完了形受動態・助動詞を伴う受動態など、複数の変形パターンが存在する。統語層では、これらの形態パターンを体系的に整理し、文中で受動態が使われているかどうかを形態的手がかりから正確に判定する能力を確立する。

意味:受動態の意味的機能の理解 → 受動態は単に能動態を「ひっくり返した」ものではなく、動作主の不明・動作の結果への焦点化・客観性の付与など、特定の意味的機能を担う。意味層では、受動態がなぜその文脈で選択されたのかを判断し、by句の有無が意味に与える影響を理解する能力を確立する。

語用:文脈に応じた態の選択判断 → 実際の英文では、能動態と受動態のどちらを使うかは文脈・情報構造・文体によって決まる。語用層では、与えられた文脈において受動態が適切かどうかを判断し、態の選択が伝達効果に及ぼす影響を識別する能力を確立する。

談話:文章レベルでの受動態の機能 → 学術論文や新聞記事では、受動態が文章全体の結束性や客観性を高めるために戦略的に使用される。談話層では、複数の文にわたる受動態の使用パターンを認識し、文章の情報構造における受動態の役割を把握する能力を確立する。

このモジュールを修了すると、以下の能力が身につく。英文中に受動態が現れたとき、be動詞と過去分詞の組み合わせを手がかりとして即座にその存在を検知し、進行形受動態や完了形受動態を含む多様な変形パターンにも対応できるようになる。さらに、受動態が選択された意味的理由を文脈から推論し、動作主が明示されない文においても情報の焦点がどこに置かれているかを正確に判断できるようになる。能動態と受動態の使い分けが文の伝達効果にどのような違いをもたらすかを理解し、入試の文法問題・整序問題・長文読解において、態の識別に基づく正確な文意把握を実現できるようになる。これらの能力は、後続のモジュールで学ぶ助動詞や準動詞との組み合わせ、さらには情報構造に基づく長文読解へと発展させることができる。

統語:受動態の形態的構造の把握

英文を読む際、主語が動作を行う側なのか受ける側なのかを取り違えると、文全体の意味が反転する。”The policy was criticized by several experts.”を「その政策がいくつかの専門家を批判した」と読んでしまえば、論旨の理解は根本から崩壊する。統語層を終えると、be動詞+過去分詞の基本形態から、進行形受動態・完了形受動態・助動詞付き受動態に至るまで、受動態の全形態パターンを正確に識別できるようになる。品詞の名称と基本機能、および基本的な文型の判定能力を備えていれば、ここから先の分析に進める。受動態の形態的判定、能動態との構造的区別、多様な受動態パターンの識別を扱う。統語層で確立される形態識別の能力がなければ、意味層以降で受動態の意味的機能や文脈における態の選択を正確に分析することは不可能である。

【関連項目】

[基盤M15-統語]
└ 時制の形態的識別手順が受動態の時制判定に直接適用される

[基盤M17-統語]
└ 進行形の形態が受動態と組み合わさるパターンの理解に必要となる

[基盤M22-統語]
└ 過去分詞の形態的識別が受動態の判定における中核的手がかりとなる

【基礎体系】

[基礎M08-統語]
└ 態と情報構造の原理的理解を深める

1. 受動態の基本形態と識別

受動態を学ぶ際、「”be動詞+過去分詞”を見つければよい」という理解だけで十分だろうか。実際の英文では、”The door is closed.”が受動態(「ドアが閉められている」)なのか、形容詞としてのclosedを用いたSVC文型(「ドアは閉まっている」)なのか判断に迷う場面が頻繁に生じる。受動態の識別能力が不十分なまま長文に取り組むと、主語と動作の関係を誤って把握し、文全体の因果関係を取り違える結果となる。

受動態の形態的識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、be動詞と過去分詞の組み合わせから受動態を正確に検出できるようになる。第二に、受動態と形容詞的用法の過去分詞を区別できるようになる。第三に、by句の有無に関わらず受動態を識別できるようになる。第四に、受動態の基本構造から文型を正確に判定できるようになる。

受動態の形態的識別能力は、次の記事で扱う受動態と形容詞的過去分詞の境界判定、さらに意味層での受動態の機能分析へと直結する。

1.1. 受動態の基本構造と能動態からの変換

一般に受動態は「能動態をひっくり返したもの」と単純に理解されがちである。しかし、この理解は受動態の構造的特徴を形態的に把握する視点を欠いているという点で不正確である。学術的・本質的には、受動態とは「be動詞+過去分詞(pp)」という形態的パターンによって、能動態における目的語を主語の位置に移動させ、動作を受ける側を文の主題とする統語的操作として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、受動態の識別はbe動詞の存在と過去分詞の形態という2つの形態的手がかりに基づいて機械的に判定可能であるためである。能動態”Someone broke the window.”では”someone”が主語で動作主であるが、受動態”The window was broken.”では”the window”が主語となり動作を受ける側に変わる。ここで”was”がbe動詞、”broken”が過去分詞であり、この組み合わせが受動態の形態的標識となる。なお、受動態への変換において能動態の主語は通常by句として文末に移動するが、動作主が不特定・自明である場合にはby句が省略されることが多く、省略の有無は文の意味には影響を与えるものの形態的識別の要件ではない。

この原理から、受動態を識別する具体的な手順が導かれる。手順1ではbe動詞を探す。文中にam, is, are, was, were, been, beingのいずれかが存在するかを確認することで、受動態の可能性を検出できる。ここで注意すべきは、be動詞は進行形(be + -ing)や存在表現(There is/are…)でも使用されるため、be動詞の存在だけでは受動態と断定できないという点である。手順2ではbe動詞の直後(副詞を挟む場合もある)に過去分詞があるかを確認する。過去分詞は規則動詞なら-ed形、不規則動詞なら固有の形態(broken, written, taken等)を取るため、これを確認することで受動態の形態パターンを特定できる。規則動詞の-ed形は過去形とも同形であるため、文中の位置(be動詞の直後かどうか)が判定の決め手となる。手順3では主語と動詞の意味関係を検証する。主語が動作を「行う」側ではなく「受ける」側であるかを確認することで、受動態であるかの最終判定ができる。なお、”The door is closed.”のように状態を表す場合はSVC文型(closedが形容詞)の可能性があり、by句が付加可能か・動作の過程を想定できるかで判別する。手順4では時制を確定する。be動詞の形態から時制を特定し、受動態の完全な構造を把握する。wasなら過去受動態、isなら現在受動態、will beなら未来受動態と判定できる。

例1: The report was written by the committee.
→ be動詞: was。過去分詞: written。主語”the report”は書かれる側。
→ 受動態。能動態に戻すと: The committee wrote the report.
→ 過去時制の受動態。by句により動作主が明示されている典型例。

例2: English is spoken in many countries.
→ be動詞: is。過去分詞: spoken。主語”English”は話される側。by句なし。
→ 受動態。動作主が不特定多数のためby句が省略されている。
→ 現在時制の受動態。一般的事実を述べる用法。

例3: The museum was visited by thousands of tourists last year.
→ be動詞: was。過去分詞: visited。主語”the museum”は訪問される側。
→ 受動態。by句により動作主”thousands of tourists”が明示されている。
→ last yearから過去時制。数量表現を伴うby句の典型例。

例4: The results were announced yesterday.
→ be動詞: were。過去分詞: announced。主語”the results”は発表される側。
→ 受動態。by句がなくても、主語が動作を受ける関係から受動態と判定できる。
→ yesterdayから過去時制。announceは規則動詞で-ed形が過去分詞。

以上により、be動詞と過去分詞の形態的組み合わせを手がかりとして受動態を検出し、主語と動詞の意味関係を検証することで、受動態を正確に識別することが可能になる。

2. 受動態と形容詞的過去分詞の区別

be動詞+過去分詞の形態を持つ文がすべて受動態であるとは限らない。”The window is broken.”は「窓が割られている(受動態)」とも「窓は割れている(形容詞)」とも解釈でき、この二つは文法的に異なる構造である。受動態は動作・行為を表し、形容詞的用法は状態を表す。この区別は英文の正確な意味理解に不可欠であり、入試では受動態か形容詞かの判定を問う設問が文法問題・下線部解釈ともに出題される。

受動態と形容詞的過去分詞の区別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、be動詞+過去分詞の形態から受動態と形容詞的用法を体系的に区別できるようになる。第二に、区別の3つの判定基準(by句付加可能性・動作過程の想定・程度副詞との共起)を適用できるようになる。第三に、文脈に応じて二重解釈が可能な文の曖昧性を認識できるようになる。第四に、感情動詞の過去分詞(interested, surprisedなど)が形容詞化している場合を正確に判定できるようになる。

受動態と形容詞的過去分詞の区別は、意味層で受動態の意味的機能を分析する際、分析対象が真に受動態であるかを確認する前提となる。

2.1. 3つの判定基準の体系的適用

受動態とは何か。「be動詞+過去分詞」の形態を持つ文がすべて受動態であるとは限らない。”The window is broken.”は「窓が割られている(受動態)」とも「窓は割れている(形容詞)」とも解釈でき、この二つは文法的に異なる構造である。受動態は動作・行為を表し、形容詞的用法は状態を表す。この区別ができなければ、文の意味を正確に把握することは不可能である。

上記の定義から、受動態と形容詞的過去分詞を区別する手順が論理的に導出される。手順1ではby句の付加可能性を検証する。”The window was broken by the children.”のようにby句を自然に付加できれば受動態である。”She is interested.”に”by someone”を付加すると不自然になる場合は形容詞的用法の可能性が高い。ただしinterestedは”interested in〜”の形で形容詞として定着しているため、この手順だけでは判断できない場合がある。手順2では動作の過程を想定できるかを確認する。「誰かが窓を割る」という動作の過程が想定できれば受動態であり、単に「割れた状態にある」ことを表していれば形容詞的用法である。この基準は特に重要で、受動態は動態的(dynamic)な出来事を表し、形容詞的用法は静態的(stative)な状態を表すという本質的な違いに対応している。手順3ではvery等の程度副詞との共起を確認する。”She is very interested in science.”のようにveryで修飾できれば形容詞化が進んでいる証拠であり、”The window was very broken.”は不自然であるため受動態と判定できる。手順4では3つの基準を総合的に適用する。基準が矛盾する場合(by句は付加できるがveryとも共起する等)は、文脈に照らしてどちらの解釈が自然かを最終判断する。なお、一部の過去分詞(closed, openなど)は文脈によって受動態にも形容詞にもなりうるため、前後の文脈との整合性が最終的な決め手となることがある。

例1: The gate was locked at 9 p.m.
→ 「9時に施錠された」(動作)と解釈可能。by the guardを付加できる。
→ 受動態。時間の副詞句が動作の時点を示しており、動態的な出来事を記述している。

例2: The store is closed on Sundays.
→ 「日曜日は閉まっている」(状態)の解釈が自然。by someoneの付加はやや不自然。
→ 形容詞的用法の可能性が高い。ただし「日曜日には閉店させられる」という文脈では受動態の解釈もありうる。on Sundaysが習慣を示す点が形容詞的解釈を支持する手がかりとなる。

例3: He was surprised by the news.
→ be動詞: was。過去分詞: surprised。by句が明示されている。
→ 受動態。「そのニュースによって驚かされた」という動作の過程が想定できる。感情動詞の場合、by句があれば受動態、very等で修飾されていれば形容詞と判断する手がかりになる。

例4: She is very tired.
→ veryで修飾されている。”tired by someone”は不自然。
→ 形容詞的用法。tiredは形容詞として完全に定着した過去分詞である。同様にbored, excited, worried, satisfiedなども形容詞化した過去分詞の典型例であり、前置詞(in, with, about等)と結びつく場合は形容詞と判断してよい。

これらの例が示す通り、by句の付加可能性・動作の過程の想定・程度副詞との共起という3つの基準を体系的に適用することで、受動態と形容詞的過去分詞を確実に区別する能力が確立される。

3. 多様な受動態パターンの識別

受動態には「be動詞+過去分詞」という基本形態だけでなく、進行形受動態・完了形受動態・助動詞付き受動態など、複数の変形パターンが存在する。入試では基本形のみならずこれらの変形パターンが頻出するが、形態が複雑になるほど受動態の識別が困難になり、文構造の誤認につながりやすい。

多様な受動態パターンの識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、進行形受動態(be being pp)の形態を正確に識別できるようになる。第二に、完了形受動態(have been pp)を現在完了・過去完了の枠組みの中で把握できるようになる。第三に、助動詞を伴う受動態(助動詞+be pp)の形態を識別できるようになる。第四に、これらの変形パターンが混在する文において、各要素の文法的機能を正確に判定できるようになる。

まず進行形受動態と完了形受動態の形態的区別を確認し、その上で助動詞付き受動態へ進む。

3.1. 進行形受動態と完了形受動態

一般に進行形受動態や完了形受動態は「形が長くて複雑なだけ」と漠然と理解されがちである。しかし、この理解はそれぞれの形態が異なる時間的意味を担っていることを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、進行形受動態(be being pp)は「動作が進行中であること」を被動作主の視点から表す形態であり、完了形受動態(have been pp)は「動作の完了とその現在への関連性」を被動作主の視点から表す形態として定義されるべきものである。これらの形態を正確に識別できることが重要なのは、時間的意味の違いが文意の正確な理解に直結するためである。進行形受動態は「まさにその時〜されている最中」という一時的・動態的な意味を持ち、完了形受動態は「すでに〜されてしまった(そしてその影響が残っている)」という結果残存的な意味を持つ。この違いを混同すると、たとえば「現在修理中の橋」と「すでに修理が完了した橋」を取り違えることになる。

以上の原理を踏まえると、進行形受動態と完了形受動態を識別するための手順は次のように定まる。手順1ではbe動詞の形態を確認する。現在形(am/is/are)か過去形(was/were)かを特定することで、時制の基本的な枠組みを把握できる。手順2では”being”の有無を確認する。be動詞の直後に”being”があり、その後に過去分詞が続けば進行形受動態(be being pp)である。”being”がなく”been”があれば、その前にhave/has/hadがあるかを確認し、完了形受動態(have been pp)と判定する。この段階で重要なのは、beingとbeenの1文字の違いが構造的に全く異なる意味を担うという認識である。手順3では全体の形態パターンを確定する。「be + being + pp」なら進行形受動態、「have/has/had + been + pp」なら完了形受動態であると最終判定する。手順4では時間的意味を検証する。進行形受動態なら「その時点で進行中の動作」、完了形受動態なら「その時点までに完了した動作」という意味と文脈が整合するかを確認する。

例1: A new bridge is being built across the river.
→ is(be動詞)+ being + built(過去分詞)。進行形受動態。
→ 「新しい橋が川に架けて建設されている最中である」。動作の進行を表す。
→ 建設が現在まさに行われていることを伝える文。完了形受動態と混同しないこと。

例2: The project has been completed ahead of schedule.
→ has + been + completed(過去分詞)。完了形受動態。
→ 「そのプロジェクトは予定より早く完了した」。完了と現在への関連性を表す。
→ hasの存在がhave/has + been + ppの完了形受動態の標識。

例3: The building was being renovated when the earthquake struck.
→ was(過去形be動詞)+ being + renovated(過去分詞)。過去進行形受動態。
→ 「地震が起きたとき、その建物は改修されている最中だった」。過去の進行中動作。
→ when節で示される過去の時点において動作が進行中であったことを表す。

例4: The documents had been reviewed before the meeting started.
→ had + been + reviewed(過去分詞)。過去完了形受動態。
→ 「会議が始まる前に、書類は審査されていた」。過去のある時点より前の完了を表す。
→ hadの存在が過去完了であることの標識。beforeの時間関係に注目。

以上により、be動詞の形態・beingとbeenの有無・have/has/hadの存在を体系的に確認することで、進行形受動態と完了形受動態を正確に識別することが可能になる。

3.2. 助動詞を伴う受動態

助動詞を伴う受動態には二つの捉え方がある。一つは「助動詞+受動態」を単なる形の組み合わせとして覚えるアプローチ、もう一つは助動詞の文法的性質から形態を論理的に導出するアプローチである。前者では形態パターンの数が増えるたびに暗記の負担が増大するが、後者では「助動詞の直後は動詞の原形」という原則を適用するだけで、あらゆる組み合わせを導出できる。助動詞を伴う受動態は「助動詞+be+過去分詞」の形態を取る。助動詞(can, will, may, must, should等)の直後にはつねに動詞の原形が来るという文法規則から、受動態のbe動詞は原形”be”となり、その後に過去分詞が続くのは当然の帰結である。この原理を理解していれば、新しい助動詞に出会っても受動態の形を論理的に導出できるため、暗記に頼る必要がない。さらに、否定形では助動詞とbeの間にnotが挿入され(cannot be seen, should not be used等)、疑問形ではCan this problem be solved?のように助動詞が文頭に移動する。いずれのパターンも「助動詞+be+pp」の原則から逸脱しない。

では、助動詞付き受動態を識別するにはどうすればよいか。手順1では助動詞を特定する。can, will, may, must, should, could, would, might等の助動詞が文中に存在するかを確認することで、助動詞付きの構造の可能性を検出できる。手順2では助動詞の直後に”be”があるかを確認する。助動詞の直後が”be”(原形)であり、その後に過去分詞が続けば、助動詞付き受動態と判定できる。なお、否定語”not”が助動詞とbeの間に入る場合(cannot be seen等)もある。また、助動詞の後にhave beenが続く場合(must have been stolen等)は「助動詞+完了形受動態」の複合形態であり、「〜されたに違いない」のように過去の出来事への推量を表す。手順3では意味を検証する。主語が動作を受ける側であり、助動詞が付与する意味(可能・推量・義務等)と合致するかを確認することで、最終的な判定ができる。手順4ではcan/couldの受動態とbe able toの受動態を区別する。can be seenは「見られうる(一般的可能性)」、could have been seenは「見られた可能性があった(過去の可能性)」であり、助動詞の選択が時間的・論理的なニュアンスを変える。

例1: This problem can be solved in several ways.
→ can(助動詞)+ be(原形)+ solved(過去分詞)。助動詞付き受動態。
→ 「この問題はいくつかの方法で解決されうる」。canが可能の意味を付与。
→ 否定形はcannot be solved。疑問形はCan this problem be solved?

例2: The decision must be made by tomorrow.
→ must(助動詞)+ be(原形)+ made(過去分詞)。助動詞付き受動態。
→ 「その決定は明日までになされなければならない」。mustが義務の意味を付与。
→ 過去への推量ではmust have been madeとなり「なされたに違いない」の意味。

例3: The results will be announced next week.
→ will(助動詞)+ be(原形)+ announced(過去分詞)。助動詞付き受動態。
→ 「結果は来週発表される予定である」。willが未来の意味を付与。
→ 未来の受動態の最も基本的な形態。

例4: The package should be delivered within three days.
→ should(助動詞)+ be(原形)+ delivered(過去分詞)。助動詞付き受動態。
→ 「その荷物は3日以内に届けられるはずである」。shouldが当然・推量の意味を付与。
→ should have been deliveredなら「届けられるべきだったのに届けられなかった」と含意が変わる。

以上の適用を通じて、助動詞の直後に「be+過去分詞」の形態が出現するパターンを体系的に識別する能力を習得できる。

4. 受動態を取る動詞と取らない動詞

受動態には「どんな動詞でも受動態にできる」という誤解がある。実際には受動態にできる動詞とできない動詞があり、この区別を正確に理解しなければ、文法問題で誤答するだけでなく、英文中の受動態を能動態に正しく復元できない事態が生じる。

受動態を取る動詞と取らない動詞の区別によって、以下の能力が確立される。第一に、他動詞と自動詞の区別に基づいて受動態の可否を判定できるようになる。第二に、SVO文型・SVOO文型・SVOC文型それぞれの受動態パターンを把握できるようになる。第三に、群動詞(句動詞)の受動態の形態を識別できるようになる。第四に、受動態にできない動詞(自動詞・状態動詞の一部)を正確に識別できるようになる。

まず動詞の自他と受動態の可否の関係を確認し、次の記事で文型ごとの受動態の変換パターンを扱う。

4.1. 動詞の自他と受動態の可否

一般に受動態は「目的語を主語にすればどんな文でも作れる」と理解されがちである。しかし、この理解は目的語を持たない自動詞(happen, occur, exist等)が受動態にできないことを説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、受動態は他動詞(目的語を取る動詞)に対してのみ適用可能な統語的操作として定義されるべきものである。この原則が重要なのは、受動態の可否が動詞の自他の区別によって決定されるため、自動詞を誤って受動態にする誤りや、受動態を能動態に復元する際の動作主の特定に直結するためである。なお、英語では同一の動詞が自動詞と他動詞の両方の用法を持つことが多い(例:breakは自動詞「壊れる」にも他動詞「壊す」にもなる)ため、動詞そのものではなく「その文における用法」で自他を判定する必要がある。また、状態を表す他動詞の一部(have, resemble, cost, weigh等)は目的語を取るにもかかわらず受動態にできないという例外があり、これらは動作ではなく状態・関係を表すために受動態の前提となる「動作の受け手」が存在しないためである。

この原理から、動詞の種類に基づいて受動態の可否を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では動詞が他動詞か自動詞かを確認する。目的語を取る動詞(他動詞)であれば受動態が可能であり、目的語を取らない動詞(自動詞)であれば受動態は不可能である。手順2では他動詞であっても状態動詞(have, resemble, fit, cost等)に該当しないかを確認する。これらの動詞は「何かをされる」という受け手の概念が成立しないため受動態にできない。”This bag costs 100 dollars.”の受動態”100 dollars are cost by this bag.“は不成立である。手順3では自動詞+前置詞の組み合わせ(句動詞)が他動詞と同等の機能を果たしていないかを確認する。“look after”(〜の世話をする)や”deal with”(〜を扱う)のような句動詞は、全体として目的語を取るため受動態にできる。手順4では群動詞(句動詞)の場合、動詞と前置詞・副詞をひとまとまりとして扱い、受動態にする際も分離しないことを確認する。”look after”であれば”The children were looked after by their grandmother.”のように”look after”を一体として扱う。

例1: The accident happened yesterday.
→ happenは自動詞。目的語がない。
→ 受動態不可。”Yesterday was happened the accident.”は文法的に誤り。
→ 同様にoccur, exist, arrive, appear等の自動詞も受動態にできない。

例2: This dress resembles that one.
→ resembleは他動詞(目的語that oneを取る)だが状態動詞。
→ 受動態不可。”That one is resembled by this dress.”は不自然。
→ 「似ている」という関係・状態には動作の受け手が存在しない。

例3: The nurses looked after the patients. → The patients were looked after by the nurses.
→ “looked after”は句動詞として一体で扱う。afterを分離しない。
→ 群動詞の受動態。前置詞を残して主語の位置に目的語を移動させる。

例4: We laughed at his joke. → His joke was laughed at by us.
→ “laughed at”は句動詞として一体で扱う。laugh自体は自動詞だがatと結びつくことで他動詞的機能を果たす。
→ 句動詞の受動態。前置詞atが動詞の直後に残る形になる。

以上により、動詞の自他の区別と状態動詞の判定を組み合わせることで、受動態の成立可否を正確に判定し、句動詞を含む多様な構造に対応できるようになる。

5. 文型別の受動態変換パターン

動詞の自他と受動態の可否を理解した上で、次に必要なのはSVO・SVOO・SVOC各文型に対応する受動態の変換パターンの把握である。SVO文型では目的語を主語にした1通りの受動態が可能であるが、SVOO文型では2つの目的語のどちらを主語にするかで2通りの受動態が成立し、SVOC文型では目的語を主語にしつつ補語をそのまま残す形が成立する。これらの変換パターンを正確に理解しておくことは、入試の態の書き換え問題に直結する。

文型別の受動態変換パターンの把握によって、以下の能力が確立される。第一に、SVOO文型の2通りの受動態を正確に生成・識別できるようになる。第二に、SVOC文型の受動態で補語の位置と形態が変化しないことを理解できるようになる。第三に、that節を目的語に取る構文の受動態(It is said that…形式)を識別できるようになる。第四に、入試の態の書き換え問題で正確な変換ができるようになる。

文型別の受動態変換パターンは、意味層で受動態の選択理由を分析する際に、文の構造的基盤として機能する。

5.1. SVOO・SVOC文型と特殊構文の受動態

一般にSVOO文型やSVOC文型の受動態は「目的語を主語にすればよい」と単純に理解されがちである。しかし、この理解はSVOO文型で2通りの受動態が可能であること、SVOC文型で補語が残存すること、that節を目的語に取る構文でit仮主語を用いた受動態が成立することを説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、受動態の変換とは、能動態の目的語を主語の位置に移動させる操作であり、この操作の結果は元の文型に応じて異なるパターンを取るものとして定義されるべきものである。SVOO文型では間接目的語と直接目的語の2つが移動候補となるため2通りの受動態が成立する。SVOC文型では目的語のみが移動し、補語は述語動詞の後に残る。that節を目的語に取る構文では、it仮主語を用いて”It is said that…”の形になる。これらのパターンを体系的に把握することが重要なのは、入試では態の変換が文法問題・整序問題の定番であり、文型に応じた正確な変換が得点に直結するためである。

この原理から、文型別の受動態変換を行う具体的な手順が導かれる。手順1ではもとの能動態の文型を判定する。SVO・SVOO・SVOCのいずれであるかを特定する。手順2ではSVOO文型の場合、間接目的語と直接目的語のそれぞれを主語にした2通りの受動態を検討する。間接目的語を主語にした形(She was given a present.)が英語では好まれる傾向があるが、直接目的語を主語にした形(A present was given to her.)も文法的に正しい。なお、explainやsuggestなどの動詞は間接目的語を主語にした受動態が不自然なため注意が必要である(”I was explained the problem.”は非標準)。手順3ではSVOC文型の場合、目的語を主語にし、補語はそのまま述語動詞の後に残す。補語が名詞の場合も形容詞の場合も、位置は変わらない。手順4ではthat節を目的語に取る構文の場合、形式主語itを用いた”It is + 過去分詞 + that…”の形に変換する。People say that he is honest. → It is said that he is honest. / He is said to be honest.のように、2通りの変換が可能な場合がある。

例1: They gave her a present.
→ SVOO文型。間接目的語her、直接目的語a present。
→ 受動態①: She was given a present.(間接目的語が主語)
→ 受動態②: A present was given to her.(直接目的語が主語、前置詞toが必要)

例2: They elected him president.
→ SVOC文型。目的語him、補語president。
→ 受動態: He was elected president.(目的語が主語、補語はそのまま残る)
→ 補語presidentの形態・位置は変化しない。

例3: People believe that the earth is round.
→ SVO文型(that節が目的語)。
→ 受動態①: It is believed that the earth is round.(it仮主語構文)
→ 受動態②: The earth is believed to be round.(that節の主語が文の主語に昇格)

例4: They named the baby Emma.
→ SVOC文型。目的語the baby、補語Emma。
→ 受動態: The baby was named Emma.(補語Emmaはそのまま残る)
→ call, name, elect, appoint, make等のSVOC動詞で同じパターンが成立する。

以上により、文型の判定に基づいて適切な受動態変換パターンを選択し、SVOO・SVOC・that節構文それぞれの受動態を正確に生成・識別することが可能になる。

意味:受動態の意味的機能の理解

受動態の形態的パターンを識別できるようになった段階で、次に問うべきは「なぜ書き手はこの文で受動態を選んだのか」という問いである。意味層を終えると、受動態が選択される意味的理由を文脈から判断し、動作主の省略・結果への焦点化・客観性の付与といった受動態の機能を正確に理解できるようになる。学習者は統語層で確立したbe動詞+過去分詞の形態的識別能力を備えている必要がある。受動態の選択理由の分析、by句の有無と情報価値の関係、受動態と能動態の意味的差異を扱う。後続の語用層で文脈に応じた態の選択を判断する際、本層で確立した受動態の意味的機能の理解が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤M32-意味]
└ 時制の基本的意味が受動態における時間関係の把握に活用される

[基盤M34-意味]
└ 助動詞の意味が受動態における話者の判断(可能・義務・推量等)の理解と接続する

【基礎体系】

[基礎M08-意味]
└ 態と情報構造の関係を意味論的観点から深める

1. 受動態の選択理由と意味的機能

受動態を学ぶ際、「能動態を書き換えたもの」という理解だけで十分だろうか。実際の英文では、書き手が受動態を選ぶのには明確な理由があり、その理由を理解できなければ文意の正確な把握はできない。受動態の意味的機能の理解が不十分なまま長文に取り組むと、書き手がなぜその情報を前景化したのかを見落とし、論旨の追跡が困難になる。

受動態の意味的機能の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、動作主が不明・不特定・自明である場合に受動態が選択される理由を理解できるようになる。第二に、動作の結果や被動作主に焦点を当てるための受動態使用を識別できるようになる。第三に、by句の有無が文の情報構造に与える影響を判断できるようになる。第四に、学術的文章や報道文で受動態が客観性を付与するために使用される機能を把握できるようになる。

受動態の意味的機能の理解は、次の記事で扱うby句の情報価値の分析、さらに語用層で文脈に応じた態の選択判断を行う際の基盤となる。

1.1. 受動態が選択される4つの理由

受動態が選択される理由について、「能動態で書けるものをわざわざ受動態にしたもの」という理解は、受動態が積極的に選択される動機を説明できないという点で不十分である。学術的・本質的には、受動態とは以下の4つの条件のいずれかに該当するときに選択される情報構造上の手段として定義されるべきものである。第一に動作主が不明(”The window was broken.”̶̶誰が割ったか分からない)、第二に動作主が不特定(”English is spoken worldwide.”̶̶特定の誰かではない)、第三に動作主が文脈上自明(”The suspect was arrested.”̶̶警察が逮捕したことは自明)、第四に被動作主に焦点を当てたい場合(”The Mona Lisa was painted by Leonardo da Vinci.”̶̶モナリザが話題の中心)である。この4つの分類が重要なのは、受動態の選択理由を理解することで、書き手が読み手にどの情報を優先的に伝えようとしているかを判断できるようになるためである。なお、これら4つの理由は相互排他的ではなく、複数が同時に該当する場合もある。たとえば”The bridge was built in 1920.”では、建設者が不特定であることと橋に焦点を当てたいことが同時に受動態選択の動機となっている。

この原理から、受動態の選択理由を分析する具体的な手順が導かれる。手順1ではby句の有無を確認する。by句がなければ、動作主が不明・不特定・自明のいずれかであり、その判断は文脈から行う。犯罪報道では動作主不明、科学的記述では動作主不特定、日常的な場面記述では動作主自明であることが多い。手順2ではby句がある場合、被動作主(主語)と動作主(by以下)のどちらが文の話題として優先されているかを確認する。主語の位置にある被動作主が文脈上の話題であれば、被動作主への焦点化が受動態の選択理由である。手順3では文脈における情報の新旧を確認する。英文では旧情報(既知の情報)が文頭に、新情報が文末に来る傾向があり(end-focus principle)、受動態はこの情報配置を実現するための手段として機能する。by句に新情報が来る場合、受動態は文末焦点の原則に従った選択である。手順4では4つの理由のどれに該当するかを特定する。文脈の種類(学術文・報道文・物語文・日常文)も手がかりとなる。

例1: The castle was built in the 14th century.
→ by句なし。建設者は歴史的に不特定または自明。
→ 城(被動作主)に焦点。建設の時期という情報を文末に配置している。
→ 「不特定」と「焦点化」の2つの理由が同時に作用。

例2: My wallet was stolen on the train.
→ by句なし。盗んだ人物は不明。
→ 動作主不明のため受動態が選択されている。能動態にすると”Someone stole my wallet.”となるが、someoneは情報量がなく冗長。
→ 受動態は不明な動作主に言及する必要を回避する手段でもある。

例3: The theory was proposed by Einstein.
→ by句あり。「その理論」が話題(旧情報)であり、「アインシュタイン」が新情報。
→ 被動作主への焦点化と文末焦点の原則の両方が受動態の選択理由。
→ 直前の文脈で理論について議論していれば、旧情報を文頭に置く配列として機能。

例4: Three people were injured in the accident.
→ by句なし。事故が怪我を引き起こしたことは自明。
→ 報道文体で被害状況(3人が負傷)に焦点を当てるために受動態が使用されている。
→ 能動態”The accident injured three people.”も文法的には成立するが、報道では被害者側に焦点を当てる受動態が慣例的に好まれる。

以上により、by句の有無・文の話題・情報の新旧という3つの観点から受動態の選択理由を分析し、書き手の伝達意図を正確に把握することが可能になる。

2. by句の情報価値と省略の判断

受動態におけるby句について、「by句は省略できる」という説明はよく見かけるが、省略できる場合とできない場合の基準は文法的に重要な問題である。by句の有無は受動態の文が持つ情報量と伝達効果を左右するため、その判断基準を正確に理解しておくことは入試の読解・英作文の両方で不可欠となる。

by句の情報価値の判断能力によって、以下の能力が確立される。第一に、by句が情報価値の高いものか低いものかを体系的に判定できるようになる。第二に、省略可能なby句と省略不可能なby句を区別できるようになる。第三に、by句の有無が文の焦点と全体の情報量に与える影響を分析できるようになる。第四に、英作文においてby句を付加すべきかどうかを適切に判断できるようになる。

by句の情報価値の判断は、受動態と能動態の意味的差異を理解する上での前提となり、語用層での態の選択判断に直結する。

2.1. by句の省略基準と情報構造

by句には情報価値の高いものと低いものがあり、この区別が省略の可否を決定する。情報価値が低いby句とは、動作主が文脈上自明であるか一般的な人々を指す場合であり、情報価値が高いby句とは、動作主の特定が文意の理解に不可欠な場合である。この区別が重要なのは、by句の有無が文の焦点と情報量を左右し、読み手が受け取る印象が大きく変わるためである。統計的に見ると、実際の英文で受動態が使用される場合の約80%はby句を伴わないとされており、これは多くの場合、受動態の選択理由が動作主の不明・不特定・自明のいずれかであるためである。by句が使用される場合は、動作主の情報が文脈上特に重要な新情報であるケースがほとんどである。

では、by句の情報価値を判定するにはどうすればよいか。手順1ではby句の動作主が文脈上推測可能かを確認する。推測可能であれば情報価値が低く、省略が自然である(例:”The criminal was arrested.”で”by the police”は自明)。推測が困難な場合、動作主の情報が読み手にとって新しく重要であることを意味するため、by句は省略すべきでない。手順2ではby句の動作主が新情報を提供しているかを確認する。「誰が」の情報が読み手にとって新しく重要であれば、by句は省略できない(例:”Penicillin was discovered by Alexander Fleming.”で発見者の情報は不可欠)。この判定は文末焦点の原則とも関連する。新情報が文末に来るという英語の原則に従えば、by句は文末に新情報を配置する手段として機能している。手順3ではby句を省略した場合と残した場合で文の情報量に差があるかを検証する。差がなければ省略が適切であり、差があれば残すべきである。手順4ではby句の動作主が一般名詞(people, someone, they等)か固有名詞(Einstein, the government等)かを確認する。一般名詞の場合は情報価値が低いことが多く、固有名詞の場合は情報価値が高いことが多い。

例1: The letter was delivered (by the postman).
→ 手紙を届けるのは郵便配達人であることは自明。
→ by the postmanは情報価値が低く、省略が自然。
→ 省略しても読み手の理解に影響しない。

例2: Hamlet was written by Shakespeare.
→ 誰がハムレットを書いたかは、この文の伝える核心的情報。
→ by Shakespeareは情報価値が高く、省略不可。
→ 省略すると”Hamlet was written.”となり、文の存在意義が失われる。

例3: The road is being repaired (by workers).
→ 道路を修理するのは作業員であることは自明。
→ by workersは情報価値が低く、省略が自然。
→ 一般名詞workersは特定の情報を提供しないため冗長。

例4: The decision was influenced by several political factors.
→ 何が決定に影響したかは文の核心。
→ by several political factorsは情報価値が高く、省略すると文意が不完全になる。
→ 動作主が人間ではなく抽象的要因であっても、情報価値が高ければby句は必須。

4つの例を通じて、by句の省略可否を情報価値の観点から体系的に判定する方法が明らかになった。

3. 受動態と能動態の意味的差異

受動態と能動態が「同じ意味」であると考えてしまうと、長文読解や英作文で書き手の伝達意図を見落とす原因となる。実際には、同じ事態を表す文であっても、能動態と受動態では情報の焦点・文の主題・読み手に与える印象が異なる。この違いを正確に理解することは、入試の長文読解における書き手の意図把握と、英作文における適切な態の選択の両方に直結する。

能動態と受動態の意味的差異を理解することで、以下の能力が確立される。第一に、同一の事態を能動態と受動態で表した場合の焦点の違いを説明できるようになる。第二に、文脈に応じてどちらの態が適切かを判断する基礎を得られるようになる。第三に、客観性・公式性を付与するための受動態使用を識別できるようになる。第四に、入試の整序問題や英作文で態の選択を適切に行うための判断基準を獲得できるようになる。

能動態と受動態の意味的差異の理解は、語用層での態の選択判断、さらに談話層での文章レベルにおける態の機能分析へと直結する。

3.1. 焦点の移動と伝達効果の変化

能動態と受動態は「意味は同じで形が違うだけ」と理解されることがあるが、”A dog bit the boy.”と”The boy was bitten by a dog.”が読み手に与える印象の違いを説明するには、焦点の移動という概念が不可欠である。能動態は動作主を文の出発点(主題)とし動作主の行為に焦点を当てる構文であり、受動態は被動作主を文の出発点とし被動作主に生じた事態に焦点を当てる構文として定義されるべきものである。この区別が重要なのは、同一の事態であっても視点の違いが文脈への適合性を左右し、不適切な態の選択は文章の一貫性を損なうためである。英文では通常、文の主語の位置に来る要素が「話題(topic)」として認識され、読み手はその要素を出発点として文の情報を処理する。したがって、能動態と受動態の選択は「誰・何を出発点にするか」という書き手の情報伝達戦略の表れである。

この原理から、能動態と受動態の焦点の違いを分析する具体的な手順が導かれる。手順1では文の主語が動作主か被動作主かを確認する。主語が動作主であれば能動態で動作主に焦点があり、被動作主であれば受動態で被動作主に焦点がある。手順2では前後の文脈における話題(トピック)を確認する。直前の文で言及されている対象が主語の位置に来ていれば、話題の連続性が保たれている。この連続性が保たれない態の選択は、読み手に不自然な印象を与える。手順3では態を切り替えた場合に文脈の一貫性が損なわれるかを検証する。切り替えると不自然になる場合、現在の態が文脈上適切な選択であると判定できる。手順4では両方の態で書いてみて、どちらが前後の文の主語と話題的に連続するかを比較する。この比較によって、どちらの態が文脈に適合するかが明確になる。

例1: The teacher praised the student. / The student was praised by the teacher.
→ 能動態: 先生の行為に焦点。受動態: 生徒に起きた出来事に焦点。
→ 生徒について述べる文脈では受動態、先生の行為を述べる文脈では能動態が適切。
→ 前文が”The student worked hard.”なら受動態が話題の連続性を保つ。

例2: The company developed a new product. / A new product was developed by the company.
→ 能動態: 会社の活動に焦点。受動態: 新製品に焦点。
→ 製品紹介の文脈では受動態、企業活動の文脈では能動態が自然。
→ 後続の文で製品の特徴を説明するなら受動態がスムーズに接続する。

例3: Lightning struck the tree. / The tree was struck by lightning.
→ 能動態: 雷という自然現象に焦点。受動態: 木に起きた被害に焦点。
→ 被害の報告では受動態が自然。前文で木について言及していれば受動態が適切。

例4: Scientists discovered a new species. / A new species was discovered by scientists.
→ 能動態: 科学者の業績に焦点。受動態: 新種の発見という事実に焦点。
→ 学術報告では受動態が客観的な印象を与える。科学者名を強調したい場合はby句付きの受動態が有効。

以上により、文の主語と文脈の話題を分析することで、能動態と受動態の焦点の違いを正確に判断し、文脈に適した態を識別する能力が確立される。

4. 受動態の意味的ニュアンスの多様性

受動態が表す意味は「〜される」だけではない。受動態は文脈に応じて「迷惑」「完了状態」「結果残存」「客観的事実の提示」など多様なニュアンスを持ち、これらの意味的ニュアンスを識別できることは、受動態を含む英文の正確な和訳や文意把握に不可欠である。

受動態の意味的ニュアンスの多様性の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、受動態が表す「動作」と「状態」の違いを文脈から識別できるようになる。第二に、受動態に付随する迷惑・被害のニュアンスを正確に把握できるようになる。第三に、get受動態(get+過去分詞)とbe受動態の使い分けを認識できるようになる。第四に、受動態の多様なニュアンスを入試の和訳問題で適切に表現できるようになる。

受動態の意味的ニュアンスの理解は、語用層で態の選択が伝達効果に及ぼす影響を分析する基盤となる。

4.1. 動作受動態と状態受動態、get受動態

受動態には「動作受動態」と「状態受動態」の区別がある。“The door was opened at 9 a.m.”(動作:9時に開けられた)と”The door was open.”(状態:開いていた)は似た意味に見えるが、前者は過去分詞、後者は形容詞であり文法的構造が異なる。受動態の意味的ニュアンスはこのような動作と状態の区別にとどまらず、get受動態(get+過去分詞)という口語的な形式も存在する。get受動態はbe受動態と比較して、動作の突発性・予期しなさ・被害のニュアンスを伴うことが多い。”He was hit by a car.”は客観的な記述であるのに対し、”He got hit by a car.”は「車にはねられてしまった」という話し手の驚きや共感のニュアンスを含む。この違いを認識することで、受動態を含む英文の意味をより精緻に把握できるようになる。

上記の定義から、受動態の意味的ニュアンスを判別する手順が論理的に導出される。手順1では受動態が動作を表しているか状態を表しているかを判定する。時間を表す副詞句(at 9 a.m., yesterday等)と共起していれば動作受動態の可能性が高く、時間指定のない文では状態受動態の可能性がある。手順2ではget受動態かbe受動態かを確認する。getが使われている場合は口語的な文体であり、突発的・予期しない出来事、あるいは主語にとって好ましくない事態を表すことが多い。ただしget married, get dressedのように中立的あるいは肯定的なニュアンスで使われる慣用表現もある。手順3では文脈から受動態に付随するニュアンス(客観的報告・迷惑・被害・驚き等)を判定する。このニュアンスの識別は和訳の精度に直結する。手順4ではbe受動態で表される場合と get受動態で表される場合の伝達効果の違いを比較する。フォーマルな文章ではbe受動態が標準であり、口語・非公式の文脈ではget受動態が自然である。

例1: He was injured in the accident.
→ be受動態。客観的な事実の記述。
→ 「彼はその事故で負傷した」。感情的なニュアンスは最小限。

例2: He got injured in the accident.
→ get受動態。突発的・予期しない出来事のニュアンス。
→ 「彼はその事故で負傷してしまった」。話し手の驚きや同情が含意される。

例3: They got married last summer.
→ get受動態だが、否定的ニュアンスではなく状態変化を表す慣用表現。
→ 「彼らは昨年の夏に結婚した」。get married, get dressed, get lost等はget受動態の中でも特殊な用法。

例4: The window got broken during the storm.
→ get受動態。嵐によって予期せず壊れたというニュアンス。
→ “The window was broken during the storm.”(be受動態)と比較すると、get受動態の方が出来事の突発性と被害のニュアンスが強い。

以上の適用を通じて、be受動態とget受動態の使い分け、動作と状態の区別、受動態に付随する多様なニュアンスを正確に識別する能力を習得できる。

語用:文脈に応じた態の選択判断

受動態の形態を識別し意味的機能を理解した段階で、次の課題は「この文脈では能動態と受動態のどちらが適切か」という判断である。語用層を終えると、与えられた文脈・場面・文体に応じて受動態の使用が適切かどうかを判断できるようになる。前提として統語層での形態的識別能力と意味層での受動態の意味的機能の理解が求められる。場面・文体に応じた態の選択基準、情報構造と態の関係、態の選択が伝達効果に及ぼす影響を扱う。後続の談話層で文章レベルの受動態使用パターンを分析する際、本層の能力が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤M44-語用]
└ 丁寧さの段階と態の選択が、対人関係における表現の適切性の判断で交差する

[基盤M45-語用]
└ 直接表現と間接表現の区別が、態の選択による伝達効果の変化の理解と接続する

【基礎体系】

[基礎M08-語用]
└ 態と情報構造の関係を語用論的観点から深める

1. 文体・場面に応じた態の選択

受動態の適切な使用場面を判断できなければ、英作文で不自然な態を選択したり、長文読解で書き手の文体的意図を見落としたりする。実際の英語使用では、学術論文・ニュース報道・日常会話・ビジネス文書など、文体や場面によって受動態の使用頻度と機能が異なる。

文体・場面に応じた態の選択能力によって、以下の能力が確立される。第一に、学術的文章で受動態が多用される理由を理解し、客観性の付与という機能を識別できるようになる。第二に、報道文体における受動態の機能(動作主の非明示化・事実の前景化)を把握できるようになる。第三に、日常会話では能動態が優先される傾向を理解し、受動態の使用が特別な効果を持つことを識別できるようになる。第四に、入試の英作文・整序問題において、場面に応じた態の選択ができるようになる。

まず場面別の態の使用傾向を体系的に整理し、次の記事で態の選択と情報構造の関係をさらに掘り下げる。

1.1. 場面別の態の使用傾向と判断基準

一般に態の選択は「どちらでもよい」と理解されがちである。しかし、この理解は場面によって態の適切性が大きく異なることを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、態の選択は文体・場面・伝達目的に応じて決定される語用論的判断として定義されるべきものである。学術論文では研究者個人よりも研究結果に焦点を当てるため受動態が多用され(“The experiment was conducted…”)、日常会話では動作主が明確なため能動態が優先される(“I broke the vase.”)。報道文体では被害や事実を前景化するため受動態が用いられ(“Three people were killed…”)、ビジネス文書では責任の所在を曖昧にするためにも受動態が選択されることがある(“A mistake was made.”)。この区別が重要なのは、態の選択は文の意味だけでなく書き手の立場・意図・文体的効果を反映するためである。さらに、文体的な慣習を無視した態の選択は読み手に違和感を与える。たとえば学術論文で”I conducted the experiment.”と一人称能動態を使うと、研究の客観性よりも研究者個人を前面に出す印象を与え、学術的慣習からの逸脱と受け取られる場合がある(ただし近年は一人称の使用を許容する学術分野も増えている)。

この原理から、場面に応じた態の選択を判断する具体的なプロトコルが導かれる。手順1では文体を特定する。学術的か日常的か、公式か非公式かを判断することで、受動態の適切性の基準が定まる。学術的・公式的な文脈ほど受動態が好まれ、日常的・非公式な文脈ほど能動態が自然である。手順2では伝達の焦点を確認する。動作主に焦点があれば能動態、被動作主・結果・事実に焦点があれば受動態が適切である。報道記事では被害の規模や事実が焦点であることが多く、受動態が自然に選ばれる。手順3では文脈の一貫性を検証する。周囲の文が受動態基調であれば受動態を、能動態基調であれば能動態を選ぶことで、文体的一貫性が保たれる。態が不必要に切り替わると、読み手は話題や視点の変化と解釈する可能性がある。手順4では態の選択が生む副次的効果を検討する。ビジネス文書での受動態は責任回避の印象を、学術文での受動態は客観性の印象をそれぞれ生むため、意図しない効果を避けるための確認が必要である。

例1: 学術論文の文脈で “We analyzed the data.” vs. “The data were analyzed.”
→ 学術論文では研究者個人よりも手法・結果に焦点を当てる。
→ “The data were analyzed.”(受動態)が学術文体として適切。
→ ただし研究者の能動的判断を強調する場面では”We decided to…”等の能動態も使われる。

例2: 日常会話で “The cake was eaten by Tom.” vs. “Tom ate the cake.”
→ 日常会話では動作主が明確な場合は能動態が自然。
→ “Tom ate the cake.”(能動態)が日常的な表現として適切。
→ 受動態を使うと、ケーキの消失に焦点を当てる特別なニュアンスが生じる。

例3: ニュース報道で “Police arrested the suspect.” vs. “The suspect was arrested.”
→ 報道では事件の当事者(被疑者)に焦点を当てる傾向がある。
→ “The suspect was arrested.”(受動態)が報道文体として自然。
→ 後続の文で容疑の詳細を述べるなら、受動態で被疑者を主語にする方が話題が連続する。

例4: ビジネスメールで “We made a mistake.” vs. “A mistake was made.”
→ 責任を直接的に引き受ける場面では能動態、責任の所在を和らげる場面では受動態。
→ 受動態は責任回避的な印象を与えることがあるため、使用場面には注意が必要。
→ 公式な謝罪では”We made a mistake.”(能動態)の方が誠実さを伝えることが多い。

以上により、文体の特定・焦点の確認・文脈の一貫性の検証という3つの手順を通じて、場面に応じた態の選択を適切に判断する能力が確立される。

2. 態の選択と情報配列の原則

場面別の態の使用傾向を理解した上で、態の選択にはもう一つの重要な原理が関わる。英語には「旧情報を文頭に、新情報を文末に配置する」という情報配列の原則(end-focus principle / end-weight principle)があり、受動態はこの原則を実現するための統語的手段として機能する。態の選択を情報配列の観点から理解しておくことは、入試の整序問題や長文読解で文と文のつながりを把握する際に不可欠である。

態の選択と情報配列の原則の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、旧情報と新情報の区別に基づいて態の選択を判断できるようになる。第二に、受動態が文末焦点の原則に従って情報を配列する機能を持つことを理解できるようになる。第三に、整序問題で情報の流れから語順を推論できるようになる。第四に、英作文で情報配列を意識した態の選択ができるようになる。

態の選択と情報配列の原則の理解は、談話層で文章全体の情報の流れを追跡する際の前提となる。

2.1. 旧情報・新情報と態の選択

態の選択が情報配列とどう関わるかについて、「能動態でも受動態でも意味は同じ」と理解していると、文と文の間の情報の流れを見落とすことになる。英語には「文頭に旧情報(既に話題となっている情報)を置き、文末に新情報を置く」という情報配列の原則がある。受動態はこの原則を実現するための強力な手段であり、能動態では新情報が文頭に来てしまう場合に、受動態に切り替えることで旧情報を文頭に移動させることができる。この原則は英語の文構造の根幹に関わるものであり、態の選択が「文法的にどちらでもよい」のではなく「情報配列上どちらが適切か」によって決まることを理解することが重要である。

この原理から、情報配列に基づいて態を選択する具体的な手順が導かれる。手順1では前の文の文末に来た情報(通常は新情報として導入された要素)が、次の文で主語の位置に来ているかを確認する。来ていれば旧情報が文頭に置かれており、情報の流れが保たれている。手順2では能動態で書いた場合に新情報が文頭に来てしまうかを確認する。新情報が文頭に来てしまう場合、受動態にすることで旧情報を文頭に移動できる。手順3では受動態にすることで新情報がby句として文末に移動するかを確認する。文末に新情報が来る配列が実現すればend-focus principleに適合する。手順4では情報の重さ(information weight)を考慮する。英語では長く重い要素を文末に置く傾向(end-weight principle)があり、長いby句は文末に来るのが自然である。

例1: The professor introduced a new concept. This concept was later developed by her students.
→ 第1文の文末”a new concept”(新情報)が第2文では”this concept”(旧情報)として文頭に。
→ 受動態により旧情報が文頭に配置され、情報の流れがスムーズ。
→ 能動態”Her students later developed this concept.”では旧情報が文末に来てしまう。

例2: We discussed several proposals. The best proposal was selected by the committee.
→ “several proposals”が旧情報として第2文の主語位置に。by the committeeが新情報として文末に。
→ end-focus principleに適合する受動態の典型的な使用例。

例3: The town has a famous cathedral. The cathedral was built in the 12th century.
→ “a famous cathedral”が旧情報として第2文で”the cathedral”に。
→ 受動態で旧情報を文頭に置き、建設時期(新情報)を文末に。

例4: A fire broke out in the factory last night. Several workers were rescued by the firefighters.
→ 火事の文脈で被害者(workers)が話題として導入され、主語位置に。by the firefightersが新情報。
→ 情報配列の原則に従い、受動態が選択されている。

以上の適用を通じて、旧情報と新情報の区別に基づいて態を選択し、英文の情報配列を適切に構成する能力を習得できる。

3. 態の選択が伝達効果に及ぼす影響

場面別の態の使用傾向と情報配列の原則を理解した上で、最後に検討すべきは態の選択が読み手に与える心理的・修辞的な効果である。同一の事態を描写する場合でも、能動態と受動態では読み手が感じる印象が異なり、この違いは書き手が意図的に利用している場合が多い。入試の長文読解では、この修辞的効果を読み取ることが筆者の主張や態度の理解に直結する。

態の選択が伝達効果に及ぼす影響の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、受動態が責任回避・客観性の付与・距離感の創出といった修辞的効果を持つことを識別できるようになる。第二に、政治的・社会的文脈での受動態使用の意図を読み取れるようになる。第三に、態の選択から書き手の立場や態度を推論できるようになる。第四に、入試の長文読解で筆者の伝達意図を態の選択から判断する能力を確立できるようになる。

態の選択が伝達効果に及ぼす影響の理解は、談話層で文章全体における態の戦略的使用を分析する際の基盤となる。

3.1. 受動態の修辞的効果と書き手の意図

態の選択が伝達効果にどう影響するかについて、単に「受動態は客観的」という理解だけでは、書き手が受動態を選択する多様な意図を把握できない。受動態の修辞的効果は客観性の付与にとどまらず、責任の所在の曖昧化、読み手との距離感の調整、事態の重大さの強調など多岐にわたる。政治家の発言で”Mistakes were made.”(ミスがなされた)という受動態が使われる場合、誰がミスを犯したかを言わずに済むため、責任回避の効果が生じる。一方、“Lives were lost.”(命が失われた)という受動態は、失われた命の重みに焦点を当て、事態の深刻さを強調する効果を持つ。このように受動態の修辞的効果は文脈に応じて多様であり、書き手の伝達意図を読み取るためには、態の選択が生む印象の違いに対する敏感さが必要である。

この原理から、態の選択が伝達効果に及ぼす影響を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では受動態が使用されている箇所で動作主が意図的に隠されていないかを確認する。政治的・社会的な文脈で動作主が不明確にされている場合、責任回避の意図がある可能性がある。手順2では受動態の使用が事態の客観性を高めているか、あるいは事態の重大さを強調しているかを判定する。科学的報告では前者、被害報道では後者の効果が典型的である。手順3では同じ文を能動態に書き換えた場合に印象がどう変わるかを検証する。能動態への書き換えで責任が明確になったり、客観性が損なわれたりする場合、受動態の修辞的効果が確認できる。手順4では受動態の使用と書き手の立場の関係を分析する。書き手が特定の人物や組織を名指しすることを避けたいとき、受動態は間接的な表現手段として機能する。

例1: “Mistakes were made in the handling of the crisis.” (政治家の声明)
→ 動作主が隠されている。誰がミスを犯したかが不明確。
→ 責任回避の修辞的効果。能動態”The government made mistakes.”では責任が明確になる。
→ 入試長文でこの種の表現が出たら、書き手(または発話者)の責任回避の意図を疑う。

例2: “Over 200 species are estimated to be lost every day.” (環境問題の記事)
→ 受動態で事実を客観的に提示しつつ、失われる種の数という事態の深刻さを前景化。
→ 能動態”Humans cause the loss of over 200 species every day.”では人間の責任が強調される。
→ 受動態の選択は客観的データの提示という文体的効果を狙っている。

例3: “The proposal was rejected.” vs. “The board rejected the proposal.”
→ 受動態: 提案が却下されたという事実に焦点。誰が却下したかは背景化。
→ 能動態: 理事会の行為に焦点。責任の所在が明確。
→ 提案者への配慮として受動態を使い、却下の主体を明示しない戦略がありうる。

例4: “It has been decided that the project will be discontinued.”
→ it仮主語構文+受動態で、決定の主体が完全に隠されている。
→ 組織的な決定を個人の意思から切り離して提示する効果がある。
→ 能動態”The management has decided to discontinue the project.”とは印象が大きく異なる。

以上により、態の選択が生む修辞的効果を体系的に分析し、書き手の伝達意図を態の選択から読み取る能力が確立される。

談話:文章レベルでの受動態の機能

受動態を個々の文の中で識別し意味を理解するだけでなく、文章全体の中で受動態がどのような役割を果たしているかを把握することが、長文読解における最終的な課題となる。談話層を終えると、複数の文にわたる受動態の使用パターンを認識し、文章の情報構造・結束性・客観性における受動態の機能を正確に把握できるようになる。統語層での形態的識別・意味層での機能理解・語用層での場面判断の全能力が前提として求められる。文章レベルでの態の一貫性、受動態による結束性の確保、学術的・論説的文章における受動態の戦略的使用を扱う。本層で確立した能力は、入試において長文の情報構造を把握し論旨を正確に追跡する際に発揮される。

【関連項目】

[基盤M54-談話]
└ 指示語の照応関係が文章レベルでの受動態の結束性機能と密接に関連する

[基盤M55-談話]
└ 接続表現と論理関係の理解が受動態を含む文の間の論理的つながりの把握に寄与する

【基礎体系】

[基礎M08-談話]
└ 態と情報構造の関係を談話レベルで発展的に学ぶ

1. 文章レベルでの態の一貫性と情報の流れ

長文読解では、一文ずつの理解だけでなく、文と文のつながり(結束性)を把握することが求められる。受動態は文の主語の位置に被動作主を置くことで、前の文から話題を引き継ぎ、情報の流れを滑らかにする機能を持つ。この機能を理解できなければ、文章全体の論理展開を正確に追跡することが困難になる。

文章レベルでの態の一貫性と情報の流れの把握によって、以下の能力が確立される。第一に、連続する文における主語の選択パターンから情報の流れを追跡できるようになる。第二に、受動態が前の文の話題を引き継ぐために使用されている場合を識別できるようになる。第三に、態の切り替えが文章の焦点変化を示す信号であることを認識できるようになる。第四に、入試の長文読解で段落の主題と論理展開を正確に把握できるようになる。

まず話題の連続性と受動態の結束性機能を確認し、次の記事で態の切り替わりが持つ信号的機能をさらに掘り下げる。

1.1. 話題の連続性と受動態の結束性機能

一般に文章中の受動態は「一文の中の文法事項」として個別に理解されがちである。しかし、この理解は受動態が前後の文と協調して情報の流れを形成する結束性の機能を見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、文章レベルでの受動態とは、前の文で導入された情報を次の文の主語の位置に引き継ぐことで話題の連続性(thematic continuity)を確保する談話的手段として定義されるべきものである。この機能が重要なのは、英文では「旧情報→新情報」の情報配列が基本であり、受動態はこの配列を実現するために不可欠な統語的操作だからである。話題の連続性が保たれている文章は読み手にとって理解しやすく、逆に話題が不必要に切り替わる文章は認知的負荷が高くなる。受動態は、能動態のままでは文頭に新しい要素が来てしまう場合に、話題の要素を文頭に持ってくることで認知的負荷を軽減する。

この原理から、文章レベルでの受動態の結束性機能を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では連続する文の主語を追跡する。同一の対象が複数の文にわたって主語の位置に来ていれば、話題の連続性が保たれている。主語の追跡は段落の主題を把握するための最も基本的な方法であり、入試の長文読解でも段落の要旨を把握する際に有効である。手順2では受動態への切り替えが話題の引き継ぎのためかどうかを確認する。前の文の目的語や新情報が次の文で主語になるために受動態が使われていれば、結束性の確保が目的である。このパターンは特に、前の文で新たに導入された概念を次の文で詳述する展開で頻出する。手順3では態の切り替わりが論点の転換を示しているかを確認する。話題が変わる箇所で能動態から受動態へ(またはその逆へ)切り替わっていれば、書き手が意図的に焦点を移動させている。手順4では段落全体を通して主語の連鎖を俯瞰する。一貫した主語の連鎖が維持されている段落は単一の話題を展開しており、主語が切り替わる箇所は新たな話題の開始を示す可能性がある。

例1: The researchers conducted an experiment. The experiment was designed to test a new hypothesis.
→ 第1文の目的語”an experiment”が第2文で主語に。受動態により話題を引き継いでいる。
→ 結束性機能。情報の流れが「研究者→実験→仮説」と滑らかに展開。
→ 能動態”The researchers designed the experiment to…”でも文法的には正しいが、主語が”the researchers”に戻ってしまい、実験から仮説への展開が途切れる。

例2: The government announced a new policy. The policy was widely criticized by opposition leaders.
→ 第1文の目的語”a new policy”が第2文で主語に。受動態で話題を引き継ぎ。
→ “policy”が2文にわたる話題として維持され、読み手は論点を見失わない。
→ 第3文が”The opposition leaders argued that…”と能動態に切り替われば、焦点が野党に移動する信号。

例3: A rare painting was found in an attic. It was later identified as a lost work by Rembrandt.
→ 第1文で導入された”a rare painting”が”it”で受け継がれ、第2文でも受動態が継続。
→ 受動態の連続使用により、絵画が一貫した話題として維持されている。

例4: The company developed a new technology. This technology was then adopted by several major industries.
→ 第1文の”a new technology”が第2文で”this technology”として主語に。受動態で引き継ぎ。
→ 「開発→採用」という展開が受動態によって自然に接続されている。

以上により、連続する文の主語と態の選択を追跡することで、受動態が文章全体の結束性を高めている箇所を識別し、情報の流れを正確に把握する能力が確立される。

2. 態の切り替わりと焦点の転換

文章中の受動態の結束性機能を理解した上で、次に認識すべきは態の切り替わりが持つ信号的機能である。文章中で態が切り替わる箇所は、書き手が意図的に焦点を移動させている可能性が高く、この切り替わりを認識することは段落の論理構造や筆者の議論の展開を追跡する上で極めて有用である。

態の切り替わりと焦点の転換の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、受動態から能動態への切り替わりが新たな行為者の導入を示す信号であることを認識できるようになる。第二に、能動態から受動態への切り替わりが話題の転換や被動作主への焦点移動を示す信号であることを把握できるようになる。第三に、段落内の態の切り替わりパターンから筆者の論理展開を推論できるようになる。第四に、入試の長文読解で論旨の転換点を正確に特定できるようになる。

態の切り替わりの認識は、学術的・論説的文章における受動態の戦略的使用を分析する際の前提となる。

2.1. 態の切り替わりが示す論理的転換

文章中の態の使用パターンについて、「受動態が多い文章」「能動態が多い文章」という大まかな認識にとどまっていると、態の切り替わりが持つ意味を見落とすことになる。態が一貫している箇所は同一の話題が展開されており、態が切り替わる箇所は焦点が移動する転換点であるという認識が、長文の論理展開を追跡する上で決定的に重要である。受動態が連続する部分から突然能動態に切り替わった場合、新たな行為者が話題に参入したことを意味する。逆に、能動態から受動態に切り替わった場合は、焦点が行為者から被動作主・結果・状況に移動したことを意味する。この切り替わりは段落の論理的区分と一致することが多く、段落内の論理構造を把握するための手がかりとなる。

上記の定義から、態の切り替わりが示す論理的転換を分析する手順が論理的に導出される。手順1では文章中の態のパターンをマッピングする。各文が能動態か受動態かを順番に記録し、態が切り替わる箇所を特定する。手順2では切り替わりの箇所で主語がどう変化しているかを確認する。主語が被動作主から新たな行為者に変わっていれば能動態への切り替わりは新たな行為者の導入を示し、主語が行為者から被動作主に変わっていれば受動態への切り替わりは焦点の移動を示す。手順3では切り替わりと段落の論理構造の関係を分析する。事実提示(受動態中心)→議論・主張(能動態混在)→結論(受動態で客観的提示)のようなパターンが識別できれば、筆者の論理展開を構造的に把握できる。手順4では態の切り替わりが接続詞や接続表現と共起しているかを確認する。“However,” “On the other hand,” “As a result,”等の接続表現と態の切り替わりが一致していれば、論理的転換点であることがより確実になる。

例1: The data were collected over a three-month period. They were then analyzed using statistical software. The researchers found that the results supported their initial hypothesis.
→ 第1-2文: 受動態連続。データの収集・分析という客観的事実の記述。
→ 第3文: 能動態”The researchers found…”に切り替わり。研究者の能動的判断が導入される。
→ 切り替わりの箇所は「データの提示」から「研究者の解釈」への転換点。

例2: The new regulation was introduced in January. It was expected to reduce pollution levels significantly. However, environmental groups criticized the regulation for being too lenient.
→ 第1-2文: 受動態。規制の導入とその効果への期待という客観的記述。
→ 第3文: “However,”と共に能動態に切り替わり。環境団体という新たな行為者が導入される。
→ 論理的転換:事実の提示から反論・批判へ。

例3: Several candidates were interviewed for the position. Their qualifications were carefully evaluated. In the end, the committee selected Dr. Yamada as the most suitable candidate.
→ 第1-2文: 受動態。選考過程の客観的記述。
→ 第3文: 能動態”the committee selected…”に切り替わり。最終的な決定行為が明示される。
→ 態の切り替わりが選考過程から結果の決定への転換を示す。

例4: The ancient city was discovered in 1922. Its ruins were excavated over the following decades. Recently, archaeologists have used new technology to uncover previously hidden structures.
→ 第1-2文: 受動態。発見と発掘の客観的事実。
→ 第3文: “Recently,”と共に能動態”archaeologists have used…”に切り替わり。
→ 過去の客観的事実から現在の能動的な研究活動への転換。

以上の適用を通じて、文章中の態の切り替わりを論理的転換の信号として認識し、段落の論理構造を正確に把握する能力を習得できる。

3. 学術的・論説的文章における受動態の戦略的使用

入試で出題される英文の多くは学術的・論説的な文章であり、これらの文章では受動態が戦略的に使用されている。この戦略的使用を理解できなければ、長文全体の論理構造を正確に把握することが困難になる。

学術的・論説的文章における受動態の戦略的使用の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、学術論文で受動態が客観性を付与するために使用されている機能を識別できるようになる。第二に、論説文で事実の提示と意見の表明における態の使い分けを認識できるようになる。第三に、受動態の連続使用が段落の統一性を高めている箇所を特定できるようになる。第四に、入試の長文読解で態の選択を手がかりとして筆者の主張と客観的事実の境界を判断できるようになる。

学術的文章での受動態の戦略的使用の理解は、入試長文読解における筆者の主張の正確な把握に直結する。

3.1. 客観性の付与と筆者の立場の判別

学術的文章での受動態は「堅い表現にするため」だけに使われるのではない。受動態が書き手の主観を排除して事実を客観的に提示するという積極的な機能を持つことを認識することが、入試の長文読解で事実と意見を区別する上で不可欠である。学術論文や論説文における受動態とは、研究者個人の行為を背景に退かせ、手法・データ・結果を前面に出すことで、記述の客観性と再現可能性を確保する修辞的手段として定義されるべきものである。この機能が重要なのは、入試の長文読解において、受動態で記述された箇所は客観的事実の提示であり、能動態に切り替わった箇所は筆者の主観的見解が入り始める境界である可能性が高いためである。この態の切り替わりを手がかりとすることで、事実と意見の区別が可能になる。ただし、態の切り替わりが常に事実と意見の境界を意味するわけではなく、前後の文脈や修飾語句(“convincingly,” “clearly,” “unfortunately”等の評価的副詞)と合わせて判断する必要がある。

上記の定義から、学術的文章での受動態の機能を分析する手順が論理的に導出される。手順1では受動態が使われている箇所が事実の記述か意見の表明かを判定する。受動態で”It has been shown that…”のように書かれていれば客観的事実の提示である可能性が高い。一方、”It is argued that…”は主張の存在を客観的に報告しているが、主張の内容自体は事実とは限らない。手順2では能動態への切り替わりに注目する。”I believe that…”や”We argue that…“のように一人称主語+能動態に変わった箇所は、筆者の主観的見解が始まる境界である。手順3では段落全体の態のパターンを俯瞰する。受動態が支配的な段落は事実・データの提示、能動態が混在し始める段落は議論・主張の展開と判定できる。手順4では態の選択と評価的表現の共起を確認する。受動態の中に”convincingly demonstrated”(説得力を持って実証された)のような評価的副詞が含まれている場合、客観的記述の中に筆者の価値判断が埋め込まれている可能性がある。このような隠れた主観表現を検出する力は、入試の設問で筆者の態度や見解を問われた際に不可欠である。

例1: The samples were collected from three different sites. The data were analyzed using statistical methods.
→ 2文とも受動態。研究手法とデータ処理の客観的記述。
→ 研究者個人を排除し、手法の再現可能性を強調している。
→ 学術論文のMethodセクションでは受動態が標準的。

例2: It has been widely accepted that climate change affects biodiversity. However, the exact mechanisms are still debated.
→ 第1文: 受動態で一般的に受け入れられている事実を提示。
→ 第2文: 受動態で議論が続いている状況を客観的に記述。いずれも事実の提示。
→ “widely accepted”は程度を示す修飾語であり、完全な合意ではないことを含意する。

例3: The results were compared with previous studies. We found that the new method significantly improved accuracy.
→ 第1文: 受動態で客観的な比較を記述。
→ 第2文: “We found”で能動態に切り替わり、筆者の判断が入り始める境界。
→ “significantly”は統計的有意性を示す場合は客観的だが、印象的な表現として使われている場合は筆者の評価を含む。

例4: Several theories have been proposed to explain this phenomenon. Among these, the most convincing explanation was offered by Smith (2020).
→ 受動態の連続使用で複数の理論を客観的に紹介。
→ “the most convincing”という評価的表現により、客観的記述の中に筆者の判断が含まれている。態は受動態のままだが修飾語に筆者の価値判断が表れている例。

以上により、学術的文章における受動態の使用パターンを手がかりとして、客観的事実の提示と筆者の主観的見解の境界を識別し、論旨を正確に把握する能力が確立される。

このモジュールのまとめ

このモジュールでは、受動態の形態的構造を把握するという統語層の理解から出発し、意味層における受動態の意味的機能の分析、語用層における文脈に応じた態の選択判断、談話層における文章レベルでの受動態の機能という4つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層の形態的識別が意味層の機能分析を可能にし、意味層の理解が語用層の選択判断を支え、語用層の判断力が談話層の文章レベル分析を実現するという階層的な関係にある。

統語層では、受動態の基本構造と能動態からの変換規則、受動態と形容詞的過去分詞の区別、進行形受動態・完了形受動態・助動詞付き受動態、受動態を取る動詞と取らない動詞の判定、文型別の受動態変換パターンという5つの記事を通じて、受動態の形態的識別能力を確立した。be動詞+過去分詞の組み合わせを起点とし、by句の付加可能性・程度副詞との共起・動作の過程の想定可能性によって受動態と形容詞的用法を区別する技術を習得した。beingとbeenの有無から進行形受動態と完了形受動態を判定する技術、助動詞の直後に「be+過去分詞」の形態を検出する技術を確立した。さらに、動詞の自他の区別と文型に基づく受動態の可否判定、SVOO・SVOC・that節構文の受動態変換パターンを把握した。

意味層では、受動態が選択される4つの理由(動作主の不明・不特定・自明・被動作主への焦点化)を体系的に整理し、by句の情報価値と省略の判断基準を確立した。能動態と受動態が同一の事態を異なる焦点で表す構文であることを理解し、情報の新旧配列と受動態の関係を把握する能力を習得した。さらに、be受動態とget受動態の使い分け、動作受動態と状態受動態の区別など、受動態の意味的ニュアンスの多様性を理解した。

語用層では、学術論文・報道・日常会話・ビジネス文書など場面ごとの態の使用傾向を理解し、文体の特定・伝達の焦点の確認・文脈の一貫性の検証という3つの手順から態の選択を判断する能力を確立した。旧情報と新情報の区別に基づく態の選択原理(end-focus principle)を習得し、態の選択が責任回避・客観性の付与・距離感の調整といった修辞的効果を持つことを理解した。

談話層では、連続する文の主語と態の選択を追跡することで受動態が話題の連続性と結束性を確保する機能を持つことを理解した。態の切り替わりが論理的転換の信号として機能することを認識し、学術的文章における受動態の戦略的使用から客観的事実と筆者の主観的見解の境界を判別する能力を習得した。

これらの能力を統合することで、共通テスト本試からMARCH下位レベルの英文に含まれる受動態を正確に識別し、書き手の伝達意図を踏まえた文意把握を行い、長文の論理展開を正確に追跡することが可能になる。このモジュールで確立した原理と技術は、後続のモジュールで学ぶ助動詞の体系的理解、準動詞の機能分析、さらに基礎体系における態と情報構造の原理的探究の基盤となる。

演習編

受動態の形態的識別能力は、入試英語のあらゆる場面で問われる。文法・語法の問題では受動態の正しい形態を選択する力が直接的に試され、長文読解では受動態の意味的機能を理解して文意を正確に把握する力が要求される。受動態の識別は、共通テストでは文法的に正確な文を選ぶ形式で、MARCH・関関同立では態の変換や形態的識別を伴う文法問題として、地方国立大学では英文和訳における受動態の正確な訳出として出題される傾向がある。本演習では、統語層で確立した形態的識別能力から、意味層・語用層・談話層の理解までを統合的に検証する3つの大問を通じて、受動態に関する運用力を確認する。

【出題分析】

出題形式と難易度

項目評価
難易度★★☆☆☆〜★★★☆☆ 基礎〜標準
分量標準
語彙レベル教科書〜共テ本試レベル
構文複雑度基本形から変形パターンまで段階的に出題

頻出パターン

共通テスト → 長文の中で受動態を含む文の意味を正確に理解する問題が頻出する。特に、by句のない受動態で動作主を文脈から推測させる形式が多い。

MARCH・関関同立 → 受動態の形態的正確さを問う文法問題が出題される。進行形受動態・完了形受動態・助動詞付き受動態の正しい形態を選択させる問題、態の変換を求める問題が典型的である。

地方国立大学 → 受動態を含む英文の和訳問題で、態のニュアンスを正確に反映した訳出が求められる。受動態と形容詞的用法の区別が問われることもある。

差がつくポイント

受動態と形容詞的過去分詞の区別において、by句の付加可能性と程度副詞との共起を判断基準として使えるかどうかが差を生む。特に、be + 過去分詞の形が受動態なのかSVC文型なのかを文脈から判定できる力が重要である。

進行形受動態と完了形受動態の形態的区別において、beingとbeenの機能的違いを正確に把握しているかどうかが差を生む。特に、過去進行形受動態(was being pp)は形態が複雑なため、正確な識別が得点に直結する。

by句の有無と情報構造の関係において、受動態が選択された理由を文脈から説明できるかどうかが差を生む。特に、長文読解での受動態の意味的機能の理解が、筆者の伝達意図の把握に直結する。

演習問題

試験時間: 25分 / 満点: 100点

第1問(30点)

次の各文の空所に入れるのに最も適切なものを、それぞれ①〜④の中から1つ選べ。

(1)The new library (  ) by the city council last year.

① built ② was built ③ has built ④ was building

(2)The documents (  ) when I arrived at the office.

① were being reviewed ② were reviewed ③ have been reviewed ④ are being reviewed

(3)This machine (  ) without proper training.

① must not operate ② must not be operated ③ must not been operated ④ must not operating

(4)The island (  ) by Captain Cook in 1770.

① discovered ② was discovering ③ was discovered ④ has been discovered

(5)The bridge (  ) for three months, and it is expected to reopen next week.

① has been repaired ② has been repairing ③ is being repaired ④ has been being repaired

第2問(35点)

次の英文を読み、下の設問に答えよ。

A new species of deep-sea fish was recently identified by researchers at the Marine Biology Institute. The fish was found at a depth of over 3,000 meters during an expedition in the Pacific Ocean. According to the research team, the species had never been recorded before. The discovery was made possible by a newly developed underwater drone that can operate at extreme depths.

The fish is characterized by its unusually large eyes and a bioluminescent organ on its forehead. It is believed that these features are adaptations to the complete darkness of the deep sea. The species has been named Abyssocoris luminaris after its light-producing ability.

Since the announcement, the discovery has been widely reported in scientific journals. Several other research teams have expressed interest in studying the new species further. However, the researchers warn that the deep-sea ecosystem where the fish was found is increasingly threatened by deep-sea mining activities.

(1)下線部”The fish was found at a depth of over 3,000 meters”を能動態に書き換えよ。主語は”the researchers”とする。

(2)第1段落において受動態が多用されている理由を、情報構造の観点から日本語で説明せよ。

(3)第2段落の”It is believed that these features are adaptations to the complete darkness of the deep sea.”において、受動態が使われている効果を日本語で説明せよ。

(4)第3段落で態が能動態(“Several other research teams have expressed…”)に切り替わる箇所の効果を、本モジュールで学んだ内容に基づいて日本語で説明せよ。

第3問(35点)

次の各文について、下線部が受動態として機能しているか、形容詞的用法として機能しているかを判定し、その根拠を日本語で簡潔に述べよ。

(1)The museum is 【closed】 on Mondays.

(2)The window was 【broken】 by the children playing in the yard.

(3)She seemed very 【interested】 in the topic.

(4)The letter was 【written】 in French.

(5)He is 【satisfied】 with the results of the examination.

解答・解説

難易度構成
難易度配点大問
基礎30点第1問
標準35点第2問
発展35点第3問
結果の活用
得点判定推奨アクション
80点以上A基礎体系へ進む
60-79B第2問・第3問の誤答箇所を復習後、次のモジュールへ
40-59C統語層・意味層の該当記事を再読後に再挑戦
40点未満D該当講義を復習後に再挑戦
第1問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図受動態の基本形態から変形パターンまでの正確な識別
難易度基礎
目標解答時間6分

【思考プロセス】

状況設定 → 空所補充の文法問題。各選択肢の形態的特徴を分析し、文脈(時制・態)に合致する形態を選択する。

レベル1:構造特定 → 主語と動詞の意味関係(主語が動作主か被動作主か)を確認する。被動作主であれば受動態が必要。

レベル2:検証観点 → 時制の手がかり(時を表す副詞句)と態の手がかり(主語と動詞の関係)を照合する。

【解答】

小問解答
(1)② was built
(2)① were being reviewed
(3)② must not be operated
(4)③ was discovered
(5)③ is being repaired

【解答のポイント】

(1)正解の論拠: 主語”The new library”は「建てられる」側。”last year”から過去時制。受動態の過去形”was built”が正しい。誤答の論拠: ①builtは過去分詞のみでbe動詞がない。④was buildingは能動態の過去進行形で、図書館が何かを建設していることになり意味が成立しない。

(2)正解の論拠: 主語”The documents”は「審査される」側。”when I arrived”は過去の特定時点を示し、その時点で進行中の動作を表す過去進行形受動態が必要。誤答の論拠: ②were reviewedは単純過去で進行中のニュアンスがない。④are being reviewedは現在時制で過去の文脈に合わない。

(3)正解の論拠: 主語”This machine”は「操作される」側。助動詞mustの直後はbe+過去分詞で”must not be operated”。誤答の論拠: ①must not operateは能動態で、機械が何かを操作することになる。③must not been operatedはmustの直後にbeenが来る形で文法的に不正確。

(4)正解の論拠: 主語”The island”は「発見される」側。”in 1770″から過去時制。”was discovered”が正しい。誤答の論拠: ④has been discoveredは現在完了形で、特定の過去の時点(1770年)を示す副詞句との共起が不自然。

(5)正解の論拠: “for three months”は期間を示し、”is expected to reopen next week”から修理がまだ続いていることが分かる。現在進行中の受動態”is being repaired”が適切。誤答の論拠: ①has been repairedは完了を表し「すでに修理された」の意味になり、来週の再開との整合性が低い。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 空所の前後にある時間表現(last year, when I arrived等)と主語の意味的役割を手がかりに、時制と態を同時に判定する問題全般に適用可能。

【参照】
[基盤M18-統語] └ 受動態の形態的識別手順

第2問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図受動態の意味的機能と文章レベルでの態の使用パターンの理解
難易度標準
目標解答時間12分

【思考プロセス】

状況設定 → 学術的な報道記事風の英文。受動態が多用されている理由と、態の切り替わりの効果を分析する。

レベル1:構造特定 → 各段落の受動態使用箇所を特定し、主語の連続性と情報の流れを追跡する。

レベル2:検証観点 → 受動態が客観的事実の提示に使われているか、態の切り替わりが焦点の変化を示しているかを検証する。

【解答】

小問解答
(1)The researchers found the fish at a depth of over 3,000 meters.
(2)下記参照
(3)下記参照
(4)下記参照

(2)第1段落では新種の魚(the fish)と発見(the discovery)が一貫した話題であり、これらを主語の位置に置くために受動態が使用されている。受動態によって「魚→発見→種→発見の実現手段」という情報の流れが滑らかに展開され、読み手は話題を見失うことなく記述を追跡できる。また、研究者個人よりも発見の事実を前景化することで、科学的報告としての客観性が確保されている。

(3)”It is believed that…”は「~と考えられている」という構文で、特定の個人ではなく科学界一般の見解として提示する効果がある。受動態を使うことで「誰が信じているか」を背景に退かせ、記述内容に客観性と一般性を付与している。能動態で”Scientists believe that…”とすると特定の研究者集団の意見という印象が強まるが、受動態では広く受け入れられた見解であることが示唆される。

(4)第3段落で”Several other research teams have expressed interest…”と能動態に切り替わることで、焦点が「発見という事実」から「研究チームの能動的な反応」に移動している。受動態が支配的な記述の中で能動態が現れることにより、新たな行為者(他の研究チーム)が文の出発点に立ち、話題の転換が読み手に明示される。これは談話層で学んだ「態の切り替わりが焦点変化の信号である」という原則の具体例である。

【解答のポイント】

正解の論拠: 受動態の意味的機能(客観性の付与・話題の連続性の確保・情報の新旧配列)を正確に理解し、文章全体の中での態の使用パターンを分析できているかがポイントである。

誤答の論拠: 「受動態は能動態の書き換えに過ぎない」という理解に留まり、受動態が選択された理由を文脈から説明できないパターンが典型的な誤答である。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 学術的・論説的文章で受動態が多用されている箇所の分析、および態の切り替わりが論点の転換を示す長文読解問題全般に適用可能。

【参照】
[基盤M18-意味] └ 受動態の選択理由と意味的機能
[基盤M18-談話] └ 文章レベルでの受動態の結束性機能

第3問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図受動態と形容詞的過去分詞の区別能力
難易度発展
目標解答時間7分

【思考プロセス】

状況設定 → be動詞+過去分詞の形態が受動態か形容詞的用法かを判定する問題。by句の付加可能性・程度副詞との共起・動作の過程の想定可能性を基準に判定する。

レベル1:構造特定 → 各文のbe動詞+過去分詞の形態を確認し、文脈から動作か状態かを判断する。

レベル2:検証観点 → 3つの判定基準(by句付加可能性・程度副詞共起・動作過程の想定)を順に適用する。

【解答】

小問判定
(1)形容詞的用法
(2)受動態
(3)形容詞的用法
(4)受動態(ただし文脈により形容詞的解釈も可能)
(5)形容詞的用法

(1)形容詞的用法。根拠: “on Mondays”は習慣的な状態を表す。”The museum is closed by someone on Mondays.”はやや不自然であり、「月曜日は閉まっている」という状態の記述が自然な解釈。

(2)受動態。根拠: “by the children playing in the yard”というby句が明示されており、「子供たちによって割られた」という動作の過程が明確に想定できる。

(3)形容詞的用法。根拠: “very interested”のようにveryで修飾可能。”interested in〜”は形容詞として定着した表現であり、”interested by someone”という受動態の解釈は不自然。

(4)受動態が基本的な解釈。根拠: “The letter was written in French by someone.”のようにby句を付加可能であり、「誰かがフランス語で手紙を書いた」という動作の過程が想定できる。ただし「フランス語で書かれた手紙である」という状態的解釈(形容詞的)も文脈次第で成立するため、前後の文脈による判断が必要。

(5)形容詞的用法。根拠: “satisfied with〜”は形容詞として定着した表現であり、「試験の結果に満足している」という状態を表す。”satisfied by someone”は不自然。

【解答のポイント】

正解の論拠: by句の付加可能性・程度副詞との共起・動作の過程の想定可能性という3つの基準を体系的に適用できるかがポイントである。

誤答の論拠: be動詞+過去分詞の形態をすべて受動態と判断してしまうパターンが典型的な誤答。特に(1)(3)(5)のように形容詞として定着した過去分詞を受動態と誤判定しやすい。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: be動詞+過去分詞の形態が受動態か形容詞かを判別する問題全般に適用可能。特に、interested, satisfied, closed, surprised, tired等の「形容詞化した過去分詞」が出題された際に有効。

【参照】
[基盤M18-統語] └ 受動態と形容詞的過去分詞の区別

【関連項目】

[基盤M15-統語]
└ 時制の形態的識別が受動態の時制判定の前提となる

[基盤M22-統語]
└ 分詞の形態的識別が受動態と形容詞的用法の区別に直結する

[基礎M08-統語]
└ 態と情報構造の原理的理解を基礎体系で発展させる

目次