本試験の性格
早稲田大学法学部の英語は、選択肢を検証する読解・文法部門と、英文を自ら組み立てる英作文部門の二部門で構成される。読解・文法部門の解答はすべてマークシートに記入し、英作文部門は記述解答用紙に書く。受験生は一つの試験の中で、与えられた英文を精密に読む力と、条件を満たす英文を書く力の両方を求められる。
出題される素材は、移民の二言語使用、ハンセン病への差別と補償、深層学習の二面性、課税をめぐる君主と教会の対立、生成AIが作り出した判例を提出した弁護士など、法、権利、制度、社会規範に接する題材が目立つ。読解問題では、英文との照合に加えて、下線部の比喩や引用の趣旨を文脈の中で解釈する判断が問われる。文法・語法問題では、短い英文から構文の誤りを特定する精度が求められる。英作文では、論理の誤りを数値や具体例で説明する課題、状況に応じたメールや案内文の作成、図表や画像を手がかりにした意見論述が出題される。
本カリキュラムは、これらの判断を11のモジュールに分け、読解、文法・語法、資料読解、英作文の各形式について判断原理を体系化する。
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 部門構成 | 読解・文法部門(マークシート式)と英作文部門(記述式) |
| 大問構成 | 2026年度は7題、2025年度は6題、2024年度は7題 |
| 読解・文法部門 | 2026年度と2024年度は第1問〜第5問、2025年度は第1問〜第4問 |
| 英作文部門 | 2026年度と2024年度は第6問・第7問、2025年度は第5問・第6問 |
| 解答の形 | 読解・文法部門は選択肢の記号、英作文部門は英語の記述 |
大問数は年度により6題または7題と変わる。2025年度は読解・文法部門が4題で、メール作成と図表を用いた意見論述が英作文部門に置かれた。2026年度と2024年度は読解・文法部門が5題、英作文部門が2題である。大問番号がずれても、長文読解、文法・語法、資料読解、英作文の各形式は3年度すべてで出題されている。
出題傾向の体系的分析
第1問:長文読解(内容一致と語義推測)
出題形式:英文1題に対し、(1)〜(4)の設問群が付く。内容に合わない記述の特定、下線部の意味や指示内容の選択、要旨の選択、下線語の語義選択、空所補充、引用文の帰属判定が、年度ごとに組み合わされる。
典型的素材:2026年度は二つの言語の間で育った書き手が言葉の翻訳しにくさを論じるエッセイ、2025年度は元判事の語り手が過去を回想する小説の一場面、2024年度はピョートル大帝のひげ税をめぐる歴史記事である。エッセイ、小説、歴史記事と、ジャンルは年度ごとに入れ替わる。
要求される判断行為:選択肢の命題を英文の記述と一つずつ照合する判断、"If you know, you know" や "Our fingerprints proudly planted in its mess" のような比喩的表現の趣旨を前後の論述から確定する判断、小説では語られていない事実を発言や行動から推論する判断が要求される。2025年度は、英文と合わない記述を6つ選ぶ設問と、英文から推論できる記述を6つ選ぶ設問が並んだ。
年度横断の安定性:3年度中3年度で出題された。設問群は毎年(1)〜(4)で構成され、語義選択の設問群が3年度すべてに含まれる。
第1問は、語句の一致だけでは正誤を決められない設計である。英文の記述を言い換えた選択肢が並ぶため、受験生は語の重なりではなく命題の内容で正誤を判定する。素材のジャンルが変わっても、照合、解釈、推論の三種の判断が設問群に配分される構成は保たれている。
第2問:長文読解(論説文の内容一致・要旨・空所補充)
出題形式:英文1題に対し、(1)〜(5)または(6)の設問群が付く。複数選択による内容の正誤判定、空所補充、要旨選択、段落ごとの役割の選択、語義選択、強勢のある母音の発音比較で構成される。
典型的素材:2026年度はハンセン病への差別と隔離政策の歴史、2025年度はパターン認識と深層学習のデュアルユース、2024年度は学校教育における男女差と政策の効果を扱う。医学史、科学技術と倫理、教育社会学という人文・社会系の論説で、人権や制度への言及を含む。
要求される判断行為:2026年度の(1)は13の記述から英文と合わないものを6つ選ばせる。英文中の数値、時期、因果の方向と選択肢の記述が一致するかを検証する判断が必要になる。2024年度は7つの段落の役割を12の記述から選ばせるため、段落内の主張と段落間の関係を同時に把握する判断が要求される。空所補充は、文全体の補充と接続表現(2026年度)、名詞や形容詞句(2025年度)と形式が変わっても、前後の論理関係の把握に帰着する。
年度横断の安定性:3年度中3年度で出題された。強勢のある母音の発音比較は、2026年度に(5)、2025年度に(6)、2024年度に(4)として、3年度すべてに置かれた。要旨を問う設問は、2026年度は第1問、2025年度は第2問に置かれた。
第2問は、分量の大きい論説文を通じて、文章の構造を把握する力を測る。段落の役割や要旨の選択は、細部の照合ではなく論理展開の追跡を要求する。発音比較は語彙の知識に依存する別種の設問であり、長文の読解とは独立して毎年出題されている。
第3問:文法・語法(誤り指摘と前置詞の空所補充)
出題形式:2026年度は4つの英文、2025年度は6つの英文について、下線部A〜Dのうち誤っているものを選ぶ。「ALL CORRECT」の選択肢Eが全問に付く。2024年度は12語の語群から各語を一度だけ使い、6つの空所を補充する形式であった。
典型的素材:2026年度と2025年度は、社会調査や日常場面を述べた独立した1〜2文である。2024年度は警察官が市長に警告する一続きの文章で、"charged with" や "at liberty" のように、前置詞や副詞が語と結びつく語法を問う。
要求される判断行為:誤り指摘では、受動態における be 動詞の脱落、不定詞が主語となる文の数の一致、副詞に前置詞を重ねる誤り("rest at there")、動詞と前置詞の結びつき("coping to")、形容詞と副詞の混同("practical nothing")を、下線部ごとに検証する判断が要求される。語群補充では、前後の語との結びつきを根拠に、同じ語を二度使えない制約の下で割り当てを確定する判断が要求される。
年度横断の安定性:3年度中3年度で出題された。形式は誤り指摘から語群補充に変わる年度があるが、前置詞や副詞を含む語法の知識を問う点は共通する。
第3問の英文は短いが、誤りは下線の内部に置かれ、語の脱落、数や品詞の不一致、前置詞の過剰といった形で現れる。「ALL CORRECT」が選択肢に含まれるため、誤りを見つけられない場合にも、その文が正しいと判断する根拠を自分で持つ必要がある。
第4問:誤り指摘と空所補充(文法・語法)
出題形式:2026年度は3つの空所を持つ天文ニュースで、各空所に5つの選択肢が示される。同じ番号の空所が文章中の2箇所に現れ、"this/This" のように文頭と文中の表記を併記した選択肢から一つを選ぶ。2025年度は5つの空所を持つヴィクトリア朝ロンドンの文章で、語、前置詞、接続表現を選ぶ。2024年度は4つの独立した英文の誤り指摘である。
典型的素材:恒星間天体 3I/ATLAS の発見、ヴィクトリア朝ロンドンの人口増加、アザラシの生存環境、プラスチックの再資源化、類人猿のジェスチャー、大質量星の最期を述べた短文である。科学ニュース、歴史、自然科学の短文と、題材は年度ごとに異なる。
要求される判断行為:同じ語を2箇所に入れる設問では、文頭の位置と文中の位置の双方で文法的に成立し、かつ文意が通る語を選ぶ判断が要求される。たとえば "poses [ ] danger" と "coming [ ] closer than 240 million kilometres" の双方に適合する語を求める。2025年度は "to live [ ] these changes" のように、動詞との語法と文脈上の意味の両立を判断する。2024年度の誤り指摘では、"a raise in their deaths" のような名詞の語形、"each gestures" のような数の不一致、"temporary illuminates" のような品詞の取り違えを検証する。
年度横断の安定性:3年度中3年度で出題された。空所補充の年度と誤り指摘の年度があり、第3問と第4問の組として文法・語法の形式が入れ替わる。
第3問と第4問は、合わせて毎年、文法・語法を二つの異なる形式で測る。同じ出題形式が連続せず、語群補充、誤り指摘、文章中の空所補充のうち二つが組み合わされる。形式が入れ替わっても、各語の語法と文の構造を同時に検証する判断が共通して求められる。
第5問:資料読解と空所補充(年度により英作文)
出題形式:2026年度は表の要約文に6つの空所があり、各空所に5つの句が示される。2024年度は法廷文書をめぐる新聞記事に5つの空所があり、前置詞、接続表現、数量を表す語、慣用表現から選ぶ。2025年度は英作文部門に位置し、目的と理由が日本語で示されたメールを英語で作成する。
典型的素材:2026年度は5つの大学の2005年と2025年の留学生数、増減数、変化率を示す表である。2024年度は弁護士が生成AIの出力した存在しない判例を裁判所に提出した事件の記事である。2025年度は、担当教授に課題提出期限の一週間延長を依頼するメールで、理由は腕の骨折による入院である。
要求される判断行為:表の要約では、絶対数の増加と変化率の高さを区別し、"the greatest relative growth" と "the highest absolute rise" のように近接した表現から表の数値に合うものを選ぶ判断が要求される。記事の空所補充では、法的手続きの流れに沿って、接続表現と慣用表現を文脈から確定する。メール作成では、示された目的と理由を過不足なく盛り込み、宛先と書式に合う丁寧さを保つ判断が要求される。
年度横断の安定性:第5問の位置では3年度中3年度で出題があるが、形式は年度ごとに異なる。読解・文法部門の空所補充が2年度、英作文部門のメール作成が1年度である。
この大問は、資料や文脈から情報を統合する判断を測る位置にあり、形式が空所補充から英作文に変わる年度もある。形式の予測に頼るより、数値の読み取りと文脈の把握という共通の判断を備えることが、どの形式にも対応する手段になる。
第6問:英作文(論理の誤りの説明・案内文・図表を用いた意見論述)
出題形式:2026年度は2つの論証について、数値または具体例を用いて論理の問題点を文として完結した英文で説明する。2025年度はアフリカの面積を示す地図と人口構成を示すグラフを見て、考えを英語の段落で書く。2024年度は駅の案内係として時刻表を用い、空港に14:30までに着く方法を、指定された4つの情報を含めて説明する。
典型的素材:2026年度は、観客の割合から人気ジャンルを結論づける映画館の論証と、足のない生き物をすべて蛇とみなす論証である。2025年度は面積と人口に関する地図とグラフ、2024年度は3本の列車の時刻表である。
要求される判断行為:2026年度の(1)では、成人38%のうち98%が芸術映画を好み、未成年62%のうち70%が喜劇を好むという割合から、全観客に占める比率を計算し直す。芸術映画を好む観客は約37%、喜劇を好む観客は約43%となり、結論の誤りが数値で示せる。(2)は、蛇に足がないことと、足のない生き物がすべて蛇であることを取り違えた誤りを、具体例で指摘する。2024年度は、Local 250 の直通は14:35着、Express 12 は14:40着で制限時刻に間に合わないため、Central Station で Express 11 に乗り換える経路を特定してから英語で説明する。
年度横断の安定性:3年度中3年度で出題され、形式は毎年異なる。課題が求める情報(数値、時刻、図表の内容)を落とさずに英文へ反映する点は共通する。
第6問は、英語の表現力に先立って、与えられた情報を正確に処理する力を測っている。論理の誤りの説明、経路の特定、図表の解釈のいずれも、結論を出してから英語に移す二段の処理を要する。過去3年度の設問構成から、情報の処理に使う時間が英文を書く時間に影響すると考えられる。
第7問:自由英作文(意見論述)
出題形式:2026年度は、大学生としてボランティア活動に参加するなら何をしたいかを、2つ以上の理由を挙げて段落で書く。2024年度は、洞窟壁画のような図像を作業員が洗浄している街頭アートの写真が自分にとって何を意味するかを、描写にとどまらず段落で書く。2025年度は第7問に当たる大問がなく、意見論述は第6問に置かれた。
典型的素材:大学生活に関する個人的な選好と、芸術の保存と消去をめぐる抽象的な主題である。
要求される判断行為:主題に対する立場を決め、理由を二つ以上に分けて示す判断と、描写から解釈へ進む判断が求められる。2024年度の設問は、描写のみの解答を指示で除外しているため、画像から意味を読み取る抽象化が前提となる。
年度横断の安定性:第7問は3年度中2年度で出題された。2025年度は大問が6題で第7問が存在しない。意見論述という形式自体は、第6問を含めて3年度すべてに置かれている。
意見論述は、題材の抽象度が年度で大きく異なる。ボランティアのように経験から答えられる題材と、画像の象徴性を解釈する題材では、論拠の取り方が異なる。共通するのは、立場、理由、具体例の関係を一つの段落の中で完結させる構成力である。
出題者視点と試験設計の分析
大学の教育理念との接続
過去3年度の出題素材には、法、権利、制度に接する題材が繰り返し現れる。2026年度は、ハンセン病患者の隔離政策と、それに対する集団訴訟、国家による謝罪と補償を扱った。2025年度は、最高裁判所の判事の引退式を舞台にした小説と、技術の悪用をめぐる判断を論じた文章が出題された。2024年度は、君主の課税政策が教会との権力闘争に発展する歴史記事、学校政策が性別間の不平等に与える影響を論じる学術書、警察官が市長に罪状を告げる場面、生成AIが作り出した存在しない判例を裁判所に提出した弁護士の事件が並んだ。
言語の運用が帰属や権利と交わる題材も含まれる。2026年度の第1問は、二つの言語の間で育った書き手が、言葉の選択と帰属意識、同化への圧力を論じる文章であった。言語を扱う試験で言語と社会規範の関係を素材に選ぶ点は、法と社会の関係を学ぶ学部の素材として一貫している。
素材に共通するのは、主張と根拠の対応、前提の妥当性、制度の運用がもたらす帰結という論点である。過去3年度の出題分析から、主張を根拠から切り離して検証し、規則や制度が意図と異なる結果を生む条件を見抜く読み方を、英語運用能力の測定と結びつける意図があると考えられる。
英作文にも同じ傾向がある。2026年度の第6問は、割合の誤用や逆の関係の取り違えという論証の形式的な誤りを、数値や具体例で説明させた。2025年度の第6問と2024年度の第7問は、図表や画像の意味を自分の見解として解釈させた。いずれも、英語の表現力に加えて、論理の構造を言語化する力を測る課題である。
素材の語彙には、xenophobia、calques、laudatory、dual use のように、法学や社会科学で使われる抽象語が含まれる。語義選択の設問が毎年付くため、抽象語を文脈から推定する力も、この学部の素材に対応する能力として位置づけられる。
一方で、素材が法学の専門知識を前提にしているわけではない。選択肢の正誤は、英文の記述と英語の運用だけで判定できる。素材の選定が法と権利の主題に傾くことと、解答に専門知識が要らないことは両立している。
測定される能力の階層構造
過去3年度の大問を能力の種類で並べると、語と構文の正確さ、語の文脈上の意味、文章の論理展開、資料の統合、英文の産出という層が見える。
語と構文の正確さは、第3問と第4問の誤り指摘や語群補充で直接測られる。ここで問われるのは、述語動詞、数の一致、品詞、前置詞の結びつきといった、一文の中で検証できる事項である。
語の文脈上の意味は、第1問と第2問の語義選択と、下線部の趣旨の選択で測られる。語義選択の設問群は3年度すべてに付き、2025年度の第1問の "marooned"、"oblivion"、"laudatory" のように、語の定義を知るだけでは確定しにくい語が選ばれる。
文章の論理展開は、段落の役割、要旨、空所補充の接続表現で測られる。個々の文の理解を、文章全体の議論の中に位置づける力が要求される。
資料の統合は、表、地図、グラフ、時刻表を英語の要約や案内に結びつける設問で測られる。数値を読み取る力と、それを英語の表現に対応させる力の双方が必要になる。
英文の産出は、論理の誤りの説明、メール、案内、意見論述で測られる。産出の層は、他の層の能力に結びついている。構文の誤りを見抜く力は自分の英文の点検に、論理展開を追う力は段落の構成に、資料を整理する力は説明内容の選定に、それぞれ用いられる。
この階層は、下位の層を終えてから上位の層へ進む順序を示すものではない。同じ試験の中で各層の設問が独立に並び、受験生は層ごとの能力を別々の大問で示すことになる。
採点基準の推定原理
マークシート方式の読解・文法部門は、選択肢の正誤が一意に決まるため、採点の原理は正答との一致である。複数選択の設問(2026年度の第2問(1)、2025年度の第1問(2)(3)と第2問(1))は、選ぶ数が指定され、指定を超えて選んではならないという指示が付く。選択数が指定された設問では、指示された数を満たす解答が求められる。
英作文部門について、答案に求められる条件は設問文から直接確認できる。2026年度の第6問は「数値または具体例を用いる」ことと、文として完結した英文で書くことを指定している。同年度の第7問は「理由を二つ以上挙げる」ことを求める。2025年度の第5問は「示された情報をすべて含める」ことと、主文を完結した英文で書くことを求める。2024年度の第6問は「下線で示された4つの情報をすべて含める」ことを、第7問は画像を描写するだけにとどめないことを求める。
これらの条件は、答案が満たすべき要素の最小の集合である。情報の網羅、文の完結、具体性、理由の数、描写を超えた解釈は、設問文の指示から直接導かれる評価の観点である。
したがって、英作文の学習は、設問文の指示を要件に分解し、要件が答案のどこで満たされているかを点検する手順を出発点とする。その上に、文法の正確さと論理的な構成を置く。要件の充足は、英文の巧拙とは独立に点検できる項目であり、練習の段階から習慣にする価値がある。
誤り指摘の「ALL CORRECT」も、採点の単位は正誤の一致である。誤りが見つからない英文を正しいと判断する場合にも、根拠が必要になる。
出題設計の体系
選択肢の設計、設問群の構成、年度ごとの形式の入れ替えという観点で、出題設計を整理する。
選択肢の設計では、判断を分ける工夫が随所にある。2026年度の第5問(1)は、"the biggest numerical dip"、"the greatest relative growth"、"the highest absolute rise" のように、数値の読み方の違いだけで正誤が分かれる句を並べた。「NOT correct」や「LEAST likely」の指示は、正しい選択肢を探す通常の読み方を反転させる。2024年度の第3問は語群の各語を一度しか使えない制約を課し、2026年度の第4問は同じ番号の空所を2箇所に置いた。
設問群の構成では、一つの文章から複数の能力を引き出す。第1問と第2問は、内容一致、推論、要旨、語義、発音を一つの素材に組み合わせ、細部の照合から文章全体の把握までを順に測る。2025年度の第1問(4)は、語義選択と発音比較を同じ設問群に収めた。
年度ごとの形式の入れ替えでは、第3問と第4問、第5問、英作文の形式が毎年変わる。誤り指摘、語群補充、文章中の空所補充の組合せは年度で異なり、第5問は空所補充になる年度と英作文になる年度がある。
固定されている部分は、長文読解2題、文法・語法の設問、資料や文脈を用いる設問、英作文という大きな順序である。変わる部分は形式であり、固定される部分は判断である。この設計から、受験生が形式への慣れだけでは対応できず、形式の背後にある判断を習得しているかが測られると考えられる。
試験全体の論理構造と能力階層
大問間の論理的関係
各大問は素材を共有せず、独立して解答できる。大問の間の関係は素材ではなく、必要とされる判断の連鎖にある。
第1問と第2問は、英文を入力として受け取る段階である。内容を理解し、論理展開を追跡し、語の意味を文脈で確定する。第3問と第4問は、英語の形式的な正しさを検証する段階で、入力された英語の規則を確認する。第5問は、数値や文脈を統合して英文の適否を判断する段階にあたる。第6問と第7問は、検証した規則と統合した情報を用いて英文を産出する段階である。
この連鎖は、順方向にも逆方向にも読める。順方向では、読解で得た論理展開の追跡力が意見論述の構成に用いられ、誤り指摘で磨いた検証力が自分の英文の点検に用いられる。逆方向では、産出の設問が指定する要件(数値、理由、情報の網羅)が、読解や資料読解で取りこぼしやすい項目を示している。
大問番号は年度で動く。2025年度は第5問が英作文に当たり、2026年度と2024年度では第5問が読解・文法部門に属する。連鎖の順序は保たれたまま、段階の境界が一つ前にずれた構成である。受験生にとって、番号ではなく段階で試験を把握する意味がここにある。
能力要求の階層構造
形式が変わっても同じ判断が再び現れる点に、この試験の能力要求の構造がある。判断の種類ごとに、出現する大問を整理する。
命題の照合は、第1問と第2問の内容一致、第5問の表の要約文の選択に現れる。選択肢の命題を根拠となる記述と対応づけるという操作は共通で、素材が英文か表かだけが異なる。語と語の結びつきの検証は、第3問の誤り指摘と語群補充、第4問の空所補充、第5問の慣用表現の補充に現れる。いずれも、語が要求する前置詞や品詞を、文の構造と意味の両面から確かめる。
数値の処理は、第5問の表の要約と第6問の論理の誤りの説明に現れる。前者は絶対数と変化率の区別、後者は割合の合成という異なる操作だが、割合と実数を取り違えないという注意は共通する。立場と理由の組み立ては、第6問の図表解釈と第7問の意見論述に現れる。
このように判断が形式を超えて再出現するため、形式ごとの対策を積み重ねるより、判断そのものを習得する方が、年度ごとの形式の入れ替えに強い。能力要求の階層は、語と構文の正確さを土台に積み上がるのではなく、複数の判断が各大問に重なって現れる網目として捉えるのが適切である。
大問配列の設計意図
大問の配列は、過去3年度で一貫して、長文読解、文法・語法、資料や文脈の統合、英作文の順をとる。
長文読解を冒頭に置く配列は、分量の大きい素材を試験の最初に処理させる設計と考えられる。素材の理解は後続の大問に直接は影響しないが、時間配分の分岐点が最初に訪れる。文法・語法を中盤に置くのは、長文読解で使った認知資源を、短い英文の精密な検証へ切り替えさせる位置づけと考えられる。短い設問が連続するため、読解で持ち越した負荷を整理する時間にもなる。
英作文を末尾に置く配列は、読解・文法部門で扱った英語の規則と情報処理を、最後に産出で使わせる設計である。英作文部門が別の解答用紙で記述される点も、この配列を支えている。2025年度は読解・文法部門が4題で終わり、第5問から英作文部門が始まった。部門の切り替わりが一つ早まったことになる。
第5問の位置は、年度によって空所補充と英作文の間で入れ替わる。資料を扱う設問が、読解・文法部門の末尾にも英作文部門の先頭にも置かれうるということであり、資料の統合が、入力側の能力と産出側の能力の接点にあたると解釈できる。この解釈は、過去3年度の配列から導かれる推定であり、年度ごとの配置は固定されていない。
試験全体としての整合性
過去3年度を通して見ると、試験の骨格は一貫している。長文読解が2題、文法・語法の設問が2題、資料や文脈を用いる設問が1題、英作文部門が2題という構成が、大問番号の違いを除いて保たれている。
変動するのは、素材、形式、番号の三つである。素材は毎年入れ替わるが、法、権利、制度、技術と社会という主題の範囲はほぼ変わらない。形式は、誤り指摘、語群補充、空所補充、表の要約、メール、案内、意見論述の間で入れ替わる。番号は、2025年度が6題構成であるため、後半の大問が一つ前にずれる。
この整合性は、試験が形式の知識ではなく判断の習得を測っていることの表れである。形式が変わっても、命題の照合、語法の検証、論理展開の追跡、数値の処理、要件の充足、立場と理由の構成といった判断は、毎年のようにどこかで要求される。
試験全体としては、入力の理解、規則の検証、情報の統合、産出という連鎖が、それぞれ独立した大問で測られ、全体で一つの英語運用能力を構成する。どの段階が弱くても、他の段階の得点では補いにくい構造であり、均衡のとれた準備が要求される。
認知負荷分布と運用原理
認知活動の種別と負荷分布
過去3年度の設問を認知活動の種類でみると、照合、推論、想起、検証、産出に分かれる。
照合は、第1問・第2問の内容一致と、第5問の表の要約に現れる。選択肢の数が多く、2026年度の第2問(1)は13の記述を英文と突き合わせる。一つの選択肢の判定に英文の複数箇所の参照が要る場面があり、負荷は選択肢の数と参照箇所の数に応じて大きくなる。
推論は、2025年度の第1問(3)や意見論述の画像解釈に現れ、書かれていない内容を妥当な範囲で導く。照合より一問あたりの負荷は高いが、設問数は少ない。
想起は、語義選択、発音比較、前置詞の補充に現れる。一問あたりの負荷は小さいが、設問数が多く、想起できない語に時間をかけると全体の配分を崩す。
検証は、誤り指摘に現れる。一つの英文を下線部ごとに点検する作業で、中程度の負荷が連続する。
産出は、英作文部門に現れる。一問あたりの負荷は大きく、読解・文法部門で使い切れなかった時間が、産出の質に直接影響する。
時間圧下での認知資源配分
作業記憶が扱える範囲は限られるため、13の記述と長文を同時に保持して照合すると、記憶の再構築が頻発する。選択肢の命題を一つずつ取り出し、英文中の根拠の位置を特定してから判定する手順が、資源の消費を抑える。複数選択の設問では、根拠を確認できた選択肢から確定し、残りの数を数える方が、全選択肢を同じ深さで検討するより資源を配分しやすい。
産出の設問では、構成を考える前に設問文の要件を書き出して固定する。要件が固定されれば、英文を書く段階で判断に使う資源を、語と文法の選択に集中できる。要件の確認を英文の作成と並行させると、どちらにも注意が分散し、情報の欠落や文法の誤りを招く。
想起型の設問では、一定の時間内に想起できない語を保留する判断が、照合型の設問に資源を残すことにつながる。語義や発音の知識は、考え込んでも新たな情報が得られない性質をもつため、保留の判断を早く下すほど、全体の資源配分が安定する。
時間配分・解答順序・取捨選択の判断原理
時間配分は、設問群を単位として決める。第1問と第2問は設問群が4〜6つ並び、各群の負荷が異なる。想起型の設問群を先に処理し、照合型の設問群に時間を残す順序が、過去3年度の設問構成から合理的と考えられる。ただし、英文を読まなければ解答できない設問群が多いため、先に英文全体の構造を把握する時間は削れない。
取捨選択の基準は、設問群ごとの得点見込みと所要時間の比である。語義選択や前置詞の補充のように、想起できれば即答できる設問群は所要時間が短く、優先度が高い。13の記述から6つを選ぶ設問は所要時間が長く、根拠を確認できた選択肢が少ない場合は、判定を保留して他の設問群を先に進める判断が必要になる。
英作文部門に残す時間は、読解・文法部門の進行に左右される。英作文は要件の充足が前提となるため、英作文に必要な時間を先に見積もり、読解・文法部門に使える時間を逆算する方法が考えられる。解答順序は固定されておらず、受験生が決められる。読解・文法部門の末尾の大問に難しい設問が含まれる年度でも、その大問に固執せず、英作文部門へ移る判断が配分を守る。
マークミス防止等の運用原理
読解・文法部門はマークシートに解答するため、設問の指示を読み違えると、解答が正誤を反転する。過去3年度には、運用上の注意が要る形式が複数ある。
否定の指示:「NOT correct」「NOT true」「LEAST likely」は、正しい選択肢ではなく誤った選択肢を選ばせる。2025年度の第1問では、(2)が英文と合わない記述を、(3)が推論できる記述を、それぞれ6つ選ばせ、隣り合う設問で選ぶ対象が反転する。設問の指示に印を付け、選ぶ対象を確かめてから選択肢を読む。
選択数の指定:「SIX」や「THREE」と数が指定され、指定を超えて選んではならないという指示が付く設問では、選んだ数を数えてからマークする。
ALL CORRECT:誤り指摘では、選択肢Eが「誤りなし」を表す。A〜Dのいずれかを選ぶ場合と、Eを選ぶ場合を、マーク欄の位置で取り違えない。
同じ番号の空所:2026年度の第4問は、同じ番号の空所が2箇所に現れる。選んだ語を両方の位置に当てはめ、文頭の表記と文中の表記の双方で成立するかを確かめてからマークする。
語群の一回使用:2024年度の第3問は、各語を一度しか使えない。使用済みの語を再びマークしないよう、選択した語に印を付ける。
設問番号とマーク欄の対応:(1)〜(5)の設問群と、小問番号1〜4が並ぶため、マークする行を小問ごとに確認する。
要求される判断原理
過去3年度の出題が要求する判断は、文章を読む判断、文を検証する判断、資料を整理する判断、英文を組み立てる判断の連鎖として整理できる。各判断について、成立の根拠と限界を確認する。
命題の照合は、選択肢が英文の記述の言い換えで作られることに根拠をもつ。語の重なりは正誤の証拠にならず、命題の範囲、程度、因果の方向が一致するかを検証して初めて判定できる。この原理の限界は、英文が明示しない事柄を問う推論型の設問にある。2025年度の第1問(3)のように、書かれた根拠から導ける範囲かを判定する設問では、照合だけでは決まらず、推論の妥当性を判断する別の手順が必要になる。
語義の確定は、辞書の定義を出発点とし、前後の論述との整合で最終的に決まる。"blurred" や "set in train" のように、語の字面から意味を取りにくい表現は、文の働きから意味を逆算する。限界は、比喩表現の解釈にある。"Our fingerprints proudly planted in its mess" のような表現は、語義の確定に加えて、書き手の態度を踏まえた言い換えを要求し、語義の判断だけでは解答が決まらない。
文法・語法の検証は、誤りが下線部の内部にあることに根拠をもつ。述語動詞、数の一致、品詞、前置詞の結びつきを順に点検すれば、誤りの位置を絞り込める。限界は語法にあり、"charged with" や "at liberty" のように、結びつきが固定された表現は構造の検証だけでは決まらない。表現の知識と構造の検証が補い合う関係にある。
論理展開の追跡と空所補充は、段落が議論の中で果たす働きに根拠をもつ。接続表現や文全体の補充は、前後の論理関係が決まれば絞り込める。2024年度の段落役割の選択は、段落内の主張と段落間の関係を同時に問う点で、この原理の運用を求める。限界は、論理関係が複数成立しうる空所にあり、その場合は文章全体の主張との整合が最終の基準になる。
資料の整理は、表や図の数値が、設問や要約文の要求と照合できる形に整理されて初めて使えることに根拠をもつ。2026年度の第5問の絶対数と変化率の区別が代表例である。限界は、資料から直接読み取れない因果の推定にあり、資料が示すのは数値であって原因ではない点を踏まえて、選択肢の表現の強さを判定する。
英文の産出は、設問文の要件を分解し、要件の充足を点検することに根拠をもつ。要件の充足は、英文の巧拙とは独立に点検できる。限界は意見論述にあり、要件を満たすだけでは論旨の説得力は決まらず、立場、理由、具体例の関係を構成する判断が加わる。
これらの判断は互いに依存する。命題の照合は資料の整理と同じ操作を含み、語法の検証は英文の産出で自分の文を点検する操作と同じである。一つの判断の習得は、別の大問での得点に波及する。
典型的な誤答パターンと時間配分の実態
誤答の原因は、判断原理の取り違えに分類できる。
最も多いのは、語の重なりによる誤選択である。英文中の語句をそのまま含む選択肢は正しく見えるが、範囲や程度が異なれば誤りである。2026年度の第5問では、"the highest absolute rise" と "the greatest relative growth" が近接しており、どの大学の数値に対応するかを確認せず、語感で選ぶと誤る。原因は、命題ではなく語で照合したことにある。
次に、否定の指示の読み落としがある。「NOT true」と「most likely to be inferred」が隣り合う2025年度の第1問(2)(3)では、選ぶ対象が反転する。原因は、設問の指示を先に確定せず、選択肢の内容から読み始めたことにある。
誤り指摘では、「ALL CORRECT」への逃避と過剰修正の両方が起こる。誤りが見つからない英文をEと判断する場合も、自然に聞こえる表現を誤りと判断する場合も、検証の手順を踏まなかったことが原因である。
語群補充と空所補充では、使用済みの語の再利用や、同じ番号の空所の一方のみの検証による誤りが生じる。制約条件の確認が抜けたことが原因である。
英作文では、設問文が指定した要件の欠落が典型である。2026年度の第6問で数値や具体例を用いない説明、2024年度の第6問で4つの情報の一部を落とした案内、第7問で画像の描写にとどまる解答がこれに当たる。経路の特定を誤った案内も、英語の問題ではなく情報処理の誤りである。
時間配分の実態は、設問数と素材量から推定できる。第1問と第2問には設問群が4〜6つ並び、各群が複数の小問を含む。過去3年度の設問構成から、読解2題に試験時間の多くが割かれ、英作文に必要な時間を残せるかが運用上の分岐点になると考えられる。語義選択や発音比較のような想起型の設問に時間をかけすぎると、この分岐点で不利になる。
本カリキュラムの構成
本カリキュラムは11のモジュールで構成し、番号順に学習する。個別の大問で問われる判断を扱うモジュール群が9つ、複数の大問にまたがる判断技能を扱うモジュール群が2つである。各モジュールの判断原理は、基礎体系で確立した能力を前提とし、早稲田大学法学部の出題形式に特化して運用する。
読解を扱うのはM01とM02である。M01は、第1問と第2問で要求される論理展開の追跡と要旨の把握を扱う。段落の機能、段落間の関係、文章全体の構造を復元する手順を、エッセイ、小説、歴史記事、論説文の素材で運用する。M02は、語義選択と下線部の趣旨の選択を扱う。語の文脈上の意味を前後の論述から確定し、比喩的な表現を言い換える手順を、M01で把握した論理展開と結びつける。
文法・語法を扱うのはM04、M05、M06である。M04は、誤り指摘に代表される構造的な誤りの特定を扱う。述語構造、数の一致、品詞、前置詞の結びつきを順に検証し、誤りなしと判断する根拠を確かめる手順である。M05は、前置詞と句動詞の文脈に応じた選択を扱い、語群補充や前置詞の空所補充に対応する。M06は、長文の空所補充で、文章全体の情報の流れから空所の機能を復元する判断を扱う。
資料読解を扱うのはM07とM08である。M07は、表、図、時刻表といった複数の資料の統合的な読解を扱い、数値の整理と比較の基準の統一を中心とする。M08は、要約と要旨選択における情報の階層化を扱い、M07で整理した事実を主従に分けて、要約として成立する表現を選ぶ手順に進む。
英作文を扱うのはM09とM10である。M09は、メールや案内文、論理の誤りの説明といった、条件が指定された英作文を扱う。設問文の要件を分解し、場面に合う構成で完結した英文に組み立てる手順である。M10は、意見論述の論理構成を扱い、立場、理由、具体例の関係を一つの段落に収める手順を、M09で身につけた要件の点検の上に置く。
複数の大問にまたがる技能を扱うモジュール群は、M03とM11である。M03は、選択肢の言い換えを判定し、誤った選択肢を論理的に排除する手順を扱う。第1問と第2問の内容一致、第5問の表の要約文の選択など、正誤を選択肢から判定するすべての大問に適用される。M11は、抽象的な記述と具体的な記述を往復して、書かれていない内容を妥当な範囲で推論する手順を扱う。小説の推論、空所補充、ことわざの選択、画像の解釈の各設問にまたがる。
前提関係は次のとおりである。M02はM01の学習を前提とし、M05とM06はM04の学習を前提とする。M08はM07、M10はM09の学習を前提とする。M01、M04、M07、M09は他のモジュールの履修を前提とせず、読解、文法・語法、資料読解、英作文の各系列の出発点になる。M03はM01を、M11はM08を先に学習しておくと運用しやすいが、必須の前提ではない。モジュール番号は学習順序を反映しており、番号順の学習が基本となる。
大問とモジュールの対応は次のように整理できる。第1問はM01、M02、M03、M11、第2問はM01、M02、M03、M06、M08に対応する。第3問はM04とM05、第4問はM04、M05、M06に対応する。第5問はM03、M06、M07、M08、M09に対応し、年度により空所補充と英作文のいずれにも用いられる。第6問はM07、M09、M10、第7問はM10とM11に対応する。
強勢のある母音の発音比較は、3年度すべてで出題されている。ただし、語ごとの発音知識を問う設問であり、判断手順として体系化する本カリキュラムのモジュールは設けていない。
モジュール別の狙い
M01:長文読解の論理展開と要旨把握
対応する大問は第1問と第2問である。扱う判断原理は、段落の機能と段落間の関係から文章全体の論理展開を復元し、その構造に照らして要旨を確定する手順にある。2024年度の第2問は7つの段落の役割を12の記述から選ばせ、2026年度の第1問と2025年度の第2問は要旨に当たる記述を選ばせた。いずれも、細部が書かれているかどうかではなく、各段落が議論の中で果たす働きを問う設問である。ハンセン病の歴史、深層学習の二面性、学校教育の男女差といった論説的素材と、小説やエッセイの双方で、同じ手順が使える範囲を扱う。M01は他のモジュールの履修を前提とせず、読解系の学習の出発点となる。判断の裏付けは、基礎体系の [基礎 M20] で確立した論理展開の類型を、設問形式に合わせて運用する点にある。
M02:文脈からの語義推定と比喩的意味の解釈
対応する大問は、第1問と第2問の語義選択、および下線部の趣旨を問う設問である。扱う判断原理は、語の辞書的な意味を出発点にしつつ、前後の論述との整合から文脈上の意味を確定し、比喩的な表現の趣旨を言い換える手順にある。"blurred"、"blank on"、"set in train" のように字面から意味を取りにくい表現や、"our fingerprints proudly planted in its mess" のような比喩が、3年度を通じて問われている。M01の履修を前提とする。文章全体の論理展開を把握できていれば、下線部の働きを絞り込める場面が多いためである。このモジュールは、基礎体系の [基礎 M30] が扱う多義語と文脈依存的な語義判断を、選択肢から一つを選ぶ形式に即して運用する。
M03:選択肢言い換え判定と誤答排除の判断体系
第1問、第2問、第5問をはじめ、選択肢から正誤や適否を判定するすべての大問に適用される判断技能を扱う。原理は、選択肢の命題を文章の記述と一対一で対応させ、範囲、程度、因果の方向、否定の有無が一致するかを検証し、一致しない要素を特定して排除することである。2026年度の第2問は13の記述から6つを選ばせ、2025年度の第1問は、合わない記述と推論できる記述をそれぞれ6つ選ばせた。2026年度の第5問は、近接した句の中から表の数値に合うものを選ばせた。M01の学習を進めておくと、言い換えの対象となる論旨を把握しやすいが、履修は必須ではない。位置づけとしては、基礎体系の [基礎 M23] が扱う推論と含意の読み取りを、誤答排除の手順として形式化するものである。
M04:英文法・語法における構造的誤りの特定
対応する大問は、第3問と第4問の誤り指摘である。扱う判断原理は、下線部ごとに述語動詞、主語との数の一致、品詞、前置詞と語の結びつきを検証し、誤りが特定できない場合に「ALL CORRECT」を選ぶ根拠を確かめる手順である。2026年度は4つ、2025年度は6つ、2024年度は4つの英文が出題された。"rest at there" のように副詞に前置詞を重ねた誤り、"practical nothing" のような品詞の混同、"a raise in their deaths" のような語形の誤りなど、誤りの種類は多様である。学習の入口はM04で、他のモジュールの履修を必要としない。基礎体系の [基礎 M01] が扱う文型の判定と述語構造の確定を、短い英文の誤りの特定に絞り込んで運用する。
M05:句動詞・前置詞の文脈依存的選択
対応する大問は、2024年度の第3問の語群補充、2025年度の第4問と2024年度の第5問の前置詞・慣用表現の補充である。扱う判断原理は、動詞、名詞、形容詞が要求する前置詞や副詞を、語と語の結びつきと文の意味の双方から確定し、句動詞や慣用表現の意味を文脈で選ぶ手順にある。"charged with"、"at liberty"、"run away" のように結びつきが固定された表現と、"through"、"from" のように文の意味から選ぶ前置詞が混在する。M04の学習を前提とする。誤り指摘で身につけた述語構造の判定が、結びつきを検証する前段になるためである。基礎体系の [基礎 M04] が扱う前置詞の意味体系を、選択肢の絞り込みに結びつけて用いる。
M06:長文空所補充における情報構造の復元
対応する大問は、2026年度と2025年度の第4問、2024年度の第5問、および第2問の空所補充である。扱う判断原理は、空所の前後だけでなく、文章全体の情報の流れから、空所に入る語句の機能を復元する手順にある。2026年度の第4問は同じ空所番号が2箇所に現れ、文頭と文中の両方で成立する語を選ばせた。2025年度の第2問は、比較関係を判定させる選択肢を並べた。M04の履修を前提とする。空所の語が文法的に成立するかを確かめてから、情報の流れとの整合を検証する順序になるためである。このモジュールは、基礎体系の [基礎 M18] が扱う文間の結束性を、空所補充の判断に特化して運用する。
M07:複数資料の統合的読解
対応する大問は、2026年度の第5問の表の要約、2025年度の第6問の地図とグラフ、2024年度の第6問の時刻表である。扱う判断原理は、表や図に含まれる数値、時刻、単位を整理し、複数の資料を同一の基準で比較して、文章や設問の要求と照合する手順にある。2026年度の第5問では絶対数と変化率の区別が、2024年度の第6問では、Local 250 と Express 12 が制限時刻に間に合わない事実から乗り換え経路を絞り込む処理が必要になった。資料を読む力は他の系列から独立して身につくため、M07は読解系や文法系の学習を待たずに始められる。基礎体系の [基礎 M26] が扱う図表・複数資料の読解を、入試で出題される資料の種類に合わせて運用する。
M08:要約問題における情報の階層化と圧縮
対応する大問は、要旨選択の設問(2026年度の第1問(3)、2025年度の第2問(4))、2024年度の第2問の段落役割の選択、2026年度の第5問の要約文の空所補充である。扱う判断原理は、文章や資料の情報を主従に分け、上位の主張に統合できる情報と削る情報を区別して、要約として成立する表現を選ぶ手順にある。要旨の選択肢には、細部の一つを一般化しすぎた記述や、書き手の立場と逆の記述が含まれる。M07の履修を前提とする。資料から読み取った事実を整理できなければ、その要約文を評価できないためである。基礎体系の [基礎 M27] に当たる要約と情報の圧縮を、選択肢の評価に応用する。
M09:条件英作文における状況設定と語用論的適切性
対応する大問は、2025年度の第5問のメール作成、2024年度の第6問の案内文、2026年度の第6問の論理の誤りの説明である。扱う判断原理は、設問が指定した目的、理由、含めるべき情報を要件として分解し、宛先と場面に合う丁寧さと構成で、完結した英文に組み立てる手順にある。2025年度は、期限延長の依頼という目的と、腕の骨折による入院という理由を、定型の書き出しと結びの間に収める必要があった。2024年度は、列車名、時刻、同じホームでの乗り換え、特急券の購入という4つの情報を落とさず説明することが要求された。M09は他のモジュールの履修を求めず、英作文系の入口になる。基礎体系の [基礎 M28] が扱う和文英訳と構造変換を、条件付きの英作文に即して運用する。
M10:自由英作文の論理構成と視点提示
対応する大問は、2026年度の第7問、2025年度の第6問、2024年度の第7問の意見論述である。扱う判断原理は、主題に対する立場を定め、理由を二つ以上に分けて提示し、具体例で裏付けて、一つの段落の中で論理を完結させる手順にある。2024年度の設問は、画像の描写にとどまる解答を除外しており、描写から意味の解釈へ進むことが条件となった。M09の履修を前提とする。要件を落とさずに書く力が、立場と理由の構成を考える段階に先立って必要になるためである。このモジュールは、基礎体系の [基礎 M29] で確立した自由英作文の論理構成を、段落一つの分量に収める運用に特化する。
M11:抽象と具体の往還による文脈的推論
M11は、第1問の小説と下線部の趣旨、第2問の空所補充やことわざの選択、意見論述の画像の解釈など、抽象的な概念と具体的な記述を往復して意味を確定する設問にまたがる技能を扱う。判断原理は、具体的な記述から抽象的な主張を引き出し、逆に抽象的な表現を具体的な場面に当てはめて、書かれていない内容を妥当な範囲で推論する手順にある。2025年度の第1問は、語り手の言動から推論できる記述を6つ選ばせ、同年度の第2問は文章を締めくくることわざを選ばせた。M08の学習を済ませておくと、要旨の把握を推論の前提として使いやすい。基礎体系の [基礎 M21] で扱う論理的文章の読解を、書かれていない内容の推論へ拡張する位置にある。