【基盤 英語】モジュール3:代名詞の種類と識別基準

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目次

本モジュールの目的と構成

英文を読む際、”it”や”they”が何を指しているのか判断に迷い、文全体の意味を取り違えた経験は多くの学習者が持つものである。代名詞は名詞の反復を避けるために用いられる語類であるが、その機能は単なる「置き換え」にとどまらない。代名詞は先行する名詞句(先行詞)との照応関係を形成し、文と文をつなぐ結束装置としても働く。代名詞の種類を正確に識別できなければ、関係代名詞と疑問代名詞の混同、再帰代名詞と人称代名詞の誤用、不定代名詞の指示範囲の誤認といった問題が頻発する。とりわけ入試では、下線部の代名詞が指す内容を問う設問、代名詞の格変化を利用した文法問題、代名詞の照応関係を手がかりに段落の論理展開を追う読解問題が頻出する。代名詞の種類と識別基準を体系的に理解し、文中で代名詞がどの名詞句を受け、どのような統語的機能を果たしているかを正確に判定できる能力の確立を目的とする。

本モジュールは以下の4つの層で構成される:

統語:代名詞の形態的・統語的識別 代名詞を品詞として正確に分類し、格変化・数・人称といった形態的特徴から種類を判定する方法を扱う。人称代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・関係代名詞・再帰代名詞・不定代名詞の六種を体系的に整理し、各種の形態と統語的位置の対応を確立する。

意味:代名詞の指示対象の特定 代名詞が文中でどの名詞句を指しているか(照応関係)を正確に判定する方法を扱う。先行詞との一致条件(数・性・人称)、文脈に基づく指示対象の絞り込み、曖昧な照応の解消手順を扱い、代名詞の意味的機能を把握する力を確立する。

語用:文脈に応じた代名詞の選択基準 同一の指示対象に対して複数の代名詞表現が可能な場合に、文脈・丁寧さ・情報構造に基づいて適切な代名詞を選択する基準を扱う。代名詞と名詞句の使い分け、総称用法における代名詞の選択、形式主語・形式目的語の判定手順を確立する。

談話:代名詞による文章の結束性 複数の文にわたる代名詞の照応連鎖を追跡し、段落全体の指示関係を正確に把握する方法を扱う。代名詞の照応が文章の結束性をどのように形成するかを理解し、入試の読解問題で代名詞の指示内容を正確に特定する技術を確立する。

このモジュールを修了すると、以下の能力が身につく。英文中に出現するあらゆる代名詞について、その種類を形態と統語的位置から即座に判定し、適切な格形を選択できるようになる。代名詞が指し示す先行詞を、数・性・人称の一致条件と文脈の両面から正確に特定できるため、”it”や”they”が何を受けているか迷うことがなくなる。さらに、文脈に応じて代名詞と名詞句のどちらを用いるべきか、総称表現でどの代名詞形式を選ぶべきかといった判断が可能になり、英作文においても不自然な代名詞使用を回避できる。加えて、複数の文にわたる代名詞の照応連鎖を追跡する力により、長文読解で段落全体の論理展開を正確に把握できるようになる。これらの能力を基盤として、後続のモジュールで扱う関係詞の体系的理解や文間の結束性分析へと発展させることができる。

統語:代名詞の形態的・統語的識別

英文を読むとき、”he”も”this”も”who”も「代名詞」として一括りにしてしまうと、それぞれが文中で果たす役割の違いを見落とす。人称代名詞は先行詞を受けて主語・目的語として機能し、指示代名詞は特定の対象を指し示し、疑問代名詞は情報の欠落を標示する。この層を終えると、代名詞の六種(人称・指示・疑問・関係・再帰・不定)を形態的特徴と統語的位置から正確に識別できるようになる。学習者は品詞の名称と基本機能、特に名詞が主語・目的語・補語として機能するという知識を備えている必要がある。代名詞の格変化体系、各種代名詞の形態的特徴、統語的位置と代名詞の種類の対応関係を扱う。後続の意味層で代名詞の指示対象を特定する際、本層で確立した種類の識別能力が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤 M01-統語]
└ 品詞分類の全体像の中で代名詞が占める位置を把握する

[基盤 M02-統語]
└ 名詞の種類と識別基準を理解し、代名詞が置き換える対象を明確にする

[基盤 M14-統語]
└ 文の要素(S/V/O/C)の識別基準を確認し、代名詞の統語的位置を正確に判定する

【基礎体系】

[基礎 M16-語用]
└ 代名詞・指示語と照応の原理的理解を深める

1. 人称代名詞の格変化と統語的位置

人称代名詞を正確に使いこなすには、「I, my, me, mine」といった変化形の暗記だけでは不十分である。各格形がどの統語的位置に出現するかを理解し、文中の位置から逆に格を判定できる能力が求められる。人称代名詞の格変化体系を正確に把握することで、主格・所有格・目的格・所有代名詞の四形式を文の構造に基づいて判定する能力、前置詞の目的語に目的格を選択する能力、”It is I.”と”It is me.”のような文法的判断が可能になる能力、さらに人称・数・格の三次元で代名詞を体系的に整理する能力が確立される。人称代名詞の格変化は、次の記事で扱う指示代名詞・疑問代名詞の識別、さらに関係代名詞の格判定へと直結する。

1.1. 人称代名詞の格体系

一般に人称代名詞は「I-my-me-mine を覚えればよい」と単純に理解されがちである。しかし、この理解は格変化の暗記に偏っており、各格形が文中のどの位置に出現するかという統語的規則を捉えていないという点で不正確である。学術的・本質的には、人称代名詞の格とは、その代名詞が文中で担う統語的機能(主語・所有限定詞・目的語・独立所有格)を形態的に標示する仕組みとして定義されるべきものである。この統語的定義が重要なのは、格形の選択が文の構造によって一義的に決定されるためであり、暗記した格形を当てはめるのではなく、文中の位置から格を論理的に導出できるようになるからである。英語の人称代名詞は、主格(I / you / he / she / it / we / they)、所有格(my / your / his / her / its / our / their)、目的格(me / you / him / her / it / us / them)、所有代名詞(mine / yours / his / hers / ours / theirs)の四系列に整理される。主格は述語動詞の主語の位置に、所有格は名詞の直前で限定詞として、目的格は動詞・前置詞の目的語の位置に、所有代名詞は「所有格+名詞」の代用として名詞の位置に出現する。この四系列の対応は例外なく成り立つため、文中の統語的位置を確認すれば、使用すべき格形は自動的に決定される。

この原理から、人称代名詞の格を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では代名詞の統語的位置を確認する。述語動詞の前であれば主語の位置であり主格を選択する。述語動詞・前置詞の直後であれば目的語の位置であり目的格を選択する。このように位置を確認することで、格の候補を即座に絞り込める。手順2では名詞との隣接関係を確認する。代名詞の直後に名詞が続く場合、その代名詞は所有格として名詞を限定している。名詞が続かず代名詞だけで名詞句を形成している場合は、主格・目的格・所有代名詞のいずれかである。この確認により、所有格と他の格を明確に区別できる。手順3では文の要素との対応を確定する。手順1と手順2の結果を組み合わせ、S(主語)の位置なら主格、O(目的語)の位置なら目的格、名詞の限定詞の位置なら所有格、名詞句の位置で「所有格+名詞」の代用なら所有代名詞と判定する。この三段階により、いかなる文脈でも人称代名詞の格を正確に判定できる。

例1: She told him the truth.
→ “She”は述語動詞”told”の前=主語の位置=主格。”him”は”told”の直後=目的語の位置=目的格。
→ 判定結果: She(主格・3人称単数女性)、him(目的格・3人称単数男性)

例2: Their proposal impressed us.
→ “Their”は名詞”proposal”の直前=所有格(限定詞)。”us”は”impressed”の直後=目的語の位置=目的格。
→ 判定結果: Their(所有格・3人称複数)、us(目的格・1人称複数)

例3: The final decision is yours.
→ “yours”は補語の位置にあり、直後に名詞がない=所有代名詞(”your decision”の代用)。
→ 判定結果: yours(所有代名詞・2人称)

例4: Between you and me, the plan needs revision.
→ “you”と”me”は前置詞”between”の目的語=目的格。”Between you and I”は前置詞の目的語に主格を用いた誤用であり、正しくは目的格”me”を使う。
→ 判定結果: you(目的格・2人称)、me(目的格・1人称単数)。”Between you and I”は誤り。

以上により、人称代名詞が文中のどの位置に出現しても、統語的機能に基づいて正確な格形を判定することが可能になる。

2. 指示代名詞と指示形容詞の識別

代名詞を学ぶ際、”this”や”that”は「指示語」として漠然と把握されがちであるが、実際の英文では指示代名詞(名詞句として独立して機能する用法)と指示形容詞(名詞を修飾する限定詞として機能する用法)の区別が頻繁に問われる。”this”が単独で主語や目的語として機能する場合と、”this book”のように名詞の前に位置して限定詞として働く場合とでは、統語的機能が根本的に異なる。指示代名詞と指示形容詞の区別を正確に行えることで、文の要素を正しく把握し、後続の意味層で指示対象を特定する際の前提条件が確立される。指示語の識別能力は、次の記事で扱う疑問代名詞の識別、さらに関係代名詞と疑問代名詞の区別へと直結する。

2.1. 指示代名詞の統語的特徴

指示代名詞とは何か。”this / that / these / those”はいずれも「指し示す」機能を持つが、文中で名詞句として独立して機能する場合に指示代名詞、名詞の直前に位置して限定詞として機能する場合に指示形容詞と呼ばれる。この区別は語形の違いではなく統語的位置の違いに基づく。指示代名詞は主語・目的語・補語のいずれかの位置で名詞句として振る舞い、指示形容詞は後続の名詞と結合して名詞句の一部を構成する。この区別が重要なのは、指示代名詞の場合は代名詞自体が指示対象を表すため先行詞の特定が必要になるのに対し、指示形容詞の場合は後続の名詞が直接内容を示すため先行詞の特定が不要だからである。また、”this / these”は話者に近い対象(近称)を、”that / those”は話者から遠い対象(遠称)を指すという距離の対立がある。この距離は物理的な距離だけでなく、心理的・時間的な距離にも適用される。

以上の原理を踏まえると、指示代名詞と指示形容詞を識別するための手順は次のように定まる。手順1では”this / that / these / those”の直後を確認する。直後に名詞が続く場合は指示形容詞であり、名詞が続かず文の要素(S/O/C)として独立している場合は指示代名詞である。この確認により、同一語形の二つの用法を瞬時に区別できる。手順2では数の一致を確認する。”this / that”は単数名詞または単数の概念を、”these / those”は複数名詞または複数の概念を指す。指示代名詞の場合、先行詞の数と指示代名詞の数が一致していなければならない。この確認により、先行詞の候補を数の観点から絞り込める。手順3では距離の対立を判定する。”this / these”が使われていれば近称(物理的・心理的・時間的に近い対象)、”that / those”が使われていれば遠称(遠い対象)と判定する。特に前文の内容全体を受ける用法では、”this”は直前の内容、”that”はやや離れた先行文脈を受ける傾向がある。この判定により、複数の候補から正しい指示対象を選択する精度が高まる。

例1: This surprised everyone in the room.
→ “This”の直後に名詞なし=指示代名詞。単数。主語の位置で文の要素Sとして機能。近称であるため、直前の文脈で述べられた出来事を指す。
→ 判定結果: 指示代名詞・単数・近称(直前の文脈を指示)

例2: Those students passed the exam.
→ “Those”の直後に名詞”students”あり=指示形容詞。複数。”those”は遠称であるため、特定の(すでに話題に上った)学生群を限定している。
→ 判定結果: 指示形容詞・複数・遠称

例3: I prefer this to that.
→ “this”と”that”はいずれも直後に名詞なし=ともに指示代名詞。”prefer”の目的語(this)と前置詞”to”の目的語(that)として機能。近称と遠称の対比。
→ 判定結果: this(指示代名詞・単数・近称)、that(指示代名詞・単数・遠称)

例4: The climate of Japan is milder than that of Canada.
→ “that”の直後に前置詞”of”が続き名詞は直後にない=指示代名詞。ここでの”that”は”the climate”の代用(代名詞的用法)。単数であり、先行する”the climate”と数が一致する。
→ 判定結果: that=指示代名詞・単数・遠称(”the climate”の反復回避の代用)

これらの例が示す通り、指示語が文中に出現した際に代名詞か形容詞かを瞬時に識別し、数と距離の特徴から指示対象を正確に特定する能力が確立される。

3. 疑問代名詞と関係代名詞の識別

英文法を学ぶ際、”who”や”which”が疑問代名詞なのか関係代名詞なのかを判別できない学習者は多い。形態が完全に同一であるため、文中の機能と位置に基づく判定が不可欠である。疑問代名詞と関係代名詞の識別能力が確立されることで、文の構造把握の精度が飛躍的に向上する。疑問文か名詞節かを正確に判断する能力、関係詞節の範囲を特定して先行詞を同定する能力、”what”の二重機能(疑問代名詞と関係代名詞)を識別する能力が確立される。これらの能力は、後続のモジュールで扱う関係詞の体系的理解に直結する。

3.1. 疑問代名詞と関係代名詞の機能的区別

一般に”who / which / what”は「疑問詞」と理解されがちである。しかし、この理解は同じ語形が関係代名詞として節を導く機能を持つことを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、疑問代名詞とは情報の欠落を標示し、その欠落部分への回答を要求する語であり、関係代名詞とは先行詞を修飾する形容詞節(関係詞節)を導く接続機能を兼ね備えた代名詞として定義されるべきものである。この区別が重要なのは、疑問代名詞は疑問文または間接疑問(名詞節)を形成するのに対し、関係代名詞は先行詞の直後で形容詞節を形成するという根本的な機能差があり、この差が文の構造解析を左右するためである。疑問代名詞は「誰が?」「何を?」という情報要求機能を持ち、文全体が疑問文であるか、動詞の目的語として名詞節(間接疑問)を導く。一方、関係代名詞は先行詞という名詞句の直後に位置し、先行詞を修飾する従属節を形成する。”what”は特殊であり、先行詞を内包する関係代名詞(”the thing(s) which”に相当)としても機能するため、先行詞がない点で他の関係代名詞と区別される。

上記の定義から、疑問代名詞と関係代名詞を識別する手順が論理的に導出される。手順1では先行詞の有無を確認する。”who / which / that”の直前に名詞句(先行詞)がある場合は関係代名詞、先行詞がなく文頭や動詞の目的語の位置に出現する場合は疑問代名詞と判定する。この確認により、大半の判定が完了する。手順2では節の機能を確認する。関係代名詞が導く節は先行詞を修飾する形容詞節であり、その節を取り除いても文の骨格が成立する。疑問代名詞が導く節は名詞節であり、文の主語・目的語・補語として不可欠な要素となる。この検証により、手順1で判定が困難な場合でも機能面から確実に識別できる。手順3では”what”の特殊性を処理する。”what”に先行詞がない場合、「何を(疑問)」と「〜するもの・こと(関係)」の二つの読みが可能である。疑問の読みでは回答を要求する文脈があり、関係の読みでは先行詞を内包して名詞節を形成する。文脈に疑問・回答の構造があれば疑問代名詞、名詞句として文の要素に組み込まれていれば関係代名詞と判定する。

例1: Who broke the window?
→ 文頭に出現し、先行詞なし。疑問文を形成している。「誰が」という情報要求。
→ 判定結果: 疑問代名詞(主格)

例2: The student who broke the window was punished.
→ “who”の直前に先行詞”The student”あり。”who broke the window”は”The student”を修飾する形容詞節。この節を除いても”The student was punished.”が成立。
→ 判定結果: 関係代名詞(主格、先行詞=The student)

例3: I don’t know what he said.
→ “what”に先行詞なし。”what he said”は動詞”know”の目的語として名詞節を形成。文脈は「彼が何を言ったか(知らない)」で間接疑問とも読めるが、同時に「彼が言ったこと」という関係代名詞(先行詞内包型)とも解釈可能。いずれの解釈でも名詞節として機能する点は共通。
→ 判定結果: “what”=疑問代名詞(間接疑問)または関係代名詞(先行詞内包型)。文脈に応じて判断。

例4: She is the teacher who(m) I respect the most.
→ “who(m)”の直前に先行詞”the teacher”あり。”who(m) I respect the most”は形容詞節。”respect”の目的語が欠落しており、目的格の関係代名詞。”whom”が正式だが口語では”who”も使用される。
→ 判定結果: 関係代名詞(目的格、先行詞=the teacher)

以上の適用を通じて、同一語形の”who / which / what”が疑問代名詞と関係代名詞のいずれとして機能しているかを、先行詞の有無と節の機能から正確に判定する能力を習得できる。

4. 再帰代名詞の形態と機能

英文中に”himself”や”themselves”が出現した際、これらが「〜自身」と訳せることは知っていても、なぜ再帰代名詞が必要なのか、人称代名詞の目的格とどう使い分けるのかを正確に説明できる学習者は少ない。再帰代名詞の識別基準を理解することで、再帰代名詞が必須の文脈と強調用法の文脈を正確に区別する能力、人称代名詞の目的格との誤用を防止する能力、再帰代名詞を含むイディオム(by oneself, help oneself等)を正確に処理する能力が確立される。再帰代名詞の理解は、次の記事で扱う不定代名詞の識別とあわせて、代名詞体系の全体像の完成に寄与する。

4.1. 再帰代名詞の二つの機能

代名詞には二つの捉え方がある。一つは名詞の代わりを務める語という見方、もう一つは文の中で主語と同一の指示対象を目的語の位置で表す語という見方である。再帰代名詞は後者の機能を担う特殊な代名詞であり、「主語と目的語が同一人物・同一事物を指す場合に、目的語の位置に置かれる代名詞」として定義される。この定義が重要なのは、主語と目的語が同一指示対象である場合、通常の人称代名詞(目的格)を使うと異なる人物を指してしまうという曖昧性が生じるためである。”He hurt him.”では”him”は”He”とは別の人物を指すが、”He hurt himself.”では”himself”が”He”と同一人物であることを明示する。再帰代名詞はこの同一指示の明示機能を果たす。さらに、再帰代名詞には「強調用法」がある。”I myself saw it.”や”She did it herself.”のように、主語や目的語の直後に置かれて「他でもなく〜自身が」という強調を加える用法である。この場合、再帰代名詞を取り除いても文は文法的に成立する。再帰用法では再帰代名詞が不可欠(削除すると意味が変わる)であるのに対し、強調用法では付加的(削除しても基本的意味は変わらない)という違いがある。

この原理から、再帰代名詞を正確に識別する手順が導かれる。手順1では”-self / -selves”の語尾を確認する。”myself, yourself, himself, herself, itself, ourselves, yourselves, themselves”の八形式のいずれかに該当すれば再帰代名詞と判定する。語形の確認により他の代名詞との混同を防ぐことができる。手順2では主語との同一性を確認する。再帰代名詞の人称・数が主語の人称・数と一致しているかを検証する。一致していれば再帰用法の候補であり、一致していなければ文法的誤りの可能性がある。手順3では削除テストを行う。再帰代名詞を削除して文が成立するかを確認する。削除すると文が非文法的になる場合は再帰用法(必須)であり、削除しても文が成立する場合は強調用法(付加的)と判定する。

例1: She introduced herself to the audience.
→ “-self”語尾あり=再帰代名詞。主語”She”と”herself”は同一人物(3人称単数女性で一致)。”herself”を削除すると”She introduced __ to the audience.”となり目的語が欠落して非文法的=再帰用法(必須)。
→ 判定結果: 再帰用法。「彼女は自分自身を聴衆に紹介した。」

例2: The president himself attended the meeting.
→ “-self”語尾あり=再帰代名詞。主語”The president”と”himself”は同一人物。”himself”を削除すると”The president attended the meeting.”で文法的に成立=強調用法(付加的)。「大統領自らが出席した。」
→ 判定結果: 強調用法。削除しても文は成立するが、「他でもなく大統領自身が」という強調が失われる。

例3: They enjoyed themselves at the party.
→ “themselves”は再帰代名詞。主語”They”と”themselves”は同一(3人称複数で一致)。”themselves”を削除すると”They enjoyed __ at the party.”で目的語欠落=再帰用法。”enjoy oneself”は「楽しむ」のイディオム。
→ 判定結果: 再帰用法(イディオム)。

例4: He hurt him. / He hurt himself.
→ “He hurt him.”では”him”は主語”He”とは異なる第三者を指す(人称代名詞・目的格)。“He hurt himself.“では”himself”が主語”He”と同一人物を指す(再帰代名詞・再帰用法)。両文は指示対象が完全に異なる。
→ 判定結果: 人称代名詞”him”=別人を指示。再帰代名詞”himself”=主語と同一人物を指示。

以上により、再帰代名詞の二つの機能(再帰用法と強調用法)を確実に区別し、人称代名詞との使い分けを正確に判定することが可能になる。

5. 不定代名詞の体系と識別

不定代名詞を学ぶ際、“some”と”any”の違いについて「肯定文にはsome、疑問文・否定文にはany」という説明だけで十分だろうか。実際には”Would you like some coffee?”(肯定的回答を期待する疑問文でsome)のように、この単純な規則では処理できない場面が頻繁に生じる。不定代名詞の識別能力が不十分なまま読解に取り組むと、数量の範囲や特定性の判断を誤り、文全体の意味を取り違える結果となる。不定代名詞の体系的理解によって、以下の能力が確立される。”some / any / no / every”系の代名詞を文脈に応じて正確に選択できる能力、”each / every / all / both / either / neither”の数量的意味を正確に把握する能力、”one / another / other / others”の指示範囲を区別する能力、不定代名詞の動詞との数の一致を正確に処理する能力である。不定代名詞の識別基準は、意味層で扱う代名詞の指示対象特定の前提となる。

5.1. 不定代名詞の分類体系

一般に不定代名詞は「不特定の人・物を指す代名詞」と漠然と理解されがちである。しかし、この理解は不定代名詞の内部に存在する体系的な区分(全体量・部分量・選択・否定)を見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、不定代名詞とは指示対象の特定性・数量的範囲・肯定/否定の極性によって体系的に分類される代名詞群として定義されるべきものである。この体系的定義が重要なのは、不定代名詞の選択が「暗記した規則の適用」ではなく「指示対象の特定性と極性の判断」によって論理的に導かれるためである。不定代名詞は大きく四つのグループに分けられる。第一に全称系(“every / all / both”:集合全体を指す)、第二に存在系(“some / any”:集合の一部を指す)、第三に選択系(“each / either / neither / one / another / other”:集合の中から個を選択する)、第四に否定系(“no / none / neither”:集合の中に該当するものがないことを示す)である。さらに、”-one / -body / -thing”の複合形(someone, anybody, nothing等)は人・物の区別を語末で標示する。動詞との数の一致においては、”every / each / either / neither”系および複合形(everyone, somebody等)は文法的に単数扱いとなり、”all / both”は複数扱い、”some / any / none”は先行する名詞の数に依存する。

上記の定義から、不定代名詞を識別する手順が論理的に導出される。手順1では数量的範囲を判定する。「全体を指すか、一部を指すか、特定の個を選ぶか、存在を否定するか」を文脈から確認する。全体なら全称系、一部なら存在系、個の選択なら選択系、存在否定なら否定系に分類できる。手順2では極性を判定する。肯定文脈では”some”系(肯定的存在の想定)、否定・疑問・条件文脈では”any”系(極性への感応)が基本であるが、勧誘・依頼の疑問文(肯定的回答を期待)では”some”系が用いられる。極性の判定により、”some”と”any”の選択を機械的規則ではなく文脈に基づいて行える。手順3では動詞との数の一致を確認する。不定代名詞が主語の場合、全称系の”every / each”は単数一致、”all / both”は複数一致、複合形(everyone, something等)は単数一致とする。この確認により、主述の一致エラーを防止できる。

例1: Everyone has a different opinion.
→ “Everyone”は全称系の複合形。「全員」を意味するが文法的に単数扱い→動詞は”has”(三単現)。
→ 判定結果: 全称系・人物指示・単数一致

例2: Would you like some coffee?
→ 疑問文だが”some”を使用。これは勧誘の疑問文であり、肯定的回答(Yes)を期待している文脈。”any”ではなく”some”が適切。
→ 判定結果: 存在系・肯定的期待の疑問=”some”が適切

例3: Neither of the proposals was accepted.
→ “Neither”は否定系・選択系の二者否定。「二つの提案のどちらも〜ない」。文法的に単数扱い→動詞は”was”。
→ 判定結果: 否定系・二者否定・単数一致

例4: Each student submitted their assignment.
→ “Each”は選択系で各個を指す。文法的に単数扱い。”their”は伝統的文法では”his or her”が正式だが、現代英語では単数の”they / their”が性別中立代名詞として広く使用されている。
→ 判定結果: 選択系・各個指示・単数一致(”their”は単数”they”の所有格)

4つの例を通じて、不定代名詞の分類(全称・存在・選択・否定)と極性・数の一致の判断手順の実践方法が明らかになった。

意味:代名詞の指示対象の特定

代名詞の種類を正確に識別できるようになったとしても、その代名詞が具体的に何を指しているかを特定できなければ、文の意味を正しく把握することはできない。”It was surprising.”と読んだとき、”It”が前文のどの名詞句を、あるいは前文の内容全体を受けているのかを判断できなければ、何が驚くべきであったのか理解できない。この層を終えると、代名詞の先行詞を一致条件と文脈の両面から正確に同定できるようになる。統語層で確立した代名詞の種類の識別と格判定の能力を備えている必要がある。先行詞との一致条件(数・性・人称)、曖昧な照応の解消手順、”it”の多機能用法(先行詞照応・形式主語・形式目的語・天候/時間のit)の識別を扱う。語用層で代名詞の選択基準を学ぶ際、本層で確立した指示対象の特定能力が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤 M02-意味]
└ 名詞の指示特性(可算/不可算、特定/不特定)を理解し、代名詞の先行詞となる名詞の性質を把握する

[基盤 M14-意味]
└ 文の要素の意味的役割を理解し、代名詞が担う意味的機能を確認する

【基礎体系】

[基礎 M16-意味]
└ 代名詞・指示語の照応メカニズムを意味論的に深く理解する

1. 先行詞との一致条件

代名詞の指示対象を特定するには、「代名詞が何を指しているか」を文脈から推測するだけでは不十分である。代名詞と先行詞の間には数・性・人称の一致という文法的制約があり、この制約を手がかりにすることで指示対象の候補を論理的に絞り込める。先行詞との一致条件を理解することで、代名詞の指示対象を系統的に特定する能力が確立される。一致条件による候補の絞り込みは、入試の「下線部の代名詞が指す内容を答えよ」という設問の解法の核心である。

1.1. 数・性・人称の一致による先行詞の同定

一般に代名詞の指示対象の特定は「文脈から推測する」と理解されがちである。しかし、この理解は代名詞と先行詞の間に成立する形式的一致条件を活用していないという点で不正確である。学術的・本質的には、代名詞の先行詞は「数(単数/複数)・性(男性/女性/中性)・人称(1/2/3人称)の三条件が代名詞と一致する名詞句」として形式的に絞り込まれ、その上で文脈的妥当性を検証するという二段階の手順で同定されるべきものである。この形式的アプローチが重要なのは、文脈だけに頼ると複数の候補から先行詞を絞り込めない場合があるのに対し、一致条件を適用すれば候補を機械的に限定できるためである。数の一致は最も基本的な条件であり、”he”は単数男性名詞のみを、”they”は複数名詞(または単数の性別中立用法)のみを先行詞に取る。性の一致は人を指す代名詞で機能し、”she”は女性名詞のみを先行詞に取る。人称の一致は通常は3人称であるが、直接話法では1人称・2人称の代名詞も出現する。なお、現代英語では性別が不明・不問の場合に単数の”they”を使用する用法が広がっており、この場合”they”は単数の先行詞を受ける。

この原理から、先行詞を同定する具体的な手順が導かれる。手順1では代名詞の形態的特徴から一致条件を確認する。”he”であれば「3人称・単数・男性」、”them”であれば「3人称・複数」という条件を抽出する。この確認により、先行詞に求められる特徴が明確になる。手順2では先行文脈から候補となる名詞句を列挙する。代名詞よりも前に出現した名詞句のうち、手順1の一致条件を満たすものを全て候補とする。この列挙により、先行詞の可能性を網羅的に把握できる。手順3では文脈的妥当性を検証する。候補が複数ある場合、その代名詞を含む文の意味が整合的になる名詞句を先行詞として確定する。物理的近接性(直近の名詞句ほど先行詞になりやすい)も手がかりとなるが、意味的整合性が最終的な判断基準である。

例1: Mary told John that she would be late.
→ “she”は3人称・単数・女性。先行文脈の名詞句は”Mary”(女性・単数)と”John”(男性・単数)。一致条件を満たすのは”Mary”のみ。
→ 判定結果: she=Mary

例2: The students submitted their essays, but some of them contained errors.
→ “them”は3人称・複数。先行文脈の名詞句は”The students”(複数)と”their essays”(複数)。一致条件はどちらも満たす。文脈検証:「それらのうちいくつかが誤りを含んでいた」→”essays”が妥当(学生が誤りを含むのは不自然)。
→ 判定結果: them=their essays

例3: The company announced its new policy, and it was well received.
→ “it”は3人称・単数・中性。候補は”The company”(単数)と”its new policy”(単数)。文脈検証:「好評だった」→”new policy”が妥当(会社自体が好評というのは文脈に合わない)。
→ 判定結果: it=its new policy

例4: Each applicant should bring their identification.
→ “their”は3人称。先行詞は”Each applicant”(単数)。”each”は文法的に単数だが、現代英語では性別中立の単数”they/their”が使用される。”his or her”と同義。
→ 判定結果: their=Each applicant(単数”they”の所有格、性別中立用法)

以上により、代名詞の一致条件を手がかりに先行詞の候補を限定し、文脈的妥当性を検証して先行詞を確定する能力が可能になる。

2. “it”の多機能用法の識別

英文中に”it”が出現した際、それが「何かを指す代名詞」なのか、文法的な構造上の要求で置かれた形式的な”it”なのかを区別できない学習者は多い。”It is important to study hard.”の”It”は何も指さない形式主語であり、”I found it interesting that he refused.”の”it”は形式目的語である。”It is raining.”の”it”は天候・時間を表す非人称主語である。これらの用法を混同すると、文の真の主語や構造を見誤る。”it”の多機能用法の識別能力を確立することで、入試の文法問題・読解問題の両方で精度の高い判断が可能になる。

2.1. “it”の四つの用法

“it”とは何か。「それ」と訳せる三人称単数中性の代名詞、という回答は”it”の機能の一部しか捉えていない。英語の”it”には少なくとも四つの用法があり、それぞれが根本的に異なる統語的機能を果たす。第一に「照応の”it”」は先行詞を持ち、前文の名詞句を受ける通常の代名詞である。第二に「形式主語の”it”」は真主語(to不定詞句・that節)を文末に置くために主語の位置を埋める構造的要素である。第三に「形式目的語の”it”」は真目的語を文末に置くために目的語の位置を埋める構造的要素であり、SVOC構文で”find / make / think”などの動詞と共に用いられる。第四に「非人称の”it”」は天候・時間・距離・状況などを表し、特定の先行詞を持たない主語である。これら四用法の区別が重要なのは、”it”がどの用法であるかによって文の構造解析が根本的に変わるためである。照応の”it”では先行詞の特定が必要であり、形式主語・形式目的語の”it”では真主語・真目的語を見つける必要があり、非人称の”it”では指示対象の探索自体が不要である。

では、”it”の用法を実現するにはどうすればよいか。手順1では”it”の直後の構造を確認する。”it”の後に”is + 形容詞 + to不定詞”または”is + 形容詞 + that節”の構造が続く場合は形式主語の候補である。”it”の後に”動詞 + it + 形容詞/名詞 + to不定詞/that節”の構造(SVOC型)が続く場合は形式目的語の候補である。手順2では先行詞の有無を確認する。前文に”it”と一致する名詞句(3人称・単数・中性)がある場合は照応の”it”の候補である。先行詞が見当たらず、天候・時間・距離・状況に関する文脈であれば非人称の”it”と判定する。手順3では「置き換えテスト」を実行する。形式主語の場合、”it”を真主語(to不定詞句・that節)に置き換えても意味が保たれる(例:“It is important to study.” → “To study is important.”)。この置き換えが可能であれば形式主語/形式目的語と確定する。

例1: I bought a new laptop. It was expensive.
→ “It”の前文に”a new laptop”(3人称・単数・中性)あり=照応の”it”。先行詞は”a new laptop”。
→ 判定結果: 照応の”it”(先行詞=a new laptop)

例2: It is essential that all members attend the meeting.
→ “It”の後に”is + essential + that節”=形式主語の構造。真主語は”that all members attend the meeting”。置き換え:“That all members attend the meeting is essential.”(成立する)。
→ 判定結果: 形式主語の”it”(真主語=that節)

例3: She found it difficult to concentrate in the noisy room.
→ SVOC構造。S=She, V=found, O=it, C=difficult。“it”の後に”to concentrate…“が続く=形式目的語。真目的語は”to concentrate in the noisy room”。
→ 判定結果: 形式目的語の”it”(真目的語=to不定詞句)

例4: It is ten o’clock.
→ “It”の後に”is + 時刻”。先行詞なし。天候・時間・距離を表す非人称用法。“It”は特定の対象を指さない。
→ 判定結果: 非人称の”it”(時間の表現)

以上により、”it”が文中に出現した際に四つの用法のいずれであるかを構造的手がかりから正確に判定し、文の真の構造を把握する能力が可能になる。

3. 曖昧な照応の解消

代名詞の先行詞が文脈上明確に一つに定まらない場合がある。”John told Tom that he was wrong.”の”he”はJohnとTomのどちらを指すか。一致条件(3人称・単数・男性)は両者とも満たすため、形式的条件だけでは先行詞を確定できない。このような曖昧な照応は入試で頻出する。曖昧な照応の解消手順を習得することで、複数の候補から先行詞を確定する能力が確立される。

3.1. 曖昧な照応の判定手順

一般に代名詞の先行詞は「直前の名詞」と理解されがちである。しかし、この理解は複数の名詞句が一致条件を満たす場合に先行詞を誤認するという点で不正確である。学術的・本質的には、曖昧な照応とは「形式的一致条件を満たす名詞句が複数存在し、形式条件のみでは先行詞を一意に確定できない状態」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、曖昧な照応を解消するには形式的条件を超えた文脈・意味・語用論的手がかりが必要であり、その手がかりを系統的に適用する手順が不可欠だからである。曖昧な照応の原因は主に三つある。第一に、同じ数・性・人称を持つ名詞句が複数存在する場合(“John told Tom that he…”)。第二に、代名詞が文全体の内容を指しうる場合(”He failed the exam. This disappointed his parents.”の”This”が試験の不合格か、不合格という事態全体か)。第三に、代名詞と先行詞の間に長い挿入や複数の文が介在し、物理的距離が大きい場合である。

この原理から、曖昧な照応を解消する具体的なプロトコルが導かれる。手順1では一致条件による候補の列挙を行う。代名詞の数・性・人称と一致する名詞句を先行文脈から全て抽出する。手順2では統語的役割による優先判定を行う。英語では、that節内の代名詞は原則として主節の主語を指す傾向がある(”John told Tom that he was wrong.”の”he”はJohnを指す読みが優勢)。また、同一節内の代名詞は同一節の主語を先行詞に取りやすい。こうした統語的傾向を適用して候補に優先順位をつける。手順3では意味的整合性による最終確定を行う。各候補を先行詞と仮定した場合に、文の意味が矛盾なく成立するかを検証する。意味的に不整合な候補を排除し、整合する候補を先行詞として確定する。いずれの候補でも意味的に整合する場合は、文脈がなお曖昧であると判断する。

例1: John told Tom that he was wrong.
→ “he”は3人称・単数・男性。候補はJohnとTom。統語的傾向:that節内の”he”は主節の主語”John”を指す読みが優勢。意味検証:JohnがTomに「(Johnが/Tomが)間違っている」と告げた→どちらも整合するが、統語的傾向によりJohnが優勢。
→ 判定結果: he=John(優勢)。ただし文脈により異なる可能性あり。

例2: The manager asked the employee if she could finish the report.
→ “she”は3人称・単数・女性。managerとemployeeのいずれかが女性。if節の”she”は主節の目的語”the employee”を指す読みが自然(依頼の文脈では頼まれる側に動作が向く)。
→ 判定結果: she=the employee(文脈的にemployeeに仕事を頼んでいる状況)

例3: The cat sat on the mat. It was dirty.
→ “It”は3人称・単数・中性。候補は”The cat”と”the mat”。意味検証:「汚かった」→catもmatも汚い可能性がある。物理的近接性では”the mat”が直近。日常的文脈では「マットが汚かった」が自然だが、確定不能な場合もある。
→ 判定結果: It=the mat(物理的近接性と文脈的妥当性から優勢だが曖昧さは残る)

例4: He failed the exam. This disappointed his parents.
→ “This”は指示代名詞。候補は”the exam”か、前文全体の内容(試験に落ちたこと)。意味検証:「試験が両親を失望させた」よりも「試験に落ちたことが両親を失望させた」の方が自然。”This”は前文の命題全体を指す。
→ 判定結果: This=前文全体の内容(彼が試験に落ちたという事態)

以上の適用を通じて、曖昧な照応に直面した際に一致条件・統語的傾向・意味的整合性の三段階で先行詞を体系的に特定する能力を習得できる。

4. 代名詞の指示範囲の判定

“some”や”all”といった不定代名詞が文中に出現した場合、それが「いくつかの」「すべての」のどの範囲を指しているかを正確に判定することは、前提条件の理解に直結する。”All students passed.”と”All of the students passed.”の”all”は指示範囲が異なる。前者は一般的な「すべての学生」、後者は特定の集団の「全員」を指す。不定代名詞の指示範囲を正確に把握することで、数量表現を含む英文の意味を正確に理解する力が確立される。

4.1. 不定代名詞の指示範囲の確定

一般に”all / some / any”は「全部/いくつか/何でも」と機械的に対応させて理解されがちである。しかし、この理解は不定代名詞が文脈によって指す範囲が変動することを無視しているという点で不正確である。学術的・本質的には、不定代名詞の指示範囲とは、その代名詞が指し示す集合の特定性(特定の集団か一般的な集団か)と量的範囲(全体か部分か)の組み合わせによって決定される意味的特性として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、同じ不定代名詞であっても「of + 限定名詞句」の有無によって指示範囲が変わり、文の真偽条件に影響するためである。”All students must attend.”の”all”は学生一般を指すが、”All of the students in this class must attend.”は特定のクラスの学生全員に限定される。この違いは”of + the/these/those + 名詞”という限定構造の有無に対応する。部分量の不定代名詞(some, any, many, few等)でも同様であり、”Some students like math.”は一般論、”Some of the students failed.”は特定集団の一部を指す。

上記の定義から、不定代名詞の指示範囲を判定する手順が論理的に導出される。手順1では「of + 限定名詞句」の有無を確認する。“of the / of these / of my”などの限定構造が後続する場合は特定集団を対象とし、後続しない場合は一般的な集団を対象とすると判定する。手順2では量的範囲を確認する。全称(all, every, each)は集団の全要素を、存在量化(some, any)は一部を、否定量化(no, none, neither)はゼロを指す。この分類により、代名詞が指す量的範囲が明確になる。手順3では動詞の数一致から範囲を裏付ける。“All of the water was contaminated.”(不可算=単数)と”All of the rivers were contaminated.”(可算複数=複数)のように、動詞の数一致が指示対象の可算性・数を示す手がかりとなる。

例1: All students must submit the assignment.
→ “All”の後に「of + 限定名詞句」なし=一般的な「学生全員」。全称量化。
→ 判定結果: 一般的全称(学生という集団全体)

例2: All of the students in this class passed the exam.
→ “All of the students in this class”=「of + 限定名詞句」あり=特定のクラスの学生全員。
→ 判定結果: 特定全称(このクラスの学生に限定された全体)

例3: Some complained about the decision.
→ “Some”に「of + 限定名詞句」なし。先行文脈に複数名詞があればそれを受ける代名詞的用法。先行文脈がなければ不特定の「一部の人々」。
→ 判定結果: 文脈依存。先行文脈の名詞を確認して特定/一般を判定。

例4: None of the evidence was conclusive.
→ “None of the evidence”=「of + 限定名詞句」あり=特定の証拠の否定。“evidence”は不可算名詞→動詞は”was”(単数一致)。
→ 判定結果: 特定否定(特定の証拠のうち一つも決定的ではない)

以上により、不定代名詞の指示範囲を「限定構造の有無」「量的分類」「動詞の数一致」から体系的に判定する能力が可能になる。

語用:文脈に応じた代名詞の選択基準

英文を書くとき、同じ人物を指すのに”he”を使うべきか”the man”と名詞句で繰り返すべきか迷った経験はないだろうか。また、”It is important to study.”の”It”が何も指さない形式主語であることは統語層で学んだが、なぜ英語はわざわざ形式主語を置くのかという問いには、情報構造の観点からの理解が必要である。本層の学習により、代名詞と名詞句の使い分けを情報の新旧と曖昧性の観点から判断できるようになる。学習者は統語層で確立した代名詞の種類の識別能力と、意味層で確立した先行詞の同定能力を備えている必要がある。代名詞と名詞句の使い分け基準、総称用法における代名詞の選択、形式主語・形式目的語を用いる動機と判定手順を扱う。本層で確立した選択基準は、入試において英作文での不自然な代名詞使用の回避や、読解における代名詞選択の意図の把握として発揮される。

【関連項目】

[基盤 M09-語用]
└ 冠詞の選択基準を理解し、名詞句の特定性判断と代名詞選択の関係を把握する

[基盤 M45-語用]
└ 直接表現と間接表現の選択基準を理解し、代名詞を含む表現選択の語用論的背景を確認する

【基礎体系】

[基礎 M16-語用]
└ 代名詞・指示語と照応の語用論的側面を体系的に理解する

1. 代名詞と名詞句の使い分け

英文を読み書きする際、先行詞が明らかであれば常に代名詞を使えばよいわけではない。代名詞を使うか名詞句を繰り返すかの選択には、情報の新旧、先行詞の曖昧性、文の焦点という三つの要因が関わっている。代名詞と名詞句の使い分け基準を正確に理解することで、英作文で不自然な繰り返しや曖昧な照応を避ける能力が確立される。この使い分けの原理は、次の記事で扱う総称用法の代名詞選択、さらに形式主語の理解にも直結する。

1.1. 情報の新旧と照応の明確性に基づく選択

一般に代名詞は「名詞の繰り返しを避けるために使う」と理解されがちである。しかし、この理解は代名詞の使用が常に適切であるとは限らないこと、すなわち代名詞を使うとかえって意味が曖昧になる場合があることを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、代名詞と名詞句の使い分けは「指示対象が旧情報(すでに活性化された情報)であり、かつ照応が曖昧にならない場合に代名詞を使用し、そうでない場合は名詞句を使用する」という情報構造上の原則として定義されるべきものである。この原則が重要なのは、代名詞の過剰使用は照応の曖昧性を引き起こし、名詞句の過剰使用は文章の冗長さを引き起こすという二方向の問題があり、両者のバランスを意識的に制御する必要があるためである。旧情報とは、直前の文脈ですでに言及され、読者の意識の中で活性化されている情報を指す。新情報とは、その文で初めて導入される情報、または長い文脈を挟んで再登場する情報を指す。旧情報の再言及には代名詞が適し、新情報の導入や長い距離を隔てた再言及には名詞句が適する。また、同一の数・性を持つ名詞句が複数存在する文脈では、代名詞の使用が曖昧性を生む。このような場合、たとえ旧情報であっても名詞句で明示することが優先される。

この原理から、代名詞と名詞句を使い分ける具体的な手順が導かれる。手順1では指示対象が旧情報か新情報かを判定する。直前の文で言及された名詞句であれば旧情報、初出または長い距離を隔てた再登場であれば新情報と判定する。旧情報なら代名詞が候補、新情報なら名詞句が必要である。手順2では照応の曖昧性を検証する。旧情報であっても、同一の数・性を持つ名詞句が複数存在する場合は代名詞を使うと曖昧になる。曖昧性がなければ代名詞を使用し、曖昧性があれば名詞句で明示する。手順3では文の焦点と強調を考慮する。特定の名詞句を強調したい場合、旧情報であっても意図的に名詞句を使うことがある。”The president — not the secretary — made the final decision.”のように、焦点を当てる対象は名詞句で明示する方が効果的である。逆に、焦点が別の要素にある場合、指示対象は代名詞で軽く処理することで読者の注意を焦点に向けられる。

例1: Dr. Smith published a paper. She argued that the theory was flawed.
→ “She”は直前文の”Dr. Smith”を受ける旧情報。女性名詞は”Dr. Smith”のみで曖昧性なし。代名詞の使用が適切。
→ 判定結果: 代名詞が適切(旧情報・曖昧性なし)

例2: Dr. Smith met Dr. Johnson. She was surprised by the result.
→ “She”は3人称・単数・女性。Dr. SmithとDr. Johnsonがともに女性の場合、先行詞が曖昧。名詞句で明示すべき。“Dr. Smith was surprised by the result.”
→ 判定結果: 名詞句が必要(旧情報だが曖昧性あり)

例3: The experiment failed. After two months of revision, the experiment was finally successful.
→ “the experiment”は旧情報であるが、2か月という長い期間の記述を挟んでおり、”it”を使うと指示対象が不明確になりうる。名詞句の繰り返しで明確性を確保している。
→ 判定結果: 名詞句が適切(旧情報だが距離が長く、再活性化が必要)

例4: The board approved the budget, and it will take effect next month.
→ “it”は直前文の”the budget”を受ける旧情報。”the board”は複数で”it”とは一致しないため曖昧性なし。代名詞の使用が適切。
→ 判定結果: 代名詞が適切(旧情報・曖昧性なし・近距離)

以上により、代名詞と名詞句の使い分けを情報の新旧・照応の曖昧性・焦点の三観点から体系的に判断する能力が可能になる。

2. 総称用法における代名詞の選択

「一般的な人」を指す代名詞として”you / one / they / we”のいずれを使うべきか。英作文の場面でこの選択に迷う学習者は多い。総称用法の代名詞選択はフォーマリティ(文体の格式)と文脈に依存しており、不適切な選択は文体上の違和感を生む。総称用法の代名詞選択基準を習得することで、英作文において文脈にふさわしい総称表現を使い分ける能力が確立される。

2.1. 総称代名詞の選択基準

総称代名詞には二つの捉え方がある。一つは「一般の人」を指す便利な表現という見方、もう一つは文体的格式と話者の関与度を標示する語用論的選択という見方である。”you”は日常的な文脈で話者が聞き手を含めた一般化を行う際に使われ、口語的かつ親密な印象を与える。”one”はフォーマルな文体で一般化を行う際に使われ、話者自身を含む抽象的な主体を表す。”they”は特定できない不定の人々を指し、制度・規則の主体を漠然と示す場合に適する。“we”は話者と聞き手を含む集団を主体とし、共同体意識を前提とする。この区別が重要なのは、同じ内容でも選択する総称代名詞によって文の格式・印象が変わり、入試の英作文では文体の一貫性が評価対象となるためである。フォーマルな論説文では”one”または三人称構文(“A student should…”)、日常的な説明文では”you”、制度の主体には”they”が原則となる。現代英語では、性別中立の観点から不定の個人を指す単数”they”の使用も広がっている。

以上の原理を踏まえると、総称代名詞を選択するための手順は次のように定まる。手順1では文体の格式を判定する。フォーマルな文章(論説文・学術文)であれば”one”または三人称名詞主語を、日常的な文章であれば”you”を基本とする。手順2では話者の関与度を判定する。話者が自分を含めた一般化を行う場合は”we”、聞き手に語りかける形で一般化する場合は”you”、話者を含まない不特定の人々を指す場合は”they”を選択する。手順3では文体の一貫性を確認する。同一段落・同一文章の中で総称代名詞を混在させると文体が不安定になるため、選択した総称代名詞を一貫して使用する。

例1: You should always check your sources before writing an essay.(日常的助言)
→ 文体:日常的。話者が聞き手に語りかける形の一般化。”you”が適切。
→ 判定結果: “you”(日常的文脈・聞き手を含む一般化)

例2: One must consider the ethical implications of such research.(学術論文)
→ 文体:フォーマル。抽象的な主体による一般化。”one”が適切。”You must…”はカジュアルすぎる。
→ 判定結果: “one”(フォーマルな文脈・抽象的一般化)

例3: They say the new policy will reduce costs.(制度の主体)
→ “They”は特定できない主体(政策決定者、世間一般)を指す総称用法。制度・規則・世間の意見の主体として適切。
→ 判定結果: “they”(不特定の主体・制度的文脈)

例4: We tend to underestimate the difficulty of learning a new language.(共同体としての一般化)
→ “We”は話者と読者を含む人間一般を指す。共同体意識を前提とした一般化。学術的文脈でも使用可能。
→ 判定結果: “we”(話者を含む共同体的一般化)

4つの例を通じて、文体の格式・話者の関与度・一貫性という三つの基準から総称代名詞を適切に選択する実践方法が明らかになった。

3. 形式主語・形式目的語の語用論的動機

意味層で”it”の多機能用法を学んだ際、形式主語の”it”は「真主語を文末に置くための構造的要素」として識別した。ここではさらに踏み込み、なぜ英語が形式主語・形式目的語という仕組みを必要とするのか、その語用論的動機を理解する。形式主語・形式目的語の使用動機を理解することで、英作文で形式主語構文を適切に選択する能力、読解問題で形式主語構文の情報構造を把握する能力が確立される。

3.1. 情報構造と末尾焦点の原則

一般に形式主語構文は「to不定詞やthat節が長いから前に置くと読みにくい」と理解されがちである。しかし、この理解は単に長さの問題として捉えており、英語の情報構造における「末尾焦点の原則」(end-focus principle)を把握していないという点で不正確である。学術的・本質的には、形式主語・形式目的語の使用は「旧情報・軽い情報を文頭に、新情報・重い情報を文末に配置する」という英語の情報構造の原則に従った構文的操作として定義されるべきものである。この原則が重要なのは、英語は文末に新情報・焦点を置く傾向が強く、長く重い主語を文頭に配置すると情報の流れが不自然になるためである。”To understand the mechanism of photosynthesis is important.”は文法的には正しいが、文頭に長い不定詞句が来るため、読者が”important”という評価情報に到達するまでに認知的負荷がかかる。”It is important to understand the mechanism of photosynthesis.”とすることで、評価情報”important”が早い段階で提示され、不定詞句が文末焦点の位置に置かれる。形式目的語も同様であり、”I found to work with him difficult.”よりも”I found it difficult to work with him.”の方が、評価”difficult”の後に焦点情報”to work with him”が配置され、情報の流れが自然になる。

上記の定義から、形式主語・形式目的語を使うべきかどうかを判断する手順が論理的に導出される。手順1では真主語・真目的語の長さと複雑さを確認する。to不定詞句・that節・動名詞句が主語・目的語の位置にあり、3語以上の長さを持つ場合は形式主語・形式目的語の候補となる。手順2では情報の新旧を判定する。真主語・真目的語が新情報であり、文末に配置することで末尾焦点の原則に適合する場合は形式構文を使用する。手順3では文型との適合性を確認する。形式目的語はSVOC構文(find / make / think / consider等)で使用され、OとCの間に形式目的語”it”を挿入する形を取る。SVOC構文でなければ形式目的語は使用できない。手順1〜3により、形式主語・形式目的語構文を適切に判断できる。

例1: It is widely believed that climate change affects biodiversity.
→ 形式主語構文。真主語は”that climate change affects biodiversity”(長いthat節=新情報)。”is widely believed”という評価が先に提示され、焦点であるthat節が文末に配置されている。末尾焦点の原則に適合。
→ 判定結果: 形式主語が適切(真主語が長く、新情報を文末に配置)

例2: To memorize all the vocabulary in one night is impossible.
→ 真主語”To memorize all the vocabulary in one night”が文頭に配置されている。文法的には正しいが、評価”impossible”への到達が遅い。”It is impossible to memorize all the vocabulary in one night.”の方が情報の流れが自然。
→ 判定結果: 形式主語への書き換えが望ましい

例3: The new technology has made it possible to communicate instantly across the globe.
→ 形式目的語構文。S=The new technology, V=has made, O=it(形式), C=possible, 真目的語=to communicate instantly across the globe。SVOC構文で形式目的語が使用されている。”possible”という評価の後に焦点が配置され、末尾焦点の原則に適合。
→ 判定結果: 形式目的語が適切(SVOC構文・真目的語が長い新情報)

例4: I think it strange that nobody objected to the proposal.
→ SVOC構文。S=I, V=think, O=it(形式), C=strange, 真目的語=that nobody objected to the proposal。評価”strange”の後にthat節が文末焦点として配置されている。
→ 判定結果: 形式目的語が適切

以上により、形式主語・形式目的語構文の語用論的動機を理解し、末尾焦点の原則に基づいて形式構文の使用を適切に判断する能力が可能になる。

談話:代名詞による文章の結束性

一文の中で代名詞の種類を識別し、先行詞を特定し、適切な代名詞を選択する能力が確立されたとしても、複数の文・複数の段落にわたって代名詞の照応連鎖を追跡できなければ、長文読解で段落全体の論理展開を正確に把握することはできない。英文を読むとき、段落の冒頭に”They”が出現した場合、前段落のどの名詞句を受けているかを即座に判定できるかどうかが読解の精度を左右する。この層を終えると、複数文にわたる代名詞の照応連鎖を追跡し、段落全体の指示関係を正確に把握できるようになる。語用層で確立した代名詞の選択基準と、意味層で確立した先行詞の同定能力を備えている必要がある。照応連鎖の追跡手順、段落間での代名詞の指示対象の変化の把握、入試読解問題での代名詞の指示内容特定技法を扱う。本層で確立した能力は、入試において長文読解の代名詞指示問題や内容一致問題で正確な判断を行う力として発揮される。

【関連項目】

[基盤 M54-談話]
└ 指示語の照応関係を談話レベルで理解し、代名詞を含む照応体系の全体像を把握する

[基盤 M55-談話]
└ 接続表現と論理関係を理解し、代名詞の照応と論理展開の相互作用を確認する

【基礎体系】

[基礎 M16-談話]
└ 代名詞・指示語と照応の談話分析的理解を深める

1. 照応連鎖の追跡

段落を読む際、同一の人物・事物が複数の代名詞形式で繰り返し言及されることがある。最初に名詞句で導入され、次文で”he”、その次で”his”、さらに”him”と形を変えながら同一の指示対象を維持する。この一連の照応を「照応連鎖」と呼ぶ。照応連鎖を正確に追跡できる能力が確立されることで、長文読解において登場人物や主要概念の指示対象を見失わずに段落全体の意味を把握できるようになる。

1.1. 照応連鎖の構造と追跡手順

一般に代名詞の先行詞は「直前の文の名詞」と理解されがちである。しかし、この理解は照応連鎖が複数の文にわたって形成される場合に先行詞を見失うという点で不正確である。学術的・本質的には、照応連鎖とは「同一の指示対象が談話の進行に伴って名詞句→代名詞→代名詞→…と形式を変えながら維持される一連の照応関係」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、照応連鎖を追跡するには個々の代名詞の先行詞を一文ずつ同定するだけでなく、談話全体を通して指示対象の連続性を把握する必要があるためである。照応連鎖は通常、名詞句による導入(最初の言及)→代名詞による維持(同一指示対象の継続的言及)→名詞句による再導入(指示対象の変更後や長い挿入後)という三段階のサイクルで構成される。指示対象が変更されるとき、新たな名詞句が導入され、それまでの照応連鎖が断絶して新たな連鎖が始まる。この「導入→維持→再導入」のパターンを認識することで、複数の指示対象が交差する複雑な文章でも各代名詞の指示対象を正確に追跡できる。入試の長文読解では、同一段落内に複数の照応連鎖が並行して進行する場合が多く、連鎖の切り替わりポイントを見逃すと指示対象を混同する危険がある。

この原理から、照応連鎖を追跡する具体的な手順が導かれる。手順1では名詞句による導入を識別する。段落の冒頭や新しい指示対象が導入される箇所では名詞句が使われる。この名詞句が照応連鎖の起点であり、後続の代名詞の先行詞となる。手順2では代名詞による維持を追跡する。導入された名詞句と一致条件を満たす代名詞が連続する限り、同一の照応連鎖が維持されていると判定する。格形が変わっても(he→his→him)、指示対象は同一である。手順3では連鎖の断絶と再導入を検出する。新たな名詞句が出現した場合、既存の照応連鎖が断絶し新たな連鎖が開始された可能性がある。新名詞句と代名詞の一致条件を改めて確認し、各代名詞がどの連鎖に属するかを再判定する。

例1:
Professor Williams published a groundbreaking study. He argued that traditional methods were insufficient. His colleagues, however, disagreed with him. They presented counter-evidence at the conference.
→ 照応連鎖A: Professor Williams(導入)→ He(維持)→ His(維持)→ him(維持)。連鎖B: His colleagues(導入)→ They(維持)。”They”は”His colleagues”を受ける新しい連鎖。
→ 判定結果: 2つの照応連鎖が並行。“He/His/him”=Professor Williams、“They”=His colleagues。

例2:
The company launched a new product. It received positive reviews. However, the CEO announced that she would resign. She cited personal reasons.
→ 照応連鎖A: a new product(導入)→ It(維持)。連鎖B: the CEO(導入)→ she(維持)→ She(維持)。”It”と”she”は異なる連鎖に属し、指示対象が異なる。
→ 判定結果: “It”=a new product、“she/She”=the CEO。連鎖の切り替わりは”However”の後。

例3:
The researchers analyzed the data carefully. They found significant patterns. These patterns suggested a new hypothesis. It challenged the existing framework.
→ 照応連鎖A: The researchers(導入)→ They(維持)。連鎖B: significant patterns(導入)→ These patterns(再導入・名詞句で明確化)。連鎖C: a new hypothesis(導入)→ It(維持)。”It”は”a new hypothesis”を受ける。
→ 判定結果: 3つの連鎖。“They”=researchers、“These patterns”=significant patterns、“It”=a new hypothesis。

例4:
Maria sent a letter to her sister. She thanked her for the gift. It had arrived just in time for the birthday.
→ “She”は誰か。”Maria”と”her sister”はどちらも3人称・単数・女性。統語的傾向から主語”Maria”が優勢。”her”は”Maria”以外の女性→“her sister”。”It”は”the gift”を受ける。
→ 判定結果: She=Maria(主語の照応連鎖の維持)、her=her sister、It=the gift。

以上の適用を通じて、複数の照応連鎖が並行する文章でも「導入→維持→再導入」のパターンを手がかりに各代名詞の指示対象を正確に追跡する能力を習得できる。

2. 段落間での指示対象の移行

段落が変わると話題が転換し、代名詞の指示対象も変化する場合がある。第1段落で”They”が「研究者たち」を指していたのに、第2段落では同じ”They”が「批判者たち」を指すといった事態は長文読解で頻繁に起こる。段落の境界における指示対象の移行を検出する能力が確立されることで、段落ごとの論理展開を正確に把握し、内容一致問題で誤答を防ぐことができるようになる。

2.1. 段落境界における照応の処理

一般に代名詞の先行詞は「同一段落内の名詞」と理解されがちである。しかし、この理解は段落をまたぐ照応が存在することを見落としており、段落の境界で指示対象が切り替わる場合の検出に失敗するという点で不正確である。学術的・本質的には、段落の境界は照応連鎖のリセットポイントとなりうる箇所であり、「新段落の冒頭で名詞句が再導入されていれば新しい照応連鎖の開始、代名詞で始まっていれば前段落からの連鎖の継続」として判定されるべきものである。この判定が重要なのは、段落の冒頭で代名詞が使われた場合、前段落のどの名詞句を受けているかの判断が読解の正否を左右するためである。段落間の照応には三つのパターンがある。第一に「連続パターン」(前段落の主題がそのまま新段落に引き継がれる場合)。第二に「転換パターン」(新段落で新しい名詞句が導入され、話題が変わる場合)。第三に「対比パターン」(前段落の話題と対比的な新しい話題が導入される場合)。接続表現(However, In contrast, Furthermore等)は転換やパターンの変化を示す手がかりとなる。

では、段落境界での指示対象の移行を検出するにはどうすればよいか。手順1では新段落の冒頭表現を確認する。名詞句で始まっていれば新しい指示対象の導入(転換パターン)、代名詞で始まっていれば前段落からの連鎖の継続(連続パターン)の候補である。手順2では接続表現を手がかりにする。”However / On the other hand / In contrast”があれば対比パターンの可能性が高く、指示対象が前段落と異なる集団に移っている場合がある。”Furthermore / Moreover / In addition”があれば連続パターンの可能性が高い。手順3では一致条件と文脈で最終確定する。代名詞の数・性・人称を確認し、前段落の名詞句のうち一致条件を満たすものを候補とし、新段落の文脈的妥当性を検証して先行詞を確定する。

例1:
[段落1] The government introduced a new tax policy. It aimed to reduce income inequality.
[段落2] However, critics argued that it would harm small businesses. They proposed alternative measures.
→ 段落2冒頭に”However”=対比パターン。段落2の”it”は段落1の”a new tax policy”を受ける(連続)。“They”は段落2で新たに導入された”critics”を受ける(転換)。
→ 判定結果: 段落2の”it”=a new tax policy(連続)、“They”=critics(転換)

例2:
[段落1] The first study examined the effects of sleep on memory. The researchers found a positive correlation.
[段落2] The second study focused on the relationship between exercise and cognition. Its results were equally significant.
→ 段落2冒頭に名詞句”The second study”=転換パターン。段落2の”Its”は”The second study”を受ける(新しい連鎖)。
→ 判定結果: “Its”=The second study。前段落の”The first study”ではない。

例3:
[段落1] Many students struggle with grammar. They often memorize rules without understanding.
[段落2] They also fail to apply grammatical knowledge to reading comprehension.
→ 段落2冒頭に代名詞”They”=連続パターン。接続表現”also”が連続を示す。段落1の”Many students”を受ける。
→ 判定結果: “They”=Many students(前段落からの照応連鎖が継続)

例4:
[段落1] The company invested heavily in renewable energy. It expected long-term returns.
[段落2] Meanwhile, its competitors focused on traditional energy sources. They were skeptical of the transition.
→ 段落2冒頭に”Meanwhile”=対比パターン。”its”は段落1の”The company”を受ける(所有格で連鎖を維持しつつ新しい指示対象”competitors”を導入)。”They”は”its competitors”を受ける。
→ 判定結果: “its”=The company、“They”=its competitors。照応連鎖の切り替わりポイントが段落境界にある。

以上により、段落の境界で照応連鎖がどのように維持・転換・対比されるかを体系的に判定し、長文読解において代名詞の指示対象を正確に特定する能力が可能になる。

3. 入試読解における代名詞の指示内容特定

入試の長文読解では「下線部の代名詞が指す内容を日本語で答えよ」「”it”が指すものを本文中から抜き出せ」といった設問が頻出する。統語層・意味層・語用層・談話層で確立した能力を統合的に運用し、実際の入試形式に対応する方法を確立する。

3.1. 入試における代名詞指示問題の解法手順

一般に代名詞の指示問題は「前の文を読めばわかる」と理解されがちである。しかし、この理解は入試で出題される代名詞指示問題が、単純な直前照応ではなく、複数文にわたる照応連鎖の追跡、指示代名詞による前文内容の要約、形式主語と照応の区別を問う高度な判断を要求するという点で不正確である。学術的・本質的には、入試の代名詞指示問題は「形式的一致条件による候補の限定→統語的・談話的手がかりによる優先判定→意味的整合性による最終確定」という三段階の判断プロセスを体系的に適用する能力を測るものとして位置づけられるべきものである。この体系的アプローチが重要なのは、直感的に「何となくこれだろう」と推測するだけでは、出題者が意図した巧妙な誤答誘導に対処できないためである。入試の代名詞指示問題には主に三つの出題パターンがある。第一に「人称代名詞の先行詞特定」(”he / she / they”が指す人物の特定)。第二に「”it / this / that”の指示内容特定」(名詞句を指す場合と前文の命題全体を指す場合の区別)。第三に「形式主語の”it”と照応の”it”の区別」である。

上記の定義から、入試の代名詞指示問題を解く手順が論理的に導出される。手順1では代名詞の種類と用法を判定する。”it”であれば照応・形式主語・形式目的語・非人称のいずれかを意味層の手順で判定する。形式主語・非人称であれば「指示対象なし」と回答できる。手順2では一致条件と照応連鎖を確認する。照応の代名詞であれば、数・性・人称の一致条件を確認し、先行文脈の名詞句から候補を絞り込む。必要に応じて談話層の照応連鎖追跡手順を適用する。手順3では解答の形式を整える。「日本語で答えよ」の場合は先行詞の内容を日本語で的確に表現する。「本文中から抜き出せ」の場合は先行詞となる名詞句をそのまま抜き出す。”this / that”が前文の命題全体を指す場合は、命題の内容を要約して記述する。

例1: [入試形式] 下線部”it”が指す内容を日本語で答えよ。
The experiment produced unexpected results. It contradicted the prevailing theory.
→ 手順1: “It”の後に”contradicted”(動詞)→照応の”it”。形式主語の構造ではない。手順2: “It”は3人称・単数・中性。候補は”The experiment”(単数)と”unexpected results”(複数)。一致条件(単数)から”The experiment”が候補。意味検証:「実験が支配的理論に矛盾した」=整合的。手順3: 解答「(その)実験」。
→ 判定結果: it=The experiment。解答例:「その実験」

例2: [入試形式] 下線部”This”が指す内容を30字以内の日本語で答えよ。
The population of the city doubled in just ten years. This put enormous pressure on public services.
→ 手順1: “This”は指示代名詞(直後に名詞なし)。手順2: “This”は前文全体の命題を指す。“the population”(単数名詞)も候補だが、「人口が公共サービスに圧力をかけた」よりも「都市の人口が10年で倍増したこと」が公共サービスへの圧力の原因として文脈に適合する。手順3: 命題全体を要約。
→ 判定結果: This=前文の命題全体。解答例:「その都市の人口がわずか10年で倍増したこと」(24字)

例3: [入試形式] 下線部”them”が指すものを本文中から抜き出せ。
Several environmental organizations opposed the construction plan. The government ignored them and proceeded with the project.
→ 手順1: “them”は人称代名詞・目的格。手順2: 3人称・複数。候補は”Several environmental organizations”(複数)。”the construction plan”は単数で不一致。手順3: 名詞句を抜き出し。
→ 判定結果: them=Several environmental organizations

例4: [入試形式] 下線部”it”は何を指すか。形式主語か照応かを判定し、理由を述べよ。
It is often said that practice makes perfect. But it may not always be true.
→ 第1文の”It”は”is often said that…“=形式主語構文。指示対象なし。第2文の”it”は”that practice makes perfect”(前文のthat節の内容)を受ける照応の”it”。「練習すれば完璧になるということが常に正しいとは限らない」。
→ 判定結果: 第1文”It”=形式主語(真主語はthat節)。第2文”it”=前文の命題「練習すれば完璧になるということ」。

以上により、入試の代名詞指示問題に対して、代名詞の種類判定・一致条件の適用・照応連鎖の追跡・解答形式の整備という四段階の手順を体系的に適用し、正確に解答する能力が可能になる。

このモジュールのまとめ

このモジュールでは、代名詞の形態的分類という統語層の理解から出発し、意味層における先行詞の同定、語用層における文脈に応じた代名詞の選択、談話層における複数文にわたる照応連鎖の追跡という四つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層の種類識別が意味層の先行詞特定を可能にし、意味層の先行詞特定が語用層の代名詞選択を支え、語用層の選択基準が談話層の照応連鎖追跡を実現するという階層的な関係にある。

統語層では、人称代名詞の格変化体系、指示代名詞と指示形容詞の区別、疑問代名詞と関係代名詞の識別、再帰代名詞の再帰用法と強調用法の区別、不定代名詞の体系的分類という五つの側面から、代名詞を正確に識別する能力を確立した。文中の統語的位置から格形を判定する手順、先行詞の有無から疑問代名詞と関係代名詞を区別する手順、削除テストによって再帰用法と強調用法を区別する手順を習得した。

意味層では、先行詞との一致条件による候補の限定、”it”の四つの用法の判定、曖昧な照応の解消、不定代名詞の指示範囲の確定という四つの側面から、代名詞の指示対象を正確に同定する能力を確立した。数・性・人称の一致条件を手がかりに候補を絞り込み、統語的傾向と意味的整合性によって先行詞を最終確定する手順を習得した。

語用層では、代名詞と名詞句の使い分け基準、総称用法における代名詞の選択、形式主語・形式目的語の語用論的動機という三つの側面から、文脈に応じた代名詞の選択能力を確立した。情報の新旧・照応の曖昧性・文体の格式・末尾焦点の原則といった語用論的基準に基づいて、適切な代名詞表現を選択する判断力を習得した。

談話層では、照応連鎖の追跡、段落間での指示対象の移行の検出、入試読解における代名詞指示問題の解法という三つの側面から、複数文にわたる照応関係を正確に把握する能力を確立した。「導入→維持→再導入」のパターンを認識し、段落境界での連続・転換・対比パターンを判定する手順を習得した。

これらの能力を統合することで、共通テスト本試からMARCH下位レベルの英文に出現するあらゆる代名詞を正確に識別し、先行詞を特定し、文脈に応じた適切な代名詞を選択し、長文全体の照応関係を追跡することが可能になる。このモジュールで確立した原理と技術は、後続のモジュールで学ぶ関係詞の体系的理解、文間の結束性分析、さらにはパラグラフの構造的把握の基盤となる。

演習編

代名詞の識別と照応関係の把握は、英文法問題・読解問題の双方で頻繁に問われる能力である。文法問題では代名詞の格選択や指示代名詞と関係代名詞の区別が問われ、読解問題では下線部の代名詞が指す内容の特定や、代名詞の照応を手がかりとした段落の論理展開の把握が問われる。代名詞の識別能力が不十分な場合、文法問題では格の誤選択や用法の混同が生じ、読解問題では指示対象の誤認による内容理解の失敗が発生する。共通テストでは長文中の代名詞の指示内容を把握する力が設問の正否を左右し、MARCH・関関同立の文法問題では代名詞の格選択・再帰代名詞の用法判定が頻出する。本演習は基礎(教科書章末レベル)・標準(共通テスト本試レベル)・発展(MARCH下位レベル)の三段階で構成される。

【出題分析】

出題形式と難易度

項目評価
難易度★★★☆☆ 標準
分量大問3題・試験時間30分
語彙レベル共通テスト〜MARCH基礎語彙
構文複雑度単文〜複文(関係詞節・that節を含む)

頻出パターン

共通テスト → 長文中の代名詞の指示内容を文脈から特定する問題。形式主語の”it”と照応の”it”の区別を前提とする内容一致問題。
MARCH・関関同立 → 代名詞の格選択問題(主格・目的格・所有格・所有代名詞の四択)。再帰代名詞と人称代名詞の使い分け問題。関係代名詞と疑問代名詞の識別問題。
地方国立大学 → 下線部の代名詞が指す内容を日本語で記述する問題。代名詞の照応関係を手がかりに段落の論理展開を説明する問題。

差がつくポイント

格判定の正確性において、統語的位置から格形を即座に導出できるかどうかが差を生む。特に、前置詞の目的語に目的格を正しく選択できるか、”between you and me”のような慣用的な表現で誤りを犯さないかが重要である。

代名詞の用法判定において、形式主語の”it”・照応の”it”・非人称の”it”を文構造から正確に区別できるかどうかが差を生む。特に、”It is … that …”構文が形式主語構文か強調構文かの判定が問われる。

照応連鎖の追跡において、複数の照応連鎖が並行する文章で各代名詞の指示対象を正確に特定できるかどうかが差を生む。特に、段落の境界で指示対象が切り替わるパターンの検出力が重要である。

演習問題

試験時間: 30分 / 満点: 100点

第1問(40点)

次の各文の空所に入る最も適切な代名詞を、選択肢から一つ選べ。

(1)The teacher asked John and (  ) to stay after class.(8点)
  a. I  b. me  c. my  d. myself

(2)Every student must bring (  ) own textbook to the examination.(8点)
  a. his  b. their  c. its  d. one’s

(3)The results of the first experiment were more reliable than (  ) of the second.(8点)
  a. that  b. those  c. this  d. these

(4)She prides (  ) on her ability to solve complex problems.(8点)
  a. her  b. hers  c. herself  d. she

(5)(  ) is generally accepted that regular exercise improves mental health.(8点)
  a. It  b. That  c. This  d. What

第2問(40点)

次の英文を読み、設問に答えよ。

The city council recently approved a controversial plan to build a new highway through the historic district. 【a】It【a】 would require the demolition of several buildings that have stood for over a century. Local preservation groups immediately opposed the plan. 【b】They【b】 argued that the cultural significance of the area far outweighed the economic benefits of the highway. The mayor, however, defended the decision. She pointed out that 【c】it【c】 had been thoroughly reviewed by independent engineers, and that 【d】they【d】 had concluded that no feasible alternative route existed.

Meanwhile, residents of the district expressed mixed feelings. Some welcomed the highway, believing 【e】it【e】 would reduce their commute time. Others feared that 【f】it【f】 would destroy the character of their neighborhood. One resident stated, “【g】This【g】 is not just about a road. 【h】It【h】 is about whether we value our history.”

(1)下線部【a】の”It”が指す内容を日本語で答えよ。(8点)

(2)下線部【b】の”They”が指すものを本文中の英語で抜き出せ。(6点)

(3)下線部【c】の”it”と下線部【d】の”they”がそれぞれ指す内容を日本語で答えよ。(各5点、計10点)

(4)下線部【e】の”it”と下線部【f】の”it”はそれぞれ同じものを指しているか。異なるものを指しているか。理由とともに答えよ。(10点)

(5)下線部【g】の”This”と下線部【h】の”It”について、それぞれの用法(照応・形式主語・非人称のいずれか)を判定し、指示内容がある場合はその内容を日本語で答えよ。(6点)

第3問(20点)

次の英文を読み、設問に答えよ。

The human brain processes language in remarkably complex ways. When we encounter a pronoun in a sentence, our brain must identify what 【a】it【a】 refers to. This process, known as anaphora resolution, involves multiple cognitive steps.

First, the brain identifies the grammatical features of the pronoun — 【b】its【b】 number, gender, and person. 【c】These【c】 features are then matched against potential antecedents in the preceding context. If only one noun phrase matches all the criteria, the brain assigns 【d】it【d】 as the antecedent almost instantly.

However, when multiple candidates satisfy the formal conditions, the process becomes more demanding. The brain must then rely on semantic and pragmatic information to resolve the ambiguity. Researchers have found that 【e】this【e】 additional processing takes measurable time, which can be detected through eye-tracking experiments. 【f】They【f】 have also discovered that skilled readers resolve ambiguous pronouns significantly faster than less experienced 【g】ones【g】.

【h】One【h】 particularly interesting finding is that context plays a larger role than proximity in determining the correct antecedent. That is, the brain does not simply select the nearest matching noun phrase. Instead, 【i】it【i】 evaluates the plausibility of each candidate based on the overall meaning of the passage.

(1)下線部【a】の”it”、【b】の”its”、【c】の”These”がそれぞれ指す内容を日本語で答えよ。(各2点、計6点)

(2)下線部【d】の”it”は何を指すか。本文中の英語で抜き出せ。(2点)

(3)下線部【e】の”this”が指す内容を、30字以内の日本語で答えよ。(3点)

(4)下線部【f】の”They”と【g】の”ones”がそれぞれ指す内容を答えよ。(各2点、計4点)

(5)下線部【h】の”One”と【i】の”it”について、それぞれの代名詞の種類を判定し、指示内容を日本語で答えよ。(各2点、計4点)

(6)本文中の代名詞の照応連鎖を分析し、「脳(the brain)」を指す代名詞を全て抜き出し、出現順に列挙せよ。(1点)

解答・解説

難易度構成

難易度配点大問
基礎40点第1問
標準40点第2問
発展20点第3問

結果の活用

得点判定推奨アクション
80点以上A基礎体系へ進む
60-79B誤答した大問の該当記事を復習後に再挑戦
40-59C統語層・意味層の記事を再読後に再挑戦
40点未満D該当講義を復習後に再挑戦

第1問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図代名詞の格選択・用法判定の基礎的能力
難易度基礎
目標解答時間10分

【思考プロセス】

状況設定:試験開始直後。第1問は配点40点の文法問題5問。各問8点。代名詞の格選択と用法判定を問う。受験生は「何となくこれだ」という直感で選びがちだが、統語的位置に基づく体系的判定を行う。

レベル1:初動判断 → 各空所の統語的位置を確認し、必要な代名詞の格・種類を特定する。

レベル2:検証観点 → 選択肢の中から一致条件を満たすものを絞り込み、誤答選択肢がなぜ不適切かを確認する。

【解答】

小問解答
(1)b. me
(2)b. their
(3)b. those
(4)c. herself
(5)a. It

【解答のポイント】

(1) 正解の論拠:”asked”の目的語の位置であり、”John and”に続く並列要素も目的格が必要。”John and me”で複合目的語を形成する。
誤答の論拠:”John and I”と答えるパターンが多い。これは「〜 and I」を常に使うべきだという過剰一般化による誤り。”and”で並列される場合も格の選択は統語的位置に依存し、目的語の位置では目的格”me”が正しい。

(2) 正解の論拠:”Every student”は文法的に単数だが、現代英語では性別中立の単数”their”が広く受容されている。共通テスト・大学入試でも”their”を正答とする出題が増加している。
誤答の論拠:”his”は伝統的文法では正しいが、性別を特定する表現を避ける現代英語の傾向と合致しない。”its”は人を指す代名詞としては不適切。

(3) 正解の論拠:“the results”(複数)の代用として指示代名詞が必要。”those”は複数の指示代名詞であり、“those of the second”=“the results of the second”。
誤答の論拠:”that”は単数の指示代名詞。”the results”は複数なので不一致。

(4) 正解の論拠:“prides”の目的語が主語”She”と同一人物=再帰代名詞”herself”。“pride oneself on 〜”(〜を誇りに思う)のイディオム。
誤答の論拠:”her”を選ぶと、主語と異なる人物を指すことになり、意味が成立しない。

(5) 正解の論拠:“is generally accepted that 〜”=形式主語構文。真主語は”that regular exercise improves mental health”。”It”は形式主語。
誤答の論拠:”That”を主語にすると”That is generally accepted that…”となり文法的に不成立。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件:代名詞の格選択を問う文法問題全般。統語的位置の確認→一致条件の検証→用法の判定という手順はあらゆる代名詞問題に適用可能。

【参照】

[基盤 M03-統語] └ 人称代名詞の格体系と格判定手順

第2問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図文脈に基づく代名詞の指示内容の特定能力
難易度標準
目標解答時間12分

【思考プロセス】

状況設定:第2問は配点40点の読解問題。代名詞の指示内容を文脈から特定する。同じ”it”が文中で複数回出現し、それぞれ異なる指示対象を持つ可能性がある。

レベル1:初動判断 → 各下線部の代名詞について、種類(人称・指示・形式)と一致条件を確認する。

レベル2:検証観点 → 先行文脈から候補を列挙し、文脈的妥当性を検証して先行詞を確定する。段落間での照応連鎖の変化に注意する。

【解答】

小問解答
(1)歴史地区に新しい高速道路を建設するという(市議会が承認した)計画
(2)Local preservation groups
(3)【c】の”it”=計画(the plan)。【d】の”they”=独立した技術者たち(independent engineers)。
(4)同じもの(the highway / 高速道路)を指している。「高速道路が通勤時間を短縮する」「高速道路が地域の特色を壊す」という文脈で、ともに高速道路を指すが、評価が対照的(歓迎vs懸念)。
(5)【g】の”This”=照応の指示代名詞。高速道路建設の問題全体を指す。【h】の”It”=照応の人称代名詞。“This”(高速道路建設の問題)を受ける。

【解答のポイント】

正解の論拠:(1)では”It”が第1文の”a controversial plan to build a new highway through the historic district”全体を受けている。“would require the demolition”(取り壊しを必要とする)の主語として意味的に整合する。(4)では”Some welcomed the highway, believing it would reduce…”と”Others feared that it would destroy…”の二文で”it”が同一の”the highway”を受けているが、住民の立場(賛成派vs反対派)によって評価が対照的である。

誤答の論拠:(1)で”a new highway”だけを答えると不十分。”it”が受けるのは計画全体であり、高速道路そのものではなく「高速道路を建設する計画」が取り壊しを要求する。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件:長文中の代名詞指示問題全般。特に同一の代名詞形式が異なる文脈で複数回出現する問題で有効。

【参照】

[基盤 M03-意味] └ 先行詞との一致条件と曖昧な照応の解消
[基盤 M03-談話] └ 段落間での指示対象の移行

第3問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図学術的な文章における代名詞の照応連鎖の追跡と代名詞の種類判定
難易度発展
目標解答時間8分

【思考プロセス】

状況設定:第3問は配点20点の発展問題。言語学的な内容の学術文から代名詞の照応関係を分析する。複数の照応連鎖が並行し、不定代名詞や指示代名詞の高度な用法も含まれる。

レベル1:初動判断 → 文章全体の話題(脳の言語処理・照応解消)を把握し、主要な照応連鎖(brain / pronoun / researchers等)を識別する。

レベル2:検証観点 → 各代名詞について種類・先行詞・用法を体系的に判定する。不定代名詞”one / ones”の用法に注意する。

【解答】

小問解答
(1)【a】の”it”=代名詞(a pronoun)。【b】の”its”=代名詞(the pronoun)の(所有格)。【c】の”These”=代名詞の文法的特徴(数・性・人称)。
(2)only one noun phrase
(3)複数の候補が形式条件を満たす場合に必要となる追加的な認知処理(29字)
(4)【f】の”They”=Researchers(研究者たち)。【g】の”ones”=readers(読者たち)。”ones”は”readers”の代用で、”skilled readers”と”less experienced ones”が対比されている。
(5)【h】の”One”=不定代名詞。「一つの(ある)」の意味で、特に興味深い発見を不定的に導入する用法。指示内容:「文脈が近接性よりも正しい先行詞の決定に大きな役割を果たすという発見」。【i】の”it”=人称代名詞。“the brain”(脳)を指す。
(6)it(第4段落第3文)、it(第4段落最終文)

【解答のポイント】

正解の論拠:(5)の”One”は不定代名詞であり、”One particularly interesting finding”は「ある特に興味深い発見」の意味。数詞の”one”ではなく、不定の対象を導入する不定代名詞。(6)では”the brain”を直接受ける代名詞”it”は第4段落に集中しており、第2段落では”the brain”が名詞句のまま使用されている。

誤答の論拠:(2)で”it”を”the brain”と答えるのは誤り。”assigns it as the antecedent”の”it”はthe brainが先行詞を「割り当てる」対象であり、割り当てられるのは「一致条件を満たす唯一の名詞句」である。(6)で第2段落の”the brain identifies”の”the brain”を代名詞と答えるのも誤り。名詞句であり代名詞ではない。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件:学術的な文章で複数の照応連鎖が交差する読解問題。照応連鎖の「導入→維持→再導入」パターンの識別が有効な問題全般に適用可能。

【参照】

[基盤 M03-統語] └ 不定代名詞の体系と識別
[基盤 M03-談話] └ 照応連鎖の追跡と段落間での指示対象の移行

【関連項目】

[基盤 M02-統語]
└ 名詞の種類と識別基準を確認し、代名詞の先行詞となる名詞の特性を把握する

[基盤 M14-統語]
└ 文の要素の識別能力を確認し、代名詞が担う統語的機能の判定に活用する

[基盤 M54-談話]
└ 指示語の照応関係を談話レベルで理解し、代名詞を含む照応体系の全体像を確認する



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