【基盤 英語】モジュール3:代名詞の種類と識別基準

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本モジュールの目的と構成

英文を読む際、”it”や”they”が何を指しているのか判断に迷い、文全体の意味を取り違えた経験は多くの学習者が持つものである。代名詞は名詞の反復を避けるために用いられる語類であるが、その機能は単なる「置き換え」にとどまらない。代名詞は先行する名詞句(先行詞)との照応関係を形成し、文と文をつなぐ結束装置としても働く。代名詞の種類を正確に識別できなければ、関係代名詞と疑問代名詞の混同、再帰代名詞と人称代名詞の誤用、不定代名詞の指示範囲の誤認といった問題が頻発する。とりわけ入試では、下線部の代名詞が指す内容を問う設問、代名詞の格変化を利用した文法問題、代名詞の照応関係を手がかりに段落の論理展開を追う読解問題が頻出する。代名詞の種類と識別基準を体系的に理解し、文中で代名詞がどの名詞句を受け、どのような統語的機能を果たしているかを正確に判定できる能力の確立を目的とする。

本モジュールは以下の層で構成される:

統語:代名詞の形態的・統語的識別
代名詞を品詞として正確に分類し、格変化・数・人称といった形態的特徴から種類を判定する方法を扱う。人称代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・関係代名詞・再帰代名詞・不定代名詞の六種を体系的に整理し、各種の形態と統語的位置の対応を確立する。

意味:代名詞の指示対象の特定
代名詞が文中でどの名詞句を指しているか(照応関係)を正確に判定する方法を扱う。先行詞との一致条件(数・性・人称)、文脈に基づく指示対象の絞り込み、曖昧な照応の解消手順を扱い、代名詞の意味的機能を把握する力を確立する。

語用:文脈に応じた代名詞の選択基準
同一の指示対象に対して複数の代名詞表現が可能な場合に、文脈・丁寧さ・情報構造に基づいて適切な代名詞を選択する基準を扱う。代名詞と名詞句の使い分け、総称用法における代名詞の選択、形式主語・形式目的語の判定手順を確立する。

談話:代名詞による文章の結束性
複数の文にわたる代名詞の照応連鎖を追跡し、段落全体の指示関係を正確に把握する方法を扱う。代名詞の照応が文章の結束性をどのように形成するかを理解し、入試の読解問題で代名詞の指示内容を正確に特定する技術を確立する。

このモジュールを修了すると、以下の能力が身につく。英文中に出現するあらゆる代名詞について、その種類を形態と統語的位置から即座に判定し、適切な格形を選択できるようになる。代名詞が指し示す先行詞を、数・性・人称の一致条件と文脈の両面から正確に特定できるため、”it”や”they”が何を受けているか迷うことがなくなる。さらに、文脈に応じて代名詞と名詞句のどちらを用いるべきか、総称表現でどの代名詞形式を選ぶべきかといった判断が可能になり、英作文においても不自然な代名詞使用を回避できる。加えて、複数の文にわたる代名詞の照応連鎖を追跡する力により、長文読解で段落全体の論理展開を正確に把握できるようになる。これらの能力を基盤として、後続のモジュールで扱う関係詞の体系的理解や文間の結束性分析へと発展させることができる。

【基礎体系】

[基礎 M01]
└ 動詞の種類と文型の対応関係を体系的に理解する

目次

統語:代名詞の形態的・統語的識別

英文を読むとき、”he”も”this”も”who”も「代名詞」として一括りにしてしまうと、それぞれが文中で果たす役割の違いを見落とす。人称代名詞は先行詞を受けて主語・目的語として機能し、指示代名詞は特定の対象を指し示し、疑問代名詞は情報の欠落を標示する。代名詞の六種(人称・指示・疑問・関係・再帰・不定)を形態的特徴と統語的位置から正確に識別できることが、本層の到達目標である。品詞の名称と基本機能、特に名詞が主語・目的語・補語として機能するという知識を備えていれば、ここから先の分析に進められる。代名詞の格変化体系、各種代名詞の形態的特徴、統語的位置と代名詞の種類の対応関係を扱う。後続の意味層で代名詞の指示対象を特定する際、本層で確立した種類の識別能力が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤 M09-統語]
└ 動詞の種類が5文型のどれを形成するかの対応を確認する

[基盤 M10-統語]
└ 動詞が文の要素の配列をどのように決定するかを把握する

[基盤 M14-統語]
└ 本動詞と助動詞の統語的差異を確認する

1. 人称代名詞の格変化と統語的位置

人称代名詞を正確に使いこなすには、「I, my, me, mine」といった変化形の暗記だけでは不十分である。各格形がどの統語的位置に出現するかを理解し、文中の位置から逆に格を判定できる能力が求められる。人称代名詞の格変化体系を正確に把握することで、主格・所有格・目的格・所有代名詞の四形式を文の構造に基づいて判定する能力、前置詞の目的語に目的格を選択する能力、”It is I.”と”It is me.”のような文法的判断が可能になる能力、さらに人称・数・格の三次元で代名詞を体系的に整理する能力が確立される。人称代名詞の格変化は、次の記事で扱う指示代名詞・疑問代名詞の識別、さらに関係代名詞の格判定へと直結する。

1.1. 人称代名詞の格体系

一般に人称代名詞は「I-my-me-mine を覚えればよい」と単純に理解されがちである。しかし、この理解は格変化の暗記に偏っており、各格形が文中のどの位置に出現するかという統語的規則を捉えていないという点で不正確である。学術的・本質的には、人称代名詞の格とは、その代名詞が文中で担う統語的機能(主語・所有限定詞・目的語・独立所有格)を形態的に標示する仕組みとして定義されるべきものである。この統語的定義が重要なのは、格形の選択が文の構造によって一義的に決定されるためであり、暗記した格形を当てはめるのではなく、文中の位置から格を論理的に導出できるようになるからである。

英語の人称代名詞は、主格(I / you / he / she / it / we / they)、所有格(my / your / his / her / its / our / their)、目的格(me / you / him / her / it / us / them)、所有代名詞(mine / yours / his / hers / ours / theirs)の四系列に整理される。主格は述語動詞の主語の位置に、所有格は名詞の直前で限定詞として、目的格は動詞・前置詞の目的語の位置に、所有代名詞は「所有格+名詞」の代用として名詞の位置に出現する。この四系列の対応は例外なく成り立つため、文中の統語的位置を確認すれば、使用すべき格形は自動的に決定される。

なお、入試で頻出する誤りとして「並列構造における格の過剰修正」がある。”between you and I”のように、前置詞の目的語であるにもかかわらず主格を用いる誤用は、「〜 and I が正しい」という過剰一般化に起因する。並列構造であっても格の決定は統語的位置に依存するという原則は変わらない。さらに、補語の位置における格の選択も注意を要する。”It is I.”はフォーマルな文体で主格を使用し、”It is me.”は日常会話で目的格を使用する。これは補語の位置が主格・目的格のいずれも許容する特殊な環境であり、文体の格式によって選択が分かれることを示している。

この原理から、人称代名詞の格を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では代名詞の統語的位置を確認する。述語動詞の前であれば主語の位置であり主格を選択する。述語動詞・前置詞の直後であれば目的語の位置であり目的格を選択する。手順2では名詞との隣接関係を確認する。代名詞の直後に名詞が続く場合、その代名詞は所有格として名詞を限定している。名詞が続かず代名詞だけで名詞句を形成している場合は、主格・目的格・所有代名詞のいずれかである。手順3では文の要素との対応を確定する。手順1と手順2の結果を組み合わせ、S(主語)の位置なら主格、O(目的語)の位置なら目的格、名詞の限定詞の位置なら所有格、名詞句の位置で「所有格+名詞」の代用なら所有代名詞と判定する。

例1: She told him the truth.
→ “She”は述語動詞”told”の前=主語の位置=主格。”him”は”told”の直後=目的語の位置=目的格。
→ 判定結果: She(主格・3人称単数女性)、him(目的格・3人称単数男性)

例2: Their proposal impressed us.
→ “Their”は名詞”proposal”の直前=所有格(限定詞)。”us”は”impressed”の直後=目的語の位置=目的格。
→ 判定結果: Their(所有格・3人称複数)、us(目的格・1人称複数)

例3: The final decision is yours.
→ “yours”は補語の位置にあり、直後に名詞がない=所有代名詞(”your decision”の代用)。
→ 判定結果: yours(所有代名詞・2人称)

例4: Between you and me, the plan needs revision.
→ “you”と”me”は前置詞”between”の目的語=目的格。”Between you and I”は前置詞の目的語に主格を用いた誤用であり、正しくは目的格”me”を使う。
→ 判定結果: you(目的格・2人称)、me(目的格・1人称単数)。”Between you and I”は誤り。

以上により、人称代名詞が文中のどの位置に出現しても、統語的機能に基づいて正確な格形を判定することが可能になる。

2. 指示代名詞と指示形容詞の識別

代名詞を学ぶ際、”this”や”that”は「指示語」として漠然と把握されがちであるが、実際の英文では指示代名詞(名詞句として独立して機能する用法)と指示形容詞(名詞を修飾する限定詞として機能する用法)の区別が頻繁に問われる。”this”が単独で主語や目的語として機能する場合と、”this book”のように名詞の前に位置して限定詞として働く場合とでは、統語的機能が根本的に異なる。指示代名詞と指示形容詞の区別を正確に行えることで、文の要素を正しく把握し、後続の意味層で指示対象を特定する際の前提条件が確立される。指示語の識別能力は、次の記事で扱う疑問代名詞の識別、さらに関係代名詞と疑問代名詞の区別へと直結する。

2.1. 指示代名詞の統語的特徴

指示代名詞とは何か。”this / that / these / those”はいずれも「指し示す」機能を持つが、文中で名詞句として独立して機能する場合に指示代名詞、名詞の直前に位置して限定詞として機能する場合に指示形容詞と呼ばれる。この区別は語形の違いではなく統語的位置の違いに基づく。指示代名詞は主語・目的語・補語のいずれかの位置で名詞句として振る舞い、指示形容詞は後続の名詞と結合して名詞句の一部を構成する。この区別が重要なのは、指示代名詞の場合は代名詞自体が指示対象を表すため先行詞の特定が必要になるのに対し、指示形容詞の場合は後続の名詞が直接内容を示すため先行詞の特定が不要だからである。

また、”this / these”は話者に近い対象(近称)を、”that / those”は話者から遠い対象(遠称)を指すという距離の対立がある。この距離は物理的な距離だけでなく、心理的・時間的な距離にも適用される。入試では”that / those”が前出の名詞句の反復を避ける代用表現として頻出する。”The climate of Japan is milder than that of Canada.”の”that”は”the climate”の代用であり、この用法を見抜けなければ比較構文の構造を正しく把握できない。指示代名詞の近称・遠称の区別は、談話層で扱う段落間の指示対象の追跡においても重要な手がかりとなる。

さらに、指示代名詞には「前文の内容全体を指す」用法がある。”He resigned suddenly. This surprised everyone.”の”This”は特定の名詞句ではなく、前文で述べられた命題全体(彼が突然辞任したこと)を受けている。この用法と、特定の名詞句を指す用法を区別できるかどうかが、読解問題での代名詞指示内容の特定精度を左右する。

以上の原理を踏まえると、指示代名詞と指示形容詞を識別するための手順は次のように定まる。手順1では”this / that / these / those”の直後を確認する。直後に名詞が続く場合は指示形容詞であり、名詞が続かず文の要素(S/O/C)として独立している場合は指示代名詞である。手順2では数の一致を確認する。”this / that”は単数名詞または単数の概念を、”these / those”は複数名詞または複数の概念を指す。指示代名詞の場合、先行詞の数と指示代名詞の数が一致していなければならない。手順3では距離の対立を判定する。”this / these”が使われていれば近称、”that / those”が使われていれば遠称と判定する。特に前文の内容全体を受ける用法では、”this”は直前の内容、”that”はやや離れた先行文脈を受ける傾向がある。

例1: This surprised everyone in the room.
→ “This”の直後に名詞なし=指示代名詞。単数。主語の位置で文の要素Sとして機能。近称であるため、直前の文脈で述べられた出来事を指す。
→ 判定結果: 指示代名詞・単数・近称(直前の文脈を指示)

例2: Those students passed the exam.
→ “Those”の直後に名詞”students”あり=指示形容詞。複数。”those”は遠称であるため、特定の(すでに話題に上った)学生群を限定している。
→ 判定結果: 指示形容詞・複数・遠称

例3: I prefer this to that.
→ “this”と”that”はいずれも直後に名詞なし=ともに指示代名詞。”prefer”の目的語(this)と前置詞”to”の目的語(that)として機能。近称と遠称の対比。
→ 判定結果: this(指示代名詞・単数・近称)、that(指示代名詞・単数・遠称)

例4: The climate of Japan is milder than that of Canada.
→ “that”の直後に前置詞”of”が続き名詞は直後にない=指示代名詞。ここでの”that”は”the climate”の代用(代名詞的用法)。単数であり、先行する”the climate”と数が一致する。
→ 判定結果: that=指示代名詞・単数・遠称(”the climate”の反復回避の代用)

これらの例が示す通り、指示語が文中に出現した際に代名詞か形容詞かを瞬時に識別し、数と距離の特徴から指示対象を正確に特定する能力が確立される。

3. 疑問代名詞と関係代名詞の識別

英文法を学ぶ際、”who”や”which”が疑問代名詞なのか関係代名詞なのかを判別できない学習者は多い。形態が完全に同一であるため、文中の機能と位置に基づく判定が不可欠である。疑問代名詞と関係代名詞の識別能力が確立されることで、文の構造把握の精度が飛躍的に向上する。疑問文か名詞節かを正確に判断する能力、関係詞節の範囲を特定して先行詞を同定する能力、”what”の二重機能(疑問代名詞と関係代名詞)を識別する能力が確立される。これらの能力は、後続のモジュールで扱う関係詞の体系的理解に直結する。

3.1. 疑問代名詞と関係代名詞の機能的区別

一般に”who / which / what”は「疑問詞」と理解されがちである。しかし、この理解は同じ語形が関係代名詞として節を導く機能を持つことを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、疑問代名詞とは情報の欠落を標示し、その欠落部分への回答を要求する語であり、関係代名詞とは先行詞を修飾する形容詞節(関係詞節)を導く接続機能を兼ね備えた代名詞として定義されるべきものである。この区別が重要なのは、疑問代名詞は疑問文または間接疑問(名詞節)を形成するのに対し、関係代名詞は先行詞の直後で形容詞節を形成するという根本的な機能差があり、この差が文の構造解析を左右するためである。

疑問代名詞は「誰が?」「何を?」という情報要求機能を持ち、文全体が疑問文であるか、動詞の目的語として名詞節(間接疑問)を導く。一方、関係代名詞は先行詞という名詞句の直後に位置し、先行詞を修飾する従属節を形成する。”what”は特殊であり、先行詞を内包する関係代名詞(”the thing(s) which”に相当)としても機能するため、先行詞がない点で他の関係代名詞と区別される。

さらに、入試では”which”が関係代名詞として前文の内容全体を先行詞に取る非制限用法(“He passed the exam, which surprised everyone.”)も出題される。この場合の”which”は特定の名詞句ではなく前文の命題全体を受けるため、指示代名詞”this / that”の機能と重なる部分がある。この非制限用法の”which”と、特定の名詞句を先行詞とする制限用法の”which”を区別するには、コンマの有無と、”which”を”this/that”に置き換えて意味が通るかどうかが手がかりとなる。

上記の定義から、疑問代名詞と関係代名詞を識別する手順が論理的に導出される。手順1では先行詞の有無を確認する。”who / which / that”の直前に名詞句(先行詞)がある場合は関係代名詞、先行詞がなく文頭や動詞の目的語の位置に出現する場合は疑問代名詞と判定する。手順2では節の機能を確認する。関係代名詞が導く節は先行詞を修飾する形容詞節であり、その節を取り除いても文の骨格が成立する。疑問代名詞が導く節は名詞節であり、文の主語・目的語・補語として不可欠な要素となる。手順3では”what”の特殊性を処理する。”what”に先行詞がない場合、「何を(疑問)」と「〜するもの・こと(関係)」の二つの読みが可能である。文脈に疑問・回答の構造があれば疑問代名詞、名詞句として文の要素に組み込まれていれば関係代名詞と判定する。

例1: Who broke the window?
→ 文頭に出現し、先行詞なし。疑問文を形成している。「誰が」という情報要求。
→ 判定結果: 疑問代名詞(主格)

例2: The student who broke the window was punished.
→ “who”の直前に先行詞”The student”あり。”who broke the window”は”The student”を修飾する形容詞節。この節を除いても”The student was punished.”が成立。
→ 判定結果: 関係代名詞(主格、先行詞=The student)

例3: I don’t know what he said.
→ “what”に先行詞なし。”what he said”は動詞”know”の目的語として名詞節を形成。文脈は「彼が何を言ったか(知らない)」で間接疑問とも読めるが、同時に「彼が言ったこと」という関係代名詞(先行詞内包型)とも解釈可能。いずれの解釈でも名詞節として機能する点は共通。
→ 判定結果: “what”=疑問代名詞(間接疑問)または関係代名詞(先行詞内包型)。文脈に応じて判断。

例4: She is the teacher who(m) I respect the most.
→ “who(m)”の直前に先行詞”the teacher”あり。”who(m) I respect the most”は形容詞節。”respect”の目的語が欠落しており、目的格の関係代名詞。”whom”が正式だが口語では”who”も使用される。
→ 判定結果: 関係代名詞(目的格、先行詞=the teacher)

以上の適用を通じて、同一語形の”who / which / what”が疑問代名詞と関係代名詞のいずれとして機能しているかを、先行詞の有無と節の機能から正確に判定する能力を習得できる。

4. 再帰代名詞の形態と機能

英文中に”himself”や”themselves”が出現した際、これらが「〜自身」と訳せることは知っていても、なぜ再帰代名詞が必要なのか、人称代名詞の目的格とどう使い分けるのかを正確に説明できる学習者は少ない。再帰代名詞の識別基準を理解することで、再帰代名詞が必須の文脈と強調用法の文脈を正確に区別する能力、人称代名詞の目的格との誤用を防止する能力、再帰代名詞を含むイディオム(by oneself, help oneself等)を正確に処理する能力が確立される。再帰代名詞の理解は、次の記事で扱う不定代名詞の識別とあわせて、代名詞体系の全体像の完成に寄与する。

4.1. 再帰代名詞の二つの機能

代名詞には二つの捉え方がある。一つは名詞の代わりを務める語という見方、もう一つは文の中で主語と同一の指示対象を目的語の位置で表す語という見方である。再帰代名詞は後者の機能を担う特殊な代名詞であり、「主語と目的語が同一人物・同一事物を指す場合に、目的語の位置に置かれる代名詞」として定義される。この定義が重要なのは、主語と目的語が同一指示対象である場合、通常の人称代名詞(目的格)を使うと異なる人物を指してしまうという曖昧性が生じるためである。”He hurt him.”では”him”は”He”とは別の人物を指すが、”He hurt himself.”では”himself”が”He”と同一人物であることを明示する。再帰代名詞はこの同一指示の明示機能を果たす。

この「同一指示の明示」という原理は、英語以外の多くの言語にも見られる普遍的な文法的仕組みであり、二つの名詞句が同一の指示対象を持つことを形態的に標示する必要性から生じている。さらに、再帰代名詞には「強調用法」がある。”I myself saw it.”や”She did it herself.“のように、主語や目的語の直後に置かれて「他でもなく〜自身が」という強調を加える用法である。この場合、再帰代名詞を取り除いても文は文法的に成立する。再帰用法では再帰代名詞が不可欠(削除すると意味が変わる)であるのに対し、強調用法では付加的(削除しても基本的意味は変わらない)という違いがある。入試では、この再帰用法と強調用法の区別が正誤判定問題や空所補充問題で頻出する。加えて、再帰代名詞には”by oneself”(一人で)、“help oneself to”(自由に取る)、“enjoy oneself”(楽しむ)、“make oneself understood”(自分の意思を伝える)といったイディオムが多数存在し、これらは再帰用法の延長として理解できる。

この原理から、再帰代名詞を正確に識別する手順が導かれる。手順1では”-self / -selves”の語尾を確認する。”myself, yourself, himself, herself, itself, ourselves, yourselves, themselves”の八形式のいずれかに該当すれば再帰代名詞と判定する。手順2では主語との同一性を確認する。再帰代名詞の人称・数が主語の人称・数と一致しているかを検証する。一致していれば再帰用法の候補であり、一致していなければ文法的誤りの可能性がある。手順3では削除テストを行う。再帰代名詞を削除して文が成立するかを確認する。削除すると文が非文法的になる場合は再帰用法(必須)であり、削除しても文が成立する場合は強調用法(付加的)と判定する。

例1: She introduced herself to the audience.
→ “-self”語尾あり=再帰代名詞。主語”She”と”herself”は同一人物(3人称単数女性で一致)。”herself”を削除すると”She introduced __ to the audience.”となり目的語が欠落して非文法的=再帰用法(必須)。
→ 判定結果: 再帰用法。「彼女は自分自身を聴衆に紹介した。」

例2: The president himself attended the meeting.
→ “-self”語尾あり=再帰代名詞。主語”The president”と”himself”は同一人物。”himself”を削除すると”The president attended the meeting.”で文法的に成立=強調用法(付加的)。「大統領自らが出席した。」
→ 判定結果: 強調用法。削除しても文は成立するが、「他でもなく大統領自身が」という強調が失われる。

例3: They enjoyed themselves at the party.
→ “themselves”は再帰代名詞。主語”They”と”themselves”は同一(3人称複数で一致)。”themselves”を削除すると”They enjoyed __ at the party.”で目的語欠落=再帰用法。”enjoy oneself”は「楽しむ」のイディオム。
→ 判定結果: 再帰用法(イディオム)。

例4: He hurt him. / He hurt himself.
→ “He hurt him.”では”him”は主語”He”とは異なる第三者を指す(人称代名詞・目的格)。“He hurt himself.“では”himself”が主語”He”と同一人物を指す(再帰代名詞・再帰用法)。両文は指示対象が完全に異なる。
→ 判定結果: 人称代名詞”him”=別人を指示。再帰代名詞”himself”=主語と同一人物を指示。

以上により、再帰代名詞の二つの機能(再帰用法と強調用法)を確実に区別し、人称代名詞との使い分けを正確に判定することが可能になる。

5. 不定代名詞の体系と識別

不定代名詞を学ぶ際、“some”と”any”の違いについて「肯定文にはsome、疑問文・否定文にはany」という説明だけで十分だろうか。実際には”Would you like some coffee?”(肯定的回答を期待する疑問文でsome)のように、この単純な規則では処理できない場面が頻繁に生じる。不定代名詞の識別能力が不十分なまま読解に取り組むと、数量の範囲や特定性の判断を誤り、文全体の意味を取り違える結果となる。不定代名詞の体系的理解によって、以下の能力が確立される。”some / any / no / every”系の代名詞を文脈に応じて正確に選択できる能力、”each / every / all / both / either / neither”の数量的意味を正確に把握する能力、”one / another / other / others”の指示範囲を区別する能力、不定代名詞の動詞との数の一致を正確に処理する能力である。不定代名詞の識別基準は、意味層で扱う代名詞の指示対象特定の前提となる。

5.1. 不定代名詞の分類体系

不定代名詞とは、指示対象を特定せずに人・物・量を指す代名詞の総称である。「不特定の人・物を指す」という素朴な理解では、不定代名詞の内部に存在する体系的な区分を見落とす。学術的・本質的には、不定代名詞とは指示対象の特定性・数量的範囲・肯定/否定の極性によって体系的に分類される代名詞群として定義されるべきものである。この体系的定義が重要なのは、不定代名詞の選択が「暗記した規則の適用」ではなく「指示対象の特定性と極性の判断」によって論理的に導かれるためである。

不定代名詞は大きく四つのグループに分けられる。第一に全称系(“every / all / both”:集合全体を指す)、第二に存在系(“some / any”:集合の一部を指す)、第三に選択系(“each / either / neither / one / another / other”:集合の中から個を選択する)、第四に否定系(“no / none / neither”:集合の中に該当するものがないことを示す)である。さらに、”-one / -body / -thing”の複合形(someone, anybody, nothing等)は人・物の区別を語末で標示する。

動詞との数の一致においては、”every / each / either / neither”系および複合形(everyone, somebody等)は文法的に単数扱いとなり、”all / both”は複数扱い、”some / any / none”は先行する名詞の数に依存する。”some”と”any”の選択に関しては、「肯定文にsome、疑問文・否定文にany」という規則は出発点に過ぎず、実際には話者の期待や前提が選択を左右する。勧誘・依頼の疑問文(“Would you like some tea?”)では肯定的回答を期待しているため”some”が使われ、純粋な情報要求(“Do you have any questions?”)では”any”が使われる。この極性感応性を理解することで、機械的規則を超えた正確な判断が可能になる。

上記の定義から、不定代名詞を識別する手順が論理的に導出される。手順1では数量的範囲を判定する。「全体を指すか、一部を指すか、特定の個を選ぶか、存在を否定するか」を文脈から確認する。手順2では極性を判定する。肯定文脈では”some”系、否定・疑問・条件文脈では”any”系が基本であるが、勧誘・依頼の疑問文(肯定的回答を期待)では”some”系が用いられる。手順3では動詞との数の一致を確認する。不定代名詞が主語の場合、全称系の”every / each”は単数一致、”all / both”は複数一致、複合形(everyone, something等)は単数一致とする。

例1: Everyone has a different opinion.
→ “Everyone”は全称系の複合形。「全員」を意味するが文法的に単数扱い→動詞は”has”(三単現)。
→ 判定結果: 全称系・人物指示・単数一致

例2: Would you like some coffee?
→ 疑問文だが”some”を使用。これは勧誘の疑問文であり、肯定的回答(Yes)を期待している文脈。”any”ではなく”some”が適切。
→ 判定結果: 存在系・肯定的期待の疑問=”some”が適切

例3: Neither of the proposals was accepted.
→ “Neither”は否定系・選択系の二者否定。「二つの提案のどちらも〜ない」。文法的に単数扱い→動詞は”was”。
→ 判定結果: 否定系・二者否定・単数一致

例4: Each student submitted their assignment.
→ “Each”は選択系で各個を指す。文法的に単数扱い。”their”は伝統的文法では”his or her”が正式だが、現代英語では単数の”they / their”が性別中立代名詞として広く使用されている。
→ 判定結果: 選択系・各個指示・単数一致(”their”は単数”they”の所有格)

4つの例を通じて、不定代名詞の分類(全称・存在・選択・否定)と極性・数の一致の判断手順の実践方法が明らかになった。

意味:代名詞の指示対象の特定

代名詞の種類を正確に識別できるようになったとしても、その代名詞が具体的に何を指しているかを特定できなければ、文の意味を正しく把握することはできない。”It was surprising.”と読んだとき、”It”が前文のどの名詞句を、あるいは前文の内容全体を受けているのかを判断できなければ、何が驚くべきであったのか理解できない。代名詞の先行詞を一致条件と文脈の両面から正確に同定できることが、本層の到達目標である。統語層で確立した代名詞の種類の識別と格判定の能力を備えている必要がある。先行詞との一致条件(数・性・人称)、曖昧な照応の解消手順、”it”の多機能用法(先行詞照応・形式主語・形式目的語・天候/時間のit)の識別を扱う。語用層で代名詞の選択基準を学ぶ際、本層で確立した指示対象の特定能力が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤 M22-意味]
└ 動詞の多義性が文型によってどのように制約されるかを理解する

[基盤 M28-意味]
└ 動詞の種類と時制表現の意味的関係を確認する

[基盤 M30-意味]
└ 動詞の自動詞・他動詞の区別が受動態の意味にどう関わるかを把握する

1. 先行詞との一致条件

代名詞の指示対象を特定するには、「代名詞が何を指しているか」を文脈から推測するだけでは不十分である。代名詞と先行詞の間には数・性・人称の一致という文法的制約があり、この制約を手がかりにすることで指示対象の候補を論理的に絞り込める。先行詞との一致条件を理解することで、代名詞の指示対象を系統的に特定する能力が確立される。一致条件による候補の絞り込みは、入試の「下線部の代名詞が指す内容を答えよ」という設問の解法の核心である。

1.1. 数・性・人称の一致による先行詞の同定

一般に代名詞の指示対象の特定は「文脈から推測する」と理解されがちである。しかし、この理解は代名詞と先行詞の間に成立する形式的一致条件を活用していないという点で不正確である。学術的・本質的には、代名詞の先行詞は「数(単数/複数)・性(男性/女性/中性)・人称(1/2/3人称)の三条件が代名詞と一致する名詞句」として形式的に絞り込まれ、その上で文脈的妥当性を検証するという二段階の手順で同定されるべきものである。この形式的アプローチが重要なのは、文脈だけに頼ると複数の候補から先行詞を絞り込めない場合があるのに対し、一致条件を適用すれば候補を機械的に限定できるためである。

数の一致は最も基本的な条件であり、”he”は単数男性名詞のみを、”they”は複数名詞(または単数の性別中立用法)のみを先行詞に取る。性の一致は人を指す代名詞で機能し、”she”は女性名詞のみを先行詞に取る。人称の一致は通常は3人称であるが、直接話法では1人称・2人称の代名詞も出現する。なお、現代英語では性別が不明・不問の場合に単数の”they”を使用する用法が広がっており、この場合”they”は単数の先行詞を受ける。

一致条件は先行詞の「排除」に特に威力を発揮する。複数の名詞句が先行文脈に存在する場合、数・性・人称のいずれか一つでも不一致の名詞句は候補から除外できる。この排除プロセスを徹底するだけで、候補が一つに絞れる場合が多い。入試の下線部指示問題では、まず一致条件による排除を行い、残った候補について文脈的妥当性を検証するという手順を徹底することが、正答率の向上に直結する。

この原理から、先行詞を同定する具体的な手順が導かれる。手順1では代名詞の形態的特徴から一致条件を確認する。”he”であれば「3人称・単数・男性」、”them”であれば「3人称・複数」という条件を抽出する。手順2では先行文脈から候補となる名詞句を列挙する。代名詞よりも前に出現した名詞句のうち、手順1の一致条件を満たすものを全て候補とする。手順3では文脈的妥当性を検証する。候補が複数ある場合、その代名詞を含む文の意味が整合的になる名詞句を先行詞として確定する。物理的近接性(直近の名詞句ほど先行詞になりやすい)も手がかりとなるが、意味的整合性が最終的な判断基準である。

例1: Mary told John that she would be late.
→ “she”は3人称・単数・女性。先行文脈の名詞句は”Mary”(女性・単数)と”John”(男性・単数)。一致条件を満たすのは”Mary”のみ。
→ 判定結果: she=Mary

例2: The students submitted their essays, but some of them contained errors.
→ “them”は3人称・複数。先行文脈の名詞句は”The students”(複数)と”their essays”(複数)。一致条件はどちらも満たす。文脈検証:「それらのうちいくつかが誤りを含んでいた」→”essays”が妥当(学生が誤りを含むのは不自然)。
→ 判定結果: them=their essays

例3: The company announced its new policy, and it was well received.
→ “it”は3人称・単数・中性。候補は”The company”(単数)と”its new policy”(単数)。文脈検証:「好評だった」→”new policy”が妥当(会社自体が好評というのは文脈に合わない)。
→ 判定結果: it=its new policy

例4: Each applicant should bring their identification.
→ “their”は3人称。先行詞は”Each applicant”(単数)。”each”は文法的に単数だが、現代英語では性別中立の単数”they/their”が使用される。”his or her”と同義。
→ 判定結果: their=Each applicant(単数”they”の所有格、性別中立用法)

以上により、代名詞の一致条件を手がかりに先行詞の候補を限定し、文脈的妥当性を検証して先行詞を確定する能力が可能になる。

2. “it”の多機能用法の識別

英文中に”it”が出現した際、それが「何かを指す代名詞」なのか、文法的な構造上の要求で置かれた形式的な”it”なのかを区別できない学習者は多い。”It is important to study hard.”の”It”は何も指さない形式主語であり、”I found it interesting that he refused.”の”it”は形式目的語である。”It is raining.”の”it”は天候・時間を表す非人称主語である。これらの用法を混同すると、文の真の主語や構造を見誤る。”it”の多機能用法の識別能力を確立することで、入試の文法問題・読解問題の両方で精度の高い判断が可能になる。

2.1. “it”の四つの用法

“it”とは何か。「それ」と訳せる三人称単数中性の代名詞、という回答は”it”の機能の一部しか捉えていない。英語の”it”には少なくとも四つの用法があり、それぞれが根本的に異なる統語的機能を果たす。第一に「照応の”it”」は先行詞を持ち、前文の名詞句を受ける通常の代名詞である。第二に「形式主語の”it”」は真主語(to不定詞句・that節)を文末に置くために主語の位置を埋める構造的要素である。第三に「形式目的語の”it”」は真目的語を文末に置くために目的語の位置を埋める構造的要素であり、SVOC構文で”find / make / think”などの動詞と共に用いられる。第四に「非人称の”it”」は天候・時間・距離・状況などを表し、特定の先行詞を持たない主語である。

これら四用法の区別が重要なのは、”it”がどの用法であるかによって文の構造解析が根本的に変わるためである。照応の”it”では先行詞の特定が必要であり、形式主語・形式目的語の”it”では真主語・真目的語を見つける必要があり、非人称の”it”では指示対象の探索自体が不要である。入試ではさらに、”It is … that …”の構文が形式主語構文か強調構文(“It was Tom that broke the window.”)かの判定も問われる。形式主語構文では”that”以下が真主語であるのに対し、強調構文では”It is”と”that”の間に強調したい要素が挿入される。この二つの構文の判定は、”It is”と”that”の間の要素を取り出して元の文を復元できるかどうかで行う。

では、”it”の用法を判定するにはどうすればよいか。手順1では”it”の直後の構造を確認する。”it”の後に”is + 形容詞 + to不定詞”または”is + 形容詞 + that節”の構造が続く場合は形式主語の候補である。”it”の後に”動詞 + it + 形容詞/名詞 + to不定詞/that節”の構造(SVOC型)が続く場合は形式目的語の候補である。手順2では先行詞の有無を確認する。前文に”it”と一致する名詞句(3人称・単数・中性)がある場合は照応の”it”の候補である。先行詞が見当たらず、天候・時間・距離・状況に関する文脈であれば非人称の”it”と判定する。手順3では「置き換えテスト」を実行する。形式主語の場合、”it”を真主語(to不定詞句・that節)に置き換えても意味が保たれる(例:“It is important to study.” → “To study is important.”)。

例1: I bought a new laptop. It was expensive.
→ “It”の前文に”a new laptop”(3人称・単数・中性)あり=照応の”it”。先行詞は”a new laptop”。
→ 判定結果: 照応の”it”(先行詞=a new laptop)

例2: It is essential that all members attend the meeting.
→ “It”の後に”is + essential + that節”=形式主語の構造。真主語は”that all members attend the meeting”。置き換え:“That all members attend the meeting is essential.”(成立する)。
→ 判定結果: 形式主語の”it”(真主語=that節)

例3: She found it difficult to concentrate in the noisy room.
→ SVOC構造。S=She, V=found, O=it, C=difficult。“it”の後に”to concentrate…“が続く=形式目的語。真目的語は”to concentrate in the noisy room”。
→ 判定結果: 形式目的語の”it”(真目的語=to不定詞句)

例4: It is ten o’clock.
→ “It”の後に”is + 時刻”。先行詞なし。天候・時間・距離を表す非人称用法。“It”は特定の対象を指さない。
→ 判定結果: 非人称の”it”(時間の表現)

以上により、”it”が文中に出現した際に四つの用法のいずれであるかを構造的手がかりから正確に判定し、文の真の構造を把握する能力が可能になる。

3. 曖昧な照応の解消

代名詞の先行詞が文脈上明確に一つに定まらない場合がある。”John told Tom that he was wrong.”の”he”はJohnとTomのどちらを指すか。一致条件(3人称・単数・男性)は両者とも満たすため、形式的条件だけでは先行詞を確定できない。このような曖昧な照応は入試で頻出する。曖昧な照応の解消手順を習得することで、複数の候補から先行詞を確定する能力が確立される。

3.1. 曖昧な照応の判定手順

一般に代名詞の先行詞は「直前の名詞」と理解されがちである。しかし、この理解は複数の名詞句が一致条件を満たす場合に先行詞を誤認するという点で不正確である。学術的・本質的には、曖昧な照応とは「形式的一致条件を満たす名詞句が複数存在し、形式条件のみでは先行詞を一意に確定できない状態」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、曖昧な照応を解消するには形式的条件を超えた文脈・意味・語用論的手がかりが必要であり、その手がかりを系統的に適用する手順が不可欠だからである。

曖昧な照応の原因は主に三つある。第一に、同じ数・性・人称を持つ名詞句が複数存在する場合(“John told Tom that he…”)。第二に、代名詞が文全体の内容を指しうる場合(”He failed the exam. This disappointed his parents.”の”This”が試験の不合格か、不合格という事態全体か)。第三に、代名詞と先行詞の間に長い挿入や複数の文が介在し、物理的距離が大きい場合である。入試の出題者はこの曖昧性を意図的に利用して問題を作成する。受験生の「直感的な推測」ではなく「体系的な判定プロセス」を用いているかを測るためであり、曖昧な照応を含む設問は正答率が低い傾向にある。したがって、以下の手順を意識的に適用できるかどうかが得点差につながる。

この原理から、曖昧な照応を解消する具体的なプロトコルが導かれる。手順1では一致条件による候補の列挙を行う。代名詞の数・性・人称と一致する名詞句を先行文脈から全て抽出する。手順2では統語的役割による優先判定を行う。英語では、that節内の代名詞は原則として主節の主語を指す傾向がある(”John told Tom that he was wrong.”の”he”はJohnを指す読みが優勢)。また、同一節内の代名詞は同一節の主語を先行詞に取りやすい。手順3では意味的整合性による最終確定を行う。各候補を先行詞と仮定した場合に、文の意味が矛盾なく成立するかを検証する。いずれの候補でも意味的に整合する場合は、文脈がなお曖昧であると判断する。

例1: John told Tom that he was wrong.
→ “he”は3人称・単数・男性。候補はJohnとTom。統語的傾向:that節内の”he”は主節の主語”John”を指す読みが優勢。意味検証:JohnがTomに「(Johnが/Tomが)間違っている」と告げた→どちらも整合するが、統語的傾向によりJohnが優勢。
→ 判定結果: he=John(優勢)。ただし文脈により異なる可能性あり。

例2: The manager asked the employee if she could finish the report.
→ “she”は3人称・単数・女性。managerとemployeeのいずれかが女性。if節の”she”は主節の目的語”the employee”を指す読みが自然(依頼の文脈では頼まれる側に動作が向く)。
→ 判定結果: she=the employee(文脈的にemployeeに仕事を頼んでいる状況)

例3: The cat sat on the mat. It was dirty.
→ “It”は3人称・単数・中性。候補は”The cat”と”the mat”。意味検証:「汚かった」→catもmatも汚い可能性がある。物理的近接性では”the mat”が直近。日常的文脈では「マットが汚かった」が自然だが、確定不能な場合もある。
→ 判定結果: It=the mat(物理的近接性と文脈的妥当性から優勢だが曖昧さは残る)

例4: He failed the exam. This disappointed his parents.
→ “This”は指示代名詞。候補は”the exam”か、前文全体の内容(試験に落ちたこと)。意味検証:「試験が両親を失望させた」よりも「試験に落ちたことが両親を失望させた」の方が自然。”This”は前文の命題全体を指す。
→ 判定結果: This=前文全体の内容(彼が試験に落ちたという事態)

以上の適用を通じて、曖昧な照応に直面した際に一致条件・統語的傾向・意味的整合性の三段階で先行詞を体系的に特定する能力を習得できる。

4. 代名詞の指示範囲の判定

“some”や”all”といった不定代名詞が文中に出現した場合、それが「いくつかの」「すべての」のどの範囲を指しているかを正確に判定することは、前提条件の理解に直結する。”All students passed.”と”All of the students passed.”の”all”は指示範囲が異なる。前者は一般的な「すべての学生」、後者は特定の集団の「全員」を指す。不定代名詞の指示範囲を正確に把握することで、数量表現を含む英文の意味を正確に理解する力が確立される。

4.1. 不定代名詞の指示範囲の確定

不定代名詞の指示範囲は、文法的構造と文脈の両面から決定される。”all / some / any”を「全部/いくつか/何でも」と機械的に対応させる理解では、不定代名詞が文脈によって指す範囲が変動することを捉えられない。学術的・本質的には、不定代名詞の指示範囲とは、その代名詞が指し示す集合の特定性(特定の集団か一般的な集団か)と量的範囲(全体か部分か)の組み合わせによって決定される意味的特性として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、同じ不定代名詞であっても「of + 限定名詞句」の有無によって指示範囲が変わり、文の真偽条件に影響するためである。

“All students must attend.”の”all”は学生一般を指すが、”All of the students in this class must attend.”は特定のクラスの学生全員に限定される。この違いは”of + the/these/those + 名詞”という限定構造の有無に対応する。部分量の不定代名詞(some, any, many, few等)でも同様であり、”Some students like math.”は一般論、”Some of the students failed.”は特定集団の一部を指す。

さらに、入試では”none”の用法も頻出する。”none”は”no one”や”not any”とは異なり、”of + 限定名詞句”を伴って特定集団の否定を表す場合が多い。”None of the students passed.”は「その学生のうち誰も合格しなかった」であり、集団全体の否定を意味する。”none”が主語の場合の動詞の数一致は、伝統的には単数扱い(“None of the students was …”)だが、現代英語では複数扱い(“None of the students were …”)も広く使われている。

上記の定義から、不定代名詞の指示範囲を判定する手順が論理的に導出される。手順1では「of + 限定名詞句」の有無を確認する。限定構造が後続する場合は特定集団を対象とし、後続しない場合は一般的な集団を対象とすると判定する。手順2では量的範囲を確認する。全称(all, every, each)は集団の全要素を、存在量化(some, any)は一部を、否定量化(no, none, neither)はゼロを指す。手順3では動詞の数一致から範囲を裏付ける。“All of the water was contaminated.”(不可算=単数)と”All of the rivers were contaminated.”(可算複数=複数)のように、動詞の数一致が指示対象の可算性・数を示す手がかりとなる。

例1: All students must submit the assignment.
→ “All”の後に「of + 限定名詞句」なし=一般的な「学生全員」。全称量化。
→ 判定結果: 一般的全称(学生という集団全体)

例2: All of the students in this class passed the exam.
→ “All of the students in this class”=「of + 限定名詞句」あり=特定のクラスの学生全員。
→ 判定結果: 特定全称(このクラスの学生に限定された全体)

例3: Some complained about the decision.
→ “Some”に「of + 限定名詞句」なし。先行文脈に複数名詞があればそれを受ける代名詞的用法。先行文脈がなければ不特定の「一部の人々」。
→ 判定結果: 文脈依存。先行文脈の名詞を確認して特定/一般を判定。

例4: None of the evidence was conclusive.
→ “None of the evidence”=「of + 限定名詞句」あり=特定の証拠の否定。“evidence”は不可算名詞→動詞は”was”(単数一致)。
→ 判定結果: 特定否定(特定の証拠のうち一つも決定的ではない)

以上により、不定代名詞の指示範囲を「限定構造の有無」「量的分類」「動詞の数一致」から体系的に判定する能力が可能になる。

語用:文脈に応じた代名詞の選択基準

英文を書くとき、同じ人物を指すのに”he”を使うべきか”the man”と名詞句で繰り返すべきか迷った経験はないだろうか。また、”It is important to study.”の”It”が何も指さない形式主語であることは統語層で学んだが、なぜ英語はわざわざ形式主語を置くのかという問いには、情報構造の観点からの理解が必要である。代名詞と名詞句の使い分けを情報の新旧と曖昧性の観点から判断できることが、本層の到達目標である。統語層で確立した代名詞の種類の識別能力と、意味層で確立した先行詞の同定能力を備えていれば、ここから先の選択基準の学習に進められる。代名詞と名詞句の使い分け基準、総称用法における代名詞の選択、形式主語・形式目的語を用いる動機と判定手順を扱う。本層で確立した選択基準は、入試において英作文での不自然な代名詞使用の回避や、読解における代名詞選択の意図の把握として発揮される。

【関連項目】

[基盤 M38-語用]
└ 動詞の選択が発話行為の遂行にどのように関わるかを確認する

[基盤 M43-語用]
└ 動詞の選択による直接表現と間接表現の違いを把握する

1. 代名詞と名詞句の使い分け

英文を読み書きする際、先行詞が明らかであれば常に代名詞を使えばよいわけではない。代名詞を使うか名詞句を繰り返すかの選択には、情報の新旧、先行詞の曖昧性、文の焦点という三つの要因が関わっている。代名詞と名詞句の使い分け基準を正確に理解することで、英作文で不自然な繰り返しや曖昧な照応を避ける能力が確立される。この使い分けの原理は、次の記事で扱う総称用法の代名詞選択、さらに形式主語の理解にも直結する。

1.1. 情報の新旧と照応の明確性に基づく選択

一般に代名詞は「名詞の繰り返しを避けるために使う」と理解されがちである。しかし、この理解は代名詞の使用が常に適切であるとは限らないこと、すなわち代名詞を使うとかえって意味が曖昧になる場合があることを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、代名詞と名詞句の使い分けは「指示対象が旧情報(すでに活性化された情報)であり、かつ照応が曖昧にならない場合に代名詞を使用し、そうでない場合は名詞句を使用する」という情報構造上の原則として定義されるべきものである。この原則が重要なのは、代名詞の過剰使用は照応の曖昧性を引き起こし、名詞句の過剰使用は文章の冗長さを引き起こすという二方向の問題があり、両者のバランスを意識的に制御する必要があるためである。

旧情報とは、直前の文脈ですでに言及され、読者の意識の中で活性化されている情報を指す。新情報とは、その文で初めて導入される情報、または長い文脈を挟んで再登場する情報を指す。旧情報の再言及には代名詞が適し、新情報の導入や長い距離を隔てた再言及には名詞句が適する。また、同一の数・性を持つ名詞句が複数存在する文脈では、代名詞の使用が曖昧性を生む。このような場合、たとえ旧情報であっても名詞句で明示することが優先される。

入試の英作文では、代名詞と名詞句の不適切な使い分けが減点対象となる。たとえば、同一段落内で同じ名詞句を五回も六回も繰り返す答案は冗長と判断され、逆に先行詞が曖昧なまま”it”や”they”を多用する答案は意味不明と判断される。読み手にとっての負荷を最小化する選択が求められる。さらに、文の焦点(読者の注意を向けたい情報)との関係も重要である。焦点が別の要素にある場合、指示対象は代名詞で軽く処理することで読者の注意を焦点に集中させることができる。逆に、特定の名詞句自体を強調したい場合は、旧情報であっても意図的に名詞句を使うことがある。

この原理から、代名詞と名詞句を使い分ける具体的な手順が導かれる。手順1では指示対象が旧情報か新情報かを判定する。直前の文で言及された名詞句であれば旧情報、初出または長い距離を隔てた再登場であれば新情報と判定する。旧情報なら代名詞が候補、新情報なら名詞句が必要である。手順2では照応の曖昧性を検証する。旧情報であっても、同一の数・性を持つ名詞句が複数存在する場合は代名詞を使うと曖昧になる。曖昧性がなければ代名詞を使用し、曖昧性があれば名詞句で明示する。手順3では文の焦点と強調を考慮する。特定の名詞句を強調したい場合、旧情報であっても意図的に名詞句を使うことがある。逆に、焦点が別の要素にある場合、指示対象は代名詞で軽く処理することで読者の注意を焦点に向けられる。

例1: Dr. Smith published a paper. She argued that the theory was flawed.
→ “She”は直前文の”Dr. Smith”を受ける旧情報。女性名詞は”Dr. Smith”のみで曖昧性なし。代名詞の使用が適切。
→ 判定結果: 代名詞が適切(旧情報・曖昧性なし)

例2: Dr. Smith met Dr. Johnson. She was surprised by the result.
→ “She”は3人称・単数・女性。Dr. SmithとDr. Johnsonがともに女性の場合、先行詞が曖昧。名詞句で明示すべき。“Dr. Smith was surprised by the result.”
→ 判定結果: 名詞句が必要(旧情報だが曖昧性あり)

例3: The experiment failed. After two months of revision, the experiment was finally successful.
→ “the experiment”は旧情報であるが、2か月という長い期間の記述を挟んでおり、”it”を使うと指示対象が不明確になりうる。名詞句の繰り返しで明確性を確保している。
→ 判定結果: 名詞句が適切(旧情報だが距離が長く、再活性化が必要)

例4: The board approved the budget, and it will take effect next month.
→ “it”は直前文の”the budget”を受ける旧情報。”the board”は複数で”it”とは一致しないため曖昧性なし。代名詞の使用が適切。
→ 判定結果: 代名詞が適切(旧情報・曖昧性なし・近距離)

以上により、代名詞と名詞句の使い分けを情報の新旧・照応の曖昧性・焦点の三観点から体系的に判断する能力が可能になる。

2. 総称用法における代名詞の選択

「一般的な人」を指す代名詞として”you / one / they / we”のいずれを使うべきか。英作文の場面でこの選択に迷う学習者は多い。総称用法の代名詞選択はフォーマリティ(文体の格式)と文脈に依存しており、不適切な選択は文体上の違和感を生む。総称用法の代名詞選択基準を習得することで、英作文において文脈にふさわしい総称表現を使い分ける能力が確立される。

2.1. 総称代名詞の選択基準

総称代名詞には二つの捉え方がある。一つは「一般の人」を指す便利な表現という見方、もう一つは文体的格式と話者の関与度を標示する語用論的選択という見方である。”you”は日常的な文脈で話者が聞き手を含めた一般化を行う際に使われ、口語的かつ親密な印象を与える。”one”はフォーマルな文体で一般化を行う際に使われ、話者自身を含む抽象的な主体を表す。”they”は特定できない不定の人々を指し、制度・規則の主体を漠然と示す場合に適する。”we”は話者と聞き手を含む集団を主体とし、共同体意識を前提とする。この区別が重要なのは、同じ内容でも選択する総称代名詞によって文の格式・印象が変わり、入試の英作文では文体の一貫性が評価対象となるためである。

フォーマルな論説文では”one”または三人称構文(“A student should…”)、日常的な説明文では”you”、制度の主体には”they”が原則となる。現代英語では、性別中立の観点から不定の個人を指す単数”they”の使用も広がっている。さらに、総称代名詞の選択は読者との距離感にも影響する。”you”は読者を直接巻き込む効果を持つため、ハウツー的な文章やアドバイスの場面で多用される。一方、”one”は読者との間に学術的な距離を置くため、客観性が求められる文脈に適する。入試の自由英作文では、設問の文体(”Do you agree…?”のように”you”で問われている場合は”you”で応答しても自然)と、自分が選択した文体の一貫性が重要である。同一段落内で”you should…”と”one must…”が混在すると、文体の統一感が損なわれ減点の対象となる。

以上の原理を踏まえると、総称代名詞を選択するための手順は次のように定まる。手順1では文体の格式を判定する。フォーマルな文章(論説文・学術文)であれば”one”または三人称名詞主語を、日常的な文章であれば”you”を基本とする。手順2では話者の関与度を判定する。話者が自分を含めた一般化を行う場合は”we”、聞き手に語りかける形で一般化する場合は”you”、話者を含まない不特定の人々を指す場合は”they”を選択する。手順3では文体の一貫性を確認する。同一段落・同一文章の中で総称代名詞を混在させると文体が不安定になるため、選択した総称代名詞を一貫して使用する。

例1: You should always check your sources before writing an essay.(日常的助言)
→ 文体:日常的。話者が聞き手に語りかける形の一般化。”you”が適切。
→ 判定結果: “you”(日常的文脈・聞き手を含む一般化)

例2: One must consider the ethical implications of such research.(学術論文)
→ 文体:フォーマル。抽象的な主体による一般化。”one”が適切。”You must…”はカジュアルすぎる。
→ 判定結果: “one”(フォーマルな文脈・抽象的一般化)

例3: They say the new policy will reduce costs.(制度の主体)
→ “They”は特定できない主体(政策決定者、世間一般)を指す総称用法。制度・規則・世間の意見の主体として適切。
→ 判定結果: “they”(不特定の主体・制度的文脈)

例4: We tend to underestimate the difficulty of learning a new language.(共同体としての一般化)
→ “We”は話者と読者を含む人間一般を指す。共同体意識を前提とした一般化。学術的文脈でも使用可能。
→ 判定結果: “we”(話者を含む共同体的一般化)

4つの例を通じて、文体の格式・話者の関与度・一貫性という三つの基準から総称代名詞を適切に選択する実践方法が明らかになった。

3. 形式主語・形式目的語の語用論的動機

意味層で”it”の多機能用法を学んだ際、形式主語の”it”は「真主語を文末に置くための構造的要素」として識別した。ここではさらに踏み込み、なぜ英語が形式主語・形式目的語という仕組みを必要とするのか、その語用論的動機を理解する。形式主語・形式目的語の使用動機を理解することで、英作文で形式主語構文を適切に選択する能力、読解問題で形式主語構文の情報構造を把握する能力が確立される。

3.1. 情報構造と末尾焦点の原則

一般に形式主語構文は「to不定詞やthat節が長いから前に置くと読みにくい」と理解されがちである。しかし、この理解は単に長さの問題として捉えており、英語の情報構造における「末尾焦点の原則」(end-focus principle)を把握していないという点で不正確である。学術的・本質的には、形式主語・形式目的語の使用は「旧情報・軽い情報を文頭に、新情報・重い情報を文末に配置する」という英語の情報構造の原則に従った構文的操作として定義されるべきものである。この原則が重要なのは、英語は文末に新情報・焦点を置く傾向が強く、長く重い主語を文頭に配置すると情報の流れが不自然になるためである。

“To understand the mechanism of photosynthesis is important.”は文法的には正しいが、文頭に長い不定詞句が来るため、読者が”important”という評価情報に到達するまでに認知的負荷がかかる。”It is important to understand the mechanism of photosynthesis.”とすることで、評価情報”important”が早い段階で提示され、不定詞句が文末焦点の位置に置かれる。形式目的語も同様であり、”I found to work with him difficult.”よりも”I found it difficult to work with him.”の方が、評価”difficult”の後に焦点情報”to work with him”が配置され、情報の流れが自然になる。

末尾焦点の原則は形式主語・形式目的語構文に限らず、英語の情報配列全般に適用される原則であり、受動態の選択(旧情報を主語に据える)や”there is”構文(新情報を文末に導入する)とも共通する基盤を持つ。入試の英作文において、日本語の語順をそのまま英語に移すと、新情報が文頭に来る不自然な文になることが多い。形式主語構文の活用は、こうした語順の不自然さを回避する実践的な手段となる。さらに、形式主語構文と強調構文の区別も入試で頻出する。”It is important that …”は形式主語構文であり、”It was Tom that broke the window.”は強調構文である。両者はいずれも”It is … that …”の形を取るが、形式主語構文では”that”以下が真主語として機能するのに対し、強調構文では”It is”と”that”の間の要素を取り出して元の平叙文を復元できるという違いがある。

上記の定義から、形式主語・形式目的語を使うべきかどうかを判断する手順が論理的に導出される。手順1では真主語・真目的語の長さと複雑さを確認する。to不定詞句・that節・動名詞句が主語・目的語の位置にあり、3語以上の長さを持つ場合は形式主語・形式目的語の候補となる。手順2では情報の新旧を判定する。真主語・真目的語が新情報であり、文末に配置することで末尾焦点の原則に適合する場合は形式構文を使用する。手順3では文型との適合性を確認する。形式目的語はSVOC構文(find / make / think / consider等)で使用され、OとCの間に形式目的語”it”を挿入する形を取る。SVOC構文でなければ形式目的語は使用できない。

例1: It is widely believed that climate change affects biodiversity.
→ 形式主語構文。真主語は”that climate change affects biodiversity”(長いthat節=新情報)。”is widely believed”という評価が先に提示され、焦点であるthat節が文末に配置されている。末尾焦点の原則に適合。
→ 判定結果: 形式主語が適切(真主語が長く、新情報を文末に配置)

例2: To memorize all the vocabulary in one night is impossible.
→ 真主語”To memorize all the vocabulary in one night”が文頭に配置されている。文法的には正しいが、評価”impossible”への到達が遅い。”It is impossible to memorize all the vocabulary in one night.”の方が情報の流れが自然。
→ 判定結果: 形式主語への書き換えが望ましい

例3: The new technology has made it possible to communicate instantly across the globe.
→ 形式目的語構文。S=The new technology, V=has made, O=it(形式), C=possible, 真目的語=to communicate instantly across the globe。SVOC構文で形式目的語が使用されている。”possible”という評価の後に焦点が配置され、末尾焦点の原則に適合。
→ 判定結果: 形式目的語が適切(SVOC構文・真目的語が長い新情報)

例4: I think it strange that nobody objected to the proposal.
→ SVOC構文。S=I, V=think, O=it(形式), C=strange, 真目的語=that nobody objected to the proposal。評価”strange”の後にthat節が文末焦点として配置されている。
→ 判定結果: 形式目的語が適切

以上により、形式主語・形式目的語構文の語用論的動機を理解し、末尾焦点の原則に基づいて形式構文の使用を適切に判断する能力が可能になる。

談話:代名詞による文章の結束性

一文の中で代名詞の種類を識別し、先行詞を特定し、適切な代名詞を選択する能力が確立されたとしても、複数の文・複数の段落にわたって代名詞の照応連鎖を追跡できなければ、長文読解で段落全体の論理展開を正確に把握することはできない。英文を読むとき、段落の冒頭に”They”が出現した場合、前段落のどの名詞句を受けているかを即座に判定できるかどうかが読解の精度を左右する。複数文にわたる代名詞の照応連鎖を追跡し、段落全体の指示関係を正確に把握できることが、本層の到達目標である。語用層で確立した代名詞の選択基準と、意味層で確立した先行詞の同定能力を備えている必要がある。照応連鎖の追跡手順、段落間での代名詞の指示対象の変化の把握、入試読解問題での代名詞の指示内容特定技法を扱う。本層で確立した能力は、入試において長文読解の代名詞指示問題や内容一致問題で正確な判断を行う力として発揮される。

【関連項目】

[基盤 M50-談話]
└ 動詞の時制の一貫性が段落の統一性にどう寄与するかを確認する

[基盤 M54-談話]
└ 動詞の展開パターンが論理展開にどう関わるかを理解する

1. 照応連鎖の追跡

段落を読む際、同一の人物・事物が複数の代名詞形式で繰り返し言及されることがある。最初に名詞句で導入され、次文で”he”、その次で”his”、さらに”him”と形を変えながら同一の指示対象を維持する。この一連の照応を「照応連鎖」と呼ぶ。照応連鎖を正確に追跡できる能力が確立されることで、長文読解において登場人物や主要概念の指示対象を見失わずに段落全体の意味を把握できるようになる。

1.1. 照応連鎖の構造と追跡手順

一般に代名詞の先行詞は「直前の文の名詞」と理解されがちである。しかし、この理解は照応連鎖が複数の文にわたって形成される場合に先行詞を見失うという点で不正確である。学術的・本質的には、照応連鎖とは「同一の指示対象が談話の進行に伴って名詞句→代名詞→代名詞→…と形式を変えながら維持される一連の照応関係」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、照応連鎖を追跡するには個々の代名詞の先行詞を一文ずつ同定するだけでなく、談話全体を通して指示対象の連続性を把握する必要があるためである。

照応連鎖は通常、名詞句による導入(最初の言及)→代名詞による維持(同一指示対象の継続的言及)→名詞句による再導入(指示対象の変更後や長い挿入後)という三段階のサイクルで構成される。指示対象が変更されるとき、新たな名詞句が導入され、それまでの照応連鎖が断絶して新たな連鎖が始まる。この「導入→維持→再導入」のパターンを認識することで、複数の指示対象が交差する複雑な文章でも各代名詞の指示対象を正確に追跡できる。

入試の長文読解では、同一段落内に複数の照応連鎖が並行して進行する場合が多く、連鎖の切り替わりポイントを見逃すと指示対象を混同する危険がある。照応連鎖の切り替わりは、新たな名詞句の出現、接続表現の変化(”However”や”Meanwhile”等)、文の主語の交替といった手がかりから検出できる。これらの手がかりを意識的に探すことが、照応連鎖の追跡精度を向上させる。さらに、照応連鎖の追跡は内容一致問題にも直結する。「筆者の主張」を問う設問では、筆者を指す代名詞の連鎖を正確に追い、その連鎖に属する述語の内容を統合する必要がある。連鎖の混同は誤った主張の帰属を引き起こす。

この原理から、照応連鎖を追跡する具体的な手順が導かれる。手順1では名詞句による導入を識別する。段落の冒頭や新しい指示対象が導入される箇所では名詞句が使われる。この名詞句が照応連鎖の起点であり、後続の代名詞の先行詞となる。手順2では代名詞による維持を追跡する。導入された名詞句と一致条件を満たす代名詞が連続する限り、同一の照応連鎖が維持されていると判定する。格形が変わっても(he→his→him)、指示対象は同一である。手順3では連鎖の断絶と再導入を検出する。新たな名詞句が出現した場合、既存の照応連鎖が断絶し新たな連鎖が開始された可能性がある。新名詞句と代名詞の一致条件を改めて確認し、各代名詞がどの連鎖に属するかを再判定する。

例1:
Professor Williams published a groundbreaking study. He argued that traditional methods were insufficient. His colleagues, however, disagreed with him. They presented counter-evidence at the conference.
→ 照応連鎖A: Professor Williams(導入)→ He(維持)→ His(維持)→ him(維持)。連鎖B: His colleagues(導入)→ They(維持)。”They”は”His colleagues”を受ける新しい連鎖。
→ 判定結果: 2つの照応連鎖が並行。“He/His/him”=Professor Williams、“They”=His colleagues。

例2:
The company launched a new product. It received positive reviews. However, the CEO announced that she would resign. She cited personal reasons.
→ 照応連鎖A: a new product(導入)→ It(維持)。連鎖B: the CEO(導入)→ she(維持)→ She(維持)。”It”と”she”は異なる連鎖に属し、指示対象が異なる。
→ 判定結果: “It”=a new product、“she/She”=the CEO。連鎖の切り替わりは”However”の後。

例3:
The researchers analyzed the data carefully. They found significant patterns. These patterns suggested a new hypothesis. It challenged the existing framework.
→ 照応連鎖A: The researchers(導入)→ They(維持)。連鎖B: significant patterns(導入)→ These patterns(再導入・名詞句で明確化)。連鎖C: a new hypothesis(導入)→ It(維持)。”It”は”a new hypothesis”を受ける。
→ 判定結果: 3つの連鎖。“They”=researchers、“These patterns”=significant patterns、“It”=a new hypothesis。

例4:
Maria sent a letter to her sister. She thanked her for the gift. It had arrived just in time for the birthday.
→ “She”は誰か。”Maria”と”her sister”はどちらも3人称・単数・女性。統語的傾向から主語”Maria”が優勢。”her”は”Maria”以外の女性→“her sister”。”It”は”the gift”を受ける。
→ 判定結果: She=Maria(主語の照応連鎖の維持)、her=her sister、It=the gift。

以上の適用を通じて、複数の照応連鎖が並行する文章でも「導入→維持→再導入」のパターンを手がかりに各代名詞の指示対象を正確に追跡する能力を習得できる。

2. 段落間での指示対象の移行

段落が変わると話題が転換し、代名詞の指示対象も変化する場合がある。第1段落で”They”が「研究者たち」を指していたのに、第2段落では同じ”They”が「批判者たち」を指すといった事態は長文読解で頻繁に起こる。段落の境界における指示対象の移行を検出する能力が確立されることで、段落ごとの論理展開を正確に把握し、内容一致問題で誤答を防ぐことができるようになる。

2.1. 段落境界における照応の処理

段落の境界は照応連鎖のリセットポイントとなりうる。「同一段落内の名詞」だけを先行詞の候補とする理解では、段落をまたぐ照応が存在する場合や、段落の境界で指示対象が切り替わる場合の検出に失敗する。学術的・本質的には、段落の境界は照応連鎖のリセットポイントとなりうる箇所であり、「新段落の冒頭で名詞句が再導入されていれば新しい照応連鎖の開始、代名詞で始まっていれば前段落からの連鎖の継続」として判定されるべきものである。この判定が重要なのは、段落の冒頭で代名詞が使われた場合、前段落のどの名詞句を受けているかの判断が読解の正否を左右するためである。

段落間の照応には三つのパターンがある。第一に「連続パターン」(前段落の主題がそのまま新段落に引き継がれる場合)。第二に「転換パターン」(新段落で新しい名詞句が導入され、話題が変わる場合)。第三に「対比パターン」(前段落の話題と対比的な新しい話題が導入される場合)。接続表現(However, In contrast, Furthermore等)は転換やパターンの変化を示す手がかりとなる。入試の長文読解問題では、段落の冒頭に置かれた代名詞の指示対象を問う設問が高い正答率の差を生む。段落境界のパターン判定を意識的に行う習慣があれば、こうした設問に体系的に対処できる。

さらに、段落間の照応パターンの判定は、文章全体の論理構造の把握にも寄与する。連続パターンが続く段落群は同一の論点を深化させており、転換パターンや対比パターンが出現する箇所は論点の切り替わりを示す。この情報は、段落整序問題や要約問題でも有効な手がかりとなる。

では、段落境界での指示対象の移行を検出するにはどうすればよいか。手順1では新段落の冒頭表現を確認する。名詞句で始まっていれば新しい指示対象の導入(転換パターン)、代名詞で始まっていれば前段落からの連鎖の継続(連続パターン)の候補である。手順2では接続表現を手がかりにする。”However / On the other hand / In contrast”があれば対比パターンの可能性が高く、”Furthermore / Moreover / In addition”があれば連続パターンの可能性が高い。手順3では一致条件と文脈で最終確定する。代名詞の数・性・人称を確認し、前段落の名詞句のうち一致条件を満たすものを候補とし、新段落の文脈的妥当性を検証して先行詞を確定する。

例1:
[段落1] The government introduced a new tax policy. It aimed to reduce income inequality.
[段落2] However, critics argued that it would harm small businesses. They proposed alternative measures.
→ 段落2冒頭に”However”=対比パターン。段落2の”it”は段落1の”a new tax policy”を受ける(連続)。“They”は段落2で新たに導入された”critics”を受ける(転換)。
→ 判定結果: 段落2の”it”=a new tax policy(連続)、“They”=critics(転換)

例2:
[段落1] The first study examined the effects of sleep on memory. The researchers found a positive correlation.
[段落2] The second study focused on the relationship between exercise and cognition. Its results were equally significant.
→ 段落2冒頭に名詞句”The second study”=転換パターン。段落2の”Its”は”The second study”を受ける(新しい連鎖)。
→ 判定結果: “Its”=The second study。前段落の”The first study”ではない。

例3:
[段落1] Many students struggle with grammar. They often memorize rules without understanding.
[段落2] They also fail to apply grammatical knowledge to reading comprehension.
→ 段落2冒頭に代名詞”They”=連続パターン。接続表現”also”が連続を示す。段落1の”Many students”を受ける。
→ 判定結果: “They”=Many students(前段落からの照応連鎖が継続)

例4:
[段落1] The company invested heavily in renewable energy. It expected long-term returns.
[段落2] Meanwhile, its competitors focused on traditional energy sources. They were skeptical of the transition.
→ 段落2冒頭に”Meanwhile”=対比パターン。”its”は段落1の”The company”を受ける(所有格で連鎖を維持しつつ新しい指示対象”competitors”を導入)。”They”は”its competitors”を受ける。
→ 判定結果: “its”=The company、“They”=its competitors。照応連鎖の切り替わりポイントが段落境界にある。

以上により、段落の境界で照応連鎖がどのように維持・転換・対比されるかを体系的に判定し、長文読解において代名詞の指示対象を正確に特定する能力が可能になる。

3. 入試読解における代名詞の指示内容特定

入試の長文読解では「下線部の代名詞が指す内容を日本語で答えよ」「”it”が指すものを本文中から抜き出せ」といった設問が頻出する。統語層・意味層・語用層・談話層で確立した能力を統合的に運用し、実際の入試形式に対応する方法を確立する。

3.1. 入試における代名詞指示問題の解法手順

入試の代名詞指示問題は「前の文を読めばわかる」と素朴に理解されがちであるが、実際に出題される問題は、単純な直前照応ではなく、複数文にわたる照応連鎖の追跡、指示代名詞による前文内容の要約、形式主語と照応の区別を問う高度な判断を要求する。学術的・本質的には、入試の代名詞指示問題は「形式的一致条件による候補の限定→統語的・談話的手がかりによる優先判定→意味的整合性による最終確定」という三段階の判断プロセスを体系的に適用する能力を測るものとして位置づけられるべきものである。この体系的アプローチが重要なのは、直感的に「何となくこれだろう」と推測するだけでは、出題者が意図した巧妙な誤答誘導に対処できないためである。

入試の代名詞指示問題には主に三つの出題パターンがある。第一に「人称代名詞の先行詞特定」(”he / she / they”が指す人物の特定)。第二に「”it / this / that”の指示内容特定」(名詞句を指す場合と前文の命題全体を指す場合の区別)。第三に「形式主語の”it”と照応の”it”の区別」である。出題者は第二のパターンを特に好む傾向がある。”this”や”that”が前文の特定の名詞句ではなく、前文の命題全体や前段落で述べた議論全体を指す場合、解答には命題を要約する力が求められるからである。この種の問題では、代名詞の先行詞として特定の名詞句を抜き出すのではなく、命題の内容を日本語で端的にまとめる記述力が問われる。

さらに、入試では”it”が同一文章中で異なる用法で複数回出現するケースも多い。第1段落の”it”が照応、第2段落の”it”が形式主語、第3段落の”it”が非人称というように、同一語形が文脈によって異なる機能を果たす場合、各出現箇所で用法を判定し直す必要がある。この判定を怠ると、形式主語の”it”に対して先行詞を探し続けるという無駄な作業が発生し、時間を浪費する。

上記の定義から、入試の代名詞指示問題を解く手順が論理的に導出される。手順1では代名詞の種類と用法を判定する。”it”であれば照応・形式主語・形式目的語・非人称のいずれかを意味層の手順で判定する。形式主語・非人称であれば「指示対象なし」と回答できる。手順2では一致条件と照応連鎖を確認する。照応の代名詞であれば、数・性・人称の一致条件を確認し、先行文脈の名詞句から候補を絞り込む。必要に応じて談話層の照応連鎖追跡手順を適用する。手順3では解答の形式を整える。「日本語で答えよ」の場合は先行詞の内容を日本語で的確に表現する。「本文中から抜き出せ」の場合は先行詞となる名詞句をそのまま抜き出す。”this / that”が前文の命題全体を指す場合は、命題の内容を要約して記述する。

例1: [入試形式] 下線部”it”が指す内容を日本語で答えよ。
The experiment produced unexpected results. It contradicted the prevailing theory.
→ 手順1: “It”の後に”contradicted”(動詞)→照応の”it”。形式主語の構造ではない。手順2: “It”は3人称・単数・中性。候補は”The experiment”(単数)と”unexpected results”(複数)。一致条件(単数)から”The experiment”が候補。意味検証:「実験が支配的理論に矛盾した」=整合的。手順3: 解答「(その)実験」。
→ 判定結果: it=The experiment。解答例:「その実験」

例2: [入試形式] 下線部”This”が指す内容を30字以内の日本語で答えよ。
The population of the city doubled in just ten years. This put enormous pressure on public services.
→ 手順1: “This”は指示代名詞(直後に名詞なし)。手順2: “This”は前文全体の命題を指す。“the population”(単数名詞)も候補だが、「人口が公共サービスに圧力をかけた」よりも「都市の人口が10年で倍増したこと」が公共サービスへの圧力の原因として文脈に適合する。手順3: 命題全体を要約。
→ 判定結果: This=前文の命題全体。解答例:「その都市の人口がわずか10年で倍増したこと」(24字)

例3: [入試形式] 下線部”them”が指すものを本文中から抜き出せ。
Several environmental organizations opposed the construction plan. The government ignored them and proceeded with the project.
→ 手順1: “them”は人称代名詞・目的格。手順2: 3人称・複数。候補は”Several environmental organizations”(複数)。”the construction plan”は単数で不一致。手順3: 名詞句を抜き出し。
→ 判定結果: them=Several environmental organizations

例4: [入試形式] 下線部”it”は何を指すか。形式主語か照応かを判定し、理由を述べよ。
It is often said that practice makes perfect. But it may not always be true.
→ 第1文の”It”は”is often said that…“=形式主語構文。指示対象なし。第2文の”it”は”that practice makes perfect”(前文のthat節の内容)を受ける照応の”it”。「練習すれば完璧になるということが常に正しいとは限らない」。
→ 判定結果: 第1文”It”=形式主語(真主語はthat節)。第2文”it”=前文の命題「練習すれば完璧になるということ」。

以上により、入試の代名詞指示問題に対して、代名詞の種類判定・一致条件の適用・照応連鎖の追跡・解答形式の整備という四段階の手順を体系的に適用し、正確に解答する能力が可能になる。

このモジュールのまとめ

このモジュールでは、代名詞の形態的分類という統語層の理解から出発し、意味層における先行詞の同定、語用層における文脈に応じた代名詞の選択、談話層における複数文にわたる照応連鎖の追跡という四つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層の種類識別が意味層の先行詞特定を可能にし、意味層の先行詞特定が語用層の代名詞選択を支え、語用層の選択基準が談話層の照応連鎖追跡を実現するという階層的な関係にある。

統語層では、人称代名詞の格変化体系、指示代名詞と指示形容詞の区別、疑問代名詞と関係代名詞の識別、再帰代名詞の再帰用法と強調用法の区別、不定代名詞の体系的分類という五つの側面から、代名詞を正確に識別する能力を確立した。文中の統語的位置から格形を判定する手順、先行詞の有無から疑問代名詞と関係代名詞を区別する手順、削除テストによって再帰用法と強調用法を区別する手順を習得した。

意味層では、先行詞との一致条件による候補の限定、”it”の四つの用法の判定、曖昧な照応の解消、不定代名詞の指示範囲の確定という四つの側面から、代名詞の指示対象を正確に同定する能力を確立した。数・性・人称の一致条件を手がかりに候補を絞り込み、統語的傾向と意味的整合性によって先行詞を最終確定する手順を習得した。

語用層では、代名詞と名詞句の使い分け基準、総称用法における代名詞の選択、形式主語・形式目的語の語用論的動機という三つの側面から、文脈に応じた代名詞の選択能力を確立した。情報の新旧・照応の曖昧性・文体の格式・末尾焦点の原則といった語用論的基準に基づいて、適切な代名詞表現を選択する判断力を習得した。

談話層では、照応連鎖の追跡、段落間での指示対象の移行の検出、入試読解における代名詞指示問題の解法という三つの側面から、複数文にわたる照応関係を正確に把握する能力を確立した。「導入→維持→再導入」のパターンを認識し、段落境界での連続・転換・対比パターンを判定する手順を習得した。

これらの能力を統合することで、複合的な修飾構造や複数の照応連鎖を含む英文に出現するあらゆる代名詞を正確に識別し、先行詞を特定し、文脈に応じた適切な代名詞を選択し、長文全体の照応関係を追跡することが可能になる。このモジュールで確立した原理と技術は、後続のモジュールで学ぶ関係詞の体系的理解、文間の結束性分析、さらにはパラグラフの構造的把握の基盤となる。

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