【基盤 英語】モジュール10:句の定義と種類
英文を読む際、個々の単語の意味を順につなげていく読み方では、修飾語が複数重なった瞬間に文の構造を見失う。”The boy with a red hat on the bench”という表現に出会ったとき、”with a red hat”と”on the bench”がそれぞれ何を修飾しているのかを判断できなければ、「赤い帽子をかぶった少年がベンチにいる」のか「ベンチの上の赤い帽子を持った少年」なのかを区別できない。この問題は、単語よりも大きく文よりも小さい単位である「句」の構造を正確に把握することで解消される。句の定義と種類を理解することは、文型判定や修飾関係の分析といった統語的処理の出発点であり、英文の構造を正確に読み解くための不可欠な能力である。
本モジュールは以下の層で構成される:
統語:文法的構造の理解
句がどのような内部構造を持ち、文中でどのような位置に現れるかを分析する能力を養成する。句の定義を正確に把握し、名詞句・形容詞句・副詞句・前置詞句の各種類を識別するための判断手順を確立することで、複数の修飾要素を含む英文であっても構造を見失わない力を確立する。
意味:語句の意味関係の把握
句の種類を識別した上で、その句が文中で担う意味的役割を判断する能力を養成する。同じ前置詞句であっても場所を示す場合と手段を示す場合では文の意味が異なるように、句の意味的機能を文脈に即して判断する力を扱う。
語用:文脈における機能の理解
句の選択が伝達上の効果にどう関わるかを把握する能力を養成する。同じ内容を表す場合でも句の配置や選択によって強調点が変わることを理解し、書き手の意図を読み取る力を確立する。
談話:文章全体の構造の把握
複数の文にまたがって句がどのように情報を接続し、文章の流れを形成するかを分析する能力を養成する。句レベルの理解を段落・文章レベルの読解に統合する力を扱う。
このモジュールを修了すると、英文中に現れる句の種類を正確に識別し、その句が文中で果たす統語的機能を判定できるようになる。初見の英文で複数の前置詞句や分詞句が連続する場面に遭遇しても、各句の内部構造と修飾先を特定して文の骨格を把握する力が身につく。さらに、句の意味的役割を文脈に照らして判断し、文章全体の論理構造を追跡する能力へと発展させることができる。
統語:文法的構造の理解
英文を読むとき、単語の意味を前から順につなげる読み方では、修飾語が複雑になった瞬間に破綻する。”The student sitting in the front row of the lecture hall”のような表現で、どこまでが一つのまとまりなのかを判断できなければ、文全体の構造を正確に把握することは不可能である。統語層を終えると、句の内部構造を分析し、文中での統語的機能(主語・目的語・修飾語など)を正確に判定できるようになる。品詞の名称と基本機能が頭に入っていれば、ここから先の分析に進める。句の定義、句の種類の識別、句の文中機能の判定を扱う。統語層で確立される句の識別能力がなければ、意味層以降で語句の意味関係を分析する際に、修飾先を見誤るといった問題が頻発する。
【関連項目】
[基盤 M13-統語]
└ 5文型の判定において句がどの文の要素として機能するかを確認する
[基盤 M14-統語]
└ 文の要素の識別における句の役割を理解する
[基盤 M07-統語]
└ 前置詞句の内部構造と文中機能の関係を把握する
【基礎体系】
[基礎 M01-統語]
└ 句の概念を文型判定と統合的に運用する力を深める
1. 句の定義と文における役割
句を学ぶ際、「2語以上のまとまり」という説明だけで十分だろうか。実際の英文では、”in the morning”のような短い表現から”the tall boy standing near the old building”のような長い表現まで、さまざまな長さの語のまとまりが現れる。句の定義が不十分なまま英文に取り組むと、どこからどこまでが一つのまとまりなのかを判断できず、文の構造を誤って把握する結果となる。
句の正確な定義を理解することで、以下の能力が確立される。第一に、句と単独の語の違いを明確に区別できるようになる。第二に、句と節の違いを正確に判定できるようになる。第三に、文中のどの語のまとまりが句を形成しているかを特定できるようになる。第四に、句が文中で果たす役割(主語・目的語・修飾語など)を判断できるようになる。句の定義の理解は、次の記事で扱う句の種類の識別、さらに文型判定へと直結する。
1.1. 句の定義と節との区別
一般に句は「2語以上のまとまり」と漠然と理解されがちである。しかし、この理解は句と節の違いを説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、句とは「主語と述語動詞の関係を内部に持たない、2語以上の語のまとまり」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、主語と述語動詞の関係を内部に持つまとまりは「節」に分類され、句とは異なる統語的単位として扱われるためである。“in the park”は前置詞と名詞のまとまりであり内部に主語・述語動詞の関係を持たないため句である。一方、“because he was tired”は”he”(主語)と”was”(述語動詞)の関係を内部に持つため節である。この区別を正確に行えることが、文の構造分析の第一歩となる。
ここで「述語動詞」の判定基準を明確にしておく必要がある。述語動詞とは、時制変化を持つ動詞、すなわち現在形・過去形・助動詞を伴う形で文の述部を構成する動詞である。これに対し、現在分詞(-ing形)と過去分詞(-ed形)は、助動詞を伴わず単独で現れる場合には述語動詞とはならない。例えば、”is running”の”running”は助動詞”is”を伴っているため述語動詞の一部(進行形)だが、”the boy running in the park”の”running”は助動詞を伴わないため述語動詞ではなく分詞である。この判定は句と節を区別する際の最も重要な基準となる。また、不定詞(to+動詞原形)も述語動詞にはならないため、不定詞を含むまとまりも原則として句に分類される。受験生が最も混乱しやすいのがこの「述語動詞か否か」の判定であり、助動詞の有無を確認するという一点に集中することで誤りを防止できる。
この原理から、あるまとまりが句であるか節であるかを判定する具体的な手順が導かれる。手順1では、語のまとまりを特定する。文中で意味的に一体となって機能している2語以上の連続を見つけることで、分析対象を確定できる。手順2では、そのまとまりの内部に述語動詞があるかを確認する。時制変化を持つ動詞(is, was, runs, studied など)が含まれているかを検査することで、述語動詞の有無を判定できる。手順3では、述語動詞がなければ句、述語動詞とその主語があれば節と判定する。この最終判定により、句と節を正確に区別できる。
例1: on the table
→ 内部の語:on(前置詞)+ the table(名詞)。述語動詞なし。
→ 判定:句(前置詞句)
例2: the boy running in the park
→ 内部の語:the boy + running + in the park。runningは現在分詞であり、助動詞を伴わないため述語動詞ではない。
→ 判定:句(名詞句。runningは分詞として名詞を修飾)
例3: when she arrived
→ 内部の語:when + she(主語)+ arrived(過去形の述語動詞)。主語と述語動詞の関係が成立。
→ 判定:節(副詞節)
例4: with great care
→ 内部の語:with(前置詞)+ great(形容詞)+ care(名詞)。述語動詞なし。
→ 判定:句(前置詞句)
例5: the document signed by the director
→ 内部の語:the document + signed + by the director。signedは過去分詞であり、助動詞を伴わないため述語動詞ではない。
→ 判定:句(名詞句。signedは分詞として名詞を修飾)。”was signed”であれば受動態の述語動詞となり節の一部になるが、ここでは助動詞がないため句である。
例6: to finish the assignment before the deadline
→ 内部の語:to finish + the assignment + before the deadline。finishは不定詞であり述語動詞ではない。
→ 判定:句(不定詞句)。不定詞は時制変化を持たないため述語動詞にはならない。
以上により、英文中の語のまとまりが句であるか節であるかを、述語動詞と主語の有無に基づいて正確に判定することが可能になる。
2. 句の種類と識別基準
句の定義を理解した上で、「句にはどのような種類があるか」という問いに正確に答えられるだろうか。英文中に現れる句は、その内部構造の中心となる語の品詞によって分類される。句の種類を識別できなければ、その句が文中でどのような機能を果たしているかを判断できず、文型の判定や修飾関係の分析に支障をきたす。
句の種類の識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、名詞句・形容詞句・副詞句・前置詞句の4種類を正確に区別できるようになる。第二に、各句の内部構造を分析して中心語を特定できるようになる。第三に、句の種類から文中での機能(主語になれるか、修飾語として働くかなど)を予測できるようになる。まず名詞句と前置詞句の識別基準を確立し、その上で形容詞句と副詞句の識別へと進む。
2.1. 名詞句と前置詞句の識別
名詞句とは何か。「名詞を含むまとまり」という回答は、前置詞句の中にも名詞が含まれる(“in the park”の”the park”)ことを考慮すると、名詞句と前置詞句の区別がつかないという点で不十分である。学術的・本質的には、名詞句とは「名詞を中心語(head)とし、その名詞を限定・修飾する語が付随したまとまり」として定義されるべきものである。一方、前置詞句とは「前置詞を先頭に置き、その後に名詞句が続くまとまり」である。この区別が重要なのは、名詞句は文中で主語・目的語・補語になれるのに対し、前置詞句は原則として修飾語(形容詞的または副詞的)として機能するという、文中での役割の違いに直結するためである。
名詞句の中心語(head)という概念をさらに明確にしておく。中心語とは、修飾語をすべて取り除いても句の本質的な意味が失われない語、すなわち句の文法的性質を決定する語のことである。”the beautiful old house on the hill”という名詞句では、“the”(冠詞)、“beautiful”(形容詞)、“old”(形容詞)、“on the hill”(前置詞句)をすべて取り除くと”house”が残る。この”house”が中心語であり、名詞句全体が名詞として機能する根拠となっている。前置詞句”on the hill”の中にも名詞句”the hill”が含まれているが、前置詞句全体としては前置詞”on”が先頭に立つため、名詞句としてではなく前置詞句として分類される。この「先頭語による分類」と「中心語による機能の決定」を組み合わせることが、句の種類の識別における核心的な判断基準である。
この原理から、名詞句と前置詞句を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では、まとまりの先頭語を確認する。先頭が前置詞(in, on, at, with, of, for, by, to など)であれば前置詞句と判定できる。手順2では、前置詞で始まらないまとまりについて、中心語が名詞であるかを確認する。冠詞(a, the)・所有格(my, his)・形容詞が名詞の前に置かれているパターンを認識することで、名詞句を特定できる。手順3では、特定した名詞句が文中でどの位置にあるかを確認する。動詞の前にあれば主語、動詞の後にあれば目的語または補語として機能している可能性が高いと判断できる。
例1: the red car
→ 先頭語:the(冠詞)。前置詞ではない。中心語:car(名詞)。
→ 判定:名詞句。文中で主語・目的語・補語になりうる。
例2: in the red car
→ 先頭語:in(前置詞)。前置詞で始まるまとまり。
→ 判定:前置詞句。文中で修飾語として機能する。
例3: my younger brother
→ 先頭語:my(所有格)。前置詞ではない。中心語:brother(名詞)。
→ 判定:名詞句。
例4: of my younger brother
→ 先頭語:of(前置詞)。前置詞で始まるまとまり。
→ 判定:前置詞句。直前の名詞を修飾する形容詞的機能を持つ。
例5: the beautiful old house on the hill
→ 先頭語:the(冠詞)。前置詞ではない。中心語:house(名詞)。”on the hill”は内部の前置詞句でhouseを修飾。
→ 判定:名詞句(内部に前置詞句を含む名詞句)。
例6: a friend of mine from high school
→ 先頭語:a(冠詞)。前置詞ではない。中心語:friend(名詞)。”of mine”と”from high school”はいずれも前置詞句でfriendを修飾。
→ 判定:名詞句(内部に2つの前置詞句を含む名詞句)。
以上により、まとまりの先頭語と中心語を確認することで、名詞句と前置詞句を正確に区別し、文中での機能を予測することが可能になる。
2.2. 形容詞句と副詞句の識別
形容詞句と副詞句には二つの捉え方がある。一つは「どちらも修飾語句である」という共通点に着目する捉え方であり、もう一つは「修飾先が異なる」という相違点に着目する捉え方である。前者だけでは両者を区別できないため、後者の視点が不可欠となる。学術的・本質的には、形容詞句とは「形容詞を中心語とし、名詞を修飾するか補語として機能するまとまり」であり、副詞句とは「副詞を中心語とし、動詞・形容詞・副詞・文全体を修飾するまとまり」として定義されるべきものである。この区別が重要なのは、修飾先が名詞であるか名詞以外であるかによって、句の種類と文中での役割が決定されるためである。
ここで注意すべきは、前置詞句が形容詞句的にも副詞句的にも機能する点である。前置詞句は、名詞を修飾する場合は形容詞的に機能し、動詞・形容詞・文全体を修飾する場合は副詞的に機能する。”the book on the shelf”では”on the shelf”は名詞bookを修飾しているため形容詞的機能であり、”She spoke with confidence.”では”with confidence”は動詞spokeを修飾しているため副詞的機能である。つまり、前置詞句の機能を判定するには、まず修飾先を特定する必要がある。入試問題では、前置詞句が名詞を修飾しているのか動詞を修飾しているのかの判断が問われることが非常に多いため、この点は極めて実践的な重要性を持つ。
この原理から、形容詞句と副詞句を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では、当該の句が何を修飾しているかを特定する。句の直前または直後にある語を確認し、修飾の対象を特定することで、分析の起点を確定できる。手順2では、修飾先が名詞であるかを判定する。修飾先が名詞であれば形容詞的機能、名詞以外(動詞・形容詞・文全体)であれば副詞的機能と判定できる。手順3では、前置詞句の場合は位置と文脈から修飾先を確定する。名詞の直後に置かれた前置詞句は形容詞的、動詞の後や文頭・文末に置かれた前置詞句は副詞的に機能していることが多いと判断できる。
例1: very tall
→ 中心語:tall(形容詞)。veryが程度を示す。修飾先:名詞(例:”a very tall building”のbuilding)。
→ 判定:形容詞句
例2: quite slowly
→ 中心語:slowly(副詞)。quiteが程度を示す。修飾先:動詞(例:”He walked quite slowly.”のwalked)。
→ 判定:副詞句
例3: the book on the shelf
→ “on the shelf”は前置詞句。直前の名詞bookを修飾している。
→ 判定:形容詞的に機能する前置詞句
例4: She spoke with confidence.
→ “with confidence”は前置詞句。動詞spokeを修飾している(「自信を持って話した」)。
→ 判定:副詞的に機能する前置詞句
例5: The children, extremely tired after the long hike, fell asleep immediately.
→ “extremely tired after the long hike”は形容詞句(中心語:tired)。主語The childrenを修飾(補語的)。内部の”after the long hike”は前置詞句で形容詞tiredの原因を限定(副詞的)。
→ 判定:形容詞句(内部に副詞的前置詞句を含む)
例6: He arrived early in the morning.
→ “early”は副詞。”in the morning”は前置詞句で時間を示し、動詞arrivedを修飾(副詞的)。”early”も”in the morning”も副詞的に動詞を修飾しているが、”early in the morning”全体で一つの副詞句として機能しているとも解釈できる。
→ 判定:副詞的要素の組み合わせ
以上により、修飾先が名詞であるか名詞以外であるかを基準として、形容詞句・副詞句・前置詞句の形容詞的用法と副詞的用法を正確に識別することが可能になる。
3. 句の文中機能と文構造への統合
句の定義と種類を理解した上で、「その句は文中でどのような役割を果たしているか」を判断できるだろうか。実際の英文では、一つの文に複数の句が含まれ、それぞれが主語・目的語・補語・修飾語のいずれかとして機能している。句の文中機能を正確に判定できなければ、文型の判定に誤りが生じ、文全体の意味を取り違える結果となる。
句の文中機能の判定能力によって、以下の能力が確立される。第一に、名詞句が主語・目的語・補語のいずれとして機能しているかを特定できるようになる。第二に、前置詞句や形容詞句が文中のどの語を修飾しているかを正確に判断できるようになる。第三に、複数の句を含む文であっても文の骨格(主語・述語動詞・目的語)を見失わずに把握できるようになる。句の文中機能の判定は、5文型の識別や、後続の意味層における語句間の意味関係の分析に直接活用される。
3.1. 句の文中機能の判定手順
句の文中機能とは何か。句は文中のある特定の位置を占めることで、特定の文法的役割を果たす。名詞句は述語動詞の前に置かれれば主語、述語動詞の後に置かれれば目的語または補語、前置詞の後に置かれれば前置詞の目的語となる。前置詞句は名詞の直後に置かれれば形容詞的修飾語、動詞の後や文頭・文末に置かれれば副詞的修飾語となる。この「句の種類×文中位置=文中機能」という対応関係を手順化することが、機械的な判断ミスを防止し、複雑な文の構造を一貫した精度で把握するための方法である。
よくある誤りとして、前置詞句の内部にある名詞を文の主語や目的語と誤認するパターンがある。”The rise of new technologies has changed our lives.”という文では、”of new technologies”は前置詞句であり、その内部の”new technologies”は前置詞ofの目的語であって文の主語ではない。文の主語はあくまで”The rise”という名詞句である。この誤りを防ぐためには、手順の順序を厳守すること、すなわち最初に述語動詞を特定し、その前にある最も近い名詞句を主語と判定するという順序を守ることが不可欠である。
この原理から、句の文中機能を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では、文中の述語動詞を特定する。時制変化を持つ動詞を見つけることで、文の骨格の中心を確定できる。手順2では、述語動詞の前にある名詞句を主語と判定する。「誰が・何が」に当たる名詞句を特定することで、主語を確定できる。手順3では、述語動詞の後にある名詞句・形容詞句を目的語または補語と判定し、前置詞句を修飾語と判定する。述語動詞が他動詞であれば後続の名詞句は目的語、be動詞や知覚動詞の後の名詞句・形容詞句は補語、前置詞句は修飾語として機能していると判断できる。
例1: The students in the library studied the material carefully.
→ 述語動詞:studied。主語:The students(名詞句)。”in the library”は前置詞句でstudentsを修飾(形容詞的)。目的語:the material(名詞句)。carefullyは副詞で動詞を修飾。
→ 骨格:Students (S) + studied (V) + material (O)
例2: A cup of coffee on the table was cold.
→ 述語動詞:was。主語:A cup of coffee(名詞句。”of coffee”は前置詞句でcupを修飾)。”on the table”は前置詞句でcupを修飾(形容詞的)。補語:cold(形容詞)。
→ 骨格:Cup (S) + was (V) + cold ©
→ 注意:”coffee”や”table”は前置詞句内の名詞であり、文の主語ではない。
例3: She put the book on the desk.
→ 述語動詞:put。主語:She。目的語:the book(名詞句)。”on the desk”は前置詞句で場所を示す(副詞的に動詞putを修飾)。
→ 骨格:She (S) + put (V) + book (O) + on the desk(修飾語)
例4: The woman with long hair gave her son a present.
→ 述語動詞:gave。主語:The woman(名詞句。”with long hair”は前置詞句でwomanを修飾)。間接目的語:her son(名詞句)。直接目的語:a present(名詞句)。
→ 骨格:Woman (S) + gave (V) + son (IO) + present (DO)
例5: The rise of new technologies has changed our lives dramatically.
→ 述語動詞:has changed。主語:The rise(名詞句。”of new technologies”は前置詞句でriseを修飾)。目的語:our lives(名詞句)。dramaticallyは副詞。
→ 骨格:Rise (S) + has changed (V) + lives (O)
→ 注意:technologiesは前置詞ofの目的語であり、文の主語ではない。hasの三人称単数形が主語The rise(単数)と一致していることからも確認できる。
例6: The results of the experiment conducted last month surprised everyone in the department.
→ 述語動詞:surprised。主語:The results(名詞句。”of the experiment”は前置詞句でresultsを修飾、”conducted last month”は分詞句でexperimentを修飾)。目的語:everyone(名詞句。”in the department”は前置詞句でeveryoneを修飾)。
→ 骨格:Results (S) + surprised (V) + everyone (O)
以上により、述語動詞を起点として各句の種類と位置を確認することで、複数の句を含む文であっても文の骨格を正確に把握し、各句の文中機能を判定することが可能になる。
4. 句の識別における注意点
句の定義・種類・文中機能の判定手順を学んだ上で、判断に迷いが生じやすい場面を把握しているだろうか。実際の入試問題では、前置詞句が連続して現れる文や、名詞句の内部に別の句が入り込んでいる文が頻出する。こうした場面で誤った判断をしないためには、典型的な紛らわしいパターンを事前に認識しておく必要がある。
句の識別における注意点を把握することで、以下の能力が確立される。第一に、前置詞句が連続する文でそれぞれの修飾先を正確に特定できるようになる。第二に、句の内部に別の句が埋め込まれている構造(句の入れ子)を分析できるようになる。第三に、句と節の境界が曖昧に見える場合に正確な判定ができるようになる。これらの注意点の理解は、基礎体系で扱う複合的な文構造の分析に直結する。
4.1. 前置詞句の連続と句の入れ子構造
一般に前置詞句が連続する文は「長くて難しい」と理解されがちである。しかし、この理解は前置詞句の連続が難しい原因を特定していないという点で不正確である。学術的・本質的には、前置詞句が連続する文の読解が困難になる原因は、各前置詞句の修飾先が異なりうる点にある。”the book on the shelf in the corner”では、”on the shelf”はbookを修飾し、”in the corner”はshelfを修飾している。このように、前置詞句は直前の名詞を修飾する場合が多いが、文脈によっては動詞を修飾する場合もあるため、修飾先の判定手順を明確にしておく必要がある。
入れ子構造について、視覚的に理解するための方法を補足する。入れ子構造とは、大きな句の内部にさらに小さな句が含まれ、その小さな句の内部にさらに別の句が含まれるという階層的な構造である。これは括弧を使って表現すると明瞭になる。”the picture of the sunset over the ocean”は[the picture [of [the sunset [over [the ocean]]]]]と表現できる。最も外側の括弧が名詞句全体を囲み、内側に入るほど下位の句を表す。この視覚化を行うことで、どの前置詞句がどの名詞を修飾しているかを一目で確認できる。入試本番でも、複雑な句構造に出会ったときに頭の中で括弧を想像する(あるいは問題用紙に括弧を書き込む)ことで、構造を正確に把握できるようになる。
この原理から、前置詞句の連続と句の入れ子構造を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では、各前置詞句を個別に括弧で囲んで分離する。前置詞から次の前置詞の直前まで(または文末まで)を一つの前置詞句として区切ることで、分析単位を明確にできる。手順2では、各前置詞句の修飾先を直前の名詞から順に検討する。前置詞句の意味(場所・所属・手段など)と直前の名詞の意味が整合するかを確認することで、修飾先を特定できる。手順3では、句の入れ子構造を把握する。大きな名詞句の内部に前置詞句が含まれ、さらにその前置詞句の内部に別の名詞句が含まれるという階層構造を認識することで、複雑な句の構造を正確に分析できる。
例1: the picture of the sunset over the ocean
→ 分離:the picture / [of the sunset] / [over the ocean]。”of the sunset”はpictureを修飾。”over the ocean”はsunsetを修飾。
→ 構造:[the picture [of [the sunset [over [the ocean]]]]](入れ子構造)
例2: She talked to the man with a briefcase at the station.
→ 分離:[to the man] / [with a briefcase] / [at the station]。”to the man”は動詞talkedを修飾。”with a briefcase”はmanを修飾。”at the station”は動詞talkedまたはmanを修飾(文脈で判断)。
→ 骨格:She (S) + talked (V)。前置詞句3つがそれぞれ異なる語を修飾。
例3: a letter from my friend in Canada
→ 分離:a letter / [from my friend] / [in Canada]。”from my friend”はletterを修飾。”in Canada”はfriendを修飾(「カナダにいる友人からの手紙」)。
→ 注意:”in Canada”がletterを修飾する読み(「カナダにある手紙」)も文法的には可能だが、意味的にはfriendを修飾する読みが自然。
例4: The report on the effects of pollution on marine life was published.
→ 分離:The report / [on the effects] / [of pollution] / [on marine life]。”on the effects”はreportを修飾。”of pollution”はeffectsを修飾。”on marine life”はeffectsまたはpollutionを修飾(文脈で判断。ここでは「海洋生物に対する汚染の影響」でeffectsを修飾)。
→ 骨格:Report (S) + was published (V)
例5: The announcement by the government of a new policy on environmental protection attracted widespread attention.
→ 分離:The announcement / [by the government] / [of a new policy] / [on environmental protection]。”by the government”はannouncementを修飾(動作主)。”of a new policy”はannouncementを修飾(内容)。”on environmental protection”はpolicyを修飾(主題)。
→ 構造:[The announcement [by the government] [of [a new policy [on environmental protection]]]]
→ 骨格:Announcement (S) + attracted (V) + attention (O)
例6: The development of techniques for the analysis of DNA in forensic science has revolutionized criminal investigations.
→ 分離:The development / [of techniques] / [for the analysis] / [of DNA] / [in forensic science]。”of techniques”はdevelopmentを修飾。”for the analysis”はtechniquesを修飾。”of DNA”はanalysisを修飾。”in forensic science”はanalysisまたはdevelopment全体を修飾。
→ 構造:[The development [of [techniques [for [the analysis [of DNA]]]]]] [in forensic science]
→ 骨格:Development (S) + has revolutionized (V) + investigations (O)
以上により、前置詞句を個別に分離した上で各句の修飾先を特定し、句の入れ子構造を階層的に把握することが可能になる。
5. 句の識別の体系的整理
これまでの4つの記事で学んだ句の定義・種類・文中機能・注意点を統合して運用できるだろうか。実際の英文読解では、これらの知識を個別に適用するのではなく、一連の判断手順として統合的に運用する必要がある。句の識別に関する知識が断片的なままでは、複数の句を含む文に出会うたびに判断に迷いが生じる。
句の識別に関する知識を体系的に整理することで、以下の能力が確立される。第一に、文中のすべての句を漏れなく特定し種類を判定できるようになる。第二に、各句の文中機能を一貫した手順で判定できるようになる。第三に、句の識別から文型判定へとスムーズに移行できるようになる。この体系的整理は、後続のモジュールで扱う節の識別や文型判定の前提となる。
5.1. 句の識別から文構造把握への統合手順
句の識別は、慣れによって自然にできるようになるものではない。初見の複雑な文に対して体系的に対処する手順を持たなければ、文の複雑さが増すにつれて判断の精度が低下する。学術的・本質的には、句の識別は、手順化された判断プロセスとして実行されるべきものである。手順を明確にすることで、文の複雑さに関わらず一貫した精度で構造を把握でき、判断の再現性が確保される。
ここで、統語層全体を通じて確立してきた手順を統合する。記事1で句と節の区別(述語動詞の有無)を、記事2で句の種類の識別(先頭語と中心語の確認)を、記事3で句の文中機能の判定(述語動詞を起点とした位置の確認)を、記事4で前置詞句の連続と入れ子構造の分析をそれぞれ学んだ。これらを統合すると、次のような一連の判断プロセスが成立する。まず文の述語動詞を特定し、次にその前後の語のまとまりを句か節か判定し、句と判定されたものの種類を特定し、最後にその文中機能を確定する。この一連のプロセスを「句の構造分析プロトコル」として定着させることが、統語層の最終目標である。
この原理から、句の識別を文構造の把握に統合する具体的な手順が導かれる。手順1では、文中の述語動詞を特定し、文の骨格の中心を確定する。時制変化を持つ動詞を見つけることで、分析の起点を設定できる。手順2では、述語動詞の前後にある語のまとまりについて、句であるか節であるかを判定する。内部に主語・述語動詞の関係があれば節、なければ句と判定できる。手順3では、句と判定されたまとまりについて、種類(名詞句・前置詞句・形容詞句・副詞句)を特定し、文中機能(主語・目的語・補語・修飾語)を確定する。句の種類と位置の対応関係に基づいて機能を判定することで、文全体の構造を体系的に把握できる。
例1: The young woman at the counter handed me a receipt for the purchase.
→ 述語動詞:handed。名詞句:“The young woman”(主語)、“me”(間接目的語)、“a receipt”(直接目的語)。前置詞句:“at the counter”(womanを修飾・形容詞的)、“for the purchase”(receiptを修飾・形容詞的)。
→ 骨格:Woman (S) + handed (V) + me (IO) + receipt (DO)
例2: During the summer, the children played in the park near their school.
→ 述語動詞:played。名詞句:“the children”(主語)。前置詞句:“During the summer”(playedを修飾・副詞的・時)、“in the park”(playedを修飾・副詞的・場所)、“near their school”(parkを修飾・形容詞的)。
→ 骨格:Children (S) + played (V)
例3: His explanation of the problem seemed very clear to everyone.
→ 述語動詞:seemed。名詞句:“His explanation”(主語)。前置詞句:“of the problem”(explanationを修飾・形容詞的)、“to everyone”(seemedまたはclearを修飾・副詞的)。形容詞句:“very clear”(補語)。
→ 骨格:Explanation (S) + seemed (V) + clear ©
例4: The teacher with glasses asked the students a question about the text.
→ 述語動詞:asked。名詞句:“The teacher”(主語)、“the students”(間接目的語)、“a question”(直接目的語)。前置詞句:“with glasses”(teacherを修飾・形容詞的)、“about the text”(questionを修飾・形容詞的)。
→ 骨格:Teacher (S) + asked (V) + students (IO) + question (DO)
例5: The proposal submitted by the committee for the improvement of public safety was approved unanimously by the board.
→ 述語動詞:was approved。主語:The proposal(名詞句。”submitted by the committee”は分詞句でproposalを修飾)。”for the improvement”は前置詞句でcommitteeまたはproposalを修飾。”of public safety”は前置詞句でimprovementを修飾。”unanimously”は副詞でwas approvedを修飾。”by the board”は前置詞句で動作主を示す。
→ 骨格:Proposal (S) + was approved (V)
例6: A significant increase in the number of students applying to medical schools across the country has been reported by several educational organizations.
→ 述語動詞:has been reported。主語:A significant increase(名詞句。”in the number”は前置詞句でincreaseを修飾、”of students”は前置詞句でnumberを修飾、”applying to medical schools”は分詞句でstudentsを修飾、”across the country”は前置詞句でmedical schoolsを修飾)。”by several educational organizations”は前置詞句で動作主を示す。
→ 骨格:Increase (S) + has been reported (V)
→ この例は前置詞句が5つ連続し、分詞句も含まれるが、述語動詞を起点として分析すれば骨格は明瞭である。
以上により、述語動詞の特定を起点として句の種類と文中機能を体系的に判定し、どれほど複数の句を含む文であっても文の骨格を正確に把握することが可能になる。
意味:語句の意味関係の把握
統語層で句の種類と文中機能を判定する力を確立した上で、次に問われるのは「その句が文中でどのような意味的役割を担っているか」である。”She cut the paper with scissors.”と”She cut the paper with a flower pattern.”はいずれも”with”で始まる前置詞句を含むが、前者の”with scissors”は手段を、後者の”with a flower pattern”は特徴を表しており、意味的役割は大きく異なる。意味層を終えると、句の種類を識別した上で、その句が文中で担う意味的役割(場所・時間・手段・原因・特徴など)を文脈に即して正確に判断できるようになる。統語層で確立した句の識別能力を前提とする。前置詞句の意味的役割の判定、名詞句の指示対象の特定、句の意味的あいまい性の解消を扱う。意味層で確立される句の意味的分析能力がなければ、語用層で書き手の意図を読み取る際に、句の選択が伝達上どのような効果を持つかを判断できない。
【関連項目】
[基盤 M07-意味]
└ 前置詞の基本的意味と句の意味的役割の関係を理解する
[基盤 M26-意味]
└ 多義語の処理方法を句の意味的判断に応用する
【基礎体系】
[基礎 M04-意味]
└ 前置詞の意味体系を原理的に理解し、句の意味分析を深める
1. 前置詞句の意味的役割の判定
句の統語的な種類を識別できるようになった上で、「同じ前置詞句でも文脈によって意味が異なる」場面に正確に対応できるだろうか。”at”一つをとっても、“at the station”(場所)、“at noon”(時間)、“at 60 km/h”(速度)のように異なる意味的役割を担う。前置詞句の意味的役割を判断できなければ、文の意味を正確に理解することは困難である。
前置詞句の意味的役割の判定能力によって、以下の能力が確立される。第一に、同じ前置詞を用いた句であっても文脈に応じて意味的役割を区別できるようになる。第二に、前置詞句が名詞を修飾しているのか動詞を修飾しているのかを意味的観点から判断できるようになる。第三に、前置詞句の意味的役割から文全体の意味を正確に組み立てられるようになる。前置詞句の意味的判定は、文脈からの語義推測や長文読解における情報の正確な把握に直結する。
1.1. 前置詞句の主要な意味的役割
一般に前置詞句の意味は「前置詞の意味を覚えれば分かる」と理解されがちである。しかし、この理解は同じ前置詞が文脈によって異なる意味的役割を果たすことを説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、前置詞句の意味的役割は、前置詞自体の意味と後続の名詞句の意味と文中の動詞・名詞との関係の三者によって決定されるべきものである。”with”は「所持・同伴」を基本意味とするが、”cut with scissors”では道具・手段を、”the girl with long hair”では特徴・属性を表す。この違いは前置詞の辞書的意味だけでは説明できず、文中の他の要素との意味的関係を考慮して初めて判定できる。
前置詞句が担う主要な意味的役割を整理しておく。場所(at the station, in the room, on the table)、時間(at noon, in the morning, on Monday)、手段・道具(with a pen, by train)、原因・理由(because of the rain, due to the delay)、目的(for the exam, for safety)、特徴・属性(with blue eyes, of great importance)、動作主(by the teacher)、同伴(with my friend)、材料(of wood, from cotton)などがある。重要なのは、同一の前置詞がこれらの複数の意味的役割を担いうる点である。”with”だけでも手段(with a knife)、同伴(with a friend)、特徴(with glasses)、付帯状況(with a smile)と少なくとも4つの役割がある。この多義性が前置詞句の意味的判定を困難にしているが、修飾先の動詞や名詞との意味的整合性を検証することで、適切な役割を絞り込むことができる。
この原理から、前置詞句の意味的役割を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では、前置詞句の修飾先を統語的に特定する。統語層で学んだ手順に従い、名詞を修飾しているか動詞を修飾しているかを確定することで、意味的判定の対象を絞り込める。手順2では、前置詞の基本的意味と後続名詞句の意味的特性を確認する。場所を表す名詞(station, park)であれば場所の役割、時間を表す名詞(noon, Monday)であれば時間の役割、道具を表す名詞(scissors, pen)であれば手段の役割である可能性が高いと判断できる。手順3では、修飾先の動詞または名詞との意味的整合性を検証する。手段の役割であれば動詞の動作を実現する道具として意味が通るか、特徴の役割であれば名詞の属性として意味が通るかを確認することで、意味的役割を確定できる。
例1: She wrote the letter with a pen.
→ “with a pen”の修飾先:動詞wrote。penは道具。wroteの動作をpenで実現する。
→ 意味的役割:手段(「ペンで手紙を書いた」)
例2: The man with a pen in his pocket smiled.
→ “with a pen”の修飾先:名詞man。penはmanの所持品。manの特徴を描写。
→ 意味的役割:特徴・所持(「ポケットにペンを持った男性」)
例3: We arrived at the airport before noon.
→ “at the airport”の修飾先:動詞arrived。airportは場所。arrivedの到着先。”before noon”の修飾先:動詞arrived。noonは時間。arrivedの時点。
→ 意味的役割:場所(at the airport)、時間(before noon)
例4: The cake was made by my grandmother for the party.
→ “by my grandmother”の修飾先:動詞was made。grandmotherは動作主。”for the party”の修飾先:動詞was made。partyは目的。
→ 意味的役割:動作主(by my grandmother)、目的(for the party)
例5: The bridge made of stone has stood for centuries.
→ “of stone”の修飾先:名詞bridge(または分詞made)。stoneは材料。
→ 意味的役割:材料(「石で作られた橋」)
→ “for centuries”の修飾先:動詞has stood。centuriesは期間。
→ 意味的役割:期間(「何世紀にもわたって立っていた」)
例6: He left the office in a hurry because of an emergency at home.
→ “in a hurry”の修飾先:動詞left。hurryは様態。
→ 意味的役割:様態(「急いで」)
→ “because of an emergency”の修飾先:動詞left。emergencyは原因。
→ 意味的役割:原因(「緊急事態のために」)
→ “at home”の修飾先:名詞emergency。homeは場所。
→ 意味的役割:場所(「自宅での緊急事態」)
以上により、前置詞句の修飾先・前置詞の基本意味・後続名詞句の特性を組み合わせて判断することで、同じ前置詞を含む句であっても意味的役割を正確に区別することが可能になる。
2. 名詞句の意味的機能と修飾語句の役割
名詞句が文中で主語・目的語・補語のいずれかとして機能することは統語層で学んだが、名詞句に含まれる修飾語句がその名詞の意味をどのように限定・特定しているかを正確に把握できるだろうか。”a book”と”the book on the top shelf that I borrowed yesterday”では、後者の名詞句は複数の修飾要素によって指示対象が詳細に限定されている。この限定の仕組みを理解できなければ、文の意味を正確に把握できない場面が生じる。
名詞句の意味的機能の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、名詞句の中心語と修飾語句の関係を意味的に分析できるようになる。第二に、修飾語句が名詞の意味をどの側面から限定しているか(場所・時間・所属・特徴など)を判断できるようになる。第三に、複数の修飾語句を含む名詞句でも、中心語の指示対象を正確に特定できるようになる。名詞句の意味的分析は、長文読解における指示対象の追跡や、要約問題での情報の取捨選択に直結する。
2.1. 名詞句内部の修飾構造と意味的限定
名詞句の修飾語句とは何か。「名詞を説明するもの」という漠然とした理解では、複数の修飾語句がそれぞれ異なる側面から名詞を限定していることを捉えきれない。学術的・本質的には、名詞句の修飾語句は、中心語である名詞の指示対象を段階的に絞り込む役割を果たすものとして理解されるべきである。冠詞が特定・不特定を示し、形容詞が性質を限定し、前置詞句が場所・所属・特徴を限定し、分詞句が動作・状態を限定する。これらが組み合わさることで、名詞の指示対象が一意に特定される。
修飾語句の限定機能をさらに詳しく整理する。名詞の前に置かれる修飾語句(前置修飾)と、名詞の後に置かれる修飾語句(後置修飾)では、担う限定の性質が異なる傾向がある。前置修飾(冠詞・形容詞・名詞修飾語)は名詞の内在的な性質(大きさ・色・材質・年齢など)を限定する傾向があり、後置修飾(前置詞句・分詞句・関係詞節・不定詞句)は名詞の外在的な関係(場所・所属・時間・目的など)を限定する傾向がある。”the beautiful old wooden bridge over the river”では、“beautiful”(美的性質)、“old”(年齢)、“wooden”(材質)が内在的性質を限定し、“over the river”(場所)が外在的関係を限定している。この前置修飾と後置修飾の区別を意識することで、修飾語句の限定機能を系統的に分析できるようになる。
この原理から、名詞句内部の修飾構造を意味的に分析する具体的な手順が導かれる。手順1では、名詞句の中心語を特定する。冠詞・形容詞・前置詞句などの修飾語句をすべて取り除いたときに残る名詞が中心語である。手順2では、各修飾語句が名詞のどの側面を限定しているかを判定する。冠詞は特定性、形容詞は性質、前置詞句は場所・所属・特徴・時間などを限定していると判断できる。手順3では、修飾語句による限定の結果として、中心語の指示対象がどこまで絞り込まれたかを確認する。すべての限定を統合して指示対象を特定することで、名詞句全体の意味を正確に把握できる。
例1: the old wooden bridge over the river
→ 中心語:bridge。修飾語句:the(特定のもの)、old(性質:古い・前置修飾)、wooden(性質:木製の・前置修飾)、over the river(場所:川に架かった・後置修飾)。
→ 限定の結果:「川に架かっている、古い、木製の、特定の橋」
例2: a student from Japan studying at this university
→ 中心語:student。修飾語句:a(不特定の一人)、from Japan(出身:日本から・後置修飾)、studying at this university(動作・状態:この大学で学んでいる・後置修飾)。
→ 限定の結果:「この大学で学んでいる、日本出身の、ある学生」
例3: several important documents about the new project
→ 中心語:documents。修飾語句:several(数量:いくつかの)、important(性質:重要な・前置修飾)、about the new project(関連:新プロジェクトに関する・後置修飾)。
→ 限定の結果:「新プロジェクトに関する、重要な、いくつかの書類」
例4: the first person to arrive at the meeting
→ 中心語:person。修飾語句:the(特定の)、first(順序:最初の・前置修飾)、to arrive at the meeting(動作:会議に到着した・後置修飾)。
→ 限定の結果:「会議に最初に到着した、特定の人物」
例5: a recently published comprehensive report on climate change in Southeast Asia
→ 中心語:report。修飾語句:a(不特定の)、recently published(分詞句・時間と動作:最近出版された・前置修飾)、comprehensive(性質:包括的な・前置修飾)、on climate change(主題:気候変動に関する・後置修飾)、in Southeast Asia(場所:東南アジアにおける・後置修飾)。
→ 限定の結果:「東南アジアにおける気候変動に関する、最近出版された、包括的な報告書」
→ 前置修飾で報告書の性質を、後置修飾で報告書の主題と対象地域を限定している。
例6: the only remaining factory in the town producing traditional ceramics
→ 中心語:factory。修飾語句:the(特定の)、only(唯一の・前置修飾)、remaining(分詞・存続している・前置修飾)、in the town(場所・後置修飾)、producing traditional ceramics(分詞句・動作・後置修飾)。
→ 限定の結果:「その町に残る、伝統的な陶磁器を生産している唯一の工場」
以上により、名詞句の中心語を起点として各修飾語句の限定機能を意味的に分析し、名詞の指示対象を段階的に特定することが可能になる。
3. 句の意味的あいまい性とその解消
前置詞句の意味的役割と名詞句の修飾構造を学んだ上で、「同じ文が二通り以上の意味に解釈できる」場面に対処できるだろうか。”I saw the man with binoculars.”は「双眼鏡を持った男性を見た」とも「双眼鏡で男性を見た」とも解釈できる。このような意味的あいまい性は句の修飾先の違いから生じ、入試の読解問題でも文脈に基づく判断が求められる。
句の意味的あいまい性の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、句の修飾先の違いによって文の意味が変わるパターンを認識できるようになる。第二に、文脈情報を用いてあいまい性を解消する判断ができるようになる。第三に、入試の選択肢問題で、意味的あいまい性を利用した誤答誘導を見抜けるようになる。句の意味的あいまい性の分析は、長文読解における正確な意味理解と、設問の選択肢の吟味に直結する。
3.1. 修飾先の違いによる意味的あいまい性
英文のあいまい性はどのように生じるか。「英語が不完全だから」と片付けることはできない。あいまい性は、一つの句が複数の要素を修飾先として取りうる場合に構造的に発生するものであり、英語に限らず多くの言語で観察される現象である。前置詞句や分詞句が動詞と名詞のどちらを修飾しているかによって文の意味が変わる。このあいまい性は、文脈情報(前後の文の内容、話題、常識的な知識)を用いて解消される。
入試問題においてあいまい性がどのように利用されるかを理解しておくことは実践的に重要である。選択肢問題では、あいまいな文の一方の解釈に基づく選択肢と他方の解釈に基づく選択肢が並べられることがある。受験生が文脈を考慮せずにどちらか一方の解釈だけを思い浮かべると、誤答に誘導される。和訳問題では、修飾先を誤って訳すと大きな減点となる。したがって、あいまい性の存在を認識し、可能な解釈を列挙した上で文脈から適切な解釈を選択するという手順を身につけることが、実際の試験での得点に直結する。
この原理から、句の意味的あいまい性を分析し解消する具体的な手順が導かれる。手順1では、あいまい性の存在を認識する。一つの句に対して修飾先が二つ以上考えられる場合、あいまい性が存在すると判定できる。手順2では、各修飾先を仮定した場合の意味を比較する。修飾先Aの場合の意味と修飾先Bの場合の意味をそれぞれ日本語で言語化することで、意味の違いを明確にできる。手順3では、文脈情報を用いてより自然な解釈を選択する。前後の文の内容、話題の流れ、常識的な知識と照合して、どちらの解釈がより整合するかを判断できる。
例1: I saw the man with binoculars.
→ 解釈A:”with binoculars”がmanを修飾 →「双眼鏡を持った男性を見た」
→ 解釈B:”with binoculars”がsawを修飾 →「双眼鏡で男性を見た」
→ 文脈による判断:「バードウォッチング中だった」という前文があれば解釈B、「変わった外見の人がいた」という前文があれば解釈Aが自然。
例2: The teacher told the students that failed the test to study harder.
→ 解釈A:”that failed the test”がstudentsを修飾(関係詞節)→「テストに落ちた生徒たちにもっと勉強するよう言った」
→ 解釈B:”that failed the test”がtoldの目的語の節→(この場合、構造的に不自然)
→ 文脈による判断:to study harderの存在から、解釈Aが文法的にも意味的にも自然。
例3: She fed the cat on the mat.
→ 解釈A:”on the mat”がcatを修飾 →「マットの上にいる猫にエサをやった」
→ 解釈B:”on the mat”がfedを修飾 →「マットの上で猫にエサをやった」
→ 文脈による判断:猫の位置が話題であれば解釈A、エサやりの場所が話題であれば解釈B。
例4: The police officer stopped the driver with a warning.
→ 解釈A:”with a warning”がdriverを修飾 →「警告(書)を持ったドライバーを止めた」
→ 解釈B:”with a warning”がstoppedを修飾 →「警告を出してドライバーを止めた」
→ 文脈による判断:交通取り締まりの場面であれば解釈Bが自然。
例5: They discussed the proposal from the new manager.
→ 解釈A:”from the new manager”がproposalを修飾 →「新しいマネージャーからの提案を議論した」
→ 解釈B:”from the new manager”がdiscussedを修飾 →「新しいマネージャーから(情報を得て)提案を議論した」
→ 文脈による判断:提案の出所が問題であれば解釈A、情報源が問題であれば解釈B。通常は解釈Aがより自然。
例6: He watched the children playing in the park from the window.
→ 解釈A:”from the window”がwatchedを修飾 →「窓から、公園で遊んでいる子供たちを見た」
→ 解釈B:”from the window”がplayingを修飾 →「公園で窓から遊んでいる子供たちを見た」(不自然)
→ 解釈C:”from the window”がparkを修飾 →「窓のある公園で」(不自然)
→ 文脈による判断:常識的に考えて解釈Aが最も自然。watchedの動作の場所(起点)を示す。
以上により、句の修飾先が複数考えられる場合にあいまい性を認識し、文脈情報を活用して適切な解釈を選択することが可能になる。
語用:文脈における機能の理解
統語層で句の構造を分析し、意味層で句の意味的役割を判断する力を確立した上で、次に問われるのは「書き手はなぜその句をその位置に置いたのか」である。”He spoke clearly.”と”He spoke with remarkable clarity.”は同じ内容を伝えているが、後者は前置詞句を用いることでclarityという名詞に修飾語remarkableを付加でき、「明瞭さ」の程度を強調する効果がある。語用層を終えると、句の選択と配置が伝達上どのような効果を持つかを把握し、書き手の意図を読み取れるようになる。統語層・意味層で確立した句の識別・意味判断の能力を前提とする。句の選択による伝達効果の違い、句の位置と情報の焦点、句の省略と文脈依存を扱う。語用層で確立される句の伝達機能の理解がなければ、談話層で文章全体の論理構造を追跡する際に、書き手の強調点や情報の重みづけを見落とす結果となる。
【関連項目】
[基盤 M39-語用]
└ 強調・倒置の表現における句の配置効果を確認する
[基盤 M45-語用]
└ 直接表現と間接表現における句の選択の違いを理解する
【基礎体系】
[基礎 M08-語用]
└ 態と情報構造の関係において句の選択が果たす役割を深める
1. 句の選択と伝達効果
同じ内容を伝える場合でも、どのような句を選択するかによって伝達の効果が変わることを認識できるだろうか。”She sang beautifully.”と”She sang in a beautiful voice.”は同じ状況を描写しているが、伝わる印象は異なる。句の選択が伝達効果にどう影響するかを理解できなければ、書き手の意図を正確に読み取ることができない。
句の選択と伝達効果の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、副詞と前置詞句の使い分けが伝達上どのような違いを生むかを把握できるようになる。第二に、書き手が特定の句を選択した理由を推測できるようになる。第三に、入試の読解問題で、表現の選択に関する設問に正確に解答できるようになる。句の選択と伝達効果の理解は、長文読解における筆者の態度や強調点の把握に直結する。
1.1. 副詞と前置詞句の伝達効果の違い
副詞と前置詞句は「同じ意味を表す別の形式」にすぎないのか。この理解は両者の伝達効果の違いを見落としている点で不十分である。学術的・本質的には、前置詞句は副詞に比べて情報量を増やせる(名詞句に修飾語を付加できる)という構造的特性を持ち、この特性が伝達上の効果の違いを生むものとして理解されるべきである。“carefully”(副詞)は「注意深く」を一語で表すが、“with great care”(前置詞句)は”great”という修飾語によって注意深さの程度を強調できる。書き手が前置詞句を選択するのは、情報量を増やして描写を具体化したい場合や、特定の側面を強調したい場合である。
この構造的特性から派生する伝達効果の違いを、より体系的に整理する。副詞は動作の様態を簡潔に示すのに対し、前置詞句は様態の具体的な内容・程度・側面を展開する余地を持つ。例えば、”sadly”は「悲しげに」という様態を一語で伝えるが、”with deep sadness in her eyes”は悲しみの程度(deep)と身体的な現れ(in her eyes)まで描写できる。この違いは、書き手が読み手に対してどの程度の詳細さで場面を伝えたいかという意図の違いを反映している。入試の読解問題では、筆者がなぜ簡潔な副詞ではなく前置詞句を選択したかを問う設問が出題されることがあり、この構造的特性の理解が解答の根拠となる。さらに、前置詞句は名詞を含むため、その名詞自体が新たな情報の担い手となる。”He spoke angrily.”では怒りの存在しか伝わらないが、”He spoke with an anger that surprised everyone.”では、怒りの程度が「みんなを驚かせるほどだった」という追加情報が伝えられる。このように、前置詞句の選択は単なる文体上の好みではなく、情報量の拡張という明確な機能を果たしている。
この原理から、句の選択が伝達効果にどう影響するかを分析する具体的な手順が導かれる。手順1では、同じ内容を副詞で表した場合と前置詞句で表した場合を比較する。両者を日本語で言語化して並べることで、情報量の違いを明確にできる。手順2では、前置詞句の内部構造を分析し、どの修飾語が追加的な情報を担っているかを特定する。名詞句に付加された形容詞が追加的情報を担っている場合が多いと判断できる。手順3では、追加的情報がなぜ必要であったかを文脈から推測する。強調・具体化・対比など、書き手の意図を特定することで、句の選択の理由を理解できる。
例1: She spoke clearly. → She spoke with remarkable clarity.
→ “clearly”は「明瞭に」。”with remarkable clarity”は「驚くべき明瞭さで」。remarkableが追加的情報を担い、明瞭さの程度を強調している。
例2: He answered quickly. → He answered with surprising speed.
→ “quickly”は「素早く」。”with surprising speed”は「驚くべき速さで」。surprisingが追加情報を担い、速さの意外性を強調している。
例3: They worked hard. → They worked with great determination.
→ “hard”は「懸命に」。”with great determination”は「大きな決意を持って」。情報の焦点が「労力」から「決意」に移り、動機の側面が強調されている。
例4: The child cried loudly. → The child cried in a loud, desperate voice.
→ “loudly”は「大声で」。”in a loud, desperate voice”は「大きな、必死の声で」。desperateが追加情報を担い、泣き方の切迫性が強調されている。
例5: She smiled warmly. → She smiled with a warmth that immediately put the visitors at ease.
→ “warmly”は「温かく」。前置詞句は温かさの効果(訪問者を安心させた)まで描写。関係詞節を含む名詞句によって、笑顔の影響範囲が具体化されている。
例6: He left abruptly. → He left in such a hurry that he forgot his coat.
→ “abruptly”は「突然に」。前置詞句+結果節の組み合わせにより、急ぎの程度が「コートを忘れるほど」と具体的に描写されている。
以上により、副詞と前置詞句の選択の違いを情報量の観点から分析し、書き手が句の選択を通じて何を強調しようとしているかを把握することが可能になる。
2. 句の位置と情報の焦点
書き手が句をどの位置に配置するかによって、読み手の注意がどこに向けられるかが変わることを理解できるだろうか。”In the garden, she found the key.”と”She found the key in the garden.”は同じ事実を述べているが、前者は場所を先に提示して状況を設定し、後者は行為の結果としての場所を示している。句の位置が情報の焦点にどう影響するかを理解することは、筆者の強調点を正確に読み取るために不可欠である。
句の位置と情報の焦点の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、文頭に配置された句が文全体の背景・条件を設定する機能を持つことを把握できるようになる。第二に、文末に配置された句がより重要な新情報を担う傾向を理解できるようになる。第三に、句の配置から書き手の情報提示の戦略を推測できるようになる。句の位置と情報の焦点の理解は、長文読解において段落の主張や論理の流れを把握する力に直結する。
2.1. 文頭・文末の句の情報的機能
一般に句の位置は「文法的に決まっているもの」と理解されがちである。しかし、この理解は英語において句の位置が比較的自由に変えられる場合があり、その位置の選択が情報伝達上の意図を反映していることを見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、英文では文末に近い位置ほど新しい情報や重要な情報が配置される傾向があり、文頭に配置された副詞的要素は背景情報や前提条件を設定する機能を持つものとして理解されるべきである。この「文末焦点の原則」(end-focus principle)を認識しておくことで、書き手がどの情報を重視しているかを句の位置から判断できるようになる。
文末焦点の原則は、言語学でいう「旧情報→新情報」の情報構造と密接に関係している。英文では、既に話題として共有されている情報(旧情報)が文頭に近い位置に、まだ伝えられていない情報(新情報)が文末に近い位置に配置される傾向がある。文頭にカンマで区切られた前置詞句を配置する場合、その前置詞句は通常、前の文脈から既に分かっている情報や、後続の内容を理解するための前提条件を示す。一方、文末に配置された前置詞句は、その文が新たに伝えようとしている核心的な情報を担う場合が多い。この傾向は絶対的な規則ではないが、入試の長文読解において段落の要点を素早く抽出する際の有力な手がかりとなる。また、同一の文で句の位置を変えた2つのバージョンが選択肢として提示された場合、どちらが文脈に適合するかの判断基準としても機能する。
この原理から、句の位置と情報の焦点を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では、文中の副詞的な句(前置詞句・副詞句)の位置を確認する。文頭・文中・文末のどこに配置されているかを特定することで、分析の起点を設定できる。手順2では、文頭の句は背景・条件の設定、文末の句は新情報・焦点として機能しているかを確認する。文頭の句をカンマで区切って提示する形式は、背景設定の意図を明示していると判断できる。手順3では、句の位置の選択が前後の文との情報の流れとどのように整合しているかを確認する。前の文で話題になった情報が文頭に来て、新しい情報が文末に来るパターンを認識することで、情報の流れを追跡できる。
例1: In the morning, the accident occurred.(文頭配置)
→ “In the morning”は背景情報として時間を設定。焦点は”the accident occurred”(事故が起きたこと)。
She discovered the evidence in the morning.(文末配置)
→ 焦点は”in the morning”(朝に発見したという時間情報が新情報)。
例2: After the meeting, he sent the email.(文頭配置)
→ “After the meeting”は背景として時系列を設定。焦点は「メールを送ったこと」。
He sent the email after the meeting.(文末配置)
→ 焦点は「会議の後に」(送信のタイミングが新情報)。
例3: With a heavy heart, she accepted the offer.(文頭配置)
→ “With a heavy heart”は心理状態を背景として設定。焦点は「申し出を受け入れたこと」。
She accepted the offer with a heavy heart.(文末配置)
→ 焦点は「重い気持ちで」(受け入れの心理が新情報)。
例4: Despite the rain, the event was successful.(文頭配置)
→ “Despite the rain”は不利な条件を背景として設定。焦点は「イベントが成功したこと」。
→ 文頭に不利条件を置くことで、後続の肯定的結果との対比が強調される。
例5: At the international conference, the young researcher presented her findings.(文頭配置)
→ “At the international conference”は場面設定。焦点は「若い研究者が発表したこと」。前文で学会の話題が出ていれば、場所は旧情報であり文頭配置が自然。
The young researcher presented her findings at the international conference.(文末配置)
→ 焦点は「国際学会で」。前文で研究者の活動が話題であれば、発表の場が新情報として文末に配置される。
例6: For the first time in decades, the two countries reached a peace agreement.(文頭配置)
→ “For the first time in decades”は時間的背景を設定し、後続の出来事の歴史的意義を際立たせている。焦点は「平和合意に達したこと」。文頭配置によって「数十年ぶり」という歴史的重要性が読み手の期待を喚起し、文末の結論をより印象深くする効果がある。
以上により、句の配置位置と情報の焦点の関係を分析し、書き手がどの情報を背景として設定し、どの情報を焦点として提示しているかを正確に把握することが可能になる。
3. 句の省略と文脈依存
実際の英文では、前の文で既に伝えられた情報を含む句が省略されたり、文脈から復元可能な句が明示されなかったりする場面が頻繁にある。”He likes coffee and she tea.”では”likes”が省略されているが、”she likes tea”が復元される。句レベルの省略を文脈から復元できなければ、文の意味を正確に把握できない場合がある。
句の省略と文脈依存の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、省略された句の存在を認識し、文脈から復元できるようになる。第二に、省略によって文がどのように簡潔化されているかを理解できるようになる。第三に、入試の読解問題で省略を含む文の意味を正確に解釈できるようになる。句の省略の理解は、談話層で文章全体の情報の流れを追跡する力に直結する。
3.1. 句レベルの省略の認識と復元
句の省略とは何か。「単に語が欠けている状態」という理解では、省略が文脈に基づく意図的な情報伝達の手段であることを見落としている。学術的・本質的には、句の省略とは「前の文脈から復元可能な情報を繰り返さないことで、新しい情報を際立たせる伝達上の手段」として理解されるべきものである。省略が行われるのは、繰り返される情報が既知のものであり、その省略によって読み手の注意が新情報に集中するためである。
省略が生じる典型的な文法環境を整理しておく。第一に、等位接続詞(and, but, or)で結ばれた並列構造における動詞の省略がある。”Tom likes coffee and Mary tea.”では”likes”が省略されている。第二に、比較構文における省略がある。”She runs faster than he.”では”runs”が省略されている。第三に、応答における省略がある。“Who wrote this?” — “John.”では”John wrote this”の大部分が省略されている。いずれの場合も、省略される要素は直前の文脈に含まれる同一の語句であり、読み手が復元可能であることが省略の前提条件である。入試では特に第一の等位接続詞を用いた省略が頻出し、並列構造の中で何が省略されているかを正確に復元できるかどうかが問われる。また、省略を含む文は対比構造を形成していることが多く、省略されずに残っている要素こそが書き手が強調したい新情報であるという点も重要である。”Tom prefers coffee and his wife tea.”では、省略されずに残っている”coffee”と”tea”の対比が文の核心的情報である。
この原理から、省略された句を認識し復元する具体的な手順が導かれる。手順1では、文の構造に不完全さがないかを確認する。述語動詞の後に通常必要な目的語がない、主語の後に動詞がないなどの不完全さを検出することで、省略の可能性を認識できる。手順2では、前後の文脈から省略された要素を特定する。直前の文に含まれる同一の句が省略されている場合が多いため、直前の文との対応を確認することで省略された句を特定できる。手順3では、省略を復元した上で文の完全な意味を把握する。復元後の文が文法的に正しく意味的に整合していることを確認することで、省略の復元が正確であったか検証できる。
例1: She likes classical music, and he jazz.
→ 不完全さ:”he”の後に動詞がない。省略要素:“likes”。復元:“he likes jazz.”
→ 省略の効果:対比(classical music ↔ jazz)が際立つ。
例2: Some students chose history; others geography.
→ 不完全さ:”others”の後に動詞がない。省略要素:“chose”。復元:“others chose geography.”
→ 省略の効果:選択の違い(history ↔ geography)に注意が集中する。
例3: I went to the park yesterday, and my sister to the library.
→ 不完全さ:”my sister”の後に動詞がない。省略要素:“went”。復元:“my sister went to the library.”
→ 省略の効果:行き先の対比(park ↔ library)が強調される。
例4: The first question was easy, but the second very difficult.
→ 不完全さ:”the second”の後に動詞がない。省略要素:“was”。復元:“the second was very difficult.”
→ 省略の効果:難易度の対比(easy ↔ very difficult)が明瞭になる。
例5: The manager approved the first proposal immediately, but the second only after considerable deliberation.
→ 不完全さ:”the second”の後に動詞がない。省略要素:“approved”と”proposal”。復元:“the manager approved the second proposal only after considerable deliberation.”
→ 省略の効果:承認の速さの対比(immediately ↔ only after considerable deliberation)が強調される。二つの提案に対する対応の違いが文の核心情報である。
例6: In Japan, trains are usually on time; in Italy, not always.
→ 不完全さ:”in Italy”の後に主語と動詞がない。省略要素:”trains are usually on time”の大部分。復元:“in Italy, trains are not always on time.”
→ 省略の効果:二国間の対比に注意が集中する。”not always”という否定的情報が新情報として際立つ。
以上により、文の構造的な不完全さから省略の存在を認識し、前後の文脈から省略された句を復元して正確な意味を把握することが可能になる。
談話:文章全体の構造の把握
統語層で句の構造を分析し、意味層で句の意味的役割を判断し、語用層で句の伝達効果を理解した上で、最後に問われるのは「句がどのように文と文をつなぎ、文章全体の流れを形成しているか」である。文章の中では、前の文で導入された名詞句が次の文で代名詞に置き換えられたり、前の文の内容を受ける前置詞句が次の文の冒頭に配置されたりして、情報の連続性が保たれている。談話層を終えると、句レベルの分析を段落・文章レベルの読解に統合し、文間の情報接続を追跡できるようになる。語用層で確立した句の伝達機能の理解を前提とする。名詞句の照応関係、前置詞句による文間接続、段落内での句の情報的役割を扱う。談話層で確立される文章レベルの読解能力は、入試の長文読解における段落構造の把握や要旨の抽出に直接活用される。
【関連項目】
[基盤 M54-談話]
└ 指示語の照応関係における句の役割を確認する
[基盤 M55-談話]
└ 接続表現と論理関係における句の機能を理解する
【基礎体系】
[基礎 M18-談話]
└ 文間の結束性を原理的に理解し、句の接続機能を体系的に深める
1. 名詞句の照応と情報の追跡
文章を読む際、同一の対象が最初は具体的な名詞句で導入され、以降は代名詞や別の名詞句で繰り返し言及される。”A young scientist published a paper. She was only twenty-two.”では”A young scientist”と”She”が同一人物を指している。この照応関係を正確に追跡できなければ、文章の流れを見失い、「誰が何をしたか」を取り違える結果となる。
名詞句の照応関係の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、文章中で同一の対象を指す名詞句と代名詞の対応を正確に把握できるようになる。第二に、不定冠詞で導入された名詞句が定冠詞で再度言及されるパターンを認識できるようになる。第三に、入試の長文読解で代名詞の指示対象を正確に特定できるようになる。名詞句の照応関係の追跡は、段落の主題の把握や要約問題への対応に直結する。
1.1. 名詞句の導入と再言及のパターン
一般に代名詞の指示対象は「前の文から分かる」と理解されがちである。しかし、この理解は複数の名詞句が前の文に含まれる場合に指示対象を一意に特定する手順を持たないという点で不正確である。学術的・本質的には、名詞句の照応関係は、導入(不定冠詞・初出の名詞句)→再言及(定冠詞・代名詞・同義の名詞句)というパターンに従って追跡されるべきものである。最初に”a scientist”(不定冠詞)で導入された対象が、次に”the scientist”(定冠詞)や”she”(代名詞)で再言及されるというパターンを認識することで、照応関係を体系的に追跡できる。
照応関係の追跡で特に注意すべきは、再言及が常に代名詞で行われるとは限らない点である。同一の対象が同義語(synonym)で言い換えられる場合や、上位概念(hypernym)で言い換えられる場合がある。”a dog”が”the animal”に、”a scientist”が”the researcher”に、”the decision”が”this move”に言い換えられるパターンは入試で頻出する。このような言い換えを照応関係として認識するためには、語の意味的な包含関係を把握する必要がある。”animal”は”dog”の上位概念であり、”researcher”は”scientist”の同義語である。さらに、描写的な言い換えにも注意が必要である。”Maria”が”the diligent student”や”the young woman from Brazil”のように、その人物の特定の属性を用いて言い換えられる場合がある。この種の言い換えは、新たな情報を付加しながら照応関係を維持する機能を持ち、書き手は再言及を通じて対象の別の側面を読み手に提示している。入試の内容一致問題では、本文中の名詞句と選択肢中の名詞句がこのような言い換え関係にあるかどうかの判断が正答に直結する。
この原理から、名詞句の照応関係を追跡する具体的な手順が導かれる。手順1では、文章中で初めて登場する名詞句(不定冠詞aまたは固有名詞で導入される)を導入点として記憶する。手順2では、後続の文で定冠詞theが付いた名詞句や代名詞が現れたとき、導入点の名詞句との対応を確認する。性・数の一致(she→女性単数、they→複数)と意味的整合性を検証することで、照応関係を特定できる。手順3では、同一対象が別の名詞句で言い換えられている場合(“a scientist”→“the researcher”)も含めて追跡する。同義語や上位概念への言い換えを認識することで、照応関係の追跡精度を高められる。
例1: A dog was sitting by the door. The animal looked hungry.
→ 導入:A dog(不定冠詞)。再言及:The animal(定冠詞+上位概念への言い換え)。同一対象。
例2: Two students entered the room. One carried a bag, and the other held a book.
→ 導入:Two students。再言及:”One”と”the other”がそれぞれ二人の学生を指す。
例3: The company announced a new policy. It was expected to reduce costs.
→ 導入:a new policy(不定冠詞)。再言及:It(代名詞)。”It”はpolicyを指す(companyではない。後続の”reduce costs”との意味的整合性で判定)。
例4: Maria finished her assignment early. The diligent student then helped her classmates.
→ 導入:Maria(固有名詞)。再言及:The diligent student(定冠詞+描写的言い換え)。同一人物を新たな側面から描写している。
例5: The government introduced a controversial bill last month. The legislation faced strong opposition from several interest groups. Critics of the measure argued that it would disproportionately affect small businesses.
→ 導入:a controversial bill(不定冠詞)。再言及1:The legislation(定冠詞+同義語への言い換え)。再言及2:the measure(定冠詞+同義語への言い換え)。再言及3:it(代名詞)。bill→legislation→measure→itという一連の照応関係が、同一の法案を指しながら異なる側面(法律としての性質、施策としての影響)を提示している。
例6: A team of archaeologists discovered ancient ruins in the desert. The find attracted international media attention. Experts from around the world traveled to the site to examine the remains.
→ 導入:ancient ruins(不定冠詞を伴わないが初出の名詞句)。再言及1:The find(定冠詞+上位概念への言い換え。発見という行為と発見物の両方を指す)。再言及2:the site(定冠詞+場所としての言い換え)。再言及3:the remains(定冠詞+同義語への言い換え)。一つの対象が文脈に応じて「発見物」「場所」「遺構」と異なる観点から言い換えられている。
以上により、名詞句の導入と再言及のパターンを認識し、性・数の一致と意味的整合性に基づいて照応関係を正確に追跡することが可能になる。
2. 前置詞句による文間接続と論理の流れ
文と文がどのようにつながって論理的な流れを形成しているかを把握できるだろうか。前置詞句は文と文を論理的に接続する機能を果たすことがある。”The team worked for months. As a result of their efforts, the project was completed on time.”では”As a result of their efforts”が前の文の内容と後の文の内容を因果関係でつないでいる。文間を接続する前置詞句の機能を理解できなければ、文章の論理構造を見失う。
前置詞句による文間接続の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、文頭の前置詞句が前の文とどのような論理関係(原因・結果、対比、追加、時間順序など)を形成しているかを判断できるようになる。第二に、論理関係を示す前置詞句の典型的パターンを認識できるようになる。第三に、長文読解で段落間の論理的つながりを追跡できるようになる。前置詞句による文間接続の理解は、要約問題での情報の関係整理と論理展開の把握に直結する。
2.1. 文頭の前置詞句が示す論理関係
文頭の前置詞句は「場所や時間を表す」だけのものか。この理解では、文頭の前置詞句が論理関係(原因・結果・対比・条件など)を示す場合があることを見落としている。学術的・本質的には、文頭に配置された前置詞句は、後続の文が前の文に対してどのような論理的関係にあるかを明示する談話標識としての機能を持つものとして理解されるべきである。”Because of”は原因、”In contrast to”は対比、”In addition to”は追加、”As a result of”は結果を示す。この機能を認識することで、文章全体の論理構造を追跡する精度が向上する。
論理関係を示す前置詞句を体系的に分類しておく。原因・理由系には”because of”、“due to”、“owing to”、“on account of”、“as a consequence of”がある。結果系には”as a result of”がある。対比系には”in contrast to”、“unlike”、“as opposed to”、“contrary to”がある。追加系には”in addition to”、“besides”、“apart from”がある。譲歩系には”despite”、“in spite of”、“regardless of”、“notwithstanding”がある。条件系には”in case of”、“in the event of”、”in the absence of”がある。これらの前置詞句は、接続詞(because, although, ifなど)と同じ論理関係を表すが、後に名詞句が続く(接続詞は節が続く)という構造上の違いがある。入試では、接続詞と前置詞句のいずれかを空所に補充する問題が出題されることがあり、後続が名詞句であれば前置詞句、節であれば接続詞という判断基準が適用できる。
この原理から、文頭の前置詞句が示す論理関係を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では、文頭に前置詞句が配置されているかを確認する。カンマで区切られた文頭の前置詞句は、論理関係を示す可能性が高いと判断できる。手順2では、前置詞句の前置詞を確認し、示される論理関係の種類を判定する。原因系、対比系、追加系、結果系、条件系、譲歩系などのパターンを識別できる。手順3では、前置詞句の後続の名詞句が前の文のどの情報を受けているかを確認する。前の文との内容的なつながりを検証することで、論理関係の正確さを確認できる。
例1: The factory closed down. Because of the closure, many workers lost their jobs.
→ “Because of the closure”は前の文の「工場閉鎖」を原因として受け、後の文の「失業」を結果として接続。論理関係:原因→結果。
例2: The first experiment failed. In contrast to this result, the second experiment was a success.
→ “In contrast to this result”は前の文の「失敗」を受け、後の文の「成功」と対比。論理関係:対比。
例3: She studied biology in college. In addition to her academic training, she gained practical experience through internships.
→ “In addition to her academic training”は前の文の「大学での学習」を受け、後の文で「実践経験」を追加。論理関係:追加。
例4: Heavy rain continued for three days. As a result of the flooding, several roads were closed.
→ “As a result of the flooding”は大雨の帰結としての洪水を受け、道路閉鎖を結果として接続。論理関係:原因→結果。
例5: The company had invested heavily in the new technology. Despite these significant investments, the product failed to gain market share.
→ “Despite these significant investments”は前の文の「多額の投資」を受け、譲歩の論理関係を示す。投資にもかかわらず市場シェアを獲得できなかったという予想に反する結果が後続する。論理関係:譲歩。
例6: The population of the city has doubled in the past decade. In the absence of adequate infrastructure planning, traffic congestion has become a serious problem.
→ “In the absence of adequate infrastructure planning”は条件(適切なインフラ計画がないこと)を示し、後続の「交通渋滞の深刻化」の背景条件を明示する。前の文の人口倍増が原因、インフラ計画の不在が条件、交通渋滞が結果という三段階の論理構造が前置詞句によって明示されている。論理関係:条件。
以上により、文頭の前置詞句が示す論理関係の種類を判定し、前後の文がどのような論理的つながりを持つかを正確に追跡することが可能になる。
3. 段落内での句の情報的役割と読解への統合
段落レベルの読解において、個々の句がどのように段落全体の情報構造に貢献しているかを把握できるだろうか。段落の主題文(topic sentence)では名詞句が段落全体のテーマを設定し、支持文では前置詞句が具体例や詳細情報を追加して主題を支えている。句の情報的役割を段落レベルで把握できれば、入試の長文読解で段落の要旨を素早く抽出できるようになる。
段落内での句の情報的役割の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、主題文の名詞句から段落のテーマを素早く特定できるようになる。第二に、支持文の前置詞句や名詞句が主題をどのように具体化・補強しているかを把握できるようになる。第三に、段落全体の情報構造を図式的に把握し、要旨の抽出や要約を効率的に行えるようになる。段落内での句の情報的役割の理解は、入試の長文読解における段落構造の把握と内容一致問題への対応に直結する。
3.1. 主題文と支持文における句の機能
段落の読解は「全文を丁寧に読むこと」にとどまるべきか。段落内の情報には階層構造があり、主題文と支持文で句が果たす機能は異なる。学術的・本質的には、主題文の名詞句が段落のテーマ(何について述べるか)を設定し、支持文の句がそのテーマを具体例・詳細・理由・対比などによって支えるという階層的な情報構造として理解されるべきである。この構造を認識することで、段落の要旨を主題文の名詞句から素早く抽出し、支持文の句から具体的な根拠を把握するという効率的な読解が可能になる。
段落内の情報階層をさらに詳しく分析する。主題文は段落の「最も抽象的な主張」を含む文であり、その名詞句がテーマを設定する。支持文はこのテーマを支えるが、支持の方法にはいくつかの種類がある。具体例による支持(“For example, …”、“For instance, …”)、理由による支持(“Because of …”、“Due to …”)、対比による支持(“In contrast to …”、“Unlike …”)、追加情報による支持(“In addition to …”、“Furthermore, …”)、そして限定・条件による支持(“In certain cases, …”、“Under these conditions, …”)がある。入試の段落要旨問題では、主題文の名詞句に含まれるテーマ情報と、支持文の前置詞句に含まれる具体的情報を区別し、テーマレベルの要旨を把握することが求められる。支持文の細部に引きずられて段落のテーマを見失う誤りは、主題文の名詞句を明確に意識することで防止できる。
この原理から、段落内での句の情報的役割を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では、段落の主題文を特定し、主題文の名詞句からテーマを把握する。段落冒頭の文(または段落末尾の文)が主題文である場合が多く、その中の中心的な名詞句がテーマを示すと判断できる。手順2では、支持文の句が主題をどのように支えているかを分析する。具体例を示す名詞句、理由を示す前置詞句(because of, due to)、対比を示す前置詞句(unlike, in contrast to)など、支持の種類を判定できる。手順3では、主題文のテーマと支持文の情報の関係を統合して段落の要旨を把握する。テーマ+主要な支持情報を組み合わせて段落の要旨を一文で表現できる。
例1:
主題文:Regular exercise has many health benefits.
支持文1:According to recent studies, physical activity reduces the risk of heart disease.
支持文2:In addition to cardiovascular health, exercise improves mental well-being.
→ テーマ:Regular exercise / health benefits(名詞句)。支持:“According to recent studies”(出典を示す前置詞句)、“In addition to cardiovascular health”(追加を示す前置詞句)。
→ 段落の要旨:定期的な運動は心臓病リスクの低減や精神的健康の改善など多くの健康上の利点を持つ。
例2:
主題文:Public transportation in large cities faces several challenges.
支持文1:Due to increasing population, buses and trains are often overcrowded.
支持文2:Because of limited funding, maintenance of existing infrastructure remains insufficient.
→ テーマ:Public transportation / challenges(名詞句)。支持:“Due to increasing population”(原因を示す前置詞句)、“Because of limited funding”(原因を示す前置詞句)。
→ 段落の要旨:大都市の公共交通は人口増加による混雑と資金不足による整備不全という課題に直面している。
例3:
主題文:The invention of the printing press transformed European society.
支持文1:Before the press, books were produced by hand at great expense.
支持文2:With the new technology, information spread rapidly across the continent.
→ テーマ:The invention of the printing press / transformed European society(名詞句)。支持:“Before the press”(時間対比の前置詞句)、“With the new technology”(手段の前置詞句)。
→ 段落の要旨:印刷機の発明は書物の大量生産を可能にし、ヨーロッパ社会における情報の普及を根本的に変えた。
例4:
主題文:Effective communication requires more than just words.
支持文1:In face-to-face conversations, body language plays a significant role.
支持文2:Through tone of voice, speakers convey emotions that words alone cannot express.
→ テーマ:Effective communication / more than just words(名詞句)。支持:“In face-to-face conversations”(場面設定の前置詞句)、“Through tone of voice”(手段の前置詞句)。
→ 段落の要旨:効果的なコミュニケーションにはボディランゲージや声のトーンなど言語以外の要素が重要な役割を果たしている。
例5:
主題文:The decline of pollinator populations poses a serious threat to global food production.
支持文1:In North America, honeybee colonies have decreased by nearly 40% over the past decade.
支持文2:As a result of this decline, the cost of pollination services for farmers has risen sharply.
支持文3:Without effective conservation measures, crop yields for fruits and vegetables could fall significantly.
→ テーマ:The decline of pollinator populations / threat to global food production(名詞句)。支持:“In North America”(地域限定の前置詞句で具体例を導入)、“As a result of this decline”(因果関係の前置詞句)、“Without effective conservation measures”(条件の前置詞句)。
→ 段落の要旨:花粉媒介者の減少は世界的な食料生産への深刻な脅威であり、北米でのミツバチ減少が受粉コストの上昇を招いており、保全策がなければ作物収穫量が大幅に減少する可能性がある。
例6:
主題文:Remote work has fundamentally changed the relationship between employees and their workplaces.
支持文1:For many professionals, the daily commute to a central office is no longer necessary.
支持文2:In terms of productivity, studies have shown mixed results depending on the industry and individual circumstances.
支持文3:Despite its advantages, remote work has created new challenges in maintaining team cohesion and company culture.
→ テーマ:Remote work / changed the relationship between employees and workplaces(名詞句)。支持:“For many professionals”(対象限定の前置詞句)、“In terms of productivity”(観点限定の前置詞句)、“Despite its advantages”(譲歩の前置詞句)。
→ 段落の要旨:リモートワークは従業員と職場の関係を根本的に変え、通勤不要化や生産性への影響など多面的な変化をもたらしたが、チーム結束力や企業文化の維持に新たな課題も生じている。
以上により、主題文の名詞句からテーマを特定し、支持文の句が主題をどのように具体化・補強しているかを分析して、段落の要旨を効率的に把握することが可能になる。
このモジュールのまとめ
このモジュールでは、句の定義を正確に把握するという統語層の理解から出発し、意味層における句の意味的役割の判断、語用層における句の伝達効果の分析、談話層における文章全体の情報構造の追跡という四つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層が意味層を可能にし、意味層が語用層を支え、語用層が談話層を実現するという階層的な関係にある。
統語層では、句の定義(主語と述語動詞の関係を内部に持たない2語以上のまとまり)と節との区別、句の種類(名詞句・前置詞句・形容詞句・副詞句)の識別基準、句の文中機能(主語・目的語・補語・修飾語)の判定手順を確立した。特に、述語動詞を起点として各句の種類と位置の対応関係から文中機能を体系的に判定する手順は、複数の句を含む複雑な文であっても文の骨格を見失わない分析力の基盤となった。さらに、前置詞句が連続する文での修飾先の特定と、句の入れ子構造の把握についても訓練した。句と節の区別では、現在分詞や過去分詞が助動詞を伴わず単独で現れる場合は述語動詞ではないという判定基準を確立し、不定詞句・分詞句を含むまとまりを正確に句と判定する力を獲得した。
意味層では、句の統語的識別に加えて、前置詞句の意味的役割(場所・時間・手段・原因・特徴など)を前置詞の基本意味・後続名詞句の特性・修飾先との意味的整合性の三者から判定する手順を確立した。名詞句の内部における修飾語句が中心語の指示対象をどのように段階的に限定するかを分析する力を習得し、前置修飾と後置修飾の機能の違いについても理解を深めた。さらに句の修飾先の違いから生じる意味的あいまい性を認識して文脈から解消する判断力を獲得した。
語用層では、副詞と前置詞句の選択が伝達効果にもたらす違い、句の文中配置と情報の焦点の関係、句の省略が情報伝達に果たす機能を学習した。前置詞句が副詞と比較して情報量を拡張する構造的特性を持つこと、文末焦点の原則に基づいて句の配置が情報の新旧を反映すること、省略が対比構造における新情報の際立たせという伝達機能を持つことを理解し、書き手が特定の句を選択し特定の位置に配置する意図を読み取る力を確立した。
談話層では、名詞句の照応関係(導入→再言及のパターン)の追跡、文頭の前置詞句が示す文間の論理関係の判定、段落内での主題文と支持文における句の情報的役割の分析を学習した。照応関係の追跡では、代名詞だけでなく同義語・上位概念・描写的言い換えによる再言及パターンを認識する力を養成した。文間接続では、原因系・対比系・追加系・譲歩系・条件系の前置詞句を体系的に分類し、論理構造の追跡精度を高めた。段落構造の分析では、主題文の名詞句からテーマを特定し支持文の句から具体的根拠を把握するという効率的な読解法を確立した。
これらの能力を統合することで、共通テスト本試レベルの英文において、句の構造を迅速に分析し、意味的役割を正確に判断し、文章全体の論理構造を追跡して、設問に効果的に対応することが可能になる。このモジュールで確立した句の識別・分析の原理と技術は、後続のモジュールで学ぶ節の定義と種類、文型判定、さらには長文読解における高度な構造分析の前提となる。
演習編
句の定義と種類に関する能力は、英文の構造を正確に把握するための出発点として機能する。句の識別が不十分であれば、文型の判定で修飾語と必須要素を取り違えたり、長文読解で前置詞句の修飾先を誤って文意を見失ったりする事態が生じる。共通テストでは、前置詞句を含む長い文の構造把握が正答に直結する出題が頻繁に見られ、MARCH・関関同立レベルの入試では、名詞句の照応関係や前置詞句の意味的あいまい性を利用した選択肢が出題される傾向がある。地方国立大学の英文和訳問題でも、句の修飾先を正確に特定する能力が得点を左右する。本演習は、基礎(教科書章末レベル)・標準(共通テスト本試レベル)・発展(MARCH中位レベル)の3段階で構成され、講義で学んだ句の識別・意味判断・文脈分析の手順を実際の問題場面で運用する力を検証する。
【出題分析】
出題形式と難易度
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 難易度 | ★★★☆☆ 標準 |
| 分量 | 3大問・試験時間25分 |
| 語彙レベル | 高校基礎〜共テ本試レベル |
| 構文複雑度 | 前置詞句の連続・名詞句の修飾構造を含む |
頻出パターン
共通テスト:前置詞句を複数含む長文の構造把握が求められる。特に、前置詞句の修飾先を正確に判断し、文意を把握した上で正答を選択する形式が中心となる。正答の根拠は句の統語的分析と意味的判断の組み合わせにある。
MARCH・関関同立:名詞句の照応関係や前置詞句の意味的あいまい性を利用した選択肢が出題される。複数の修飾語句を含む名詞句の指示対象を正確に特定する能力と、前置詞句が名詞と動詞のどちらを修飾しているかの判断力が問われる。
地方国立大学:英文和訳問題において、句の修飾先と文中機能を正確に特定する能力が求められる。特に、前置詞句が連続する文の構造を正しく把握し、日本語の語順に適切に変換する能力が得点を分ける。
差がつくポイント
句と節の区別において、現在分詞(-ing形)を含むまとまりが句であるか節であるかを正確に判定できるかどうかが差を生む。特に、述語動詞と分詞の区別を助動詞の有無に基づいて判断する力が重要である。
前置詞句の修飾先の特定において、文脈に基づいて名詞修飾と動詞修飾のどちらが適切であるかを判断できるかどうかが差を生む。特に、同一の前置詞句が二通りに解釈できる場面での文脈判断力が重要である。
名詞句の照応関係の追跡において、同義語や上位概念への言い換えを含む照応を正確に認識できるかどうかが差を生む。特に、“a scientist”→”the researcher”のような言い換えパターンを見落とさない注意力が重要である。
演習問題
試験時間: 25分 / 満点: 100点
第1問(30点)
次の各文について、下線部の語のまとまりが句であるか節であるかを判定し、句である場合はその種類(名詞句・前置詞句・形容詞句・副詞句)を答えよ。
(1)The children played 【in the large garden behind the house】.
(2)She didn’t know 【that the meeting had been canceled】.
(3)【The woman carrying a large bag】 entered the store.
(4)He finished the work 【very quickly】.
(5)We visited the museum 【which was built in the 19th century】.
(6)They discussed 【the best way to solve the problem】.
第2問(35点)
次の英文を読み、設問に答えよ。
A group of researchers at a university in California conducted a study on the effects of music on learning. According to their findings, students who listened to classical music during study sessions showed improved performance on memory tests. In contrast to the music group, students who studied in silence did not demonstrate the same level of improvement. The researchers suggested that the rhythmic patterns in classical music may help the brain organize and retain new information. As a result of this study, several schools in the region began incorporating background music into their classroom environments.
(1)下線部”A group of researchers at a university in California”の内部構造を分析せよ。中心語を特定し、各修飾語句の種類と修飾先を明示すること。
(2)下線部”In contrast to the music group”は、文中でどのような機能を果たしているか。修飾先と論理関係を含めて説明せよ。
(3)下線部”As a result of this study”の”this study”が指す内容を、本文から具体的に答えよ。
(4)本文の第2文において、”during study sessions”はどの語を修飾しているか。修飾先と意味的役割を答えよ。
第3問(35点)
次の各文について、句の修飾先や文中機能に関する設問に答えよ。
(1)次の文には意味的あいまい性がある。二通りの解釈を示し、それぞれにおける前置詞句の修飾先を明示せよ。
The professor discussed the problem with the students.
(2)次の2文における”with”を含む前置詞句の意味的役割の違いを説明せよ。
a) She opened the door with a key.
b) She opened the door with a smile.
(3)次の段落の主題文を特定し、支持文の前置詞句がどのように主題を支えているかを分析せよ。
Climate change affects communities in many different ways. In coastal areas, rising sea levels threaten homes and infrastructure. In agricultural regions, unpredictable weather patterns reduce crop yields. Because of these varied impacts, governments must develop region-specific adaptation strategies.
(4)次の文において省略されている要素を復元し、完全な文に書き直せ。
Tom prefers coffee in the morning, and his wife tea.
解答・解説
難易度構成
| 難易度 | 配点 | 大問 |
|---|---|---|
| 基礎 | 30点 | 第1問 |
| 標準 | 35点 | 第2問 |
| 発展 | 35点 | 第3問 |
結果の活用
| 得点 | 判定 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 80点以上 | A | 基礎体系へ進む |
| 60-79 | B | 誤答箇所の講義を再読し、同種の問題を追加演習 |
| 40-59 | C | 統語層・意味層を中心に講義を再読し、基本問題から再挑戦 |
| 40点未満 | D | 該当講義を復習後に再挑戦 |
第1問 解答・解説
【戦略的情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 句と節の区別、および句の種類の識別能力を検証する |
| 難易度 | 基礎 |
| 目標解答時間 | 6分 |
【思考プロセス】
レベル1:構造特定 → 各下線部の内部に述語動詞(時制変化を持つ動詞)と主語の関係があるかどうかを確認する。
レベル2:検証観点 → 述語動詞がなければ句、あれば節。句の場合は先頭語と中心語から種類を判定する。
【解答】
| 小問 | 解答 |
|---|---|
| (1) | 句(前置詞句)。inを先頭とし、述語動詞を含まない。 |
| (2) | 節(名詞節)。thatの後にthe meeting(主語)+ had been canceled(述語動詞)の関係がある。 |
| (3) | 句(名詞句)。中心語はwoman。carryingは現在分詞であり、助動詞を伴わないため述語動詞ではない。 |
| (4) | 句(副詞句)。中心語はquickly(副詞)。veryが程度を示す。動詞finishedを修飾。 |
| (5) | 節(形容詞節)。whichの後にwas built(述語動詞)がある。 |
| (6) | 句(名詞句)。中心語はway。to solve the problemは不定詞句でwayを修飾。内部に時制変化のある述語動詞がない。 |
【解答のポイント】
正解の論拠:句と節の区別は、内部に「主語+述語動詞」の関係が成立するかどうかで決まる。現在分詞(-ing形)や不定詞(to+動詞原形)は、助動詞を伴わない限り述語動詞ではないため、それらを含むまとまりは句に分類される。
誤答の論拠:(3)で”carrying”を述語動詞と誤認して節と判定するパターンが多い。助動詞(is, wasなど)を伴わない-ing形は述語動詞ではなく分詞である。
【再現性チェック】
この判定手順が有効な条件:語のまとまりが句であるか節であるかの判定が求められる全ての問題に適用可能。特に、分詞句・不定詞句と節の区別が問われる問題で有効。
【参照】
[基盤 M10-統語] └ 句の定義と節との区別の判定手順
[基盤 M11-統語] └ 節の定義と種類の識別
第2問 解答・解説
【戦略的情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 文章中での句の意味的役割・論理関係・照応関係の分析能力を検証する |
| 難易度 | 標準 |
| 目標解答時間 | 10分 |
【思考プロセス】
レベル1:構造特定 → 各設問で問われている句を特定し、その句の統語的種類と文中位置を確認する。
レベル2:検証観点 → 統語的分析に加えて、意味的役割(修飾先との関係)や談話的機能(文間の論理接続)を検証する。
【解答】
| 小問 | 解答 |
|---|---|
| (1) | 中心語:group。修飾語句:“of researchers”(前置詞句、groupの内容を限定=所属・構成)、“at a university”(前置詞句、researchersの所属先を限定=場所)、“in California”(前置詞句、universityの所在地を限定=場所)。入れ子構造:[A group [of researchers [at [a university [in California]]]]] |
| (2) | 文頭に配置された前置詞句で、動詞demonstrated(を含む文全体)を修飾する副詞的機能を果たしている。前の文の「音楽を聴いた学生グループ」と、本文の「沈黙の中で学習した学生グループ」を対比の論理関係でつないでいる。 |
| (3) | カリフォルニアの大学の研究者グループが行った、音楽が学習に与える影響に関する研究。具体的には、勉強中にクラシック音楽を聴いた学生が記憶テストで成績向上を示したという調査。 |
| (4) | “during study sessions”は動詞listened(または動詞句listened to classical music)を修飾している。意味的役割:時間(「勉強のセッション中に」聴いたという時間的条件を限定)。 |
【解答のポイント】
正解の論拠:(1)は名詞句の入れ子構造の分析であり、各前置詞句が直前の名詞を段階的に限定している。(2)は文頭の前置詞句”In contrast to”が対比の論理関係を明示する談話標識として機能している。(3)は”this study”が不定冠詞”a study”で導入された研究を定冠詞的指示語”this”で再言及する照応関係である。(4)は前置詞句”during study sessions”が動詞listenedの時間的条件を限定している。
誤答の論拠:(2)で”In contrast to the music group”をthe music groupの修飾語(形容詞的機能)と誤認するパターンがある。文頭にカンマで区切られた前置詞句は、通常、文全体を修飾する副詞的機能を持つ。
【再現性チェック】
この分析手順が有効な条件:長文読解問題において、前置詞句の修飾先、文間の論理関係、照応関係の追跡が求められる問題全般に適用可能。
【参照】
[基盤 M10-意味] └ 前置詞句の意味的役割の判定手順
[基盤 M10-談話] └ 前置詞句による文間接続と名詞句の照応関係
第3問 解答・解説
【戦略的情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 句の意味的あいまい性の分析、前置詞句の意味的役割の比較、段落構造の分析、省略の復元を総合的に検証する |
| 難易度 | 発展 |
| 目標解答時間 | 9分 |
【思考プロセス】
レベル1:構造特定 → 各設問で分析対象となる句を特定し、統語的・意味的・談話的分析のどのレベルが求められているかを判断する。
レベル2:検証観点 → (1)は修飾先の複数可能性、(2)は同一前置詞の意味的多様性、(3)は段落構造における句の機能、(4)は省略の復元と検証。
【解答】
| 小問 | 解答 |
|---|---|
| (1) | 解釈A:”with the students”がdiscussedを修飾(副詞的)→「学生たちと一緒にその問題を議論した」。解釈B:”with the students”がproblemを修飾(形容詞的)→「学生たちに関する問題を議論した」。文脈がなければどちらの解釈も文法的に可能。 |
| (2) | (a) “with a key”:手段の意味的役割。keyは動作(opened)を実現する道具。「鍵を使ってドアを開けた」。(b) “with a smile”:付帯状況(様態)の意味的役割。smileは動作の際の状態を描写。「笑顔でドアを開けた」。同じ前置詞withでも、後続名詞句の意味的特性(道具 vs. 表情)と動詞との関係(手段 vs. 様態)によって意味的役割が異なる。 |
| (3) | 主題文:第1文”Climate change affects communities in many different ways.”。支持文の前置詞句:“In coastal areas”(場所を限定し、海面上昇の影響を具体化)、“In agricultural regions”(場所を限定し、農業への影響を具体化)、“Because of these varied impacts”(原因を示し、結論への論理的接続を形成)。支持文の前置詞句は、主題文の”in many different ways”を地域別の具体例と因果関係によって裏付けている。 |
| (4) | 復元:Tom prefers coffee in the morning, and his wife prefers tea.(省略要素:“prefers”。”in the morning”は共通の前提として省略可能。)完全な復元:”Tom prefers coffee in the morning, and his wife prefers tea in the morning.“または”Tom prefers coffee in the morning, and his wife prefers tea.”(in the morningが共通の前提として省略可能) |
【解答のポイント】
正解の論拠:(1)の意味的あいまい性は、前置詞句”with the students”が動詞discussedと名詞problemのどちらも修飾先として取りうることから構造的に発生する。(2)では同じ前置詞withが、後続名詞句の意味的特性に応じて手段と付帯状況という異なる意味的役割を果たしている。(3)では文頭の前置詞句が場所を限定して主題の具体例を提供し、”Because of”が因果関係で結論に接続する談話的機能を果たしている。(4)では述語動詞prefersの省略を文法的不完全さから認識し、前の文の対応要素から復元する。
誤答の論拠:(1)で一方の解釈のみを示し、あいまい性の存在を認識していないパターンが多い。(3)で支持文の前置詞句を単なる場所の提示と捉え、主題との支持関係を分析しないパターンがある。
【再現性チェック】
この分析手順が有効な条件:句の意味的あいまい性が問われる問題、前置詞句の意味的比較が求められる問題、段落の構造分析が求められる問題、および省略の復元が求められる問題全般に適用可能。
【参照】
[基盤 M10-意味] └ 句の意味的あいまい性の分析と解消
[基盤 M10-談話] └ 段落内での句の情報的役割
【関連項目】
[基盤 M11-統語]
└ 節の定義と種類の識別を学び、句と節の区別をさらに深める
[基盤 M13-統語]
└ 5文型の判定において句の文中機能がどのように活用されるかを確認する