【基盤 英語】モジュール15:時制の形態と識別

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目次

本モジュールの目的と構成

英文を読む際、動詞の形が変わっていることに気づいても、それが何を意味するのかを正確に判断できなければ、文全体の意味を取り違える。”He plays tennis.”と”He played tennis.”の違いは単なる語尾の変化ではなく、出来事が現在の習慣なのか過去の事実なのかという時間的位置づけの違いを反映している。”She has left.”と”She left.”の違いも同様に、動詞の形態から時間関係を読み取る能力がなければ区別できない。時制の形態を正確に識別する能力は、英文のあらゆる箇所で要求される最も基本的な文法判断である。動詞の形態変化のパターンを体系的に把握し、任意の英文中で時制を即座に特定できる状態を確立することを目的とする。

本モジュールは以下の層で構成される:

統語:時制形態の構造的識別 → 時制とは動詞の形態変化によって表される文法範疇であり、英語には現在形と過去形という二つの形態的時制が存在する。統語層では、動詞の語尾変化・助動詞の有無・be動詞やhave動詞との組み合わせといった形態的手がかりから、時制を正確に特定する技術を確立する。

意味:時制形態と時間関係の対応 → 動詞の形態が特定できても、その形態がどのような時間関係を表すかを理解しなければ文意の把握には至らない。意味層では、現在形が「現在の状態・習慣」を、過去形が「過去の事実・完了した出来事」を表すという基本的対応関係を確立し、形態から時間関係を導く判断力を養成する。

語用:時制形態の文脈的判断 → 同じ現在形でも”Water boils at 100°C.”のような一般的真理と”He leaves tomorrow.”のような確定的未来では機能が異なる。語用層では、文脈情報を手がかりとして時制形態の具体的な機能を識別する力を確立する。

談話:複数時制の連続的処理 → 実際の英文では一つの文だけでなく、複数の文にわたって時制が変化しながら情報が展開される。談話層では、文章中で時制の切り替わりを追跡し、出来事の時間的順序を正確に把握する能力を確立する。

このモジュールを修了すると、以下の能力が身につく。任意の英文中の動詞を見た瞬間に、その形態から時制を特定できるようになる。規則動詞の-ed語尾、不規則動詞の変化形、三単現の-s、be動詞・have動詞の活用形といった形態的手がかりを瞬時に処理し、「この動詞は現在形か過去形か」を迷わず判断できる。さらに、特定した時制形態からその文が表す時間関係を導き出し、文全体の意味を正確に把握する力が確立される。時間副詞(yesterday, every dayなど)との整合性を検証する技術も身につくため、時制に関する設問で誤答する原因を根本から排除できる。この能力は、後続のモジュールで学ぶ完了形・進行形・受動態の識別においても前提となり、動詞の形態分析という技術をさらに複合的な文法形式へと発展させることができる。

統語:時制形態の構造的識別

英文を正確に読むための第一歩は、動詞の形態を見て「これは現在形か過去形か」を即座に判定できることである。この層を終えると、規則動詞・不規則動詞・be動詞・助動詞のいずれにおいても、形態的手がかりから時制を正確に特定できるようになる。品詞の基本的な分類と、動詞が文中で述語として機能するという知識を備えていれば、ここから先の分析に進める。動詞の語尾変化のパターン、不規則動詞の変化形の体系、be動詞とhave動詞の活用形の識別を扱う。統語層で確立した形態識別の能力は、意味層で時間関係を判断する際の不可欠な前提となる。

形態的な時制識別が重要なのは、英語の時制が語順や文脈ではなく動詞の形態そのものに刻まれているためである。日本語では「食べる」と「食べた」の違いは語尾一音の変化だが、英語でもeat/ate、play/playedのように動詞の形が時制情報を直接担っている。形態を正確に読み取れなければ、文の時間的位置づけを誤り、内容理解全体が崩れる。

【関連項目】

[基盤M14-統語]
└ 文の要素の識別で確立した述語動詞の特定技術が、時制識別の出発点となる

[基盤M04-統語]
└ 動詞の種類(本動詞・助動詞・be動詞)の識別基準が時制形態の分析に直結する

【基礎体系】

[基礎M06-統語]
└ 時制とアスペクトの統合的理解へ発展させる

1. 規則動詞と不規則動詞の時制形態

動詞の時制を識別する際、「現在形はそのままの形、過去形は-edをつけた形」という理解だけで十分だろうか。実際の英文では、不規則動詞が頻出し、-edの発音が三種類に分かれ、さらに三単現の-sと過去形の-edを混同する場面が繰り返し生じる。時制形態の識別が不十分なまま長文に取り組むと、動詞の時制を見誤り、文全体の時間関係を取り違える結果となる。

動詞の時制形態の識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、規則動詞の現在形・過去形を語尾変化から正確に判定できるようになる。第二に、不規則動詞の過去形を変化パターンの体系に基づいて識別できるようになる。第三に、三単現の-sと過去形の-edを混同せずに区別できるようになる。第四に、動詞の原形・現在形・過去形という三つの形態を任意の文中で即座に特定できるようになる。

動詞の時制形態の識別は、次の記事で扱うbe動詞・have動詞の活用形識別、さらに完了形・進行形の形態識別へと直結する。ここでの理解が後続の全ての学習を可能にする。

1.1. 規則動詞の時制形態

一般に規則動詞の時制変化は「過去形には-edをつける」と単純に理解されがちである。しかし、この理解は-edの付加規則の例外(-eで終わる語にはdのみ、子音+yはiedに変化など)を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、規則動詞の時制形態とは、原形に対して現在形では主語の人称・数に応じた語尾(三単現-s/-es)が付加され、過去形では-ed/-d/-iedが付加されるという体系的な形態変化として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、語尾変化の規則を体系的に把握することで、初見の動詞であっても時制を即座に判定できるようになるためである。

この原理から、規則動詞の時制を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では動詞の語尾を確認する。語尾が-ed/-d/-iedであれば過去形、-s/-esであれば三単現の現在形と判定することで、時制の候補を絞り込める。この段階で注意すべきは、-edの付加に伴う綴り変化(子音字の重複、yのi変化、-eへのd付加)が規則的に生じるため、語尾の変形パターンまで視野に入れて判断する必要がある点である。たとえばstoppedの-ppedやcarriedの-iedは一見不規則に見えるが、いずれも規則動詞の綴り規則に従った変化である。手順2では主語との一致を確認する。主語が三人称単数で動詞に-s/-esがついていれば現在形、主語が複数や一人称で動詞が原形であれば現在形と確定することで、現在形の判定が正確になる。ここで三単現の-sと名詞の複数形の-sを混同しないよう、動詞と名詞の文中での位置関係に注意する。主語の直後に-sがついた語があれば動詞の三単現を疑い、冠詞・形容詞の後に-sがついた語があれば名詞の複数形を疑うという基本的な手がかりが有効である。手順3では文中の時間表現との整合性を検証する。yesterday、last weekなどの過去の時間表現があれば過去形の判定を補強し、every day、usuallyなどの習慣表現があれば現在形の判定を補強することで、誤判定を防止できる。手順4では判定結果を総合する。語尾の形態、主語との一致、時間表現との整合性という三つの手がかりが全て同一の時制を指し示していれば判定は確定し、いずれかが矛盾する場合は文構造の再分析が必要となることで、判定の信頼性が担保される。

例1: She played the piano yesterday.
→ 語尾: -ed(play + ed)。主語: She(三人称単数)。時間表現: yesterday。
→ 判定: 過去形。三つの手がかり(語尾-ed・主語に対する活用の整合・yesterdayの過去性)が全て過去形を支持する。

例2: They walk to school every morning.
→ 語尾: 原形のまま(-s/-edなし)。主語: They(三人称複数)。時間表現: every morning。
→ 判定: 現在形。複数主語に対して原形をとるのは現在形の特徴であり、every morningが習慣の現在形を補強する。

例3: He studies mathematics on weekends.
→ 語尾: -ies(study → studies、子音+yの変化)。主語: He(三人称単数)。時間表現: on weekends。
→ 判定: 現在形(三単現)。studyがstudiesに変化するのはy→iesの綴り規則に従っており、不規則変化ではない。

例4: The company announced a new product last month.
→ 語尾: -d(announce + d、-eで終わる語)。主語: The company(三人称単数)。時間表現: last month。
→ 判定: 過去形。announceは-eで終わるため-dのみの付加で過去形となる。last monthが過去形の判定を補強する。

以上により、規則動詞の語尾変化パターンを体系的に把握し、主語との一致確認と時間表現の整合性検証を組み合わせて、任意の英文中で規則動詞の時制を正確に判定することが可能になる。

1.2. 不規則動詞の時制形態

不規則動詞とは何か。「規則動詞以外の動詞」という回答は、不規則動詞の変化パターンに内在する体系性を見落としている。不規則動詞の本質は、-edの付加ではなく母音交替・語幹変化・無変化といった独自の形態変化によって過去形を標示する動詞群であり、その変化パターンにはいくつかの類型が存在する。この理解が重要なのは、不規則動詞を「例外」として個別に暗記するのではなく、変化パターンの類型を認識することで効率的な識別が可能になるためである。主要な類型として、ABC型(原形・過去形・過去分詞が全て異なる: sing-sang-sung, write-wrote-written)、ABB型(過去形と過去分詞が同形: teach-taught-taught, buy-bought-bought)、AAA型(三形が全て同形: cut-cut-cut, put-put-put)、ABA型(原形と過去分詞が同形: come-came-come, run-ran-run)がある。これらの類型を知っているだけで、不規則動詞の大半をカバーできる。

以上の原理を踏まえると、不規則動詞の時制を識別するための手順は次のように定まる。手順1では動詞の形態を原形と比較する。母音が変化していれば(sing→sang、write→wrote)不規則動詞の過去形と判定できる。この段階では、原形を知っている必要があるが、入試で頻出する不規則動詞は約100語程度であり、変化パターンの類型と組み合わせて整理すれば、個別の暗記の負荷を大幅に軽減できる。手順2では変化パターンの類型を特定する。ABC型であれば過去形と過去分詞を明確に区別する必要があり(write→wroteは過去形、writtenは過去分詞)、ABB型であれば過去形と過去分詞が同形のため後続の文構造で区別し(taughtが単独なら過去形、has taughtなら過去分詞)、AAA型であれば形態のみでは時制が判定できないため文脈・時間表現・助動詞の有無で判断する必要があることで、類型に応じた追加判定の方針が定まる。手順3では文の構造から時制を確定する。助動詞の有無、主語との関係、時間表現との整合性を総合的に判断することで、不規則動詞の時制を確実に特定できる。特にAAA型(cut, put, shut等)は形態が同一であるため、yesterday, every dayなどの時間表現が時制確定の決定的な手がかりとなる。手順4では過去形と過去分詞の混同を防止する。不規則動詞の過去形を見た際に、それが単純過去形の述語動詞なのか、完了形・受動態の一部としての過去分詞なのかを、have/be動詞の有無で判別することで、文構造の誤認を回避できる。

例1: She wrote a letter to her friend.
→ 形態: write→wrote(母音交替、ABC型:write-wrote-written)。助動詞なし。主語に対する唯一の述語動詞。
→ 判定: 過去形。has wroteではないため過去分詞ではなく単純過去形と確定する。

例2: The children ran across the park.
→ 形態: run→ran(母音交替、ABA型:run-ran-run)。助動詞なし。
→ 判定: 過去形。ABA型のため過去分詞はrunであり、ranは過去形でしかありえない。

例3: He cut the paper with scissors yesterday.
→ 形態: cut→cut(無変化、AAA型)。時間表現: yesterday。助動詞なし。
→ 判定: 過去形。AAA型では形態のみで時制を判定できないが、yesterdayが過去を確定させる。yesterdayがなければ「He cut the paper with scissors.」は現在形と過去形の両方の解釈が可能となるため、文脈判断が不可欠である。

例4: They spoke about the issue at the meeting.
→ 形態: speak→spoke(母音交替、ABC型:speak-spoke-spoken)。助動詞なし。at the meetingは場所の特定であり明示的な時間表現ではないが、meetingが過去の出来事として語られている文脈。
→ 判定: 過去形。spokeはABC型の過去形であり、spokenが過去分詞である。

これらの例が示す通り、不規則動詞の変化パターンを類型として認識し、文の構造・時間表現と総合して判断する能力が確立される。

2. be動詞・have動詞の時制形態

be動詞とhave動詞を学ぶ際、「am/is/areが現在、was/wereが過去」という対応関係だけで十分だろうか。実際の英文では、be動詞が進行形(is playing)や受動態(was written)の一部として現れ、have動詞が完了形(has finished)の一部として現れる場面が頻繁に生じる。be動詞・have動詞の時制形態を識別する能力が不十分なまま長文に取り組むと、これらの動詞が本動詞として使われているのか助動詞として使われているのかを判別できず、文構造の把握に失敗する。

be動詞・have動詞の時制形態の識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、be動詞の六つの活用形(am, is, are, was, were, been)を主語の人称・数および時制と正確に対応づけられるようになる。第二に、have動詞の活用形(have, has, had)を時制と対応づけられるようになる。第三に、be動詞・have動詞が本動詞として機能する場合と助動詞として機能する場合を区別できるようになる。

be動詞・have動詞の形態識別は、後続のモジュールで扱う完了形・進行形・受動態の識別の前提条件である。

2.1. be動詞の活用体系と時制判定

一般にbe動詞は「am/is/areが現在形、was/wereが過去形」と漠然と理解されがちである。しかし、この理解は主語の人称・数との対応関係を明確にしていないという点で不正確である。学術的・本質的には、be動詞とは英語で最も不規則な活用をする動詞であり、現在形で三つの形(am/is/are)、過去形で二つの形(was/were)を持ち、主語の人称と数によって形態が決定される動詞として定義されるべきものである。この体系的理解が重要なのは、be動詞の形態を見た瞬間に主語の人称・数と時制の両方を同時に読み取れるようになるためである。

この原理から、be動詞の時制を識別する具体的な手順が導かれる。手順1ではbe動詞の形態を特定する。am/is/areであれば現在形、was/wereであれば過去形と即座に判定できる。この判定自体は単純だが、重要なのはbe動詞の形態が主語の人称・数を同時に反映している点である。amはIのみ、isは三人称単数(he/she/it)のみ、areはyouおよび複数主語に対応し、wasはI・三人称単数、wereはyou・複数主語に対応する。この対応関係を正確に把握していれば、be動詞の形態から主語の文法的性質まで逆推定できる。手順2では主語との一致を確認する。am→I、is→三人称単数、are→you/複数、was→I/三人称単数、were→you/複数という対応を検証することで、誤判定を防止できる。主語が長い名詞句(The students who participated in the programなど)の場合でも、名詞句の中核語(students=複数)に対してbe動詞の形態が一致しているかを確認する習慣をつけることが重要である。手順3ではbe動詞の後続要素を確認する。後続が名詞・形容詞であれば本動詞(SVC文型)、-ing形であれば進行形の助動詞、過去分詞であれば受動態の助動詞と判定することで、be動詞の機能まで特定できる。この手順3は時制の識別それ自体には影響しないが、be動詞を含む文の構造を正確に把握するために不可欠であり、進行形や受動態のモジュールへの橋渡しとなる。手順4では文全体の構造との整合性を確認する。主節と従属節でbe動詞が別々に出現する場合、それぞれのbe動詞が異なる主語に対応している可能性があるため、各be動詞とその主語の対応を個別に検証することで、複合文における判定精度が向上する。

例1: The students were in the library.
→ 形態: were(過去形)。主語: The students(三人称複数)。後続: in the library(前置詞句→本動詞「いる」)。
→ 判定: 過去形・本動詞。wereは複数主語に対応する過去形であり、後続が前置詞句のため本動詞(SVC/場所を表す用法)と確定する。

例2: She is a talented musician.
→ 形態: is(現在形)。主語: She(三人称単数)。後続: a talented musician(名詞句→本動詞)。
→ 判定: 現在形・本動詞。isは三人称単数主語に対応する現在形であり、後続が名詞句のためSVC文型の本動詞と確定する。

例3: I am reading a novel now.
→ 形態: am(現在形)。主語: I(一人称単数)。後続: reading(-ing形→進行形の助動詞)。
→ 判定: 現在形・進行形の助動詞。amはIに対応する現在形であり、後続が-ing形のため現在進行形のbe助動詞と確定する。時制はamの形態から「現在」と判定する。

例4: The window was broken by the storm.
→ 形態: was(過去形)。主語: The window(三人称単数)。後続: broken(過去分詞→受動態の助動詞)。by the storm(動作主を示す前置詞句)。
→ 判定: 過去形・受動態の助動詞。wasは三人称単数主語に対応する過去形であり、後続が過去分詞+by句のため受動態のbe助動詞と確定する。

以上により、be動詞の形態から時制・主語の人称数・動詞の機能(本動詞か助動詞か)を総合的に判定することが可能になる。

2.2. have動詞の活用体系と時制判定

では、have動詞の時制形態を識別するにはどうすればよいか。have動詞はbe動詞ほど多くの活用形を持たないが、本動詞(「持つ」の意味)と完了形の助動詞という二つの機能を兼ねるため、形態だけでは機能を判別できない場面がある。have動詞の本質は、現在形でhave/has、過去形でhadという三つの形を持ち、後続要素の形態によって本動詞か助動詞かが決定される動詞であるという点にある。

上記の定義から、have動詞の時制を識別する手順が論理的に導出される。手順1ではhave動詞の形態を特定する。have/hasであれば現在形、hadであれば過去形と判定できる。hasは三人称単数主語にのみ対応し、haveはそれ以外の主語に対応するため、be動詞と同様に形態から主語の人称・数の情報も得られる。手順2では主語との一致を確認する。has→三人称単数、have→それ以外という対応を検証することで、現在形の判定が正確になる。hadは人称・数による変化がなく、全ての主語に対して同一形態であるため、主語との一致は時制判定を補強しない点に注意が必要である。手順3ではhave動詞の後続要素を確認する。後続が名詞であれば本動詞(「持つ」)、過去分詞であれば完了形の助動詞と判定することで、機能まで特定できる。この判定は文意の理解に直結するため、丁寧に行う必要がある。たとえば”She has finished.”のfinishedは過去分詞であり、hasは完了形の助動詞だが、”She has a finished product.”のfinishedは形容詞(名詞productを修飾)であり、hasは本動詞(「持っている」)である。後続要素が過去分詞なのか形容詞なのかは、名詞の有無で判断する。手順4では文脈情報を補助的に利用する。hadは過去形であるため、本動詞の場合は「過去に持っていた」、完了形の助動詞の場合は「過去完了」を表す。過去完了は「過去のある時点よりさらに前の出来事」を表すため、文中に基準となる過去の時点(when he arrived, by that timeなど)が存在するかどうかを確認することで、hadの機能判定がより正確になる。

例1: They have two cats.
→ 形態: have(現在形)。主語: They(三人称複数)。後続: two cats(名詞句→本動詞「持つ」)。
→ 判定: 現在形・本動詞。後続が名詞句であるため「持つ」の意味の本動詞と確定する。

例2: She has finished her homework.
→ 形態: has(現在形)。主語: She(三人称単数)。後続: finished(過去分詞→完了形の助動詞)。
→ 判定: 現在形・完了形の助動詞(現在完了)。finishedが過去分詞であることは、名詞が直後に続かない(her homeworkはfinishedの目的語であり、hasの目的語ではない)ことから判断できる。

例3: He had a headache yesterday.
→ 形態: had(過去形)。主語: He(三人称単数)。後続: a headache(名詞句→本動詞「持つ」)。時間表現: yesterday。
→ 判定: 過去形・本動詞。後続が名詞句であり、yesterdayが過去の時間表現であるため、「昨日頭痛があった」の意味と確定する。

例4: We had already left when the rain started.
→ 形態: had(過去形)。主語: We。後続: already left(副詞+過去分詞→完了形の助動詞)。基準時点: when the rain started(過去の時点)。
→ 判定: 過去形・完了形の助動詞(過去完了)。leftが過去分詞であること、when節が基準となる過去の時点を提供していることから、「雨が降り始めたとき、すでに出発していた」という過去完了の構造と確定する。

以上の適用を通じて、have動詞の形態から時制と機能(本動詞か完了形の助動詞か)を正確に識別する能力を習得できる。

3. 助動詞と時制形態の関係

助動詞を含む文の時制を識別する際、「助動詞がある文では動詞が原形になる」という知識だけで十分だろうか。実際の英文では、助動詞が現在形(can, will, may)か過去形(could, would, might)かによって文全体の時制が変わり、さらに助動詞の後に完了形(have + 過去分詞)が続く場合もある。助動詞を含む文の時制判定が不確実なまま読解に取り組むと、仮定法の過去形や丁寧表現のcouldを単純な過去と誤認する原因となる。

助動詞と時制形態の関係を理解することで、以下の能力が確立される。第一に、助動詞自体が持つ時制形態(現在形・過去形の対)を識別できるようになる。第二に、助動詞の後に続く動詞が原形であることを確認し、本動詞の形態変化と助動詞の時制を区別できるようになる。第三に、助動詞を含む文全体の時制を、助動詞の形態から正確に判定できるようになる。

助動詞の時制形態の理解は、後続のモジュールで扱う助動詞の意味・用法(推量、義務、許可など)を学ぶための前提条件となる。

3.1. 助動詞の時制形態体系

一般に助動詞は「動詞の前に置かれて意味を添える語」と理解されがちである。しかし、この理解は助動詞自体が時制変化を持つという重要な性質を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、助動詞とは動詞の前に位置して法性(modality)を表す語であり、can/could、will/would、may/might、shall/shouldのように現在形と過去形の対を持つ語類として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、助動詞を含む文の時制は助動詞自体の形態によって決定され、後続の本動詞は常に原形をとるためである。

この原理から、助動詞を含む文の時制を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では助動詞を特定する。主語と動詞の原形の間に位置する語が助動詞であり、can/will/may/shall(現在形)またはcould/would/might/should(過去形)のいずれかを確認することで、助動詞を特定できる。助動詞の特定において注意すべきは、助動詞が文頭に移動する疑問文(Can you…? / Will she…?)の場合にも、助動詞と本動詞の関係は変わらない点である。手順2では助動詞の時制形態を判定する。can→could、will→would、may→might、shall→shouldという現在形・過去形の対応関係に基づき、助動詞自体の時制を判定することで、文全体の時制が確定する。ただし、ここで重要な注意点がある。could/would/might/shouldは形態上「過去形」であるが、常に時間的過去を表すとは限らない。丁寧表現(Could you…?)や仮定法(If I could…)では、過去形の形態が「心理的距離」を表しており、時間的な過去とは異なる機能を果たす。この形態と機能のずれは語用層で詳しく扱うが、統語層の段階では「形態上の時制」を正確に判定することに集中し、機能の判断は後の層に委ねるという手順の切り分けが重要である。手順3では後続の動詞が原形であることを検証する。助動詞の後に-s/-ed/-ingなどの語尾変化がある動詞が続いていれば、構造の誤認の可能性を検討することで、判定の正確性が担保される。たとえば”He can plays tennis.”は文法的に誤りであり、正しくは”He can play tennis.”である。手順4では助動詞が複数連続する構造に注意する。英語では助動詞の連続は原則として不可だが、will have + 過去分詞(未来完了)のように助動詞+have+過去分詞という形式が存在する。この場合、時制を担うのは最初の助動詞(will=現在形)であり、haveは原形として機能している。

例1: She can speak three languages.
→ 助動詞: can(現在形)。後続動詞: speak(原形)。
→ 判定: 現在形。canは現在の能力を表す。

例2: They could see the mountain from their window.
→ 助動詞: could(過去形)。後続動詞: see(原形)。
→ 判定: 過去形(形態上)。文脈から過去の能力を表すと解釈される。

例3: He will arrive at noon tomorrow.
→ 助動詞: will(現在形)。後続動詞: arrive(原形)。時間表現: tomorrow。
→ 判定: 現在形(形態上)。willは現在形の形態を持つ助動詞であり、未来の出来事を表す用法で使われている。「未来形」という独立した時制は英語には存在せず、現在形の助動詞willが未来の意味を表す。

例4: We should finish the report by Friday.
→ 助動詞: should(shallの過去形に由来するが、現在の義務・助言を表す用法)。後続動詞: finish(原形)。
→ 判定: 形態上は過去形だが、意味上は現在の助言。形態と意味のずれが存在する例であり、このずれは語用層で体系的に扱う。

4つの例を通じて、助動詞の時制形態を正確に特定し、文全体の時制を判定する実践方法が明らかになった。

4. 否定文・疑問文における時制形態

否定文や疑問文で時制を識別する際、「don’t/doesn’tが現在、didn’tが過去」という対応だけで十分だろうか。実際の英文では、否定文・疑問文においてdo/does/didが時制情報を担い、本動詞は原形に戻るという構造的特徴がある。この仕組みを理解していなければ、”She didn’t go.”のgoが原形であることに気づかず、時制判定や文構造の把握に支障をきたす。否定文・疑問文の時制が不確実なまま読解に取り組むと、do助動詞の時制と本動詞の形態を混同し、文の時間関係を誤認する原因となる。

否定文・疑問文の時制識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、do/does/didが時制標識として機能し、本動詞が原形をとるという構造原理を正確に理解できるようになる。第二に、否定文におけるdon’t/doesn’t/didn’tの形態から時制を即座に判定できるようになる。第三に、疑問文におけるdo/does/didの位置と形態から時制を判定できるようになる。第四に、be動詞・助動詞を含む否定文・疑問文とdo助動詞を含む否定文・疑問文を区別できるようになる。

否定文・疑問文の時制形態の理解は、次の記事で扱う時制形態の総合的識別の前提条件であり、あらゆる文構造で時制を特定する力の基盤となる。

4.1. do助動詞による時制標示の原理

do/does/didは「否定文や疑問文を作るために使う語」と単純に理解されることが多い。しかし、この理解はdo助動詞が時制情報を本動詞から引き受けるという重要な機能を見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、do助動詞とは、一般動詞の否定文・疑問文において時制標識の機能を本動詞から引き受ける支持動詞(do-support)として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、否定文・疑問文では時制がdo助動詞に移動するため、本動詞は常に原形となり、本動詞の形態からは時制を判定できないことを理解する必要があるためである。

この原理から、否定文・疑問文の時制を識別する具体的な手順が導かれる。手順1ではdo助動詞の有無と形態を確認する。don’t/doesn’tがあれば現在形の否定、didn’tがあれば過去形の否定と判定することで、時制を即座に特定できる。疑問文の場合は文頭のDo/Does/Didの形態から同様に判定する。doesは三人称単数主語に対応する現在形、doはそれ以外の主語に対応する現在形、didは全ての主語に対応する過去形である。手順2では本動詞が原形であることを検証する。do助動詞の後に-s/-ed/-ingなどの語尾変化がある動詞が続いていれば構造の誤りの可能性を検討することで、判定の信頼性が高まる。よくある誤りとして”She doesn’t likes coffee.“(正しくはlike)や”Did they finished?”(正しくはfinish)がある。手順3ではbe動詞・助動詞を含む文との区別を行う。主語の直後にbe動詞や法助動詞がある場合はdo助動詞を使わないため、否定・疑問の構造が異なることを確認することで、文構造の誤認を防止できる。be動詞の否定は「be動詞+not」(She is not happy.)、法助動詞の否定は「助動詞+not」(He cannot swim.)であり、do助動詞は不要である。手順4では否定疑問文や付加疑問文など、より複雑な構造にも同じ原理を適用する。“Doesn’t she like coffee?”(否定疑問文)や”She likes coffee, doesn’t she?”(付加疑問文)においても、do助動詞の形態が時制を標示し、本動詞は原形(like)であるという原理は変わらない。この統一的な原理の適用により、あらゆる否定文・疑問文で時制を正確に判定できるようになる。

例1: She doesn’t like coffee.
→ do助動詞: doesn’t(現在形・三単現の否定)。本動詞: like(原形)。
→ 判定: 現在形の否定文。doesn’tが三人称単数主語に対応する現在形の否定を標示している。

例2: Did they finish the project?
→ do助動詞: Did(過去形の疑問)。本動詞: finish(原形)。
→ 判定: 過去形の疑問文。Didが過去形を標示し、finishは原形のまま。finishedではない。

例3: He didn’t understand the question.
→ do助動詞: didn’t(過去形の否定)。本動詞: understand(原形)。
→ 判定: 過去形の否定文。understandは不規則動詞(understand-understood-understood)だが、do助動詞がある場合は原形をとるため、understoodではなくunderstandとなる。

例4: Do you usually walk to school?
→ do助動詞: Do(現在形の疑問)。本動詞: walk(原形)。頻度副詞: usually。
→ 判定: 現在形の疑問文(習慣を問う)。Doが現在形を標示し、usuallyが習慣的行為であることを確認する。

以上により、否定文・疑問文においてdo助動詞の形態から時制を正確に判定し、本動詞が原形であることを検証する能力が可能になる。

5. 時制形態の総合的識別手順

時制形態の識別を学ぶ際、規則動詞・不規則動詞・be動詞・have動詞・助動詞のそれぞれについて個別に判定方法を知っているだけで十分だろうか。実際の英文では、一つの文に複数の動詞が現れ、本動詞と助動詞が組み合わさり、否定・疑問の構造が加わるなど、複合的な判断が求められる。個別の知識を統合した総合的な識別手順を持たなければ、複雑な文で時制判定に失敗する原因となる。

時制形態の総合的識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、任意の英文を見たときに、統一的な手順で述語動詞の時制を特定できるようになる。第二に、助動詞・be動詞・have動詞・do助動詞のいずれが時制を担っているかを即座に判別できるようになる。第三に、複数の動詞を含む文で、主節と従属節それぞれの時制を独立に判定できるようになる。

時制形態の総合的識別手順は、意味層で学ぶ時間関係の知識と統合することで、英文の時間的意味の完全な把握を実現する。

5.1. 統一的な時制識別プロトコル

時制識別とは何か。個々の動詞変化の知識を場当たり的に適用することではなく、すべての動詞形態に統一的に適用できる判定手順を実行することである。統一的な時制識別プロトコルとは、文中の述語動詞群を特定し、時制標識を担う要素を同定し、その形態から時制を確定するという三段階の判定手順である。このプロトコルが重要なのは、初見の英文であっても同じ手順を適用するだけで時制を正確に特定できるようになるためである。

この原理から、時制を統一的に識別する具体的な手順が導かれる。手順1では述語動詞群を特定する。文の主語に対応する動詞要素(助動詞+本動詞の組み合わせを含む)を全て抽出することで、分析対象を確定できる。述語動詞群の特定に際して、分詞構文のような準動詞は主節の述語動詞ではないため、まず主語と対応する定形動詞を見つけることが出発点となる。手順2では時制標識を担う要素を同定する。助動詞がある場合は最初の助動詞(can, will, did, has等)が時制を担い、助動詞がない場合は本動詞自体が時制を担うと判定することで、時制情報の所在が明確になる。「最初の助動詞」という規則が重要なのは、has been reviewingのように複数の要素が連なる場合でも、最初のhas(現在形)が時制を標示するという原理が一貫しているためである。手順3では時制標識の形態から時制を確定する。現在形の形態(原形/-s/-es、am/is/are、have/has、can/will/may等)か過去形の形態(-ed/不規則変化、was/were、had、could/would/might等)かを判定することで、時制が確定する。この段階で「現在形」「過去形」のいずれかに必ず分類でき、英語の形態的時制は二者択一である。手順4では複文の場合、主節と従属節に対して手順1〜3を独立に適用する。”I think she left early.”であれば、主節の述語動詞群はthink(現在形)、従属節の述語動詞群はleft(過去形)であり、それぞれ独立に時制を判定する。主節と従属節の時制が異なる場合も文法的に許容される(時制の一致の規則は別途扱う)。この手順の独立適用により、複雑な複文でも各節の時制を正確に特定できるようになる。

例1: The manager has been reviewing the documents all morning.
→ 述語動詞群: has been reviewing。時制標識: has(最初の助動詞、現在形)。
→ 判定: 現在形(現在完了進行形)。has→been(過去分詞)→reviewing(-ing形)という連鎖の中で、時制を担うのは最初のhasである。

例2: Could you pass me the salt?
→ 述語動詞群: could pass。時制標識: could(助動詞、過去形の形態だが丁寧表現)。本動詞: pass(原形)。
→ 判定: 形態上は過去形。couldの具体的な機能(過去の能力か丁寧表現か)は語用的に判断するが、形態上の時制は「過去形」と判定する。

例3: The results were not announced until yesterday.
→ 述語動詞群: were not announced。時制標識: were(be動詞、過去形)。本動詞: announced(過去分詞→受動態)。
→ 判定: 過去形(受動態の過去形)。wereが時制を標示し、announcedは受動態を構成する過去分詞である。

例4: I don’t think he will come tomorrow.
→ 主節述語動詞群: don’t think。時制標識: don’t(do助動詞、現在形の否定)。本動詞: think(原形)。
→ 従属節述語動詞群: will come。時制標識: will(助動詞、現在形)。本動詞: come(原形)。
→ 判定: 主節=現在形、従属節=現在形(未来を表すwill)。主節と従属節に対してプロトコルを独立に適用することで、各節の時制を正確に判定できる。

4つの例を通じて、あらゆる構造の英文に対して統一的なプロトコルを適用し、時制を正確に特定する実践方法が明らかになった。

5. 時制形態と綴り・発音の変化規則

時制の形態識別を実際に行う際、動詞の綴りや発音が規則的に変化する仕組みを正確に把握しているだろうか。規則動詞の-ed付加においても、stopがstoppedと子音字を重ねる場合や、studyがstudiedとyがiedに変わる場合があり、三単現の-sにおいてもteachがteachesと-esになる場合がある。これらの綴り変化の規則を知らなければ、初見の動詞で形態を誤認し、時制判定に失敗する原因となる。

時制形態と綴り・発音の変化規則の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、規則動詞の-ed付加における綴り変化(子音字の重複、yのi変化、eのみ追加)を正確に適用できるようになる。第二に、三単現-s/-esの付加規則(-s, -es, -iesの使い分け)を正確に判別できるようになる。第三に、-edの三つの発音(/t/, /d/, /ɪd/)を認識し、リスニングにおいても過去形を識別できるようになる。

綴り・発音の変化規則の理解は、時制形態の識別精度を高め、読解だけでなく英作文においても正確な時制表現を可能にする。

5.1. 規則動詞の綴り変化と三単現の綴り変化

一般に規則動詞の過去形は「-edをつけるだけ」と理解されがちである。しかし、この理解はstopped、carried、dancedのように語尾の変化パターンが複数存在することを説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、規則動詞の-ed付加は語末の音韻環境に応じた三つの綴り規則(そのまま-ed、子音字重複+ed、y→ied)と、-eで終わる語への-d付加から構成される体系的な規則群として定義されるべきものである。同様に三単現の-sも、-s、-es、-iesという三つの綴り規則を持つ。これらの規則を体系的に把握することで、初見の動詞であっても正しい時制形態を識別・産出できるようになる。

上記の定義から、綴り変化を正確に判断する手順が論理的に導出される。手順1では語末の文字を確認し、過去形の綴り規則を適用する。-eで終われば過去形は-dのみ追加(dance→danced, hope→hoped)。子音字+yで終わればy→ied(study→studied, carry→carried)。母音字+yで終わればそのまま-ed(play→played, enjoy→enjoyed)。「短母音+子音字1つ」で終わる1音節語または最終音節にアクセスがある語は子音字を重複してから-ed(stop→stopped, plan→planned, prefer→preferred)。それ以外はそのまま-ed(walk→walked, open→opened)。これらの規則は例外が極めて少なく、体系的に適用すれば規則動詞の過去形の綴りをほぼ完全にカバーできる。手順2では三単現の場合も語末の文字を確認する。-s/-sh/-ch/-x/-oで終わればes追加(teach→teaches, wash→washes, go→goes)、子音字+yで終わればy→ies(study→studies, fly→flies)、母音字+yで終わればそのまま-s(play→plays, buy→buys)、それ以外は-s追加(walk→walks, run→runs)。手順3では実際の英文中で動詞の語尾を上記規則と照合する。語尾が-ied/-edなら過去形、-ies/-es/-sなら三単現と判定し、規則に合致しない形態であれば不規則動詞の可能性を検討することで、形態識別の正確性が担保される。手順4では-edの発音規則にも注意を払う。/t/や/d/で終わる動詞の後では/ɪd/(wanted, needed)、無声子音で終わる動詞の後では/t/(walked, stopped)、有声子音・母音で終わる動詞の後では/d/(played, opened)と発音される。この発音規則はリスニングにおいて過去形を聞き取る際に重要であり、綴りの知識と発音の知識を結びつけることで、視覚的にも聴覚的にも時制を識別できるようになる。

例1: He carried the box to the car.
→ 語末分析: carry→子音字®+y→y→ied=carried。
→ 判定: 過去形(carriedはcarryの過去形)。yがiに変化している点に注意。発音は/ˈkærid/(/d/)。

例2: She watches television after dinner.
→ 語末分析: watch→-chで終わる→es追加=watches。主語: She(三単現)。
→ 判定: 現在形(三単現)。-esの追加が必要な語末パターンの典型例。

例3: The bus stopped suddenly.
→ 語末分析: stop→短母音(o)+子音字1つ(p)の1音節語→子音字重複+ed=stopped。
→ 判定: 過去形。pが重複している点に注意。stopeではなくstoppedである。発音は/stɒpt/(/t/)。

例4: He tries to arrive on time every day.
→ 語末分析: try→子音字®+y→y→ies=tries。主語: He(三単現)。頻度副詞: every day。
→ 判定: 現在形(三単現、習慣的動作)。tryのyがiに変化し、-esが付加されている。

以上により、規則動詞の綴り変化パターンと三単現の綴り規則を体系的に把握し、語尾の形態から時制を正確に判定する能力が可能になる。

意味:時制形態と時間関係の対応

統語層で動詞の形態から時制を特定する技術を確立した。しかし、形態を識別できるだけでは英文の意味は把握できない。現在形がどのような時間関係を表し、過去形がどのような時間的位置づけを示すかを理解してはじめて、文意の正確な把握が可能になる。意味層の学習により、現在形と過去形のそれぞれが表す基本的な時間関係を正確に判断し、時間副詞との整合性を検証して文の時間的意味を確定する能力が確立される。学習者は統語層で確立した形態識別の技術を備えている必要がある。現在形の基本的意味(現在の状態・習慣・一般的真理)と過去形の基本的意味(過去の事実・完了した出来事)を扱う。後続の語用層で文脈依存的な時制の機能を判断する際、本層の時間関係の基本知識が不可欠となる。

【関連項目】

[基盤M32-意味]
└ 時制の基本的意味を体系的に理解し、形態と意味の対応を深化させる

[基盤M33-意味]
└ 完了形の基本的意味との対比を通じて、単純時制の意味範囲を明確にする

【基礎体系】

[基礎M06-意味]
└ 時制とアスペクトの統合的理解において本層の知識が前提となる

1. 現在形の基本的意味

現在形の意味を学ぶ際、「現在形は『今』を表す」という理解だけで十分だろうか。実際の英文では、”I play tennis.”が「今テニスをしている」のではなく「習慣的にテニスをする」という意味であり、”Water boils at 100°C.”は特定の時点ではなく恒常的な事実を述べている。現在形の意味理解が不正確なまま読解に取り組むと、現在の動作と習慣を混同し、一般的真理を特定時点の出来事と誤認するといった問題が生じる。

現在形の基本的意味の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、現在形が「発話時点を含む時間帯に成り立つ事態」を表すという基本原理を正確に把握できるようになる。第二に、現在の状態・習慣的動作・一般的真理という三つの主要用法を区別できるようになる。第三に、現在形と現在進行形の意味的差異(習慣 vs. 進行中の動作)を認識できるようになる。

現在形の基本的意味の理解は、後の記事で扱う過去形の意味との対比を通じて、時制体系全体の把握へと発展する。

1.1. 現在形の三つの基本用法

一般に現在形は「今起きていること」と理解されがちである。しかし、この理解は”She speaks French.”(彼女はフランス語を話す=能力・習慣)を「今フランス語を話している最中」と誤解させるという点で不正確である。学術的・本質的には、現在形とは「発話時点を含む広い時間帯において成立する事態」を表す形式として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、現在形が「今この瞬間」ではなく「現在を中心とする一定の時間幅」を表すことを理解すれば、状態・習慣・一般的真理という三つの用法が統一的に説明できるためである。

この原理から、現在形の意味を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では動詞の種類を確認する。状態動詞(know, like, belong, believe, own, seemなど)であれば「現在の状態」、動作動詞(play, study, eat, walk, writeなど)であれば「習慣的動作」の可能性が高いと判定することで、用法の候補を絞り込める。状態動詞と動作動詞の区別は、「進行形にできるかどうか」という基準で判断できる。”She is knowing…”は不自然だがknowは状態動詞、”She is playing…”は自然だがplayは動作動詞である。手順2では頻度副詞・時間表現の有無を確認する。always, usually, often, sometimes, rarely, never, every dayなどの頻度副詞があれば「習慣的動作」と確定し、頻度副詞がなく動作動詞が現在形で使われていれば文脈から判断することで、用法を特定できる。手順3では文の内容が特定の主語に限定されるか普遍的かを確認する。主語が一般的(Water, The sun, Light, Iceなど)で内容が恒常的事実であれば「一般的真理」と判定することで、三つの用法を正確に区別できる。一般的真理は時間的制約を受けない普遍的事実であり、過去にも未来にも変わらず成立する事態を述べるため、時間副詞を伴わないことが多い。手順4では三つの用法のいずれにも該当しない場合の対処を行う。現在形が未来の出来事を表す特殊用法(語用層で詳述)の可能性を検討し、未来の時間表現が伴っていれば語用的判断に委ねる。

例1: She likes classical music.
→ 動詞: likes(状態動詞)。頻度副詞なし。主語: She(特定の人物)。
→ 判定: 現在の状態(好みという恒常的な状態)。likeは「好む」という心理状態を表す状態動詞であり、進行形にしにくい。

例2: He studies English every evening.
→ 動詞: studies(動作動詞)。頻度副詞: every evening。主語: He(特定の人物)。
→ 判定: 習慣的動作。studyは動作動詞であり、every eveningが反復的な行為であることを示している。

例3: The earth revolves around the sun.
→ 動詞: revolves(動作動詞だが恒常的事実)。頻度副詞なし。主語: The earth(一般的)。内容: 恒常的事実。
→ 判定: 一般的真理。地球が太陽の周りを回るのは時間的制約を受けない普遍的事実であり、過去にも未来にも成立する。

例4: My father works at a hospital.
→ 動詞: works(動作動詞)。頻度副詞なし。主語: My father(特定の人物)。内容: 職業(恒常的状態に近い習慣)。
→ 判定: 習慣的動作(職業を表す用法)。職業は厳密には「毎日繰り返す行為」であり、習慣的動作に分類される。ただし、職業は比較的長期にわたって継続する状態でもあるため、状態的な性質も併せ持つ。

以上により、現在形が文中で「状態」「習慣」「一般的真理」のいずれを表しているかを正確に判定することが可能になる。

2. 過去形の基本的意味

過去形の意味を学ぶ際、「過去形は昔のことを表す」という理解だけで十分だろうか。実際には、”She lived in Paris for three years.”が「パリに3年住んでいた(今は住んでいない)」を意味するのか「パリに3年住んだ(今も住んでいるかは不明)」を意味するのかという判断は、過去形の意味を正確に理解していなければできない。過去形の意味理解が不確実なまま読解を進めると、過去の事実と現在の状態の関係を誤って推論する結果となる。

過去形の基本的意味の理解によって、以下の能力が確立される。第一に、過去形が「発話時点より前の時点に位置づけられる事態」を表すという基本原理を把握できるようになる。第二に、過去の動作・過去の状態・歴史的事実という用法を区別できるようになる。第三に、過去形の「現在との断絶」という性質を認識し、現在完了との基本的な違いを意識できるようになる。

過去形の意味の理解は、語用層で扱う時制の文脈的判断(丁寧表現や仮定法での過去形など)の前提となる。

2.1. 過去形の基本用法と「現在との断絶」

過去形には二つの捉え方がある。一つは「過去に起きた出来事を報告する形式」という捉え方であり、もう一つは「発話時点との時間的断絶を標示する形式」という捉え方である。前者は事実として正しいが、後者の理解がなければ”I lived in Tokyo.”が「今は東京に住んでいない」というニュアンスを含む理由を説明できない。過去形の本質は、述べる事態を発話時点から切り離して過去の時点に位置づけることにあり、この「現在との断絶」が過去形の中核的意味である。この原理を理解すれば、過去形と現在完了の違い(断絶 vs. 現在との関連)も自然に導かれる。

では、過去形の具体的な意味を判定するにはどうすればよいか。手順1では時間表現を確認する。yesterday、last week、in 2020、three years agoなどの明示的な過去の時間表現があれば、その時点での出来事と確定できる。過去の時間表現は「発話時点から切り離された時点」を明示するものであり、過去形と最も自然に共起する。なお、現在完了(has lived)は特定の過去の時間表現と共起しないのが原則であり(✗ has lived in Tokyo yesterday)、この点が過去形と現在完了を区別する重要な手がかりとなる。手順2では動詞の種類から用法を判断する。動作動詞であれば「過去の動作」(一回または複数回の行為)、状態動詞であれば「過去の状態」(過去に存在した状態)と判定することで、用法が特定できる。手順3では文脈から「現在との関係」を推論する。過去形で述べられた事態が現在も継続しているかどうかは文脈から判断する必要があり、過去形単独では「現在も成立するかは不明(むしろ断絶を示唆)」と認識することで、過剰な推論を避けられる。手順4では歴史的事実かどうかを確認する。主語が歴史的人物・団体であったり、明確な歴史的年代が示されていたりすれば「歴史的事実」と判定できる。歴史的事実は完了した出来事であり、「現在との断絶」が明確である。”The Roman Empire fell in 476 AD.”のような文では、過去形が歴史的事実の報告に最適な形式であることは疑いない。

例1: I visited Kyoto last summer.
→ 時間表現: last summer。動詞: visited(動作動詞)。
→ 判定: 過去の動作(去年の夏に京都を訪れた、一回の出来事)。last summerが過去の時点を明示している。

例2: She was very tired after the exam.
→ 時間表現: after the exam(過去の出来事を示唆)。動詞: was(状態動詞be)。
→ 判定: 過去の状態(試験後に疲れていた、今は不明)。wasが過去の状態を示し、現在の状態については述べていない。

例3: The Roman Empire fell in 476 AD.
→ 時間表現: in 476 AD。動詞: fell(動作動詞)。主語: The Roman Empire(歴史的主体)。
→ 判定: 歴史的事実(特定の時点に起きた出来事)。歴史的事実は完了した出来事であり、現在との断絶が明確。

例4: He lived in London for five years.
→ 時間表現: for five years(期間)。動詞: lived(状態に近い動作動詞)。
→ 判定: 過去の状態・動作(ロンドンに5年住んでいた)。過去形のため「現在との断絶」が示唆され、今は住んでいないことが含意される。もし「今もロンドンに住んでいる」ことを表す場合は現在完了(has lived)が使われる。この違いは入試の内容一致問題でしばしば問われる。

以上により、過去形が表す時間的意味を正確に把握し、「現在との断絶」という過去形の核心的性質を理解した上で文意を判定することが可能になる。

3. 時間副詞と時制の整合性検証

時制の意味を理解する際、「過去形には過去の時間表現、現在形には現在の時間表現が伴う」という原則だけで十分だろうか。実際の英文では、時間副詞が明示されない場合も多く、また時間副詞と時制が表面上一致しないように見える場合(”I leave tomorrow.”のように現在形に未来の時間表現が伴う場合)も存在する。時間副詞と時制の整合性を検証する能力が不十分なまま読解に取り組むと、時間表現の欠如時に時制の意味を確定できなくなり、また時間表現と時制のずれを誤りと勘違いする原因となる。

時間副詞と時制の整合性検証能力によって、以下の能力が確立される。第一に、主要な時間副詞を過去系(yesterday, last week, ago等)と現在系(now, today, every day等)に分類できるようになる。第二に、時間副詞と時制の一致・不一致を検証し、文の時間的意味を確定できるようになる。第三に、時間副詞が欠如している場合でも、時制形態と文脈から時間関係を推定できるようになる。

時間副詞と時制の整合性検証は、語用層で扱う時制の文脈的判断の前提知識となる。

3.1. 時間副詞の体系と時制との対応

一般に時間副詞は「いつ起きたかを表す語」と漠然と理解されがちである。しかし、この理解は時間副詞が時制と体系的に対応しているという重要な性質を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、時間副詞とは文中の出来事の時間的位置づけを具体化する修飾語であり、その時間的位置づけは述語動詞の時制と整合性を持たなければならないものとして定義されるべきものである。この原理が重要なのは、時間副詞と時制の整合性を検証する習慣を持つことで、時制の誤判定を自己修正できるようになるためである。

この原理から、時間副詞と時制の整合性を検証する具体的な手順が導かれる。手順1では文中の時間副詞を特定する。yesterday, last〜, 〜ago, in+過去の年号は過去系、today, now, every〜, usually, alwaysは現在系と分類することで、時間的基準が明確になる。過去系時間副詞は過去の特定の時点を指示するのに対し、現在系時間副詞は現在を含む時間帯(反復・恒常)を指示するという性質の違いを理解しておくと、分類の精度が高まる。手順2では時間副詞と時制の一致を確認する。過去系時間副詞と過去形、現在系時間副詞と現在形が一致していれば整合性が確認され、不一致の場合は特殊用法(現在形で確定的未来を表す等)の可能性を検討することで、判定の正確性が高まる。不一致の全てが誤りではなく、語用層で扱う特殊用法に該当する場合があるため、不一致を発見した時点で即座に「誤り」と断定するのではなく、特殊用法の可能性を検討するという手順が重要である。手順3では時間副詞が欠如している場合の対処を行う。時間副詞がない場合は時制形態のみから時間関係を判定し、文脈情報(前後の文の時制、話題の時間的設定等)を補助的に利用することで、時間関係を推定できる。特に、前後の文が全て過去形で書かれている場合、時間副詞のない文も過去の出来事を述べていると推定するのが合理的である。手順4では時間副詞の位置にも注意を払う。文末(I met her yesterday.)、文頭(Yesterday, I met her.)、動詞の前(I usually walk to school.)など、時間副詞の位置は用法によって異なる。頻度副詞(always, usually, often等)は動詞の前に置かれることが多く、特定時点の副詞(yesterday, last week等)は文末または文頭に置かれることが多い。位置の違いを認識することで、時間副詞の特定がより迅速になる。

例1: I met her at the station yesterday.
→ 時間副詞: yesterday(過去系)。時制: met(過去形)。
→ 整合性: 一致。判定確定: 過去の出来事。yesterdayと過去形の一致により、判定は確実。

例2: She goes to the gym every Saturday.
→ 時間副詞: every Saturday(現在系・習慣)。時制: goes(現在形・三単現)。
→ 整合性: 一致。判定確定: 習慣的動作。everyは反復を示す現在系の時間副詞であり、現在形と整合する。

例3: We moved to this city three years ago.
→ 時間副詞: three years ago(過去系)。時制: moved(過去形)。
→ 整合性: 一致。判定確定: 過去の出来事(3年前に引っ越した)。agoは現在を基準に過去を指す副詞。

例4: He looks tired.(時間副詞なし)
→ 時間副詞: なし。時制: looks(現在形・三単現)。
→ 判定: 時制形態から「現在の状態」と推定。文脈が過去の場面であれば再検討の余地あり。時間副詞がない場合は時制形態が唯一の手がかりとなるため、形態識別の正確性が一層重要になる。

以上により、時間副詞と時制の整合性を体系的に検証し、時間副詞の有無にかかわらず文の時間的意味を確定する能力が可能になる。

4. 現在形と過去形の対比的理解

現在形と過去形それぞれの基本的意味を個別に学んだが、両者の違いを統合的に理解しているだろうか。実際の入試問題では、”He lives in Tokyo.”と”He lived in Tokyo.”のように時制が一語違うだけで文の意味が大きく変わる場合の判断が求められる。現在形と過去形の対比的理解が不十分なまま問題に取り組むと、時制の違いが含意する情報(現在も継続しているか否か等)を読み取れず、誤答の原因となる。

現在形と過去形の対比的理解によって、以下の能力が確立される。第一に、同一の動詞が現在形と過去形で使われた場合の意味の違いを正確に説明できるようになる。第二に、現在形の「現在を含む時間帯への位置づけ」と過去形の「現在との断絶」という対比を実際の英文で適用できるようになる。第三に、時制の選択が伝えるニュアンスの違いを意識し、読解の精度を高められるようになる。

現在形と過去形の対比的理解は、意味層の到達目標の達成を完成させるものであり、語用層への移行を可能にする。

4.1. 現在形と過去形が伝える情報の差異

現在形と過去形の違いは「今のことか昔のことか」と単純に理解されることが多い。しかし、この理解は、過去形が「現在との断絶」を含意し、現在形が「現在を含む広い時間帯での成立」を含意するという情報伝達上の差異を見落としているという点で不正確である。学術的・本質的には、現在形と過去形の選択は単なる時間の指定ではなく、述べる事態を現在の世界に位置づけるか(現在形)、現在の世界から切り離すか(過去形)という話者の認識を反映するものとして理解されるべきである。この原理が重要なのは、時制の一語の違いから「その事態が今も成り立つか」という情報を読み取る力が、入試の内容一致問題や和訳問題で直接問われるためである。

以上の原理を踏まえると、現在形と過去形の意味的差異を判定するための手順は次のように定まる。手順1では動詞の時制を特定する。統語層で学んだ形態識別プロトコルを適用し、現在形か過去形かを確定することで、分析の出発点が定まる。手順2では時制が含意する「現在との関係」を判断する。現在形であれば「今も成り立つ」、過去形であれば「今は成り立たない(または成り立つかは不明)」という含意を読み取ることで、文の伝える情報が明確になる。手順3では文脈との整合性を検証する。前後の文の時制や内容と照合し、時制の含意が文脈と矛盾しないかを確認することで、判定の正確性が担保される。たとえば、”He worked for a bank.”の後に”Now he runs his own business.”が続けば、過去形の「現在との断絶」が文脈によって確認される。手順4では入試問題への応用を意識する。内容一致問題では「本文で過去形で述べられている事態を、選択肢で現在形に書き換えている」パターンが頻出する。”He worked for a bank.”に対して「He works for a bank.」という選択肢は内容不一致であり、時制の違いが判断の決め手となる。和訳問題では、現在形は「〜している」「〜する」、過去形は「〜していた」「〜した」と訳し分けることで、時制の含意を正確に反映する必要がある。

例1: She lives in New York. / She lived in New York.
→ 現在形: 今もニューヨークに住んでいる。過去形: 以前住んでいた(今は住んでいない可能性が高い)。
→ 時制の差異: 現在形=現在も成立、過去形=現在との断絶。入試では「彼女は現在ニューヨークに住んでいる」という選択肢が、過去形の文に対して「正」か「誤」かを判断させる問題が出題される。

例2: He works for a bank. / He worked for a bank.
→ 現在形: 今も銀行で働いている。過去形: 以前銀行で働いていた(現在は異なる可能性)。
→ 時制の差異: 職業情報の現在性の有無。和訳では「働いている」と「働いていた」の使い分けが求められる。

例3: This bridge connects the two islands. / This bridge connected the two islands.
→ 現在形: この橋は今も二つの島をつないでいる。過去形: 以前はつないでいた(現在は崩壊・撤去等の可能性を含意)。
→ 時制の差異: 物理的状態の現在性。自然災害や老朽化などにより橋が現存しない可能性が、過去形の使用から読み取れる。

例4: The company produces electronic devices. / The company produced electronic devices.
→ 現在形: 今も電子機器を製造している。過去形: 以前は製造していた(事業転換・廃業等の可能性を含意)。
→ 時制の差異: 企業活動の現在性。produces(現在形)が使われていれば「現在も事業を継続中」と判断でき、produced(過去形)であれば「現在は製造していない可能性」が読み取れる。

以上の適用を通じて、現在形と過去形の一語の違いから文が伝える情報の差異を正確に読み取る能力を習得できる。

語用:時制形態の文脈的判断

統語層で形態から時制を特定する技術を、意味層で時制が表す基本的な時間関係を学んだ。しかし、実際の英文では同じ現在形であっても文脈によって異なる機能を果たす場合がある。”The train leaves at 9:00.”の現在形は未来の確定的予定を表し、”If it rains tomorrow, I will stay home.”の現在形は条件節における未来の仮定を表す。語用層の学習により、時制形態の基本的意味を踏まえた上で、文脈情報を手がかりとして時制の具体的な機能を判別できるようになる。前提として、統語層の形態識別技術と意味層の基本的時間関係の知識を備えている必要がある。現在形の特殊用法(確定的未来・条件節での現在形)と過去形の特殊用法(丁寧表現・仮定法の導入)を扱う。語用層で確立した文脈判断の能力は、談話層で複数文にわたる時制の変化を追跡する際に不可欠となる。

【関連項目】

[基盤M45-語用]
└ 直接表現と間接表現の識別において、時制の語用的機能の理解が前提となる

[基盤M36-意味]
└ 仮定法の基本的意味において、過去形の特殊用法の理解が前提となる

【基礎体系】

[基礎M06-語用]
└ 時制とアスペクトの語用的運用を体系的に理解する

1. 現在形の特殊用法

現在形が「現在の状態・習慣・一般的真理」を表すことは意味層で学んだが、それだけで実際の英文に対応できるだろうか。”The conference starts next Monday.”のように現在形が未来の出来事を表す場合や、”If you heat water to 100°C, it boils.”のように条件節で現在形が使われる場合がある。現在形の特殊用法を識別できなければ、未来の予定を現在の習慣と誤認したり、条件節の時制を文法的誤りと判断したりする原因となる。

現在形の特殊用法の識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、現在形が確定的な未来を表す用法を認識し、時刻表・予定表的な文脈で正しく判断できるようになる。第二に、条件節(if節)や時間節(when節)における現在形が未来の意味を持つことを理解できるようになる。第三に、文脈的手がかり(未来の時間表現、if/whenなどの接続詞)から特殊用法を識別できるようになる。

現在形の特殊用法の理解は、英文法の体系的把握において重要な位置を占め、後続モジュールで学ぶ助動詞willとの使い分けにも発展する。

1.1. 確定的未来と条件節における現在形

一般に「未来のことを表すにはwillを使う」と理解されがちである。しかし、この理解は”The flight departs at 7:30 AM.”のような確定的な予定を現在形で表す用法を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、現在形が未来を表す用法は「確定的に予定された出来事を、あたかも現在の事実であるかのように述べる」機能であり、時刻表・スケジュール・公式な予定といった変更不可能性の高い出来事に限定されるものとして定義されるべきである。また、条件節・時間節(if/when/before/after等)では「未来の想定を現在形で表す」という英語固有の文法規則が適用される。これらの原理を理解することで、現在形が未来を表す場面を正確に識別できるようになる。

この原理から、現在形の特殊用法を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では未来の時間表現の有無を確認する。tomorrow, next week, at 7:00などの未来の時間表現が現在形の文に伴っていれば、確定的未来の用法と判定することで、候補を絞り込める。ここで重要なのは、willを用いた未来表現と現在形による未来表現の違いを認識することである。willは話者の意志・予測・推量を含み、現在形の未来用法は外部的に確定された予定(時刻表、公式スケジュール等)を表す。”The train will leave at 9:00.”は「列車は9時に出発するだろう」という予測のニュアンスを帯びるのに対し、”The train leaves at 9:00.”は「列車は9時発である」という確定的事実のニュアンスを帯びる。手順2では文脈の性質を確認する。時刻表・スケジュール・公式な予定に関する文脈であれば確定的未来の現在形と確定できる。映画の上映時間、授業の開始時刻、フライトの出発時刻、試験の実施日などが典型的な文脈である。一方、”I go to Paris next month.”のような個人の予定を現在形で述べるのはやや口語的であり、フォーマルな文章では”I will go to Paris next month.”やbe going to表現が用いられることが多い。手順3では接続詞を確認する。if, when, before, after, until, as soon as, once, unless, in case, by the timeなどの接続詞に導かれた従属節であれば、未来の意味を現在形で表す文法規則が適用されていると判定することで、特殊用法の識別が完了する。この規則の背景には、条件節・時間節は「想定される状況の設定」であり、実現の確実性が未定であるため、willの「予測・意志」とは異なり、現在形で「仮に成立する事態」として述べるという英語の論理がある。手順4では基本用法との混同を防止する。未来の時間表現もなく、条件節・時間節でもない文中の現在形は基本用法(状態・習慣・一般的真理)であり、特殊用法ではない。たとえば”The bus arrives at 8:15 every morning.”のevery morningは習慣を示す現在系の時間副詞であり、確定的未来ではなく習慣的動作である。基本用法と特殊用法の区別は、未来の時間表現と条件節・時間節の接続詞という二つの手がかりの有無によって明確に行える。

例1: The meeting starts at 3 PM tomorrow.
→ 時間表現: at 3 PM tomorrow(未来)。動詞: starts(現在形)。文脈: 会議のスケジュール。
→ 判定: 確定的未来(公式な予定)。tomorrowという未来の時間表現と、会議のスケジュールという文脈が確定的未来の現在形であることを示す。

例2: If it rains tomorrow, we will cancel the picnic.
→ 接続詞: If(条件節)。動詞: rains(現在形)。時間表現: tomorrow(未来)。主節: will cancel。
→ 判定: 条件節における現在形(未来の仮定を現在形で表す)。主節のwillが未来を表しているが、if節では現在形を使う。”If it will rain…”は文法的に不適切。

例3: The bus arrives at 8:15 every morning.
→ 時間表現: at 8:15 every morning(習慣)。動詞: arrives(現在形)。
→ 判定: 習慣的動作(特殊用法ではなく基本用法)。every morningが習慣を示す現在系の時間副詞であるため、確定的未来ではない。

例4: When she gets home, she will call you.
→ 接続詞: When(時間節)。動詞: gets(現在形)。主節: will call(未来)。
→ 判定: 時間節における現在形(未来の出来事を現在形で表す)。when節は「彼女が帰宅したとき」という未来の状況を設定しており、条件節と同じ規則が適用される。

以上により、現在形が未来の出来事を表す二つの主要な文脈(確定的未来・条件節/時間節)を正確に識別し、基本用法との区別を行う能力が可能になる。

2. 過去形の特殊用法

過去形が「過去の事実」を表すことは意味層で学んだが、”Could you open the window?”のcouldは過去の能力を述べているのだろうか。実際には、このcouldは丁寧な依頼を表しており、過去の出来事とは無関係である。同様に、”If I had enough money, I would buy that car.”のhadは過去の出来事ではなく、現在の事実に反する仮定を表している。過去形のこうした特殊用法を識別できなければ、丁寧表現を過去の出来事と誤認したり、仮定法の意味を見落としたりする重大な読解エラーの原因となる。

過去形の特殊用法の識別能力によって、以下の能力が確立される。第一に、過去形が「心理的距離」を表す機能を持つことを認識できるようになる。第二に、丁寧表現におけるcould/would/mightの過去形が、時間的過去ではなく丁寧さの増加を表すことを識別できるようになる。第三に、仮定法過去における過去形が、現在の事実に反する仮定を表すことを導入的に理解できるようになる。

過去形の特殊用法の理解は、後続のモジュールで扱う仮定法・助動詞の体系的理解の出発点となる。

2.1. 丁寧表現と仮定法における過去形

過去形には二つの捉え方がある。一つは「時間的過去(過去の事実を報告する)」であり、もう一つは「心理的距離(現実からの距離を標示する)」である。丁寧表現のcould/wouldでは、過去形が「直接的な要求からの距離」を作ることで丁寧さを生み出す。仮定法過去では、過去形が「現実からの距離」を標示することで反事実の仮定を表す。過去形の本質は時間的過去だけでなく「距離の標示」という抽象的な機能を含むものであり、この理解が丁寧表現と仮定法の両方を統一的に説明する。この「心理的距離」の概念を把握していれば、could/would/mightが過去の意味で使われているのか丁寧さ・仮定の意味で使われているのかを文脈から判断する際の指針が得られる。

では、過去形が時間的過去と心理的距離のどちらを表すかを判定するにはどうすればよいか。手順1では文の形式を確認する。疑問文でcould/would/mightが使われていれば丁寧表現の可能性を検討することで、候補を絞り込める。“Could you…?” “Would you…?” “Would you mind…?”のような疑問文パターンは丁寧表現の典型であり、過去の出来事とは無関係であることが多い。一方、平叙文でcouldが使われている場合(“She could swim when she was five.”)は時間的過去の可能性が高い。手順2では文脈の時間関係を確認する。過去の時間表現がなく、内容が現在や未来の事態に関するものであれば、時間的過去ではなく心理的距離(丁寧・仮定)と判定できる。丁寧表現は「今の依頼」を述べるものであり、仮定法は「今の事実に反する想定」を述べるものであるため、いずれも現在の文脈で使われる。手順3ではif節の有無を確認する。if+過去形の構造があり、主節にwould/could/mightが伴っていれば仮定法過去と判定することで、特殊用法の識別が完了する。仮定法過去の核心は、if節の過去形が「現在の事実に反する仮定」を表し、主節のwould/could/mightが「その仮定が成立した場合の帰結」を表すという二重構造にある。”If I knew the answer, I would tell you.”は「実際には答えを知らない」という現在の事実が前提であり、knewは時間的過去ではなく心理的距離を標示している。手順4では過去形の特殊用法と基本用法の判別基準を総合する。過去の時間表現の有無、文の形式(疑問文か平叙文か)、if節の有無という三つの手がかりを総合的に判断することで、過去形の機能を正確に特定できる。

例1: Could you help me with this task?
→ 形式: 疑問文+could。時間関係: 現在の依頼(過去の時間表現なし)。
→ 判定: 丁寧表現(心理的距離による丁寧さの増加)。”Can you help me?”よりも丁寧度が高い。couldの過去形の形態が「直接的な要求からの距離」を作り出している。

例2: I wished I could fly.(参考:時間的過去)
→ 形式: 平叙文+wished。時間関係: wished→過去の願望。
→ 判定: 時間的過去(過去に「飛べたら」と願った)。wishedが過去の時点を明示しており、couldもその時点での能力の欠如を表す。

例3: If I knew the answer, I would tell you.
→ 形式: if+過去形(knew)+主節would。時間関係: 現在の事態(「今答えを知っていれば」)。
→ 判定: 仮定法過去(現在の事実に反する仮定)。実際には答えを知らない。knewが時間的過去ではなく「現実からの距離」を標示しており、would tellが仮定上の帰結を述べている。仮定法過去におけるbe動詞は、主語に関わらずwereを用いるのが正式である点も注意(“If I were you, I would…”)。

例4: Would you mind closing the door?
→ 形式: 疑問文+would。時間関係: 現在の依頼(過去の時間表現なし)。
→ 判定: 丁寧表現(直接的な”Close the door.”よりも丁寧)。wouldの過去形が「直接的な指示からの距離」を作り出しており、mind(「気にする」)と組み合わさることでさらに丁寧度が高まっている。

以上により、過去形が「時間的過去」と「心理的距離(丁寧・仮定)」のどちらを表すかを文脈から判定し、過去形の多機能性を理解する能力が可能になる。

3. 時制選択の語用的判断

英語の時制選択は文法的正しさだけで決まるのか。”I forget his name.”と”I forgot his name.”はともに文法的に正しいが、前者は「今まさに思い出せない」という現在の状態を、後者は「(あのとき)名前を忘れた」という過去の出来事を伝えている。同じ状況を述べる場合でも、話者が伝えたい情報の焦点によって時制の選択が異なる。時制選択の語用的な判断力が不十分なまま読解に取り組むと、話者や筆者が時制の選択を通じて伝えようとしている微妙なニュアンスを見落とす原因となる。

時制選択の語用的判断力によって、以下の能力が確立される。第一に、同一の状況に対して現在形と過去形のどちらが使われているかに注意を払い、その選択が伝える情報の違いを読み取れるようになる。第二に、時制の選択が話者の視点や伝達意図を反映していることを認識できるようになる。第三に、入試問題において、時制の違いに基づく設問(内容一致問題や和訳問題)に正確に対応できるようになる。

時制選択の語用的判断力は、談話層で複数文にわたる時制変化を読み取る能力の前提となる。

3.1. 話者の視点と時制の選択

一般に時制の選択は「事実に合わせて正しい方を選ぶ」と理解されがちである。しかし、この理解は同一の事実を述べる際にも話者の視点によって時制が変わりうることを説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、時制の選択とは客観的な時間の反映だけではなく、話者が事態をどの時点から捉えているか(現在と接続するか、過去に位置づけるか)という視点の表明として定義されるべきものである。この理解が重要なのは、筆者の時制選択からその伝達意図やニュアンスを読み取る力が、高度な読解において不可欠であるためである。

この原理から、時制選択の語用的意味を判断する具体的な手順が導かれる。手順1では現在形・過去形の選択を特定する。同一の状況について述べている複数の文で時制が異なる場合、その違いに注目することで、分析の出発点が定まる。同一の動詞が現在形と過去形のどちらで使われているかを正確に把握することが第一歩である。手順2では各時制が含意する「現在との関係」を確認する。現在形なら「今も成り立つ」、過去形なら「現在との断絶」という含意を適用し、話者がどちらの視点を選んだかを判断することで、伝達意図が明確になる。ここで重要なのは、時制の選択が「正しいか誤りか」という二者択一ではなく、「何を伝えたいか」という話者の意図の反映であるという認識である。同じ状況を述べる場合でも、話者が現在との接続を強調したければ現在形を、過去との断絶を強調したければ過去形を選択する。手順3では文脈全体との整合性を検証する。前後の文の内容や文章全体の主題と照合し、時制の選択が文脈の中でどのような機能を果たしているかを確認することで、判断の正確性が担保される。たとえば新聞記事の見出しでは現在形が使われることがあるが(“Japan wins Olympic gold”)、これは情報の「新鮮さ」を強調する語用的機能である。手順4では入試問題への応用を意識する。内容一致問題では、筆者が現在形を選んだ箇所と過去形を選んだ箇所の違いが設問のポイントとなることがある。和訳問題では、時制の語用的ニュアンス(現在的価値の強調、歴史的事実の報告等)を訳文に反映させることで、得点が向上する。

例1: I hear you are moving to Osaka. / I heard you are moving to Osaka.
→ hear(現在形): 「(今ちょうど)聞いたところだが」→現在の情報として伝達。heard(過去形): 「(以前)聞いたのだが」→過去に得た情報として伝達。
→ 語用的差異: 情報の新鮮さの違い。hearの現在形は「今まさに耳に入った」という即時性を、heardの過去形は「以前に聞いた」という時間的距離を伝える。

例2: Shakespeare writes with remarkable insight. / Shakespeare wrote many plays.
→ writes(現在形): 作品の価値を現在にも有効なものとして提示(文学的現在)。wrote(過去形): 歴史的事実として過去に位置づけ。
→ 語用的差異: 作品の現在的価値の強調 vs. 歴史的事実の報告。文学批評では「作品は今も読者に語りかける」という立場から現在形を使うことがあり、これを「文学的現在」と呼ぶ。

例3: I forget his name. / I forgot his name.
→ forget(現在形): 「今思い出せない」→現在の状態。forgot(過去形): 「忘れてしまった」→過去の出来事。
→ 語用的差異: 現在の困難の表明 vs. 過去の失敗の報告。forgetの現在形は「今この瞬間に思い出せないでいる状態」を表し、forgotは「ある時点で忘れるという出来事が起きた」ことを報告する。

例4: My grandfather tells wonderful stories. / My grandfather told wonderful stories.
→ tells(現在形): 今も話してくれる→祖父の現在の習慣。told(過去形): 以前は話してくれた→現在は話さない(高齢化・逝去等の含意)。
→ 語用的差異: 現在も継続する行為 vs. 終了した行為。この例は過去形の「現在との断絶」という含意が最も明確に表れる場面の一つであり、told(過去形)の選択から祖父の現在の状況について読者が推論できる。

以上により、話者の時制選択が伝える微妙なニュアンスの違いを読み取り、文章中の時制の使い分けから筆者の伝達意図を把握する能力が可能になる。

談話:複数時制の連続的処理

統語層で個々の動詞の時制形態を特定し、意味層で時制と時間関係の対応を把握し、語用層で時制の文脈的機能を判断する力を確立した。しかし実際の英文、特に長文読解では、一つの文だけでなく複数の文にわたって時制が変化しながら情報が展開される。談話層の学習により、文章中で時制が切り替わるポイントを正確に追跡し、出来事の時間的順序と論理的関係を把握できるようになる。学習者は語用層で確立した時制の文脈判断力を備えている必要がある。文章中の時制の一貫性と切り替わり、時制変化が示す情報構造の転換を扱う。本層で確立した能力は、入試の長文読解において時間的推移を正確に把握する場面で直接発揮される。

【関連項目】

[基盤M55-談話]
└ 接続表現と論理関係の識別において、時制の切り替わりが論理的転換の標識となる

[基盤M54-談話]
└ 指示語の照応関係の把握において、時制の一貫性が文間の結束性に寄与する

【基礎体系】

[基礎M06-談話]
└ 時制とアスペクトの談話的機能を統合的に理解する

1. 文章中の時制の一貫性

長文を読む際、各文の時制を個別に識別するだけで十分だろうか。実際の英文では、ある段落が全て過去形で書かれている中に突然現在形の文が現れるといった時制の切り替わりが、文章の論理構造を示す重要な手がかりとなっている。時制の一貫性と切り替わりに注意を払わなければ、筆者が過去の出来事を報告しているのか現在の分析を述べているのかを区別できず、文章全体の理解に支障をきたす。

文章中の時制の一貫性を把握する能力によって、以下の能力が確立される。第一に、段落内の時制が一貫しているかどうかを確認し、文章の時間的設定を把握できるようになる。第二に、時制が切り替わるポイントを検出し、その切り替わりが何を意味するかを判断できるようになる。第三に、時制の変化から文章の情報構造(背景説明→出来事→考察)を読み取れるようになる。

文章中の時制の一貫性の把握は、次の記事で扱う時制変化の談話的機能の理解への前提条件となる。

1.1. 時制の一貫性と切り替わりの検出

長文読解では「単語の意味」と「文法構造」に注意が向けられることが多い。しかし、この読み方は時制の切り替わりが伝える文章構造上の情報を見落としているという点で不十分である。学術的・本質的には、文章中の時制の一貫性とは、同一の時間的視点から述べられる一連の文が同じ時制を維持する現象であり、時制の切り替わりは筆者が時間的視点を移動させたこと、すなわち話題の転換・背景説明の挿入・考察への移行といった情報構造の変化を標示するものとして定義されるべきである。この理解が重要なのは、時制の切り替わりを検出するだけで文章の論理構造を大まかに把握できるようになるためである。

この原理から、時制の一貫性と切り替わりを検出する具体的な手順が導かれる。手順1では各文の述語動詞の時制を連続的に追跡する。段落を読み進めながら「過去-過去-過去-現在-現在」のように時制の流れを記録することで、切り替わりポイントが特定できる。この追跡を行う際は、主節の述語動詞の時制に注目し、従属節の時制は主節との関係で解釈する。たとえば”Scientists discovered that the earth revolves around the sun.”では主節がdiscovered(過去形)、従属節がrevolves(現在形)だが、この文全体の「報告の時制」は過去形である。手順2では切り替わりの位置で文の内容を確認する。過去形から現在形への切り替わりが「具体的出来事の報告→一般的考察・分析」を示しているか、「出来事の叙述→現在の状況の説明」を示しているかを判断することで、切り替わりの機能が明確になる。反対に、現在形から過去形への切り替わりは「一般的説明→具体的事例」「理論→歴史的証拠」を示すことが多い。手順3では切り替わりの機能を文章全体の構造と照合する。序論→本論→結論、背景→出来事→考察といった文章構成のどの位置にあるかを確認することで、文章全体の理解が深まる。手順4では切り替わりが起きていない箇所にも注意する。長い段落が全て同一の時制で書かれている場合、その段落は同一の時間的視点から述べられた一貫した内容であると判断できる。この判断は、段落の機能(全体が過去形なら「過去の出来事の叙述」、全体が現在形なら「現在の分析・主張」)を特定する手がかりとなる。

例1: The company was founded in 1990. It started with only five employees. Today, it employs over 10,000 people.
→ 時制の流れ: 過去形→過去形→現在形。切り替わり: 第3文で過去→現在。
→ 機能: 歴史的背景(過去)→現在の状況(現在)への転換。Todayが時間的転換の明示的な標識となっている。

例2: Scientists conducted the experiment last year. They found that the results were inconsistent. This finding suggests that further research is needed.
→ 時制の流れ: 過去形→過去形→過去形→現在形→現在形。切り替わり: 第3文で過去→現在。
→ 機能: 実験の報告(過去)→考察・結論(現在)への転換。suggestsの現在形が「現在も有効な結論」であることを示している。

例3: She studied abroad for two years. She learned many things. She now works as a translator.
→ 時制の流れ: 過去形→過去形→現在形。切り替わり: 第3文で過去→現在。
→ 機能: 過去の経験→現在の状況への転換。nowが時間的転換の標識。

例4: The population increased rapidly during the 20th century. Urbanization accelerated after the war. Today, more than half of the world’s population lives in cities.
→ 時制の流れ: 過去形→過去形→現在形。切り替わり: 第3文で過去→現在。
→ 機能: 歴史的経緯(過去)→現在の統計的事実(現在)への転換。four例いずれも「第3文で過去→現在」のパターンであるが、これは三文構成の文章で典型的に見られる構造である。

以上により、文章中の時制の流れを追跡し、切り替わりポイントを検出して文章の情報構造を把握する能力が可能になる。

2. 時制変化が示す情報構造の転換

時制の切り替わりを検出できるようになったが、その切り替わりが文章の中でどのような役割を果たしているかを体系的に理解しているだろうか。実際の入試長文では、筆者が意図的に時制を切り替えることで、背景説明から主張への移行、具体例から一般化への移行、過去の出来事から教訓の提示への移行といった論理構造上の転換を示している。時制変化の情報構造上の機能を理解できなければ、文章の論理展開を正確に追跡できず、内容一致問題や要旨把握問題で誤答する原因となる。

時制変化が示す情報構造の転換を理解する能力によって、以下の能力が確立される。第一に、過去形→現在形の切り替わりが「具体→一般」「背景→主張」「出来事→教訓」を示す場合を識別できるようになる。第二に、現在形→過去形の切り替わりが「一般的説明→具体例」「理論→歴史的証拠」を示す場合を識別できるようになる。第三に、時制変化のパターンから文章の論理構成を推測し、読解の効率を高められるようになる。

時制変化の情報構造的機能の理解は、次の記事で扱う長文読解の実践と合わせて、時制の形態識別から文章全体の構造把握まで一貫した能力を完成させる。

2.1. 時制の切り替わりパターンと論理構造

文章の論理構造は「接続詞」や「段落の最初の文」から読み取ることが一般的であるが、時制の切り替わりという構造的手がかりを活用すれば、接続詞が明示されていない場合でも論理構造の転換を検出できる。学術的・本質的には、文章中の時制の切り替わりは筆者の論述視点の移動を標示する談話標識の一種として機能しており、過去形→現在形の切り替わりは「過去の事実から現在の評価・分析への移行」、現在形→過去形の切り替わりは「一般的原則から具体的事例への移行」を典型的に示すものとして定義されるべきである。この理解により、接続詞が明示されていない場合でも、時制変化から文章の論理展開を推測できるようになる。

この原理から、時制変化のパターンと論理構造を対応づける具体的な手順が導かれる。手順1では時制の切り替わり方向を特定する。過去→現在か、現在→過去かを特定することで、論理構造の候補を絞り込める。過去→現在は「具体→一般」「背景→主張」「出来事→現在的意義」の三つが主要な候補であり、現在→過去は「一般→具体」「理論→証拠」「主張→歴史的背景」が主要な候補である。手順2では切り替わり前後の文の内容を比較する。具体的事実→一般化、出来事→教訓、背景→主張のいずれに該当するかを判断することで、論理構造が確定する。この判断には、文の主語の性質(固有名詞か一般名詞か)、動詞の内容(行為の報告か判断・評価か)、修飾語の性質(特定の時間か一般的な状況か)といった手がかりが有効である。手順3では文章全体の構成との整合性を確認する。序論・本論・結論のどの位置で切り替わりが生じているかを確認することで、文章全体の論理構成の理解が深まる。入試長文では、冒頭(現在形で問題提起)→中盤(過去形で背景・証拠)→結末(現在形で結論・提言)というパターンが頻出するため、このパターンを知っておくだけで読解速度が向上する。手順4では時制変化のない段落と対比する。時制変化が起きている段落は論理構造の転換点であり、時制変化のない段落は同一の論述視点が維持されている箇所である。この対比により、文章のどこが「節目」でどこが「連続的展開」であるかを即座に判別できる。

例1: In 1969, Neil Armstrong walked on the moon. This achievement demonstrated the power of human determination. Space exploration remains one of humanity’s greatest endeavors.
→ 切り替わり: 過去形→過去形→現在形。方向: 過去→現在。
→ 論理構造: 歴史的出来事(過去)→現在的評価(現在)。筆者は過去の事実を述べた後、現在の価値判断に移行している。remainsの現在形は「宇宙探査が現在も重要である」という筆者の評価を表す。

例2: Many species are currently facing extinction. Habitat destruction is the primary cause. In the Amazon, deforestation accelerated dramatically in the 1980s and destroyed thousands of square kilometers of forest.
→ 切り替わり: 現在形→現在形→過去形→過去形。方向: 現在→過去。
→ 論理構造: 一般的現状(現在)→具体的歴史事例(過去)。筆者は現在の問題を提示した後、過去の具体例で説明を補強している。アマゾンの森林伐採という過去の具体例が、現在の絶滅危機の原因を裏付ける証拠として機能している。

例3: The ancient Romans built an extensive road network. These roads connected the vast empire. Many of these routes still exist today and form the basis of modern European roads.
→ 切り替わり: 過去形→過去形→現在形→現在形。方向: 過去→現在。
→ 論理構造: 歴史的背景(過去)→現在との接続(現在)。筆者は過去の事実が現在にどう影響しているかを示している。still exist todayは過去と現在の接続を明示する表現。

例4: Education plays a crucial role in economic development. A well-educated workforce drives innovation. South Korea, for example, invested heavily in education after the Korean War and transformed itself into a major economy.
→ 切り替わり: 現在形→現在形→過去形→過去形。方向: 現在→過去。
→ 論理構造: 一般的原則(現在)→具体的証拠(過去)。筆者は一般論を述べた後、韓国の歴史的事例で論証している。for exampleが一般→具体の移行を明示し、時制の切り替わりがそれを裏付けている。

4つの例を通じて、時制の切り替わりパターンから文章の論理構造(背景→主張、一般→具体、出来事→教訓)を読み取る実践方法が明らかになった。

3. 時制追跡による長文読解の実践

時制の一貫性と切り替わりのパターンを個別に学んだが、実際の長文で複数段落にわたって時制を追跡し続けることはできるだろうか。入試の長文読解では、導入部(現在形で問題提起)→本論前半(過去形で歴史的背景)→本論後半(過去形→現在形で研究結果と考察)→結論(現在形で主張・提言)のように、時制が複数回切り替わりながら論理が展開される。時制追跡の技術を実践的に運用できなければ、長文全体の構造把握が不完全となり、要旨把握問題や段落整序問題での正答率が低下する。

時制追跡による長文読解の実践力によって、以下の能力が確立される。第一に、長文全体を通して時制の流れを追跡し、論理構造の骨格を把握できるようになる。第二に、段落ごとの時制パターンから、その段落の機能(背景説明、具体例、考察、結論等)を推測できるようになる。第三に、時制の変化に基づいて長文の内容を時間軸上に整理し、出来事の順序と因果関係を正確に把握できるようになる。

時制追跡の実践力は、全層にわたる学習の統合であり、時制の形態識別から文章全体の構造把握まで一貫した読解力を完成させる。

3.1. 長文における時制追跡の統合的プロトコル

長文読解は「最初から順番に読み進める」ものと理解されることが多いが、この読み方は時制の流れという文章構造上の手がかりを戦略的に活用していない点で非効率である。学術的・本質的には、長文の時制追跡とは、各段落の主要動詞の時制を連続的にモニタリングし、切り替わりポイントで論理構造の転換を認識するという能動的な読解行為として定義されるべきである。この技術が重要なのは、時制追跡によって文章の骨格(導入→背景→展開→結論)を素早く把握でき、設問への対応効率が大幅に向上するためである。

この原理から、長文の時制を追跡する具体的な手順が導かれる。手順1では各段落の冒頭文と末尾文の時制を確認する。段落の冒頭文と末尾文の時制を見比べるだけで、段落内の時制が一貫しているか切り替わりがあるかを素早く判定できる。冒頭文と末尾文が同じ時制であれば、その段落は一貫した時間的視点を持つ可能性が高い。冒頭が過去形で末尾が現在形であれば、段落内で時制の切り替わりが起きている。手順2では段落間の時制変化を記録する。「第1段落:現在→第2段落:過去→第3段落:過去→第4段落:現在」のように段落単位の時制を把握することで、文章全体の構造が俯瞰できる。入試ではこの段落単位の時制パターンと文章の論理構成が対応しているため、時制パターンの把握が設問の正答に直結する。手順3では時制パターンから文章の論理構成を推定する。現在→過去→現在であれば「問題提起→背景→結論」、過去→過去→現在であれば「歴史→展開→現在的意義」と推定することで、設問に効率的に対応できる。特に頻出するパターンとして、「現在形(問題提起)→過去形(歴史的背景・事例)→現在完了(現在との接続)→現在形(結論・提言)」がある。このパターンを知っていれば、長文の冒頭と結末を読むだけで文章の骨格を推定し、設問で問われている情報がどの段落にあるかを予測できる。手順4では段落の機能を時制から推定する。全て過去形の段落は「歴史的背景」「具体的事例」「研究の経緯」のいずれかであり、全て現在形の段落は「問題提起」「一般的原則」「結論・提言」のいずれかであると推定できる。この推定は100%正確ではないが、設問に対応する段落を素早く特定するための有効な手がかりとなる。

例1: 〔第1段落〕Climate change is one of the most pressing issues today. 〔第2段落〕The Industrial Revolution began in the 18th century and transformed society. 〔第3段落〕Scientists have discovered that CO2 levels have risen dramatically. 〔第4段落〕Urgent action is needed to address this crisis.
→ 段落別時制: 現在→過去→現在完了→現在。
→ 論理構成: 問題提起(現在)→歴史的背景(過去)→研究結果(現在完了=過去から現在への接続)→結論・提言(現在)。現在完了が「過去→現在」の橋渡しとして機能している点に注目。

例2: 〔第1段落〕Many people believe reading is important. 〔第2段落〕A study conducted in 2015 found significant benefits. 〔第3段落〕Participants who read daily showed improvement. 〔第4段落〕These findings support the idea that reading enhances cognitive ability.
→ 段落別時制: 現在→過去→過去→現在。
→ 論理構成: 一般的認識(現在)→研究紹介(過去)→研究結果(過去)→結論(現在)。中央の2段落が過去形で研究の詳細を報告し、最終段落が現在形で結論に回帰する構成。

例3: 〔第1段落〕Japan experienced rapid economic growth after 1945. 〔第2段落〕The government invested in education and infrastructure. 〔第3段落〕By the 1980s, Japan had become a global economic power. 〔第4段落〕Today, Japan faces new challenges in an aging society.
→ 段落別時制: 過去→過去→過去完了→現在。
→ 論理構成: 歴史(過去)→経緯(過去)→到達点(過去完了)→現在の課題(現在)。過去完了(had become)が「過去のある時点までの達成」を表し、現在形への移行を準備している。

例4: 〔第1段落〕What makes a good leader? 〔第2段落〕In ancient times, leaders were often chosen for physical strength. 〔第3段落〕During the 20th century, leadership styles evolved significantly. 〔第4段落〕Modern research shows that emotional intelligence is a key factor.
→ 段落別時制: 現在→過去→過去→現在。
→ 論理構成: 問いかけ(現在)→歴史的変遷(過去)→近代の展開(過去)→現在の知見(現在)。冒頭の問いかけ(現在形)が読者の関心を引き、中央の2段落が過去形で歴史的証拠を提示し、最終段落が現在形で問いへの回答を提示する。

以上により、長文全体にわたって時制の流れを追跡し、段落ごとの機能と文章全体の論理構成を把握する能力が可能になる。

このモジュールのまとめ

このモジュールでは、動詞の形態変化という統語層の分析から出発し、意味層における時間関係の対応、語用層における文脈的判断、談話層における複数時制の連続的処理という四つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層の形態識別が意味層の時間判断を可能にし、意味層の基本知識が語用層の文脈的判断を支え、語用層の判断力が談話層の長文読解を実現するという階層的な関係にある。

統語層では、規則動詞の語尾変化(-ed/-d/-ied)と不規則動詞の母音交替・語幹変化、be動詞の六つの活用形(am/is/are/was/were/been)とhave動詞の三つの活用形(have/has/had)、助動詞の現在形・過去形の対(can/could, will/would等)、否定文・疑問文におけるdo支持動詞(do/does/did)の時制標示機能、そして綴り変化の規則(子音字重複、y→ied、-es付加等)という五つの側面から、形態に基づく時制識別の技術を確立した。任意の英文中の動詞を見た瞬間に、形態的手がかりから時制を即座に特定し、さらに統一的な時制識別プロトコル(述語動詞群の特定→時制標識の同定→形態からの時制確定)を適用できるようになった。

意味層では、現在形の三つの基本用法(現在の状態・習慣的動作・一般的真理)と過去形の基本用法(過去の動作・過去の状態・歴史的事実)、時間副詞との整合性検証の手順、そして現在形と過去形が含意する「現在との関係」の差異(現在形=現在も成立、過去形=現在との断絶)という四つの側面から、時制形態と時間関係の対応を確立した。形態識別の結果を意味解釈に正確に接続し、時制の一語の違いから文が伝える情報の差異を読み取る力を習得した。

語用層では、現在形の特殊用法(確定的未来・条件節/時間節における現在形)と過去形の特殊用法(丁寧表現・仮定法における心理的距離)、そして話者の視点と時制選択の関係という三つの側面から、時制の文脈的判断力を確立した。同じ時制形態であっても文脈によって異なる機能を果たすことを認識し、文脈的手がかりから具体的な機能を判別する技術を身につけた。

談話層では、文章中の時制の一貫性と切り替わりの検出、時制変化が示す情報構造の転換パターン(過去→現在=背景→主張、現在→過去=一般→具体)、そして長文における統合的な時制追跡プロトコルという三つの側面から、複数時制の連続的処理能力を確立した。段落ごとの時制パターンから文章の論理構成を推測し、長文全体の構造を素早く把握する読解技術を獲得した。

これらの能力を統合することで、共通テスト本試レベルの英文を読む際に、動詞の形態から時制を瞬時に特定し、その時制が表す時間関係を正確に把握し、文脈に応じた機能を判別し、文章全体の論理構造を時制の流れから読み取ることが可能になる。このモジュールで確立した時制の形態識別と意味判断の技術は、後続のモジュールで学ぶ完了形の形態と識別、進行形の形態と識別、受動態の形態と識別において、より複合的な動詞形態を分析するための前提となる。

演習編

時制の形態識別は、英文を読む際に最も頻繁に行われる文法判断の一つである。共通テストでは長文中の動詞の時制から時間関係を読み取る力が繰り返し問われ、MARCHレベルの大学入試では文法問題として時制の選択が直接出題される。時制の識別が不正確なまま入試に臨むと、長文の時間的展開を見失い、文法問題では消去法に頼らざるを得なくなり、得点の安定性が大きく損なわれる。本演習では、統語層で確立した形態識別技術、意味層で学んだ時間関係の判断、語用層で身につけた文脈的判断力、談話層で習得した時制追跡能力を総合的に検証する。全3問、試験時間25分、満点100点の構成とする。

【出題分析】

出題形式と難易度

項目評価
難易度基礎〜発展
分量標準
語彙レベル教科書〜共テ本試レベル
構文複雑度単文〜複文

頻出パターン

共通テスト → 長文中の時制変化を追跡し、出来事の時間的順序を把握する問題が頻出。時間副詞との整合性を確認させる設問も多い。

MARCH・関関同立 → 文法4択問題として時制の選択を直接問う出題が標準的。現在形と過去形の意味的差異、条件節での現在形の用法が問われる。

地方国立大学 → 和訳問題の中で時制の正確な訳出が求められる。時制の含意(現在との断絶等)を反映した訳が期待される。

差がつくポイント

形態識別の正確性において、不規則動詞の過去形と過去分詞の混同を避けられるかどうかが差を生む。特に、AAA型(cut-cut-cut)やABB型(teach-taught-taught)の判別が重要である。

時制の意味判断において、現在形と過去形の含意の違い(「現在も成立するか否か」)を正確に読み取れるかどうかが差を生む。特に、内容一致問題での時制に基づく真偽判定が重要である。

文脈的判断において、現在形の特殊用法(確定的未来・条件節)と過去形の特殊用法(丁寧表現・仮定法導入)を識別できるかどうかが差を生む。特に、could/wouldの時間的過去と心理的距離の区別が重要である。

演習問題

試験時間: 25分 / 満点: 100点

第1問(30点)

次の各文の下線部の動詞について、(1)時制(現在形・過去形)を答え、(2)その時制が表す意味(状態・習慣・一般的真理・過去の動作・過去の状態・歴史的事実・確定的未来・丁寧表現のいずれか)を答えよ。

(1)Water 【freezes】 at 0 degrees Celsius.

(2)The train 【leaves】 at 6:45 tomorrow morning.

(3)She 【taught】 English at a high school for twenty years.

(4)【Could】 you tell me the way to the station?

(5)He 【studies】 in the library every afternoon.

(6)The ancient Greeks 【believed】 the earth was the center of the universe.

第2問(35点)

次の各文の空所に入る最も適切な動詞の形を選び、記号で答えよ。また、その選択の根拠を時制の原理に基づいて30字以内で説明せよ。

(1)If it ( ) tomorrow, the game will be postponed.
ア. rains イ. rained ウ. will rain エ. would rain

(2)My sister ( ) in Osaka. She moved there last April.
ア. lives イ. lived ウ. is living エ. has lived

(3)The committee ( ) the proposal at yesterday’s meeting.
ア. discusses イ. discussed ウ. has discussed エ. will discuss

(4)Mozart ( ) more than 600 musical works during his lifetime.
ア. composes イ. composed ウ. has composed エ. is composing

(5)Every morning, the sun ( ) in the east.
ア. rise イ. rises ウ. rose エ. risen

第3問(35点)

次の英文を読み、設問に答えよ。

The city of Venice faces a serious problem today. Rising sea levels threaten the historic buildings that attract millions of tourists every year. The situation was not always this dire. For centuries, Venice prospered as a major trading center. Merchants from across Europe gathered in its markets, and the city grew wealthy. However, in the 20th century, industrial development along the coast changed the natural balance. Factories pumped groundwater from beneath the city, and Venice began to sink. Scientists now estimate that the city has sunk approximately 23 centimeters over the past century. If current trends continue, many of Venice’s treasures could disappear within decades.

(1)本文中で、筆者が「現在の問題」を述べている文と「過去の歴史」を述べている文の境界はどこにあるか。第何文目と第何文目の間か答え、その判断根拠を時制の観点から40字以内で説明せよ。

(2)下線部”Venice prospered as a major trading center”の時制が過去形であることから、現在のヴェネツィアについてどのような含意が読み取れるか。30字以内で答えよ。

(3)本文最終文のcouldは、過去の能力を表す用法か、それとも別の用法か。用法名を答え、その判断根拠を30字以内で説明せよ。

(4)本文全体の時制パターンを「段落の前半」と「段落の後半」に分けて記述し、このパターンが示す文章の論理構造を40字以内で説明せよ。

解答・解説

難易度構成

難易度配点大問
基礎30点第1問
標準35点第2問
発展35点第3問

結果の活用

得点判定推奨アクション
80点以上A基礎体系へ進む
60-79B語用層・談話層の復習後に再挑戦
40-59C意味層から復習し、時間副詞との対応を再確認
40点未満D該当講義を復習後に再挑戦
第1問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図動詞の時制形態と意味用法の基本的識別能力
難易度基礎
目標解答時間6分

【思考プロセス】

状況設定:試験開始直後。第1問は基礎的な時制識別問題。各文の動詞形態を確認し、統語層の形態識別→意味層の用法判定→語用層の特殊用法判定の順に処理する。

レベル1:構造特定 → 各文の下線部動詞の形態(語尾変化・不規則変化・助動詞の形態)を確認し、現在形か過去形かを判定する。

レベル2:検証観点 → 時制判定後、文中の時間表現・主語の性質・文脈情報から意味用法(基本用法か特殊用法か)を判定する。

【解答】

小問時制意味用法
(1)現在形一般的真理
(2)現在形確定的未来
(3)過去形過去の動作
(4)過去形(形態上)丁寧表現
(5)現在形習慣
(6)過去形歴史的事実

【解答のポイント】

正解の論拠:(1) freezesは三単現の-s。主語Waterと「0度で凍る」という恒常的事実から一般的真理。(2) leavesは三単現の-s。tomorrow morningという未来の時間表現が伴い、時刻表的な確定的未来。(3) taughtはteachの不規則変化過去形。for twenty yearsは期間を表し、過去の動作。(4) couldはcanの過去形の形態だが、疑問文で現在の依頼を表しており、時間的過去ではなく心理的距離による丁寧表現。(5) studiesは三単現の-s。every afternoonという頻度表現から習慣的動作。(6) believedはbelieveの規則動詞過去形。ancient Greeksという歴史的主語から歴史的事実。

誤答の論拠:(2)で「習慣」と誤答するパターンが多い。tomorrowという未来の時間表現に注意すれば確定的未来と判定できる。(4)で「過去の能力」と誤答するパターンが多い。疑問文の形式と、現在の依頼という文脈から丁寧表現と判定する。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件:動詞の形態識別→時間表現・文脈との照合→用法判定という三段階の手順は、時制の基本識別を問う全ての問題に適用可能。

【参照】

[基盤M15-統語] └ 規則動詞・不規則動詞の形態識別

[基盤M15-語用] └ 現在形の特殊用法と過去形の特殊用法

第2問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図時制の選択判断と根拠の言語化能力
難易度標準
目標解答時間10分

【思考プロセス】

状況設定:第2問は文法4択問題。各文の時間表現・文構造・文脈から適切な時制を判断し、選択根拠を簡潔に言語化する。

レベル1:構造特定 → 各文の時間表現(tomorrow, last April, yesterday等)と文構造(条件節、主節の時制等)を確認し、時制の候補を絞り込む。

レベル2:検証観点 → 時制の基本用法・特殊用法の知識を適用し、各選択肢の妥当性を検証する。

【解答】

小問解答根拠
(1)条件節では未来の意味を現在形で表す。
(2)現在も大阪に住んでいる状態を表す。
(3)yesterdayは過去の時間表現で過去形と一致。
(4)過去の歴史的事実は過去形で表す。
(5)三単現の-sが必要。一般的真理は現在形。

【解答のポイント】

正解の論拠:(1) if節は条件節であり、主節のwill beが未来を表していても従属節は現在形を使う。ウのwill rainは条件節での使用が不適切。(2) 第2文「She moved there last April.」が過去形で引っ越しの事実を述べ、第1文は現在の状態を述べるためlivesが適切。livedでは現在住んでいないことを含意してしまう。(3) yesterday’s meetingという明示的な過去の時間表現から過去形が確定。has discussed(現在完了)はyesterdayと共起しない。(4) during his lifetimeはモーツァルトの生涯(過去に完結)を指し、歴史的事実のため過去形。has composed(現在完了)は現在との関連を含意するが、故人の業績は過去形で述べる。(5) every morningは習慣、the sunは三人称単数のため三単現の-sが必要。riseは原形で三単現の-sがない。

誤答の論拠:(1)でウを選ぶ誤りは「未来のことだからwill」という素朴な理解に基づく。条件節の規則を知っていれば回避できる。(4)でウを選ぶ誤りは「600曲以上という成果は現在も残っている」という推論に基づくが、故人の行為は過去形で表す。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件:時間表現との整合性確認→文構造の確認(条件節か否か等)→時制の含意の検証という手順は、時制選択を問う全ての4択問題に適用可能。

【参照】

[基盤M15-意味] └ 時間副詞と時制の整合性検証

[基盤M15-語用] └ 条件節における現在形の特殊用法

第3問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図長文中の時制追跡と論理構造の把握能力
難易度発展
目標解答時間9分

【思考プロセス】

状況設定:第3問は長文読解に基づく発展問題。文章全体の時制の流れを追跡し、時制変化から論理構造を読み取る。

レベル1:構造特定 → 各文の述語動詞の時制を順番に追跡する。faces(現在)→threaten(現在)→was(過去)→prospered(過去)→gathered(過去)→grew(過去)→changed(過去)→pumped(過去)→began(過去)→estimate(現在)→has sunk(現在完了)→continue(現在)→could disappear(過去形態だが仮定的用法)。

レベル2:検証観点 → 時制の切り替わりポイントを特定し、各設問に対応する。

【解答】

小問解答
(1)第2文と第3文の間。第2文まで現在形、第3文から過去形に切り替わるため。
(2)現在は主要な交易の中心地ではないという含意。
(3)仮定法的用法。if節の条件下での可能性を表し、過去の能力ではない。
(4)前半:現在→過去(問題提起→歴史)。後半:過去→現在(原因→現状と警告)。

【解答のポイント】

正解の論拠:(1) 第1文faces、第2文threatenは現在形で「現在の問題」を述べ、第3文wasから過去形に転換して「歴史的背景」に移行する。時制の切り替わりが「現在の問題→過去の歴史」という論理構造の転換を標示している。(2) prosperedが過去形であるため「現在との断絶」が含意される。ヴェネツィアがかつては栄えていたが、現在はその状態にないことが時制の選択から読み取れる。(3) 最終文は”If current trends continue”という条件節を伴い、条件下での可能性を述べている。couldは過去の能力ではなく、仮定的状況における可能性(「〜しうる」)を表す。(4) 文章全体は「現在形(第1-2文:現在の問題)→過去形(第3-9文:歴史と原因)→現在形・現在完了(第10-11文:現在の状況)→条件+could(第12文:将来の警告)」という構成で、問題提起→歴史的背景→現在の評価→将来への警告という論理構造を持つ。

誤答の論拠:(1)で第3文と第4文の間と答える誤りは、第3文のwas notを「現在の問題の延長」と誤認したもの。wasは過去形であり、この時点で時制が切り替わっている。(3)で「過去の能力」と答える誤りは、couldの形態のみに注目し、条件節の存在を見落としたもの。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件:各文の述語動詞の時制を順番に追跡→切り替わりポイントを特定→切り替わりの論理的機能を判定するという手順は、長文中の時制変化に基づく設問全般に適用可能。

【参照】

[基盤M15-談話] └ 文章中の時制の一貫性と切り替わりの検出

[基盤M15-意味] └ 過去形の「現在との断絶」の含意

【関連項目】

[基盤M16-統語] └ 完了形の形態識別において、本モジュールの時制識別技術が前提となる

[基盤M17-統語] └ 進行形の形態識別において、be動詞の時制判定技術が前提となる

[基盤M32-意味] └ 時制の基本的意味の体系的理解において、本モジュールの形態・意味の対応知識が前提となる

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