【基盤 英語】モジュール16:動名詞の形態と識別

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本モジュールの目的と構成

英文を読んでいるとき、動詞に-ingがついた語に出会う場面は極めて多い。しかし、その-ing形が「動名詞」なのか「現在分詞」なのかを区別できなければ、文の構造を正しく把握することはできない。”Swimming is fun.”の”swimming”と”The swimming boy caught a fish.”の”swimming”は同じ-ing形でありながら、文中で果たす役割がまったく異なる。前者は文の主語として名詞の機能を担い、後者は名詞を修飾する形容詞の機能を担っている。この区別ができないまま長文読解に進むと、主語の特定を誤り、文全体の意味を取り違える事態が繰り返される。動名詞の形態的特徴を正確に把握し、現在分詞との識別基準を確立し、動名詞が文中で担いうる統語的機能を体系的に理解することを目的とする。

本モジュールは以下の層で構成される:

統語:動名詞の形態的定義と統語的機能の確立
動名詞とは何か、現在分詞とどう異なるかという問いに対して、形態ではなく文中での統語的機能によって両者を識別する基準を確立する。動詞に-ingを付加した形態が名詞として機能する場合を動名詞と定義し、主語・目的語・補語・前置詞の目的語という四つの統語的位置を正確に判定する能力を養成する。さらに、動名詞句の内部構造の分析、進行形との体系的な区別、複合的な文における動名詞の特定までを段階的に扱い、あらゆる英文中の-ing形を正確に処理できる統語的基盤を構築する。

意味:動名詞の意味的特徴と選択基準の把握
動名詞が「動作・行為そのもの」を名詞化して表現するという意味的特徴を理解し、不定詞の名詞的用法との意味的差異を把握する。動詞ごとに動名詞と不定詞のいずれを目的語にとるかという選択基準を、丸暗記ではなく意味的原理から導出する能力を確立する。動名詞と不定詞の両方を目的語にとる動詞における意味の変化、および動名詞が名詞に接近する境界的事例までを扱い、動名詞の意味的本質を多面的に理解する。

語用:文脈に応じた動名詞の運用と識別の実践
実際の英文の中で動名詞が現れる典型的な文脈を把握し、慣用表現や前置詞を伴う構文における動名詞の機能を正確に識別する能力を養成する。動名詞の意味上の主語の特定、動名詞を含む定型表現の体系的理解を含め、単一の文法規則を直接適用して解決できる問題から、複合的な構文処理を要する問題まで対応できる実践力を確立する。

談話:動名詞を含む文の文章内での機能の把握
動名詞を含む文が段落や文章全体の中でどのような役割を果たすかを把握する。主題文における動名詞の使用、抽象的な概念を表す動名詞句の文章構成上の機能を理解し、文章全体の論理展開を追跡する際に動名詞の機能を正しく位置づける能力を確立する。動名詞句を手がかりとした長文読解の戦略までを扱い、入試における実践的な読解力を養成する。

このモジュールを修了すると、以下の能力が身につく。英文中に-ing形が現れたとき、それが動名詞であるか現在分詞であるかを統語的位置から即座に判定できるようになる。動名詞が主語・目的語・補語・前置詞の目的語のいずれの機能を担っているかを正確に特定し、文の骨格を把握する精度が向上する。さらに、動名詞と不定詞の名詞的用法の選択基準を意味的原理に基づいて判断できるようになるため、動詞ごとの目的語選択の問題に論理的に対応する力が身につく。慣用表現や前置詞を伴う構文においても動名詞を正確に識別し、文章全体の論理展開の中で動名詞句の役割を把握する能力を発展させることができる。

【基礎体系】

[基礎 M12]
└ 動名詞・分詞の機能と用法を体系的に理解する

目次

統語:動名詞の形態的定義と統語的機能の確立

英文を読む際、-ing形の語に出会ったとき「これは進行形の一部だろう」と反射的に判断してしまう学習者は多い。しかし、-ing形には動名詞・現在分詞・進行形の一部という少なくとも三つの可能性があり、文中での統語的位置を確認しなければ正確な判定はできない。統語層を終えると、-ing形の語が文中のどの位置に現れているかを手がかりとして、動名詞と現在分詞を正確に識別できるようになる。学習者は品詞の名称と基本機能、および文の要素(主語・目的語・補語)の概念を備えている必要がある。動名詞の形態的定義、動名詞と現在分詞の識別基準、動名詞が担う四つの統語的位置、動名詞句の内部構造、進行形との体系的区別、複合的な文における動名詞の特定を扱う。統語層で確立した識別能力は、後続の意味層で動名詞と不定詞の意味的差異を分析する際の前提となる。

【関連項目】

[基盤 M02-統語]
└ 動名詞が名詞的機能を果たす際の識別基準を把握する

[基盤 M07-統語]
└ 動名詞句の内部構造を確認する

1. 動名詞の定義と現在分詞との識別

品詞を学ぶ際、「-ing形は進行形に使う形」という理解だけで十分だろうか。実際の英文では、-ing形が主語になる場合、目的語になる場合、名詞を修飾する場合、be動詞の後に来て進行形を構成する場合など、多様な機能を果たす場面が頻繁に生じる。-ing形の機能判定が不十分なまま長文に取り組むと、主語と述語の対応を誤り、文の意味を根本的に取り違える結果となる。

動名詞の定義を正確に把握し、現在分詞との識別基準を確立することによって、以下の能力が確立される。第一に、-ing形が名詞として機能しているか形容詞として機能しているかを文中の位置から判定できるようになる。第二に、動名詞が文の主語・目的語・補語・前置詞の目的語のいずれとして機能しているかを特定できるようになる。第三に、be動詞の後の-ing形が進行形の一部であるか補語としての動名詞であるかを区別できるようになる。第四に、-ing形を含む複雑な文においても文の骨格を正確に把握できるようになる。

動名詞の識別能力は、次の記事で扱う動名詞の統語的位置の体系的理解、さらに意味層での不定詞との選択基準の学習へと直結する。

1.1. 動名詞の形態的定義と識別基準

一般に動名詞は「動詞の-ing形で名詞の働きをするもの」と単純に理解されがちである。しかし、この理解は現在分詞も同じく「動詞の-ing形」であるため、両者の区別を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、動名詞とは動詞の語幹に-ingを付加した形態が文中で名詞の統語的機能(主語・目的語・補語・前置詞の目的語)を担う場合の名称であり、現在分詞とは同じ-ing形が形容詞的機能(名詞修飾)または副詞的機能(付帯状況)を担う場合の名称として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、形態だけでは動名詞と現在分詞を識別できず、文中での統語的位置によってのみ判定が可能になるためである。つまり、-ing形の識別において決定的なのは語の形そのものではなく、その語が文の中でどの位置を占めているか、どの構成要素として機能しているかという統語的情報である。

この原理から、-ing形が動名詞であるか現在分詞であるかを識別する具体的な手順が導かれる。手順1では-ing形の文中での位置を確認する。主語の位置(文頭で述語動詞の前)、目的語の位置(他動詞の直後)、補語の位置(be動詞やbecomeの直後)、前置詞の直後のいずれかに-ing形があるかを確認することで、名詞的機能を担っているかどうかを判定できる。この確認を行う際、まず述語動詞を特定し、そこから文の骨格を把握した上で-ing形の位置を相対的に判断する必要がある。述語動詞の特定にあたっては、時制変化(過去形・三人称単数現在のsなど)を持つ動詞を探すことが最も確実な方法であり、-ing形そのものは時制変化を示さないため述語動詞にはなりえないという点を常に意識する。手順2では名詞との置き換えを試みる。-ing形をa thingやitなどの代名詞に置き換えて文が成立するかを確認することで、名詞的機能の有無を検証できる。この置き換えテストは特に判断に迷う場合に有効であり、置き換えた結果が文法的に成立し意味的にも通じるならば動名詞、成立しないならば現在分詞であると判定する。なお、置き換えの際には文全体の意味が維持されるかどうかだけでなく、文法的な整合性(主述の一致、目的語の必要性など)も確認すべきである。手順3では形容詞的・副詞的機能を除外する。-ing形が名詞の直前にあって「どんな〜」という修飾関係にある場合、またはbe動詞と共に進行の意味(「〜している最中」)を表す場合は現在分詞であり、動名詞ではないと確定できる。さらに、分詞構文として文頭や文末に置かれ、付帯状況や理由を表す-ing形も現在分詞であり、動名詞の統語的位置には該当しない。手順3の適用に際しては、進行形と動名詞補語の区別(be動詞の後の-ing形)が特に重要であり、この区別については記事4でさらに体系的に扱う。手順1から手順3を順に適用することで、あらゆる-ing形について動名詞か現在分詞かの判定を論理的に完了できる。

例1: Reading improves vocabulary. → 位置確認:Readingは文頭で述語動詞improvesの前。名詞置き換え:It improves vocabulary.(成立)。→ 動名詞(主語機能)。述語動詞improvesが三人称単数形であることから、Readingが単数扱いの主語であることも確認できる。

例2: She enjoys swimming. → 位置確認:swimmingは他動詞enjoysの直後。名詞置き換え:She enjoys it.(成立)。→ 動名詞(目的語機能)。enjoyは動名詞のみを目的語にとる動詞であるが、この点は意味層で詳しく扱う。

例3: The swimming pool is large. → 位置確認:swimmingは名詞poolの直前。「どんなpool?」→「水泳用のpool」。名詞置き換え:The it pool is large.(不成立)。→ 現在分詞(形容詞的機能)。なお、swimming poolは複合名詞として定着した表現であるが、統語的にはswimmingがpoolを修飾する形容詞的用法である。同様のパターンはrunning water, sleeping bag, dining roomなどにも見られる。

例4: She is swimming now. → 位置確認:swimmingはbe動詞isの直後。進行の意味:「今泳いでいる最中」。nowが時間的に「まさにその動作の最中」であることを示す。名詞置き換え:She is it now.(不成立)。→ 現在分詞(進行形の一部)。対比すべきは”Her hobby is swimming.”であり、こちらではHer hobby = swimmingが成立し、進行の意味は生じないため動名詞(補語)と判定される。この対比は、be動詞の後の-ing形を処理する際に最も注意すべきポイントである。

以上により、-ing形が文中に現れたとき、統語的位置の確認、名詞置き換えテスト、形容詞的・副詞的機能の除外という三段階の手順を適用することで、動名詞と現在分詞を正確に識別することが可能になる。

2. 動名詞の四つの統語的位置

動名詞が名詞の機能を果たすという定義は理解できても、「具体的にどの位置に動名詞が現れるのか」を体系的に把握しなければ、実際の英文で動名詞を正確に特定することはできない。特に、前置詞の目的語としての動名詞は見落とされやすく、この位置を意識しないまま長文を読むと、前置詞句の内部構造を誤って解析する場面が生じる。

動名詞が出現する四つの統語的位置を体系的に理解することによって、以下の能力が確立される。第一に、動名詞が主語として機能する文の構造を正確に把握できるようになる。第二に、他動詞の目的語としての動名詞を特定できるようになる。第三に、補語としての動名詞と進行形の一部としての現在分詞を区別できるようになる。第四に、前置詞の目的語としての動名詞を正確に認識できるようになる。

まず主語と目的語の位置を確実に識別した上で、補語と前置詞の目的語という判断がより難しい二つの位置へ進む。

2.1. 主語・目的語としての動名詞

動名詞とは何か。「動詞に-ingをつけて名詞にしたもの」という回答は、動名詞が文中のどの位置に現れるかを説明しない。動名詞の本質は、動詞の持つ「動作・行為」という意味内容を保持しつつ、名詞が占める統語的位置に収まる点にある。主語位置と目的語位置は、動名詞が最も頻繁に出現する二つの統語的位置であり、この二つを確実に識別できることが動名詞の理解の出発点となる。主語位置の動名詞は、文頭に現れて述語動詞の行為主体を示し、文の論理的な起点を形成する。一方、目的語位置の動名詞は、他動詞の直後に置かれ、主語が行う動作の対象や内容を示す。

この原理から、主語位置と目的語位置の動名詞を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では文の述語動詞を特定する。時制変化を持つ動詞を見つけることで、文の骨格が把握できる。述語動詞が特定できれば、その前後の要素が主語と目的語であるかどうかが構造的に判明する。述語動詞の特定にあたっては、三人称単数現在の-s、過去形の-ed、助動詞(will, can, mayなど)の直後の原形動詞といった手がかりを活用する。手順2では述語動詞の前の-ing形を確認する。述語動詞の前に-ing形があり、それが「誰が・何が」に相当する場合、その-ing形は主語機能の動名詞であると判定できる。このとき、-ing形が単独ではなく目的語や修飾語を伴って動名詞句を形成している場合でも、句全体が主語として機能する点に注意が必要である。動名詞句が長くなると述語動詞との距離が離れ、文の骨格を見失いがちになるが、述語動詞の時制・数の一致を手がかりとすれば主語の範囲を確定できる。たとえば”Learning new vocabulary every day improves…”という文では、improvesの三人称単数形が主語の単数性を示すため、Learning new vocabulary every dayの句全体が一つの主語であると確認できる。手順3では述語動詞の直後の-ing形を確認する。他動詞の直後に-ing形があり、それが「何を」に相当する場合、その-ing形は目的語機能の動名詞であると判定できる。目的語位置の動名詞を特定する際には、すべての他動詞が動名詞を目的語にとるわけではないことにも留意する。動名詞を目的語にとる動詞と不定詞を目的語にとる動詞の区別は意味層で詳しく扱うが、統語的な位置確認の段階では「他動詞の直後の-ing形」であるという事実を確認すれば十分である。加えて、目的語位置の動名詞も句を形成しうる(例:He avoided answering the difficult question.のようにanswering the difficult question全体が目的語の動名詞句)ため、句の範囲の特定が重要となる。

例1: Cooking takes time. → 述語動詞:takes。Cookingは述語動詞の前にあり、「何がtimeをとるか」→「料理すること」。→ 動名詞(主語)。takesの三人称単数形が、Cookingが単数主語であることを確認させる。

例2: Learning a new language requires patience. → 述語動詞:requires。Learning a new languageは述語動詞の前で「何がpatienceを必要とするか」→「新しい言語を学ぶこと」。→ 動名詞句(主語)。Learning単独ではなくa new languageまでを含む句全体が主語である。requiresの三人称単数形が句全体を単数主語として扱っていることを示す。

例3: He avoided answering the question. → 述語動詞:avoided。answeringはavoidedの直後で「何を避けたか」→「質問に答えること」。→ 動名詞(目的語)。answeringがthe questionを目的語にとっており、answering the question全体がavoidedの目的語の動名詞句である。

例4: They finished cleaning the room. → 述語動詞:finished。cleaningはfinishedの直後で「何を終えたか」→「部屋を掃除すること」。→ 動名詞(目的語)。finishは「完了」を表し、実行中の動作を対象とするため動名詞を目的語にとる。この原理は意味層で体系的に扱う。

以上により、述語動詞の前後における-ing形の位置を確認し、「何が」「何を」の問いを適用することで、主語・目的語としての動名詞を正確に識別することが可能になる。

2.2. 補語・前置詞の目的語としての動名詞

動名詞には主語・目的語以外にも、補語と前置詞の目的語という二つの重要な統語的位置がある。補語位置の動名詞は進行形との混同が起こりやすく、前置詞の目的語としての動名詞は文構造の解析において見落とされやすい。この二つの位置を正確に識別する能力は、より複雑な英文を読む際に不可欠となる。特に、入試の読解問題では前置詞の目的語としての動名詞を含む文が極めて高い頻度で出現するため、この位置を見逃さない習慣を確立することが正確な文構造把握の条件となる。

以上の原理を踏まえると、補語位置と前置詞の目的語位置の動名詞を識別するための手順は次のように定まる。手順1ではbe動詞の後の-ing形について、進行の意味があるかを確認する。「〜している最中」という進行の意味が成立する場合は現在分詞(進行形)であり、「〜すること(である)」という意味が成立する場合は動名詞(補語)であると判定できる。この判定では、文中にnowやat that momentなど進行を示す時間表現があるかどうかも手がかりとなる。さらに、「主語=-ing形」の等式が成立するかを確認することが有効であり、主語が趣味・仕事・夢などの抽象的な名詞であれば動名詞(補語)である可能性が高い。手順2では前置詞の直後の-ing形を確認する。前置詞(in, on, at, by, of, for, about, without, before, afterなど)の直後に-ing形がある場合、その-ing形は前置詞の目的語としての動名詞であると判定できる。英語では前置詞の直後に動詞の原形を置くことができないため、前置詞の後に動作を表す語が必要な場合には必ず動名詞が用いられる。この規則は例外なく適用されるため、前置詞の直後に-ing形があればそれは動名詞であると確定できる。前置詞+動名詞の組み合わせは英文中に極めて頻繁に出現し、in doing, by doing, for doing, without doing, after doing, before doingなどの形で現れるため、前置詞を発見したら直後に動名詞がないか確認する習慣をつけることが推奨される。手順3では主語と-ing形の関係を確認する。補語の場合、主語と-ing形が「主語=-ing形」の関係にあるかを検証することで、補語としての動名詞と進行形の一部としての現在分詞を区別できる。この等式の検証は、主語の意味的性質との照合によって行う。たとえば、”The problem is increasing.”では”The problem = increasing”が意味的に成立しないため進行形であるのに対し、”The problem is understanding the instructions.”では”The problem = understanding the instructions”が成立するため動名詞補語であると判定できる。

例1: His hobby is collecting stamps. → be動詞isの後のcollecting。「彼は切手を集めている最中」(不自然)vs「彼の趣味は切手を集めることである」(自然)。His hobby = collecting stamps。→ 動名詞(補語)。主語hobbyが抽象的な名詞であることが動名詞補語の手がかりとなる。

例2: She is collecting stamps now. → be動詞isの後のcollecting。「彼女は今切手を集めている最中」(自然)。nowが進行を示す。→ 現在分詞(進行形の一部)。She = collectingの等式は意味的に不成立。

例3: He is good at solving problems. → 前置詞atの直後にsolving。前置詞の目的語には名詞が来る。→ 動名詞(前置詞の目的語)。be good at doingは頻出構文である。solving problems全体がatの目的語となる動名詞句を形成している。

例4: She left without saying goodbye. → 前置詞withoutの直後にsaying。「さよならを言うことなしに」。→ 動名詞(前置詞の目的語)。without doingは「〜することなしに」という意味を表す頻出パターンであり、否定的意味を持つ前置詞withoutと動名詞の組み合わせとして認識しておくべき構文である。

これらの例が示す通り、補語位置では進行の意味の有無と「主語=-ing形」の関係、前置詞の目的語位置では前置詞の直後という位置を手がかりとすることで、動名詞の四つの統語的位置を漏れなく識別する能力が確立される。

3. 動名詞句の内部構造

動名詞が文中で名詞の機能を果たすことは前の記事で確認した。しかし、実際の英文では動名詞が単独で現れることは少なく、目的語・補語・修飾語を伴って「動名詞句」を形成する場合がほとんどである。動名詞句の内部構造を正確に分析できなければ、句全体が文のどの要素として機能しているかを誤って判定する恐れがある。

動名詞句の内部構造を分析する能力によって、以下の能力が確立される。第一に、動名詞が目的語を伴う場合に句全体の範囲を正確に特定できるようになる。第二に、動名詞が副詞的修飾語を伴う場合に修飾関係を正確に把握できるようになる。第三に、動名詞句が文の主語として長い句を形成している場合でも述語動詞を正確に特定できるようになる。第四に、動名詞句の内部構造を分析した上で、句全体の統語的機能を判定する精度が向上する。

動名詞句の内部構造の理解は、長文読解で動名詞を含む複雑な文に対処する能力の前提となる。

3.1. 動名詞句の構成要素と範囲の特定

動名詞句とは、動名詞を中心語(head)とし、その動名詞が動詞としての性質を保持しているために目的語や修飾語を従える語のまとまりである。この定義は、動名詞が「名詞の統語的位置を占めながらも、内部では動詞的に振る舞う」という二重の性質を持つことを意味する。動名詞句の範囲を正確に特定できなければ、主語がどこまでなのか、目的語がどこまでなのかという判断を誤り、文全体の構造把握に失敗する。通常の名詞は目的語をとったり副詞で修飾されたりしないのに対して、動名詞はこれらの動詞的な振る舞いを維持するため、動名詞句の内部を分析する際には「名詞の一部としてではなく、動詞の構造として」読み解く必要がある。

上記の定義から、動名詞句の範囲を特定する手順が論理的に導出される。手順1では動名詞を起点として、その直後に目的語があるかを確認する。動名詞が他動詞由来であれば、直後の名詞句は動名詞の目的語であり、動名詞句の一部である。たとえば”reading a novel”では、readingが動名詞、a novelがその目的語であり、句全体で「小説を読むこと」を表す。動名詞が自動詞由来の場合(例:swimming, running)には目的語はなく、動名詞が単独で、あるいは副詞・前置詞句を伴って動名詞句を形成する。手順2では動名詞の前後に副詞的修飾語があるかを確認する。”carefully reading the instructions”のようにcarefullyが動名詞readingを修飾している場合、この副詞も動名詞句の内部に含まれる。同様に、”reading the instructions carefully”のように後置された副詞も動名詞句の一部である。さらに、前置詞句が動名詞句の内部に含まれる場合もある。”running in the park every morning”では、in the parkとevery morningがrunningを修飾する前置詞句・副詞句であり、句全体が「毎朝公園で走ること」という動名詞句を形成する。手順3では動名詞句全体の範囲を確定し、その句が文のどの要素(主語・目的語・補語・前置詞の目的語)として機能しているかを判定する。動名詞句が主語位置にある場合、句が長くなるほど述語動詞の位置が後方にずれるため、述語動詞を見失わないよう句の終端を正確に見極める必要がある。句の終端の特定には、述語動詞の時制変化を手がかりとする方法が有効である。”Learning to communicate effectively in a foreign language requires years of dedicated practice.”のように主語の動名詞句が非常に長い文では、Learningからlanguageまでが動名詞句(主語)、requiresが述語動詞であると判定できなければ文の意味を取れない。requiresの三人称単数形の-sが句全体を単数主語として受けていることが確認の手がかりとなる。

例1: Playing the piano relaxes me. → 動名詞句:Playing the piano(動名詞playing+目的語the piano)。句全体が主語。述語動詞:relaxes。→「ピアノを弾くことが私をリラックスさせる」。

例2: She suggested holding the meeting on Friday. → 動名詞句:holding the meeting on Friday(動名詞holding+目的語the meeting+修飾語on Friday)。句全体がsuggestedの目的語。→「彼女は金曜日に会議を開くことを提案した」。on Fridayは動名詞holdingの修飾語であり、文の述語suggestedを修飾しているのではない点に注意。

例3: Quickly finishing the assignment was impossible. → 動名詞句:Quickly finishing the assignment(副詞Quickly+動名詞finishing+目的語the assignment)。句全体が主語。→「課題を素早く終えることは不可能だった」。副詞Quicklyが動名詞finishingを修飾している点が、動名詞が動詞的性質を保持していることの証拠である。

例4: He is afraid of making mistakes in public. → 動名詞句:making mistakes in public(動名詞making+目的語mistakes+修飾語in public)。句全体が前置詞ofの目的語。→「彼は人前で間違いを犯すことを恐れている」。in publicは動名詞makingの修飾語であり、句の内部に含まれる。

以上の適用を通じて、動名詞句の内部構造を目的語・副詞・修飾語句の有無から分析し、句全体の範囲を正確に特定する能力を習得できる。

4. 動名詞と進行形の体系的区別

動名詞と進行形の区別は記事1のセクション1.1で基本的な手順を確立した。しかし、実際の英文ではbe動詞の後の-ing形だけでなく、進行形が受動態や完了形と組み合わさった複合的な形態で現れることがあり、こうした場合には基本的な手順だけでは判定が困難になる場合がある。動名詞と進行形の区別を体系的に整理し、あらゆる文脈で正確に判定できる能力を確立する必要がある。

動名詞と進行形の区別を体系的に整理することによって、以下の能力が確立される。第一に、「be+-ing」の形式が現れたとき、進行形・動名詞補語・受動進行形のいずれであるかを文脈から判定できるようになる。第二に、完了進行形(have been doing)の中の-ing形を正確に位置づけられるようになる。第三に、形式主語itを用いた構文で動名詞が真主語となる場合を識別できるようになる。第四に、紛らわしい文について体系的な判定基準を適用して正答できるようになる。

この能力は、意味層・語用層での動名詞の分析において、統語的判定を素早く完了する前提として機能する。

4.1. 進行形の複合形態と動名詞補語の判定

一般に進行形は「be+-ing」と理解されがちである。しかし、この理解では”The problem is being discussed.”(受動進行形)のような文を正確に分析できないという点で不十分である。学術的・本質的には、進行形のbe+-ingは「主語がある動作を継続的に遂行している」という意味を表す構造であり、動名詞補語のbe+-ingは「主語=-ing形(〜すること)」という等式が成立する構造であるとして区別されるべきものである。この区別が重要なのは、両者を混同すると文の基本的な意味構造を誤って解釈するためである。さらに、受動進行形(is being done)では、beingが受動態の一部を構成しており、動名詞でも通常の現在分詞とも異なる機能を担っている。

上記の定義から、複合的な「be+-ing」構造を判定する手順が論理的に導出される。手順1では「主語=-ing形」の等式が成立するかを確認する。等式が成立する場合は動名詞補語であり、成立しない場合は進行形であると判定できる。”My hobby is collecting stamps.”ではMy hobby = collecting stamps(趣味=切手収集)が成立するが、”She is collecting stamps.”ではShe = collecting stamps(彼女=切手収集)は成立しない。手順2では時間表現・文脈上の進行性を確認する。now, at the moment, currently等の表現があり、「まさにその瞬間に動作が進行中」という意味が自然であれば進行形と判定できる。ただし、時間表現がなくても文脈から進行中であることが明らかな場合(例:when節との共起)は進行形と判定する。手順3ではbe動詞の前にhaveがある場合(have been doing)、これは完了進行形であり、-ing形は現在分詞(進行形の一部)であると判定できる。完了進行形は「ある時点までずっと〜し続けている」という意味を表し、この場合の-ing形は動名詞ではない。完了進行形の構造はhave+been+-ingであり、beenは完了形の一部、-ingは進行形の一部として機能している。手順4ではit is no use doingやit is worth doingのような形式主語構文を確認する。itが形式主語、動名詞句が真主語である場合、-ing形は動名詞であると判定できる。この構文パターンは、It is no use doing / It is worth doing / It is no good doing / There is no doingなどの定型表現として出現することが多く、語用層で体系的に扱う。

例1: My dream is becoming a doctor. → My dream = becoming a doctor(成立)。「私の夢は医者になることである」。→ 動名詞(補語)。主語dreamが抽象的な概念であり、-ing形との等式が自然に成立する。

例2: The city is becoming more crowded. → The city = becoming more crowded(不成立)。「その都市はますます混雑してきている」。→ 現在分詞(進行形)。becomeは状態変化を表す動詞であり、進行形で「変化が進行中」であることを示す。

例3: She has been studying for three hours. → have been doingの形式。「彼女は3時間ずっと勉強し続けている」。→ 現在分詞(完了進行形の一部)。has beenが完了形を、studyingが進行形を構成しており、全体で「継続的な進行」を表す。for three hoursという期間表現が完了進行形の特徴的な共起語である。

例4: It is no use complaining about the weather. → itは形式主語、complaining about the weatherが真主語。→ 動名詞(形式主語構文の真主語)。「天気について不満を言っても無駄である」。It is no use to complainという不定詞形式も文法的には可能であるが、動名詞形式のほうが一般的に使われる。

4つの例を通じて、「be+-ing」の多様な形態を等式成立の有無・時間表現・完了進行形・形式主語構文の四つの基準で判定する能力の実践方法が明らかになった。

5. 複合的な文における動名詞の特定

ここまでの記事で、動名詞の定義・四つの統語的位置・動名詞句の内部構造・進行形との区別を個別に学習した。しかし、実際の入試問題では、これらの要素が複合的に絡み合った文が出題される。一つの文の中に動名詞と現在分詞が同時に現れる場合、動名詞句が入れ子になっている場合、前置詞句と動名詞句が連鎖する場合など、複合的な構造を素早く分析する能力が求められる。

複合的な文における動名詞の特定能力によって、以下の能力が確立される。第一に、一つの文の中に複数の-ing形が現れた場合に、それぞれの統語的機能を正確に判定できるようになる。第二に、動名詞句の中にさらに動名詞や現在分詞が含まれる入れ子構造を正確に解析できるようになる。第三に、複合的な修飾構造を持つ長文中で動名詞を含む複雑な文に出会っても、文の骨格を素早く把握できるようになる。第四に、統語層で学んだすべての知識を統合し、あらゆる-ing形を体系的に処理する能力が確立される。

統語層の総合的な能力は、意味層で動名詞と不定詞の選択を分析する際の前提となる。

5.1. 複数の-ing形を含む文の分析

複数の-ing形を含む文を正確に分析するには、各-ing形を独立した判定対象として個別に処理する必要がある。”Spending time reading books is more productive than watching television.”のような文では、三つの-ing形がそれぞれ異なる統語的機能を担っている。一つの文に複数の-ing形が含まれることは珍しくなく、特に複合文や比較構文では高頻度で出現するため、個別判定の手順を確立しておかなければ文の構造把握が破綻する。

この原理から、複数の-ing形を含む文を分析する具体的な手順が導かれる。手順1では文の述語動詞を特定し、文の骨格を把握する。述語動詞は時制変化を持つ動詞であり、-ing形は述語動詞ではないため、まず述語動詞を確定することで文の主語・目的語・補語の位置が明らかになる。複数の-ing形が現れている文では、述語動詞の特定が特に重要であり、助動詞の有無・時制標識・主述の一致を総合的に検討する必要がある。手順2では各-ing形について、文中での統語的位置を個別に確認する。記事1で確立した手順(位置確認→名詞置き換え→形容詞的・副詞的機能の除外)を各-ing形に順番に適用する。このとき、各-ing形は互いに独立して分析すべきであり、一つの-ing形の判定結果が他の-ing形の判定に影響することはない。ただし、一つの動名詞句の内部に別の-ing形が含まれている場合は、外側の句から先に分析し、その後に内部の-ing形を分析する。手順3では動名詞句の範囲を確定し、句全体の統語的機能を判定する。一つの動名詞句の内部に別の-ing形(現在分詞や動名詞)が含まれている場合、まず外側の句の範囲と機能を確定し、その後に内部の-ing形の機能を分析する。手順4では入れ子構造を解きほぐす。動名詞句の目的語としてさらに動名詞が来る場合(例:He enjoys practicing speaking English.)、外側の動名詞practiceの目的語がspeaking Englishであり、speakingの目的語がEnglishであるという二重の構造を正確に把握する。入れ子構造の分析では、最も外側の動名詞から始めて順に内側へ分析を進めることが原則であり、各層の動名詞の統語的機能を一つずつ確定していくことで、複雑な構造でも正確に分析できる。

例1: Spending time reading books is more productive than watching television. → 述語動詞:is。主語:Spending time reading books(動名詞句)。readingはtime reading booksの中でtimeの使い方を説明する分詞的要素。watching televisionはthan以下の比較対象で動名詞。→ spending=動名詞(主語)、reading=分詞的修飾、watching=動名詞(比較対象)。三つの-ing形がそれぞれ異なる統語的機能を担っている。

例2: She kept talking without noticing the time. → 述語動詞:kept。talkingはkeptの目的語で動名詞。noticingはwithoutの後で動名詞(前置詞の目的語)。→ 一文に二つの動名詞がそれぞれ異なる統語的位置を占める。keepは動名詞を目的語にとる動詞であり、withoutは前置詞であるため直後に動名詞が来る。

例3: Learning about different cultures by traveling abroad broadens your perspective. → 述語動詞:broadens。主語:Learning about different cultures by traveling abroad(動名詞句)。travelingはbyの後で動名詞(前置詞の目的語)。→ 主語の動名詞句の内部に前置詞+動名詞が含まれる入れ子構造。by traveling abroadはLearningの手段を示す修飾語であり、動名詞句全体の内部に含まれる。

例4: He enjoys practicing speaking English with native speakers. → 述語動詞:enjoys。practicingはenjoysの目的語で動名詞。speaking Englishはpracticingの目的語で動名詞。→ 動名詞の目的語がさらに動名詞であるという二重構造。enjoys → practicing(目的語)→ speaking English(practicingの目的語)→ with native speakers(speakingの修飾語)という層構造を順に追跡する。

以上により、複数の-ing形を含む文であっても、述語動詞の特定→各-ing形の個別判定→動名詞句の範囲確定→入れ子構造の解析という手順を適用することで、すべての-ing形の統語的機能を正確に特定することが可能になる。

意味:動名詞の意味的特徴と選択基準の把握

英語学習で「enjoyの後は動名詞、wantの後は不定詞」という規則を暗記した経験がある学習者は多い。しかし、なぜそうなるのかを理解していなければ、初見の動詞に出会ったときに対応できない。意味層を終えると、動名詞が「すでに経験した・実際に行っている動作」を表す傾向があるという意味的原理に基づいて、動名詞と不定詞の選択を論理的に判断できるようになる。学習者は動名詞の形態的定義と四つの統語的位置の識別能力を備えている必要がある。動名詞の意味的特徴、動名詞と不定詞の意味的差異、動詞ごとの目的語選択の原理、動名詞と不定詞の両方をとる動詞における意味の変化、動名詞と名詞の境界を扱う。後続の語用層で慣用表現における動名詞の運用を分析する際、本層の意味的理解が前提となる。

【関連項目】

[基盤 M32-意味]
└ 動名詞と不定詞の意味的差異を把握する

[基盤 M33-意味]
└ 動名詞の基本的意味を確認する

1. 動名詞の意味的特徴

動名詞が「動作を名詞化したもの」であることは統語層で確認した。しかし、不定詞の名詞的用法(to+動詞原形)も同様に動作を名詞化する機能を持つ。両者の違いが意味レベルでどこにあるのかを理解しなければ、なぜ特定の動詞が動名詞のみを目的語にとるのかを説明できない。

動名詞の意味的特徴を正確に把握することによって、以下の能力が確立される。第一に、動名詞が「実際に行っている・行った動作」を表す傾向があることを理解できるようになる。第二に、不定詞が「これから行う・行う可能性のある動作」を表す傾向があることとの対比を把握できるようになる。第三に、両者の意味的差異に基づいて、動詞ごとの目的語選択の規則を論理的に導出できるようになる。第四に、動名詞と不定詞の両方を目的語にとる動詞で意味が変わる場合の原理を理解できるようになる。

動名詞の意味的理解は、語用層での慣用表現の分析や談話層での文章構成上の機能の把握に直結する。

1.1. 動名詞と不定詞の意味的差異

一般に動名詞と不定詞の選択は「動詞ごとに決まっているので覚えるしかない」と理解されがちである。しかし、この理解は例外や初見の動詞に対応できないという点で不正確である。学術的・本質的には、動名詞は「実際に行っている・経験した・反復的な動作」を名詞化する傾向があり、不定詞は「これから行う・まだ実現していない・一回的な動作」を名詞化する傾向があるという意味的原理として定義されるべきものである。この原理が重要なのは、動詞ごとの目的語選択が恣意的な規則ではなく、動詞の意味と目的語の意味的特徴の整合性から論理的に導かれるためである。主動詞が表す行為・態度が「すでに存在する事態」に向けられているのか「未だ実現していない事態」に向けられているのかによって、目的語に動名詞が来るか不定詞が来るかが決定される。

この原理から、動名詞と不定詞の選択を判断する具体的な手順が導かれる。手順1では主動詞の意味を確認する。主動詞が「過去・経験・反復・中断」に関わる意味を持つ場合(enjoy, finish, stop, avoid, mind, deny, suggestなど)、その動作はすでに行っている・経験済みの動作であるため、動名詞を目的語にとると判断できる。これらの動詞に共通するのは、目的語が指す動作がすでに「現実の中に存在している」という前提である。enjoyが「楽しむ」であるならば、楽しむ対象はまさに今体験している動作でなければならず、まだ存在しない動作を楽しむことはできない。finishが「終える」であるならば、終える対象は実行中の動作でなければならず、まだ始まっていない動作を終えることはできない。手順2では主動詞が「未来・意志・希望・計画」に関わる意味を持つ場合(want, hope, decide, plan, promise, expect, agreeなど)を確認する。これらの動詞は未実現の動作を目的語にとるため、不定詞を選択すると判断できる。不定詞のtoにはもともと「〜に向かって」という方向性の意味があり、まだ到達していない目標に向かうニュアンスが含まれている。手順3では両方を目的語にとる動詞(remember, forget, try, stopなど)について、目的語の動作が「既に行った」ものか「これから行う」ものかを文脈から判断することで、動名詞と不定詞のいずれを選択するかを決定できる。手順3が特に重要なのは、同じ動詞でも動名詞をとる場合と不定詞をとる場合で文の意味が大きく変わるためであり、入試では両者の意味の違いを問う問題が高頻度で出題される。この三段階の手順を習慣化することで、初見の動詞であっても、その動詞の辞書的意味から目的語の形式を高い精度で予測できるようになる。

例1: I enjoy playing tennis. → enjoyは「楽しむ」であり、楽しむためにはその動作を実際に行っている必要がある。→ 動名詞(経験中の動作)。enjoyの目的語は「現に体験している動作」でなければ論理的に成立しない。

例2: I want to play tennis. → wantは「望む」であり、望む対象はまだ実現していない動作。→ 不定詞(未実現の動作)。望みの対象はこれから実現させたい事態であるため、不定詞の「未来指向」の意味と整合する。

例3: I remember locking the door. → rememberの後に動名詞:「鍵をかけたことを覚えている」(過去の動作の記憶)。→ 動名詞(既に行った動作)。動名詞が表す動作はrememberの時点ですでに完了している。記憶の対象は「現実に起こった事態」であり、動名詞の「既実現」の特性と一致する。

例4: I remembered to lock the door. → rememberの後に不定詞:「鍵をかけることを忘れずにやった」(これからやるべき動作を思い出した)。→ 不定詞(未実現の動作を思い出す)。不定詞が表す動作はrememberの時点ではまだ実行されておらず、思い出した後に実行される。

以上により、動名詞が「経験済み・実行中の動作」を表し不定詞が「未実現の動作」を表すという意味的原理を適用することで、動詞ごとの目的語選択を論理的に判断することが可能になる。

2. 動名詞のみを目的語にとる動詞の体系

動名詞と不定詞の意味的差異の原理を学んでも、具体的にどの動詞が動名詞のみを目的語にとるのかを体系的に把握しなければ、実際の文法問題で正確に解答することは難しい。個々の動詞を暗記するのではなく、動詞の意味的特徴から動名詞を目的語にとる理由を理解することが重要である。

動名詞のみを目的語にとる動詞を意味的原理に基づいて体系化することによって、以下の能力が確立される。第一に、「中断・回避・延期」系の動詞がなぜ動名詞を要求するかを論理的に説明できるようになる。第二に、「完了・習慣」系の動詞と動名詞の関係を理解できるようになる。第三に、初見の動詞であっても意味的特徴から目的語の形式を推測できるようになる。第四に、文法問題における動名詞・不定詞の選択問題に原理的に対応できるようになる。

この理解は、語用層での慣用表現の分析において、前置詞の後に動名詞が来る構文を正確に処理する能力の前提となる。

2.1. 動名詞を要求する動詞の意味的分類

動名詞を目的語にとる動詞には二つの捉え方がある。一つは「暗記すべきリスト」として捉える方法であり、もう一つは「意味的原理に基づく体系」として捉える方法である。前者では初見の動詞や例外に対応できないが、後者では動詞の意味から目的語の形式を予測できる。動名詞を要求する動詞は、大きく三つの意味的グループに分類される。第一のグループは「中断・回避・延期」を表す動詞(stop, avoid, postpone, put off, give up, quit)で、これらは「すでに行っている・行おうとしている動作」を対象とするため動名詞と結びつく。中断や回避の対象は「現に存在する動作」でなければならず、まだ存在しない動作を中断したり回避したりすることは論理的にありえない。第二のグループは「完了・経験・習慣」を表す動詞(finish, enjoy, practice, keep, mind)で、これらも「実行中・経験済みの動作」を前提とするため動名詞を要求する。第三のグループは「承認・否認」を表す動詞(admit, deny, suggest, recommend)で、これらは「実際に起こった・起こっている事態」について述べるため動名詞と結びつく。

では、この分類を実際の判断にどう活用すればよいか。手順1では動詞の意味を確認し、「中断・回避・延期」「完了・経験・習慣」「承認・否認」のいずれかに該当するかを判断する。該当しない場合でも、動詞の意味が「現に存在する事態」に向けられているかどうかを検討することで、動名詞を要求する可能性が高いかどうかを推測できる。手順2では該当する場合、目的語には動名詞が来ると予測する。手順3では文脈を確認し、目的語が「実際に行っている・行った動作」を指しているかを検証することで、動名詞の使用が意味的に整合しているかを確認できる。この三つの手順を習慣化することで、初見の動詞に出会った場合にも、その動詞の辞書的意味から目的語の形式を論理的に推測できるようになる。たとえば、resent(腹を立てる)という動詞を初めて見た場合、「腹を立てる」の対象は「実際に起こった・起こっている行為」であるはずだから動名詞を要求すると推測でき、実際にresent doingが正しい形式である。

例1: She avoided making eye contact. → avoidは「回避」。実際にしそうな動作を回避する。→ 動名詞(回避の対象は実行可能な動作)。避ける対象は現実に生じうる動作でなければならない。

例2: He admitted stealing the money. → admitは「認める」(承認)。実際に起こった行為を認める。→ 動名詞(実際に行った動作を承認)。認める対象は「すでに実行された行為」である。

例3: They postponed holding the meeting. → postponeは「延期」。すでに予定されている動作を延期する。→ 動名詞(実行予定の動作の延期)。延期の対象は「すでに計画された・予定された行為」であり、存在しない予定を延期することはできない。

例4: I don’t mind waiting here. → mindは「気にする」。実際に行っている・行うことになる動作について気にするかどうか。→ 動名詞(実行中・実行予定の動作)。mindの目的語は「現実に生じている・生じようとしている状況」を指す。

4つの例を通じて、動詞の意味的特徴から動名詞を目的語にとる理由を論理的に説明する能力の実践方法が明らかになった。

3. 動名詞と不定詞の両方を目的語にとる動詞

動名詞のみを目的語にとる動詞と不定詞のみを目的語にとる動詞の分類は、記事1と記事2で原理的に整理した。しかし、入試で最も正答率が低いのは、動名詞と不定詞の両方を目的語にとりながら意味が変化する動詞の問題である。remember, forget, try, stop, regretなどの動詞は、動名詞をとるか不定詞をとるかによって文の意味が大きく変わるため、この意味変化の原理を正確に把握する必要がある。

動名詞と不定詞の両方をとる動詞の意味変化を理解することによって、以下の能力が確立される。第一に、remember/forgetが動名詞をとる場合(過去の記憶)と不定詞をとる場合(未来の予定)の意味の違いを正確に判別できるようになる。第二に、try/stopの動名詞用法と不定詞用法の意味の違いを文脈から判断できるようになる。第三に、regretが動名詞をとる場合と不定詞をとる場合の意味の違いを把握できるようになる。第四に、文脈から動名詞と不定詞のいずれが適切かを論理的に判断できるようになる。

この能力は、入試の文法セクションにおける選択問題で直接的に問われる。

3.1. 意味が変化する動詞の原理的理解

動名詞と不定詞の選択で意味が変わる動詞は、「経験済みvs未実現」の原理をそのまま適用すれば理解できる。remember doingは「〜したことを覚えている」であり、動名詞が表す動作はすでに完了している。remember to doは「〜することを覚えておく(忘れずに〜する)」であり、不定詞が表す動作はまだ実行されていない。この「既実現vs未実現」の対立は、forget, try, stop, regretにも一貫して適用される原理であり、個々の動詞ごとに別の規則を覚える必要はない。五つの動詞について系統的に確認することで、この原理の一貫性を実感できる。rememberとforgetは「記憶」に関わる動詞であり、記憶の対象が過去の行為(動名詞)か未来の予定(不定詞)かという対立が意味の分岐を生む。tryは「試行」に関わる動詞であり、試行の内容が「実際にやってみる動作」(動名詞)か「達成を目指す動作」(不定詞)かという対立が意味の分岐を生む。stopは意味の変化が最も大きく、stop doingは「〜するのをやめる」(動名詞が目的語)であるのに対し、stop to doは「〜するために立ち止まる」(不定詞が目的ではなく副詞的な「目的」を表す)であり、統語構造そのものが異なる。regretは「後悔・残念」に関わる動詞であり、regret doingは「〜したことを後悔する」(過去の行為への後悔)、regret to doは「残念ながら〜する」(これから述べる内容への遺憾)という対立がある。

上記の定義から、意味が変化する動詞を正確に処理する手順が論理的に導出される。手順1では主動詞を特定し、remember, forget, try, stop, regretのいずれかに該当するかを確認する。手順2では文脈から、目的語の動作が「すでに行った動作」であるか「これから行う動作」であるかを判断する。すでに行った動作であれば動名詞、これから行う動作であれば不定詞を選択すると判定できる。文脈の判断に際しては、時間を示す副詞(yesterday, before, later, next weekなど)、過去や未来を示す動詞の時制、前後の文脈から示される時間的関係を手がかりとする。手順3ではtryとstopについて特有の意味パターンを確認する。try doingは「試しに〜してみる」(実際にその動作を行ってみる)であり、try to doは「〜しようと努力する」(未実現の動作の達成を目指す)である。stop doingは「〜することをやめる」(実行中の動作の中断)であり、stop to doは「〜するために立ち止まる」(別の未実現の動作を目的とした中断)である。stopの場合、構造的にも異なっており、stop doingのdoingはstopの目的語であるのに対し、stop to doのto doはstopの目的語ではなく目的を表す副詞的用法の不定詞である。手順4では日本語訳と照合する。動名詞をとる場合は「〜したことを」「〜しているのを」という過去・現在の意味になり、不定詞をとる場合は「〜することを」「〜するために」という未来・目的の意味になるかを検証することで、選択の正確性を担保できる。

例1: I forgot meeting him before. → 「以前彼に会ったことを忘れていた」。動名詞meetingが表す動作(会う)はすでに過去に完了している。→ 動名詞(過去の経験の忘却)。beforeという時間副詞が「過去の出来事」であることを裏づける。

例2: I forgot to meet him at the station. → 「駅で彼に会うことを忘れていた(=会いに行けなかった)」。不定詞to meetが表す動作(会う)は実行されるべきだったが実現しなかった。→ 不定詞(未実現の予定の忘却)。at the stationは会う場所を示し、予定された行為が実現しなかったことを暗示する。

例3: She tried opening the window. → 「試しに窓を開けてみた」。動名詞openingが表す動作を実際に試みた。→ 動名詞(実際に行った動作としての試行)。結果として窓が開いたかどうかは別として、開ける動作自体は実行された。

例4: She tried to open the window. → 「窓を開けようとした(が開かなかったかもしれない)」。不定詞to openが表す動作の達成を目指して努力した。→ 不定詞(未実現の動作の達成への努力)。try to doは努力したが成功しなかった場合に用いられることが多い。

以上により、remember, forget, try, stop, regretなどの動詞について、「経験済みvs未実現」の原理を一貫して適用することで、動名詞と不定詞の選択による意味の変化を正確に判断することが可能になる。

4. 動名詞の意味的特徴と名詞との境界

動名詞は「動詞の-ing形が名詞の機能を果たすもの」であるが、英語には-ing形がすでに完全な名詞として辞書に登録されている語も存在する。building(建物)、painting(絵画)、meeting(会議)などは、もともと動詞のbuild, paint, meetに-ingが付いた形であるが、現代英語では独立した名詞として使われることが多い。動名詞と名詞化した-ing形の境界を理解することは、-ing形の機能を正確に判定する上で重要な補足的知識である。

動名詞と名詞の境界を理解することによって、以下の能力が確立される。第一に、-ing形が動名詞として動詞的性質を保持しているのか、完全に名詞化しているのかを判断できるようになる。第二に、冠詞(a, the)がつく-ing形は名詞化が進んでいる可能性が高いという判断基準を適用できるようになる。第三に、前置詞ofを伴う-ing形と直接目的語をとる-ing形の違いを識別できるようになる。第四に、文法問題で-ing形の品詞を問われた場合に正確に答えられるようになる。

この能力は、意味層の総まとめとして、動名詞の意味的本質を多角的に理解する上での最終段階である。

4.1. 動名詞と名詞化した-ing形の判定基準

動名詞とは、動詞の-ing形が名詞の統語的位置を占めながらも、動詞としての性質(目的語をとる、副詞で修飾される)を保持しているものである。一方、名詞化した-ing形は、動詞的性質を失い、冠詞やofを伴うなど完全に名詞として振る舞う。”the building of the bridge”のbuildingは冠詞theを伴いofで目的語を導いているため名詞化が進んでいるのに対し、”building a bridge takes time”のbuildingは直接目的語a bridgeをとっているため動名詞である。動名詞と名詞化した-ing形は連続体(continuum)をなしており、明確に二分できない境界的な例も存在するが、以下の手順で多くの場合に判定が可能である。

上記の定義から、動名詞と名詞化した-ing形を判定する手順が論理的に導出される。手順1では-ing形が冠詞(a, the, this, thatなど)を伴っているかを確認する。冠詞を伴っている場合、名詞化が進んでいる可能性が高い。冠詞は名詞の前に置かれる限定詞であり、動名詞は本来の名詞ではないため冠詞を伴わないのが原則である。ただし、所有格(his, her, myなど)が動名詞の前に置かれることはあり(動名詞の意味上の主語)、この場合は動名詞としての性質を保持している点に注意が必要である。手順2では-ing形が直接目的語をとっているか、前置詞ofを介して目的語を導いているかを確認する。直接目的語をとる場合は動名詞(動詞的性質を保持)、ofを介する場合は名詞化した-ing形である可能性が高い。“reading a book”(直接目的語→動名詞)vs “the reading of the book”(of+目的語→名詞化した-ing形)という対比が典型的である。手順3では-ing形が副詞で修飾されているか形容詞で修飾されているかを確認する。副詞で修飾される場合は動名詞(動詞的性質を保持)、形容詞で修飾される場合は名詞化した-ing形であると判定できる。“carefully reading the document”(副詞carefully→動名詞)vs “careful reading of the document”(形容詞careful→名詞化した-ing形)という対比が典型的である。手順4では文脈から-ing形が「動作のプロセス」を表しているか「動作の結果としての事物」を表しているかを判断する。プロセスを表す場合は動名詞に近く、結果の事物を表す場合は名詞に近いと判定できる。

例1: Building a bridge takes time. → buildingが直接目的語a bridgeをとっている。冠詞なし。→ 動名詞(「橋を建設すること」という動作のプロセス)。動詞的性質(直接目的語をとる)を保持している。

例2: The building of the new hospital was completed. → buildingに冠詞theがつき、ofを介して目的語を導いている。→ 名詞化した-ing形(「建設」という名詞)。ただしこの文のbuildingは「建物」ではなく「建設行為」を表す名詞的用法であり、名詞化が進んでいるが完全に事物化はしていない。

例3: Her singing impressed the audience. → singingに所有格herがつき、直接目的語はない。→ 動名詞に近いが名詞的性質も持つ境界的な例。「彼女が歌うこと」(動名詞的)とも「彼女の歌」(名詞的)とも解釈できる。所有格herは動名詞の意味上の主語とも、名詞の所有者とも解釈可能である。

例4: The painting on the wall is beautiful. → paintingに冠詞theがつき、動詞的性質(目的語をとる等)がない。→ 完全に名詞化した-ing形(「絵画」という事物)。この場合のpaintingは「描く行為」ではなく「描かれた結果の物体」を指しており、動詞的性質は完全に失われている。

これらの例が示す通り、冠詞の有無、直接目的語かofか、副詞修飾か形容詞修飾かという三つの基準を適用することで、動名詞と名詞化した-ing形を判定する能力が確立される。

語用:文脈に応じた動名詞の運用と識別の実践

文法問題で動名詞と不定詞の選択ができても、実際の英文で動名詞が前置詞の後や慣用表現の中に現れたとき、それを動名詞として正確に認識できるかどうかは別の問題である。語用層を終えると、前置詞を伴う慣用表現や定型構文における動名詞の出現パターンを把握し、文脈の中で動名詞を正確に識別できるようになる。前提として動名詞の四つの統語的位置の識別と動名詞・不定詞の意味的差異の理解が求められる。前置詞+動名詞の構文パターン、動名詞の意味上の主語、動名詞を含む定型表現の体系的運用を扱う。語用層の能力は、談話層で文章全体の構成における動名詞句の役割を分析する際に不可欠となる。

【関連項目】

[基盤 M41-語用]
└ 意見表明における動名詞の使用パターンを把握する

[基盤 M49-語用]
└ 動名詞と不定詞の場面に応じた選択基準を確認する

1. 前置詞+動名詞の構文と慣用表現

動名詞を学ぶ際、「前置詞の後は-ing形」という規則は知っていても、実際の英文でどのような前置詞+動名詞の組み合わせが頻出するかを把握していなければ、読解のスピードと正確性は向上しない。実際の入試英文や長文読解では、“be interested in doing”“look forward to doing””be used to doing”などの前置詞+動名詞の構文が高頻度で出現する。これらの構文を即座に認識できるかどうかが、文の意味を正確に把握するうえで決定的な差を生む。

前置詞+動名詞の構文パターンを体系的に把握する能力によって、以下の能力が確立される。第一に、前置詞の直後に現れる-ing形を動名詞として即座に認識できるようになる。第二に、頻出する前置詞+動名詞の慣用表現を文脈の中で正確に処理できるようになる。第三に、”to doing”の形で動名詞が来る構文(toが前置詞である場合)と不定詞(toが不定詞のtoである場合)を正確に区別できるようになる。第四に、前置詞+動名詞の構文が文全体の中で果たす機能を把握できるようになる。

前置詞+動名詞の処理能力は、談話層での長文読解における動名詞句の機能分析の前提となる。

1.1. 前置詞+動名詞の基本パターンと「to+動名詞」の識別

「toの後は動詞の原形が来る」という理解は広く浸透しているが、look forward toやbe used toのtoは前置詞であり、後に動名詞が来る。この事実を知識として知っていても、初見の表現でtoが前置詞であるか不定詞のtoであるかを判断する基準を持っていなければ、新しい構文に出会うたびに対処できなくなる。学術的・本質的には、toには不定詞を導くto(to+動詞原形)と前置詞のto(to+名詞/動名詞)の二種類があり、toの直後の形態およびtoの前に位置する表現によって両者を識別する必要があるものとして定義されるべきものである。この区別が重要なのは、toの後に-ing形が来るか原形が来るかの判断を誤ると、文の意味を根本的に取り違えるためである。前置詞のtoは本来「〜に向かって」「〜に対して」という方向性を表す語であり、その方向性の先にある名詞や動名詞を目的語としてとる。一方、不定詞のtoは動詞の原形と結びついて「〜すること」「〜するために」という意味を形成する機能語であり、両者は語源的には同じtoであるが、現代英語では文法的機能が明確に異なる。

上記の定義から、前置詞+動名詞の構文を正確に識別する手順が論理的に導出される。手順1では前置詞の直後に-ing形があるかを確認する。in, on, at, by, of, for, about, without, before, after, fromなどの前置詞の直後の-ing形は動名詞であると即座に判定できる。これらの前置詞は不定詞のtoと混同される恐れがないため、直後の-ing形は自動的に動名詞(前置詞の目的語)と確定する。前置詞の直後には名詞または名詞相当語句が来るという英語の基本規則があり、動詞の動作を前置詞の後に置く必要がある場合、動名詞が選択される。この規則に例外はなく、前置詞の直後に動詞の原形を置くことは英語では文法的に不可能である。手順2ではtoの後の語形を確認する。toの後に動詞の原形が来る場合は不定詞であり、-ing形や名詞が来る場合は前置詞のtoであると判定できる。この判定は形態的に明確であり、-ing形が来ているか原形が来ているかを確認するだけで完了する。手順3では「toの前の表現」から前置詞か不定詞かを判断する。look forward to, be used to, be accustomed to, object to, devote…to, be committed to, in addition to, with a view toなどの表現ではtoは前置詞であり、後に動名詞が来ると判定できる。これらの表現はいずれも、toの前の部分が前置詞toを要求する形容詞句・動詞句・名詞句であるという共通点がある。入試で特に頻出するのはbe used to doingとused to doの区別であり、前者は「〜することに慣れている」(前置詞to+動名詞)、後者は「以前は〜していた」(used toが助動詞的に機能+動詞原形)という意味の違いがある。両者を形態的に区別する最も確実な方法は、be動詞の有無を確認することであり、be used toにはis/am/are/was/wereが先行するのに対し、used to doにはbe動詞が伴わない。なお、get used to doingという表現もあり、この場合のgetはbeと同様にused toの前に置かれる動詞であり、toは前置詞である。

例1: She is interested in learning French. → 前置詞inの直後にlearning。→ 動名詞(前置詞の目的語)。「フランス語を学ぶことに興味がある」。be interested inは前置詞inを要求する形容詞表現であり、inの後には名詞または動名詞が来る。

例2: I look forward to meeting you. → look forward toのtoは前置詞。直後にmeeting。→ 動名詞。I look forward to meet you.は誤り。toの前にlook forwardという動詞句があり、このtoは「〜に向かって」の意味の前置詞である。look forward toの代わりにlook forward to itと言い換えられることからも、toが前置詞であることが確認できる(不定詞のtoの後にitは置けない)。

例3: He is used to waking up early. → be used toのtoは前置詞。直後にwaking。→ 動名詞。「早起きすることに慣れている」。cf. He used to wake up early.(used to+原形=「以前は〜していた」)。この二つの構文は形態が類似しているため混同されやすいが、be used toにはbe動詞が存在し、used to doにはbe動詞が存在しないという形態的差異で区別できる。否定形にすると差異がより明確になり、He is not used to waking up early. vs He did not use to wake up early.となる。

例4: They succeeded in solving the problem. → 前置詞inの直後にsolving。→ 動名詞。「その問題を解くことに成功した」。succeed in doingは頻出構文であり、succeed to doとは言わない。succeedが前置詞inを要求するためである。

以上により、前置詞の直後の-ing形を動名詞として識別し、特にtoが前置詞である構文を不定詞と正確に区別する能力が確立される。

2. 動名詞の意味上の主語

動名詞を含む構文を読む際、動名詞が表す動作を「誰が行うのか」が問題になる場合がある。通常、動名詞の意味上の主語は文の主語と一致するが、一致しない場合には動名詞の直前に所有格や目的格が置かれる。この構文を正確に処理できなければ、「誰が何をしたのか」という文の基本的な情報を誤って把握することになる。

動名詞の意味上の主語を正確に特定する能力によって、以下の能力が確立される。第一に、動名詞の直前に所有格または目的格が置かれた構文を正確に解析できるようになる。第二に、文の主語と動名詞の動作主が異なる場合にそれを識別できるようになる。第三に、所有格と目的格の使い分け(文体差)を理解できるようになる。第四に、前置詞+所有格+動名詞という複雑な構文を正確に処理できるようになる。

動名詞の意味上の主語の特定は、長文読解で「誰が何をしたのか」を正確に追跡する能力に直結する。

2.1. 意味上の主語の表示形式と判定手順

動名詞の意味上の主語とは、動名詞が表す動作の実行者を指す。文の主語が動名詞の動作主でもある場合には特別な表記は不要であるが、文の主語と動名詞の動作主が異なる場合には、動名詞の直前に所有格(my, his, her, their, Tom’sなど)または目的格(me, him, her, them, Tomなど)を置くことで動作主を明示する。この構文が存在する理由は、動名詞が名詞として機能しながらも動詞的性質を保持しているため、「その動作を誰が行うのか」という情報を文の中で示す必要が生じるためである。意味上の主語が明示されていない動名詞は、原則として文の主語と同一の人物が動作主であると解釈される。しかし、文脈上、文の主語以外の人物が動名詞の動作主である場合には、所有格や目的格を明示しなければ誤解が生じる。

では、動名詞の意味上の主語を正確に特定するにはどうすればよいか。手順1では動名詞の直前に所有格(my, his, her, their, Tom’sなど)または目的格(me, him, her, them, Tomなど)があるかを確認する。ある場合、その語が動名詞の意味上の主語であると判定できる。所有格と目的格のどちらが使われているかは文体に依存し、フォーマルな文体では所有格が、カジュアルな文体では目的格が好まれるが、意味に差異はない。入試問題では所有格が正解とされることが多いため、所有格を標準形として認識しておくことが実践的である。手順2では所有格・目的格がない場合、文の主語が動名詞の意味上の主語でもあるかを文脈から確認する。”I enjoy reading.”であれば、readingの動作主は文の主語Iと一致しているため、意味上の主語を別途示す必要はない。文脈上、文の主語以外の人物が動名詞の動作主である可能性がある場合には、意味上の主語の明示が必要かどうかを慎重に判断する必要がある。手順3では動名詞の意味上の主語と文の主語が異なる場合に、所有格と目的格のどちらが使われているかを確認する。フォーマルな文体では所有格、カジュアルな文体では目的格が用いられる傾向がある。所有格が使われる典型的な場面は、動名詞が文の主語として機能する場合(例:“His arriving late caused the delay.”)であり、目的格が使われやすいのは動名詞が目的語や前置詞の目的語として機能する場合である。手順4では前置詞+意味上の主語+動名詞の構文を確認する。”There is no hope of his recovering soon.”のように、前置詞ofの後に所有格his+動名詞recoveringが来る構文では、所有格hisが動名詞recoveringの意味上の主語であり、of his recovering soonの全体が前置詞ofの目的語である。この構文は構造が複雑であるため、前置詞の目的語が「所有格+動名詞句」であることを正確に把握する必要がある。

例1: I don’t mind his coming late. → hisは動名詞comingの意味上の主語。「彼が遅れて来ることを私は気にしない」。文の主語Iと動名詞の動作主his(=he)が異なる。hisがなければ「私が遅れて来ることを気にしない」という意味になる。

例2: Do you mind me sitting here? → meは動名詞sittingの意味上の主語(目的格・カジュアル)。「私がここに座ることを気にしますか」。フォーマルにはmy sitting hereとなる。mindの目的語がme sitting hereまたはmy sitting hereの動名詞句全体である。

例3: There is no hope of his recovering soon. → hisは動名詞recoveringの意味上の主語。「彼がすぐに回復する見込みはない」。前置詞ofの目的語が動名詞句his recovering soon全体である。この構文では所有格hisが用いられており、フォーマルな文体に対応している。

例4: She insisted on my attending the meeting. → myは動名詞attendingの意味上の主語。「彼女は私が会議に出席することを主張した」。insist on doingの構文内で意味上の主語が所有格myで明示されている。insistが前置詞onを要求し、onの目的語がmy attending the meeting全体である。

以上の適用を通じて、動名詞の意味上の主語を所有格・目的格の有無から特定し、「誰が何をするのか」を正確に把握する能力を習得できる。

3. 動名詞を含む定型表現の運用

前置詞+動名詞の基本パターンと意味上の主語の処理方法はこれまでの記事で確立した。しかし、実際の英文には動名詞を含む定型表現が多数存在し、これらを個別の構文分析なしに即座に認識できるかどうかが読解のスピードを大きく左右する。定型表現を体系的に把握することで、動名詞を含む構文の処理を自動化し、より複雑な文の分析に認知資源を振り向けることが可能になる。

動名詞を含む定型表現を体系的に把握することによって、以下の能力が確立される。第一に、頻出する定型表現を見た瞬間に構文全体のパターンを認識できるようになる。第二に、定型表現に含まれる前置詞と動名詞の関係を構造的に理解した上で記憶できるようになる。第三に、定型表現が文の中でどの要素として機能しているかを正確に把握できるようになる。第四に、複合的な構文処理を要する長文において、動名詞を含む定型表現を含む文を素早く正確に処理できるようになる。

定型表現の運用能力は、談話層での長文読解において構文処理の速度を確保する前提となる。

3.1. 動名詞を含む頻出定型表現の体系

動名詞を含む定型表現とは何か。「慣用句を覚える」という発想は、個々の表現を独立して記憶しようとする点で効率が悪い。動名詞を含む定型表現の本質は、特定の形容詞・動詞・名詞が前置詞を介して動名詞を要求するという構造的パターンであり、このパターンを理解すれば個々の表現を丸暗記する必要はなくなる。定型表現は構造的に三つのグループに分類される。第一のグループは「be+形容詞+前置詞+動名詞」の構造であり、be good at doing, be interested in doing, be afraid of doing, be tired of doing, be fond of doingなどがこれに該当する。このグループに属する表現は、形容詞が特定の前置詞を要求し、その前置詞の目的語として動名詞が置かれるという構造を共有している。第二のグループは「動詞+前置詞+動名詞」の構造であり、look forward to doing, succeed in doing, insist on doing, apologize for doing, depend on doingなどがこれに該当する。このグループでは、動詞が特定の前置詞を要求し、その前置詞の目的語として動名詞が置かれる。第三のグループは「その他の定型構文+動名詞」であり、it is no use doing, it is worth doing, there is no doing, cannot help doing, feel like doingなどがこれに該当する。

上記の定義から、定型表現を効率的に処理する手順が論理的に導出される。手順1では-ing形の前に前置詞があるかを確認する。前置詞がある場合、その前置詞がどの語(形容詞・動詞・名詞)と結びついているかを特定する。be good at doingであればgoodがatを要求しており、succeed in doingであればsucceedがinを要求している。前置詞の結びつき先を特定することで、表現全体の構造が明らかになり、動名詞の統語的位置も確定する。手順2では前置詞がない場合、it is no use doing / cannot help doing / feel like doingなどの特殊構文に該当するかを確認する。これらの構文は前置詞を介さずに動名詞が来るパターンであり、個別に認識する必要がある。ただし、feel like doingのlikeは前置詞であるため、厳密には第二グループに分類することもできるが、feel likeが一つのまとまりとして機能するため、定型表現として認識するほうが実用的である。手順3では定型表現全体が文の中でどの機能を果たしているかを確認する。be interested in doingは主語の状態を説明する補語的表現であり、succeed in doingは動作を表す述語的表現であり、it is no use doingは評価を述べる構文である。手順4では定型表現の中の動名詞句の範囲を特定する。be interested in learning about different culturesであれば、learning about different culturesが動名詞句であり、前置詞inの目的語である。

例1: She is fond of collecting old coins. → be fond of doingの構文。fondがofを要求。collecting old coinsが動名詞句で前置詞ofの目的語。→「彼女は古いコインを集めることが好きである」。be fond ofはbe interested inと同様に「be+形容詞+前置詞+動名詞」の構造を持つ。

例2: It is no use crying over spilt milk. → it is no use doingの構文。cryingが動名詞。itは形式主語、crying over spilt milkが真主語。→「こぼれたミルクを嘆いても無駄である」(覆水盆に返らず)。この構文はことわざとして定着しているが、構造的にはit is no use+動名詞句という形式主語構文である。

例3: I cannot help laughing at his joke. → cannot help doingの構文。laughingが動名詞。→「彼の冗談を聞くと笑わずにはいられない」。helpは「避ける」の意味で動名詞を要求する。cannot help doingの代わりにcannot help but doという不定詞形式も存在するが、動名詞形式のほうが一般的である。

例4: He felt like taking a walk after dinner. → feel like doingの構文。takingが動名詞。→「彼は夕食後に散歩したい気分だった」。likeは前置詞であり、taking a walkが前置詞likeの目的語である。feel like doingはカジュアルな表現であり、会話文や物語文の中で頻出する。

これらの例が示す通り、定型表現の構造的パターン(be+形容詞+前置詞+動名詞、動詞+前置詞+動名詞、特殊構文+動名詞)を認識し、動名詞句の範囲を特定することで、動名詞を含む定型表現を文脈の中で正確かつ素早く処理する能力が確立される。

談話:動名詞を含む文の文章内での機能の把握

一文の中で動名詞を正確に識別できても、複数の文から成る段落や文章全体の中で動名詞句がどのような役割を果たしているかを把握できなければ、長文読解での処理精度は十分とは言えない。談話層を終えると、動名詞句が段落の主題提示や論点の抽象化において果たす役割を把握し、文章全体の論理展開の中で動名詞を含む文の機能を正確に位置づけられるようになる。前提として動名詞の四つの統語的位置の識別、意味的特徴の理解、前置詞+動名詞の構文処理能力が求められる。主題文における動名詞の役割、動名詞句と文章の論理展開、動名詞句を手がかりとした長文読解の戦略を扱う。本層で確立した能力は、入試の長文読解において動名詞句を含む主題文を正確に特定し、文章全体の論旨を把握する力として発揮される。

【関連項目】

[基盤 M55-談話]
└ 要約における動名詞句の処理方法を確認する

[基盤 M58-談話]
└ 和文英訳における動名詞の活用場面を理解する

1. 主題文における動名詞の機能

英文の段落を読む際、最初の一文や二文に動名詞句が主語として使われている場合、その動名詞句はしばしば段落全体の主題を提示する役割を果たしている。”Reading widely is essential for developing critical thinking skills.”という文が段落の冒頭にある場合、その段落は「広く読むこと」の重要性について展開されると予測できる。動名詞句の文章構成上の機能を理解することは、長文読解の速度と正確性の向上に直結する。

動名詞句が段落の主題提示や論点の抽象化において果たす役割を理解することによって、以下の能力が確立される。第一に、段落冒頭の動名詞句から段落の主題を素早く予測できるようになる。第二に、動名詞句が抽象的な概念を表す場合に、その概念が後続の文でどのように具体化されるかを追跡できるようになる。第三に、動名詞句を含む主題文と支持文の関係を正確に把握できるようになる。第四に、長文全体の中で動名詞句がどの論点に対応しているかを特定できるようになる。

この能力は、複合的な論理構造を持つ長文読解において、段落の要旨を正確に把握する力として直接的に活用される。

1.1. 動名詞句による主題提示と論理展開の追跡

動名詞句は「文の一部」にとどまらず、文章全体の論理構成において重要な機能を果たす。動名詞句は「動作・行為を抽象化して名詞概念として扱う」という機能を持ち、段落の主題提示、論点の一般化、結論の要約において特有の役割を担う。この機能が重要なのは、動名詞句による主題提示を認識できれば、段落の展開方向を予測し、重要な情報と補足的な情報を区別する能力が向上するためである。動名詞が主語位置に置かれると、具体的な動作が抽象的な概念に変換され、それについて論じるための前提が形成される。たとえば”swim”は具体的な動作であるが、”swimming”は「水泳(という行為全般)」として抽象化され、議論の対象となりうる。

この原理から、文章中の動名詞句の機能を特定する具体的な手順が導かれる。手順1では段落冒頭の動名詞句に注目する。段落の最初の一文または二文に動名詞句が主語として使われている場合、その動名詞句が段落の主題を提示している可能性が高いと判断できる。段落冒頭の動名詞句は、段落全体の議論の焦点を読者に示すシグナルとして機能しており、この動名詞句の内容を正確に把握できれば、段落の残りの文を読む際に「この主題をどのように支持・展開しているか」という観点で効率的に情報を処理できるようになる。手順2では動名詞句の内容と後続の文の関係を確認する。後続の文が動名詞句の内容を具体例で説明したり、理由を述べたりしている場合、動名詞句を含む文が主題文であると確定できる。支持文が具体例を提示している場合、その具体例は動名詞句が表す概念の具体的な事例として位置づけられる。手順3では段落の最終文に動名詞句がある場合を確認する。段落末の動名詞句は、段落の内容を要約・一般化する機能を果たしている場合が多いと判断できる。段落末の動名詞句は、段落全体の結論を凝縮した形で読者に示すものであり、設問で「段落の要旨」を問われた場合に最も有力な手がかりとなる。手順4では段落の中盤に動名詞句が現れる場合を確認する。段落中盤の動名詞句は、論点の転換や新たな提案の導入を示す場合がある。特に、HoweverやOn the other handなどの転換の接続表現の後に動名詞句が主語として現れた場合、段落の議論が新たな方向に展開されることを予測できる。

例1: Learning a second language improves cognitive flexibility. Studies show that bilingual individuals perform better on tasks requiring… → 冒頭のLearning a second languageが主題。後続の文が具体的な研究結果で支持。→ 動名詞句=段落の主題提示。段落全体がこの主題を裏づける構造であると予測できる。

例2: Reducing carbon emissions requires international cooperation. No single country can… → 冒頭のReducing carbon emissionsが主題。後続が「一国では不可能」という支持。→ 動名詞句=段落の主題提示。主題文の述語requires international cooperationが段落の主張を集約している。

例3: Many students struggle with reading comprehension. However, developing the habit of reading actively — asking questions while reading — significantly improves understanding. → 段落の中盤でdeveloping the habit of reading activelyが解決策を提示。Howeverの後に動名詞句が来ることで、論点の転換が示される。→ 動名詞句=論点の転換・提案の導入。

例4: In conclusion, understanding grammar rules is not about memorizing patterns but about grasping the underlying principles. → 結論部でunderstanding grammar rulesが段落の要約。→ 動名詞句=結論の要約・一般化。not A but Bの構文が筆者の主張の核心を明確化している。

以上により、動名詞句が段落の冒頭・中盤・末尾のいずれに位置するかを確認し、主題提示・論点転換・結論要約のいずれの機能を果たしているかを判定することで、文章全体の論理展開を正確に追跡することが可能になる。

2. 動名詞句と文章の論理展開

段落の主題文における動名詞句の機能は前の記事で確認した。しかし、実際の長文読解では、複数の段落にわたって動名詞句が繰り返し使われることで、文章全体の論理展開を構成する場合がある。たとえば、第1段落で”Improving public transportation”が主題として提示され、第2段落で”Reducing traffic congestion”、第3段落で”Lowering carbon emissions”が主題として提示される場合、三つの動名詞句が文章全体の論点を段階的に展開している。この構造を把握できるかどうかが、長文全体の論旨の理解に直結する。

動名詞句と文章の論理展開の関係を理解することによって、以下の能力が確立される。第一に、複数段落にわたる動名詞句の連鎖から文章全体のテーマ構造を把握できるようになる。第二に、動名詞句の並列・対比・因果の論理関係を段落間で追跡できるようになる。第三に、動名詞句の反復や変奏から筆者の主張の強調点を読み取れるようになる。第四に、設問で「筆者の主張に最も合致するもの」を問われた場合に、動名詞句を手がかりとして正答を導けるようになる。

この能力は、複数段落にわたる論理構造を持つ長文読解問題における大問の設問に対応する力の前提となる。

2.1. 段落間における動名詞句の論理的連鎖

動名詞句が段落の主題を提示する機能を持つことは、前の記事で確認した。この機能を段落間の関係に拡張すると、各段落の主題文に含まれる動名詞句を比較することで、文章全体の論理構造が浮かび上がるという原理が得られる。この原理が重要なのは、長文読解では「文章全体の主旨」「筆者の主張」「段落間の論理関係」を問う設問が中心であり、段落ごとの動名詞句の主題を正確に把握できれば、文章全体の構造を効率的に理解できるためである。各段落の動名詞句を比較する際には、動名詞句の語彙的内容だけでなく、動名詞句が文の中でどのような述語と結びついているか(〜is important / 〜requires / 〜leads toなど)にも注目すべきであり、述語の内容が段落間の論理関係を示すシグナルとなることが多い。

この原理から、段落間の動名詞句の論理的連鎖を追跡する具体的な手順が導かれる。手順1では各段落の冒頭文に注目し、動名詞句が主語として使われているかを確認する。使われている場合、その動名詞句の内容を簡潔にメモする。メモは動名詞句の核心部分(中心語と主要な修飾語)を簡潔に記録すれば十分である。手順2では各段落の動名詞句の間の論理関係を確認する。並列関係(Improving A / Improving B / Improving C)の場合は列挙型の論理展開、因果関係(Doing A leads to doing B)の場合は因果型の論理展開、対比関係(Doing A vs. Doing B)の場合は対比型の論理展開であると判定できる。論理関係の判定には、段落間の接続表現(Furthermore / However / As a result / In contrastなど)も手がかりとなる。手順3では文章の結論部で動名詞句がどのように使われているかを確認する。結論部の動名詞句が各段落の動名詞句を統合する表現になっている場合、文章全体の主旨がその動名詞句に集約されていると判断できる。手順4では設問で「筆者の主張」を問われた場合、結論部の動名詞句の内容と最も合致する選択肢を選択する。選択肢では動名詞句の内容がパラフレーズ(言い換え)されていることが多いため、動名詞句が表す概念の本質を捉えている選択肢を選ぶ必要がある。

例1: 第1段落 “Eating a balanced diet provides essential nutrients.” / 第2段落 “Exercising regularly strengthens the cardiovascular system.” / 第3段落 “Getting enough sleep allows the body to recover.” → 三つの動名詞句が並列関係で健康法を列挙。→ 文章全体のテーマは「健康を維持するための複数の方法」。各段落の動名詞句を列挙すればテーマが明確になる。

例2: 第1段落 “Using social media excessively affects mental health.” / 第2段落 “Reducing screen time helps improve sleep quality.” → 第1段落の動名詞句が問題提起、第2段落の動名詞句が解決策提示。→ 因果・対比の論理展開。動名詞句の内容が「過度の使用」と「使用時間の削減」で対比関係にある。

例3: 第1段落 “Teaching students to memorize facts is no longer sufficient.” / 最終段落 “Developing critical thinking skills should be the primary goal of education.” → 第1段落で旧来の方法を否定し、最終段落で新しい方向性を動名詞句で提示。→ 文章全体の主旨が最終段落の動名詞句に集約。

例4: 設問「筆者が最も重要だと考えるものはどれか」→ 選択肢A: Critical thinking skills should be prioritized. → 最終段落のDeveloping critical thinking skillsとの整合を確認。→ 選択肢Aが正答。Developingがprioritizedにパラフレーズされている。

以上により、各段落の主題文に含まれる動名詞句を手がかりとして段落間の論理関係を追跡し、文章全体の主旨を効率的に把握することが可能になる。

3. 動名詞句を手がかりとした長文読解の戦略

これまで談話層で学んだ動名詞句の機能(主題提示・論点転換・結論要約)と段落間の論理的連鎖は、個別の知識としてではなく、長文読解の実践的な戦略として統合する必要がある。複合的な論理構造を持つ英文は、複数の段落で構成された長文であり、制限時間内にすべての設問に正確に解答するためには、文章の構造を素早く把握する方法論が必要となる。動名詞句は、英文中で抽象的な概念を提示する際に高頻度で使用されるため、文章構造の把握に極めて有効な手がかりとなる。

動名詞句を手がかりとした長文読解の戦略を身につけることによって、以下の能力が確立される。第一に、長文の全体構造を短時間で把握するための具体的な手法を獲得できるようになる。第二に、設問を先に読み、動名詞句に注目しながら本文を読むという戦略的な読解ができるようになる。第三に、動名詞句を手がかりに段落の要旨を素早くまとめる能力が確立される。第四に、統語層・意味層・語用層で学んだ動名詞に関するすべての知識を長文読解の中で統合的に活用できるようになる。

この能力は、入試本番において動名詞を含む長文問題を効率的に処理する実践力として直接発揮される。

3.1. 長文読解における動名詞句の活用法

長文読解で動名詞句に注目する意義は何か。「動名詞は文法問題で出題されるもの」という理解は、動名詞が文章構造の把握に果たす役割を見落としている。動名詞句の読解戦略上の価値は、動名詞句が「動作・行為を抽象的な名詞概念に変換する」という機能を持つ点にある。筆者が主張を展開する際、具体的な動作を抽象化して論じる必要がある場面で動名詞句が選択されるため、動名詞句が現れる箇所は文章の論理構造上の結節点となりやすい。この機能は、不定詞の名詞的用法にも類似した側面があるが、動名詞句のほうが「一般的・恒常的な行為の抽象化」に適しているため、段落の主題提示において動名詞句がより頻繁に選択される。

この原理から、長文読解で動名詞句を活用する具体的な手順が導かれる。手順1では設問を先に読み、動名詞句に関連する問い(段落の主題・筆者の主張・因果関係など)を把握する。設問を先に読むことで、本文を読む際に何に注目すべきかが明確になり、動名詞句の情報をより効率的に処理できるようになる。手順2では本文を読む際に、各段落の冒頭1〜2文に動名詞句が主語として使われているかを素早く確認する。動名詞句があれば、それが段落の主題を示している可能性が高いため、その内容を簡潔に記憶する。手順3では段落の残りの文を読む際、冒頭の動名詞句の内容がどのように支持・展開されているかを追跡する。支持の方法が具体例であるか、理由であるか、データであるかを把握することで、段落の論理構造が明確になる。手順4では文章全体を読み終えた後、各段落の動名詞句の主題を比較し、文章全体の論理展開パターン(列挙型・因果型・対比型・問題解決型)を特定する。手順5では設問に答える際、動名詞句の内容と選択肢の対応を確認する。選択肢が動名詞句の内容をパラフレーズしている場合は有力な正答候補であり、動名詞句の内容と矛盾する選択肢は誤答として排除できる。

例1: 設問「第2段落の主題として最も適切なものを選べ」→ 第2段落冒頭:“Developing effective communication skills is crucial in the modern workplace.” → 動名詞句Developing effective communication skillsが主題。→ 選択肢中の「コミュニケーション能力の重要性」に対応する選択肢が正答。

例2: 設問「筆者がこの文章で最も伝えたいことは何か」→ 最終段落に”Understanding and respecting cultural differences is the first step toward building a truly inclusive society.”という文がある。→ 動名詞句Understanding and respecting cultural differencesが文章全体の結論を集約。→ 「文化的差異の理解と尊重」に言及する選択肢が正答。

例3: 設問「第1段落と第3段落の関係を述べよ」→ 第1段落冒頭:“Increasing the amount of homework does not necessarily lead to better academic performance.” 第3段落冒頭:“Focusing on the quality of assignments rather than the quantity produces more meaningful learning outcomes.” → 第1段落が量的増加の否定、第3段落が質への転換。→ 対比・発展の関係。

例4: 長文全体の構造把握→ 各段落冒頭の動名詞句を列挙して整理:“Defining the problem” → “Analyzing the data” → “Proposing solutions” → “Implementing the plan” → 4段落が問題解決型の論理展開で段階的に配置。→ 文章全体の構造が「問題定義→分析→提案→実行」であると即座に把握できる。

以上により、設問の先読み、動名詞句の主題把握、論理展開の追跡、選択肢との対応確認という四段階の手順を一貫して適用することで、動名詞を含む長文を効率的かつ正確に読解する戦略を習得できる。

このモジュールのまとめ

このモジュールでは、動名詞の形態的定義という統語層の理解から出発し、意味層における不定詞との意味的差異の分析、語用層における前置詞+動名詞の構文処理と意味上の主語の特定、談話層における文章構成上の機能の把握と長文読解への応用という四つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層の識別能力が意味層の分析を可能にし、意味層の理解が語用層の実践的運用を支え、語用層の処理能力が談話層の文章全体の分析を実現するという階層的な関係にある。

統語層では、動名詞の定義と現在分詞との識別、動名詞の四つの統語的位置(主語・目的語・補語・前置詞の目的語)、動名詞句の内部構造、進行形との体系的区別、複合的な文における動名詞の特定という五つの側面から、-ing形の統語的機能を正確に判定する能力を確立した。-ing形が文中のどの位置に現れているかを手がかりとし、名詞への置き換えテストを適用することで、動名詞と現在分詞を確実に区別する技術を習得した。特に、be動詞の後の-ing形が補語としての動名詞であるか進行形の一部としての現在分詞であるかを、進行の意味の有無と「主語=-ing形」の関係から判定する方法を確立した。さらに、動名詞句の内部構造の分析、完了進行形や形式主語構文における-ing形の判定、一文に複数の-ing形が現れる場合の個別分析の技術を段階的に習得した。

意味層では、動名詞の意味的特徴と動詞ごとの目的語選択の原理、動名詞と不定詞の両方をとる動詞における意味の変化、動名詞と名詞の境界という四つの側面から、動名詞と不定詞の選択を論理的に判断する能力を確立した。動名詞が「経験済み・実行中の動作」を表し、不定詞が「未実現の動作」を表すという意味的原理を把握し、この原理に基づいて「中断・回避・延期」「完了・経験・習慣」「承認・否認」の三つの動詞グループが動名詞を要求する理由を体系的に理解した。remember, forget, try, stopなどの動詞が動名詞と不定詞の両方をとる場合の意味の変化も、同じ「経験済みvs未実現」の原理から一貫して説明できることを確認した。

語用層では、前置詞+動名詞の構文パターンと「to+動名詞」の識別、動名詞の意味上の主語の特定、動名詞を含む定型表現の体系的運用という三つの側面から、文脈の中で動名詞を正確に処理する能力を確立した。特に、toが前置詞である構文(look forward to doing, be used to doingなど)と不定詞のtoを区別する技術、所有格・目的格による動名詞の意味上の主語の明示パターン、「be+形容詞+前置詞+動名詞」「動詞+前置詞+動名詞」「特殊構文+動名詞」の三つの定型表現グループを習得した。

談話層では、主題文における動名詞句の機能、段落間における動名詞句の論理的連鎖、動名詞句を手がかりとした長文読解の戦略という三つの側面から、文章全体の論理構成において動名詞句が果たす役割を把握する能力を確立した。段落冒頭での主題提示、段落中盤での論点転換、段落末での結論要約という三つの機能パターンを識別し、各段落の動名詞句の連鎖から文章全体の論理展開を追跡する技術を習得した。さらに、設問の先読みと動名詞句への注目を組み合わせた実践的な読解戦略を確立した。

これらの能力を統合することで、単一の文法規則を直接適用して解決できる問題から、複合的な修飾構造を持つ長文の中で動名詞句を正確に把握し文章全体の意味を効率的に理解する問題まで、幅広く対応することが可能になる。このモジュールで確立した原理と技術は、後続のモジュールで学ぶ分詞の形態と識別、関係詞の体系、さらには基礎体系における動名詞・分詞の高度な運用の前提となる。

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