【基盤 英語】モジュール20:不定詞の形態と識別
本モジュールの目的と構成
英文を読み進めていると、”to”の後ろに動詞の原形が続く形に出会う場面は極めて多い。”I want to study abroad.”のような文では”to study”が動詞wantの目的語として機能し、”The best way to solve this problem is…”では”to solve”が直前の名詞wayを修飾している。同じ”to+動詞の原形”という形態でありながら、文中で果たす役割がまったく異なるのである。不定詞の形態を正確に識別できなければ、文の構造を誤って把握し、意味の取り違えに直結する。さらに、不定詞にはtoを伴わない原形不定詞という形態も存在し、使役動詞や知覚動詞の後にtoなしで現れる動詞の原形を不定詞と認識できなければ、文の要素の特定が根本から崩れる。不定詞は準動詞の中で最も出現頻度が高く、名詞的・形容詞的・副詞的という三つの用法を持つため、その識別能力は英文の構造分析全体を支える中核的な技術となる。
本モジュールは以下の層で構成される:
統語:不定詞の形態と統語的機能の識別
不定詞の基本形態(to+動詞の原形)を認識し、文中での統語的位置から名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法を判定する手順を確立する。前置詞toとの区別、原形不定詞の識別、句としての内部構造の把握もここで扱い、不定詞を含むあらゆる英文の構造分析に対応できる能力を養成する。
意味:不定詞が担う意味関係の把握
統語的用法が確定した不定詞について、目的・原因・結果・判断の根拠といった意味関係を文脈から判断する手順を扱う。形容詞的用法における被修飾名詞との意味的関係(目的語関係・主語関係・同格関係など)の識別、名詞的用法の未来志向性、意味上の主語の特定も対象とする。
語用:不定詞の使用場面と表現選択
不定詞と動名詞の選択が伝達意図によって変わる場面を扱う。”remember to do”と”remember doing”の違いなど、話し手の意図と不定詞選択の関係を識別する力を養成する。不定詞のみを目的語にとる動詞、動名詞のみを目的語にとる動詞の体系的な整理、慣用表現の構造的理解も対象とする。
談話:不定詞を含む文の文章内での機能
不定詞を含む文が段落の中でどのような役割を果たすかを把握する。目的を示す不定詞が論理展開の中で果たす機能、形式主語構文の情報構造的機能、段落内の複数の不定詞が協働して論理構造を形成するパターンを扱う。
このモジュールを修了すると、英文中に現れる不定詞の形態を即座に認識し、三用法のいずれに該当するかを統語的位置から判定できるようになる。その上で、不定詞が担う意味関係を文脈に基づいて特定し、文全体の構造と意味を正確に把握する力が身につく。動名詞や分詞との形態的な違いを明確に区別できるようになり、準動詞が混在する複雑な文においても構造を見失わずに読み進められる段階に到達する。不定詞と動名詞の使い分けを未来志向性と過去志向性の原理から論理的に判断でき、段落全体の中で不定詞がどのような論理的機能を担っているかを把握する力も確立される。この能力は、後続のモジュールで動名詞・分詞を学ぶ際の前提となり、準動詞全体の体系的理解を発展させることができる。
統語:不定詞の形態と統語的機能の識別
不定詞の形態を正確に認識し、文中での位置関係から三用法(名詞的・形容詞的・副詞的)を判定できることが、統語層の到達目標である。品詞の基本的な識別と五文型の判定ができていれば、ここから先の分析に進められる。不定詞の基本形態の認識、原形不定詞との区別、三用法の統語的判定基準を扱う。統語層で確立した用法判定の能力がなければ、意味層で不定詞が担う意味関係を正確に分析することは不可能である。
【関連項目】
[基盤 M10-統語]
└ 句の内部構造と外部機能の関係を理解する
[基盤 M14-統語]
└ 文の要素の識別手順を確認する
[基盤 M11-統語]
└ 節との形態的区別を把握する
【基礎体系】
[基礎 M11-統語]
└ 不定詞の機能と用法を原理的に理解する
1. 不定詞の基本形態と認識
“to+動詞の原形”という形を見たとき、それが不定詞なのか、前置詞toの後に名詞が続いているのかを即座に判断する必要がある。”I went to school.”のtoは前置詞であり、”I want to study.”のtoは不定詞の一部である。この判断を誤ると文の構造把握が根本から崩れる。
不定詞の形態認識によって、toの直後が動詞の原形か名詞かを素早く判定できるようになり、前置詞toとの混同を防ぐことができる。加えて、toの後に-ing形が続く場合(”look forward to meeting”など)にも前置詞toと正しく判別できるようになる。不定詞の形態認識は、次の記事で扱う原形不定詞の識別、さらに三用法の判定へと直結する出発点である。
1.1. toの後に続く語による識別
一般にtoは「前置詞のto」として理解されがちであり、”to+語”を見たときに全てを前置詞句として処理しようとする傾向がある。しかし、この理解はtoの後に動詞の原形が続く場合を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、toには前置詞としてのtoと不定詞標識(infinitive marker)としてのtoの二種類があり、後続する語の品詞によって区別されるべきものである。この区別が重要なのは、前置詞toの後には名詞(句)が続くのに対し、不定詞標識toの後には動詞の原形が続くという明確な形態的差異が存在するためである。前置詞toは方向・到達点・対象などの意味を持ち、”go to school”のように後続する名詞と前置詞句を構成する。一方、不定詞標識toは意味を持たず、後続する動詞の原形とともに不定詞句を構成する。この機能の違いを認識することが、toを含むあらゆる英文の構造分析の第一歩となる。
この原理から、toの性質を識別する具体的な手順が導かれる。手順1ではtoの直後の語を確認する。toの直後に動詞の原形(三単現の-sがなく、過去形の-edもつかない形)が来ていれば、そのtoは不定詞標識である。”to study”のstudyは原形であるから不定詞と判定できる。この判定では、不規則動詞にも注意が必要である。”to go”のgoや”to be”のbeなど、原形が特殊な形を持つ動詞も不定詞標識toの直後に来る。手順2ではtoの直後が名詞かどうかを確認する。toの直後に名詞や代名詞、あるいは冠詞+名詞が来ていれば、そのtoは前置詞である。”to school”のschoolは名詞であるから前置詞toと判定できる。”to the library”のようにthe+名詞が来る場合も同様である。また、“to him””to us”のように代名詞が来る場合も前置詞toと判定する。手順3では紛らわしい語に注意する。“look forward to”や”be used to”“be accustomed to”“object to”“devote oneself to”などの表現では、toの後に動名詞(-ing形)が来る。この場合のtoは前置詞であり、不定詞標識ではない。toの後が-ing形であれば前置詞toと判定できる。手順4では文脈上の曖昧さが生じた場合、toの後の語が動詞の原形としても名詞としても機能しうるか確認する。例えば”to work”は、“go to work”(仕事場へ行く、workは名詞)とも”want to work”(働きたい、workは動詞の原形)ともなりうる。この場合は、toの前に来ている動詞の意味と構文上の要求から判断する。goは方向を表す前置詞句を伴い、wantは不定詞を目的語にとるという動詞ごとの特性が判定の手がかりとなる。
例1: She decided to leave early.
→ toの直後: leave(動詞の原形、三単現の-sなし)。decideは不定詞を目的語にとる動詞。
→ 判定: 不定詞標識のto。”to leave”は不定詞。
例2: He walked to the station.
→ toの直後: the station(冠詞+名詞)。walkは方向を表す前置詞句を伴う動詞。
→ 判定: 前置詞のto。”to the station”は前置詞句。
例3: I am looking forward to meeting you.
→ toの直後: meeting(-ing形)。”look forward to”は前置詞toを含む慣用表現。
→ 判定: 前置詞のto。meetingは動名詞。この表現で”to meet”とすると非文法的になる。
例4: They used to live in Tokyo.
→ toの直後: live(動詞の原形)。”used to”は「以前〜していた」を表す慣用表現。
→ 判定: 不定詞標識のto。“to live”は不定詞。ただし”be used to -ing”(〜に慣れている)と混同しないこと。”He is used to living alone.”のtoは前置詞であり、livingは動名詞である。”used to+原形”と”be used to+-ing”の違いは、be動詞の有無で判別できる。
以上により、toの直後に続く語の形態を確認するだけで、前置詞toと不定詞標識toを正確に区別することが可能になる。
2. 原形不定詞の識別
不定詞には”to+動詞の原形”というto不定詞の他に、toを伴わない原形不定詞(bare infinitive)が存在する。”I saw him cross the street.”のcrossはtoを伴っていないが、不定詞として機能している。原形不定詞の存在を知らなければ、このcrossを文のどの要素として処理すべきか判断できなくなる。
原形不定詞が現れるパターンを把握することで、toがなくても不定詞を正確に識別できるようになる。また、受動態への書き換え時に原形不定詞がto不定詞に変わるという重要な文法現象も、原形不定詞の識別ができていなければ理解できない。
2.1. 原形不定詞が現れる構文
不定詞とは何か。多くの学習者は「toの後に動詞の原形が来る形」と認識しているが、この認識は知覚動詞や使役動詞の後に現れるtoなしの不定詞を見落とすという重大な問題を抱えている。学術的・本質的には、不定詞とは動詞の原形が名詞的・形容詞的・副詞的に機能する準動詞形式であり、toの有無は不定詞の本質ではなく標識の問題として区別されるべきものである。英語史的に見れば、古英語の不定詞はもともとtoを伴わない形態であり、toが付加されたのは後の発展によるものである。現代英語にも残る原形不定詞は、この歴史的な形態の名残といえる。この定義が重要なのは、toがなくても不定詞として機能する場合があることを認識しなければ、文の構造を正しく把握できないためである。
この原理から、原形不定詞を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では使役動詞の後を確認する。make, let, haveの後に「目的語+動詞の原形」の形が来ていれば、その動詞の原形は原形不定詞である。“She made him apologize.“のapologizeがこれに当たり、目的語himの動作を表す補語として機能している。使役動詞の中でもmakeとletは原形不定詞のみを許容するのに対し、haveは”have+目的語+原形不定詞”(能動的使役)と”have+目的語+過去分詞”(受動的使役・被害)の両方をとるため、後続する語の形態を注意深く確認する必要がある。“I had him repair the car.”(彼に車を修理させた)のrepairは原形不定詞であり、“I had my car repaired.”(車を修理してもらった)のrepairedは過去分詞である。手順2では知覚動詞の後を確認する。see, hear, feel, watch, notice, observeなどの後に「目的語+動詞の原形」の形が来ていれば、その動詞の原形は原形不定詞である。”I heard her sing.”のsingがこれに当たる。知覚動詞の場合、原形不定詞は「動作の全体」を知覚したことを表し、現在分詞(-ing形)は「動作の進行中の一部分」を知覚したことを表すという意味的な違いがある。”I heard her sing.”は歌の全体を聞いたニュアンスであり、”I heard her singing.”は歌っている最中の一部分を聞いたニュアンスである。手順3ではhelpの後を確認する。helpは「help+目的語+原形不定詞」と「help+目的語+to不定詞」の両方をとる。”He helped me carry the bags.”のcarryは原形不定詞であり、”He helped me to carry the bags.”のto carryはto不定詞であるが、いずれも文法的に正しい。アメリカ英語では原形不定詞が好まれ、イギリス英語ではto不定詞がやや多い傾向がある。手順4では受動態への変換時の変化を確認する。使役動詞makeと知覚動詞が受動態になると、原形不定詞はto不定詞に変わる。“She made him apologize.”→ “He was made to apologize.”、“I saw him cross the street.”→ “He was seen to cross the street.”のように、能動態では原形不定詞であったものが受動態ではto不定詞となる。この変換規則を把握しておくことで、受動態の文でも不定詞を正確に識別できる。
例1: The teacher made the students repeat the sentence.
→ made(使役動詞)+the students(目的語)+repeat(動詞の原形)。
→ 判定: repeatは原形不定詞。目的語studentsの動作を表す補語。受動態にすると”The students were made to repeat the sentence.”となる。
例2: We watched the sun set behind the mountains.
→ watched(知覚動詞)+the sun(目的語)+set(動詞の原形)。
→ 判定: setは原形不定詞。目的語sunの動作を表す補語。setは原形・過去形・過去分詞が同形(set-set-set)であるため、文脈から原形と判断する必要がある。ここではwatchedの後の「目的語+動詞」の構造から原形不定詞と判定できる。
例3: She let the children play in the garden.
→ let(使役動詞)+the children(目的語)+play(動詞の原形)。
→ 判定: playは原形不定詞。目的語childrenの動作を表す補語。letは受動態にすることが稀で、代わりに”The children were allowed to play in the garden.”のようにallowedで書き換えられることが多い。
例4: I felt the ground shake.
→ felt(知覚動詞)+the ground(目的語)+shake(動詞の原形)。
→ 判定: shakeは原形不定詞。目的語groundの動作を表す補語。”I felt the ground shaking.”とすると、揺れている最中を感じたというニュアンスになる。地震のように一瞬の出来事を表す場合は原形不定詞が多く、継続的な動作の場合は現在分詞が多い傾向がある。
以上により、使役動詞・知覚動詞・helpの後に現れる原形不定詞を正確に識別し、受動態への変換時のto不定詞への変化も把握することで、toがない場合でも不定詞を見落とさずに文構造を把握することが可能になる。
3. 名詞的用法の識別
不定詞の三用法の中で名詞的用法は、不定詞が文の主語・目的語・補語のいずれかとして機能するものである。”To read books is important.”では”To read books”が主語、”I want to go home.”では”to go home”が目的語として働いている。名詞的用法を正確に判定できなければ、文の主要構成要素の特定を誤ることになる。
まず名詞的用法を統語的位置から判定する基準を確立し、その上で形式主語・形式目的語を含む構文での判定方法を扱う。
3.1. 名詞的用法の統語的判定基準
名詞的用法とは何か。多くの学習者は「〜すること」と訳せるものが名詞的用法であると認識しているが、この訳語による判定は副詞的用法の「〜するために」や形容詞的用法の「〜するための」との境界が曖昧になるという問題を抱えている。学術的・本質的には、名詞的用法とは不定詞が文中で名詞と同じ統語的位置(主語位置・目的語位置・補語位置)を占めている状態として定義されるべきものである。名詞が占めうる位置に不定詞が来ていれば名詞的用法であり、それ以外であれば名詞的用法ではない。この定義が重要なのは、不定詞の用法判定は日本語訳ではなく文中での統語的位置によって機械的に決定されるため、学習者の主観的判断が介入する余地がないためである。
この原理から、名詞的用法を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞が主語位置にあるかを確認する。文頭に”To+動詞の原形”が来て、それに対する述語動詞が続いていれば、その不定詞は主語として機能している。”To understand grammar is essential.”の”To understand grammar”は述語動詞isの主語である。ただし、文頭の不定詞が主語であるかそれとも目的を表す副詞的用法であるかは、文の構造全体を確認して判断する必要がある。”To understand grammar, you need to read many examples.”の場合、”To understand grammar”はyou needの主語ではなくカンマで区切られた副詞的用法(目的)である。カンマの有無が重要な手がかりとなる。手順2では不定詞が目的語位置にあるかを確認する。他動詞の直後に不定詞が来ていれば、その不定詞は目的語として機能している。want, decide, hope, plan, expect, promise, refuse, agree, choose, manage, fail, pretend, offerなどの動詞は不定詞を目的語にとる代表的な動詞である。”She decided to quit.”の”to quit”は他動詞decidedの目的語である。これらの動詞が不定詞を目的語にとるのは、いずれも「これから行う未実現の行為」に向かう意味を持っており、不定詞の未来志向性と合致するためである。手順3では不定詞が補語位置にあるかを確認する。be動詞やbecomeなどの連結動詞の後に不定詞が来て、主語の内容を説明していれば、その不定詞は補語として機能している。”My goal is to pass the exam.”の”to pass the exam”は主語goalの内容を説明する補語である。補語位置の不定詞は、主語が抽象名詞(goal, aim, dream, purpose, plan, wish, hope, dutyなど)である場合に特に頻出する。手順4では形式主語itおよび形式目的語itを含む構文を確認する。”It is important to study every day.”のItは形式主語であり、真の主語は”to study every day”である。”I found it difficult to solve the problem.“のitは形式目的語であり、真の目的語は”to solve the problem”、difficultは補語である。形式主語・形式目的語のitは、それ自体には意味がなく、文末に移動した不定詞の位置を代理的に占める機能語であることを認識する。
例1: To learn a foreign language takes time and effort.
→ “To learn a foreign language”は述語動詞takesの前に位置。カンマなし。主語として機能。
→ 判定: 名詞的用法(主語)。形式主語構文に書き換えると”It takes time and effort to learn a foreign language.”となる。
例2: He promised to return the book by Friday.
→ “to return the book”は他動詞promisedの直後に位置。目的語として機能。
→ 判定: 名詞的用法(目的語)。promiseは未実現の行為への約束を表す動詞であり、不定詞の未来志向性と合致する。
例3: Her dream is to become a doctor.
→ “to become a doctor”はbe動詞isの後に位置。主語dreamの内容を説明。
→ 判定: 名詞的用法(補語)。dreamは抽象名詞であり、補語位置の不定詞がその具体的内容を示す典型的なパターン。
例4: I found it difficult to solve the problem.
→ itは形式目的語。”to solve the problem”が真の目的語。difficultは補語。
→ 判定: 名詞的用法(真の目的語)。”I found to solve the problem difficult.”は語順として不自然であるため、itを形式目的語として使い、不定詞を文末に移動している。
以上により、不定詞が文中のどの位置を占めているかを確認することで、名詞的用法を日本語訳に頼らず統語的に判定することが可能になる。
4. 形容詞的用法の識別
形容詞的用法の不定詞は、名詞の直後に置かれてその名詞を修飾する。”I need something to drink.”の”to drink”は名詞somethingを修飾しており、「飲むための(もの)」という意味を加えている。形容詞的用法を見落とすと、不定詞を副詞的用法と混同し、修飾関係を誤って把握することになる。
形容詞的用法の統語的判定基準を確立した上で、被修飾名詞と不定詞の間に存在する意味的関係の基本的な識別にも触れる。
4.1. 形容詞的用法の統語的判定基準
形容詞的用法には二つの捉え方がある。一つは「〜するための」「〜すべき」と訳せるかどうかで判定する方法であり、もう一つは不定詞の統語的位置から判定する方法である。前者の日本語訳による判定は、副詞的用法の「〜するために」との区別が曖昧になるという問題があり、後者の統語的位置による判定がより確実である。学術的・本質的には、形容詞的用法とは不定詞が名詞の直後に置かれ、その名詞を限定・修飾している状態として定義されるべきものである。形容詞が名詞を修飾するのと同じように、不定詞(句)が名詞の後置修飾語として機能しているのが形容詞的用法の本質である。英語の形容詞は通常、名詞の前に置かれるが、不定詞句や関係詞節のように長い修飾語は名詞の後に置かれるという英語の語順原則に基づいている。この定義が重要なのは、形容詞的用法の判定基準は「名詞の直後に位置し、その名詞を修飾しているかどうか」という統語的位置関係であり、日本語訳ではないためである。
この原理から、形容詞的用法を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞が名詞の直後に位置しているかを確認する。不定詞の直前に名詞があり、その不定詞がその名詞の内容を限定・説明していれば、形容詞的用法と判定できる。”I have a lot of homework to do.”の”to do”は名詞homeworkの直後にあり、homeworkを修飾している。この判定では、不定詞と直前の名詞の間に形容詞が挟まる場合にも注意する。”I want something cold to drink.”では、somethingとto drinkの間にcoldが入っているが、to drinkはsomethingを修飾する形容詞的用法である。手順2では不定詞を取り除いても文が成立するかを確認する。形容詞的用法の不定詞は修飾語であるため、取り除いても文の骨格は成立する。”I have a lot of homework.”として文が成立することから、”to do”は修飾要素と判定できる。一方、名詞的用法の不定詞は文の主要構成要素であるため、取り除くと文が成立しなくなる。”I want to go home.”から”to go home”を取り除くと”I want.”となり、目的語が欠落して不完全な文になる。手順3では不定詞と直前の名詞の間に意味的な関係があるかを確認する。”homework to do”は「する宿題」であり、homeworkはdoの意味上の目的語の関係にある。”a chair to sit on”ではchairはsit onの目的語に当たる。このような名詞と不定詞の間の意味的つながりが確認できれば、形容詞的用法の判定はより確実になる。意味的関係の詳細な分類(目的語関係・主語関係・同格関係・前置詞を介した関係)は意味層で扱う。手順4では形容詞的用法と副詞的用法の境界が曖昧な場合の判定基準を確認する。”She bought a book to read on the train.”のto readは、bookの直後に位置してbookを修飾する形容詞的用法とも、boughtの目的を表す副詞的用法とも解釈できる。このような場合、直前の名詞と不定詞の意味的関係が明確(bookはreadの目的語)であれば形容詞的用法と判定し、直前の名詞との関係が薄く主節の動詞との関係が強ければ副詞的用法と判定する。
例1: She needs a pen to write with.
→ “to write with”は名詞penの直後。penはwrite withの意味上の目的語。不定詞を除いても”She needs a pen.”は成立する。
→ 判定: 形容詞的用法。penを修飾。不定詞末尾の前置詞withが被修飾名詞penとつながる点に注意。withを落とすと”a pen to write”となり、意味が不完全になる。
例2: There is no reason to worry about it.
→ “to worry about it”は名詞reasonの直後。reasonの内容を限定。不定詞を除いても”There is no reason.”は成立する。
→ 判定: 形容詞的用法。reasonを修飾。reasonは抽象名詞であり、不定詞がその具体的内容を限定する同格的な関係にある。
例3: He was the first person to arrive at the party.
→ “to arrive at the party”は名詞personの直後。personを限定。personは”the person arrived at the party”と言い換えられ、主語関係にある。
→ 判定: 形容詞的用法。the first personを修飾。序数詞(first, last, second等)やonly, nextなどの限定語を伴う名詞の後に不定詞が来るパターンは頻出である。
例4: I want something cold to drink.
→ “to drink”は名詞somethingの後(形容詞coldを挟む)。somethingを修飾。somethingはdrinkの意味上の目的語。
→ 判定: 形容詞的用法。somethingはdrinkの目的語に当たるため、”drink something cold”と言い換えられる。-thing, -one, -bodyで終わる不定代名詞の後に形容詞+不定詞が続くパターンは共通テストでも頻出する。
以上により、不定詞が名詞の直後に位置してその名詞を修飾しているかどうかを確認することで、形容詞的用法を正確に判定することが可能になる。
5. 副詞的用法の識別
副詞的用法の不定詞は、動詞・形容詞・文全体を修飾し、目的・原因・結果・条件などの意味を加える。”I went to the library to study.”の”to study”は動詞wentを修飾し、「勉強するために」という目的を示している。副詞的用法は名詞的用法・形容詞的用法のいずれにも該当しない場合に判定されるため、消去法的な判断手順が有効である。
副詞的用法の統語的判定基準を確立し、消去法による判定手順を確実に使えるようにする。
5.1. 副詞的用法の統語的判定基準
副詞的用法とは、[正しい定義]である。不定詞が名詞以外の語句(動詞・形容詞・文全体)を修飾している状態を指す。多くの学習者は副詞的用法を「〜するために」という目的の意味だけで認識しているが、この認識は原因(〜して)・結果(その結果〜した)・判断の根拠(〜するとは)・条件(もし〜すれば)を表す場合を体系的に見落とすという問題を抱えている。副詞的用法の判定で最も確実な方法は消去法である。すなわち、不定詞が主語・目的語・補語の位置にない(名詞的用法ではない)、かつ名詞の直後でその名詞を修飾していない(形容詞的用法ではない)場合に、副詞的用法と判定する。この消去法が有効なのは、副詞的用法は名詞的用法や形容詞的用法と異なり、特定の統語的位置に限定されないためである。副詞が文中の様々な位置に自由に現れるのと同様に、副詞的用法の不定詞も文頭・文中・文末のいずれにも現れうる。
この原理から、副詞的用法を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞が主語・目的語・補語の位置にないかを確認する。いずれかの位置にあれば名詞的用法であり、副詞的用法ではない。”I want to go.”のto goはwantの目的語位置にあるため名詞的用法であり、副詞的用法ではない。手順2では不定詞の直前に名詞があり、その名詞を修飾しているかを確認する。名詞の直後でその名詞を修飾していれば形容詞的用法であり、副詞的用法ではない。”I need a book to read.”のto readはbookを修飾しているため形容詞的用法であり、副詞的用法ではない。手順3では手順1・手順2のいずれにも該当しなければ、副詞的用法と判定する。副詞的用法の不定詞は動詞や形容詞を修飾しており、文から取り除いても文の主要構成要素は変わらない。”She went to the store to buy milk.”から”to buy milk”を除いても”She went to the store.”として文が成立することで、修飾要素であることが確認できる。手順4では副詞的用法と判定した後、修飾対象を確認する。動詞を修飾しているか(”studied hard to pass”のto passはstudiedを修飾)、形容詞を修飾しているか(”glad to see you”のto seeはgladを修飾)、文全体を修飾しているか(”To tell the truth, …”のTo tell the truthは文全体を修飾)を確認する。修飾対象の特定は、意味層で意味関係(目的・原因・結果・判断の根拠)を判定する際の前提となる。
例1: He studied hard to pass the entrance exam.
→ 手順1: 主語・目的語・補語の位置ではない。手順2: 直前の名詞を修飾しているわけでもない。手順3: 副詞的用法と判定。
→ 修飾対象: 動詞studied。意味関係は目的(合格するために勉強した)。
例2: I was surprised to hear the news.
→ 手順1: 主語・目的語・補語の位置ではない。手順2: 直前のsurprisedは形容詞であり名詞ではない。手順3: 副詞的用法と判定。
→ 修飾対象: 形容詞surprised。意味関係は原因(聞いて驚いた)。
例3: She grew up to become a famous scientist.
→ 手順1: 主語・目的語・補語の位置ではない。手順2: 直前の名詞を修飾していない。手順3: 副詞的用法と判定。
→ 修飾対象: 文全体(grew up)。意味関係は結果(成長して〜になった)。”grow up to become”は結果の副詞的用法の典型的パターンであり、主節の出来事(成長した)が先に起こり、不定詞の内容(〜になった)がその後の帰結を表す。
例4: You must be brave to say such a thing.
→ 手順1: 主語・目的語・補語の位置ではない。手順2: 直前のbraveは形容詞であり名詞ではない。手順3: 副詞的用法と判定。
→ 修飾対象: 形容詞brave。意味関係は判断の根拠(そんなことを言うとは勇敢に違いない)。この用法では、不定詞が表す行為から主節の判断を導いている。”must be”との組み合わせで判断の根拠を示すパターンは入試でも頻出する。
以上により、名詞的用法と形容詞的用法を消去法で除外した上で修飾対象を確認することで、副詞的用法を確実に判定することが可能になる。
意味:不定詞が担う意味関係の把握
統語層で三用法の判定ができるようになった学習者は、次に各用法の内部で不定詞がどのような意味関係を担っているかを分析する段階に進む。形容詞的用法における被修飾名詞と不定詞の意味的関係、副詞的用法における目的・原因・結果・判断の根拠の区別、名詞的用法の未来志向性、意味上の主語の特定が学習対象である。意味層の能力がなければ、語用層で不定詞と動名詞の使い分けを判断する際に、意味の違いを正確に把握できない。
【関連項目】
[基盤 M32-意味]
└ 時制が表す基本的な意味関係を確認する
[基盤 M34-意味]
└ 助動詞が加える意味的ニュアンスを理解する
【基礎体系】
[基礎 M11-意味]
└ 不定詞の意味的機能を原理的に理解する
1. 形容詞的用法における被修飾名詞との意味関係
形容詞的用法の不定詞は名詞を修飾するが、被修飾名詞と不定詞の間にはさまざまな意味的関係がある。”water to drink”ではwaterがdrinkの目的語の関係にあり、”the ability to speak English”ではabilityがspeakの内容を表す同格関係にある。この意味関係を正確に把握することで、不定詞を含む名詞句の意味を正しく理解できるようになる。
被修飾名詞と不定詞の意味的関係を四つの類型に分類し、各類型の判定手順を確立する。
1.1. 被修飾名詞と不定詞の意味的関係の類型
一般に形容詞的用法の不定詞は「名詞を修飾する」とだけ理解されがちである。しかし、この理解は被修飾名詞と不定詞の間に存在する多様な意味関係を無視しているという点で不正確である。学術的・本質的には、形容詞的用法の不定詞と被修飾名詞の間には、目的語関係・主語関係・同格関係・前置詞を介した関係という複数の意味的関係が存在し、これらを区別して把握すべきものである。この区別が重要なのは、意味関係の違いによって和訳の仕方や文意の捉え方が変わるためである。目的語関係では「〜する[名詞]」(例:飲む水)、主語関係では「〜する[名詞]」(例:最初に到着した人)、同格関係では「〜するという[名詞]」(例:辞任するという決定)、前置詞を介した関係では「〜する[名詞]」(例:座る椅子→椅子に座る)のように、同じ形容詞的用法でも和訳の構造が異なる。入試の和訳問題では、この意味関係を正確に把握していなければ不自然な日本語訳になり、得点を失う原因となる。
この原理から、被修飾名詞と不定詞の意味関係を特定する具体的な手順が導かれる。手順1では被修飾名詞が不定詞内の動詞の目的語に当たるかを確認する。”something to eat”のsomethingは”eat something”と言い換えられるため、目的語関係と判定できる。この判定では、不定詞内の動詞が他動詞であり、目的語が明示されていない場合に目的語関係を疑う。”books to read”のbooksは”read books”の目的語に当たる。手順2では被修飾名詞が不定詞内の動詞の主語に当たるかを確認する。”the first student to finish”のstudentは”the student finished”と言い換えられるため、主語関係と判定できる。序数詞(first, last, second)、only、nextなどの限定語を伴う名詞の後に不定詞が来る場合、主語関係であることが多い。手順3では被修飾名詞が不定詞の内容そのものを表しているかを確認する。”the decision to resign”のdecisionはresignの内容(辞任するという決定)を表しており、目的語関係でも主語関係でもないため、同格関係と判定できる。同格関係をとる名詞は、decision, ability, plan, attempt, promise, right, chance, opportunity, need, desireなどの抽象名詞が典型的である。これらの名詞は「〜するという/〜する」という不定詞の内容をそのまま反映する。手順4では不定詞末尾に前置詞があるかを確認する。”a chair to sit on”のように不定詞の末尾に前置詞がある場合、被修飾名詞はその前置詞の目的語に当たる。”sit on a chair”と言い換えられる。”a pen to write with”ならpenはwith a penのように前置詞withの目的語に当たる。この場合、末尾の前置詞を落とすと文意が不完全になることが判定の手がかりとなる。”a chair to sit”では「何に座るのか」が不明確であり、onが不可欠である。
例1: I need a chair to sit on.
→ chairは”sit on a chair”のように前置詞onの目的語に当たる。
→ 判定: 前置詞を介した関係。不定詞末尾の前置詞onが被修飾名詞chairとつながる。和訳は「座るための椅子」。
例2: He has the ability to solve complex problems.
→ abilityは”solve complex problems”の内容そのものを表す。abilityはsolveの主語でも目的語でもない。
→ 判定: 同格関係。abilityの内容が”to solve complex problems”。和訳は「複雑な問題を解く能力」。abilityは同格関係の典型的な名詞である。
例3: She was the only person to notice the mistake.
→ personは”the person noticed the mistake”と言い換えられる。onlyが限定語として付随。
→ 判定: 主語関係。personがnoticeの意味上の主語。和訳は「その間違いに気づいた唯一の人」。
例4: Give me something to write with.
→ somethingは”write with something”のように前置詞withの目的語に当たる。
→ 判定: 前置詞を介した関係。不定詞末尾のwithが被修飾名詞somethingとつながる。和訳は「何か書くもの(書く道具)」。withを落とした”something to write”では「何か書く内容」という異なる意味(目的語関係)になってしまう点に注意が必要である。
以上により、被修飾名詞を不定詞内の動詞との関係に当てはめることで、形容詞的用法の不定詞が担う意味関係を正確に特定することが可能になる。
2. 副詞的用法における意味関係の識別
副詞的用法の不定詞は「目的」以外にも「原因」「結果」「判断の根拠」「条件」など複数の意味関係を担う。”I went to the station to meet her.”は目的であり、”She was happy to receive the gift.”は原因であり、”He grew up to become a doctor.”は結果である。これらの意味関係を文脈から正確に判断できなければ、文の論理構造を誤って把握することになる。
副詞的用法の意味関係を四つの類型(目的・原因・結果・判断の根拠)に分類し、主節の動詞・形容詞の性質から判定する手順を確立する。
2.1. 副詞的用法の意味関係の判定手順
一般に副詞的用法の不定詞は「〜するために」という目的の意味で理解されがちである。しかし、この理解は原因・結果・判断の根拠を表す場合を見落とすという点で不正確である。学術的・本質的には、副詞的用法の不定詞が担う意味関係は主節の述語動詞や形容詞の性質、および文脈上の論理関係によって決定されるべきものである。この定義が重要なのは、同じ”to+動詞の原形”であっても、主節の内容によって目的にも原因にも結果にもなりうるためである。入試では目的と原因の区別、結果の用法の認識が問われることが多く、意味関係の判定手順を体系的に身につけておく必要がある。
この原理から、副詞的用法の意味関係を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では主節が意志的な行動を表しているかを確認する。主節の動詞がgo, come, study, work, visit, travel, stop, rushなどの意志的行動を表し、不定詞がその行動の目的を示していれば、目的の副詞的用法と判定できる。”He went to the library to borrow a book.”のto borrowは、went(意志的行動)の目的を表す。目的の不定詞は”in order to”や”so as to”で書き換えが可能であり、書き換えが自然に成立するかどうかが目的の判定の手がかりとなる。手順2では主節が感情・心理状態を表す形容詞を含んでいるかを確認する。happy, sad, surprised, glad, sorry, relieved, disappointed, shocked, angry, pleased, delightedなどの感情形容詞の後に不定詞が来ていれば、原因の副詞的用法と判定できる。”I was glad to see you.”のto seeは、glad(感情)の原因を表す。感情形容詞の後の不定詞は「〜して[感情]」と訳す。原因と目的の区別は重要であり、原因は「不定詞の行為が先に起こり、その結果として感情が生じた」という時間関係を持つのに対し、目的は「不定詞の行為はまだ実現していない」という時間関係を持つ。手順3では主節と不定詞の間に時間的な前後関係があるかを確認する。主節の出来事が先に起こり、不定詞の内容がその後の帰結を表していれば、結果の副詞的用法と判定できる。”She lived to be ninety years old.“のto beは、lived(長く生きた)の結果を表す。結果の用法は”only to〜”(〜しただけだった、結局〜した)の形でも頻出する。“He hurried to the station, only to find the train had already left.”(駅に急いだが、結局電車はもう出発していた)のonly to findは、期待に反した結果を表す。手順4では主節に推量・判断を表す表現が含まれているかを確認する。“must be”“cannot be””should be”などの推量表現や、“It is careless of you””You are foolish”などの人物評価表現の後に不定詞が来ていれば、判断の根拠の副詞的用法と判定できる。”He must be rich to own such a large house.”のto ownは、must be rich(推量)の根拠を表す。「〜するとは…に違いない」「〜するなんて…だ」と訳す。
例1: We stopped at the store to buy some bread.
→ 主節: stopped(意志的行動)。不定詞: to buy(行動の目的)。”in order to buy”に書き換え可能。
→ 判定: 目的。「パンを買うために店に立ち寄った。」
例2: He was disappointed to fail the test.
→ 主節: was disappointed(感情形容詞)。不定詞: to fail(感情の原因)。failが先に起こり、その結果disappointedになった。
→ 判定: 原因。「試験に落ちてがっかりした。」”in order to fail”には書き換え不可能であり、目的ではないことが確認できる。
例3: She awoke to find herself in a hospital.
→ 主節: awoke(先行する出来事)。不定詞: to find(後続する帰結)。目覚めた後に病院にいることに気づいた。
→ 判定: 結果。「目を覚ますと病院にいた。」awoke(目覚めた)→found(気づいた)という時間的前後関係が明確。
例4: He must be rich to own such a large house.
→ 主節: must be rich(推量・判断)。不定詞: to own(判断の根拠)。大きな家を所有しているという事実から裕福であるという判断を導いている。
→ 判定: 判断の根拠。「そんな大きな家を持っているのだから裕福に違いない。」“It is kind of you to help me.”(手伝ってくれるとは親切ですね)も同様に判断の根拠を表す。
以上により、主節の動詞・形容詞の性質と文脈上の論理関係を手がかりにすることで、副詞的用法の不定詞が担う意味関係を正確に判定することが可能になる。
3. 名詞的用法の意味的特徴
名詞的用法の不定詞は「未来志向」「未実現」の意味的特徴を持つ。”I want to travel abroad.”のto travelは、まだ実現していない行為への願望を表している。この「未実現」という意味的特徴を理解することは、後の語用層で動名詞との使い分けを学ぶ際の前提となる。
不定詞の未来志向性を確認し、この特徴が動詞の選択制限とどのように対応しているかを把握する。
3.1. 不定詞の未来志向性
一般に不定詞の名詞的用法は「〜すること」と訳せるものとして理解されがちであり、動名詞の「〜すること」と区別されないことが多い。しかし、この理解は不定詞と動名詞が同じ「〜すること」であるにもかかわらず使い分けが存在する理由を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、不定詞の名詞的用法は「これから行う、まだ実現していない行為」を指向する傾向があり、この未来志向性が不定詞の意味的本質として認識されるべきものである。この特徴が重要なのは、不定詞を目的語にとる動詞(want, hope, decide, planなど)がいずれも未実現の行為に向かう意味を持っていることと対応しているためである。一方、動名詞を目的語にとる動詞(enjoy, finish, avoid, mindなど)は現在の行為や過去の経験に関わる意味を持つ傾向がある。この未来志向性と過去志向性の対比は、語用層で不定詞と動名詞の選択原理として活用される。
この原理から、名詞的用法の不定詞が持つ未来志向性を確認する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞の内容が主節の時点で実現済みかどうかを確認する。”I decided to apply.”のto applyは、decidedの時点ではまだ実現していない行為であり、未来志向性が確認できる。「決定する」という行為は「これからすること」に向けられるものであり、決定の時点で対象行為は未実現である。手順2では不定詞を目的語にとる動詞の意味を確認する。want(望む)、hope(望む)、plan(計画する)、expect(期待する)、decide(決定する)、promise(約束する)、offer(申し出る)、refuse(拒否する)、agree(同意する)、manage(なんとか〜する)、fail(〜し損ねる)などは全て未実現の行為に向かう動詞であり、不定詞の未来志向性と一致している。これらの動詞に共通するのは、「対象行為がまだ実現していない時点での態度・判断・意志を表す」という意味的特性である。手順3では形式主語構文のitを含む文でも未来志向性が保たれるかを確認する。”It is important to prepare for the exam.”のto prepareは、まだ実行していない準備を指しており、未来志向性が確認できる。”It is necessary to submit the report by Friday.”も同様に、提出はまだ行われていない未来の行為である。手順4では不定詞と動名詞の両方を目的語にとり、意味が変わらない動詞との対比を確認する。”I like to swim.”と”I like swimming.”はほぼ同義であるが、厳密には前者が「これから泳ぐこと」(未来志向的な好み)、後者が「泳ぐという行為そのもの」(一般的な好み)というニュアンスの差がある。like, love, hate, begin, start, continueなどの動詞では、不定詞と動名詞の意味差が小さいため、どちらも許容される。
例1: She hopes to visit Paris next year.
→ to visitはhopesの時点で未実現。来年の訪問という未来の行為を指す。
→ 未来志向性: 確認。hopeは未実現の行為に向かう動詞。”hopes visiting”は非文法的であり、hopeが不定詞のみを目的語にとることは未来志向性との一致を示す。
例2: They agreed to postpone the meeting.
→ to postponeはagreedの時点で未実現。延期という未来の行為を指す。
→ 未来志向性: 確認。agreeは未実現の行為への合意を表す動詞。延期は合意の時点ではまだ実行されていない。
例3: It is necessary to check the data carefully.
→ to checkはまだ実行されていない行為を指す。
→ 未来志向性: 確認。「確認すること」が今後の必要事項として提示されている。形式主語構文においても不定詞の未来志向性は維持される。
例4: He promised not to be late again.
→ not to be lateはpromisedの時点で未実現。今後遅刻しないという未来の行為を指す。
→ 未来志向性: 確認。否定形の不定詞(not to+原形)でも未来志向性は保たれる。promiseは「これからの行為」への約束を表す動詞であり、否定形でも対象行為は未実現である。
以上により、不定詞の名詞的用法が「まだ実現していない行為」を指向するという意味的特徴を確認することで、動名詞との使い分けを理解するための前提が確立される。
4. 不定詞の意味上の主語
不定詞が表す行為の主体(意味上の主語)は、文脈によって異なる。”I want to go.”では不定詞の意味上の主語は文の主語Iと一致するが、”I want him to go.”では意味上の主語はhimである。意味上の主語を正しく特定できなければ、「誰が何をするのか」という文の根幹的な意味を誤解することになる。
意味上の主語が明示される三つのパターン(for+名詞、目的語、文の主語)を整理し、判定手順を確立する。
4.1. 意味上の主語の特定手順
一般に不定詞の意味上の主語は「文の主語と同じ」と理解されがちである。しかし、この理解は”for+名詞+to不定詞”の構文や、目的語が不定詞の意味上の主語となる場合を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、不定詞の意味上の主語は文の構造によって決定されるものであり、文の主語と一致する場合、目的語と一致する場合、”for+名詞”で明示される場合の三つのパターンとして整理されるべきものである。この整理が重要なのは、意味上の主語の特定を誤ると「誰がその行為をするのか」という文意の根幹を取り違えるためである。入試の和訳問題や内容一致問題では、不定詞の意味上の主語を正確に把握しているかどうかが直接的に得点に影響する。
この原理から、不定詞の意味上の主語を特定する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞の前に”for+名詞”があるかを確認する。”It is important for students to study every day.”のfor studentsは不定詞to studyの意味上の主語を明示しており、studyするのはstudentsである。”for+名詞”による意味上の主語の明示は、形式主語構文”It is+形容詞+for+名詞+to不定詞”で最も頻繁に現れる。なお、形容詞が人の性質を表す場合(kind, careless, foolish, brave, clever, rude, wiseなど)は”for”ではなく”of”が使われる。”It is kind of you to help me.”のof youはto helpの意味上の主語を表す。forとofの使い分けは、形容詞が人の性質を評価するかどうかによって決まる。手順2では不定詞の前に目的語があるかを確認する。”I asked her to help me.”のherは動詞askedの目的語であると同時に、不定詞to helpの意味上の主語である。helpするのはherである。ask, tell, want, expect, advise, allow, permit, encourage, force, order, require, enable, persuade, remind, warnなどの動詞は「目的語+to不定詞」の構文をとり、目的語が不定詞の意味上の主語となる。手順3では上記のいずれにも該当しなければ、文の主語が不定詞の意味上の主語と判定する。”She decided to leave.”のto leaveの意味上の主語は文の主語Sheである。leaveするのはSheである。これは最も基本的なパターンであり、不定詞の意味上の主語が特に明示されていない場合に適用する。手順4では意味上の主語が不明確な場合の処理を確認する。”The problem is easy to solve.”のto solveの意味上の主語は文中に明示されていない。この構文は”It is easy for someone to solve the problem.”から変形されたもの(tough構文)であり、意味上の主語は一般的な人(誰にとっても)を指す。このように、意味上の主語が文中に現れない場合もあることを認識しておく必要がある。
例1: It is difficult for beginners to understand this concept.
→ “for beginners”が明示されている。understandするのはbeginners。
→ 判定: 意味上の主語はbeginners(forによる明示)。形式主語構文における典型的なパターン。
例2: The teacher told the students to open their textbooks.
→ the studentsは動詞toldの目的語であり、openの意味上の主語。
→ 判定: 意味上の主語はthe students(目的語と一致)。tellは「目的語+to不定詞」の構文をとる代表的な動詞。
例3: He wants to become an engineer.
→ forも目的語もない。becomeの意味上の主語は文の主語He。
→ 判定: 意味上の主語はHe(文の主語と一致)。wantは”want to+原形”と”want+目的語+to+原形”の両方をとるが、この文では目的語がないため主語と一致。
例4: My parents allowed me to stay out late.
→ meは動詞allowedの目的語であり、stayの意味上の主語。
→ 判定: 意味上の主語はme(目的語と一致)。allowは”allow+目的語+to不定詞”の構文をとる。stay out lateするのは「私」であり、「両親」ではない。意味上の主語を誤ると「両親が遅くまで外出した」という誤った解釈になってしまう。
以上により、”for+名詞”の有無、目的語の有無を順に確認することで、不定詞の意味上の主語を正確に特定し、「誰が何をするのか」を誤りなく把握することが可能になる。
語用:不定詞の使用場面と表現選択
統語層・意味層で不定詞の用法判定と意味関係の分析ができるようになった学習者は、次に不定詞と動名詞の選択が伝達意図によって変わる場面を識別する段階に進む。“remember to do”と”remember doing”、”stop to do”と”stop doing”のように、不定詞と動名詞の選択によって文の意味が変わるパターンの識別を扱う。語用層で確立した表現選択の識別能力は、談話層で不定詞を含む文の文章内での機能を把握する際に不可欠となる。
【関連項目】
[基盤 M21-語用]
└ 動名詞の形態と識別を理解する
[基盤 M45-語用]
└ 直接表現と間接表現の区別を把握する
【基礎体系】
[基礎 M11-語用]
└ 不定詞と動名詞の選択原理を体系的に理解する
1. 不定詞と動名詞の選択による意味の違い
特定の動詞は不定詞と動名詞の両方を目的語にとるが、選択によって意味が異なる。”remember to do”は「これからすることを覚えておく」であり、”remember doing”は「過去にしたことを覚えている」である。この区別を正確に識別できなければ、文の意味を根本から取り違える。
意味層で確認した不定詞の未来志向性と動名詞の過去志向性の対比を応用し、同一動詞における不定詞と動名詞の意味差を体系的に把握する。
1.1. 意味が変わる動詞の識別
一般に不定詞と動名詞は「どちらも『〜すること』を意味する」と理解されがちである。しかし、この理解はremember, forget, stop, tryなどの動詞で不定詞と動名詞を入れ替えると意味が変わる現象を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、不定詞は「未実現・これからの行為」を、動名詞は「実現済み・経験済みの行為」を指向する傾向があり、この時間的志向性の違いが同一動詞での意味差を生み出すものとして理解されるべきである。この原理が重要なのは、意味層で確認した不定詞の未来志向性がここで実際の表現選択に直結するためである。不定詞の未来志向性と動名詞の過去志向性は、英語の準動詞体系全体を貫く基本原理であり、個別の動詞ごとに暗記するのではなく、この原理から論理的に意味差を導出できる。入試ではremember, forget, stop, tryの四動詞が最頻出であるが、原理を理解していればregret, go on, meanなど他の動詞の意味差にも対応できる。
この原理から、不定詞と動名詞で意味が変わる動詞を識別する具体的な手順が導かれる。手順1ではrememberとforgetについて、不定詞なら「これからする行為」、動名詞なら「過去にした行為」と判定する。”Remember to lock the door.”は「(これから)鍵を閉めることを忘れるな」であり、”I remember locking the door.”は「鍵を閉めた(過去の行為)ことを覚えている」である。rememberの場合、不定詞は「未来の義務・予定」を表し、動名詞は「過去の記憶」を表すという対比が明確である。forgetも同様であり、”Don’t forget to call me.”は「(これから)電話することを忘れるな」、”I forgot calling you.”は「(過去に)電話したことを忘れた」である。手順2ではstopについて、不定詞なら「〜するために立ち止まる(目的の副詞的用法)」、動名詞なら「〜することをやめる(目的語)」と判定する。”He stopped to smoke.”は「たばこを吸うために立ち止まった」であり、”He stopped smoking.”は「たばこを吸うのをやめた」である。stopの場合は特に注意が必要で、不定詞は実はstopの目的語ではなく副詞的用法(目的)であり、動名詞がstopの真の目的語である。つまり、stopは動名詞のみを目的語にとる動詞であり、不定詞が続く場合は用法自体が異なる。手順3ではtryについて、不定詞なら「〜しようと試みる(未実現の行為への挑戦)」、動名詞なら「試しに〜してみる(実際にやってみる)」と判定する。”I tried to open the window.”は「窓を開けようとした(開いたかどうかは不明)」であり、”I tried opening the window.”は「試しに窓を開けてみた(実際に開けた)」である。tryの場合、不定詞は「努力したが結果は未定」というニュアンスであり、動名詞は「実際に行為を実行した」というニュアンスである。手順4ではregret, go on, meanについても同様の原理を適用する。”I regret to inform you…”は「(これから)お知らせするのは残念ですが」であり、”I regret informing him.”は「(過去に)彼に知らせたことを後悔している」である。”He went on to discuss the next topic.”は「次に(新しい話題を)議論した」であり、”He went on discussing the same topic.”は「同じ話題を議論し続けた」である。go onの場合、不定詞は「新しい行為への移行」、動名詞は「同じ行為の継続」を表す。
例1: Don’t forget to submit your report.
→ 不定詞to submit。これから提出する行為。「レポートを提出することを忘れるな。」
→ 対比: “I forgot submitting the report.”なら「提出した(過去の行為)ことを忘れた。」未来志向性と過去志向性の対比が明確に現れている。
例2: She stopped to take a picture of the sunset.
→ 不定詞to take。目的の副詞的用法。「写真を撮るために立ち止まった。」stoppedの目的語はなく、to takeはstoppedの目的を表す。
→ 対比: “She stopped taking pictures.”なら「写真を撮るのをやめた。」takingはstoppedの目的語(動名詞)。この区別では、不定詞が目的語ではなく副詞的用法であるという点が決定的に重要である。
例3: He tried to lift the heavy box.
→ 不定詞to lift。持ち上げようと試みた(成功したかは不明)。未実現の行為への挑戦。
→ 対比: “He tried lifting the heavy box.”なら「試しに持ち上げてみた(実際に持ち上げた)。」動名詞は実行済みの行為を表す。
例4: I remember to call my mother every Sunday.
→ 不定詞to call。毎週日曜日に(これから)電話することを覚えている(習慣的義務)。
→ 対比: “I remember calling my mother last Sunday.”なら「先週の日曜日に電話した(過去の行為)ことを覚えている。」不定詞は未来の義務、動名詞は過去の記憶という対比が鮮明である。
以上により、不定詞の未来志向性と動名詞の過去志向性という原理を手がかりにすることで、同一動詞における不定詞と動名詞の意味の違いを正確に識別することが可能になる。
2. 不定詞のみを目的語にとる動詞と動名詞のみを目的語にとる動詞
英語の動詞の中には、不定詞のみを目的語にとるもの、動名詞のみを目的語にとるもの、両方をとるものがある。この区別を把握することで、正しい表現形式を選択できるようになる。
動詞の意味的性質と不定詞・動名詞の時間的志向性の対応関係を整理し、論理的に判定する手順を確立する。
2.1. 目的語の形式による動詞の分類
動詞の後に「〜すること」を表す表現を置く場合、不定詞でも動名詞でもどちらでもよいと理解されがちである。しかし、この理解は”I enjoy to play tennis.”が非文法的であり”I enjoy playing tennis.”のみが正しいという事実を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、各動詞が目的語としてとれる形式(不定詞・動名詞・両方)は動詞ごとに決まっており、この選択制限は動詞の意味的性質と連動するものとして理解されるべきである。この理解が重要なのは、未来志向的な意味を持つ動詞は不定詞を、過去・現在の行為に関わる意味を持つ動詞は動名詞を選好する傾向があるためである。この傾向を理解すれば、個々の動詞を丸暗記するのではなく、動詞の意味から目的語の形式を推論できるようになる。
この原理から、動詞と目的語形式の対応を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞のみを目的語にとる動詞を確認する。want, hope, decide, plan, expect, promise, refuse, agree, choose, manage, fail, pretend, offerなどは不定詞のみを目的語にとる。これらの動詞は「これからの行為」に向かう意味を持ち、不定詞の未来志向性と一致する。wantは「これからしたいこと」への欲求、hopeは「これから実現してほしいこと」への期待、decideは「これからすること」への決定を表す。いずれも対象行為が未実現であることが前提である。manageは「なんとか〜する」であり困難な行為の達成を表すが、目的語の行為は「これから達成する」という志向を持つ。failは「〜し損ねる」であり不定詞の行為が実現しなかったことを表すが、対象行為自体は未実現(実現を目指したが果たせなかった)である。手順2では動名詞のみを目的語にとる動詞を確認する。enjoy, finish, avoid, mind, give up, deny, suggest, consider, admit, postpone, practice, imagine, resistなどは動名詞のみを目的語にとる。これらの動詞は「現在進行中の行為」や「既に経験した行為」に関わる意味を持ち、動名詞の特性と一致する。enjoyは「現在行っていること」への快感、finishは「進行中の行為」の完了、avoidは「実際に起こりうる行為」の回避を表す。denyは「過去にした行為」の否認、admitは「過去にした行為」の承認であり、いずれも対象行為が実在する(した)ことが前提である。suggestとconsiderは一見未来志向的にも見えるが、suggestは「ある行為を提案する」(行為そのものを念頭に置く)、considerは「ある行為を検討する」(行為そのものについて考える)という意味であり、行為の概念自体を対象とするため動名詞と結びつく。手順3では両方をとり意味が変わらない動詞を確認する。like, love, hate, begin, start, continue, prefer, intendなどは不定詞・動名詞の両方を目的語にとり、意味の差はほとんどない。”I like to swim.”と”I like swimming.“はほぼ同義である。ただし、likeの場合は厳密には不定詞が「特定の場面でこれからすること」、動名詞が「一般的な行為」というニュアンスの差がある。“I like to swim in the morning.”(朝泳ぐのが好きだ=習慣的にこれから泳ぐ)と”I like swimming.”(泳ぐことが一般的に好きだ)のような差異であるが、入試レベルではこの差は問われないことが多い。手順4では前置詞の後に来る動名詞に注意する。前置詞の後には名詞が来るという英語の基本規則から、前置詞の後の「〜すること」は必ず動名詞になる。”I am interested in learning English.”のlearningは前置詞inの目的語であり、不定詞にはできない。”Thank you for helping me.”のhelpingも前置詞forの目的語である。この規則は動詞の選択制限とは別のルールであるが、不定詞と動名詞の使い分けにおいて頻繁に問われるため確認しておく必要がある。
例1: We decided to cancel the event.
→ decideは不定詞のみを目的語にとる。”decided canceling”は非文法的。
→ 理由: decideは「これからの行為」への決定を表し、未来志向性と一致。cancelする行為は決定時点で未実現。
例2: She avoids eating too much sugar.
→ avoidは動名詞のみを目的語にとる。”avoids to eat”は非文法的。
→ 理由: avoidは「実際に起こりうる行為」の回避を表し、動名詞の特性と一致。回避の対象は具体的な行為そのもの。
例3: They began to understand the problem.
→ beginは不定詞・動名詞の両方をとる。”began understanding”も文法的に正しい。
→ 意味の差: ほぼなし。beginは行為の開始を表し、対象行為の時間的志向性に中立的。
例4: He refused to answer the question.
→ refuseは不定詞のみを目的語にとる。”refused answering”は非文法的。
→ 理由: refuseは「これからの行為」への拒否を表し、未来志向性と一致。回答するという行為は拒否の時点で未実現。
以上により、動詞の意味的性質と不定詞・動名詞の時間的志向性の対応関係を把握することで、各動詞がとる目的語の形式を論理的に判定することが可能になる。
3. 不定詞を含む慣用表現の識別
不定詞は多くの慣用表現に含まれており、これらを定型表現として識別できることが実際の英文読解で求められる。“too…to〜”、“enough to〜”、”in order to〜”などの表現を正確に識別し、文中での機能を把握する力を養成する。
代表的な不定詞慣用表現の形態的パターンを整理し、各表現が副詞的用法のどの意味関係に対応するかを構造的に理解する。
3.1. 代表的な不定詞慣用表現の形態と意味
不定詞の慣用表現は「決まった形を覚えるもの」と理解されがちである。しかし、この理解は各慣用表現がなぜその形をとるのかという構造的な理由を説明できないという点で不正確である。学術的・本質的には、不定詞の慣用表現はいずれも不定詞の副詞的用法の一種であり、結果・程度・目的といった意味関係を明確に標示するための構文として位置づけられるべきものである。この理解が重要なのは、構造の理解に基づけば、未知の慣用表現に出会っても意味を推測できるためである。慣用表現を個別に暗記するのではなく、不定詞の副詞的用法という共通の枠組みの中で体系的に把握することが、実際の英文読解で未知の表現に対応する力につながる。
この原理から、不定詞慣用表現を識別する具体的な手順が導かれる。手順1では”too…to〜”構文を確認する。”too+形容詞/副詞+to不定詞”の形を認識したら、「〜するには…すぎる」(結果として〜できない)と判定する。”The problem is too difficult to solve.”は「その問題は難しすぎて解けない」である。tooは「過度に」という否定的な程度を表し、その結果として不定詞の行為が実現不可能になるという論理構造を持つ。”too…to〜”構文は”so…that+否定文”で書き換えられる。”The problem is so difficult that no one can solve it.”この書き換えが成立することで、too…to〜が否定的な結果を表すことが確認できる。ただし、too…to〜が常に否定的な意味になるとは限らない。”I am only too glad to help you.”は「喜んでお手伝いします」であり、only tooは「非常に」の意味で否定のニュアンスを持たない。手順2では”enough to〜”構文を確認する。”形容詞/副詞+enough+to不定詞”の形を認識したら、「〜するのに十分…である」と判定する。”She is old enough to drive.”は「彼女は運転するのに十分な年齢である」。enoughは「十分な程度に」という肯定的な程度を表し、その結果として不定詞の行為が実現可能になるという論理構造を持つ。too…to〜とenough to〜は程度と結果の関係において対照的であり、前者は「過度→不可能」、後者は「十分→可能」の論理構造である。なお、”名詞+enough+to不定詞”の形もある。“He had enough courage to speak up.”(声を上げるだけの勇気があった)のようにenoughが名詞の後ではなく前に来る場合もある。手順3では”in order to〜”と”so as to〜”を確認する。いずれも目的を明示的に表す表現であり、単純な”to不定詞”の目的用法をより明確にしたものと判定する。”He left early in order to avoid the traffic.”は「渋滞を避けるために早く出発した」である。“in order to”と”so as to”の違いは、前者が文頭にも文中にも置けるのに対し、後者は文中(動詞の後)に置くのが一般的である。否定形は”in order not to〜””so as not to〜”であり、notの位置に注意が必要である。“She spoke slowly so as not to confuse the audience.”(聴衆を混乱させないようにゆっくり話した)のnotはso asとtoの間に入る。手順4では独立不定詞句を確認する。“To tell the truth”(本当のことを言うと)、“To be honest”(正直に言えば)、“To begin with”(まず第一に)、“To make matters worse”(さらに悪いことに)、“So to speak”(いわば)などの表現は、文全体を修飾する独立不定詞句であり、慣用的に使われる。これらは文の主要構成要素に含まれず、話し手のコメントや態度を表す挿入句として機能する。入試の長文読解では、独立不定詞句が筆者の態度や論調の転換を示す手がかりとなることがある。
例1: This coffee is too hot to drink.
→ “too+hot+to drink”の形。「飲むには熱すぎる」(結果として飲めない)。
→ 構造: 副詞的用法(結果)。tooが否定的な程度を表し、不定詞がその結果を表す。”so hot that I cannot drink it”に書き換え可能。
例2: The box is light enough to carry with one hand.
→ “light+enough+to carry”の形。「片手で運ぶのに十分軽い」。
→ 構造: 副詞的用法(程度の結果)。enoughが肯定的な程度を表し、不定詞がその結果を表す。too…to〜の対極に位置する構文。
例3: She spoke slowly so as not to confuse the audience.
→ “so as+not+to confuse”の形。否定の目的。「聴衆を混乱させないように」。
→ 構造: 副詞的用法(目的)。so asが目的を明示する標識。否定形ではnotがtoの前に入る。”in order not to confuse”でも同義。
例4: To tell the truth, I don’t agree with his opinion.
→ “To tell the truth”は文全体を修飾する独立不定詞句。「本当のことを言うと」。
→ 構造: 慣用的な独立不定詞句。文修飾の副詞的用法。主節の内容に対する話し手のコメントを表す。“To be frank”(率直に言えば)、“To make a long story short”(手短に言えば)なども同じ機能を持つ。
以上により、不定詞慣用表現の形態的パターンを認識し、各表現が副詞的用法のどの意味関係に対応するかを把握することで、定型表現の意味を構造的に理解することが可能になる。
談話:不定詞を含む文の文章内での機能
語用層までの学習で不定詞の形態識別・意味関係の分析・表現選択の判断ができるようになった学習者は、最後に不定詞を含む文が段落や文章全体の中でどのような役割を果たすかを把握する段階に進む。目的を示す不定詞が論理展開の中で果たす機能や、主題文と支持文の関係における不定詞の位置づけを扱う。談話層で確立した能力は、入試の長文読解において不定詞を含む文の文章内での機能を素早く判断する際に発揮される。
【関連項目】
[基盤 M53-談話]
└ 主題文と支持文の識別手順を確認する
[基盤 M55-談話]
└ 接続表現と論理関係を理解する
【基礎体系】
[基礎 M11-談話]
└ 不定詞の談話機能を体系的に理解する
1. 目的の不定詞と論理展開
長文の中で目的を表す不定詞は、行為とその理由を結びつける論理的な接続の役割を果たす。筆者が主張の根拠や行動の動機を示す際に不定詞が使われるパターンを把握することで、文章全体の論理構造をより迅速に追跡できるようになる。
目的の不定詞が段落内でどの位置に出現し、論理展開のどの段階で機能しているかを判定する手順を確立する。
1.1. 文章構造における目的の不定詞の機能
目的の不定詞は「〜するために」と訳すだけで処理されがちである。しかし、この理解は目的の不定詞が文章全体の論理展開においてどのような役割を果たしているかを見落とすという点で不正確である。学術的・本質的には、目的の不定詞は「行為→目的」という因果関係を明示する論理標識として機能しており、段落の論理展開を追跡する上で重要な手がかりとなるべきものである。この機能が重要なのは、入試の長文読解で筆者の主張や論証の構造を把握する際に、目的の不定詞が「なぜその行為が行われるのか」を示す接続点になるためである。論説文では、筆者が主張を展開する際に「Aは重要である、なぜならBを達成するためである」という目的による根拠づけを多用する。この論証パターンにおいて、目的の不定詞はAとBを結びつける論理的な紐帯として機能する。段落の要旨を素早く把握するには、目的の不定詞が出現した時点で「行為と目的の因果関係」を認識し、段落の論理展開を先読みする力が求められる。
この原理から、文章構造における目的の不定詞の機能を把握する具体的な手順が導かれる。手順1では不定詞を含む文が段落内でどの位置にあるかを確認する。主題文(段落の冒頭文)に目的の不定詞が含まれていれば、その段落全体が「〜するためにどうするか」という構造で展開される可能性が高い。”Many countries have adopted renewable energy policies to combat climate change.”のように主題文に目的の不定詞が含まれている場合、後続の支持文は「気候変動と戦うための具体的施策」を列挙する構造となる。手順2では不定詞が示す目的が、前後の文とどのような論理関係にあるかを確認する。前の文で問題提起がなされ、不定詞を含む文がその解決策を「〜するために」の形で提示するパターンは頻出である。このパターンを認識すれば、目的の不定詞が出現した時点で「問題→解決策」の論理展開が進行していることを判断できる。手順3では不定詞が示す目的が、筆者の主張を支持する根拠となっているかを確認する。「A is important to achieve B」のように、主張Aの重要性を目的Bによって根拠づけるパターンは論説文で多用される。この場合、目的の不定詞は主張の妥当性を示す論拠として機能している。手順4では文頭に置かれた目的の不定詞の段落構造化機能を確認する。”To address this issue, the government has introduced several new policies.”のように文頭に目的の不定詞が置かれている場合、この不定詞は段落全体の方向性を設定する「枠組み設定」の機能を持つ。文頭の目的不定詞は後続する文に対して「以下は〜するための内容である」という読みの枠組みを提供し、段落の構造を予告する効果がある。
例1: Many countries have introduced environmental regulations to reduce carbon emissions.
→ 主題文で「環境規制を導入した」(行為)と「排出量を削減するため」(目的)の因果関係を明示。
→ 機能: 段落全体が「排出量削減のための施策」を展開する構造を予告。後続文は具体的な規制内容を列挙する支持文となる可能性が高い。
例2: Education plays a crucial role in preparing young people to participate in democratic society.
→ 「若者が民主社会に参加できるようにするため」という目的が教育の役割を根拠づけている。
→ 機能: 主張(教育の重要性)を目的(社会参加)によって支持する論証構造。目的の不定詞が主張と根拠を結びつける論理的な接続点。
例3: The researchers conducted a series of experiments to test the hypothesis.
→ 「仮説を検証するため」が実験実施の理由を明示。
→ 機能: 研究プロセスの論理的順序(仮説→実験→検証)を示す接続点。学術論文の典型的な論理展開パターン。
例4: To address the growing inequality, the government needs to reform the tax system.
→ 文頭の目的不定詞が段落の主題(格差対策)を提示し、主節が具体的施策を示す。
→ 機能: 「問題→解決策」の論理展開を目的の不定詞が構造化。文頭の配置により、段落全体の方向性が冒頭で設定される。
以上により、目的の不定詞が「行為と理由を結びつける論理標識」として機能していることを認識することで、長文の論理展開をより迅速かつ正確に追跡することが可能になる。
2. 不定詞を含む文の情報構造
文の中で不定詞がどの位置に置かれるかによって、情報の提示順序が変わる。形式主語構文”It is…to〜”では不定詞の内容が文末に移動し、新情報として強調される。このような情報構造上の機能を把握することで、筆者が何を強調しようとしているかを読み取る力が身につく。
形式主語構文における「旧情報→新情報」の情報配列原理を理解し、筆者の強調意図を読み取る手順を確立する。
2.1. 形式主語構文と情報の焦点
形式主語構文とは、文の真の主語である不定詞句を文末に移動させ、代わりにItを文頭に置く構文である。”It is important to study hard.”がその典型であるが、”To study hard is important.”とも言い換えられるにもかかわらずなぜ形式主語構文が好まれるのかを説明できなければ、この構文の理解は表面的に留まる。学術的・本質的には、形式主語構文は「旧情報(既知の評価)→新情報(具体的内容)」の順序で情報を提示する構文であり、不定詞の内容を文末に置くことで新情報として焦点化する機能を持つものとして理解されるべきである。この機能が重要なのは、英語の文は「旧情報→新情報」の順に配列する傾向があり(文末焦点の原則)、形式主語構文はこの原則に従って不定詞の内容を強調するためである。”To study hard is important.”は文法的に正しいが、文頭に長い不定詞句を置くことで頭でっかちになり、英語の情報配列の原則から外れる。形式主語構文はこの問題を解消し、評価(important)を先に提示してから具体的内容(to study hard)を文末で焦点化する。入試の長文読解では、形式主語構文の文末に置かれた不定詞の内容こそが、筆者が最も伝えたい情報であることが多い。
この原理から、形式主語構文の情報構造を把握する具体的な手順が導かれる。手順1ではItが形式主語であるかどうかを確認する。”It is+形容詞+to不定詞”の形であれば、Itは形式主語であり、to不定詞が真の主語と判定できる。Itが形式主語であるかどうかの判断は、Itを不定詞に置き換えて文が成立するかどうかで確認できる。“It is essential to maintain a balanced diet.”→”To maintain a balanced diet is essential.”が成立するため、Itは形式主語である。一方、”It is raining.”のItは天候を表す非人称主語であり、不定詞に置き換えられない。手順2では文末の不定詞が「新情報」として何を伝えているかを確認する。”It is essential to maintain a balanced diet.“では、essential(評価・旧情報)に対して”to maintain a balanced diet”(具体的内容・新情報)が焦点化されている。筆者が伝えたい中心的な情報は、「本質的である」という評価ではなく、「バランスの取れた食事を維持すること」という具体的内容のほうである。手順3では形式主語構文が段落内でどの位置にあるかを確認する。段落の主題文として使われている場合、筆者が最も伝えたい具体的内容が不定詞部分に含まれている。主題文の形式主語構文は「〜することが[評価]だ」という形で段落の方向性を設定し、後続の支持文がその具体的内容を展開する。手順4では形式主語構文のバリエーションを確認する。“It takes+[時間/努力]+to不定詞”(〜するには[時間/努力]がかかる)、“It is+形容詞+of+人+to不定詞”(〜するとは[人]は[形容詞]だ)、“It seems/appears+to不定詞”(〜するように見える)など、形式主語構文には複数のパターンがある。いずれのパターンでも、文末の不定詞が焦点化される情報であるという原理は共通している。
例1: It is necessary to consider the long-term effects of this policy.
→ 形式主語It。necessary(評価)は旧情報的。”to consider the long-term effects”が新情報として焦点化。
→ 機能: 筆者が「長期的影響の考慮」を強調している。段落の主題文であれば、後続文は「長期的影響」の具体的内容を展開する。
例2: It takes courage to speak up against injustice.
→ 形式主語It。takes courage(評価)は旧情報的。”to speak up against injustice”が新情報として焦点化。
→ 機能: 筆者が「不正義に声を上げること」の具体的行為を強調している。”It takes+名詞+to不定詞”は「〜するには[名詞]が必要だ」の意味。
例3: It would be a mistake to ignore these warning signs.
→ 形式主語It。a mistake(評価)は旧情報的。”to ignore these warning signs”が新情報として焦点化。
→ 機能: 筆者が「警告サインの無視」という具体的行為に対する否定的評価を強調している。would beの使用により、仮定的なニュアンスが加わり「もし無視すれば間違いになるだろう」という警告の含意がある。
例4: It remains difficult to predict how climate change will affect individual regions.
→ 形式主語It。difficult(評価)は旧情報的。”to predict how…”が新情報として焦点化。
→ 機能: 「個別地域への影響予測」という具体的課題を強調している。remainsは状態の持続を表し、「依然として困難である」という現状認識を示す。
以上により、形式主語構文における情報の配列構造を把握することで、筆者が文末の不定詞部分で何を強調し、読者に何を伝えようとしているかを正確に読み取ることが可能になる。
3. 段落における不定詞の役割の総合的把握
ここまで学んだ目的の不定詞の論理的機能と形式主語構文の情報構造的機能を統合し、段落全体の中で不定詞がどのように機能しているかを総合的に判断する力を養成する。入試の長文読解では、複数の不定詞が一つの段落内に共存する場面が頻繁に現れる。
段落内の複数の不定詞を抽出し、各不定詞の用法・段落内での位置・相互の論理的関係を総合的に分析する手順を確立する。
3.1. 段落内での不定詞の複合的機能
不定詞の機能は「一文の中での用法」として個別に分析されがちである。しかし、この理解は段落全体を通じて複数の不定詞がどのように連携して論理展開を構成しているかを見落とすという点で不正確である。学術的・本質的には、段落内の複数の不定詞はそれぞれ異なる用法・意味関係を担いながら、段落全体の論理構造を協働して形成するものとして把握されるべきである。この把握が重要なのは、長文読解で段落の要旨を素早く掴むためには、個々の不定詞の機能を段落全体の文脈の中で位置づける必要があるためである。段落内の不定詞は、論理展開の各段階(主題提示・根拠提供・具体例・解決策・結論)に分布しており、その分布パターンを認識することで段落の構造を俯瞰的に把握できる。
この原理から、段落内の不定詞の機能を総合的に把握する具体的な手順が導かれる。手順1では段落内の全ての不定詞を抽出し、各不定詞の用法(名詞的・形容詞的・副詞的)を判定する。この段階では統語層で確立した判定手順を適用し、機械的に用法を確定させる。手順2では各不定詞が段落の論理展開(主題提示・根拠提供・具体例・結論)のどの部分で使われているかを確認する。主題文に含まれる不定詞は段落の方向性を示し、支持文に含まれる不定詞は根拠や具体例を提供する傾向がある。段落の冒頭に形式主語構文があれば、不定詞が段落の主題を焦点化している。段落の中盤に目的の不定詞があれば、行為と理由を接続する論理標識として機能している。手順3では複数の不定詞の間に論理的なつながりがあるかを確認する。「〜するためにAした。その結果Bするようになった。」のように、目的と結果の不定詞が連携して因果関係を構成するパターンは頻出である。また、「〜する能力を身につけるためにAが必要である。Aを実行するにはBが不可欠である。」のように、目的の不定詞が連鎖して段階的な目的構造を形成するパターンもある。手順4では段落全体の論理展開を「主題→根拠→方法→効果」や「問題→原因→解決策→結果」などの枠組みで整理し、各不定詞がどの段階に位置しているかを確認する。この段階分類ができれば、段落の要旨を不定詞の分布パターンから素早く推測できるようになる。
例1: 以下の段落を分析する。
“It is important to protect biodiversity. Many species have evolved over millions of years to adapt to specific environments. To preserve these ecosystems, governments must take action to enforce environmental laws.”
→ 第1文: “to protect biodiversity”(形式主語構文、名詞的用法、段落の主題提示)。筆者が「生物多様性の保護」を段落の主題として焦点化している。
→ 第2文: “to adapt to specific environments”(副詞的用法・目的、進化の理由を説明)。支持文として主題の根拠を提供。多くの種が適応するために進化してきたという事実が、保護の必要性を裏付けている。
→ 第3文: “To preserve these ecosystems”(副詞的用法・目的、行動の理由を提示)、“to enforce environmental laws”(副詞的用法・目的、具体的行動の目的を示す)。解決策の提示として機能。目的の不定詞が二重に連鎖し、「生態系保全のために→政府が行動する→環境法を施行するために」という段階的な目的構造を形成。
→ 段落構造: 主題(保護の重要性)→根拠(進化の歴史)→解決策(法の施行)。不定詞が各部分の論理的接続を担っている。
例2: “The company hired a consultant to improve its marketing strategy. The goal was to reach a younger audience. To achieve this, they decided to invest in social media advertising.”
→ “to improve”(副詞的用法・目的、雇用の理由)、“to reach”(名詞的用法・補語、目標の内容)、“To achieve this”(副詞的用法・目的、次の行動の理由)、“to invest”(名詞的用法・目的語、決定の内容)。
→ 段落構造: 行動→目標→手段の論理展開。不定詞が段階的な目的連鎖を構成。「改善するために雇った→若い層に届けるのが目標→これを達成するために投資を決定」という因果の連鎖を不定詞が標示している。
例3: “Students need opportunities to practice speaking English. It is not enough to memorize grammar rules. To become fluent, learners must be willing to make mistakes.”
→ “to practice”(形容詞的用法、opportunitiesを修飾)、“to memorize”(名詞的用法・真の主語)、“To become fluent”(副詞的用法・目的)、“to make mistakes”(名詞的用法・目的語)。
→ 段落構造: 必要性の提示→不十分な方法の否定→正しい方法の提示。異なる用法の不定詞が論理展開の各段階を標示。形容詞的用法(必要性の具体化)→形式主語構文(否定的評価の焦点化)→副詞的用法(解決の方向性)→名詞的用法(具体的行動)という用法の変化が論理展開の転換を反映している。
例4: “New technologies have the potential to transform education. Online platforms enable students to access learning materials from anywhere. However, it remains a challenge to ensure equal access to these resources.”
→ “to transform”(形容詞的用法、potentialを修飾)、“to access”(名詞的用法・目的語)、“to ensure”(名詞的用法・真の主語)。
→ 段落構造: 可能性の提示→具体例→課題の指摘。不定詞が段落の論理的転換点を標示。形容詞的用法が可能性の具体的内容を限定し、名詞的用法が具体例を提示し、形式主語構文が課題を焦点化している。Howeverという逆接の接続詞と形式主語構文の組み合わせにより、「可能性はあるが課題もある」という段落の論理的転換が明確に示される。
以上により、段落内の複数の不定詞を抽出し、各不定詞の用法と段落内での位置を確認することで、不定詞が段落全体の論理展開をどのように構成しているかを総合的に把握することが可能になる。
このモジュールのまとめ
このモジュールでは、”to+動詞の原形”という不定詞の基本形態を正確に認識するところから出発し、統語層における三用法の判定、意味層における意味関係の分析、語用層における表現選択の識別、談話層における文章内での機能把握という四つの層を体系的に学習した。これらの層は相互に関連しており、統語層の用法判定が意味層の分析を可能にし、意味層の理解が語用層の表現選択を支え、語用層の知識が談話層の文章分析を実現するという階層的な関係にある。
統語層では、前置詞toと不定詞標識toの区別、原形不定詞の識別、名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法の統語的判定基準を確立した。toの直後に動詞の原形が来ていれば不定詞標識、名詞が来ていれば前置詞という形態的基準、そして不定詞が文中のどの位置(主語・目的語・補語・名詞修飾・動詞修飾)を占めるかによって用法を判定する手順を習得した。原形不定詞については、使役動詞(make, let, have)・知覚動詞(see, hear, feel, watch)・helpの後に現れるパターンを把握し、受動態への変換時に原形不定詞がto不定詞に変わる規則も確認した。副詞的用法の判定では、名詞的用法と形容詞的用法を消去法で除外するという手順が最も確実であることを学んだ。
意味層では、形容詞的用法における被修飾名詞と不定詞の意味関係(目的語関係・主語関係・同格関係・前置詞を介した関係)の識別、副詞的用法における意味関係(目的・原因・結果・判断の根拠)の判定、名詞的用法の未来志向性、不定詞の意味上の主語の特定手順を確立した。主節の動詞や形容詞の性質から副詞的用法の意味関係を判定する方法、”for+名詞”や目的語の有無から意味上の主語を特定する方法は、入試の文構造分析で直接活用される。不定詞の未来志向性という意味的特徴が、動名詞との使い分けの原理として語用層に接続する点も確認した。
語用層では、remember, forget, stop, try, regret, go onなどの動詞における不定詞と動名詞の意味差、不定詞のみを目的語にとる動詞(want, hope, decide等)と動名詞のみを目的語にとる動詞(enjoy, finish, avoid等)の区別、“too…to〜”“enough to〜””in order to〜”などの慣用表現の構造的理解を確立した。不定詞の未来志向性と動名詞の過去志向性という原理に基づいて表現選択の根拠を把握する力を習得し、個別の動詞を丸暗記するのではなく動詞の意味的性質から論理的に判定する方法を身につけた。
談話層では、目的の不定詞が段落の論理展開で「行為と理由を結びつける論理標識」として機能する点、形式主語構文が「旧情報→新情報」の情報配列によって不定詞の内容を焦点化する点、段落内の複数の不定詞が協働して論理構造を形成する点を確立した。段落の主題文・支持文における不定詞の位置と機能を把握する手順は、長文読解での段落要旨の迅速な把握に直結する。複数の不定詞が段落の論理展開の各段階(主題提示・根拠提供・解決策・結論)に分布するパターンを認識する力を習得した。
これらの能力を統合することで、共通テスト本試からMARCH下位レベルの英文に含まれる不定詞を正確に識別し、文構造の把握から文章全体の論理展開の追跡まで、一貫した分析を行うことが可能になる。このモジュールで確立した原理と技術は、後続のモジュールで学ぶ動名詞・分詞の識別の前提となり、準動詞全体の体系的理解を発展させることができる。
演習編
不定詞は英文のあらゆる場面に現れる準動詞であり、その形態識別と用法判定は文構造の正確な把握に直結する。三用法の判定を誤れば、文の主要構成要素の特定が崩れ、意味の取り違えに至る。副詞的用法の意味関係(目的・原因・結果・判断の根拠)の区別は、文脈依存型問題や正誤判定問題で頻繁に問われる。不定詞と動名詞の意味差を利用した選択問題も、文法問題の定番として出題が続いている。本演習は3つの大問で構成され、第1問では三用法の識別と統語的判定を、第2問では意味関係の分析と表現選択を、第3問では長文の中での不定詞の機能把握を扱う。
【出題分析】
出題形式と難易度
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 難易度 | ★★★☆☆ 標準 |
| 分量 | 中程度(大問3問・試験時間30分) |
| 語彙レベル | 教科書〜標準的な入試レベル |
| 構文複雑度 | 単文〜複文(修飾要素を含む標準的構造) |
頻出パターン
共通テスト / MARCH・関関同立では、長文の中で不定詞を含む文の意味を文脈から正確に把握する力が問われる。副詞的用法の目的と原因の区別、形式主語構文における真の主語の特定、不定詞と動名詞の意味差を問う四択問題、不定詞の三用法の識別を求める正誤判定問題が定番である。地方国立大学では、不定詞を含む文の和訳問題として、意味上の主語の正確な把握と副詞的用法の意味関係の判定が問われる。
差がつくポイント
三用法の判定において、日本語訳に頼らず統語的位置から判定できるかどうかが差を生む。特に、形容詞的用法と副詞的用法の区別で、「名詞の直後に位置し名詞を修飾しているか」という基準を確実に適用できることが重要である。不定詞と動名詞の選択において、未来志向性と過去志向性の原理を理解した上で判断できるかどうかが差を生む。特に、stopやrememberのように選択によって意味が根本的に変わる動詞の処理が重要である。段落内での不定詞の機能把握において、目的の不定詞が論理展開の接続点として機能していることを認識し、段落の要旨把握に活用できるかどうかが差を生む。
演習問題
試験時間: 30分 / 満点: 100点
第1問(40点)
次の各文の下線部の不定詞について、(ア)名詞的用法、(イ)形容詞的用法、(ウ)副詞的用法のいずれかを選び、記号で答えよ。また、名詞的用法の場合は文中での機能(主語・目的語・補語)を、副詞的用法の場合は意味関係(目的・原因・結果・判断の根拠)を答えよ。
(1)My plan is 【to finish the report by Friday】.
(2)She went to the airport 【to pick up her friend】.
(3)He needs a quiet place 【to concentrate on his studies】.
(4)【To master a foreign language】 requires years of practice.
(5)I was relieved 【to hear that everyone was safe】.
(6)He awoke 【to find the house empty】.
(7)She has no time 【to waste on unnecessary tasks】.
(8)We were shocked 【to learn about the sudden cancellation】.
第2問(40点)
次の各文の空所に入る最も適切なものを、選択肢から一つ選べ。
(1)She remembered ( ) the door before leaving the house.
ア. to lock イ. locking ウ. lock エ. locked
(2)The children stopped ( ) at the beautiful rainbow.
ア. to look イ. looking ウ. look エ. looked
(3)It is essential for students ( ) their homework every day.
ア. do イ. doing ウ. to do エ. done
(4)The teacher made the students ( ) the exercise again.
ア. to repeat イ. repeating ウ. repeat エ. repeated
(5)This problem is too complex ( ) in a few minutes.
ア. solving イ. to solve ウ. solve エ. to solving
(6)I saw a man ( ) across the street without looking.
ア. to run イ. running ウ. run エ. イまたはウ
(7)He decided ( ) the job offer from the company.
ア. accepting イ. to accept ウ. accept エ. accepted
(8)She tried ( ) the window, but it was stuck.
ア. opening イ. to open ウ. open エ. opened
第3問(20点)
次の英文を読み、設問に答えよ。
In recent years, many schools have introduced new programs 【a】to help students develop critical thinking skills. It is no longer enough 【b】to memorize facts and figures. Students need opportunities 【c】to apply their knowledge to real-world problems. 【d】To achieve this goal, teachers have begun to use project-based learning in their classrooms. Research suggests that students who engage in hands-on projects are more likely to retain information and 【e】to develop a deeper understanding of the subject matter.
(1)下線部【a】〜【e】の不定詞について、それぞれの用法(名詞的・形容詞的・副詞的)を答えよ。(8点)
(2)下線部【b】の不定詞が形式主語構文の中で果たしている情報構造上の機能を、30字以内で説明せよ。(4点)
(3)下線部【d】の不定詞が段落の論理展開において果たしている役割を、40字以内で説明せよ。(4点)
(4)この段落全体の論理展開を「主題→根拠→方法→効果」の枠組みで整理し、各不定詞がどの段階に位置しているかを50字以内で説明せよ。(4点)
解答・解説
難易度構成
| 難易度 | 配点 | 大問 |
|---|---|---|
| 基礎 | 40点 | 第1問 |
| 標準 | 40点 | 第2問 |
| 発展 | 20点 | 第3問 |
結果の活用
| 得点 | 判定 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 80点以上 | A | 基礎体系へ進む |
| 60-79 | B | 誤答箇所の該当セクションを復習後、再挑戦 |
| 40-59 | C | 統語層・意味層を重点的に復習後、再挑戦 |
| 40点未満 | D | 該当講義を復習後に再挑戦 |
第1問 解答・解説
【戦略的情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 不定詞の三用法を統語的位置から正確に判定し、副詞的用法の意味関係を区別する能力 |
| 難易度 | 基礎 |
| 目標解答時間 | 10分 |
【思考プロセス】
レベル1:初動判断 → 各文の下線部不定詞の統語的位置を確認する。主語・目的語・補語の位置にあれば名詞的用法、名詞の直後で名詞を修飾していれば形容詞的用法、いずれでもなければ副詞的用法と判定する。
レベル2:検証観点 → 名詞的用法の場合は文中での機能(主語・目的語・補語)を特定。副詞的用法の場合は主節の動詞・形容詞の性質から意味関係(目的・原因・結果・判断の根拠)を判定。
【解答】
| 小問 | 解答 |
|---|---|
| (1) | (ア)名詞的用法・補語 |
| (2) | (ウ)副詞的用法・目的 |
| (3) | (イ)形容詞的用法 |
| (4) | (ア)名詞的用法・主語 |
| (5) | (ウ)副詞的用法・原因 |
| (6) | (ウ)副詞的用法・結果 |
| (7) | (イ)形容詞的用法 |
| (8) | (ウ)副詞的用法・原因 |
【解答のポイント】
正解の論拠:
(1)”My plan is to finish…”のto finishはbe動詞isの後に位置し、主語planの内容を説明しているため補語。planは抽象名詞であり、補語位置の不定詞がその具体的内容を示す典型的なパターンである。(2)”went to the airport to pick up…”のto pick upは動詞wentの目的を表す。airportの直後にあるがairportを修飾しているのではなくwentの理由を示しているため副詞的用法・目的。”in order to pick up”に書き換え可能であることで目的の判定が確認できる。(3)”a quiet place to concentrate…”のto concentrateは名詞placeの直後に位置しplaceを修飾しているため形容詞的用法。placeとto concentrateの間に「そこで集中する場所」という意味的関係がある。(4)”To master a foreign language requires…”のTo masterは述語動詞requiresの前に位置し、カンマなしで直接主語として機能。形式主語構文に書き換えると”It requires years of practice to master a foreign language.”となる。(5)”was relieved to hear…”のto hearは感情形容詞relievedの後に位置し感情の原因を表すため副詞的用法・原因。hearが先に起こり、その結果relievedになったという時間関係がある。”in order to hear”には書き換えられず、目的ではないことが確認できる。(6)”awoke to find…”のto findは主節awoke(先行する出来事)の後に帰結を表すため副詞的用法・結果。目覚めた後に家が空であることに気づいたという時間的前後関係が明確である。findは意図された行為ではなく、目覚めた結果として生じた認識であるため、目的ではなく結果と判定される。(7)”no time to waste…”のto wasteは名詞timeの直後に位置しtimeを修飾しているため形容詞的用法。timeはwaste timeのように不定詞の目的語に当たる目的語関係にある。不定詞を除いても”She has no time.”として文が成立することで修飾要素と確認できる。(8)”were shocked to learn…”のto learnは感情形容詞shockedの後に位置し感情の原因を表すため副詞的用法・原因。突然の中止について知ったことが先に起こり、その結果shockedになった。(5)と同じ判定パターンであり、感情形容詞+不定詞は原因を表すという規則が適用される。
誤答の論拠:
(2)で”to the airport”のtoと混同して前置詞句と誤認するパターンがある。to pick upのtoの直後はpick(動詞の原形)であり、前置詞ではなく不定詞標識である。(3)で「勉強に集中するために」と訳して副詞的用法と誤認するパターンがある。to concentrateはplaceの直後に位置してplaceを修飾しており、形容詞的用法と判定すべきである。消去法を適用すれば、to concentrateは主語・目的語・補語の位置にない(名詞的用法ではない)が、placeの直後でplaceを修飾している(形容詞的用法である)と判定でき、副詞的用法には至らない。(6)で目的と誤認するパターンがある。”in order to find”に書き換えると「見つけるために目覚めた」という不自然な意味になり、目的ではないことが確認できる。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件: 不定詞の用法判定全般に適用可能。統語的位置(主語・目的語・補語→名詞的、名詞直後で名詞修飾→形容詞的、いずれでもない→副詞的)の確認手順は、あらゆる不定詞の用法判定問題に再現できる。副詞的用法の意味関係の判定は、主節の述語の性質(意志的行動→目的、感情形容詞→原因、時間的前後関係→結果、推量表現→判断の根拠)から機械的に実行できる。
【参照】 [基盤 M20-統語] └ 三用法の統語的判定基準
第2問 解答・解説
【戦略的情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 不定詞と動名詞の意味差、原形不定詞の構文知識、慣用表現の理解を総合的に確認する能力 |
| 難易度 | 標準 |
| 目標解答時間 | 12分 |
【思考プロセス】
レベル1:初動判断 → 各問の動詞の性質を確認し、不定詞のみをとるか、動名詞のみをとるか、両方をとるかを判定する。使役動詞・知覚動詞の場合は原形不定詞の可能性を確認する。
レベル2:検証観点 → 不定詞と動名詞の両方をとる動詞(remember, stop, try等)の場合は文脈から意味差を確認。慣用構文(too…to、for+名詞+to不定詞等)の場合は構文全体の形を確認。
【解答】
| 小問 | 解答 |
|---|---|
| (1) | イ. locking |
| (2) | ア. to look |
| (3) | ウ. to do |
| (4) | ウ. repeat |
| (5) | イ. to solve |
| (6) | エ. イまたはウ |
| (7) | イ. to accept |
| (8) | イ. to open |
【解答のポイント】
正解の論拠:
(1)”remembered locking”は「(過去に)鍵をかけたことを覚えていた」。“before leaving”(出発前に)という文脈から、鍵をかけた行為は過去に完了しており、過去の行為の記憶を表す動名詞が適切。”remembered to lock”なら「(これから)鍵をかけることを覚えていた」となり文脈と合わない。(2)”stopped to look”は「立ち止まって見た」(目的の副詞的用法)。虹を見るために立ち止まったという意味。”stopped looking”なら「見るのをやめた」となり文脈と合わない。美しい虹を前にして「見るのをやめた」は不自然である。(3)”for students to do”は形式主語構文(It is essential for students to do…)。forは不定詞の意味上の主語を導く。essentialは状況を評価する形容詞であるためofではなくforが使われる。(4)madeは使役動詞であり、「目的語+原形不定詞」の形をとる。to repeatは不可。受動態にすると”The students were made to repeat…”となり、原形不定詞がto不定詞に変わる。(5)”too complex to solve”は”too…to〜”構文。toの後には動詞の原形が来る。「数分で解くには複雑すぎる」の意味。”so complex that it cannot be solved in a few minutes”に書き換え可能。(6)知覚動詞sawの後は「目的語+原形不定詞」(動作の全体を知覚)と「目的語+現在分詞」(動作の進行中を知覚)の両方が可能。runは動作全体を見た場合、runningは走っている途中を見た場合である。(7)decideは不定詞のみを目的語にとる動詞。未実現の行為への決定を表し、不定詞の未来志向性と一致する。”decided accepting”は非文法的である。(8)“tried to open”は「窓を開けようとした(が開かなかった)」。文末の”but it was stuck”(しかし動かなかった)から、開ける行為は成功していないことが分かる。tryの後の不定詞は「〜しようと試みた(成功したかは不明)」であり、動名詞なら「試しに〜してみた(実際にやった)」である。窓が動かなかったという結果から、開ける行為は未実現であり、不定詞が適切と判定できる。
誤答の論拠:
(1)で”to lock”を選ぶ誤りは、rememberの後は全て不定詞と機械的に処理した場合に生じる。文脈(before leaving=既に出発済み)を確認すれば、鍵をかけたのは過去の行為であり動名詞が適切と判断できる。(4)で”to repeat”を選ぶ誤りは、使役動詞madeの後に原形不定詞が来るという規則を見落とした場合に生じる。(8)で”opening”を選ぶ誤りは、tryの後の不定詞と動名詞の意味差を把握していない場合に生じる。”tried opening”なら「試しに開けてみた(実際に開けた)」となり、”but it was stuck”と矛盾する。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件: 不定詞・動名詞の選択問題全般に適用可能。動詞の意味的性質(未来志向→不定詞、過去志向→動名詞)の確認と、使役動詞・知覚動詞の構文知識の組み合わせで、選択問題の大部分に対応できる。remember, stop, tryのように意味が変わる動詞については、文脈中の時間表現や結果表現から判断する手順が再現可能である。
【参照】 [基盤 M20-語用] └ 不定詞と動名詞の選択原理
第3問 解答・解説
【戦略的情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題意図 | 長文の中で不定詞が担う統語的・情報構造的・論理展開的機能を総合的に分析する能力 |
| 難易度 | 発展 |
| 目標解答時間 | 8分 |
【思考プロセス】
状況設定:不定詞が複数含まれる段落を読み、各不定詞の用法判定、情報構造上の機能、論理展開における役割を総合的に分析する。
レベル1:初動判断 → まず段落全体を通読し、主題を把握する。次に下線部【a】〜【e】の各不定詞の統語的位置を確認し、用法を判定する。
レベル2:情報の取捨選択 → (2)は形式主語構文の情報配列原理(旧情報→新情報)を適用。(3)は目的の不定詞が論理展開の接続点として機能していることを確認。(4)は段落全体の論理展開を俯瞰し、各不定詞の位置づけを整理。
レベル3:解答構築 → 字数制限内で的確に記述するため、核心的な概念(焦点化、論理的接続、段階的展開)を用いて解答を構成する。
【解答】
| 小問 | 解答 |
|---|---|
| (1) | 【a】副詞的用法(目的)、【b】名詞的用法(真の主語)、【c】形容詞的用法、【d】副詞的用法(目的)、【e】名詞的用法(目的語) |
| (2) | 文末に置かれ、新情報として焦点化されている。(20字) |
| (3) | 前文の課題を受け、解決策の目的を明示する接続点。(23字) |
| (4) | 主題【a】→根拠【b】【c】→方法【d】→効果【e】と各段階で不定詞が論理展開を構成。(40字) |
【解答のポイント】
正解の論拠:
(1)【a】”to help”はprogramsの直後にあるが、”introduced new programs”の目的(生徒の批判的思考力を育てるために)を表す副詞的用法。”in order to help”に書き換えても文意が自然に成立する。【b】”to memorize”は形式主語Itの真の主語。”It is no longer enough to memorize…”においてenoughは評価(旧情報)、to memorize以下が新情報として焦点化されている。”To memorize facts and figures is no longer enough.”と書き換え可能。【c】”to apply”はopportunitiesの直後でopportunitiesを修飾する形容詞的用法。opportunitiesは「知識を適用する機会」であり、不定詞がopportunitiesの具体的内容を限定する同格的な関係にある。【d】”To achieve this goal”は文頭で目的を表す副詞的用法。直前の文で述べられた課題を受けて、具体的な解決策(プロジェクト型学習)を導入する接続点として機能。【e】”to develop”はare more likely toの一部で、likelyの後に来る不定詞として名詞的用法(目的語相当)。retainとto developが並列され、研究が示唆する効果を列挙している。
(2)形式主語構文”It is no longer enough to memorize…”において、enough(評価)が旧情報的な位置に置かれ、to memorize以下が文末で新情報として焦点化されている。筆者が「事実と数字の暗記」という具体的内容を強調し、それだけでは不十分であるという否定的評価を際立たせる効果を持つ。
(3)”To achieve this goal”は、直前の文で述べられた課題(知識を実世界の問題に適用する機会が必要)を受けて、その解決のための具体的方法(プロジェクト型学習)を導入する論理的接続点として機能している。文頭に置かれた目的の不定詞が段落の方向性を「解決策の提示」へと転換させている。
(4)段落は「批判的思考力の育成」を主題とし、【a】が主題提示(新プログラムの導入目的)、【b】【c】が現状の課題と必要性(暗記だけでは不十分・実践の機会が必要)、【d】が解決方法の導入(目標達成のためにプロジェクト型学習を使用)、【e】が効果の提示(情報の定着と深い理解)という論理展開を構成している。
誤答の論拠:
(1)で【a】を形容詞的用法と判定する誤りが多い。”programs to help”はprogramsの直後に位置するが、「生徒の批判的思考力を育てるために導入されたプログラム」という文脈から、programsの内容を限定しているのではなく、導入行為の目的を表していると解釈するのが適切である。形容詞的用法と副詞的用法の境界が曖昧な典型例であり、”in order to help”への書き換え可能性を確認することで目的の副詞的用法を確定できる。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件: 複数の不定詞を含む段落の分析問題全般に適用可能。各不定詞の統語的位置を確認した上で、段落の論理展開(主題→根拠→方法→効果)のどの段階に位置するかを整理する手順は、長文読解問題の段落分析に再現できる。形式主語構文の情報構造分析と、文頭の目的不定詞の段落構造化機能の認識は、不定詞以外の構文分析にも応用が可能である。
【参照】 [基盤 M20-談話] └ 段落における不定詞の複合的機能
【関連項目】
[基盤 M21-統語]
└ 動名詞の形態識別と不定詞との区別を確認する
[基盤 M22-統語]
└ 分詞の形態識別を確認する
[基盤 M13-統語]
└ 五文型における不定詞の位置づけを確認する