仮定法:統語・意味の諸相(講義編)

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私たちが言語を使うとき、常に現実の事実だけを述べているわけではありません。「もし宝くじが当たったら…」「あの時ああしていれば…」「こうなってほしいなあ」「〜すべきだと提案します」のように、現実とは異なる状況を想像したり、願望を述べたり、あるいは特定の要求や提案を示したりすることも頻繁にあります。英語において、このような事実ではないこと(反事実)可能性が低いこと願望要求・提案などを表現するために用いられる特別な動詞の形や文の様式が「仮定法 (Subjunctive Mood)」です。仮定法は、現実世界(直説法で述べられる)とは異なる「もしも」の世界を描き出すための重要な文法ツールであり、話し手の心の中や状況に対する判断を反映します。この講義では、仮定法の基本的な概念から、主要な形式(仮定法過去、過去完了、現在、未来)、そして if を使わない様々な仮定法表現まで、その構造(統語)と意味を体系的に解説します。仮定法をマスターすることは、英語のニュアンスを深く理解し、表現の幅を広げる上で不可欠です。

目次

1. 仮定法 (Subjunctive Mood) とは何か? – 「もしも」の世界を表す法

1.1. 法 (Mood) の概念:直説法と仮定法

  • 法 (Mood) とは: 話し手が述べようとする内容に対して、どのような心的態度(事実として述べるのか、仮定として述べるのか、命令として述べるのかなど)をとっているかを示す文法カテゴリーです。英語には主に3つの法があります。
    1. 直説法 (Indicative Mood): 事実や、話し手が事実だと考えていることを客観的に述べる、最も一般的な法です。私たちが通常使う現在形、過去形、未来形などは直説法に属します。
      • 例: The earth **goes** around the sun. (事実は…)
      • 例: I **will go** if it **is** fine tomorrow. (もし晴れるという事実になれば、行くつもりだ。)
    2. 仮定法 (Subjunctive Mood): 事実とは異なること(反事実)、実現可能性が低いこと、願望、想像、要求、提案などを表現するための法です。動詞の形を通常とは変えることで、現実からの「距離感」を示します。
      • 例: If I **were** a bird, I **could** fly. (もし鳥ならば飛べるのに → 事実ではない)
    3. 命令法 (Imperative Mood): 命令、依頼、指示などを表す法です。動詞の原形を用います。
      • 例: **Open** the window.
  • この講義の焦点: ここでは、直説法とは異なる「仮定法」に焦点を当てて詳しく見ていきます。

1.2. なぜ仮定法を学ぶのか? – 現実を超えた表現力

仮定法は、単に文法規則として存在するだけでなく、私たちの思考やコミュニケーションにおいて重要な役割を果たします。

  • 表現の拡張: 事実だけでは表現できない、「もし〜だったらどうなるだろう?」という思考実験、過去への後悔や「〜すればよかった」という反省、未来への願望、他者への丁寧な提案や要求などを表現することが可能になります。
  • ニュアンスの理解 (読解): 仮定法が使われている文を読む際、それが事実ではなく話し手の仮定や願望、あるいは実現可能性の低いことについての言及であると認識することが、文脈や話し手の真意を正確に理解するために不可欠です。仮定法を見抜けないと、非事実を事実として誤読してしまう可能性があります。
  • 意図の正確な伝達 (作文・会話): 自分の考えや気持ちをより正確に、そして適切なニュアンスで伝えるために仮定法は必須です。「もし〜なら」という条件を示すだけでなく、「〜ならなあ」という願望や、「〜すべきだった」という後悔、「〜してください」という丁寧な要求など、仮定法を用いることで表現の幅が大きく広がります。

1.3. 仮定法の核心:動詞の「時制のズレ」

仮定法を理解する上で最も重要な概念の一つが、動詞の「時制の形」を意図的に過去方向へずらすという点です。

  • 現在のこと → 過去形を用いる: 現在の事実に反する仮定や現在の願望を表す場合、動詞の形は過去形(仮定法過去)を使います。
    • 例: If I **had** money now, ... (もし今お金があれば… → 現在の話だが過去形 had を使う)
  • 過去のこと → 過去完了形を用いる: 過去の事実に反する仮定や過去への後悔を表す場合、動詞の形は過去完了形(仮定法過去完了)を使います。
    • 例: If I **had had** money then, ... (もしあの時お金があったなら… → 過去の話だが過去完了形 had had を使う)

この「時制のズレ」によって、述べられている内容が現実の事実から離れた「仮定」の世界のことである、というサインが送られるのです。このズレを意識することが、仮定法の様々な形を理解する鍵となります。

2. 仮定法過去 (Subjunctive Past) – 現在の「もしも」

仮定法過去は、現在の事実とは異なる状況や、実現の可能性が低い現在の仮定について述べる際に用いられます。

2.1. 形と意味:「もし(今)〜なら、…だろうに」

  • 形式:
    • If節 (条件節): If + S + 動詞の過去形 ...
    • 主節 (帰結節): S + would/could/should/might + 動詞の原形 ...
  • 意味: 「もし(現在の事実に反して)Sが〜なら、S’は…だろうに / …できるのに / …すべきなのに / …かもしれないのに」
  • 動詞の形:
    • If節:
      • 動詞は過去形を用います。
      • be動詞は、主語が単数(I, he, she, it)であっても、were を使うのが伝統的かつ正式な形です。(特に If I were you ... は定型句)。口語では was が使われることもありますが、フォーマルな場面や書き言葉では were が好まれます。
        • 例: If I **were** rich, ... (もし私がお金持ちなら…)
        • 例: If he **were** here, ... (もし彼がここにいれば…)
    • 主節:
      • 助動詞の過去形 (wouldcouldshouldmight) のいずれかを用い、その後ろに動詞の原形を続けます。

2.2. 用法と例文

  • 現在の事実に反する仮定:
    • If I **had** wings, I **could fly** to you. (もし私に翼があれば、あなたのところに飛んでいけるのに。→ 実際には翼はないし、飛べない)
    • If we **left** now, we **would arrive** before dark. (もし今出発すれば、暗くなる前に着くだろう。→ 話し手は今出発しない、あるいはできないと考えている)
    • What **would** you do if you **were** the president? (もしあなたが大統領なら、どうしますか?)
  • 現在の実現可能性が低い仮定:
    • If he **apologized**, I **might forgive** him. (もし彼が謝罪すれば、許すかもしれない。→ 彼が謝罪する可能性は低いと考えている)

2.3. 帰結節の助動詞のニュアンス

主節で使われる助動詞の過去形は、それぞれ異なるニュアンスを持ちます。

  • would + 原形: 仮定の結果として「〜だろうに」(単純な推測、意志)
  • could + 原形: 仮定の結果として「〜できるのに」(能力、可能性)
  • should + 原形: 仮定の結果として「〜すべきなのに」(義務、当然)、または「〜するはずなのに」(推量)。主語が I/We の場合、やや古風な言い方として「〜するだろうに」の意味で would の代わりに使われることも。
  • might + 原形: 仮定の結果として「〜かもしれないのに」(可能性、推量)

文脈に合わせて適切な助動詞を選ぶことが重要です。

3. 仮定法過去完了 (Subjunctive Past Perfect) – 過去の「もしも」

仮定法過去完了は、過去の事実とは異なる状況や、過去に起こらなかったことに対する後悔・推測などを述べる際に用いられます。

3.1. 形と意味:「もし(あの時)〜だったら、…だっただろうに」

  • 形式:
    • If節 (条件節): If + S + had + 過去分詞 (pp) ...
    • 主節 (帰結節): S + would/could/should/might + have + 過去分詞 (pp) ...
  • 意味: 「もし(過去の事実に反して)Sが〜であったなら、S’は…だっただろうに / …できたのに / …すべきだったのに / …だったかもしれないのに」
  • 動詞の形:
    • If節: 過去完了形 (had + pp) を用います。
    • 主節: 助動詞の過去形 (wouldcouldshouldmight) + have + 過去分詞 (pp) の形を用います。

3.2. 用法と例文

  • 過去の事実に反する仮定:
    • If I **had known** her email address, I **would have sent** her a message. (もし彼女のメールアドレスを知っていたら、メッセージを送っただろうに。→ 実際は知らなかったので送らなかった)
    • If you **hadn't helped** me, I **couldn't have finished** the work. (もしあなたが助けてくれなかったら、その仕事を終えることはできなかっただろう。→ 実際は助けてくれたので終えることができた)
  • 過去の行為への後悔・非難:
    • I **should have taken** the earlier train. (もっと早い電車に乗るべきだったのに。→ 乗らなかったことを後悔)
    • He **shouldn't have driven** so fast in the rain. (彼は雨の中あんなに速く運転すべきではなかったのに。→ したことへの非難)
  • 過去の出来事への推測:
    • She **might have misunderstood** my intention. (彼女は私の意図を誤解したのかもしれない。→ 過去の推量)
    • He **could have been** at home, but I didn't call him. (彼は家にいた可能性もあったが、電話しなかった。)

3.3. 混合仮定法 (Mixed Conditional) – (補足)

条件節(If節)と帰結節(主節)で、参照している時間が異なる(一方が過去、もう一方が現在)場合があり、これを混合仮定法と呼びます。

  • 「もし過去に〜だったら、今頃…なのに」: <If + S + had pp ..., S + would/could... + 原形 ...>
    • 例: If I **had taken** that flight yesterday, I **would be** in Hawaii now. (もし昨日あの便に乗っていたら、今頃ハワイにいるだろうに。) (条件は過去、結果は現在)
  • 「もし今〜なら、過去に…だっただろうに」: (まれなケース) <If + S + 過去形 ..., S + would/could... + have pp ...>
    • 例: If he **were** more diligent, he **would have passed** the exam last time. (もし彼がもっと勤勉なら、前回の試験に合格していただろうに。) (条件は現在(彼の性格)、結果は過去)

4. 仮定法現在 (Subjunctive Present) – 要求・提案・必要性

仮定法現在は、現代英語では主にthat節の中で使われ、その内容が事実ではなく、**実現されるべきこと(要求、提案、必要性など)**であることを示します。

4.1. 形と意味:「〜すること」を要求・提案・主張する

  • 形式: 特定の動詞、形容詞、名詞に続く that の中で、動詞が主語の人称・数や文全体の時制に関係なく、常に原形になる。(または、イギリス英語やフォーマルな文体では <should + 原形> が使われる)
  • 意味: that節の内容が、要求、提案、主張、命令、必要性、重要性、当然といったニュアンスを持つことを示します。「Sが〜すること」を要求する/提案する/主張する/が必要だ、といった意味合いになります。
  • 例:
    • The committee proposed that the meeting **be** postponed. (委員会は会議が延期されるよう提案した。) (× is, × was)
    • It is essential that everyone **understand** the risks involved. (関わるリスクを全員が理解することが不可欠だ。) (× understands)
    • Her demand was that he **apologize** immediately. (彼女の要求は彼が即座に謝罪することだった。) (× apologizes, × apologized)

4.2. 使われる文脈

  • (a) 要求・提案・命令系の動詞 + that + S + (should) 原形:
    • suggestproposerecommendadvise (提案・推奨)
    • requestrequireaskdemand (要求)
    • insist (主張)
    • ordercommand (命令)
    • move (動議する)
    • 例: I **suggest** that we **(should) take** a different approach.
  • (b) 必要性・重要性系の形容詞 + that + S + (should) 原形: (主に It is ... that ... の形で)
    • importantnecessaryessentialvitalcrucial (重要・必要)
    • imperativeobligatory (必須・義務的)
    • desirableadvisable (望ましい)
    • urgent (緊急の)
    • 例: It is **vital** that you **(should) follow** the instructions exactly.
  • (c) 要求・提案系の名詞 + that + S + (should) 原形: (主に同格の that節で)
    • suggestionproposalrecommendationrequestdemandorderinsistence
    • 例: There was a **suggestion** that the rule **(should) be** changed.
  • ★直説法との区別: that節の内容が事実を表す場合(例: He insisted that he **saw** it. 彼がそれを見たと主張した)や、thinkbelievehope などの動詞の後では、仮定法現在ではなく直説法(通常の時制)が使われます。

5. 仮定法未来 (Subjunctive Future) – 万一の「もしも」

仮定法未来は、未来の出来事について、実現の可能性が極めて低いと考えていること、または万一の事態を仮定して述べる際に使われます。

5.1. 形と意味:「万一〜ならば」「(ありえないと思うが)もし〜するようなことがあれば」

  • 形式:
    • (1) If + S + should + 動詞の原形 ...
    • (2) If + S + were to + 動詞の原形 ...
  • 意味: 未来の出来事に対する仮定ですが、直説法(If + S + 現在形)で表される単なる条件とは異なり、「まず起こらないと思うが」「万が一にも」という話し手の気持ちが含まれます。
  • 帰結節の形:
    • If S should ... の場合: 未来形 (will)、命令文、仮定法過去の帰結節 (would/could…) など、比較的柔軟。
    • If S were to ... の場合: 実現可能性がほぼゼロという強い仮定のため、帰結節は仮定法過去の形 (would/could/might + 原形) が使われるのが普通。

5.2. should と were to のニュアンス

  • If + S + should + 原形: 「万一〜するようなことがあれば」。実現可能性は低いと考えているが、ゼロではないというニュアンス。比較的幅広い帰結節と結びつく。
    • 例: If you **should** see Mr. Jones, please give him this message. (万一ジョーンズさんにお会いしたら、…) → 帰結節は命令文。
    • 例: If anything **should happen** to me, take care of my family. (万一私の身に何かあれば、…) → 帰結節は命令文。
    • 例: If he **should** fail, he would try again. (万一失敗すれば、…) → 帰結節は仮定法過去。
  • If + S + were to + 原形: 「(ありえない・まずないと思うが)仮に〜するようなことがあれば」。実現可能性がほぼゼロに近いという話し手の強い気持ちや、現実離れした仮定を表す。帰結節は would/could/might + 原形 が原則。
    • 例: If I **were to** live my life again, I would choose a different path. (仮に人生をもう一度生きるとすれば、…)
    • 例: What **would** happen if the earth **were to** stop spinning? (もし地球の自転が止まるようなことがあれば、どうなるだろうか?)

6. if を使わない仮定法表現

仮定の意味は、if節を使わずに表現されることも非常に多いです。文脈や特定の語句から仮定の意味を読み取ることが重要になります。

6.1. I wish + 仮定法

  • 現在または過去の事実とは異なることへの願望「〜ならなあ」「〜だったらなあ」を表します。wish の後の節には仮定法が用いられます。
    • I wish + S + 仮定法過去 (過去形/were)現在の事実に反する願望。
      • I wish I **had** more free time. (もっと自由な時間があればなあ。)
      • I wish I **were** on vacation now. (今、休暇中ならなあ。)
    • I wish + S + 仮定法過去完了 (had pp)過去の事実に反する願望、後悔。
      • I wish I **hadn't said** that. (あんなことを言わなければよかったなあ。)
    • I wish + S (≠I/We) + would + 原形現在の状況への不満未来への願望(主語の意志に働きかける)。
      • I wish it **would stop** raining. (雨が止んでくれればなあ。)
      • I wish you **would** help me. (手伝ってくれればなあ。)

6.2. as if / as though + 仮定法

  • まるで〜であるかのように」「まるで〜であったかのように」という意味で、事実に反する比喩的な状況を表します。後ろには仮定法が続くことが多いです。
    • as if / as though + S + 仮定法過去: 主節と同じ時の反事実。
      • He spends money **as if** he **were** a millionaire. (彼はまるでお金持ちであるかのように金を使う。)
    • as if / as though + S + 仮定法過去完了: 主節より過去の反事実。
      • She looked pale **as if** she **had seen** a ghost. (彼女はまるで幽霊でも見たかのような顔つきだった。)
    • 注意: as if/as though の後が事実やその可能性が高い場合は、仮定法ではなく直説法が使われます。

6.3. It's (high/about) time + S + 仮定法過去

  • もう(とっくに)〜する時間だ」という意味で、まだ行われていないことに対する促しや軽い非難のニュアンスを持ちます。time の後ろの節の動詞は過去形になります。
  • 例: It's about time you **started** working seriously. (もう真面目に働き始める時間ですよ。)
  • 例: It's high time the children **were** in bed. (子供たちはもうとっくに寝ている時間だ。)

6.4. If の省略による倒置

  • 仮定法の if節において、if を省略し、代わりに助動詞 werehadshould を主語の前に出す(倒置する)ことで仮定の意味を表せます。文語的で硬い表現です。
    • Were S ... (= If S were …)
      • **Were** I rich, I would travel the world.
    • Had S pp ... (= If S had pp …)
      • **Had** it not been for your advice, I would have failed.
    • Should S + 原形 ... (= If S should + 原形 …)
      • **Should** you have any questions, please ask.

6.5. 前置詞句 (withoutbut for) などが仮定の意味を含む

  • 特定の語句が文脈の中で仮定法の条件節の代わりをすることがあります。帰結節は仮定法の形 (would/could... + 原形/have pp) になります。
    • Without / But for + 名詞: 「〜がなければ」「〜がなかったら」
      • **Without** water, nothing could live. (= If there were no water, …)
      • **But for** his help, I **would have been** in trouble. (= If it had not been for his help, …)
    • その他: 不定詞句、分詞構文、名詞(主語)などが仮定の意味合いを含むこともあります。
      • **To hear** him speak English, you might think he is American. (= If you heard him speak…)
      • **Given** another chance, I would do it differently. (= If I were given…)
      • **An honest man** wouldn't tell such a lie. (= If he were an honest man, …)

7. 仮定法の知識を読解と作文に活かす

7.1. 読解における仮定法の役割

  • 事実性の判断: 仮定法が使われている箇所は、筆者が事実とは異なること、あるいは可能性が低いと考えていることを述べているという重要なサインです。これを読み取ることで、内容を事実として誤解することを防ぎます。
  • 話し手の態度の推測: I wish... や should have pp などの表現は、話し手の願望、後悔、非難といった感情や態度を直接的に示します。as if は比喩的な描写を理解する手がかりになります。
  • 論理構造とニュアンスの理解: if節と帰結節の関係(条件と結果)、時制のズレが示す現実からの距離感、倒置や without などによる仮定表現のバリエーションを理解することが、文全体の論理構造とニュアンスを正確に把握するために必要です。

7.2. 作文における仮定法の効果的な使用

  • 非現実・仮定の表現: 「もし〜だったら」という仮定や、「〜ならなあ」という空想・願望を表現する基本的な手段として、仮定法過去・過去完了を正確に使いこなすことが求められます。
  • 後悔・非難の表現: 過去の出来事に対する後悔や他者への非難を should have pp などで適切に表現します。
  • 丁寧な提案・依頼・忠告: 仮定法過去 (If I were you, I would...) や助動詞の過去形 (couldwould) を用いることで、断定的な響きを和らげ、丁寧で控えめな提案や依頼、忠告を行うことができます。
  • 要求・提案のフォーマルな表現: 仮定法現在 (that S (should) 原形) は、要求や提案などをフォーマルな文体で記述する際に有効です。
  • 文法的な正確性: 各仮定法の形式(If節と帰結節の動詞・助動詞の形、時制の組み合わせ)を正確に守ることが、文法的に正しいだけでなく、意図したニュアンスを正確に伝えるために不可欠です。

8. まとめ:仮定法は「心」を描く言葉

仮定法は、単なる文法規則ではなく、私たちが現実世界(直説法)から一歩離れ、「もしも」の世界、願望の世界、要求や提案の世界といった、心の中や可能性の領域を描き出すための言語的な手段です。その核心は、動詞の時制を意図的にずらすことで、事実からの距離感を示す点にあります。

仮定法過去(現在の反事実)、仮定法過去完了(過去の反事実)、仮定法現在(要求・提案)、仮定法未来(万一の仮定)といった主要な形式に加え、I wishas if, 倒置、without など、if を使わずに仮定の意味を表す多様な表現が存在します。

これらの仮定法の形式と意味を正確に理解し、使いこなすことは、英語の読解において書かれている内容の事実性や話し手の態度を的確に判断するために、そして作文や会話において自らの仮定、願望、提案などを繊細かつ効果的に表現するために、極めて重要です。仮定法は、英語で「心」を描き、コミュニケーションをより深く、豊かにするための鍵となるでしょう。

次の「仮定法:演習編」では、これらの仮定法の各形式の識別、適切な形の選択、そして応用的な用法に関する実践的な練習を通して、理解を確実なものにしていきます。

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