要約表現:客観・簡潔の追求(講義編)

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Module 9 では、英文の核心を掴み、それを効果的に再構成する「要約技術」を学んでいます。これまでに、原文から重要な情報を選び出す「要点抽出」、そして抽出した内容を自分の言葉で表現し直す「言い換え技術」、さらにそれらを論理的に繋ぎ合わせる「情報統合」のスキルについて見てきました。しかし、要約を完成させるには、もう一つ重要な側面があります。それは、要約文そのものの「表現スタイル」です。質の高い要約は、内容が正確であるだけでなく、客観的 (Objective) であり、かつ簡潔 (Concise) であることが求められます。この講義では、要約にふさわしい表現スタイルとは何か、そして客観性と簡潔性をどのように追求していくのか、その具体的な方法とテクニックについて解説します。これは、要約作成の最終的な「仕上げ」の工程であり、文章の質を決定づける重要な要素です。

目次

1. 要約表現の流儀 – 客観性と簡潔性を磨く

1.1. 要約の「仕上げ」としての表現

要点を見抜き、自分の言葉で言い換え、論理的に繋ぎ合わせたとしても、その最終的な「表現の仕方」が不適切であれば、要約としての価値は損なわれてしまいます。例えば、要約の中に自分の意見や感想が混じっていたり、表現が冗長で分かりにくかったりしては、読み手は原文の要点を正確かつ効率的に把握することができません。

したがって、要約作成の最終段階では、内容だけでなく、その表現スタイルにも注意を払う必要があります。そして、効果的な要約に求められる表現上の二大原則が、「客観性 (Objectivity)」と「簡潔性 (Conciseness)」なのです。

1.2. なぜ客観性と簡潔性が重要か?

  • 客観性 (Objectivity) の重要性:
    • 原文への忠実さ: 要約の基本的な目的は、元の文章(ソーステキスト)の内容を忠実に伝えることです。そこに要約者自身の個人的な意見、解釈、感情、評価などを加えてしまうと、原文の情報が歪められてしまい、要約としての役割を果たせません。読み手は、原文に何が書かれていたかを、フィルターを通さずに知りたいのです。
    • 信頼性の担保: 特に学術的な文脈(レポート、論文要旨など)においては、客観性は文章の信頼性を担保するための絶対条件です。主観的な記述は、非学術的であると見なされます。
  • 簡潔性 (Conciseness) の重要性:
    • 要約の本質: 要約とは、文字通り「要(かなめ)を約(つづ)める」こと、すなわち長い情報を短くまとめることです。冗長な表現や不必要な繰り返しは、この本質に反します。
    • 明瞭性と効率性: 無駄のない簡潔な表現は、要点をストレートに伝え、意味の明瞭性 (Clarity) を高めます。また、読み手は情報を素早く効率的に把握することができます。
    • 字数制限への対応: 大学入試の要約問題や、論文のアブストラクト(要旨)などでは、多くの場合厳しい字数制限が課せられます。簡潔に表現する能力は、これらの要求に応えるために必須です。

1.3. この講義の目標:客観的・簡潔表現の技術習得

この講義では、皆さんが作成する要約文が、以下の二つの基準を満たすように、具体的な表現技術を習得することを目標とします。

  1. 客観性: 自分の意見や感情を排除し、原文の内容を中立的な視点から正確に記述する方法。
  2. 簡潔性: 冗長な表現を避け、情報を凝縮し、無駄なく的確に要点を伝える方法。

これらの技術を身につけることで、要約文としての完成度を格段に高めることができます。

2. 客観性 (Objectivity) を保つ表現法 – 自分の意見を入れない

要約において客観性を保つためには、自分の主観が入り込む余地をできるだけ排除する意識が必要です。

2.1. 基本原則:原文の忠実な反映

常に「原文には何が書かれていたか」という事実に立ち返り、それを正確に伝えることに徹します。自分の知識で補ったり、原文にない解釈を加えたり、あるいは「この部分は重要だと思う/思わない」といった自分の評価を反映させたりしてはいけません。要約者はあくまで中立的な情報の伝達者であるべきです。

2.2. 人称の選択:三人称を基本とする

  • 一人称・二人称の回避: I think...In my opinion...We believe...As you know...You should... のような一人称(私、私たち)や二人称(あなた)を用いた表現は、主観的な視点や読み手への直接的な語りかけを示すため、客観性が求められる要約では原則として避けます
  • 三人称の使用: 三人称 (hesheitthey, 一般名詞) を用いることで、記述対象と距離を置き、客観的な視点を保ちやすくなります。

2.3. 筆者の意見・主張の客観的な記述

原文に筆者の意見や主張が含まれている場合は、それをそのまま自分の意見のように記述するのではなく、「筆者が〜と述べている」という形で、客観的に報告します。

  • 便利な動詞・表現:
    • The author **argues / contends / claims / asserts / maintains** that... (筆者は〜と主張している)
    • The author **suggests / implies / indicates / points out** that... (筆者は〜を示唆している/指摘している)
    • The author **believes / thinks / considers** that... (筆者は〜と考えている)
    • The passage **states / explains / describes** that... (その文章は〜と述べている/説明している)
    • **According to** the author / the passage, ... (筆者/文章によれば…)
    • **In the author's view,** ... (筆者の見解では…)
  • 例:
    • 原文の筆者の主張: “We must invest more in education.”
    • 要約での表現(○): The author **argues that** more investment in education is necessary.
    • 要約での表現(×): We must invest more in education. (これでは要約者の主張になってしまう)

2.4. 感情的・主観的な語彙の回避

客観性を損なう主な原因の一つが、感情や主観的な評価・判断を強く含む語彙の使用です。

  • 避けるべき語彙の例:
    • 強い感情: amazingwonderfulfantasticterriblehorriblesadlyhappily
    • 主観的評価: goodbadbeautifuluglyinterestingboringstupidclever
    • 断定的な副詞: obviouslyclearlydefinitelycertainly (原文で筆者が使っている場合を除く)
    • 批判的な語: unfortunatelyregrettably
  • 代替表現: 事実を客観的に描写する、より中立的 (Neutral) な言葉を選びます。
    • 例: × The experiment produced **amazing** results. → ○ The experiment produced **significant / positive / unexpected** results. (具体的な結果の内容を示す方が良い場合も)
    • 例: × **Unfortunately**, the plan failed. → ○ The plan failed. / The plan did not succeed.
    • 例: × He **stupidly** forgot the appointment. → ○ He forgot the appointment.

2.5. 断定の度合いの調整(原文のニュアンスを反映)

客観性とは、原文のニュアンスを無視して全てを断定的に記述することではありません。原文が控えめな表現可能性を示唆している場合は、要約でもそれを反映させる必要があります。

  • 原文の控えめ表現: maymightcouldpossiblyperhapslikelyseemappearsuggestindicatetend toなど。
  • 要約での反映: これらのニュアンスを汲み取り、要約でも同様の表現(または possiblylikelysuggestsなど)を用います。
    • 例: 原文 This **may indicate** a correlation. → 要約 ○ The study **suggests** a possible correlation. / × The study **proves** a correlation.
  • 逆に、原文が断定している内容を、要約者が勝手に控えめな表現(例: may を付け加える)にしてはいけません。

3. 簡潔性 (Conciseness) を追求する表現法 – 無駄を削ぎ落とす

要約のもう一つの重要な原則は「簡潔性」です。冗長な表現を避け、情報を凝縮し、最小限の言葉で最大限の情報を伝えることを目指します。

3.1. 冗長な語句・フレーズの削除・言い換え

英語には、より短い言葉で同じ意味を表せるにもかかわらず、回りくどく使われがちな定型フレーズがあります。要約ではこれらを積極的に簡潔化します。

  • 冗長表現 → 簡潔表現 の例:
    • due to the fact that → becausesinceas
    • in spite of the fact that → althoughthougheven though
    • at this point in timeat the present time → nowcurrently
    • in the event that → if
    • in order to → to (目的の不定詞)
    • a large [great] number of → many
    • a small number of → few
    • the majority of → most
    • is capable of -ing → can + 原形
    • make contact with → contact (動詞)
    • reach a conclusion → conclude
    • give consideration to → consider
  • 不必要な副詞・形容詞の削除:
    • It is **absolutely** essential... → It is essential...
    • ...advance **forward**. → ...advance.
    • ...connect **together**. → ...connect.
    • ...basic fundamentals → ...fundamentals.

3.2. 繰り返し表現の回避・統合

  • 同じ単語やフレーズの不必要な繰り返しは、簡潔性を損ないます。代名詞 (ittheythis など) や代用語(one(s)do so など) を効果的に活用して繰り返しを避けましょう。
  • 同じアイデアが異なる言葉で複数回述べられている場合は、それらを一つに統合し、最も核心的な形で表現します。

3.3. 句の活用による節の圧縮

従属節(関係詞節、副詞節など)は、しばしばより短い(分詞句、不定詞句、前置詞句、同格句など)に置き換えることで、文を簡潔にすることができます。

  • 例 (関係詞節 → 分詞句/PP):
    • The results **that were obtained from the experiment** were analyzed.
    • → The results **obtained from the experiment** were analyzed. (過去分詞句)
    • People **who live in urban areas** face various stresses.
    • → People **living in urban areas** face various stresses. (現在分詞句)
    • This is the key **that opens the back door**.
    • → This is the key **to the back door**. (前置詞句)
  • 例 (副詞節 → 分詞構文/PP/不定詞):
    • **Because she felt ill**, she stayed home. → **Feeling ill**, she stayed home. (分詞構文)
    • He works hard **so that he can succeed**. → He works hard **to succeed**. (不定詞)
    • **After the meeting ended**, we had dinner. → **After the meeting**, we had dinner. (前置詞句)

3.4. 名詞化 (Nominalization) の活用

  • 方法: 動詞や形容詞を、それに対応する名詞(しばしば -tion-ment-ity-ness などが付く)に変え、文構造を再構築します。
  • 例:
    • The population **increased** significantly. → There was a significant **increase** in the population. / The significant **increase** in population...
    • It is important **to be punctual**. → **Punctuality** is important.
  • 効果: 文をよりコンパクトにしたり、客観的でフォーマルな響きを与えたりすることができます。レポートや学術的な要約で有効な場合があります。
  • 注意点: 名詞化を多用すると、逆に動作主が不明瞭になったり、文が硬くなりすぎたりする(名詞病 Nominalization style)こともあるため、バランスが重要です。

3.5. 能動態・受動態の戦略的選択

  • 簡潔性の観点:
    • 行為者を by ... で示す必要がない場合、受動態の方が能動態よりも簡潔になることがあります(行為者という要素を省略できるため)。
    • 例: Someone built this bridge in 1900. → This bridge **was built** in 1900. (より簡潔)
    • 逆に、受動態の by ... が長くなる場合は、能動態の方が簡潔なこともあります。
  • 情報の流れ: 文脈における情報の流れ(旧情報→新情報)を考慮して、より自然で簡潔な方を選びます。

3.6. 単語レベルでの簡潔化

  • より短く、より直接的な意味を持つ同義語を選ぶことも、簡潔性に繋がります。
  • 例: give assistance to → assist/helpmake an attempt to → attempt/tryin the vicinity of → near

4. 客観性と簡潔性のバランス

客観性を追求するあまり、表現が冗長になったり、逆に簡潔性を追求するあまり、必要な情報やニュアンスが抜け落ちてしまったりしないよう、両者のバランスを取ることが重要です。常に「原文の主要な情報を、正確かつ中立的に、そして無駄なく伝える」という要約の基本目的に立ち返りましょう。

5. 要約表現スキルの応用範囲

ここで学ぶ客観的・簡潔な表現スキルは、要約作成以外にも広く応用できます。

  • 学術ライティング: 論文のアブストラクト(要旨)、文献レビュー、研究報告など、客観性と簡潔性が厳しく求められるアカデミックな文章作成全般に不可欠です。
  • ビジネスコミュニケーション: 報告書、議事録、メール、プレゼンテーション資料など、ビジネスシーンにおいても、要点を明確かつ簡潔に伝える能力は極めて重要視されます。
  • ニュース記事: 新聞やニュースサイトの記事(特にリード文など)も、客観的・簡潔な情報伝達の良い手本となります。

6. まとめ:要約は「客観的」に「簡潔」に

効果的な要約を作成するためには、内容の正確さや網羅性に加え、その表現スタイル客観的 (Objective) かつ簡潔 (Concise) であることが求められます。

  • 客観性のためには、個人的な意見や感情を排し、三人称を基本とし、筆者の主張は客観的に報告し、感情的・主観的な語彙を避け、原文のニュアンス(断定の度合いなど)を正確に反映させます。
  • 簡潔性のためには、冗長な語句や繰り返しを排除し、句の活用(分詞句、不定詞句など)や名詞化などを効果的に用い、無駄のない的確な表現を目指します。

これらの客観的・簡潔な表現スキルは、これまでに学んできた文法、構文、語彙、言い換え、情報統合といった知識・スキルを活用することで実現されます。そして、このスキルは要約作成だけでなく、学術・ビジネス分野を含む多様なライティング場面で応用可能な、普遍的で価値の高い能力となります。

次の「要約表現:演習編」では、客観性・簡潔性の原則に基づき、実際に英文を修正したり、要約文を作成したりするトレーニングを通して、この重要なスキルを確実に身につけていきます。

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