計画が遅れる「本当の原因」の見つけ方：トヨタ式「なぜなぜ分析」活用術

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「また今週も、計画通りに終わらなかった…」

「いつも同じ科目でつまずいてしまう。どうしてだろう…」

「自分なりに頑張っているつもりなのに、なぜか成績が上がらない…」

受験勉強を進める中で、このような「なぜかうまくいかない」という壁にぶつかり、同じ失敗を繰り返して、自己嫌悪に陥ってはいませんか？

その原因は、問題の「表面的な理由」にだけ対処していて、その奥に隠れている「本当の原因（根本原因）」を見過ごしているからかもしれません。

この記事では、その「本当の原因」を、まるで探偵のように突き止めるための強力な思考ツール「なぜなぜ分析」について、そのやり方から、見つけた原因への対策までを、大学受験の場面に合わせて詳しく解説していきます。この技術を身につければ、あなたはもう、同じ失敗を繰り返すことはなくなるはずです。

なぜ、あなたの「頑張り」は空回りしてしまうのか？

まず、なぜ私たちは同じ失敗を繰り返してしまうのか、その仕組みから理解しましょう。

表面的な原因と、根本的な原因の違い

私たちの目の前で起きる問題には、大きく分けて2種類の原因があります。

表面的な原因: 問題として、直接目に見えている分かりやすい理由。
根本的な原因: その表面的な原因を引き起こしている、より深く、本質的な理由。

例えば、体調不良で考えてみましょう。

問題: 「頭が痛い」
表面的な原因: 「熱があるから」
根本的な原因: 「特定のウイルスに感染したから」

この場合、「頭痛薬を飲む（表面的な原因への対処）」だけでは、一時的に症状は和らぎますが、病気の元であるウイルスはなくならないため、またすぐに頭痛は再発してしまいます。病気を本当に治すためには、「ウイルスに効く薬を飲む（根本的な原因への対処）」ことが必要です。

間違った原因分析が生む、効果のない対策

受験勉強もこれと全く同じです。「計画が遅れた」という問題に対し、「やる気が足りなかったから、明日から気合を入れる」という対策を立てたとします。これは、頭痛に対して、ただ「我慢する」と言っているようなものです。

もし、計画が遅れた「本当の原因」が、「基礎知識が不足していて、一問に時間がかかりすぎている」ことであったなら、いくら気合を入れても問題は解決しません。むしろ、間違った対策を続けることで、時間を無駄にし、状況をさらに悪化させてしまう可能性すらあるのです。

「なぜ？」を繰り返すことが、問題解決の第一歩

この、目に見えない「根本原因」を突き止めるための、シンプルで強力な方法が、「なぜ？」という問いを繰り返していくことです。

「なぜなぜ分析」とは何か？

「なぜなぜ分析」は、少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、そのやり方は非常にシンプルです。

問題の「真因」を突き止めるための思考法

「なぜなぜ分析」とは、ある一つの問題に対して、「なぜ、それは起きたのか？」という問いを、答えが本質的な原因に行き着くまで、複数回（多くの場合5回が目安）繰り返していくことで、問題の根本的な原因、すなわち「真因」を突き止めるための思考法です。

元々は、製造業の品質改善で使われていた技術

この手法は、元々、トヨタ自動車が自社の生産ラインで発生する不良品の原因を突き止めるために開発し、徹底してきたことで知られています。なぜ不良品ができたのか、その原因を一つひとつ掘り下げていくことで、再発防止策を講じ、高い品質を維持してきたのです。

受験勉強に応用するメリット

このプロの現場で使われる思考法を受験勉強に応用すると、以下のような大きなメリットがあります。

本質的な課題解決: その場しのぎの対策ではなく、自分の学習における根本的な課題を解決できるため、同じ失敗を繰り返さなくなります。
自己理解の深化: 「なぜ？」と自問自答を繰り返すプロセスは、自分自身の思考の癖や、性格的な弱点、学習習慣の問題点など、これまで気づかなかった自分の一面を発見する、深い自己分析の機会となります。
具体的で効果的な対策: 根本原因が分かれば、「何を改善すれば良いのか」が明確になり、具体的で的を射た対策を立てることができます。

【準備編】分析を始める前の心構えと、用意するもの

「なぜなぜ分析」を効果的に行うために、始める前に2つの心構えと、簡単な準備をしておきましょう。

心構え1：自分を責めない、客観的に事実を見る

この分析の目的は、自分を「裁く」ことではありません。「こんなこともできなかったのか」と自分を責め始めると、本当の原因から目をそむけ、都合の良い理由を探してしまいがちです。あくまで、医者が患者を診察するように、自分の状況を客観的な「事実」として捉えることを心がけましょう。

心構え2：推測ではなく、事実に基づいて考える

「たぶん、集中力がなかったから」といった、根拠のない推測で「なぜ？」に答えるのはやめましょう。日々の学習ログ（勉強記録）や、模試の結果、使っている参考書など、**具体的な「事実」や「データ」**に基づいて考えることで、分析の精度は格段に上がります。

用意するもの：紙とペン、そして正直な自分

頭の中だけで考えようとすると、思考が堂々巡りしてしまいます。必ず、紙とペンを用意し、自分の考えを書き出しながら進めていきましょう。そして何より、自分自身に対して正直になる、という気持ちが大切です。

【実践編】「なぜなぜ分析」の具体的な5つのステップ

それでは、具体的な分析の進め方を、5つのステップに分けて解説します。

ステップ1：解決したい「問題」を具体的に定義する

まず、分析の対象となる「問題」を、できるだけ具体的に、明確な言葉で定義します。

悪い例: 「成績が上がらない」
良い例: 「先週の週間計画で、数学の問題集を30ページ進める予定だったが、15ページしか進まなかった」

ステップ2：「なぜ、その問題は起きたのか？」と最初の問いを立てる

ステップ1で定義した問題に対して、最初の「なぜ？」を問いかけます。

問い: 「なぜ、数学の問題集は15ページしか進まなかったのか？」

ステップ3：出てきた答えに対して、さらに「なぜ？」を繰り返す

ステップ2で出てきた答えが、次の「なぜ？」の対象になります。この繰り返しが、原因を深く掘り下げていくプロセスです。

ステップ4：多くの場合、5回繰り返すと「根本原因」にたどり着く

もちろん問題によりますが、経験上、「なぜ？」を5回ほど繰り返すと、それ以上は分解できない、本質的な原因にたどり着くことが多いと言われています。

ステップ5：見つかった根本原因が、本当に対策可能なものか確認する

最終的に出てきた原因が、「自分の努力や工夫で、対策を立てることが可能なもの」になっているかを確認します。「景気が悪いから」のような、自分ではどうしようもないことが原因であっては、改善に繋がりません。

【ケーススタディ】受験生の悩みで「なぜなぜ分析」をやってみよう

では、受験生によくある悩みを例に、「なぜなぜ分析」を実際にシミュレーションしてみましょう。

ケース1：「英語の長文問題の計画が、いつも遅れてしまう」

問題: 英語長文の問題集を、計画通りに1日1題進められない。
なぜ①？（なぜ1日1題進められないのか）
- → 1題解き終わるのに、想定の倍近い90分もかかってしまうから。
なぜ②？（なぜ90分もかかってしまうのか）
- → 一文一文を読むのに、何度も読み返してしまい、時間がかかっているから。
なぜ③？（なぜ何度も読み返してしまうのか）
- → 文の構造（SVOCなど）が、ぱっと見で正確に把握できないから。
なぜ④？（なぜ文の構造が把握できないのか）
- → 関係代名詞や分詞構文など、複雑な修飾関係が出てくると、どこが主語でどこが動詞か分からなくなるから。
なぜ⑤？（なぜ複雑な構文が分からなくなるのか）
- → 英文法の参考書は一通りやったが、その知識を長文の中でどう使うか、という『英文解釈』の訓練が不足しているから。
【根本原因】: 英文解釈のトレーニング不足
【間違った対策】: ただ気合で長文をたくさん読もうとする。
【正しい対策】: 英文解釈専用の、少し易しめの参考書を1冊追加し、毎日5文ずつでも精読する訓練を行う。

ケース2：「夜になると集中できず、勉強が進まない」

問題: 夜21時を過ぎると、集中力が切れて勉強が手につかなくなる。
なぜ①？（なぜ集中力が切れるのか）
- → 強い眠気に襲われるから。
なぜ②？（なぜ強い眠気に襲われるのか）
- → 日中の疲れが溜まっている上に、睡眠時間も足りていないから。
なぜ③？（なぜ睡眠時間が足りていないのか）
- → 夜遅くまで勉強しようとして、就寝時間が日によってバラバラになっているから。
なぜ④？（なぜ就寝時間がバラバラになるのか）
- → 寝る直前まで、ベッドの中でスマートフォンを見てしまっているから。
なぜ⑤？（なぜスマホを見てしまうのか）
- → 「寝る前にスマホを見ることが、睡眠の質を下げ、翌日のパフォーマンスに悪影響を与える」という知識がなく、リラックスのつもりで見てしまっているから。
【根本原因】: 睡眠に関する正しい知識の不足と、就寝前の悪習慣
【間違った対策】: 気合で眠気を我慢しようとする。エナジードリンクを飲む。
【正しい対策】: 睡眠の重要性を理解し、就寝1時間前からはスマホを見ない、というルールを設ける。就寝・起床時間を固定する。

【対策編】見つかった「根本原因」への具体的な処方箋

「なぜなぜ分析」で見つかった根本原因は、多くの場合、以下の4つのタイプに分類できます。

原因が「知識不足・スキル不足」の場合

例: 「英文解釈のスキル不足」「そもそも英単語の知識が不足」
対策: その部分を補うための、具体的な学習を計画に組み込みます。必要であれば、より基礎的なレベルの参考書に戻る勇気を持ちましょう。

原因が「計画・戦略の問題」の場合

例: 「タスクの見積もりが甘かった」「自分のレベルに合わない参考書を使っていた」
対策: 自分の実力や、1日に使える時間を客観的に見直し、より現実的な計画に修正します。参考書が合わないなら、思い切って変える判断も必要です。

原因が「メンタル・心構えの問題」の場合

例: 「失敗を恐れて、難しい問題から逃げてしまう」「100%完璧にできないと、やる気を失ってしまう（完璧主義）」
対策: 目標のハードルを下げ、小さな成功体験を積むことから始めます。「8割できればOK」と考えるなど、自分を追い詰めすぎない心構えを持つことが大切です。

原因が「環境・生活習慣の問題」の場合

例: 「スマホが気になって集中できない」「睡眠不足でパフォーマンスが低い」
対策: 勉強中はスマホを別の部屋に置く、就寝時間を固定するなど、学習に集中できる環境や、最高のコンディションを維持できる生活習慣を、意識的に作り上げていく必要があります。

結論

「なぜなぜ分析」は、あなたの学習における問題を、根本から解決するための、非常に強力な自己対話の技術です。

「計画が遅れた」という目の前の問題に一喜一憂し、その場しのぎの対策を繰り返すだけでは、いつまでも同じ場所を回り続けることになってしまいます。

大切なのは、その問題の奥深くにある「本当の原因」まで、自分自身に「なぜ？」と問いかけ、掘り下げていくことです。そのプロセスは、時に自分の弱さや未熟さと向き合う、少しだけ苦しい作業かもしれません。

しかし、そこで見つかった根本原因を一つひとつ改善していくことこそが、確かな学力と、そして大学受験だけでなく、これからの人生で様々な問題を解決していくための、本質的な「問題解決能力」を育てるのです。

今、あなたが抱えている一番の悩みについて、まずは一度、「なぜだろう？」と問いかけてみることから始めてみませんか。