【共通テスト 英語】Module 1: 共通テストリーディングへの戦略的アプローチ
【本記事の目的と概要】
本モジュールは、大学入学共通テスト英語リーディングで80分という限られた時間内に得点を最大化するための、最も根幹となる戦略的思考法をインストールすることを目的とします。単なる読解テクニックの寄せ集めではなく、**「①時間配分と攻略順序」「②スキミング(概観的読解)」「③スキャニング(探索的読解)」「④設問文の分析」「⑤選択肢の構造分析」「⑥言い換え表現(パラフレーズ)の識別」**という6つのコアスキルを統合した、再現性の高い「思考のアルゴリズム」を構築します。この記事をマスターすれば、あなたは迷うことなく、常に最も効率的なルートで正答にたどり着くための羅針盤を手にすることができます。難関大合格を目指す上で不可欠な「得点力」に直結する思考プロセスを、過去問の具体例をふんだんに用いて徹底的に解説します。
1. 得点最大化のための大問別時間配分と攻略順序
1.1. 共通テストリーディングの全体像:80分との戦いを制する
- 試験の構造を理解する
- 共通テストのリーディングは、80分という制限時間内に、膨大な量の英文情報を処理し、約50問の設問に解答することが求められる試験です。
- 単純計算では1問あたり約1.6分、大問1つあたり約13分となりますが、実際には大問ごとの文章量、情報量、設問の難易度には大きなばらつきがあります。
- したがって、全大問に均等に時間を割り振る戦略は非効率であり、失点の原因となります。
- 得点を最大化するための第一歩は、各大問の特性を理解し、それに基づいた戦略的な時間配分と攻略順序を確立することです。
- 時間配分の基本原則
- 原則1:時間対効果の高い問題から処理する
- 少ない時間で確実に得点できる問題に優先的に時間を投入します。具体的には、情報検索が中心の大問1〜3や、図表が多く含まれる大問4などが該当します。
- 原則2:時間を要する問題には十分な時間を確保する
- 複雑な論理構造を持つ長文読解や、複数情報を統合する必要がある大問5、大問6には、あらかじめ時間を厚めに配分しておく必要があります。これらの大問で時間切れになることが、高得点を逃す最大の要因です。
- 原則3:見直し・予備の時間を設定する
- 試験時間ギリギリに解答を終える計画は危険です。最低でも5分、理想的には10分の「見直し時間」または「予備時間」を確保しましょう。この時間が、ケアレスミスの発見や、難問に再挑戦するための精神的な余裕を生み出します。
- 原則1:時間対効果の高い問題から処理する
1.2. 推奨される時間配分と攻略順序モデル
以下に、偏差値60以上の受験生が9割以上の得点を目指すための、標準的かつ戦略的な時間配分と攻略順序のモデルを提示します。これはあくまで一つのモデルであり、自身の得意・不得意に応じてカスタマイズすることが重要です。
- 【推奨モデル】
大問 | 目標解答時間 | 攻略順序 | 累積時間 | 主要スキル |
大問1 | 6分 | 1番目 | 6分 | スキャニング、情報検索 |
大問2 | 8分 | 2番目 | 14分 | スキャニング、Fact/Opinion識別 |
大問3 | 7分 | 3番目 | 21分 | スキャニング、時系列整理 |
大問4 | 12分 | 4番目 | 33分 | 複数情報照合、図表読解 |
大問6 | 20分 | 5番目 | 53分 | 論理構造分析、パラフレーズ |
大問5 | 17分 | 6番目 | 70分 | 物語構造読解、情報再構成 |
見直し | 10分 | 最後 | 80分 | 全体確認、マークミスチェック |
- モデルの戦略的意図
- 序盤(大問1〜3):高速処理で勢いをつける
- これらの大問は、比較的短い文章や図表から特定の情報を探し出す「情報検索型」の問題が中心です。後述するスキャニングを駆使することで、短時間での処理が可能です。
- ここで解答のペースを掴み、精神的な余裕を持つことが、後半の難問に取り組む上で極めて重要になります。例えば、令和3年度(1月16・17日実施)の大問1A のようなテキストメッセージの問題は、設問で問われていること(例:「ジュリーの依頼は何か?」)を特定し、該当箇所を素早く見つけることで、2分以内に解答することも可能です。
- 中盤(大問4):情報整理能力が問われる関門
- 大問4は、Eメールやウェブサイト、図表など、複数の異なる形式の情報を統合して解答する必要がある問題です。情報の種類が多く、整理に時間がかかるため、12分程度を確保します。
- 情報を正確に整理する能力が問われるため、焦らず、しかし効率的に取り組む必要があります。
- 終盤(大問6→大問5):最難関の長文に集中投下
- 大問6(特にB問題)は、論理的で抽象度の高い説明文・論説文が出題されることが多く、共通テストの中で最も読解力を要するパートです。語彙レベルも高く、精読が必要なため、最も長い20分を配分します。
- 大問5は、著名人の伝記や物語文などが出題され、時系列や登場人物の心情の変化を追う必要があります。大問6ほど論理の複雑さはありませんが、文章量が多く、情報を整理してプレゼンテーションノートなどを完成させる形式が多いため、17分を確保します。
- なぜ大問6を先に解くのか?:最も集中力と思考力を要する大問6を、体力がまだ残っているうちに処理するためです。疲労がピークに達する最後の時間帯に大問6を残すと、焦りから内容が頭に入らず、大量失点につながるリスクがあります。比較的ストーリーが追いやすい大問5を後に回すことで、精神的負担を軽減します。
- 最終盤(見直し):得点を確定させるための重要工程
- 残りの10分間は、解答の見直しに充てます。特に、マークミスは致命的です。問題番号と解答欄がずれていないか、必ず確認しましょう。
- 迷った問題に戻り、再度検討する時間としても活用します。一度離れてから見直すことで、新たな視点から解答の根拠が見つかることもあります。
- 序盤(大問1〜3):高速処理で勢いをつける
2. 文章の骨格を瞬時に見抜く概観的読解術(スキミング)
2.1. スキミングとは何か?:森を見てから木を見る技術
- スキミングの定義
- スキミングとは、文章の細部を読み飛ばし、全体の大意、構造、テーマを素早く把握するための読解術です。一言で言えば「拾い読み」「飛ばし読み」ですが、戦略的に行うことで、その後の精読(スキャニングや熟読)の効率を飛躍的に高めることができます。
- 目的は、本文の全内容を理解することではなく、**「何についての文章か」「どのような構成になっているか」**という地図を手に入れることです。
- なぜスキミングが重要か?
- 解答の予測と効率化:文章全体のテーマや構成を把握することで、「どのあたりに、どのような情報が書かれているか」を予測できます。これにより、設問を読んだ後、解答の根拠となる箇所を素早く特定(スキャン)できるようになります。
- 時間的・精神的余裕の創出:最初に文章の全体像を掴んでおくことで、「何が書かれているか分からない」という不安が解消され、落ち着いて問題に取り組むことができます。
- 大問の主題を問う問題への対応:大問の最後には、しばしば文章全体のタイトル、要約、筆者の主張などを問う問題が出題されます(例:令和4年度本試験 大問5 問5 )。スキミングによって大意を掴んでいれば、こうした問題に即座に対応できます。
2.2. スキミングの実践的テクニック:どこを拾い読むべきか?
共通テストの様々な文章形式において、スキミングで焦点を当てるべき箇所は決まっています。
- ① タイトル・見出し(Headings)
- タイトルは文章の主題を最も端的に示しています。例えば、令和4年度追試験の大問6Bのタイトル「A Brief History of Units of Length」 を見れば、この記事が「長さの単位の歴史」について述べたものであることが一瞬でわかります。
- 小見出し(Subheadings)も同様に重要です。例えば、令和4年度本試験の大問6Aでは、「When Does the Day Begin for You?」 というタイトルの下に、「The Main Points」「Interesting Details」 といった小見出しがあり、文章の構造を把握する手助けとなります。
- ② 図表・グラフ・写真とそのキャプション
- ビジュアル情報は、多くの情報を凝縮して伝えます。特に図表のタイトルや軸のラベル、写真のキャプションは必ず確認しましょう。
- 令和3年度(1月16・17日実施)の大問4のグラフ「Number of Visitors to Westside Aquarium」 を見れば、時間帯別の水族館の来場者数に関する情報だと分かり、関連する設問の解答範囲を予測できます。
- ③ 各パラグラフの第1文(トピックセンテンス)
- 論説文や説明文では、多くの場合、各パラグラフの第1文がその段落の主題(トピック)を提示しています。第1文だけを繋いで読むことで、文章全体の論理的な流れを把握できます。
- 例えば、令和4年度本試験の大問6Aの第2パラグラフ第1文「What makes one person a lark and another an owl?」 を読めば、この段落が「朝型・夜型の原因」について述べることが予測できます。
- ④ 冒頭と結論のパラグラフ
- 序論(Introduction)では、文章全体のテーマや問題提起がなされます。
- 結論(Conclusion)では、筆者の主張がまとめられたり、将来への展望が示されたりします。この2つを読むことで、筆者が最も伝えたかったメッセージの核心に迫ることができます。
- ⑤ ディスコースマーカー(論理展開を示す語句)
However
,Therefore
,In conclusion
,For example
などのディスコースマーカーは、話の転換点や論理関係を示します。これらの語句に注目することで、文章の展開を予測しやすくなります。
- 【スキミングの実践例:令和4年度追試験 大問6A】
- タイトルを見る:「False Memories」 。偽りの記憶に関する文章だとわかる。
- 第1パラグラフ第1文を読む:「What are memories? Most people imagine them to be something like video recordings of events in our minds.」 。記憶はビデオ録画のようなものだと一般的に思われている、という導入。
- 第1パラグラフ後半の
However
に注目:Psychologists now tell us that this is not the case. Our memories can change or even be changed.
。しかし、心理学者はそれを否定し、記憶は変わりうると言っている。これが文章の主題だと予測できる。 - 研究者の名前と引用符に注目:「According to well-known researcher Elizabeth Loftus, … “Memory works a little bit more like a Wikipedia page.”」 。ロフタスという研究者が「記憶はウィキペディアのページのようなものだ」と述べている。これは重要な比喩表現であり、後の設問で問われる可能性が高い。
- 以降のパラグラフの冒頭を拾い読み:
A study published in 1980 by Craig A. Anderson
(研究の具体例)、Why is it difficult to change our beliefs?
(理由の説明)、The case of Ignaz Philip Semmelweis
(別の事例)など、具体的な研究例や事例を挙げて論を展開していることがわかる。 - 最後のパラグラフを読む:「Understanding human nature is one of the keys to keeping your life balanced.」 。人間性の理解が重要であるという結論で締めくくられている。
3. 解答根拠をピンポイントで捕捉する探索的読解術(スキャニング)
3.1. スキャニングとは何か?:膨大な情報から宝を探す技術
- スキャニングの定義
- スキャニングとは、特定の情報(キーワード)を見つけるために、文章全体を高速で視覚的に探索する読解術です。スキミングが「森」を見る技術なら、スキャニングは「特定の木」を探す技術です。
- 目的は、文章を読むことではなく、設問で問われている特定の固有名詞、数字、日付、専門用語などをピンポイントで見つけ出すことです。
- なぜスキャニングが重要か?
- 圧倒的な時間短縮:共通テストリーディングは情報量との戦いです。全文を熟読していては到底間に合いません。スキャニングは、解答に必要な箇所だけを効率的に読み解くための必須スキルです。
- 情報検索型問題への特効薬:特に大問1〜3のように、広告、Eメール、ウェブサイト、図表などから特定の情報を抜き出す問題では、スキャニングの能力が直接得点に結びつきます。
- 正確性の向上:キーワードを頼りに該当箇所を特定することで、記憶や曖昧な理解に頼ることなく、本文の記述を直接的な根拠として解答できます。これにより、ケアレスミスや勘違いを防ぎます。
3.2. スキャニングの実践的テクニック:何を目印に探すか?
スキャニングを成功させる鍵は、**「何を探すか(キーワードの特定)」**を明確に意識することです。設問文を分析し、以下の種類のキーワードを脳にインプットしてから本文を探索します。
- ① 固有名詞 (Proper Nouns)
- 人名:
Julie
,Dr Berger
,Mr Hobbs
,Jacques Cousteau
- 地名・施設名:
Buxton Airport
,Westside Aquarium
,Sakura International Centre
,St Mark's School
- 組織名・ブランド名:
TYLER QUICK (TQ) fan club
,National Hockey League (NHL)
- これらの単語は文中でも目立ちやすく、最も強力なスキャニングの目印となります。
- 人名:
- ② 数字・日付・時間 (Numbers, Dates, Times)
- 年:
2021
,1989
,1988
- 日付:
May 10
,August 14
- 時間:
4 p.m.
,6.30 pm
- 金額:
$40
,£15
- 数量・割合:
5%
,20%
,1,300 kg
- 数字は記号として認識できるため、アルファベットの文字列よりも高速で発見できます。
- 年:
- ③ 専門用語・キーワード (Key Terms)
- 設問で使われている特徴的な名詞や、文章のテーマとなっている単語。
concussion
,sweeteners
,nano-chip
,echolocation
- これらの単語は、特定のトピックについて議論している箇所を特定するのに役立ちます。
- ④ 大文字・イタリック体・引用符など、視覚的に目立つ要素
Check it out!
のような強調表現。"tun"
のような引用符で括られた専門用語。- これらは筆者が意図的に強調している部分であり、設問で問われる可能性が高いです。
- 【スキャニングの実践例:令和3年度(1月16・17日実施) 大問3A】
- 設問:
You are departing on public transport from the airport at 2.00 pm on 15 March 2021. What is the fastest way to get to the hotel?
- 思考プロセス:
- キーワード特定:
2.00 pm
,15 March 2021
,fastest way
を脳にインプットする。 - 本文スキャン開始: まず、日付
March 2021
に関連する情報を探す。Alexの回答の中にroadworks until summer 2021
という記述を発見。これは重要情報。この道路工事により、市バスの所要時間がtakes three times as long as usual
になるとある。 - 図表スキャン: 図表 を見て、通常の所要時間を確認する。
City Bus (10 min)
とあるので、工事期間中は10 min * 3 = 30 min
かかることがわかる。 - ルート比較:
- ルート1(地下鉄):
Red Line (25 min)
+Orange Line (10 min)
+City Bus (30 min)
= 65分。またはRed Line
+Orange Line
+On foot (20 min)
= 55分。Alexの体験談から乗り換えに遅れが出る可能性もあるが(an extra five minutes
)、ここでは基本時間で計算する。 - ルート2(高速バス):
Express Bus (40 min)
+City Bus (30 min)
= 70分。またはExpress Bus
+On foot (20 min)
= 60分。
- ルート1(地下鉄):
- 時刻の制約を確認: 出発は
2.00 pm
。高速バスの時刻表Schedule
をスキャンする。Every 30 minutes
、First bus 10.00 am
、Last bus 6.30 pm
。2:00 pmに出発可能。 - 最速ルートの決定: 計算結果を比較すると、最速は「地下鉄+徒歩」の55分。
- 選択肢照合:
④By underground and on foot
が正解だと確定できる。
- キーワード特定:
- 設問:
4. 設問文の指示から解答範囲を特定する技術
4.1. 設問は「宝の地図」である
- 多くの受験生は、まず本文をすべて読んでから設問に取り組もうとしますが、これは非効率的です。共通テストのリーディングにおいては、**設問文こそが、広大な本文という海の中から解答という宝が眠る場所を指し示す「地図」**の役割を果たします。
- 設問文を先に、そして精密に分析することで、**「何を」「どこから」**探せばよいのかが明確になり、読解の目的意識が格段に高まります。これにより、無駄な読解を徹底的に排除し、解答に必要な情報だけに集中することができます。
4.2. 設問タイプ別・解答範囲の特定法
設問文の冒頭にある疑問詞(5W1H)やキーフレーズは、探すべき情報の種類と範囲を特定するための強力なヒントとなります。
- ① What / Which(何が / どれが)
- 指示: 特定の事実、物、事柄、理由などを問う。解答の根拠は、本文中に具体的に記述されていることが多いです。
- 例:
What was Julie's request?
(令和3年度 1月16・17日実施 大問1A) - 特定範囲:
Julie
の最初のメッセージ に依頼内容が直接的に書かれているはずだと予測できます。Can you bring my USB to the library?
という一文が直接的な答えとなります。 - 例:
Which is true about both performances?
(2023年度 追試験 大問1A) - 特定範囲:
both performances
という指示から、2つの公演(Palace TheaterとGrand Theater)の両方に共通する記述を探す必要があります。片方にしか当てはまらない選択肢は誤りです。表 を横断的に比較する必要があります。
- ② Why(なぜ)
- 指示: 理由や原因を問う。本文中の
because
,since
,as
,due to
,The reason is that...
といった因果関係を示すディスコースマーカーが直接的なヒントになることが多いです。 - 例:
Is this why you have made the schedule an hour and a half shorter?
(令和3年度 1月16・17日実施 大問2B) - 特定範囲: Kenのこの問いかけに対し、Dr Bergerが
The decision was made based on a 2019 police report.
と理由を明確に述べています。因果関係が明確な箇所を探すことが鍵です。
- 指示: 理由や原因を問う。本文中の
- ③ How(どのようにして、どのくらい)
- 指示: 方法、手段、程度、状態などを問う。
- 例:
How will you reply to Julie's second text message?
(令和3年度 1月16・17日実施 大問1A) - 特定範囲: ジュリーの2番目のメッセージ
You were right! I did have it. What a relief!
(「やっぱり持ってた!よかった!」)という文脈に対し、最も自然な応答を選ぶ問題です。文脈理解が求められます。 - 例:
How to Study Effectively: Contextual Learning!
(2023年度 追試験 大問4) - 特定範囲: 方法論を問うタイプの設問では、
by ...ing
(~することによって)や手順を示す表現(First
,Next
など)が解答の根拠となりやすいです。
- ④ According to … / Based on … (〜によれば)
- 指示: 解答の根拠とすべき情報源が限定されています。指示された箇所(特定の人物の発言、特定の図表など)のみを参照して解答しなければなりません。他の部分に書かれている事実は、たとえ正しくても解答の根拠にはなりません。
- 例:
Based on the judges' final average scores, which band sang the best?
(令和3年度 1月16・17日実施 大問2A) - 特定範囲:
the judges' final average scores
の表 だけを見るように指示されています。Judges' individual comments
の内容は考慮してはいけません。Singing
の列で最もスコアが高いMountain Pear
(4.9) が正解となります。
- ⑤ a fact / an opinion (事実か意見か)
- 指示: 「事実(客観的に証明可能な事柄)」と「意見(主観的な判断や感想)」を区別する能力を問います。
- 事実(Fact):
The report showed that our city has become less safe due to a 5% increase in serious crimes.
(客観的な報告内容) - 意見(Opinion):
I really think that Silent Hill will become popular!
(I think
が主観的判断を示す) - 例:
One fact from the judges' individual comments is that 8
(令和3年度 1月16・17日実施 大問2A) - 特定範囲:
judges' individual comments
の中から、客観的な事実を述べた選択肢を探します。Mountain Pear's singing was great.
(Mr Hobbs) やMountain Pear have great voices
(Ms Leigh) は複数の審査員が認めている客観的な評価(事実)と解釈できます。一方でI think it could be a big hit!
(Ms Wells) は明らかに意見です。
設問文を精密に分析する習慣は、解答の精度と速度を両立させるための生命線です。常に「何が問われているのか?」「どこを見ればよいのか?」を自問自答しながら問題に取り組む癖をつけましょう。
5. 選択肢の構造分析:正答と誤答を分ける論理的根拠の見極め方
5.1. すべての選択肢は「正解」か「不正解」に分類される
- 共通テストの選択式問題において、正解は必ず一つであり、それは本文の記述と論理的に矛盾なく合致するものです。一方で、不正解の選択肢(ダミー選択肢)は、一見すると正しそうに見えても、必ず本文の記述との間に何らかの論理的な欠陥を含んでいます。
- この「欠陥のパターン」を事前に知っておくことで、自信を持って誤りを排除し、正答を絞り込むことができます。単に「これが正しそう」という感覚的な判断から、「他の選択肢は、この論理的欠陥ゆえに誤りである。したがって、残ったこれが正解である」という消去法に基づいた確実な判断へと移行することが、高得点の鍵となります。
5.2. 誤答選択肢の典型的な製造パターン
出題者は、受験生を惑わせるために、特定のパターンに沿って誤答選択肢を作成します。これらのパターンを理解し、見抜く訓練をしましょう。
- ① 本文に記述なし (Not Mentioned)
- 選択肢の内容が、本文のどこにも書かれていないパターン。最も基本的な誤答です。しかし、常識的に正しそうな内容や、本文の内容から連想しやすい内容が使われるため、注意が必要です。
- 対策: 「本文にそう書かれているか?」を常に自問する。自分の知識や推測で判断せず、必ず本文中に直接的または間接的な根拠を探す。根拠が見つからなければ、その選択肢は誤りです。
- 例: 2023年度追試験 大問2A(スマートシューズ)の問1 で、選択肢
Cheap summer shoes
は、summer
という記述が本文にないため「記述なし」で誤りとなります。
- ② 本文の内容と矛盾 (Contradicts the Text)
- 選択肢の内容が、本文の記述と明確に反対であるか、矛盾しているパターン。
- 対策: スキャニングで見つけた該当箇所と、選択肢の内容を慎重に照合する。特に否定語 (
not
,never
) や対義語に注意する。 - 例: 令和3年度(1月16・17日実施) 大問1Bの問1 で、選択肢
③requires a $10 delivery fee
は、本文の$10 discount on your membership fee
および$4 delivery fee
と矛盾します。
- ③ 言い過ぎ・限定しすぎ (Overstatement / Overgeneralization / Too Specific)
- 本文では一部についてしか述べていないのに、選択肢では
all
,every
,always
,never
などの極端な言葉を使って全体化(言い過ぎ)しているパターン。または、逆に範囲を不当に狭めている(限定しすぎ)パターン。 - 対策: 極端な表現を含む選択肢は、まず疑ってかかる。本文が
some
,many
,often
のような穏やかな表現を使っている場合、特に注意が必要です。 - 例: 令和3年度(1月16・17日実施) 大問2Aの問3 で、選択肢
①all the judges praised Green Forest's song
は、コメント を見ると3人全員が歌を褒めているため、この場合は正しい(事実)となります。しかし、もし一人でも褒めていない審査員がいれば、このall
が原因で誤答となります。このように、極端な語は常に本文との照合が不可欠です。
- 本文では一部についてしか述べていないのに、選択肢では
- ④ 因果関係・相関関係のすり替え (Causality/Correlation Mismatch)
- 本文では単なる相関関係(AとBが同時に起こる)として述べられているものを、選択肢では因果関係(Aが原因でBが起こる)として断定したり、その逆のすり替えを行ったりするパターン。
- 対策:
because
,so
,lead to
などの因果関係を示す表現に敏感になる。本文の論理関係を正確に把握することが求められます。 - 例: 令和3年度(1月16・17日実施) 大問2Bの問1 で、Kenは活動時間の短縮を「省エネのためではないか?」と推測していますが 、Dr Bergerはそれを否定し、「安全のため」と述べています 。ここで因果関係を混同させる選択肢が作られやすいです。
- ⑤ 主語・目的語のすり替え (Subject/Object Swap)
- 本文の文の主語や目的語を、選択肢で巧妙に入れ替えるパターン。単語は同じものを使っているため、注意深く読まないと見落としやすいです。
- 対策: 誰が(S)、何を(O)、どうした(V)のか、という文の基本構造を正確に捉える。
- 例: 「AがBを助けた」という本文に対し、選択肢で「BがAを助けた」とすり替えるような単純なものから、より複雑なものまで存在します。
これらの誤答パターンを意識することで、選択肢をより分析的に見ることが可能になります。正解を選ぶプロセスは、同時に不正解を論理的に排除するプロセスでもあるのです。
6. 共通テスト特有の「言い換え表現(パラフレーズ)」識別法
6.1. パラフレーズとは何か?:同じ意味を違う言葉で表現する技術
- パラフレーズの定義
- パラフレーズとは、本文中で使われている単語、フレーズ、文を、意味を変えずに別の表現で言い換えることです。共通テストリーディングでは、設問や選択肢が本文の記述をそのまま引用することは稀であり、ほとんどの場合、何らかの形でパラフレーズされています。
- このパラフレーズを識別できるかどうかが、読解問題の正答率を左右する最も重要なスキルと言っても過言ではありません。
- なぜパラフレーズが多用されるのか?
- それは、受験生の**「表層的な単語の一致」ではなく、「意味内容の真の理解」**を測るためです。本文と同じ単語が含まれているからという理由だけで選択肢を選ぶ受験生を排除し、異なる表現であっても同じ意味内容を指していることを見抜けるかを試しています。
6.2. パラフレーズの主要パターンと攻略法
パラフレーズにはいくつかの典型的なパターンがあります。これをマスターし、本文と選択肢を比較する際の「検索モード」を切り替えられるようにしましょう。
- ① 同義語・類義語への置換 (Synonym/Similar Word Replacement)
- 最も基本的なパターン。本文中の単語が、同じまたは似た意味を持つ別の単語に置き換えられます。
- 例:
inexpensive
(高価でない) →good value for money
(コストパフォーマンスが良い)- 令和3年度(1月16・17日実施) 大問3Aの問1 では、本文の
inexpensive, and the service is brilliant
という記述が、選択肢thinks that the hotel is good value for money
に言い換えられています。これは単なる単語の置換だけでなく、複数の情報を統合した上でのパラフレーズです。
- 令和3年度(1月16・17日実施) 大問3Aの問1 では、本文の
- 例:
requires expensive repairs
(高価な修理を必要とする) →costly renovations
(費用のかかる改修)
- ② 上位概念・下位概念への変換 (Generalization / Specification)
- より具体的な表現を抽象的な言葉でまとめたり(上位概念化)、逆に抽象的な表現を具体的な例で示したり(下位概念化)するパターン。
- 上位概念化(具体→抽象)
- 本文:
helmets, gloves, and pads for the shoulders, elbows, and legs
- 選択肢:
protective equipment
(保護具)
- 本文:
- 下位概念化(抽象→具体)
- 本文:
a wide range of professionals
(幅広い専門家) - 選択肢:
a flight attendant, a chef, an actor
(客室乗務員、シェフ、俳優)
- 本文:
- ③ 品詞の転換 (Part of Speech Change)
- 動詞を名詞に、形容詞を副詞に、といったように品詞を変えて表現するパターン。
- 例:
The report showed that our city has become less safe
(動詞show
) - 選択肢:
basing his new policy on the fact that safety in the city has decreased
(名詞fact
)- ここでは、
become less safe
がsafety ... has decreased
とも言い換えられており、複数のパターンが組み合わされています。
- ここでは、
- ④ 構文の転換(能動態↔受動態など) (Syntax Change)
- 能動態の文を受動態に、またはその逆に書き換えることで、文の構造を変えるパターン。
- 例:
The farmer planned to sell the baby bull.
(能動態) - 選択肢:
The baby bull was planned to be sold by the farmer.
(受動態)
- ⑤ 肯定文↔否定文の転換 (Affirmative/Negative Inversion)
- 二重否定などを用いて、肯定的な内容を否定的な構文で、あるいはその逆で表現するパターン。
- 例:
The directions weren't clear
(道案内は分かりやすくなかった) - 選択肢:
The directions were confusing.
(道案内は混乱させるものだった)
- パラフレーズ識別のトレーニング法
- 根拠探しを徹底する:問題を解く際に、正解の根拠となる本文の箇所と、選択肢の表現を線で結びつける練習をします。
- 言い換えノートを作る:本文の表現と、それが選択肢でどのように言い換えられているかのペアをノートに書き出し、ストックしていきます。
- 同義語・反義語の語彙を増やす:日々の単語学習において、一つの単語だけでなく、その類義語や反義語もセットで覚えるように意識します。
【結論・要約】
本モジュールでは、共通テストリーディングで高得点を獲得するための、6つの統合された戦略的アプローチを詳述しました。得点最大化の鍵は、①適切な時間配分と攻略順序という全体戦略に基づき、個々の問題に対して②スキミングと③スキャニングを柔軟に使い分け、④設問分析によって読解の目的を明確化することにあります。そして最終的には、⑤誤答のパターンを熟知した上で、⑥パラフレーズを正確に識別し、本文の根拠と完全に一致する唯一の正答を論理的に導き出す能力が求められます。これらのスキルは、それぞれが独立しているのではなく、相互に連携して初めて真価を発揮します。本モジュールで提示した「思考のアルゴリズム」を繰り返し実践し、自身の血肉とすることで、どのような問題が出題されても揺らぐことのない、盤石な得点力を構築することができるでしょう。