【共通テスト 英語】Module 4: 複数情報源の統合・再構成タスク

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【本記事の目的と概要】

本モジュールでは、共通テストリーディングにおいて最も総合的な思考力が問われる「複数情報源の統合・再構成タスク」を完全攻略するための戦略と技術を詳述します。主として大問4、大問5、そして大問6の一部で出題されるこれらの問題は、単一の文章を読み解くだけでなく、Eメール、ウェブサイト、記事、図表、グラフ、メモといった形式の異なる複数の資料を横断的に読み解き、それらの情報を論理的に統合・再構成して、スケジュールやプレゼンテーションノート、ポスターなどを完成させる能力を試します。これは、現実社会で求められる情報処理能力に非常に近い、高度なスキルです。本稿では、これらの複雑なタスクを分解し、確実かつ効率的に処理するための思考アルゴリズムを、具体的な過去問演習を通して段階的に解説します。


目次

17. 情報統合問題へのアプローチ:複数資料を横断的に読み解く戦略

17.1. 情報統合問題の本質:全体像の把握と情報のハブ作り

  • タスクの全体像を掴むことが第一歩
    • 複数の資料が提示された際、いきなり一つの資料を読み始めるのは非効率です。まずは全ての資料に10〜15秒ほど目を通し、**「誰が、何のために、どのような種類の資料を使っているのか」**という全体像(ビッグピクチャー)を把握します。
    • 例えば、「AさんがBさんにメールを送り、イベントの計画を相談している。参考資料として時刻表とアンケート結果のグラフが添付されている」といった状況設定を最初に理解することで、各資料の役割と相互関係が見えてきます。
  • 情報の「ハブ」を見つける
    • 複数資料の中には、他の資料と情報を結びつける**「ハブ(拠点)」となる資料が存在します。多くの場合、それはEメールや記事などのテキスト部分**です。
    • テキスト部分には、やり取りの目的や背景、登場人物の意図や要望(「〜したい」「〜を確認してほしい」)が書かれており、それが他の図表やグラフを読み解くための「鍵」となります。

17.2. 複数情報統合のマスターアルゴリズム

  1. 超高速スキミング(全体像把握): 提示された全資料(テキスト、図、表など)のタイトルと形式をざっと見て、状況設定と各資料の役割を把握する。
  2. 設問の先読み: 解答すべきタスク(例:スケジュールの空欄補充、ポスターの完成)と設問に目を通し、最終的に何をアウトプットする必要があるのか、ゴールを明確にする。
  3. 「ハブ」資料の精読: Eメールや記事などのテキスト資料を読み込み、登場人物の意図、要望、問題点などを把握する。この際、他の資料への言及(例:「添付のグラフを見てください」「時刻表によると…」)に特に注意する。
  4. 情報のジャンプと照合: テキスト資料で得た「鍵」となる情報(例:「最も空いている時間帯」「AとBは隣接させるべきではない」)を元に、対応する図表やグラフへ移動し、必要な情報を抽出・照合する。
  5. 情報の統合と再構成: 複数の資料から得た情報を組み合わせ、設問の要求する形式(スケジュール、ノート、レイアウト図など)に再構成し、解答を導き出す。

18. スケジュール・旅程作成問題の完全攻略:時間、場所、条件の制約を整理する

18.1. 制約条件の整理が勝敗を分ける

  • スケジュールや旅程を作成する問題(例:2021年度本試験 大問4、2022年度追試験 大問4)では、**「時間」「場所」「人物」「行動」そして「制約条件」**という複数の要素を同時に管理する必要があります。
  • これらの情報を頭の中だけで処理しようとすると、混乱し、ミスを犯しやすくなります。最大の攻略法は、問題用紙の余白に簡単な表や時系列のメモを作成し、情報を可視化しながら整理することです。

18.2. スケジュール作成の思考プロセス

  • 【実践例:2021年度本試験 大問4 姉妹校生徒の訪問スケジュール】
    • 状況: 姉妹校からの訪問団(guests)を迎えるにあたり、Natsukiと教師のEmmaがメールで計画を練っている。資料として電車の時刻表と水族館の来場者数グラフがある。
    • タスク: 最終的なスケジュール案を完成させる。
  • 思考プロセスとメモ作成:
    1. 時間軸の作成: スケジュール案に 9:3013:3015:3017:00 という時間枠があるので、これを元に時間軸を引く。
    2. 確定情報のプロット:
      • Emmaのメールから、ゲストの到着は 9:20 a.m. の電車 109 と確定。
      • Natsukiのメールから、プレゼンは 10:00 a.m. から学校のホールで。
      • Emmaのメールから、昼食は boxed lunches で、場所は under the statue(学校隣の公園)。
      • Emmaのメールから、West Mall での買い物は arriving there at 5:00 p.m.
    3. 制約条件の洗い出しと適用:
      • 水族館 (Aquarium): Natsukiのメールに when it is least busy(最も空いている時に)行きたいという希望がある。→ グラフを確認すると、最も空いているのは 15:00-16:00。したがって、水族館は 15:30 の枠に入る可能性が高い。
      • 植物園 (Botanical Garden): Natsukiのメールに、教授のトークが in the early afternoon(午後の早い時間に)あると記載。したがって、植物園は 13:30 の枠が最適。
    4. スケジュールの完成:
      • 9:30 学校到着・準備
      • 10:00 プレゼンテーション
      • 12:00頃 昼食(公園)
      • 13:30 植物園へ移動・見学
      • 15:30 水族館へ移動・見学
      • 17:00 モールへ移動・買い物
    5. 選択肢の照合: この流れと一致する選択肢 ②D→B→A→C (学校→植物園→水族館→モール) を選ぶ。

19. プレゼンテーション資料・ノート完成問題の解法:原文からの情報抽出と構造化

19.1. 完成後の資料が「読むべき場所」の地図になる

  • 長い記事を読んだ上で、その要約であるプレゼン資料やノートの空欄を埋める問題(例:2021年度追試験 大問5、2022年度追試験 大問6B)は、一見すると大変そうですが、実は**完成後の資料の構成そのものが、原文のどこを読めばよいかを示す強力な「地図」**になっています。
  • 全文を闇雲に読むのではなく、空欄のあるセクションの見出しを手がかりに、原文の対応箇所をスキャニングするのが最も効率的なアプローチです。

19.2. 資料完成問題の思考プロセス

  • 【実践例:2021年度追試験 大問5 ジャック・クストーのプレゼン資料】
    • 状況: ジャック・クストーに関する長い伝記記事を読み、プレゼンスライドを完成させる。
    • タスク: スライドの空欄 30 から 38 を埋める。
    • 思考プロセス:
      • 空欄 31 (Early Career (before 1940)):
        1. 見出し分析: スライドの見出しは「初期の経歴(1940年以前)」。
        2. キーワード特定before 1940early careernaval academy など。
        3. 原文スキャン: 原文でこれらのキーワードや年代を探す。entered the French naval academy in 1930.graduating in 1933, he was training to become a pilot, when he was involved in a car accident ... This put an end to his flying career. という記述を発見。
        4. 選択肢照合Forced to give up his dream of becoming a pilot(パイロットになる夢を諦めざるを得なかった)という選択肢が、原文の記述と一致する。
      • 空欄 3235 (In the 1940s):
        1. 見出し分析: スライドの見出しは「1940年代」。出来事を時系列に並べる問題。
        2. キーワード特定1940s19431948 などの年代。
        3. 原文スキャン: 原文の第3、4パラグラフが1940年代の出来事を詳述している。
        4. 時系列整理filmed the previous year (1942) without breathing equipment → won a prize for the first French underwater documentary (1943) → made improvements to its design (Aqua-Lung) → dived to the wreck of the ... Mahdia (1948) という流れを特定し、選択肢を並べ替える。
  • このように、完成させるべき資料の構造(見出しや項目)を先に理解し、それをガイドにして原文を読むことで、膨大な情報の中から必要な部分だけを効率的に抽出できます。

20. 異なるフォーマット間の情報変換と論理的連結

  • 複数情報統合問題では、しばしば**「テキストの記述を、図や表の情報に変換する」**またはその逆の作業が求められます。
  • これは、単なる読解力だけでなく、情報を抽象化・具体化し、異なる形式の間で論理的に結びつける能力を試すものです。
  • 例1:テキスト→図(空間配置)
    • 2022年度追試験 大問4の庭造りの問題では、Rachelのメールにある Tomatoes and cabbages are enemies and should be separated.(トマトとキャベツは相性が悪く、離すべき)や beans and cabbages are friends.(豆とキャベツは相性が良い)といったテキスト情報を、庭の6区画のレイアウト図に正しく空間的に配置変換する必要がありました。
  • 例2:テキスト→グラフ(定量的関係)
    • ある商品のレビュー記事で「価格は高いが、性能は他を圧倒している」というテキスト情報があれば、それに対応するグラフは「価格の棒は高いが、性能評価の棒も最も高い」という定量的関係を示すグラフになります。
  • この変換能力を鍛えるには、普段から文章を読む際に、「この記述を図で表すとどうなるだろう?」と頭の中でイメージするトレーニングが有効です。

21. 空欄補充問題における文脈的一貫性の検証

  • スケジュールやノートの空欄を補充する際には、2つのレベルでの**一貫性(Consistency)**を検証する必要があります。
    1. 局所的一貫性(Local Consistency): 補充する語句が、その一文の中で文法的・意味的に自然につながるか。
    2. 広域的一貫性(Global Consistency): 補充する語句が、そのセクションの見出しやテーマ、さらには原文全体の趣旨と合致しているか。
  • 多くの誤答選択肢は、局所的には自然に見えても、広域的な文脈(特に見出しのテーマ)とはずれていることが多いです。
  • : 2022年度追試験 大問6Bのプラスチックリサイクルのポスター作成問題で、Types of plastic and recycling information というセクションの Description 欄を埋める場合、そのプラスチックの種類(例:Type 2 HDPE)に関する記述のみが該当します。他のプラスチックに関する記述は、たとえ事実であっても文脈に合わないため誤りです。

22. 視覚資料選択問題の攻略法:本文の記述と一致する図・グラフの特定

  • 複数情報タスクでは、本文の記述と最もよく一致する図、グラフ、イラストなどを選択肢から選ぶ問題が頻出します。
  • これは、テキスト情報を正確に読み取り、それを視覚情報と精密に照合する能力を問う問題です。

視覚資料選択の必勝アルゴリズム

  1. 設問の確認: どの図を選ぶべきかを問うているかを確認します。
  2. 根拠となるテキストの精読: その図が描写すべき内容を説明している、本文中の指示・説明箇所を特定し、精読します。ここが全ての判断基準となります。
  3. 記述の要素分解: テキストの記述を、チェックリストのように複数の要素に分解します。(例:「AはBの上にある」「CとDは隣接している」「EはFよりも大きい」など)
  4. 選択肢の逐次照合と消去: 各選択肢の図を、分解した要素リストと一つずつ照合していきます。一つでも記述と矛盾する点があれば、その選択肢は誤りとして消去します。
  5. 完全一致の選択肢の特定: 全ての記述要素と完全に一致する唯一の選択肢が正解となります。
  • 【実践例:2023年度オープン 大問1 水槽の飾り付け】
    • タスクfish from slow-moving water のための飾り付けとして最適な水槽の絵を選ぶ。
    • 根拠テキストの特定Those from slow-moving or shallow water prefer soft objects like plants.(流れの遅い水域の魚は、植物のような柔らかいものを好む)、Place tall decorations and plants at the back, and put short ones at the front.(背の高い飾りや植物は後ろに、低いものは前に置く)。
    • 要素分解:
      1. 装飾は主に plants(植物)のような soft objects(柔らかいもの)であるべき。
      2. tall plants は at the back(後ろ)。
      3. short ones は at the front(前)。
    • 選択肢照合:
      • 選択肢②は、岩(solid objects)が目立ち、植物が少ないため、要素1に反する。→ 消去。
      • 選択肢③は、背の高い植物が前面にも配置されており、要素2, 3に反する。→ 消去。
      • 選択肢④は、背の高い城が中央にあり、植物が前面にあるなど、レイアウトが指示と異なる。→ 消去。
      • 選択肢①は、植物が中心で、背の高いものが後ろ、低いものが前に配置されており、全ての要素を満たしている。→ 正解。

【結論・要約】

複数情報源を扱う問題は、共通テストの中でも特に高度な思考を要求しますが、その分解法と処理プロセスは明確です。まず全体像を掴み、テキスト情報を「ハブ」として他の資料を読み解くという基本戦略を徹底してください。スケジュール問題では制約条件の可視化、資料完成問題では完成後の構成の活用、視覚資料選択問題ではテキスト記述との逐次照合が鍵となります。これらのタスクは、一見すると複雑ですが、本モジュールで示した体系的なアプローチを実践することで、安定して、かつ迅速に解答を導き出すことが可能になります。

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