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共通テスト 試行問題 令和7年度(2025年度) 国語 現代文

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 はじめに現代文の基本姿勢として、二点のポイントを紹介しよう。

 一点目は、客観的に読む、ということである。これは、あなたの意見や主張は聞いていない、ということである。また、同時に出発点でもある。文章を読んで次の問に答えよ、というような文言で始まる現代文科目においては、回答、その全ての根拠を本文中より抽出しなければいけない。また巷で聞く、現代文を実力ではなく運、とする主張は、筆者と回答者の間にある主張の距離によるものである。これが近ければ点数は上がり、遠ければ点数は下がる。そういう意味で、学習を放棄した者にとっては運によって点数の上下する対象として映るのかもしれない。

 二点目は、採点基準より逆算する、ということである。これは、採点基準に沿って回答する、ということである。試験というのは、解く(採点)するために作られているのだから、そこには必ず採点の基準が存在する。採点基準を意識した学習を積み・回答をすることで、得点を伸ばすことが可能である。さらにいえば、試験中に採点基準をイメージし、回答できるようにしたい。採点基準は、模試であれば解答・解説の冊子に記載されているし、入試であれば(東大をはじめとする難関大に限られるが)各予備校の解答速報より共通項を探ることで確認できる。
 また、この基本姿勢は、他の教科でも同様に当てはまるものである。例えば、数学においては回答指針を示すことによって同じ計算ミスでも得点が変わることがあったり、英語において文法知識の確認が不明と理由で「意訳」による減点・不正解、がこれにあたる。

目次

第 A 問

 問題作成方針より、多角的かつ多面的な情報処理を目的として問題が作成されていることをおさえておきたい。基本的な準備としては、1.資料を読み取れるようにすること、2.選択肢の論理関係を把握できるようにすること、この2点である。
 資料の読み取りについては、基本的な用語の意味を把握することに加えて、問題の正誤から読み取れる内容・読み取れない内容を把握しておくことが重要である。特にグラフや図の読み取りに慣れていない場合、書いてある用語の意味が全て分かったとしても、結局、グラフが何を意味しているのか、グラフから抽出できる情報は何か、ということになると、分からなくなってしまう人もいるだろう。あくまでも、暗記科目ではなく、目の前の個別具体的な情報処理能力が問われている、ということを念頭におくといいだろう。
 選択肢の論理関係については、小説問題と同じように「事実(図やグラフから読み取れる内容)と事実以外(図やグラフから読み取れた結果)」を切り分け、前者に重きをおきながら回答すると良い。ただ、あくまでもイメージであることに留意されたい。また、これは資料の読み取りができていることが前提であるから、ココが間違ってくると正解することは難しい。

問1

(ⅰ)

 従来型の現代文と同じように、傍線部を要素ごとに区切り、検討する。以下、検討項目を示す。こうした検討項目を自力で認識できるようにすることが需要である。

  1. 気候変動による気温上昇は 熱ストレスを上昇させ
    • 気候変動と気温上昇の因果関係
    • 気温上昇と熱ストレス上昇の因果関係
  2. 暑熱に対して脆弱性が高い高齢者を中心に 暑熱による超過死亡が増加傾向にある
    • 高齢者が暑熱に対して脆弱性が高いという修飾関係
    • 暑熱と超過死亡増加の因果関係
  3. 気温の上昇は 感染症を媒介とする節足動物の分布域・個体群密度・活動時期を 変化させる
  4. 自然災害が発生すれば、被災者の暑熱リスクや感染症リスク、精神疾患リスク等が増加する可能性がある
    • 自然災害の発生が前提条件
    • この前提条件下において、複数のリスクが増加する可能性がある
  5. 温暖化に伴い 光化学オキシダント・オゾン等の汚染物質の増加に伴う 超過死亡者数が増加するが、それ以降は減少することが予測している
    • 温暖化、汚染物質の増加、超過死亡者数の増加、が同時発生
    • これらが減少するとの予測
解答例

1:bとe

(ⅱ)

太字部分の事実関係を確認する。

  1. 「気候変動による影響」として環境及び健康面への影響を整理し図示し、文章の内容を読み手が理解しやすいように工夫している。
  2. 気温上昇によって降水量・降水パターンの変化や海水温の上昇が起こるという因果関係を図示することによって、文章の内容を補足している。
  3. 「気候、自然的要素」と「気候変動による影響」に分けて整理することで、どの要素がどのような影響を与えたかがわかるように提示している。
  4. 「気候、自然的要素」が及ぼす「気候変動による影響」を図示することにより、特定の現象が複数の影響を生み出し得ることを示唆している。
  5. 気候変動によって健康分野が受ける複雑な影響を読み手にわかりやすく伝えるために、いくつかの事象に限定して因果関係を図示している
解答例

問2

都合上、ア〜エ、を1〜4、としている。
特に注意すべきは、正しい・誤っている・判断できない、の基準について理解することである。特に、誤っているは、誤っている情報が本文中に存在している。一方で、判断できないは、本文中に情報が存在していない。

  1. 気候変動による気温の上昇は、冬における死亡者数の減少につながる一方で、高齢者を中心に熱中症や呼吸器疾患など様々な健康リスクをもたらす。
  2. 日本の年降水量の平均は一九〇一年から一九三〇年間より一九八一年から二〇一〇年の三〇年間の方が多く、気候変動の一端がうかがえる。
  3. 台風の発生数が平均値よりも多い年は日本で真夏日・猛暑日となる日が多く、気温や海水温の上昇と台風の発生数は関連している可能性がある。
  4. 地球温暖化に対して、温室効果ガスの排出削減を目指す緩和策だけでなく、被害を回避、軽減するための健康増進のための対策も必要である。
解答例

3:1 正しい 2 誤っている 3 判断できない 4 正しい

問3

(ⅰ)

解答例

(ⅱ)

太字部分の事実関係を確認する。

  1. テーマに掲げている「対策」という表現は、「健康を守るための対策」なのか、「気候変動を防ぐための対策」なのかわかりにくいから、そこが明確になるように表現すべきだと思うよ。
  2. 第1章のbの表現は、aやcの表現とそろえたほうがいいんじゃないじゃないかな。「大気汚染物質による感染症の発生リスクの増加」とすれば、発生の原因まで明確に示すことができると思うよ。
  3. 気候変動と健康というテーマで論じるなら、気候変動に関するデータだけでなく、感染症や熱中症の発生状況の推移がわかるデータも提示できると、より根拠が明確になるんじゃないかな。
  4. 第1章で、気候変動が健康に与えるリスクについて述べるんだよね。でも、その前提として気候変動が起きているデータを示すべきだから、第1章と第2章は入れ替えた方が、流れがよくなると思うよ。
  5. 第1章から第3章は、調べてわかった事実や見つけた資料の内容の紹介だけで終わっているように見えるようけど、それらに基づいたひかるさんなりの考察も書いてみたらどうだろう。
解答例

第 B 問

問1

捨て問
 選択肢と資料の事実関係だけでは正解できない問題。文脈と選択肢表現を対応させる必要がある。本文のニュアンスを読み取る系の問題は、解釈に時間がかる可能性があるため、無理に解く必要はない。
 ただし、こうした系統の問題が捨て問なのであって、この試行問題自体の難易度は決して高くない。同程度の問題が出題された場合に備えて、準備しておく必要がある。傾向として、新形式は極端に難易度が分かれることが多いため、3年目(2027年度)くらいから、警戒する必要が出てくる。

選択肢の前半部分

  • 「このバスに乗ればいいのよね?」を使わない女子は六割近くにのぼり、
  • 「このバスに乗ればいいのよね?」を使う女子は三割程度にとどまり、

 この前半部分で戸惑う方は多いだろう。資料との整合性という視点で考えると、どちらの表現も成立してしまい、選択肢を切ることができない。当然、後半部分で1つに絞ることは不可能であるから、最終的に前半部分の整合性から判断して選択肢を決定しなければならない。
 選択肢と文脈の関係性より、「女性らしいとされていた言葉遣いがあまり用いられず、逆に男性らしいとされる言葉遣いをしている女性も少なからず存在していることが分かる」、に対応させる必要がある。また、資料から「このバスに乗ればいいのよね?」という言葉遣いは女性らしいとされていることが分かる。そのため、使っている人が少ない、あまり用いられない、という意味になる選択肢を選ぶのが良い。

解答例

問2

解説は省略

解答例

問3

一般命題から具体事例を選択する問題。私立大学でも頻出の問題形式である。

役割語が丁寧に示されているため、これに合致するものを選べば良い。通常の現代文では定義を読み取る必要があるため、難易度としては簡単であることに留意されたい。

解説は省略

解答例

問4

以下の「読み返す場合」を参考にされたい。

 基本的な解説指針として、内容一致問題に対し個別的に解説は行わない。時間をかけて読み込めば、正解に辿り着くことはできる。また、現代文科目の設問は個別性が高く、ある設問に対して理解したとことで意味はない。
 重要なのは、解法の固定化と再現性である。事前に解答指針を明確に固定し、様々な設問で実践を通して訓練を積むことで、あらゆる問題で再現することができる。
 とは言え、これだけでは学力の伸長は見込めないであろうから、解法の例を2パターン示しておく。

解法例
 早稲田・上智に関しては、時間制約と読解難易が比較的高いことから、「読み返さない場合」をオススメする。難関大の場合は、高い情報処理能力を受験生に求めているためである。
 MARCH・関関同立に関しては、時間制約と読解難易が比較的低いことから、「読み返す場合」をオススメする。中堅大の場合は、易しい課題への正確性、を求めているからである。

読み返さない場合
  1. 本文を読む前に内容一致問題があるかを確認し、あれば選択肢ごとのテーマを把握
  2. 本文を読む中で、選択肢のテーマがあれば、その都度、選択肢と本文の整合性を確認
  3. 本文を読み終えたら、ある程度、選択肢を絞り、あたりをつける。
  4. 最終確認をし、選択を決定する。
    ※この時、選択肢の確認箇所を瞬時に認識できるようにしていく必要がある。
読み返す場合
  1. 本文を読み終えたら、ある程度、選択肢を絞り、あたりをつける。
  2. 最終確認をし、選択を決定する。
    ※この時、選択肢の確認箇所を瞬時に認識できるようにしていく必要はないが、テーマレベルでは把握しておく必要がある。
解答例

2・4

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