【基礎 物理】Module 7: 電磁気学Ⅰ:静電気学と直流回路

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【本モジュールの学習目標】

これまでの物理学の世界は、主に「質量」が主役でした。質量を持つ物体が、万有引力という質量に起因する力で互いに影響を及ぼしあう、それが力学の世界観でした。このモジュールから、我々は物理学のもう一つの巨大な柱、「電磁気学」の世界へと足を踏み入れます。ここでの主役は、物質が持つもう一つの根源的な性質、「電荷」です。電荷とは何か、電荷を持つ物体は互いにどのような力を及ぼしあうのか。まず、静止した電荷がその周囲の空間にどのような影響を与えるのかを探る「静電気学」から始めます。ここでは、力学の万有引力との見事なアナロジーを頼りに、電場や電位といった「場」の概念を深く理解します。さらに、電荷を蓄える装置であるコンデンサーの原理を学びます。後半では、静止していた電荷を解放し、導線の中を定常的に流す**「直流回路」**の世界を探求します。なぜ電荷は流れるのか(電圧)、その流れ(電流)はどのように決まるのか(オームの法則)、そして複雑な回路はどのような法則(キルヒホッフの法則)に支配されているのかを解き明かします。このモジュールを終えるとき、あなたは目に見えない電気の世界を、物理法則という論理の眼で明確に捉え、分析する能力を獲得しているでしょう。


目次

1. 電荷と静電気力:クーロンの法則

電磁気学のすべての物語は、この「電荷」という概念から始まります。

1.1. 電荷:電気現象の根源

  • 電荷(Electric Charge)の発見:古代ギリシャ人が、琥珀(ギリシャ語でēlektron)を布でこすると軽い物体を引きつけることを見出したのが、電気現象の発見の始まりです。物質が、摩擦などによって帯びる電気的な性質の根源、それが電荷です。記号は q や Q を用い、単位はクーロン [C] です。
  • 二種類の電荷:実験的に、電荷には**正電荷(Positive Charge)と負電荷(Negative Charge)**の2種類が存在することが分かっています。
    • ガラス棒を絹でこするとガラス棒に生じるのが正電荷。
    • エボナイト棒を毛皮でこするとエボナイト棒に生じるのが負電荷。
    • 同種の電荷(正と正、負と負)は互いに反発し(斥力)、異種の電荷(正と負)は互いに引きつけあいます(引力)
  • 電荷の量子化と電気素量:物理学者ミリカンの油滴実験などにより、自然界に存在するすべての電荷は、ある最小単位の整数倍になっていることが分かりました。この最小単位を**電気素量(Elementary Charge)**と呼び、記号 e で表します。e≈1.602×10−19 C
    • 原子を構成する陽子は +e、電子は −e の電荷を持っています。どんな物体が持つ電荷 q も、q=Ne(Nは整数)と表されます。これを電荷の量子化と呼びます。
  • 電荷量保存則:摩擦によって電荷が生じるように見えても、それは物体間で電子が移動するだけであり、孤立した系の中で電荷が創り出されたり消滅したりすることはありません。系全体の電荷の総和は常に一定に保たれます。これを電荷量保存則と呼びます。

1.2. クーロンの法則:静電気力の定式化

  • フランスの物理学者クーロンは、ねじれ秤を用いた精密な実験により、二つの点状の電荷(点電荷)の間に働く力の大きさを定量的に明らかにしました。この法則をクーロンの法則と呼びます。二つの点電荷 q1​,q2​ の間に働く静電気力の大きさ F は、両電荷の大きさの積に比例し、電荷間の距離 r の2乗に反比例する。F=kr2∣q1​q2​∣​
  • クーロンの比例定数 k:k はクーロンの比例定数と呼ばれ、真空中でのおよその値は k≈9.0×109 N⋅m2/C2 です。
  • 万有引力とのアナロジー:この法則は、ニュートンの万有引力の法則 F=Gr2Mm​ と驚くほど似た形をしています。
    • 共通点: どちらも逆2乗法則に従う中心力である。
    • 相違点:
      1. 静電気力には引力と斥力があるが、万有引力は引力のみ
      2. 力の源が電荷質量か。
      3. 力の強さが全く異なる。クーロン定数 k は万有引力定数 G に比べて非常に大きく、静電気力は万有引力よりもはるかに強い力です。

1.3. 重ね合わせの原理

  • クーロンの法則は二つの点電荷の間の力を記述しますが、空間に3つ以上の電荷がある場合、ある一つの電荷が受ける力はどうなるでしょうか。
  • この場合、力学の力のつりあいと同様に、重ね合わせの原理が成り立ちます。ある電荷が受ける合力は、他のそれぞれの電荷から個別に受ける静電気力を、ベクトル的に足し合わせたものに等しい。F=F1​+F2​+F3​+…
  • この原理により、どんなに複雑な電荷分布から受ける力でも、原理的には計算することが可能になります。

2. 電場(電界):力が働く「場」の導入

クーロンの法則は、電荷が離れていても力を及ぼしあう「遠隔作用」の考え方ですが、現代物理学では、この力を「場」という概念で理解します。

2.1. 「場」という考え方:遠隔作用から近接作用へ

  • 遠隔作用: 物体Aが、何もない空間を飛び越えて、離れた物体Bに直接力を及ぼすという考え方。
  • 近接作用(場の理論):物理学者ファラデーによって導入された、より洗練された考え方です。
    1. まず、電荷 Q は、それ自身が存在するだけで、周囲の空間の性質を変化させます。この電荷によって性質が変化した空間を**電場(Electric Field)**と呼びます。
    2. 次に、その電場の中に別の電荷 q を置くと、電荷 q は、自分がいるその場所の電場から力を受けます。
  • 力は空間を飛び越えるのではなく、電荷→電場→電荷という、局所的な(近接した)相互作用の連鎖によって伝わると考えます。この「場」の概念は、電磁気学だけでなく、相対性理論や量子力学においても中心的な役割を果たします。

2.2. 電場の定義:E=F/q

  • 電場の定義:電場とは、その場所に+1Cの試験電荷(Test Charge)を置いたときに、その電荷が受ける静電気力として定義されます。
    • ある点に電荷 q を置いたときに力 F を受けるならば、その点の電場 E は、E=qF
  • 単位: 電場の単位は [N/C](ニュートン毎クーロン)です。
  • 電場中の電荷が受ける力:この定義式を書き換えれば、電場 E の中に置かれた電荷 q が受ける力 F は、F=qE
    • q が正電荷なら、力 F は電場 E と同じ向き。
    • q が負電荷なら、力 F は電場 E と逆の向き。
  • 点電荷が作る電場:電荷 Q から距離 r の点に +1C の電荷を置くことを考えると、その点が受ける力(=電場の大きさ)はクーロンの法則から、E=kr2∣Q⋅1∣​=kr2∣Q∣​
    • 向きは、Q が正なら放射状に湧き出す向き、Q が負なら吸い込む向きです。

2.3. 電気力線:電場を視覚化するツール

  • 電場は目に見えませんが、その様子を視覚的に理解するためにファラデーが考案した仮想的な線が電気力線です。
  • 電気力線の描き方のルール:
    1. 向き: その点での電場の向き(正電荷が力を受ける向き)に矢印を引く。
    2. 始点と終点: 正電荷から湧き出し、負電荷に吸い込まれる。または無限遠まで伸びる/無限遠から来る。
    3. 密度: 電気力線の密度が、その場所の電場の強さを表す。線が密なところほど電場が強く、疎なところほど電場が弱い。
    4. 性質:
      • 途中で途切れたり、交差したりしない。
      • 異なる電気力線が同じ電荷から出て同じ電荷に入ることはない。
      • 導体の表面からは必ず垂直に出入りする。

3. 電位:電気的な「高さ」の導入

力学において、重力がする仕事から「位置エネルギー」や「高さ」を定義したように、静電気学でも、静電気力がする仕事から「電位」という、電気的な位置エネルギーに対応する概念を導入します。

3.1. 静電気力による仕事と位置エネルギー

  • 静電気力は、仕事が経路によらない保存力です。
  • したがって、静電気力に対しても位置エネルギー U を定義することができます。
  • 電場 E の中で、電荷 q をある点Aから点Bまで動かすとき、静電気力がする仕事 WAB​ は、UA​−UB​ となります。
  • 一様な電場 E の中で、電場に沿って距離 d だけ電荷 q を動かす場合、静電気力がする仕事は W=(qE)dであり、位置エネルギーは qEd だけ減少します。

3.2. 電位の定義:V=U/q

  • 位置エネルギー U は、そこにある電荷 q に依存する量です。しかし、電場がそうであったように、電荷 q によらない、空間そのものの性質としてエネルギー的な状態を記述したいと考えます。
  • そこで、電位(Electric Potential)V を、その場所に+1Cの電荷を置いたときに、その電荷が持つ静電気力による位置エネルギーとして定義します。V=qU​
  • 単位: 電位の単位はボルト [V] です。(1 V=1 J/C)
  • 電位と位置エネルギーの関係:電位 V の点に電荷 q を置いたとき、その電荷が持つ位置エネルギー U は、U=qV
  • 点電荷が作る電位:電荷 Q から距離 r の点の電位は、V=krQ​
    • 電場と異なり、電位はスカラー量であり、符号を持ちます。複数の電荷が作る電位は、単純な代数和で計算できます。
  • 電位差(電圧):二点間の電位の差を電位差または**電圧(Voltage)**と呼びます。電荷 q を電位差 ΔV のある二点間で動かすとき、静電気力がする仕事 W は W=qΔV となります。

3.3. 電位と電場の関係:V=Ed

  • 電場と電位は、同じ電気的な場を、それぞれ「力的側面」と「エネルギー的側面」から見たものであり、密接に関係しています。
  • 一様な電場 E の中で、電場の向きに沿って距離 d だけ離れた二点間の電位差 V は、V=Ed
  • 意味:
    • この関係は、電場とは、電位が最も急激に減少する方向とその変化率である、ということを示しています。
    • 電場の単位 [N/C] は、この式から [V/m] と等価であることが分かります。
    • 電気力線は、電位が最も急に低くなる方向を向いている、と解釈できます。

3.4. 等電位面

  • 空間の中で、電位が等しい点を連ねてできる面を**等電位面(Equipotential Surface)**と呼びます。
  • 力学における「等高線」のようなものです。
  • 性質:
    1. 等電位面に沿って電荷を動かすとき、仕事はゼロである。
    2. 電気力線は、必ず等電位面と垂直に交わる。
    3. 等電位面が密に分布しているところほど、電場が強い。

4. コンデンサー:電荷とエネルギーを蓄える装置

4.1. 導体と不導体(誘電体)

  • 導体(Conductor): 内部に自由に動ける電子(自由電子)を多数持ち、電気をよく通す物質。例:金属。
  • 不導体(Insulator)または誘電体(Dielectric): 自由電子がほとんどなく、電気をほとんど通さない物質。例:ゴム、ガラス、純水、空気。

4.2. コンデンサーの原理と電気容量 C=Q/V

  • コンデンサー(Capacitor)の定義:二枚の導体板を、互いに接触しないように近接させて配置し、電荷と、それに伴う静電エネルギーを蓄えることができるようにした電子部品。
  • 原理:一方の導体板に電荷 +Q を与え、もう一方に −Q を与えると、両極板間に電位差 V が生じます。このとき、蓄えられる電荷 Q は、電位差 V に比例します。Q=CV
  • 電気容量(Capacitance) C:この比例定数 C を電気容量と呼び、そのコンデンサーが「どれだけ電荷を蓄えやすいか」を示す指標です。
    • 単位はファラッド [F] です。
    • 電気容量は、コンデンサーの形状(極板の面積や間隔)、そして極板間の物質(誘電体)の種類によって決まります。

4.3. 平行板コンデンサーの電気容量

  • 面積 S の二枚の金属板を、距離 d だけ離して平行に置いた平行板コンデンサーを考えます。
  • 極板間に電荷 ±Q を与えると、極板間の電場は一様になり、その強さは E=ϵ0​SQ​ となります(ϵ0​ は真空の誘電率と呼ばれる定数)。
  • 極板間の電位差は V=Ed=ϵ0​SQd​。
  • C=Q/V の定義に代入すると、C=ϵ0​dS​
  • 誘電体の挿入:極板間に、比誘電率 ϵr​ の誘電体を挿入すると、電気容量は ϵr​ 倍になります。C=ϵr​ϵ0​dS​

4.4. コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー

  • コンデンサーを充電する過程は、電荷を電位差に逆らって運ぶ過程であり、外部から仕事をする必要があります。この仕事が、静電エネルギーとしてコンデンサーに蓄えられます。
  • 最終的に電荷 Q、電位差 V まで充電されたコンデンサーに蓄えられる静電エネルギー U は、U=21​QV
    • 導出: 充電過程のQ-Vグラフ(Q=CVの直線)の下の面積が、充電に要した仕事、すなわち蓄えられたエネルギーに相当します。三角形の面積なので 21​QV となります。
  • Q=CV の関係を用いると、エネルギーの式は様々に書き換えられます。U=21​QV=21​CV2=2CQ2​

5. 電流・電圧・抵抗:オームの法則

ここからは、静止していた電荷が動き出す「動電気」の世界、すなわち回路理論の基礎を学びます。

5.1. 電流:電荷の定常的な流れ

  • 電流(Electric Current)の定義:導体のある断面を、単位時間あたりに通過する電荷の量。記号は I を用い、単位はアンペア [A] です。(1 A=1 C/s)
  • ミクロな視点:導体内の自由電子は、電場から力を受けて動き出しますが、陽イオンに衝突しながら進むため、全体としてはある平均的な速度(ドリフト速度)で移動します。この電子の流れが電流の正体です。
  • 電流の向き:歴史的な経緯から、正電荷の流れる向きを電流の向きと約束します。したがって、実際の担い手である電子の運動の向きとは逆になります。

5.2. 電圧:電流を流す「駆動力」

  • 電圧(Voltage)の定義:回路中の二点間の電位差のこと。単位はボルト [V]。
  • 役割:導体の両端に電圧をかけると、導体内部に電場が生じます。この電場が、自由電子を動かし、電流を流す駆動力となります。
  • 電圧は、しばしば水の流れにおける「水位差」や「圧力差」に例えられます。水位差があるから水が流れるように、電位差があるから電流が流れるのです。電池や電源は、この電位差を継続的に作り出すポンプのような役割を果たします。

5.3. 電気抵抗とオームの法則 V=IR

  • 電気抵抗(Electrical Resistance):電流の流れにくさを表す量。記号は R、単位はオーム [Ω]。
  • オームの法則:多くの導体(金属など)では、流れる電流 I は、かけられた電圧 V に比例するという、極めて単純な関係が成り立ちます。V=IRまたはI=RV​
  • この法則は、ミクロな視点から見ると、導体内の電子がイオンと衝突しながら進む様子を、マクロな量 V,I,R で記述したものと解釈できます。

6. 直流回路の解析:キルヒホッフの法則

オームの法則は一本の抵抗についての法則ですが、複数の抵抗や電源が複雑に組み合わさった回路全体を解析するには、より普遍的な法則が必要です。

6.1. オームの法則の限界とキルヒホッフの法則の必要性

  • 複雑な回路では、どこにどれだけの電流が流れるか、各部分の電圧はいくらか、などをオームの法則だけで求めるのは困難です。
  • ドイツの物理学者キルヒホッフは、どんなに複雑な回路でも成り立つ、二つの基本法則を発見しました。

6.2. 第一法則(電流則):電荷量保存則の現れ

回路中の任意の接続点(分岐点)において、流れ込む電流の総和と、流れ出す電流の総和は等しい。

∑Iin​=∑Iout​

  • 法則の本質:これは、電荷量保存則が回路において現れたものです。接続点で電荷が溜まったり消えたりすることはないので、入ってきた分はすべて出ていかなければならない、という当たり前の事実を定式化しています。

6.3. 第二法則(電圧則):エネルギー保存則の現れ

回路中の任意の閉じたループ(閉路)を一周するとき、電位の上昇(起電力)の総和と、電位の下降(電圧降下)の総和は等しい。

∑(起電力)=∑(電圧降下)

  • 法則の本質:これは、エネルギー保存則が回路において現れたものです。閉路を一周して元の点に戻れば、電位も元に戻るはずです(電位は場所だけで決まるため)。したがって、一周の間の電位の上がり下がりは、合計でゼロにならなければなりません。
  • 起電力は電池などの電源による電位の上昇、電圧降下は抵抗による電位の下降(V=IR)を指します。

6.4. 法則を用いた回路解析の実際

  1. 各部分を流れる未知の電流を、向きを仮定して文字で置く。
  2. 回路内の接続点を選び、第一法則の式を立てる。
  3. 回路内の独立な閉路を選び、第二法則の式を立てる。
  4. 未知数の数だけ方程式が立ったら、それらを連立させて解く。
  5. 計算の結果、電流が負の値になれば、最初に仮定した向きが逆だったことを意味する。

7. 抵抗で消費されるエネルギー

電流が抵抗を流れるとき、電気的なエネルギーは熱エネルギーに変換されます。

7.1. 抵抗率と電気抵抗

  • 抵抗率(Resistivity):電気抵抗 R は導体の形状(長さ、断面積)に依存しますが、抵抗率 ρ(ロー)は、物質の種類と温度で決まる、物質固有の「電気の通しにくさ」です。単位は [Ω・m]。
  • 長さ L、断面積 S の導体の電気抵抗 R は、R=ρSL​
  • 抵抗率は温度に依存し、多くの金属では温度が上がると抵抗率も大きくなります。

7.2. ジュール熱:電流による発熱現象

  • 電流が抵抗を流れるとき、自由電子が導体中の陽イオンと衝突を繰り返し、その運動エネルギーをイオンに与えます。これによりイオンの熱振動が激しくなり、導体が熱を発します。この現象をジュール熱と呼びます。
  • 時間 t の間に抵抗で発生するジュール熱(熱量)QJ​ は、QJ​=VIt
    • 導出: 電荷 q=It が電位差 V の区間を移動するとき、失う電気的エネルギーは U=qV=(It)V=VIt。この失われたエネルギーがすべて熱に変わったと考える。

7.3. 電力:単位時間あたりのエネルギー消費

  • 電力(Electric Power):単位時間あたりに消費される電気エネルギーのこと。単位は仕事率と同じワット [W]。
  • 時間 t で消費するエネルギーが WE​=VIt なので、電力 P は、P=tWE​​=VI
  • オームの法則 V=IR を用いると、抵抗で消費される電力は様々に書き換えられます。P=VI=I2R=RV2​
  • 家庭で支払う電気料金は、この電力 [kW] に使用時間 [h] を掛けた電力量 [kWh] に基づいて計算されています。

【Module 7 まとめ】

本モジュールでは、電磁気学の広大な領域の第一歩として、静止した電荷の世界(静電気学)と、定常的に流れる電荷の世界(直流回路)を探求しました。

  1. 静電気学の基礎: 新たな物理量「電荷」を導入し、電荷間に働く力が万有引力と酷似したクーロンの法則に従うことを見ました。そして、力が直接作用するのではなく、電荷がまず周囲に電場を作り、その場が他の電荷に力を及ぼすという、現代物理学の根幹をなす「」の概念を学びました。
  2. エネルギー的側面: 力学とのアナロジーから、静電気力による位置エネルギーと、それに基づく電気的な高さである「電位」を定義しました。電場が力の側面、電位がエネルギーの側面から同じ現象を記述していることを理解し、電荷とエネルギーを蓄えるコンデンサーの原理と性質を解析しました。
  3. 直流回路の基本法則: 静電気学で確立した電位の差(電圧)が駆動力となり、電荷の定常的な流れである電流が生まれることを見ました。そして、多くの物質で電圧、電流、抵抗の間に成り立つオームの法則を学びました。
  4. 回路解析の普遍法則: どんなに複雑な回路でも、その根底には二つの大原則、すなわち**電荷量保存則(キルヒホッフの第一法則)エネルギー保存則(キルヒホッフの第二法則)**が流れていることを理解しました。これらの法則が、回路を解析するための最も強力で普遍的なツールとなります。
  5. 電気エネルギー: 電流が回路を流れることで、電気エネルギーがジュール熱として消費されたり、仕事に変換されたりする様子を、電力という概念を通して定量的に扱いました。

静電気学で学んだ「場」や「電位」の概念は、この後の電磁気学全体の基礎となります。そして、直流回路で学んだ電流や抵抗の考え方は、現代社会を支える電気技術の根幹です。

次のModule 8「電磁気学Ⅱ」では、いよいよ電気と磁気のダイナミックな関係に踏み込みます。本モジュールで学んだ「電流」、すなわち動いている電荷が、実はその周りに磁場を作り出すことを見ます。そして、その磁場がまた別の電流に力を及ぼし、さらには変化する磁場が電場を生み出す(電磁誘導)という、電気と磁気の深く美しい相互作用の世界を探求していきます。

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