【基礎 英語】モジュール8:態と情報構造

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目次

本モジュールの目的と構成

英文読解において、態(voice)の理解は、「能動態と受動態の書き換え」という機械的な操作の習得に留まらない。態とは、文の情報構造を決定し、談話の流れを制御する文法装置である。同一の事態を表す場合であっても、能動態と受動態の選択によって文の焦点(focus)が変化し、段落全体の論理展開が影響を受ける。受動態を単に「be動詞+過去分詞」という形式として処理するのではなく、なぜその文で受動態が選択されているのか、それが文章全体の情報構造の中でどのような機能を果たしているのかを原理的に理解する必要がある。態の選択は恣意的なものではなく、談話における情報の提示順序、旧情報と新情報の配置、主題の連続性といった高度な語用論的原理に支配されている。特に学術的な文章や論理的な評論文では、受動態が客観性や論理性を確立するための主要な手段として機能しており、その意図を正確に読み取ることが不可欠である。このモジュールは、態を情報構造を構築するための戦略的なツールとして体系的に理解し、複雑な英文における態の機能を正確に把握する能力を確立することを目的とする。

本モジュールは以下の4つの層で構成される:

  • 統語:文構造の理解

能動態と受動態の統語的な対応関係を明確にし、受動態の形成規則と制約を確立する。完了形や進行形、法助動詞を含む複雑な受動態の構造や、二重目的語構文における受動態のバリエーションを分析し、正確な文構造の把握を可能にする。

  • 意味:態と意味の関係

態の選択が文の意味内容にどのような影響を与えるかを分析する。動作主(agent)の顕在性が意味解釈に与える影響や、受動態が含意する責任の所在、視点の違いによる事態の概念化の差異を理解する。

  • 語用:態と情報構造

態の選択が情報構造(information structure)に及ぼす影響を理解する。英語の「旧情報先出・新情報後出」の原則や「文末焦点」の原則に基づき、なぜ特定の文脈で受動態が選択されるのかを論理的に説明できる能力を養う。

  • 談話:態と談話の結束性

複数の文が連鎖するパラグラフやテキスト全体において、態がどのように談話の結束性(cohesion)に寄与するかを理解する。主題の維持や情報の連鎖を確保するための態の選択戦略を習得する。

このモジュールを修了すると、複雑な受動態構文を正確に分析し、能動態との対応関係を即座に把握することが可能になる。また、文脈に応じてなぜ受動態が使われているのかを、情報構造や談話戦略の観点から論理的に説明できるようになる。長文読解において、態の転換が示す視点の移動や焦点の変化を敏感に察知し、筆者の意図や強調点を正確に読み取る能力が確立される。さらに、英作文において、単に文法的に正しいだけでなく、情報の流れが自然で読みやすい文章を構築するために、適切な態を選択・運用することが可能になる。これらの能力は、難関大学の入試問題における高度な読解や表現において、決定的な差を生む基盤となる。

統語:文構造の理解

態(voice)とは、動詞が表す行為や状態と、その主語との関係を示す文法範疇である。英語には能動態(active voice)と受動態(passive voice)の二つの態が存在し、これらは同一の事態を異なる視点から構造化する手段を提供する。能動態では動作を行う主体(動作主)が主語の位置を占め、動作の対象(被動者)が目的語の位置を占める。一方、受動態ではこの関係が逆転し、被動者が主語の位置に昇格し、動作主は任意の前置詞句として表されるか、あるいは文から削除される。この統語的な操作は、単なる語順の入れ替えではなく、文の階層構造や格付与の仕組みに関わる根本的な変化を伴う。受動態の形成には、動詞の種類、目的語の性質、完了形や進行形との結合など、様々な統語的制約が存在する。この層では、能動態と受動態の統語的対応関係を詳細に分析し、複雑な動詞句構造における受動態の形成規則を体系的に確立する。正確な統語知識は、後続の意味層や語用層における情報構造の分析を行うための不可欠な前提となる。

1. 受動態の基本構造と統語変換

受動態の学習において、その出発点となるのは、能動態と受動態の間に存在する規則的な統語的対応関係の理解である。多くの学習者は「目的語を主語にし、be動詞+過去分詞にする」という操作を機械的に暗記しているが、この操作が文の構造にどのような変化をもたらし、なぜそのような変化が必要なのかを深く理解しているケースは稀である。受動態の形成は、動詞が持つ項(argument)の配置転換であり、格の付与や意味役割の再配置を伴う、原理に基づいた統語プロセスである。

この原理的な理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、能動態から受動態への変換における構成素の移動と形態変化の規則を正確に記述できる。第二に、受動態における動作主の表示(by句)の統語的地位と、省略可能な条件を論理的に判断できる。第三に、受動態が可能な動詞と不可能な動詞を識別し、その理由を統語論的に説明できる。

能動態と受動態の統語的対応の理解は、次の記事で扱う完了形や進行形を含む複雑な受動態の分析へと直結する。この最初の記事での基礎的な理解が、態に関する全ての学習の出発点となる。

1.1. 能動態から受動態への構造変換原理

受動態とは、能動態の目的語(Object)を主語(Subject)の位置に昇格させ、動詞(Verb)を「be動詞+過去分詞」の形式に変換する統語操作である。これは、文の主題(トピック)として提示したい要素が、能動態では目的語の位置に来てしまう場合に、その要素を文頭の主語位置に配置し直すための重要なメカニズムである。なぜなら、英語はSVOという語順が基本であり、文頭の主語がその文の主題を示すという強い傾向を持つからである。一般に「能動態と受動態は意味が同じで形が違うだけ」と理解されがちである。しかし、この理解は主題化の機能を無視している点で本質的ではない。受動態化によって動詞は目的語に格を与える能力を失い、本来の目的語であった名詞句は、格を得るために主語の位置へ移動せざるを得なくなる。この一連のプロセスが、受動態構文の根底にある統語的な原理である。

この原理から、受動態を形成・分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:能動態の文における目的語を特定する。これが、文の新たな主題として受動態の主語になる要素である。

手順2:動詞の時制と相(アスペクト)を確認し、それに対応するbe動詞の形態を決定する。本動詞は過去分詞形にすることで、新たな主語が動作を受ける側であることを明示する。

手順3:能動態の主語であった動作主を、「by+目的格」の形の付加詞句として文末に配置する。文脈上、動作主が重要でない、あるいは自明である場合は、この句を省略する。

例1:A series of controlled experiments conclusively refuted the prevailing hypothesis.
→ 目的語 “the prevailing hypothesis” が新主語となる。動詞 “refuted” は過去形なので “was refuted” に変換する。
→ 結果:The prevailing hypothesis was conclusively refuted by a series of controlled experiments.
→ 「通説であった仮説」という被動者が主題となり、それを覆した「一連の統制実験」という動作主が文末焦点に置かれる構造である。

例2:The organization will implement a new set of guidelines to ensure ethical compliance.
→ 目的語 “a new set of guidelines” が新主語となる。動詞 “will implement” は未来形なので “will be implemented” に変換する。
→ 結果:A new set of guidelines will be implemented (by the organization) to ensure ethical compliance.
→ 新たに導入される「ガイドライン」が主題として前景化され、組織という動作主は背景化されている。

例3:Recent archaeological findings have fundamentally challenged our understanding of early human migration.
→ 目的語 “our understanding…” が新主語となる。動詞 “have challenged” は現在完了形なので “has been challenged” に変換する。
→ 結果:Our understanding of early human migration has been fundamentally challenged by recent archaeological findings.
→ 「我々の理解」という抽象的な被動者を主題に据えることで、その理解が揺らいでいるという状況に焦点が当たる。

例4:The committee unanimously approved the controversial amendment after lengthy deliberation.
→ 目的語 “the controversial amendment” が新主語となる。動詞 “approved” は過去形なので “was approved” に変換する。
→ 結果:The controversial amendment was unanimously approved (by the committee) after lengthy deliberation.
→ 「物議を醸した修正案」という、議論の対象であったものが主題となることで、その承認という結果に焦点が移行する。

以上により、受動態の形成は単なる語順変更ではなく、主題化と格付与という統語的原理に基づいた必然的な操作であることが理解できる。

1.2. 動作主を表すby句の統語的地位と省略

受動態において、能動態の主語であった動作主は、通常「by+目的格」の形の付加詞句として現れる。このby句は文の必須要素ではなく、省略が可能である。この省略の可否は、文法的に任意に決まるのではなく、動作主が持つ情報の重要性に依存する。なぜなら、by句を省略するという操作は、動作主の情報を背景化し、文の焦点を被動者とその状態変化に完全に集中させるという、明確な語用論的機能を持つからである。「誰が」行ったかよりも「何が」なされたかを強調したい場合、by句は省略される。特に、動作主が不特定多数(people)、文脈上自明、あるいは全く重要でない情報である場合、by句の省略が積極的に行われる。さらに、動作主を意図的に隠蔽したい、責任の所在を曖昧にしたいという文脈でも、省略は戦略的に用いられる。

この原理から、by句を省略するか否かを判断するための具体的な手順が導かれる。

手順1:動作主が、文脈において新情報か旧情報かを判断する。初めて登場する重要な情報であれば、by句として文末に配置し、焦点を当てる。

手順2:動作主が不特定多数(people, they)や、一般的な専門家(scientists, researchers)などを指す場合、情報は冗長であるため省略する。

手順3:動作主が文脈から容易に推測可能であるか、あるいは全く重要でない場合、省略することで文を簡潔にし、被動者への焦点を明確にする。

手順4:動作主を意図的に隠蔽したい、あるいは責任の所在を曖昧にしたいという文脈では、省略が戦略的に用いられることを認識する。

例1:The theory of general relativity was first proposed by Albert Einstein in 1905.
→ 動作主 “Albert Einstein” は極めて重要な新情報であるため、by句として明示され、文末焦点が当てられている。この理論を誰が提唱したかという情報こそが、この文の核心である。

例2:It is widely believed that the universe is expanding.
→ 動作主(believeする人々)は不特定多数であるため、by句(by people / by scientists)は完全に省略されている。焦点は「宇宙が膨張しているということ」という命題内容にある。

例3:My wallet has been stolen.
→ 動作主(泥棒)は不明であり、明示することができない。焦点は「財布が盗まれた」という事実そのものにあり、被害を訴える文として機能している。

例4:The final decision will be made tomorrow.
→ 動作主(決定を下す人、例えば委員会や上司など)は文脈上自明であるか、あるいは重要でない。焦点は「決定が明日なされる」という点に絞られ、意思決定のプロセスよりも結果の時期が強調されている。

例5:Mistakes were made during the implementation phase.
→ 政治的・官僚的な文脈で頻出する表現である。誰が過ちを犯したのかを明示せず、事実のみを報告することで、特定個人への責任追及を回避する修辞的効果がある。

以上により、by句の表示・省略は、文の情報構造を制御し、焦点の配分を決定する戦略的な選択であることが理解できる。

2. 受動態の形成を規定する動詞の特性

すべての動詞が自由に受動態になれるわけではない。受動態の形成可否は、動詞が「他動詞であること」を必須条件とするが、他動詞であれば必ず受動態が可能というわけでもない。受動態化の可否は、動詞が持つ意味的特性、すなわち、その動詞が「動作・作用」を表すのか、それとも「状態・関係」を表すのかに深く依存している。この区別を理解することは、非文法的な受動態の生成を避け、自然で正確な英語を運用するための鍵となる。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、他動詞を動作動詞と状態動詞に分類し、それぞれの受動態化の可能性を論理的に判断できる。第二に、受動態にできない状態動詞(have, resemble, lack 等)を識別し、その理由を動詞の意味特性から説明できる。第三に、by以外の前置詞を伴う受動態的な表現を、単なる暗記ではなく、動詞と前置詞の慣用的な結びつきとして体系的に理解できる。

動詞の特性に基づく受動態の制約を学ぶことで、文法規則を、その背後にある意味的な動機から捉え直すことが可能になる。

2.1. 動作動詞と状態動詞の区別と受動態化

受動態は、本質的に「動作や作用が及ぼされる」という視点を表す構文である。したがって、主語から目的語への明確な作用や影響を含意する「動作動詞」(例: build, write, analyze, destroy)は、自然に受動態を形成することができる。なぜなら、これらの動詞が表す事態には、作用を及ぼす「動作主」と、その作用によって影響を受けたり変化したりする「被動者」という非対称的な関係が存在するからである。受動態は、この被動者の視点から事態を描写するのに適した形式である。一方、「状態動詞」(例: have, resemble, cost, lack, fit, suit)は、目的語を取る他動詞であっても、受動態にすることはできないか、極めて不自然となる。これは、これらの動詞が表す所有、類似、費用、欠如といった概念が、動作主から被動者への一方向的な「作用」ではなく、二者間の静的な「関係」や「状態」を示すに過ぎないため、視点を反転させる受動態化の動機を欠くからである。

この原理から、ある他動詞が受動態を形成できるか否かを判断する具体的な手順が導かれる。

手順1:対象となる動詞が、目的語に対して具体的な作用、影響、変化を引き起こす「動作」を表すか、それとも単なる「状態」や「関係」を記述するかを判断する。進行形(-ing形)に自然にできるかどうかは、動作動詞であるかの一つの目安となる。

手順2:動詞が「動作」を表す場合、受動態化は可能であると判断する。

手順3:動詞が「状態」や「関係」を表す場合、受動態化は不可能であると判断する。

例1:The research team conducted a thorough analysis of the experimental data.
→ “conduct” は「分析を行う」という明確な動作を表すため、受動態が可能である。
→ 結果:A thorough analysis of the experimental data was conducted by the research team.

例2:The new evidence entirely lacks scientific credibility.
→ “lack” は「〜を欠いている」という状態を表す。進行形 “lacking” にもなりにくいため、典型的な状態動詞である。
→ 結果:“Scientific credibility is entirely lacked by the new evidence.” という受動態は非文法的である。

例3:The renowned architect resembles his influential predecessor in many fundamental ways.
→ “resemble” は「〜に似ている」という静的な関係を表す。二者間の類似性は、一方から他方への作用ではない。
→ 結果:“His influential predecessor is resembled by the renowned architect.” という受動態は非文法的である。

例4:The ambitious project will cost the government hundreds of millions of dollars.
→ “cost” は「費用がかかる」という関係性を表す。費用という概念は、動作主から被動者への作用ではない。
→ 結果:“The government will be cost hundreds of millions of dollars.” や “Hundreds of millions of dollars will be cost to the government.” という受動態は非文法的である。

例5:The new uniform doesn’t fit most of the employees properly.
→ “fit” は「サイズが合う」という状態を表す。
→ 結果:“Most of the employees aren’t properly fitted by the new uniform.” という受動態は、この意味では不自然である(別の意味 “be fitted with” は可能)。

以上により、動詞の意味的特性に基づいて受動態化の可否を論理的に判断し、非文法的な表現を回避することが可能になる。

2.2. by以外の前置詞を伴う受動態の用法

受動態において動作主や原因を表す前置詞は通常 by であるが、特定の動詞、特に話者の感情や心理状態を表す動詞の受動態では、by以外の前置詞(at, with, in, of, about など)が慣用的に用いられる。これは、これらの表現が単なる動作の受け身というよりも、結果として生じた「心理状態」を描写する形容詞的な性質を強く帯びるためである。なぜ by ではなく他の前置詞が選ばれるのかと言えば、前置詞はそれぞれ核となる空間的・概念的イメージ(at: 点・方向、with: 付帯・随伴、in: 内部空間・領域)を持っており、動詞と結びつくことで特定の心理状態の原因や対象をより精密に表現するからである。「〜によって驚かされる」という動作のプロセスよりも、「〜という点に驚いている」という結果状態を表すために at が選択される、というように、各前置詞の選択には意味的な必然性が存在する。

この原理から、by以外の前置詞を伴う受動態を解釈・運用するための具体的な手順が導かれる。

手順1:受動態で用いられている動詞が、感情・心理状態(surprise, interest, satisfy, disappoint, please, worry など)を表すものか確認する。

手順2:用いられている前置詞の核心的な意味と、それが動詞と結びついてどのような心理状態を表しているかを分析する。

手順3:これらの「be動詞+過去分詞+特定前置詞」の組み合わせを、一つのまとまった慣用句(イディオム)として認識し、記憶する。

例1:The unexpected result of the experiment surprised the researchers.
→ “be surprised at” は、ある一点の出来事やニュース(at)に対する驚きを表す。atは注意が向けられる「点」を示す。
→ 結果:The researchers were surprised at the unexpected result of the experiment.

例2:Thick fog covered the entire valley throughout the morning.
→ “be covered with” は、何か(with)で表面が覆われている状態を表す。withは付帯・随伴を示し、「〜を伴っている」という状態を表す。
→ 結果:The entire valley was covered with thick fog throughout the morning.

例3:His lecture on string theory greatly interested all the physics students.
→ “be interested in” は、ある分野や活動といった領域の内部(in)への関心を表す。inは内部への関与を示す。
→ 結果:All the physics students were greatly interested in his lecture on string theory.

例4:The jury was composed of twelve citizens from diverse socioeconomic backgrounds.
→ “be composed of” は、「〜という構成要素から成る」という内実を示す。of は所属・起源・内容を表し、主語の内訳を示す。この表現は受動態というより、of 以下が主語の属性を記述する形容詞句的な用法に近い。

例5:The parents were deeply concerned about their daughter’s sudden change in behavior.
→ “be concerned about” は、ある事柄(about)に対する心配・懸念を表す。aboutは「〜について」という対象を示す。

以上により、by以外の前置詞を伴う受動態の用法を、単なる丸暗記ではなく、動詞と前置詞の意味的な結びつきとして体系的に理解することが可能になる。

3. 複合時制・法助動詞と受動態

受動態は、単純な時制だけでなく、完了形や進行形といった相(アスペクト)、さらには法助動詞が表すモダリティと結合して、より複雑で精密な意味を表現する。これらの複合形式を正確に理解し運用する能力は、現実のテクスト、特に抽象度の高い評論や学術論文を読解する上で不可欠である。なぜなら、これらの形式は、単に「〜される」という受け身の意味に、「〜し終えた」「〜している最中だ」「〜されるべきだ」といった時間的・様態的な情報を重層的に付加するからである。これらの構造を瞬時に分析し、正確な意味を把握できなければ、文全体の論理関係や筆者のニュアンスを読み誤ることになる。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、完了受動態(have been p.p.)と進行受動態(be being p.p.)の統語構造と、それらが表す完了・継続・進行中といった時間的意味を正確に理解できる。第二に、法助動詞(can, must, should 等)と受動態が結合した形式(can be p.p. 等)を適切に形成・解釈し、それが表す可能性、義務、推量といった話者の判断を把握できる。第三に、過去の事態に対する推量を示す「法助動詞+have been+p.p.」の構造を正確に運用できる。

複合時制と態の結合に関する理解は、次の記事で扱う補文構造における受動態の分析へと発展する。

3.1. 完了形・進行形と受動態の結合規則

受動態は、完了形や進行形と結合して、動作の時間的な局面をより詳細に描写する。完了受動態「have been+過去分詞」は、〈完了have+受動be〉という助動詞の連鎖によって形成され、基準時において受け身の動作が完了・経験・継続していることを示す。一方、進行受動態「be being+過去分詞」は、〈進行be+受動be〉の連鎖により、基準時において受け身の動作が進行中であることを示す。なぜこれらの形式が存在するかと言えば、事態を静的な事実としてではなく、時間の中で展開する動的なプロセスとして捉える必要があるからだ。例えば、建物が「建設された(was built)」という事実と、「建設されている最中だ(is being built)」という進行中の状態を区別する必要がある。これらの複合形式の構造は、助動詞の順序規則(法助動詞→完了have→進行be→受動be)によって厳密に規定されている。

この原理から、完了形・進行形の受動態を形成・分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文が表現したい時間的側面(完了か進行か)と態(受動)を特定する。

手順2:完了受動態を形成する場合は、「have/has/had+been+過去分詞」の枠組みを適用する。主語の人称と数、そして基準時(現在・過去)に応じて have/has/had を選択する。

手順3:進行受動態を形成する場合は、「be動詞+being+過去分詞」の枠組みを適用する。主語の人称と数、そして基準時(現在・過去)に応じて be動詞(is/am/are/was/were)を選択する。

例1:The corporation has implemented drastic cost-cutting measures to address the financial crisis.(現在完了能動)
→ 完了受動態:Drastic cost-cutting measures have been implemented by the corporation to address the financial crisis.
→ 「measures」が主語に昇格し、「has implemented」が「have been implemented」に変わる。措置が既に実行され、その状態が現在まで続いている、または現在に関連していることを示す。

例2:The authorities are currently investigating the cause of the catastrophic system failure.(現在進行能動)
→ 進行受動態:The cause of the catastrophic system failure is currently being investigated by the authorities.
→ 「the cause」が主語に昇格し、「are investigating」が「is being investigated」に変わる。調査が「今まさに」行われている最中であることを示す。

例3:By the time the reinforcements arrived, the enemy had already breached the outer defenses.(過去完了能動)
→ 完了受動態:By the time the reinforcements arrived, the outer defenses had already been breached by the enemy.
→ 「the outer defenses」が主語に昇格し、「had breached」が「had been breached」に変わる。援軍到着という過去の時点より前に、防衛線が突破されていたことを示す。

例4:The controversial issue was being debated fiercely in parliament when the breaking news reached the chamber.(過去進行受動)
→ 「the issue」が主語の受動態である。ニュースが入った時、その問題が「まさに」議論されている最中だったことを示す。過去のある時点での進行中の受動的事態を描写する。

以上により、時制と相、そして態が統合された複雑な動詞句の構造を正確に把握し、時間的なニュアンスを読み取ることが可能になる。

3.2. 法助動詞と受動態の構造と解釈

法助動詞(can, may, must, should, will等)は、受動態と結合して「法助動詞+be+過去分詞」という形をとる。この構造は、受動態で示される事態に対して、法助動詞が持つ「可能性」「義務」「推量」「許可」などの話者の主観的な判断(モダリティ)を付加する機能を持つ。なぜなら、法助動詞は命題内容(proposition)そのものではなく、その命題に対する話者の心的態度を表明するための装置だからである。「The rule is changed.(規則が変更される)」という客観的な事実に、「The rule must be changed.(変更されねばならない)」という義務・必要性の判断や、「The rule might be changed.(変更されるかもしれない)」という推量の判断を付け加える。法助動詞は常に動詞の原形を要求するため、受動態の標識であるbe動詞は必ず原形 “be” となる。この規則性を理解することが、正確な解釈と運用の鍵となる。

この原理から、法助動詞を含む受動態を解釈・運用するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文中の「法助動詞+be+過去分詞」の構造を特定する。

手順2:まず受動態部分(be+過去分詞)が示す事態(〜される)を把握する。

手順3:その事態に対して、法助動詞がどのようなモダリティ(可能性、義務、推量など)を付加しているかを判断する。

手順4:「法助動詞+have been+過去分詞」の形になっている場合は、過去の事態に対する現在の時点からの推量や判断(〜されたに違いない、〜されたかもしれない)として解釈する。

例1:The confidential data must be protected by state-of-the-art encryption technology at all times.
→ 「データが保護される」という事態に対し、“must” が「〜されねばならない」という強い義務・必要性を付加している。セキュリティ対策の不可欠性が強調される。

例2:The potential side effects of this experimental drug should not be underestimated by any means.
→ 「副作用が過小評価される」という事態に対し、“should not” が「〜されるべきではない」という忠告・勧告を付加している。警告としての機能を果たす。

例3:The origins of this enigmatic ancient manuscript can be traced back to the 15th century Byzantine Empire.
→ 「写本の起源が遡られる」という事態に対し、“can” が「〜されうる」という可能性・能力を付加している。学術的な発見の報告として機能する。

例4:The crucial piece of evidence might have been deliberately concealed by the defendant prior to the trial.
→ 「have been concealed(隠された)」という過去の事態に対し、“might” が「〜されたかもしれない」という現在の時点からの推量を付加している。過去の行為に対する疑念を表明する。

例5:All applications must have been submitted by the deadline in order to be considered for admission.
→ 「have been submitted(提出された)」という完了した事態に対し、“must” が「〜されていなければならない」という義務を付加している。締め切り前の完了が必須条件であることを示す。

以上により、受動態とモダリティが統合された表現を正確に解釈し、話者の判断や態度といった深層の意味を読み取ることが可能になる。

4. 補文構造と受動態

受動態の形成は、単純なSVO構文だけでなく、目的語や補語がより複雑な句や節(補文)となる構文においても適用される。特に、SVOO(二重目的語構文)やSVOC(第五文型)における受動態化は、複数の名詞句が関与するため、統語的に複雑な規則性を示す。これらの構文の受動態を正確に理解することは、文の焦点を制御し、より多角的な情報提示を行うための高度な英語運用能力に不可欠である。なぜなら、どの要素を受動態の主語にするかという選択は、文の主題(トピック)や情報構造(新旧情報)と密接に関連しており、書き手の意図を反映するからである。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、SVOO構文から生成される二種類の受動態(間接目的語の主語化、直接目的語の主語化)を正確に形成し、その使い分けを文脈から判断できる。第二に、SVOC構文、特に使役動詞・知覚動詞を含む構文が受動態になる際に、原形不定詞がto不定詞に変化するという重要な規則を理解し、運用できる。第三に、これらの複雑な構文における受動態化の制約(例: have, let の受動態)を把握し、非文法的な表現を回避できる。

補文構造における受動態の理解は、次の記事で扱う句動詞やthat節を含む文の受動態化へと発展する。

4.1. 二重目的語構文からの受動態形成

SVOO(主語+動詞+間接目的語O1+直接目的語O2)の構文を取る動詞(give, send, show, teach, tell, offer 等)は、二つの目的語を持つため、原理的に二種類の受動態を形成することができる。一つは間接目的語(IO: 通常は人)を主語にする形式、もう一つは直接目的語(DO: 通常は物)を主語にする形式である。英語では、間接目的語(人)を主語にする形式が、情報の受け手という人間中心的な視点から、より一般的で自然とされる傾向がある。なぜなら、文の主題(トピック)は人間であることが多く、主題の継続性を保つ上で有利だからである。一方、直接目的語(物)を主語にする形式は、物が話題の中心である場合に用いられ、その場合、残された間接目的語の前には通常、前置詞 to(または for)が補われる。

この原理から、SVOO構文の受動態を形成・解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:能動態の文において、動詞、間接目的語(IO)、直接目的語(DO)を特定する。

手順2:間接目的語(IO)を主語にする場合、IOを文頭に移動させ、動詞を「be+過去分詞」とし、DOは動詞の直後に残す。(例: I was given a book.)

手順3:直接目的語(DO)を主語にする場合、DOを文頭に移動させ、動詞を「be+過去分詞」とし、残されたIOの前に前置詞 to(または for)を補う。(例: A book was given to me.)

手順4:動詞によってはIOを主語とする受動態が不自然なもの(buy, make, write, cook 等、for を取る動詞)があることを認識し、その場合はDOを主語とする形式のみを用いる。

例1:The university awarded the promising young scientist a prestigious international fellowship.
→ IO主語化:The promising young scientist was awarded a prestigious international fellowship by the university.(科学者が主題となり、彼女が受けた栄誉が述べられる)
→ DO主語化:A prestigious international fellowship was awarded to the promising young scientist by the university.(奨学金が主題となり、その授与先が述べられる)

例2:The experienced guide showed the eager tourists the ancient ruins of the long-lost civilization.
→ IO主語化:The eager tourists were shown the ancient ruins of the long-lost civilization by the experienced guide.
→ DO主語化:The ancient ruins of the long-lost civilization were shown to the eager tourists by the experienced guide.

例3:My grandmother made me a new woolen sweater for my birthday last year.
→ IO主語化:“I was made a new woolen sweater by my grandmother.” は文法的に可能だが、やや不自然に響く場合がある。
→ DO主語化:A new woolen sweater was made for me by my grandmother.(make は for を取る動詞であるため、for が補われる)

例4:The committee offered the qualified candidate the position of chief financial officer.
→ IO主語化:The qualified candidate was offered the position of chief financial officer by the committee.
→ DO主語化:The position of chief financial officer was offered to the qualified candidate by the committee.

以上により、二重目的語構文における二種類の受動態の構造と、その使い分けの背景にある情報構造上の動機を理解することが可能になる。

4.2. 使役・知覚動詞構文の受動態化と不定詞

SVOC構文の一種である、使役動詞(make)や知覚動詞(see, hear, feel, watch, notice 等)を用いた「S+V+O+do(原形不定詞)」の構文は、受動態になると補語であった原形不定詞がto不定詞に変化するという極めて重要な規則を持つ。なぜなら、能動態において目的語(O)と原形不定詞(do)の間に存在した直接的な「主語―述語」に近い関係が、受動態化によってOが文全体の主語に昇格することで崩れ、補語としての不定詞がその形式を明示する標識 to を必要とするようになるからだ。to の復活は、構文の構造変化を反映した必然的な結果である。

この原理から、使役・知覚動詞構文の受動態を形成するための具体的な手順が導かれる。

手順1:能動態の文が「S+make/see/hear+O+do」の構造であることを確認する。

手順2:目的語Oを受動態の主語として文頭に移動させる。

手順3:動詞Vを「be+過去分詞」(be made / be seen / be heard)に変換する。

手順4:原形不定詞 do の前に to を補い、to do の形にして動詞の後に続ける。

なお、使役動詞の中でも have と let はこの形の受動態を通常は作らない。“He had me repair the car.” の受動態は “I was had to repair the car.” とはならず、“I was asked/told to repair the car.” のように別の動詞で代用される。“He let me go.” の受動態は “I was allowed to go.” となる。

例1:The demanding supervisor made the exhausted employees work overtime throughout the entire weekend.
→ make+O+work (原形不定詞) の構造である。
→ Oである the exhausted employees を主語にし、work を to work に変える。
→ 結果:The exhausted employees were made to work overtime throughout the entire weekend.

例2:Several reliable witnesses saw the suspect flee the scene of the crime immediately after the incident.
→ see+O+flee (原形不定詞) の構造である。
→ Oである the suspect を主語にし、flee を to flee に変える。
→ 結果:The suspect was seen to flee the scene of the crime immediately after the incident by several reliable witnesses.

例3:No one in the entire company has ever heard him criticize his colleagues or subordinates publicly.
→ hear+O+criticize (原形不定詞) の構造である。
→ Oである him を主語にし、criticize を to criticize に変える。
→ 結果:He has never been heard to criticize his colleagues or subordinates publicly.

例4:I felt the ground beneath my feet tremble violently during the earthquake.
→ feel+O+tremble (原形不定詞) の構造である。
→ 結果:The ground beneath my feet was felt to tremble violently during the earthquake.

以上により、使役・知覚動詞という特定の動詞クラスが受動態になる際の、補語不定詞の形態変化という特殊な規則を論理的に理解し、正確に運用することが可能になる。

5. 節・句動詞と受動態の制約

受動態の形成は、目的語が単純な名詞句である場合に限られない。目的語がthat節のような節である場合や、動詞が前置詞や副詞を伴って一つの意味単位を形成する「句動詞」である場合にも、受動態化は生じる。しかし、これらのケースでは標準的な受動態形成規則に加えて、特別な制約や変形が適用される。なぜなら、節という大きな構造単位を主語にすることには認知的な負荷が伴うため、それを回避する構文(形式主語 It や主語繰り上げ)が発達したからである。また、句動詞は動詞と他の品詞の結びつきの強さによって受動態化の可否が分かれる。これらの特殊なケースにおける制約と規則を理解することは、より複雑で高度な英文を正確に構築・解釈する上で不可欠である。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、that節を目的語に取る伝達・思考動詞(say, think, believe 等)の受動態において、形式主語 It を用いる構文と、that節の主語を繰り上げる構文の二つのパターンを正確に使い分けられる。第二に、句動詞(自動詞+前置詞、他動詞+副詞など)が受動態になる際に、動詞と前置詞・副詞のまとまりを崩さずに操作する規則を運用できる。第三に、句動詞の種類によって受動態化が不自然になるケースを識別できる。

節と句動詞を含む受動態の理解は、統語層の最終的な到達点であり、意味層への橋渡しとなる。

5.1. that節を目的語とする文の受動態

say, think, believe, know, report, expect, assume といった伝達・思考を表す動詞は、that節を目的語に取ることが多い。この「S+V+that節」という構文を受動態にする際には、二つの主要なパターンが存在する。that節という長い要素をそのまま文頭の主語位置に置くことは、文のバランスを著しく損なう(頭でっかちになる)ため、通常は避けられる。その代わりに、形式的な主語を用いたり、that節内部の要素を主節の主語に移動させたりする操作が行われる。

第一のパターンは、形式主語の It を文頭に置き、「It is V-en that…」とする構文である。これは、that節の内容全体を客観的な事実や一般論として提示する機能を持つ。第二のパターンは、that節内の主語S’を文全体の主語の位置に「繰り上げ(raising)」、「S’ is V-en to do…」とする構文である。これは、S’という人物や事物に焦点が当てられ、その人物・事物に関する評判や見解を述べる機能を持つ。この際、that節内の動詞の時制が主節の動詞の時制より前である場合は、完了不定詞(to have done)を用いる必要がある。

この原理から、that節目的語の受動態を形成するための具体的な手順が導かれる。

手順1:能動態の文が「S+V(say, think等)+that節」の構造であることを確認する。

手順2:【パターンA】形式主語 It を用いる場合:「It+be動詞+Vの過去分詞+that節」の形に変換する。

手順3:【パターンB】主語繰り上げを用いる場合:that節の主語を文頭に移動させ、動詞を「be動詞+Vの過去分詞」とする。that節の動詞はto不定詞に変換する。

手順4:【パターンBの時制】that節内の時制が主節より過去の場合は、完了不定詞(to have+過去分詞)を用いる。そうでなければ単純不定詞(to do)を用いる。

例1:People believe that the enigmatic ancient monument was built for astronomical observations.
→ パターンA:It is believed that the enigmatic ancient monument was built for astronomical observations.
→ パターンB:The enigmatic ancient monument is believed to have been built for astronomical observations.(believe は現在、was built は過去なので完了不定詞を用いる。さらに受動態なので to have been built となる)

例2:Reports say that the delicate peace negotiations are progressing smoothly despite the obstacles.
→ パターンA:It is said that the delicate peace negotiations are progressing smoothly despite the obstacles.
→ パターンB:The delicate peace negotiations are said to be progressing smoothly despite the obstacles.(say も are progressing も現在なので単純不定詞を用いる)

例3:Historians widely think that the controversial figure died in abject poverty and obscurity.
→ パターンA:It is widely thought that the controversial figure died in abject poverty and obscurity.
→ パターンB:The controversial figure is widely thought to have died in abject poverty and obscurity.(think は現在、died は過去なので完了不定詞を用いる)

例4:Experts expect that the economy will recover significantly within the next fiscal year.
→ パターンA:It is expected that the economy will recover significantly within the next fiscal year.
→ パターンB:The economy is expected to recover significantly within the next fiscal year.(will recover は未来だが、単純不定詞で表す)

以上により、一つの能動態文から、情報提示の焦点が異なる二種類の受動態文を生成し、文脈に応じて使い分けることが可能になる。

5.2. 句動詞の受動態化とその制約

句動詞(phrasal verbs)は、「動詞+副詞」や「動詞+前置詞」などが結合して一つの意味単位を形成するものであり、多くは全体として一つの他動詞のように機能し、受動態を作ることができる。この際、最も重要な規則は、句動詞を構成する動詞と副詞・前置詞を一つの不可分なまとまりとして扱うことである。なぜなら、これらの要素を分離すると、句動詞本来の意味が失われてしまうからだ。したがって、受動態化の際には、副詞や前置詞は本動詞の過去分詞の直後にそのまま残される。その結果、文末に句動詞の一部である前置詞と、動作主を表すbyが連続して現れる(例: …was looked up to by…)という、一見奇妙に見える構造が生まれることがある。ただし、すべての句動詞が受動態になれるわけではない。受動態化が可能なのは、その句動詞が目的語に対して明確な影響や作用を及ぼす場合に限られる傾向がある。

この原理から、句動詞の受動態を形成するための具体的な手順が導かれる。

手順1:句動詞(例: look after, deal with, laugh at, take care of)を一つの他動詞として認識する。

手順2:句動詞の目的語を受動態の主語として文頭に移動させる。

手順3:動詞部分のみを「be+過去分詞」の形に変換する。

手順4:副詞や前置詞は、過去分詞の直後にそのままの位置で保持する。

手順5:能動態の主語は、必要であればby句として文末に付加する。

例1:A team of dedicated nurses looked after the critically ill patient around the clock throughout her recovery.
→ 句動詞 look after の目的語 the critically ill patient を主語にする。
→ 動詞 look を was looked にする。前置詞 after はそのまま残す。
→ 結果:The critically ill patient was looked after around the clock throughout her recovery by a team of dedicated nurses.

例2:The committee must deal with this extremely sensitive issue immediately and decisively.
→ 句動詞 deal with の目的語 this extremely sensitive issue を主語にする。
→ 動詞 deal を must be dealt にする。前置詞 with はそのまま残す。
→ 結果:This extremely sensitive issue must be dealt with immediately and decisively (by the committee).

例3:Everyone in the room laughed at his absurd and impractical proposal.
→ 句動詞 laugh at の目的語 his absurd and impractical proposal を主語にする。
→ 動詞 laugh を was laughed にする。前置詞 at はそのまま残す。
→ 結果:His absurd and impractical proposal was laughed at by everyone in the room.

例4:People throughout the organization look up to the CEO as a visionary leader.
→ 句動詞 look up to の目的語 the CEO を主語にする。
→ 結果:The CEO is looked up to as a visionary leader by people throughout the organization.

以上により、句動詞を受動態にする際の構造的な規則性を理解し、前置詞が連続する形を恐れずに正確な文を構築することが可能になる。

体系的接続

  • [M09-統語] └ 法助動詞とモダリティが受動態と結合し、話者の判断が受動的な事態に対して表明される高度な構文(must be done, cannot have been seen 等)を扱う
  • [M12-統語] └ 動名詞・分詞が受動態の形式を取る場合(being done, having been done)の統語的特性と、それらが文中で果たす役割を扱う
  • [M13-統語] └ 関係詞節内での受動態の使用と、先行詞との関係に基づいた複文における態の選択を扱う

意味:態と意味の関係

態の選択は、単なる統語的な構造変換にとどまらず、文が伝達する意味内容そのものに深く関与する。能動態と受動態は、客観的な事態が同じであっても、話者がその事態をどのように捉え、どの側面に光を当てるかという「概念化」の違いを反映する。この層では、態の選択が文の意味、特に動作主の顕在性、事態の捉え方、責任の所在、そして文の含意にどのような影響を与えるのかを詳細に分析する。受動態は、動作主の情報を背景化し、動作の受け手や事態の結果そのものを前景化するための強力な意味的装置である。また、客観性が重んじられる科学的・学術的な談話において受動態が多用されるのは、この非人称化・客観化の機能に由来する。この層を通じて、態の選択が単なる文法規則の適用ではなく、話者の意図や視点を反映した意味的な決断であることを理解し、文の表層的な構造の背後にある深層の意味を読み解く能力を養う。

1. 態と動作主の顕在性

受動態が持つ最も根源的な意味機能は、動作主の顕在性、すなわち「誰がやったか」という情報が文中でどれほど目立つかを調整する点にある。能動態では義務的に前景化される動作主が、受動態ではby句として文末に後退するか、あるいは完全に文表面から削除される。この操作は、文の焦点を被動者や動作そのものに移行させ、談話全体の情報構造を最適化する上で決定的な役割を果たす。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、受動態における動作主の省略が、単なる省略ではなく、非人称化や客観化といった積極的な意味機能を持つことを理解できる。第二に、by句の有無が文の焦点に及ぼす影響を分析し、動作主が新情報として提示される場合と、背景化される場合を区別できる。第三に、科学的・学術的な文章で受動態が多用される理由を、客観性保持の観点から論理的に説明できる。

動作主の顕在性の制御に関する理解は、態が持つ語用論的な機能、すなわち情報構造の操作を学ぶ上での不可欠な前提となる。

1.1. 動作主の省略と非人称化

受動態において動作主を表すby句が省略されるのは、それが文意の理解に必須ではないか、あるいは意図的に情報を抑制したい場合である。これは、動作主が①不特定多数(people, they)、②文脈上自明、③不明、あるいは④意図的に隠蔽されている、といった状況に対応する。なぜこの省略が重要かと言えば、それは文から特定の行為主体を消去し、事態をより一般的・客観的な出来事として提示する「非人称化」の効果を生むからである。一般に「by句はあってもなくても同じ」と理解されがちである。しかし、この理解は非人称化という受動態の強力な意味機能を看過している。動作主を省略することで、文の焦点は完全に被動者とその状態変化に絞られ、個別の行為から切り離された普遍的な事実として事態を描写することが可能になる。

この原理から、動作主が省略された受動態の意味効果を分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:受動態文にby句が存在しないことを確認する。

手順2:省略された動作主が文脈から復元可能か、あるいは不特定多数を指すかを判断する。例えば、「English is spoken here.」では、動作主は「この場にいる人々」という不特定多数であり、明示する価値がない。

手順3:動作主が不明または意図的に隠されている可能性を検討する。「My car has been stolen.」では動作主は不明である。「Mistakes were made.」という政治的な言説では、責任の主体が意図的に曖昧にされている。

手順4:これらの分析に基づき、その文がなぜ非人称的な受動態を選択したのか、その意味論的な動機(客観性の強調、責任の回避など)を判断する。

例1:It is widely acknowledged throughout the scientific community that greenhouse gas emissions contribute significantly to global warming.
→ 動作主(acknowledge する人々)は学者や一般大衆といった不特定多数であるため省略されている。これにより、「〜ということは広く認められている」という客観的な事実として提示され、特定個人の見解ではないことが強調される。

例2:The patient was diagnosed with a rare form of pneumonia after extensive testing.
→ 動作主(診断した医師)は文脈上自明であるため省略されている。焦点は「患者が診断された」という事実そのものにあり、どの医師が診断したかは二次的な情報となる。

例3:During the political turmoil, dissenting voices were systematically silenced throughout the region.
→ 動作主(silence した主体、例えば政府や権力機関)は意図的に明示されていない。これにより、行為の主体を直接的に非難することを避けつつ、行われた事実の重大さを客観的に描写する効果がある。

例4:The Dead Sea Scrolls were discovered in a series of caves near the Dead Sea between 1946 and 1956.
→ 最初の発見は偶然によるものであり、発見者は複数かつ特定が困難な場合もある。動作主を省略することで、発見という歴史的出来事そのものに焦点を当てている。

例5:The budget for public education has been significantly reduced in the latest fiscal plan.
→ 予算削減を決定した主体(政府、議会など)が明示されていない。これにより、聞き手は削減という結果に注目させられ、責任主体への批判が和らぐ可能性がある。政治的な文脈で頻用される戦略である。

以上により、動作主の省略が持つ多様な意味機能を理解し、受動態の文が持つ客観性や非人称性の度合いを正確に読み取ることが可能になる。

1.2. by句の表示と情報構造における焦点化

by句が受動態文中に明示される場合、それは動作主が文意の理解において無視できない重要な情報であることを示す。特に、その動作主が聞き手にとって新しい情報(新情報)である場合、by句は文末という情報構造上の焦点位置に置かれることで、その情報を際立たせる機能を持つ。英語の文は「旧情報→新情報」という流れが自然であり、文末は最も情報価値の高い要素が置かれる場所である。受動態は、能動態では目的語の位置に来てしまう旧情報を主語(文頭)に移動させ、新情報である動作主をby句として文末の焦点位置に配置するための極めて有効な統語操作である。なぜなら、もし能動態のままだと、新情報である主語が文頭に来てしまい、旧情報である目的語が後に来るという不自然な情報構造が生まれてしまうからである。

この原理から、by句が持つ焦点化の機能を分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:受動態文にby句が存在することを確認する。

手順2:そのby句が伝達する情報が、文脈において既知の旧情報か、未知の新情報かを判断する。

手順3:by句が新情報である場合、それは文末焦点の原則に従って、その文で最も強調したい情報として提示されていると解釈する。

手順4:同じ内容を能動態で表現した場合と比較し、情報構造(特に焦点の位置)がどのように変化するかを検証する。

例1:The theory of relativity, a cornerstone of modern physics, was developed by a then-unknown patent clerk named Albert Einstein.
→ by句以下の “a then-unknown patent clerk named Albert Einstein” は、読者にとって驚きのある新情報である。受動態を用いることで、この新情報が文末の焦点位置に置かれ、劇的な効果を生んでいる。「あの相対性理論を発展させたのは、なんと無名の特許局員だったのだ」という驚きが強調される。

例2:This symphony, long thought to have been composed by Mozart, was recently discovered to have been written by his contemporary, Joseph Haydn.
→ 文末のby句 “Joseph Haydn” に強い焦点が置かれている。“Mozart” ではない、という対比を明確にし、新発見の核心部分を強調している。能動態ではこの対比の鮮明さが失われる。

例3:The Mona Lisa was stolen from the Louvre in 1911, an act that was perpetrated by an Italian handyman named Vincenzo Peruggia.
→ 2文目において、先行する「盗難という行為」を an act で受け、その行為の実行者という新情報を perpetrated by… という形で提示している。行為者が文末の焦点となり、「犯人は誰か」という情報が劇的に明かされる。

例4:While the policy was publicly endorsed by the president, it was privately criticized by his own chief of staff.
→ 対比構文において、二つのby句 “by the president” と “by his own chief of staff” がそれぞれ節の末尾に置かれ、行為者の対比を明確にしている。受動態を用いることで、両方の節で主題(the policy / it)を維持しつつ、行為者を焦点化することに成功している。

以上により、by句の表示が単なる動作主の追加ではなく、情報構造における焦点化という積極的な機能を持つことを理解できる。

2. 態と事態の概念化

態の選択は、話者が客観的な事態をどのように主観的に捉え、概念化しているかを反映する。能動態が動作主の視点から「行為」として事態を能動的に描写するのに対し、受動態は被動者の視点から「状態変化」や「出来事」として事態を受動的に描写する。この認知的な視点の違いは、文の含意、特に責任の所在の帰属や、事態に対する話者の態度に微妙だが重要な影響を与える。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、能動態と受動態がそれぞれ動作主視点、被動者視点から事態を概念化する装置であることを説明できる。第二に、受動態、特に動作主が省略された受動態が、行為の責任の所在を曖昧にする、あるいは意図的に回避するために用いられる場合があることを分析できる。第三に、態の選択が、事態に対する話者の肯定的・否定的、あるいは客観的な態度をどのように反映するかを解釈できる。

態と概念化の関係を理解することは、文の文字通りの意味を超え、その背後にある話者の意図や評価といった深層の意味を読み解くために不可欠である。

2.1. 動作主視点と被動者視点の転換

能動態と受動態の最も本質的な意味的差異は、事態を描写する際の視点の違いにある。能動態は、動作主を文の主語、すなわち出発点として設定し、そこから動作が対象へと及んでいくプロセスを「行為」として描写する。一方、受動態は、被動者(動作の受け手)を主語に据えることで、視点を反転させ、被動者に何が起こったのか、どのような状態変化を被ったのかという「結果」や「出来事」に焦点を当てる。なぜこの視点転換が重要かと言えば、それは人間の認知が、同じ出来事であっても、誰の立場から見るかによって全く異なる物語として認識するからである。「AがBを助けた」という文はAの英雄的行為を物語るが、「BはAに助けられた」という文はBが経験した危機と救済を物語る。態の選択は、話者がどちらの物語を語りたいかという意図を反映する。

この原理から、能動態と受動態が含意する視点の違いを分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:与えられた文の態(能動態か受動態か)を特定する。

手順2:文の主語が、意味役割として動作主(Agent)か被動者(Patient)かを判断する。

手順3:能動態であれば、文が「誰が何をしたか」という行為のプロセスに焦点を当てていると解釈する。動作主の意図や能力が前景化されやすい。

手順4:受動態であれば、文が「誰(何)に何が起こったか」という結果や状態変化に焦点を当てていると解釈する。被動者が経験した出来事が前景化される。

例1:A specialized rescue team finally found the missing hikers after a week-long intensive search operation.
→ 能動態。視点は「救助チーム」にあり、彼らの困難な捜索活動とその成功という「行為」が強調される。救助チームの能力や努力が前景化されている。

例2:The missing hikers were finally found after a week-long intensive search operation.
→ 受動態。視点は「行方不明のハイカー」にあり、彼らが「発見された」という安堵すべき「出来事」や状態変化が強調される。ハイカーの安否を心配する人々にとっては、この視点の方が関心に沿っている。

例3:The corporation’s new environmental policy disproportionately affects low-income employees and their families.
→ 能動態。視点は「企業の方針」にあり、その方針が引き起こす能動的な「影響」に焦点が当てられる。方針の問題点を指摘する文脈で使われる。

例4:Low-income employees and their families are disproportionately affected by the corporation’s new environmental policy.
→ 受動態。視点は「低所得の従業員とその家族」にあり、彼らが不利益を「被る」という「被害」や経験が強調される。この形式は、被害者の視点から問題を告発する際により効果的である。社会問題を論じる文脈でしばしば採用される。

以上により、態の選択が単なる語順の変更ではなく、事態を誰の視点から物語るかという、話者の根本的な概念化の反映であることが理解できる。

2.2. 受動態と責任の所在の帰属

受動態、特に動作主(by句)が省略された受動態は、行為の責任の所在を曖昧にする、あるいは意図的に回避する効果を持つことがある。能動態では行為の主体が主語として明示されるため、責任の所在が明確になる。しかし、受動態では動作主が文の表面から消えるため、「誰が」その行為を行ったのかが不明確になる。なぜこの機能が重要かと言えば、政治、行政、企業などの公式な発表において、組織としての決定や行為の結果を報告しつつ、個々の行為者の責任を直接的に言及することを避けるための修辞的な戦略として多用されるからである。「過ちが犯された(Mistakes were made.)」という表現は、誰が過ちを犯したのかを特定せず、事実のみを客観的に(あるいは無責任に)報告する典型例である。

この原理から、受動態が責任の所在に与える影響を分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:受動態文において、動作主(by句)が省略されていることを確認する。

手順2:文脈から、その省略が単に動作主が不明・自明であるためか、それとも意図的に責任の主体を曖昧にするためかを判断する。

手順3:もし能動態で表現した場合、誰が主語として責任を負うことになるかを想定する。

手順4:能動態と受動態を比較し、受動態の選択が責任の帰属をどのように操作しているかを結論づける。

例1:The confidential data was leaked to the media, causing a significant political scandal.
→ 「データが漏洩した」という事実が述べられているが、「誰が」漏洩させたのかは明示されていない。これにより、特定の人物や組織への直接的な非難を避けつつ、事件の重大性を報告している。情報漏洩に関する報道でしばしば見られるパターンである。

例2:It was decided that the factory would be closed down, resulting in the loss of hundreds of jobs.
→ 「決定された」という事実が述べられているが、決定の主体(経営陣、役員会など)が明示されていない。この非人称的な表現は、不人気な決定に対する責任の所在を曖昧にする効果を持つ。企業発表やニュース報道で頻出する。

例3:During the interrogation, the suspect was subjected to methods that are now considered torture by international standards.
→ 「容疑者は拷問と見なされる手法を受けた」と、被害者の視点から述べられている。動作主(尋問官)を省略することで、非人道的な行為そのものに焦点を当て、その行為を客観的に告発する効果がある。人権報告書などで使用される。

例4:Errors were made in the calculation process, which affected the final outcome significantly.
→ 計算過程で「誤りがなされた」と報告されているが、誰がその誤りを犯したかは不明確にされている。組織内部の報告書などで、個人を名指しせずに問題点を指摘する際に用いられる戦略である。

以上により、受動態、特にby句の省略が、単なる情報量の削減ではなく、責任の帰属という繊細な意味合いを操作するための修辞的な手段として機能することを理解できる。

3. 受動態における「動作」と「結果状態」

受動態構文「be動詞+過去分詞」は、文脈によって「〜される」という動作そのものを表す場合と、動作の結果として生じた「〜された状態」を表す場合がある。この「動作受動態」と「状態受動態」の区別は、文の正確な時間的解釈やニュアンスを把握する上で極めて重要である。なぜなら、同じ形態であっても、一方は動的なプロセスを、もう一方は静的な状況を描写しており、意味内容が根本的に異なるからだ。例えば「The door was closed.」という文は、「ドアが(誰かによって)閉められた」という過去の動作を指すこともあれば、「ドアは閉まっていた」という過去のある時点での状態を指すこともある。この曖昧性を解消し、筆者の意図を正確に読み解く能力が、高度な読解では求められる。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、「動作受動態」と「状態受動態」の意味的な違いを明確に説明できる。第二に、文脈や副詞、by句の有無などから、与えられた受動態文がどちらの意味で用いられているかを論理的に判断できる。第三に、状態受動態における過去分詞が、純粋な動詞ではなく形容詞に近い性質を持つことを理解できる。

動作と結果状態の区別に関する理解は、Get受動態との対比を扱う次のセクションへの準備となる。

3.1. 動作受動態と状態受動態の識別

「be動詞+過去分詞」の形が「動作」を表すか「状態」を表すかは、いくつかの指標によって判断することができる。第一に、by句を伴って動作主が明示されている場合、それは明確に「動作受動態」である(例: The window was broken by the boy.)。第二に、動作のプロセスを強調する副詞(例: gradually, suddenly, systematically)や、特定の時点を示す副詞句(例: at 7 p.m., yesterday)がある場合も、動作受動態である可能性が高い。一方、「状態受動態」は、動作の結果生じた状況が継続していることを示し、過去分詞は主語の性質を記述する形容詞のように機能する。そのため、very のような程度を表す副詞で修飾できたり、動詞が seem, remain, look などに入れ替え可能であったりする場合、状態受動態の性質が強いと言える。この区別は、受動態の本質が、単なる能動態の裏返しではなく、被動者の状態を描写するという独自の機能を持つことを示している。

この原理から、受動態が「動作」か「状態」かを識別するための具体的な手順が導かれる。

手順1:by句が存在するか確認する。存在すれば、ほぼ確実に動作受動態である。

手順2:進行形(be being p.p.)に変換可能か試す。可能であれば、それは明確な動作受動態である(状態は進行形にできない)。例:「The door is being closed.」は可能だが、「*The door is being broken.」が「ドアが壊れている状態である」の意味では不自然。

手順3:過去分詞を very などの程度副詞で修飾したり、un- のような接頭辞を付けたりできるか確認する。可能であれば、それは形容詞化した状態受動態である。(例: I am very interested in physics. / The door remained unopened.)

手順4:文脈全体から、筆者が動的なプロセスを描写したいのか、静的な状況を描写したいのかを判断する。

例1:The city was completely destroyed by the eruption of the volcano in A.D. 79.
→ by句が存在し、特定の時点(in A.D. 79)が示されているため、これは「破壊された」という過去の「動作」を表す。歴史的な出来事としての破壊のプロセスが描写されている。

例2:When I arrived at the office, it was empty and the windows were all closed.
→ by句はなく、文脈は過去のある時点での状況を描写している。これは「窓はすべて閉まっていた」という「状態」を表す。The windows were all being closed. とは意味が異なり、閉める動作の進行ではなく、閉まった状態の継続を示す。

例3:He seemed genuinely surprised at the unexpected news.
→ 動詞が seemed であり、過去分詞 surprised が主語の状態を説明する補語として機能している。これは典型的な状態受動態(形容詞的用法)である。surprised は「驚いている」という心理状態を表す形容詞として機能している。

例4:This groundbreaking theory is supported by a wealth of empirical evidence gathered over decades.
→ by句があるため動作受動態の形式だが、「支持されている」という継続的な状況を表しており、状態的な意味合いが強い。動作と状態の境界は常に明確なわけではなく、グラデーションをなしている。

以上により、文脈や統語的な手がかりを用いて、受動態が描写する「動作」と「状態」のニュアンスを精密に読み分けることが可能になる。

3.2. 結果状態を表す形容詞的用法

状態受動態の中でも特に、過去分詞が完全に形容詞として機能し、主語の性質や状態を記述する用法は重要である。これらの過去分詞は、もはや動詞的な力を失い、純粋な形容詞として扱われる。例えば、「be interested in」「be satisfied with」「be tired of」「be concerned about」などの表現は、受動態の形をとりながらも、実際には話者の心理状態を表す形容詞句として機能している。なぜこれが重要かと言えば、これらの表現を動作受動態として捉えてしまうと、「誰かによって興味を持たされている」といった不自然な解釈に陥るからだ。これらは、動作の結果として生じた状態が定着し、主語の属性となったものと理解すべきである。この形容詞化の度合いは、①very などの程度副詞で修飾できるか、②seem, remain, look などの連結動詞の補語になれるか、③un- などの否定接頭辞を付けて反対語を作れるか、といった基準で測ることができる。

この原理から、過去分詞が形容詞的に用いられているか否かを判断するための具体的な手順が導かれる。

手順1:対象となる「be+過去分詞」の過去分詞部分が、very や extremely などの程度副詞で修飾可能か確認する。(例: I was very pleased. は可能だが、*The bridge was very built. は不可。)

手順2:be動詞を seem, look, remain などの連結動詞(linking verb)に置き換えて文が成立するか確認する。(例: He looked disappointed. は可能だが、*The city looked destroyed by the bomb. は不自然。)

手順3:過去分詞に un- や in- などの否定接頭辞を付けて形容詞として使用できるか確認する。(例: an unanswered question, an uninhabited island, an unresolved issue)

手順4:これらの基準を複数満たす場合、その過去分詞は形容詞としての性質が非常に強いと判断する。

例1:The committee members were deeply concerned about the ethical implications of the proposed research.
→ concerned は deeply という程度副詞で修飾されており、メンバーの心理「状態」を表している。これは形容詞的な用法であり、「心配している」という継続的な状態を描写する。

例2:The fundamental issue remains unresolved despite months of intensive negotiation.
→ unresolved は否定接頭辞 un- が付き、連結動詞 remains の補語となっている。これは完全に形容詞として機能しており、「未解決のままである」という状態を表す。

例3:He is widely known to the general public as a notorious smuggler.
→ 「一般大衆に知られている」という状態を表す。be known to は慣用的な形容詞句として機能している。He is very well known… のように程度副詞で修飾することも可能である。

例4:The valuable package, dispatched last week, is still undelivered to this day.
→ undelivered は un- が付き、パッケージの現在の「状態」を記述している。「配達されていない」という結果状態が継続していることを示す。

例5:She appeared thoroughly exhausted after the grueling marathon.
→ exhausted は appeared という連結動詞の補語となり、thoroughly という程度副詞で修飾されている。完全に形容詞化した用法である。

以上により、受動態の形式をとる表現が、文脈によっては動的な「動作」ではなく、静的な「結果状態」を表す形容詞として機能していることを見抜き、その意味を正確に解釈する能力が養われる。

4. 数量詞・否定辞と受動態の相互作用

数量詞(all, some, every など)や否定辞(not, no)を含む文が受動態になると、その意味解釈が能動態と異なる、あるいは曖昧になる場合がある。これは、文の構造変化によって、数量詞や否定辞が影響を及ぼす範囲、すなわち「作用域(スコープ)」が変化するために起こる。特に、「否定辞+数量詞」の組み合わせは、受動態化によって解釈の優先順位が変わりやすく、読解において深刻な誤解を招く可能性がある。なぜこの相互作用が重要かと言えば、論理的な正確性が要求される学術論文や契約書などにおいて、作用域の違いが全体の意味を根本的に覆してしまうからである。この複雑な意味現象を理解することは、英文の論理構造を精密に読解するための高度な能力と言える。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、文における数量詞や否定辞の「作用域」という概念を理解できる。第二に、能動態から受動態への変換が、特に否定辞と数量詞の相互作用に影響を与え、解釈の曖昧性を生む場合があることを認識できる。第三に、文脈やイントネーション(会話の場合)を手がかりに、最も可能性の高い解釈を導き出す論理的思考力を養う。

数量詞と否定辞の作用域に関する理解は、論理的な英文読解の精度を高める重要な知識である。

4.1. 受動態と否定のスコープ

否定辞 not と数量詞が共起する文では、not が何を否定しているのか(作用域)によって意味が変わる。能動態では比較的明確な解釈が、受動態になることで変化したり、曖昧になったりすることがある。例えば、能動態「I did not invite all of them.」は、通常「全員を招待したわけではない(部分否定)」と解釈される(not > all)。しかし、これを単純に受動態にした「All of them were not invited.」という文は、文脈によっては「彼らは全員、招待されなかった(全体否定)」(all > not)と解釈される可能性と、「全員が招待されたわけではなかった(部分否定)」(not > all)という解釈の可能性の両方を生じさせ、曖昧になる。なぜこのような曖昧性が生じるかと言うと、not が動詞に近い要素を否定する傾向があるのに対し、受動態化によって all of them が文頭の主語になることで、all の力が強まり、not の作用域を巡って競合が起きるからである。

この原理から、受動態における否定のスコープを慎重に解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文中に否定辞 not と数量詞(all, every, many など)が共存している受動態文を特定する。

手順2:二つの可能性のある解釈、すなわち部分否定(〜というわけではない)と全体否定(すべて〜ない)を念頭に置く。

手順3:文脈を確認する。後続の文で「何人かは来たが…」のような記述があれば部分否定の解釈が支持される。逆に、誰も来なかったことを示唆する文脈なら全体否定が妥当となる。

手順4:曖昧さを避けるためには、能動態を用いるか、「Not all of them were invited.」のように否定したい範囲を明確にする表現が好まれることを理解する。

例1:All the applicants were not qualified for the final interview.
→ 曖昧な文。①「応募者全員が最終面接の資格を持っていたわけではなかった(部分否定)」とも、②「応募者全員が資格を持っていなかった(全体否定)」とも解釈できる。文脈がなければ判断が難しい。明確にするには「Not all the applicants were qualified…」(部分否定)または「None of the applicants were qualified…」(全体否定)とすべきである。

例2:Every question on the comprehensive exam was not answered correctly by the students.
→ この文も曖昧である。①「すべての問題が正しく解答されたわけではなかった」か、②「どの問題も正しく解答されなかった」か。後者の意味であれば、「No question on the exam was answered correctly…」とするのがより明確である。

例3:Many of the promises made by the politician during the campaign have not been fulfilled.
→ この場合は「多くの公約が果たされていない」という解釈(many > not)が最も自然である。「果たされなかった公約は多くはない」という解釈(not > many)は考えにくい。many は部分的な量を示すため、not との曖昧性が比較的生じにくい。

例4:The problem is that all of their ambitious claims cannot be verified by independent researchers.
→ 「彼らの主張のすべてが検証可能であるとは限らない(部分否定)」と解釈するのが一般的である。cannot はしばしば部分否定を導く。科学的な文脈で、すべての主張の検証可能性に疑問を呈している。

以上により、否定辞と数量詞が絡む受動態文が持つ意味の曖昧性を認識し、文脈に基づいた慎重な解釈を行うことの重要性が理解できる。

4.2. 受動態と数量詞のスコープ

否定辞だけでなく、二つの数量詞が主語とby句に含まれる受動態文も、作用域の解釈が問題となることがある。能動態「Many critics reviewed a few films.」(多くの批評家が数本の映画を批評した)では、通常「多くの批評家」が主体となって行動が起こると解釈される。これを単純に受動態にした「A few films were reviewed by many critics.」という文は、意味的にはほぼ同じだが、焦点が「数本の映画」に移動する。しかし、文脈によっては「(ある)数本の映画は、(それぞれ)多くの批評家によって批評された」という意味合いを帯びることがある。これは、主語に置かれた数量詞の力が強まる傾向があるからだ。この作用域の曖昧さは、特に every と a のような組み合わせで顕著になる。

この原理から、数量詞間のスコープを解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:受動態文の主語とby句に、それぞれ異なる数量詞が含まれている文を特定する。

手順2:能動態にした場合に、どちらの数量詞がもう一方の作用域に入るのが自然かを考える。

手順3:受動態文では、主語の数量詞の作用域が広がる可能性があることを念頭に置く。つまり、「主語の各要素に対して、by句の事象が成り立つ」という解釈が生まれやすくなる。

手順4:文脈全体が、どちらの解釈を支持しているかを慎重に判断する。

例1:A solution to every problem was proposed by a different student in the seminar.
→ 曖昧な文。①「ある一人の学生が、すべての問題に対する解を提案した」(a student > every problem)か、②「それぞれの問題に対して、異なる学生が解を提案した」(every problem > a student)か。“a different student” という表現は②の解釈を強く示唆している。

例2:In our company, every new project must be approved by at least two senior managers before implementation.
→ この文は通常、「個々の新しいプロジェクトはそれぞれ、少なくとも二人のマネージャーによって承認されなければならない」と解釈される(every new project > two managers)。「同じ二人のマネージャーが、すべてのプロジェクトを承認する」という意味ではない。

例3:Two foreign languages are spoken fluently by everyone in this international household.
→ 「この国際的な家庭の誰もが(皆)2つの外国語を流暢に話す」と解釈するのが最も自然である(everyone > two languages)。能動態 “Everyone in this household speaks two foreign languages fluently.” とほぼ同義。

例4:A comprehensive report was submitted by each department head before the quarterly meeting.
→ 「各部門長がそれぞれ包括的な報告書を提出した」という解釈(each department head > a report)が自然である。各部門長が別々の報告書を提出したことを示す。

以上により、受動態化が文の論理的な意味構造、特に数量詞の作用域に影響を与えうることを理解し、表層的な構造だけでは判断できない深層の意味解釈の必要性を認識できる。

5. 心理・感情動詞の受動態と前置詞選択

人の心理や感情を表す他動詞(surprise, interest, satisfy, worry, excite, disappoint など)は、受動態で用いられることが非常に多い。これらの動詞の受動態は、「be動詞+過去分詞」という形をとり、行為者を表すのにby以外の特定の前置詞(at, with, in, of, about など)を要求する。これは、これらの構文が単なる動作の受け身ではなく、感情や心理という「状態」を描写する形容詞的な機能が強いからである。なぜ by ではなく他の前置詞が選ばれるのかと言えば、各前置詞が持つ核心的な意味(at: 点・方向、with: 付帯・随伴、in: 内部空間・領域)が、感情が引き起こされる原因や対象との関係性をより精密に表現するからだ。「〜によって驚かされる」というプロセスよりも、「〜という点に驚いている」という状態を描写するために at が選択されるのである。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、心理・感情動詞の受動態が、動作ではなく状態を表す傾向が強いことを理解できる。第二に、by以外の前置詞(at, with, in, about, of など)が、感情の原因や対象との関係性に応じて選択される意味的な理由を説明できる。第三に、物理的な状態や材料を表す受動態的な表現(be covered with, be made of/from)においても、前置詞が同様に意味的な役割を果たしていることを理解できる。

心理・感情動詞と前置詞の組み合わせは、語彙力と文法力が統合される重要な学習領域である。

5.1. 感情の原因・対象を示す前置詞

心理・感情動詞の受動態で用いられる前置詞は、感情の「原因」や「対象」を特定する役割を担う。その選択は慣用的に決まっている部分も大きいが、多くは前置詞の基本的なイメージと関連付けて理解することができる。at は、ある特定の出来事やニュースといった「点」としての原因・対象に対して用いられる(be surprised at, be shocked at, be disappointed at)。with は、人や物事の質、あるいは自分が置かれた状況といった、付帯する「もの」や「こと」に対して用いられる(be satisfied with, be pleased with, be angry with a person)。in は、ある分野や活動といった、自分がその「内部」に入り込むような対象への関心を示す(be interested in, be involved in, be absorbed in)。about や of は、より漠然とした対象や、心配・恐怖の種について言及する際に用いられる(be worried about, be afraid of, be aware of)。

この原理から、心理・感情動詞の受動態における前置詞を適切に選択・解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:受動態で使われている動詞が心理・感情を表すものか確認する。

手順2:感情の原因・対象となっている名詞句の性質を分析する。(一点の出来事か、付帯する状況か、関心の分野か、漠然とした不安の種か、など)

手順3:その性質に最も適合する核心イメージを持つ前置詞(at, with, in, about など)を選択する。

手順4:「be動詞+過去分詞+前置詞」の組み合わせを、一つのまとまったイディオムとして学習し、定着させる。

例1:The students were utterly disappointed at the unexpected cancellation of the long-awaited school festival.
→ at が選択されているのは、感情の原因が「学園祭の中止」という一点の出来事だからである。at は注意が向けられる「点」を示す前置詞である。

例2:She is extremely pleased with the remarkable results of her groundbreaking academic research.
→ with が選択されているのは、感情の源が「研究の成果」という、彼女の努力に付帯する具体的な「もの」だからである。with は随伴・付帯を示す。

例3:Many young people in this generation are not particularly interested in traditional electoral politics anymore.
→ in が選択されているのは、関心の対象が「伝統的な政治」という一つの「分野」や「領域」だからである。in は内部への関与を示す。

例4:The local residents are deeply worried about the potential long-term environmental impact of the proposed new factory.
→ about が選択されているのは、心配の対象が「工場の環境への影響」という、これから起こるかもしれない漠然とした事柄だからである。about は「〜について」という対象を広く示す。

例5:All employees must be fully aware of the company’s updated data security policies.
→ of が選択されているのは、認識の対象が「データセキュリティ方針」という具体的な内容であり、その存在や内容を「知っている」状態を示すからである。

以上により、心理・感情動詞の受動態における前置詞の選択が、単なる暗記事項ではなく、感情と対象との意味関係を反映した論理的なものであることを理解できる。

5.2. 物理的状態・材料を示す前置詞

心理・感情動詞と同様に、物理的な「状態」を表す受動態的な表現においても、by以外の前置詞が重要な意味的役割を果たす。特に、「〜で覆われている」「〜で満たされている」「〜で作られている」といった表現は、その状態を構成する「材料」や「内容」を特定の前置詞で示す。これらの表現も、動作そのものより結果としての状態に焦点があるため、過去分詞は形容詞的に機能する。be covered with は、表面を覆うものを示す。be filled with は、容器の内部を満たすものを示す。材料を表す be made of/from の使い分けは特に重要で、of は材料の性質が見てわかる場合(a desk made of wood)、from は化学変化などにより材料の性質が失われている場合(wine is made from grapes)に用いられる。この区別は、主語と材料との物理的・化学的な関係性を反映している。

この原理から、物理的状態を表す表現における前置詞を適切に選択・解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:「be+過去分詞」が、物理的な状態を表していることを確認する。

手順2:状態を構成する「材料」や「内容」と、主語との関係性を分析する。

手順3:表面を覆う場合は with(be covered with)を、内部を満たす場合は with(be filled with)を用いる。

手順4:材料を表す場合、材料の原形が保たれているなら of、原形が失われているなら from を選択する。

例1:The summit of the majestic mountain is permanently covered with perpetual snow and ice throughout the year.
→ with が雪と氷という「材料」で山の頂上が覆われている状態を示している。表面を覆うものは with で表す。

例2:The ancient wooden chest, discovered in the ruins, was filled with gold coins and precious jewels of immeasurable value.
→ with が金貨と宝石という「内容」で箱が満たされている状態を示している。容器の内部を満たすものは with で表す。

例3:This exquisite Renaissance statue is made of pure Carrara marble quarried from Italy.
→ of が用いられているのは、像が「大理石」でできていることが見た目で明らかであり、素材の性質が保たれているからである。大理石は大理石のまま像の形になっている。

例4:High-quality Japanese paper, known as washi, is traditionally made from the bark of the mulberry tree.
→ from が用いられているのは、「桑の木の樹皮」が製造過程で化学的・物理的に変化して「紙」になっており、元の素材の性質が失われているからである。

例5:The entire valley was shrouded in thick fog for most of the early morning hours.
→ in が使われているのは、谷が霧という環境の「内部」に包まれている状態を表しているからである。shrouded in は「〜に包まれて」という慣用表現である。

以上により、物理的状態を表す受動態的な表現における前置詞の選択が、主語と補語の関係性を精密に記述するための意味的な根拠に基づいていることを理解できる。

6. Get受動態とBe受動態の意味的差異

標準的な受動態(Be受動態)が「be動詞+過去分詞」で形成されるのに対し、口語や非公式な文体では「get+過去分詞」で形成されるGet受動態が頻繁に用いられる。両者は多くの場合交換可能に見えるが、その意味合い(ニュアンス)には明確な差異が存在する。Be受動態が客観的な事実や静的な状態を記述するのに適しているのに対し、Get受動態は「(予期せず)〜される」という変化や偶発的な出来事、あるいは主語がその出来事に何らかの形で関与・責任を負うといった、より動的で主観的な意味合いを帯びることが多い。なぜこの違いが生まれるかと言えば、get という動詞が本来「〜を得る、〜になる」という変化や到達の意味を持つため、受動態においてもその動的な性質が反映されるからである。この意味的差異を理解することは、文の微妙なニュアンスを読み取り、文体に応じた適切な表現を使い分ける上で重要である。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、Be受動態とGet受動態の基本的な意味的・文体的な違いを説明できる。第二に、Get受動態が含意する「変化」「偶発性」「責任」といったニュアンスを文脈から読み取ることができる。第三に、どのような状況でGet受動態が好まれ、どのような状況ではBe受動態が適切かを判断できる。

Get受動態の理解は、口語英語や現代の書き言葉を正確に解釈するために不可欠である。

6.1. Get受動態が含意する変化と偶発性

Get受動態の最も核心的な意味は、「状態の変化」を強調する点にある。Be受動態が単に「〜されている」という状態を描写できるのに対し、Get受動態は「〜でなかった状態から、〜される状態になる」というプロセスや変化の側面に焦点を当てる。例えば、「They got married.」は「彼らは結婚した(独身から既婚状態へ変化した)」という変化のプロセスを強調するが、「They were married.」は単に「彼らは結婚していた」という状態を指すことも可能である。さらに、この「変化」はしばしば予期しない、偶発的な出来事に対して用いられる傾向がある。特に、主語にとって不利益な、好ましくない出来事を描写する際に多用される(例: get hurt, get caught, get fired, get lost)。これは、get が持つ動的な性質が、突然の変化や不意の出来事の描写と親和性が高いからである。

この原理から、Get受動態のニュアンスを解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文がGet受動態(get+過去分詞)で書かれていることを確認する。

手順2:その文が静的な状態ではなく、ある状態への「変化」のプロセスを描写しているかを判断する。

手順3:その変化が、特に予期しない、偶発的な、あるいは主語にとって不利益な出来事であるかを検討する。

手順4:同じ文をBe受動態に置き換えた場合と比較し、失われるニュアンス(変化、偶発性)は何かを分析する。

例1:My long-awaited package finally got delivered early this morning.
→ Be受動態 was delivered でも可能だが、got delivered は「(待っていたが、ついに)配達される状態になった」という変化のニュアンスをより強く表現する。待望の荷物が到着したという喜びが含意される。

例2:He inadvertently got involved in a complex legal dispute that was not of his own making.
→ got involved は、彼が意図せず「巻き込まれる状態になった」という偶発性と不利益な状況を強調している。was involved よりも当人の意に反した変化のニュアンスが強い。

例3:How did this priceless antique vase get broken during the move?
→ get broken は、「壊れていない状態から壊れた状態への変化」を問いかけており、特に事故や不注意による偶発的な出来事であったことを含意する。was broken(壊れていた)よりも、壊れた瞬間の出来事に焦点がある。

例4:After years of dedicated hard work and perseverance, she finally got promoted to the position of senior vice president.
→ got promoted は、「昇進する」というポジティブな変化を強調している。努力が報われて新しい地位を得た、という達成のプロセスが含意される。状態の獲得を示す get の本来の意味が反映されている。

例5:We got lost in the maze of narrow streets in the old town and couldn’t find our way back.
→ got lost は「道に迷う」という状態への変化を表す。予期せぬ困った状況に陥ったという偶発性が強調されている。

以上により、Get受動態が単なるBe受動態の口語的な代替ではなく、「変化」や「偶発性」といった独自の意味的ニュアンスを付加するための表現であることを理解できる。

6.2. Get受動態と話者の関与・責任

Get受動態は、Be受動態に比べて、主語がその出来事に何らかの形で関与している、あるいは(しばしば不注意などによって)責任の一端を担っている、というニュアンスを帯びることがある。これは、主語が完全に受動的な被害者であるというよりも、自らの行動が原因で好ましくない結果を「招いてしまった」という場合に特に顕著である。例えば、「He got caught cheating on the exam.」という文は、「He was caught…」に比べて、「彼が不正行為をした結果として、捕まるという事態を招いた」という自己責任のニュアンスが強い。なぜなら、get は主語の動作や状態獲得を含意するため、その出来事が主語と無関係な外的要因だけで引き起こされたのではないことを示唆するからである。このため、完全に主語に責任がない自然災害のようなケースでは、Get受動態は用いられにくい(例: ?The city got destroyed by the earthquake. は不自然で、The city was destroyed… が適切)。

この原理から、Get受動態が含意する主語の関与や責任を分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:Get受動態が、特に主語にとって不利益な出来事を描写している文脈で用いられているか確認する。

手順2:その出来事が起こった原因に、主語自身の行動や不注意が含まれている可能性を検討する。

手順3:もし主語が自らの行為の結果としてその状況を「得た(get)」と解釈できる場合、責任の含意があると判断する。

手順4:Be受動態を用いた場合との比較を行う。Be受動態はより客観的で、主語の責任を含意する度合いが低い。

例1:She drove recklessly through the intersection and got her license suspended for six months.
→ got her license suspended は、彼女の無謀運転という行為が直接の原因で「免許停止という結果を招いた」という自己責任のニュアンスを強く含んでいる。自業自得というニュアンスがある。

例2:If you’re not extremely careful with your choice of words, you might get misunderstood by the international audience.
→ get misunderstood は、「注意深く言葉を選ばないと、誤解されるという状況を自分で招きかねない」という警告であり、聞き手(you)の行動への注意を促している。

例3:The controversial politician got elected by a narrow margin despite the scandals.
→ この場合はポジティブな結果だが、got elected は、彼(候補者)自身の選挙活動や努力(または戦略)が実を結び、「当選という地位を得た」という、主語の関与と達成のニュアンスを含む。was elected はより客観的な事実報告となる。

例4:He carelessly left his expensive bike unlocked outside the store, and it got stolen within minutes.
→ got stolen は、「鍵をかけなかった」という彼の不注意が盗難の一因であるというニュアンスを含みうる。完全に不可抗力な was stolen に比べ、主語の関与を示唆する。

例5:Don’t get fooled by his charming personality; he’s actually quite manipulative.
→ get fooled は「騙される」という意味だが、「騙されないように気をつけろ」という警告において、聞き手が自らの判断で騙される状態を招きうることを示唆している。

以上により、Get受動態が、Be受動態が持つ客観性とは異なり、出来事に対する主語の関与や責任といった主観的な意味合いを付加する機能を持つことを理解できる。

体系的接続

  • [M18-意味] └ 文間の結束性において、受動態の選択が代名詞や指示語による照応関係の維持にどう貢献するかを分析する
  • [M20-意味] └ 論理展開の類型(因果関係、対比、譲歩など)において、受動態が論理関係を明確にするためにどのように戦略的に使用されるかを考察する
  • [M04-意味] └ 前置詞の意味体系、特にby句が持つ動作主としての機能と、at, with などが表す原因・対象としての機能を比較し、受動態における格表示の多様性を理解する

語用:態と情報構造

態の選択は、統語的・意味的なレベルを超え、文が実際のコミュニケーションの中でどのように機能するかという語用論的なレベルで決定的な役割を果たす。語用論における態の機能とは、文の「情報構造」を最適化することである。情報構造とは、文中の情報が、聞き手や読み手にとって既知の「旧情報」と未知の「新情報」にどのように配分され、どの情報に「焦点(フォーカス)」が当てられるかという設計図に他ならない。英語には、文頭に旧情報を置き、文末に向かって新情報を提示するという、認知的に最も処理しやすい情報の流れ(旧情報→新情報の原則)が存在する。受動態は、この原則を実現するための最も強力な文法装置である。この層では、態の選択が、旧情報と新情報の配置、主題の継続性、そして文の焦点の割り当てにどのように寄与するのかを体系的に分析する。これにより、なぜ特定の文脈で能動態ではなく受動態が選択されるのかを、書き手の情報伝達戦略という観点から論理的に説明する能力を養う。

1. 旧情報と新情報の配置原則

英語の談話は、既知の情報(旧情報)から未知の情報(新情報)へと展開するのが最も自然で理解しやすいとされる。この原則は「旧情報→新情報の原則(Given-before-New Principle)」として知られ、効果的なコミュニケーションの根底をなす原理である。文頭に旧情報を置くことで、聞き手・読み手は現在の文を直前の文脈とスムーズに結びつけることができ、文末に提示される新情報に認知的なリソースを集中させることができる。受動態は、この原則を維持するために不可欠な統語操作であり、態の選択が単なる「正誤」の問題から「適切さ」の問題へと引き上げられる地点がここにある。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、文中のどの要素が旧情報で、どの要素が新情報かを文脈から正確に識別できる。第二に、能動態では情報構造が不自然になる場合に、受動態を用いて旧情報を主語(文頭)に、新情報を文末に再配置する必要性を論理的に説明できる。第三に、不適切な態の選択が情報構造の乱れを引き起こし、文章をいかに読みにくくするかを具体例で分析できる。第四に、この知識を自らの英作文に適用し、読者にとって処理しやすい文章を構築できる。

情報構造の理解は、態の選択を「正誤」の問題から「適切さ」の問題へと引き上げ、より洗練された英語運用能力の基礎を築くものである。この記事で学ぶ原則は、次の記事で扱う主題の連鎖や文末焦点の分析へと直接つながる。

1.1. 旧情報→新情報の原則と受動態の機能

「旧情報→新情報の原則」とは、文を構成する際、聞き手や読み手がすでに知っている、あるいは文脈から容易に推測できる情報(旧情報)を文の冒頭に置き、新しく導入される重要な情報(新情報)を文の末尾に置くという、情報提示の基本的な戦略である。なぜこの順序が好まれるかと言えば、それは人間の認知プロセスに合致しているからだ。既知の情報で足場を固め、そこから未知の情報へと理解を広げていく方が、認知的な負荷が格段に低い。受験生が陥りやすい「能動態と受動態は意味が同じで形が違うだけ」という誤解は、この情報構造という観点を完全に見落としている点で、本質的な理解からかけ離れている。

受動態の最も重要な語用論的機能の一つは、この原則を維持することにある。能動態では「動作主(S) V 目的語(O)」となる構文において、もし動作主が新情報で目的語が旧情報であった場合、文頭に新情報が来てしまい、情報の流れが不自然になる。このような状況で受動態を用いると、旧情報である目的語を主語として文頭に移動させ、新情報である動作主をby句として文末の焦点位置に配置することが可能になる。この操作により、文は「既知→未知」という認知的に自然な流れを獲得するのである。

この原理から、情報構造を最適化するために受動態を選択・分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:分析対象の文と、その直前の文脈を読み、文中の主要な名詞句が旧情報か新情報かを判断する。旧情報は、直前の文で言及された要素、代名詞で受けられる要素、あるいは文脈全体から自明な要素である。新情報は、初めて導入される要素や、聞き手にとって未知の情報である。

手順2:能動態で文を構成した場合の語順と、受動態で構成した場合の語順を比較する。それぞれの語順において、旧情報と新情報がどの位置に来るかを明確にする。

手順3:どちらの語順が「旧情報→新情報」の原則により適合しているかを評価する。旧情報が文頭に、新情報が文末に来る構成がより自然であることを確認する。

手順4:旧情報が目的語の位置に来てしまう能動態を避け、その旧情報を主語にできる受動態が選択されていることを確認する。あるいは、自らの英作文においてこの原則を適用し、適切な態を選択する。

例1:The research team published a groundbreaking paper last year. The paper has been cited by over a thousand subsequent studies.
→ 2文目において、The paper は直前の文で言及された旧情報である。一方、over a thousand subsequent studies は新情報である。受動態を用いることで、旧情報 The paper を主語(文頭)に、新情報 …studies をby句(文末)に配置し、自然な情報の流れを作り出している。もしこれを能動態で “Over a thousand subsequent studies have cited the paper.” と書くと、新情報が文頭に来てしまい、前文との接続が唐突になる。

例2:The government has proposed a series of controversial tax reforms. These reforms are being fiercely opposed by numerous citizen groups and opposition parties.
→ 2文目において、These reforms は旧情報である。numerous citizen groups and opposition parties は新情報である。受動態を用いることで、旧情報を主語にし、新情報である反対勢力を文末の焦点位置に置いている。能動態で “Numerous citizen groups and opposition parties are fiercely opposing these reforms.” と書くと、旧情報 these reforms が文末に来てしまい、情報の流れが逆転して不自然になる。

例3:A mysterious artifact was discovered in the ruins. It was immediately transported to the national museum by a team of archaeologists.
→ 2文目において、It(= the artifact)は旧情報である。a team of archaeologists は新情報である。受動態によって、旧情報 It を主語に据え、新情報 a team of archaeologists を文末に置くことで、情報構造が最適化されている。

例4:Our laboratory recently acquired a state-of-the-art electron microscope. This powerful instrument allows us to observe cellular structures at an unprecedented resolution.
→ 2文目において、旧情報である This powerful instrument が主語になっている。この文では、動詞 allow が能動態で使われているが、情報構造の原則は守られている。態の選択は、あくまで情報構造を最適化するための一つの手段であり、常に受動態が必要なわけではないことも理解しておく必要がある。

以上により、受動態の選択が、書き手がいかに読者の理解を助け、情報を効果的に伝えようとしているかという、語用論的な配慮に基づいていることを理解できる。

1.2. 不適切な態選択による情報構造の破綻

態の選択を誤り、旧情報と新情報の配置原則を無視すると、文の連続性が損なわれ、談話は著しく読みにくくなる。これは「情報構造の破綻」と呼ばれる現象である。具体的には、文脈とのつながりを持たない新情報が唐突に文頭に現れたり、すでに既知で情報価値の低い旧情報が文末に置かれたりすることで、読者は情報の流れを見失い、文と文の関係性を再構築するために余計な認知的努力を強いられる。なぜこのような問題が起きるかと言えば、読者は無意識のうちに「文頭には文脈との接点があり、文末には新しい発見がある」と期待しているからである。この期待が裏切られると、文章全体の論理的なまとまり(結束性)が弱まり、書き手の意図が正確に伝わらなくなる。

特に、パラグラフの冒頭でもない文中で、不定冠詞(a/an)で導入される新情報を主語に持つ能動態文や、代名詞などで受けられる旧情報をby句に持つ受動態文は、情報構造が破綻している典型的な兆候である。このような破綻は、文法的には正しくとも、コミュニケーション上の効果を著しく損なうものである。

この原理から、不適切な態の選択を識別し、修正するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文脈の中で、ある文が読みにくい、あるいは唐突に感じられる箇所を特定する。読みにくさの感覚を情報構造の観点から分析する視点を持つことが重要である。

手順2:その文の主語が、文脈上全く新しい情報(特に不定冠詞を伴う名詞句)でないかを確認する。新情報が文頭に来ていることが、違和感の原因である可能性が高い。

手順3:その文の末尾(特にby句)が、直前の文の主語など、情報価値の低い旧情報でないかを確認する。冗長で蛇足のように感じられるby句は、削除するか、文構造を再検討すべき兆候である。

手順4:もし情報構造の破綻が確認された場合、態を転換する(能動態↔受動態)ことで、旧情報が文頭に、新情報が文末に来るように文を再構築する。あるいは、等位接続詞や関係詞を用いた別の構文への書き換えを検討する。

例1:【破綻例】Our team conducted a series of experiments. A surprising anomaly was discovered by the team in the final phase.
→ 2文目の主語 A surprising anomaly は新情報であり、文頭に来ている。by句の the team は旧情報で、文末に来ている。情報の流れが逆転しており、不自然である。さらに、by the team は冗長で、読者は「チームが発見したのは当然だろう」と感じる。
→ 【修正案1】Our team conducted a series of experiments and discovered a surprising anomaly in the final phase.(等位接続詞でつなぎ、主語を維持)
→ 【修正案2】In the final phase, the team discovered a surprising anomaly.(能動態にし、副詞句を前置して文脈との接続を明確化)

例2:【破綻例】The ancient manuscript is priceless. A mysterious secret is concealed in the manuscript.
→ 2文目の主語 A mysterious secret は新情報である。in the manuscript は旧情報である。新情報を文頭に置くことで、前文との接続が弱まっている。
→ 【修正案1】The ancient manuscript is priceless. It conceals a mysterious secret.(代名詞で旧情報を受け、能動態で新情報を文末に)
→ 【修正案2】The ancient manuscript is priceless, concealing a mysterious secret within its pages.(分詞構文で結合)

例3:【破綻例】We analyzed the geological data from the excavation site. The Ice Age was determined to be the period of the stratum by our analysis.
→ 2文目のby句 by our analysis は旧情報であり冗長である。さらに、The Ice Age という新情報が文頭に来ており、情報構造が不自然である。
→ 【修正案】We analyzed the geological data from the excavation site. Our analysis determined that the stratum dated back to the Ice Age.(能動態にし、旧情報 Our analysis を主語に)

例4:【破綻例】The phenomenon had puzzled scientists for decades. Finally, a brilliant physicist solved the mystery.
→ 2文目で a brilliant physicist という新情報が主語として文頭に来ている。現象(The phenomenon / the mystery)を主題として維持したい場合、この構成は最適ではない。
→ 【修正案】The phenomenon had puzzled scientists for decades. Finally, the mystery was solved by a brilliant physicist.(受動態にし、the mystery を主題として維持、新情報 a brilliant physicist を文末焦点に)

以上により、情報構造の原則に反した態の選択が、文章の明瞭性といかに密接に関わっているかを理解し、論理的で自然な文章を作成するための判断基準を養うことができる。

2. 主題の連鎖と受動態

効果的なパラグラフは、単に文が羅列されているのではなく、中心的な主題(トピック)を軸に、各文が有機的に結びついている。この主題の連続性を維持する上で、受動態は決定的な役割を果たす。談話において、ある文の主題は、次の文でも主題として継続されることで、一貫性のある情報の流れ、すなわち「主題の連鎖(トピックチェーン)」が形成される。英語では、文の主題は主語の位置に置かれるのが最も一般的である。したがって、パラグラフ内で同じ主題について語り続けるためには、その主題を各文の主語の位置に据え続ける必要がある。

受動態は、その主題が意味役割として動作の「受け手」である場合に、それを主語の位置に昇格させることで、主題の連鎖を維持するための不可欠な装置となる。主題の連鎖を理解することは、パラグラフ内の論理構造を把握し、また自らも結束性の高い文章を書くための鍵である。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、パラグラフの中心的な主題と、それが各文でどのように継続されているか(主題の連鎖)を分析できる。第二に、主題の連鎖を維持するために、能動態と受動態がどのように戦略的に使い分けられているかを説明できる。第三に、自身でパラグラフを構成する際に、受動態を効果的に用いて、論理的で結束性の高い文章を作成できる。第四に、主題が転換する場面を識別し、新たな主題の導入がどのように行われるかを理解できる。

2.1. 主題の継続性(Topic Continuity)と態の選択

パラグラフライティングにおいて、主題の継続性(Topic Continuity)は、文章の結束性(cohesion)と一貫性(coherence)を確保するための基本原則である。読者は、各文の主語(文頭)に、パラグラフの中心的な主題、あるいは直前の文と関連のある情報が現れることを期待する。この期待に応えることで、文章は論理的に流れるように感じられる。もし、ある文の主題が、次の文で動作の受け手(目的語)になってしまう場合、能動態のままでは主語が別の要素に変わってしまい、主題の連鎖が途切れてしまう。

ここで受動態を選択し、動作の受け手である主題を主語の位置に据え直すことで、主題の連鎖は維持され、パラグラフの焦点は安定する。なぜこの操作が効果的かと言うと、それは読者が注意の対象を頻繁に切り替える必要がなくなり、一つの主題に関する情報をスムーズに蓄積していくことができるからである。主題の頻繁な転換は読者の認知負荷を増大させ、文章の理解を困難にする。

この原理から、パラグラフ内で主題の連鎖を維持するための態の選択戦略を分析・適用する手順が導かれる。

手順1:パラグラフの主題文(トピックセンテンス)を特定し、そのパラグラフの中心的な主題(トピック)は何かを把握する。通常、パラグラフの冒頭文が主題文となり、そのパラグラフで論じられる中心概念を提示する。

手順2:後続の各文(支持文)の主語が、その中心的な主題、またはそれを指す代名詞・同義語になっているかを確認する。主語の一貫性がパラグラフの結束性を支えていることを意識する。

手順3:もし、ある支持文で、主題が意味的に動作の受け手となっている場合、主語の位置を維持するために受動態が用いられていることを確認する。能動態では主語が変わってしまう場面で受動態が選択されている論理を理解する。

手順4:もし主語が頻繁に変わり、文章が読みにくいと感じる場合、受動態を効果的に使うことで主題の連鎖を再構築できないか検討する。自らの英作文においてこの原則を適用する。

例1:The concept of artificial intelligence (AI) has a long history. It was first conceived by pioneers like Alan Turing in the mid-20th century. However, for decades, it was largely confined to the realm of science fiction. Only in recent years has it been transformed into a practical technology that affects our daily lives.
→ パラグラフの主題は一貫して artificial intelligence (AI) であり、It という代名詞で受け継がれている。2文目と4文目では、AIが「考案され」「変革された」対象であるため、受動態を用いることで It を主語に据え、主題の連鎖を維持している。もし2文目を “Pioneers like Alan Turing first conceived it…” と能動態で書くと、主語が Pioneers に変わり、AI への焦点がぼやける。

例2:The Amazon rainforest is facing unprecedented threats from deforestation. Vast areas of the forest are cleared each year for cattle ranching and agriculture. This destruction is driven primarily by global demand for beef and soy. If this trend continues, the rainforest could be permanently damaged beyond repair.
→ 主題は「アマゾン熱帯雨林」とその「破壊」にあり、The Amazon rainforest → Vast areas of the forest → This destruction → the rainforest と連鎖している。2文目と3文目では、それぞれ are cleared と is driven という受動態が、主題を主語の位置に保つために機能している。能動態で書くと、“People clear vast areas…” や “Global demand drives this destruction…” となり、主題が分散してしまう。

例3:The Pyramids of Giza stand as a testament to ancient engineering. They were constructed over 4,500 years ago by thousands of laborers. The largest, the Great Pyramid, was built as a tomb for Pharaoh Khufu. It is estimated to contain over 2 million stone blocks.
→ 主題は The Pyramids / They / The Great Pyramid / It と連鎖している。受動態 were constructed, was built, is estimated がこの連鎖を支えている。ピラミッドに焦点を当て続けることで、読者はピラミッドについての情報を体系的に蓄積できる。

例4:Marie Curie made groundbreaking contributions to science. She discovered radium and polonium. For these achievements, she was awarded the Nobel Prize twice. She remains the only person to have won Nobel Prizes in two different sciences.
→ 主題は Marie Curie / She であり、3文目で she was awarded という受動態が使われている。ここで能動態 “The Nobel Committee awarded her…” とすると、主題が委員会に移ってしまう。受動態により、キュリーを主題として維持しつつ、彼女が受けた栄誉を述べることができている。

以上により、態の選択が個々の文の内部構造だけでなく、パラグラフ全体の論理構造を支える重要な柱であることが理解できる。

2.2. 主題の連鎖のバリエーションと態

パラグラフ内の主題の連鎖は、常に同じ主題が繰り返される単純なパターン(定常主題パターン)だけではない。より洗練された文章では、ある文の文末で提示された新情報(しばしば述語の一部)が、次の文の新たな主題(主語)となる「情報の連鎖(Information Chain)」パターン、あるいは「派生主題パターン」が頻繁に見られる。このパターンは、「AはBである。そのBはCである。そのCは…」というように、情報がリレー形式で受け渡されていくため、談話にダイナミックな展開を生み出す。

受動態は、この情報の連鎖を円滑に行う上でも重要な役割を果たす。なぜなら、前文の文末にある新情報(名詞句)を、次文の主語として自然に配置するために、態の転換が必要になる場合があるからだ。前文の述語にあった要素が、次文では動作の受け手になる、といった場合に、受動態を用いてその要素を主語に据え、スムーズな情報のバトンタッチを実現するのである。このダイナミックな連鎖を理解することで、議論が発展していく論理展開を把握できるようになる。

この原理から、情報の連鎖パターンにおける態の選択を分析・適用するための手順が導かれる。

手順1:ある文(文1)の文末、特に述語部分に置かれている新情報を特定する。この新情報が次の文への「橋渡し」となる可能性を意識する。

手順2:次の文(文2)の主語が、文1のその新情報を受け継いでいることを確認する。代名詞や同義語による言い換え、あるいは同一名詞句の繰り返しによって、連鎖が実現されているかを見る。

手順3:文2において、その新たな主題が動作の受け手である場合、受動態を用いなければ主語の位置に来られないことを確認する。態の選択が情報連鎖を可能にしている論理を理解する。

手順4:この「文1の述語 → 文2の主語」という連鎖が、パラグラフ全体の論理をどのように展開させているかを分析する。議論が原因から結果へ、全体から部分へ、あるいは抽象から具体へと発展していく様を把握する。

例1:The Industrial Revolution brought about profound social changes. One of the most significant changes was the emergence of a new urban working class. This class was characterized by poor living conditions and exploitative labor practices. These practices eventually led to the rise of labor movements and socialist ideologies.
→ 情報の連鎖:profound social changes → One of…changes → a new urban working class → This class → exploitative labor practices → These practices。
→ 3文目では、直前の主題 This class を主語に据えるため、was characterized by という受動態が用いられている。能動態では、“Poor living conditions… characterized this class.” となり、主題の連鎖が途切れてしまう。4文目では能動態 led to が使われているが、主題 These practices が維持されている。

例2:Our research focuses on the role of gut microbiota in human health. These microorganisms produce a wide array of chemical compounds. Many of these compounds are now known to have significant effects on the host’s immune system and even mental well-being.
→ 情報の連鎖:gut microbiota → These microorganisms → chemical compounds → Many of these compounds。
→ 3文目では、直前の主題 compounds を主語に据えるため、are now known to have… という受動態が用いられている。これにより、compounds が持つ機能という新しい情報へとスムーズに議論が展開される。能動態で “Scientists now know that many of these compounds have…” と書くと、主題が Scientists に移ってしまう。

例3:The Renaissance witnessed a revival of interest in classical learning. This revival inspired artists and scholars across Europe. Their works, in turn, were disseminated through the newly invented printing press. The press revolutionized the spread of knowledge.
→ 情報の連鎖:a revival → This revival → Their works → The press。
→ 3文目では Their works を主題として維持するために受動態 were disseminated が用いられ、同時に printing press という新しい要素が導入されている。この printing press が次の文の主題となり、議論がさらに展開していく。

例4:The novel explores themes of alienation and identity. These themes are embodied in the protagonist, a man named K. K. is trapped in a bureaucratic nightmare from which there is no escape.
→ 情報の連鎖:themes of alienation and identity → These themes → the protagonist, K. → K.。
→ 2文目では These themes を主題として受動態 are embodied が使われ、主人公 K. が導入される。そして3文目では K. が新たな主題となり、彼の状況が描写される。受動態 is trapped がK.を主題として維持し、彼が置かれた受動的な状況を強調している。

以上により、受動態が単に一つの主題を維持するだけでなく、主題を次々と転換させながら議論を発展させるという、より動的な談話機能も担っていることを理解できる。

3. 文末焦点と文末重量の原則

英語の文は、最も重要で新しい情報(焦点)を文末に置くという「文末焦点の原則(End-Focus Principle)」に加え、統語的に複雑で長い要素を文末に置くことで文のバランスを保つという「文末重量の原則(End-Weight Principle)」にも支配されている。受動態は、これら二つの原則を同時に満たすための極めて有効な手段である。長い名詞句や節が動作主である場合、能動態ではその重い要素が文頭の主語位置に来てしまい、文全体の構造が不安定になる(頭でっかちになる)。受動態を用いることで、短く軽い目的語(しばしば旧情報)を主語として文頭に移動させ、長くて重い動作主(しばしば新情報)をby句として文末に配置することができる。

この層では、これら二つの原則が文の設計においてどのように機能し、受動態がその実現にいかに貢献するかを詳細に分析する。これらの原則を理解することで、なぜ特定の構文が選択されるのかについて、より深い洞察が得られる。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、文末焦点と文末重量の原則が、文の明瞭性と処理のしやすさにどう貢献するかを理解できる。第二に、長い節や複雑な名詞句が関わる文において、受動態がどのように文のバランスを整え、焦点を明確にするために機能しているかを分析できる。第三に、自身で英文を作成する際に、これらの原則を意識し、受動態を適切に用いて、構造的に安定し、かつ情報伝達効果の高い文を構築できる。

3.1. 文末焦点の原則(End-Focus)と態の選択

「文末焦点の原則」とは、文の中で最も強調したい情報、すなわち最も情報価値の高い「焦点(フォーカス)」を文の末尾に配置するという、英語の情報構造における鉄則である。文末は、音声的には最も強い強勢が置かれ、文章的には最後に読者の記憶に残るため、最も際立つ位置である。この原則を意識することで、書き手は読者の注意を最も重要な情報に向けることができる。

受動態は、この原則を実現するための強力な構文操作である。能動態では動作主が主語、被動者が目的語となるが、もし強調したい新情報が動作主である場合、受動態にすることで、その動作主をby句として文末の焦点位置に移動させることができる。逆に、動作や結果そのものを強調したい場合は、by句を省略した受動態を用いることで、動詞句やそれに続く副詞句が文末焦点となる。このように、態の選択は、書き手が文中のどの情報にスポットライトを当てたいかという意図を直接的に反映する。

この原理から、文末焦点を実現するための態の選択を分析・適用する手順が導かれる。

手順1:文が伝えたい最も重要な情報(新情報、強調点)は何かを特定する。その文が答えようとしている暗黙の問いは何かを考えると、焦点が明確になる。

手順2:その重要情報が、能動態の文のどこに位置するかを確認する。もし主語(文頭)に来てしまうなら、焦点化の効果は弱まる。

手順3:もし重要情報が主語(文頭)に来てしまう場合、受動態を用いてその情報を文末のby句に移動させることを検討する。これにより、その情報に焦点が当てられる。

手順4:もし重要情報が被動者(目的語)であるならば、能動態のままで文末焦点が実現できるため、態の転換は不要な場合が多い。ただし、主題の維持との兼ね合いで判断する。

例1:The theory of general relativity was proposed not by Newton, but by Einstein.
→ 焦点は明らかに Einstein にあり、Newton との対比が強調されている。受動態を用いることで、この対比的な新情報である動作主を文末の焦点位置に置くことに成功している。能動態 “Einstein, not Newton, proposed the theory…” では、Einstein が文頭に来てしまい、この鮮やかな対比と焦点の効果が弱まる。

例2:The ancient city was not destroyed by a volcano, but by a catastrophic earthquake.
→ 焦点は破壊の原因である a catastrophic earthquake にある。受動態によって、災害の種類という新情報が文末に置かれ、通説(火山による破壊)を覆すインパクトが生まれている。この構文により、読者の予想を裏切り、正しい情報を印象づける効果がある。

例3:Our research has been significantly advanced by the recent development of a new analytical method.
→ 焦点は研究が進展した理由である the recent development of a new analytical method にある。この長い名詞句をby句として文末に置くことで、原因が明確に強調される。能動態で “The recent development of a new analytical method has significantly advanced our research.” と書くと、この長い主語が文を頭でっかちにし、焦点も散漫になる。

例4:After months of stalemate, a breakthrough was finally achieved.
→ by句が省略された受動態。この文の焦点は「ついに達成された」という出来事そのもの、特に finally achieved という動詞句部分にある。誰が達成したかよりも、膠着状態が打破されたという事実が最も重要な情報となっている。by句を省略することで、行為ではなく結果に焦点が絞られる。

以上により、受動態の選択が、単なる視点の転換だけでなく、文のどの部分を情報伝達のクライマックスとするか、という書き手の戦略的な決断であることが理解できる。

3.2. 文末重量の原則(End-Weight)と受動態

「文末重量の原則」とは、統語的に複雑で長い(重い)要素を、単純で短い(軽い)要素よりも後に、つまり文末に配置する傾向を指す。これは、文の構造的なバランスを保ち、読者が情報を処理しやすくするための認知的な配慮である。文頭に長大な主語が来ると、述語動詞にたどり着くまでに時間がかかり、文全体の構造把握が困難になる(いわゆる「頭でっかち」の文)。英語話者は、軽い主語から始まり、重い要素が後に来る文を処理しやすいと感じる傾向がある。

受動態は、この問題を解決するための極めて有効な手段となる。能動態では主語となるべき要素が、非常に長い名詞句や関係詞節を含んでいる場合、受動態に変換することで、その「重い」要素を文末のby句に移動させ、代わりに短く「軽い」目的語を主語の位置に置くことができる。これにより、文は「軽い主語 + 動詞 + 重い補足情報」という、認知的に処理しやすい、安定した構造を獲得する。

この原理から、文のバランスを整えるための受動態の利用を分析・適用する手順が導かれる。

手順1:能動態で文を構成した際に、主語が非常に長大で複雑な名詞句や節になっていないかを確認する。主語が一行以上に及ぶ場合は、文のバランスが崩れている可能性が高い。

手順2:もし主語が「重く」、目的語が比較的「軽い」場合、文のバランスが悪いと判断する。読者が主語を読み終えるまでに、文の主旨を見失う恐れがある。

手順3:態を転換し、短い目的語を受動態の主語として文頭に置き、長い主語をby句として文末に移動させる。これにより、文のバランスが改善される。

手順4:再構成された文が、「軽い→重い」という自然な流れを持ち、構造的に安定していることを確認する。読みやすさが向上しているか、自ら読み返して確認する。

例1:【バランスの悪い能動態】The fact that the Earth revolves around the Sun, not the other way around, discredited the long-held geocentric model of the universe.
→ 主語の The fact that… が非常に長く、重い。読者は動詞 discredited にたどり着くまでに多くの情報を処理しなければならず、認知負荷が高い。
→ 【修正案(受動態)】The long-held geocentric model of the universe was discredited by the fact that the Earth revolves around the Sun, not the other way around.
→ 短い The model… を主語にし、長い the fact that… 節を文末のby句に移動させることで、文のバランスが劇的に改善される。

例2:【バランスの悪い能動態】The committee, which consisted of leading experts from various fields including medicine, engineering, and environmental science, thoroughly reviewed our proposal.
→ 主語の The committee, which… が関係詞節を含み、非常に重い。文の骨格(誰が何をしたか)の把握が困難になる。
→ 【修正案(受動態)】Our proposal was thoroughly reviewed by the committee, which consisted of leading experts from various fields including medicine, engineering, and environmental science.
→ 短い Our proposal を主語にすることで、文の構造が明瞭になる。関係詞節の情報は文末で補足的に提供される。

例3:【バランスの悪い能動態】Whether the new policy will achieve its intended goals despite considerable opposition from various stakeholder groups remains to be seen.
→ Whether 節が主語として長大。
→ 【形式主語による改善】It remains to be seen whether the new policy will achieve its intended goals despite considerable opposition from various stakeholder groups.
→ 形式主語 It を用いて軽い主語を文頭に置き、重い真主語を文末に配置。これも文末重量の原則の応用である。

例4:It is widely believed that the universe is expanding at an accelerating rate.
→ この形式主語It構文も、文末重量の原則の一つの現れである。長いthat節を文末に置き、形式的に軽い It を主語にすることで、バランスを保っている。この文を “That the universe is expanding at an accelerating rate is widely believed.” と書くと、頭でっかちで不自然である。

以上により、受動態が、文末焦点という情報構造上の要請だけでなく、文末重量という純粋に統語的なバランス感覚からも動機づけられる、洗練された構文操作であることが理解できる。

4. 強調構文・分裂文と受動態

文中の特定の要素を際立たせて強調する方法として、受動態以外にも、強調構文(It-Cleft)や疑似分裂文(Pseudo-Cleft)といった統語操作が存在する。これらの構文は、受動態と組み合わせられることで、さらに強力で精密な焦点化を実現することができる。強調構文は「It is/was [強調したい要素] that/who …」の形で、文の一部を切り出してスポットライトを当てる。疑似分裂文は「What … is/was [強調したい要素]」の形で、文の内容を二つに分け、後半で焦点を提示する。

これらの構文と受動態を組み合わせることで、書き手は情報構造を自在に操作し、複雑な論理関係や対比を極めて明確に表現することが可能になる。高度な英文では、これらの構文が頻繁に用いられるため、その構造と機能を理解することは読解力向上に直結する。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、強調構文や疑似分裂文の基本的な構造と機能を理解できる。第二に、これらの構文が受動態と組み合わされる際に、どのようにして特定の要素(動作主、被動者、手段など)が二重に強調されるのかを分析できる。第三に、高度な論理性が求められる文章において、これらの複雑な構文が持つ修辞的な効果を正確に読み解くことができる。

4.1. 強調構文(It-Cleft)と受動態の組み合わせ

強調構文(It-Cleft)は、「It is/was [X] that …」という枠組みを使い、文の構成要素[X](主語、目的語、副詞句など)を抜き出して、それに強い焦点を当てる構文である。この構文の that 以下の節が受動態である場合、あるいは抜き出された要素[X]が受動態のby句である場合、焦点化の効果はさらに増幅される。なぜなら、受動態による視点操作と、強調構文による要素の摘出という、二段階の操作が加わるからだ。

特に、by句全体を強調構文で抜き出す「It was by [動作主] that … was done.」という形は、「〜が行われたのは、まさに[動作主]によってであった」と、行為の主体を極めて強く特定・強調する際に用いられる。これは、単なる受動態でby句を文末に置くよりも、はるかに強い修辞的効果を持つ。読者の注意を特定の情報に強制的に向けるため、議論の核心部分や驚くべき事実を提示する際に効果的である。

この原理から、強調構文と受動態の組み合わせを分析・解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文が「It is/was … that …」という強調構文の形をとっていることを確認する。It is/was と that の間に置かれている要素が、強調されている焦点である。

手順2:It is/was と that の間に置かれている、強調されている要素[X]は何かを特定する。これは名詞句、前置詞句、副詞節などであり得る。

手順3:that以下の節の構造を分析し、それが受動態になっていないか確認する。受動態になっている場合、動作主は焦点[X]として抜き出されているか、省略されているかを判断する。

手順4:強調されている要素[X]が、受動態の文のどの部分(主語、目的語、by句、副詞句)に由来するものかを判断し、書き手がなぜその要素を二重に強調したかったのか、その意図を推測する。

例1:It was this controversial theory that was fiercely debated by scholars for decades.
→ 強調されているのは、受動態の主語である this controversial theory。「何十年も学者によって激しく議論されたのは、まさにこの物議を醸す理論であった」と、議論の対象を強く特定している。他の理論ではなく「この理論」であることが焦点である。

例2:It was by the relentless efforts of countless activists that these fundamental human rights were finally secured.
→ 強調されているのは、受動態の動作主を表すby句 by the relentless efforts of countless activists 全体。「これらの基本的人権が最終的に確保されたのは、まさに数えきれない活動家たちの絶え間ない努力によってであった」と、権利獲得の原動力を最大限に強調している。活動家たちの貢献を際立たせる効果がある。

例3:It was not until the invention of the microscope that the existence of microorganisms was confirmed.
→ 強調されているのは、not until … という時を表す副詞句。「微生物の存在が確認されたのは、顕微鏡の発明まで待たねばならなかった(顕微鏡が発明されて初めて確認された)」と、歴史的な転換点を強調している。that 以下の節は受動態 was confirmed である。

例4:It is through this complex mechanism that the drug’s therapeutic effects are believed to be produced.
→ 強調されているのは、手段を表す前置詞句 through this complex mechanism。「その薬の治療効果が生み出されると考えられているのは、この複雑なメカニズムを通じてである」と、作用機序を強調している。that 以下の節は、繰り上げ構文を含む受動態 are believed to be produced になっている。

以上により、強調構文と受動態の組み合わせが、単なる情報の提示ではなく、特定の情報を際立たせ、読者の注意を喚起するための高度な修辞的装置であることを理解できる。

4.2. 疑似分裂文(Pseudo-Cleft)と受動態

疑似分裂文(Pseudo-Cleft)は、「What [S + V] … is/was [X]」の形で、文が伝えたい情報を二つに「分裂」させ、前半の What 節で聞き手の注意を引きつけ、後半のbe動詞の後ろに置かれた要素[X]に焦点を当てる構文である。この構文も受動態と組み合わせることが可能である。特に、What 節の中が受動態であったり、焦点となる要素[X]が受動態のby句であったりする場合がある。

疑似分裂文は、強調構文ほど強い切り出しの印象はないが、「これから話すことの中で重要なのは…」と前置きしてから焦点を提示するため、より自然で談話的な流れの中で情報を整理・強調する機能を持つ。なぜこの構文が効果的かと言えば、それは「What S did was…」の形で、まず聞き手に「彼が何をしたかというと…」と問いかけ、答え(焦点)への期待を高めることができるからだ。前提となる情報と焦点となる新情報を明確に分離することで、論点を整理する効果がある。

この原理から、疑似分裂文と受動態の組み合わせを分析・解釈するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文が「What-節 … is/was [焦点]」という疑似分裂文の形をとっていることを確認する。What 節が前提を、be動詞以下が焦点を表す。

手順2:What 節の内容と、be動詞の後に置かれている焦点[X]は何かを特定する。焦点は名詞句、動詞句、あるいは節であり得る。

手順3:What 節の内部や、焦点[X]の部分が受動態に関連していないか(例: What was done… / …is what was needed)を分析する。受動態がどの層で機能しているかを判断する。

手順4:この構文が、情報をどのように整理し、どの部分を結論として強調しているのか、その修辞的効果を判断する。前提と焦点の対比を意識する。

例1:What was finally revealed by the investigation was a massive network of corporate corruption.
→ What 節の中が受動態 was revealed by the investigation になっている。「調査によって最終的に明らかにされたこと、それは…」と前置きし、焦点である a massive network of corporate corruption を強調している。調査結果の核心を印象的に提示する効果がある。

例2:What is needed for this project to succeed is not more funding, but a clear long-term vision.
→ What 節の中が受動態 is needed になっている。「このプロジェクトが成功するために必要なこと、それは…」と問いかけ、焦点 not more funding, but a clear long-term vision を対比的に強調している。資金ではなくビジョンだ、という主張が明確になる。

例3:A fundamental change in our energy policy is what is required to tackle climate change effectively.
→ 今度は、焦点部分が受動態 what is required… になっている。「我々のエネルギー政策の根本的な変化、それこそが気候変動に効果的に対処するために求められていることなのである」と、前半で提示した主題を、後半でその重要性を強調しながら再定義している。主張を力強く結論づける効果がある。

例4:What the team was criticized for was their lack of transparency, not their final decision itself.
→ What 節が for の目的語を問いかける形になっており、その節の中で受動態 was criticized が使われている。「チームが非難されたのは、その最終決定そのものではなく、彼らの透明性の欠如についてであった」と、非難の理由を明確に焦点化している。批判の焦点を正確に特定する効果がある。

以上により、疑似分裂文が受動態と組み合わされることで、情報を整理し、聞き手の期待を操作しながら、効果的に焦点を提示する洗練された談話戦略として機能することを理解できる。

5. 談話マーカーとしての受動態

高度な談話において、受動態は単に文の構造を変えるだけでなく、文章全体の論理的な流れを示す「談話マーカー」として機能することがある。例えば、論文や評論文において、先行研究を引用・紹介する際に「It has been argued that…」や「It is generally assumed that…」といった受動態表現が頻繁に用いられる。これは、特定の研究者の主張としてではなく、学界における一般的な見解や議論の出発点として客観的に提示する機能を持つ。また、自分の主張を展開する前の「譲歩」の構文として、「It must be admitted that…(確かに〜ことは認めねばならないが…)」のような受動態表現が使われることもある。

このように、受動態は、後に続く議論の性質を予告し、読者を論理的に導くための標識として戦略的に使用される。これらの定型表現を認識することは、論理的な文章の構造を素早く把握するための重要なスキルである。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、学術的な文章で頻出する非人称的な受動態表現が、客観的な事実や一般論を導入するための談話マーカーとして機能していることを認識できる。第二に、譲歩や対比を示す構文において、受動態がどのように修辞的な効果を生み出しているかを分析できる。第三に、これらの表現を自ら用いることで、より論理的で説得力のある文章を構築する能力を養う。

5.1. 一般論・先行研究の提示

学術論文や評論文の冒頭で、議論の前提となる一般論や、これまでの研究で言われてきたこと(先行研究)を提示する際、「It is said that…」「It is believed that…」「It has been argued that…」といった、形式主語 It を用いた非人称的な受動態構文が多用される。なぜこれらの表現が好まれるかと言えば、それは特定の個人の見解としてではなく、広く受け入れられている、あるいは議論の対象となっている「客観的な言説」として情報を導入するためである。これにより、書き手は個人の主張から距離を置き、より中立的で公平な立場から議論を開始していることを示すことができる。

People say that… のような能動態表現に比べて、これらの受動態表現は、はるかにフォーマルで学術的な響きを持つ。これらの表現は、いわば「これから一般論を述べます」という読者への合図、すなわち談話マーカーとして機能している。これらのマーカーを認識することで、筆者がどのような論理展開を行おうとしているかを予測できる。

この原理から、一般論を提示する受動態表現を解釈・運用するための具体的な手順が導かれる。

手順1:論文や評論文で It is/was/has been + [思考・伝達動詞の過去分詞] + that節 という構文を発見する。典型的な動詞には said, believed, thought, assumed, argued, reported, known, shown などがある。

手順2:これを、書き手自身の主張ではなく、議論の出発点となる「一般的な見解」「通説」「先行研究の主張」として認識する。書き手はこの見解を「自分のもの」としてではなく、客観的に紹介している。

手順3:多くの場合、書き手はこの後、However などの逆接の接続詞を用いて、この一般論に対する反論や、自身の新たな見解を展開していくことを予測する。一般論の提示はしばしば譲歩であり、本論への導入である。

手順4:自身で学術的な文章を書く際には、背景知識や通説を導入するために、これらの定型表現を効果的に使用する。これにより、自分の主張と他者の見解を明確に区別できる。

例1:It is often assumed that technological progress automatically leads to social well-being. This paper, however, challenges that simplistic assumption.
→ It is often assumed that… で「技術の進歩は社会の幸福に繋がるとしばしば想定されている」という一般論を提示し、次の文で however を使って、その一般論に異議を唱えるという本稿の目的を明確にしている。一般論への反論という論文の構造が明確に示されている。

例2:In the field of linguistics, it has long been debated whether language acquisition is primarily innate or learned.
→ it has long been debated that… で「言語習得が生得的か学習によるものかは長年議論されてきた」という、言語学における中心的な論争点を客観的に導入している。完了形 has been が使われ、過去から現在まで続く議論であることが示されている。

例3:It should be noted that all the data used in this study were collected before the policy change.
→ It should be noted that… は、「〜という点に注意が払われるべきである」と、読者に対して注意を促すための客観的なマーカーとして機能している。We should note that… よりも非人称的でフォーマルな印象を与える。データの限界を客観的に認める姿勢を示している。

例4:It is widely acknowledged that climate change poses an existential threat to coastal communities. What remains contentious is the most effective policy response.
→ It is widely acknowledged that… で「広く認められている」事実を提示し、続く文で「議論が残っている点」を示している。共通認識と論争点を明確に区別することで、論文の焦点を絞り込んでいる。

以上により、非人称的な受動態構文が、議論の土台となる情報を客観的に設定し、続く本格的な議論へと読者を導くための重要な談話マーカーとして機能していることを理解できる。

5.2. 譲歩構文における受動態

論理的な文章構成において、自らの主張を述べる前に、反対意見や不利な事実の一部を認める「譲歩」は、議論に深みと説得力を与えるための有効な修辞戦略である。この譲歩を示す際に、「It is true that…」「It must be admitted that…」「It cannot be denied that…」といった受動態の構文が頻繁に用いられる。なぜ受動態が使われるかと言えば、それは譲歩する内容を、個人的な意見としてではなく、誰もが認めざるを得ない「客観的な事実」として提示するためである。

これにより、書き手は公平な視点を持っていることを読者に示し、その後の反論(but や however で導かれる主張)の正当性を高めることができる。譲歩を認めることで、書き手の信頼性が高まり、主張がより説得力を持つ。これらの表現は、「確かに〜ではあるが」と前置きし、本題への導入をスムーズにする談話マーカーとして機能する。これらのマーカーを見つけたら、後に逆接が続くことを予測できる。

この原理から、譲歩構文における受動態の機能を分析・運用するための具体的な手順が導かれる。

手順1:文章中で It is true that… や It must be admitted that… のような構文を見つける。他にも It is undeniable that…, It cannot be ignored that…, Granted that… などがある。

手順2:これを、書き手がこれから展開する主張の前に置かれた「譲歩」のシグナルとして認識する。この部分は書き手の本来の主張ではなく、対立する見解の承認である。

手順3:that節で認められている内容と、その後に続く but や however 以下の主節で述べられる、書き手の本当の主張との対比関係を正確に把握する。譲歩と主張のバランスを読み取る。

手順4:自身で議論を展開する際に、予想される反論を先取りして認めるために、これらの譲歩構文を戦略的に使用する。これにより、議論が一方的にならず、説得力が増す。

例1:It is true that renewable energy sources like solar and wind are intermittent. However, recent advances in battery storage technology can largely mitigate this problem.
→ It is true that… で再生可能エネルギーの欠点(断続性)を一旦認めた上で、However 以下でその問題が解決可能であるという自らの主張を展開している。反対意見を認めつつも、それを乗り越える解決策を提示する構成である。

例2:It must be admitted that the new policy has some unintended negative consequences for small businesses. Nevertheless, its overall contribution to the national economy is overwhelmingly positive.
→ It must be admitted that… で政策のマイナス面を認めることで、公平な視点を示し、その上で「それでもなお、全体としてはプラスである」という結論の説得力を高めている。「認めねばならない」という表現が譲歩の強さを示している。

例3:While it cannot be denied that globalization has exacerbated economic inequality in some cases, it has also lifted hundreds of millions of people out of extreme poverty.
→ it cannot be denied that… は「〜であることは否定できない」という強い譲歩を示す表現。グローバル化の負の側面を認めた上で、それ以上に大きな正の側面があったことを主張している。While 節に譲歩を置き、主節に主張を置く構成が論理を明確にしている。

例4:Granted, the initial results were not as promising as we had hoped, but subsequent experiments under different conditions have yielded far more significant outcomes.
→ Granted は It is granted that… を簡略化したもので、同様に譲歩を示す。「確かに最初の結果は期待外れだったが」と前置きし、本題である後の成功を強調している。簡潔な譲歩表現として学術文で多用される。

以上により、譲歩構文における受動態が、議論を一方的なものにせず、多角的な視点を取り入れていることを示すことで、書き手の主張の信頼性を高めるための高度な修辞的装置であることを理解できる。

体系的接続

  • [M19-語用] └ パラグラフ構造(主題文、支持文、結論文)と態の選択がどのように連動し、一貫した論理の流れを生み出すかを分析する。
  • [M23-語用] └ 推論と含意の読解において、受動態の選択(特にby句の省略)が、書き手が明示していない情報をどのように暗示しているかを考察する。
  • [M16-語用] └ 代名詞・指示語による照応関係と態の選択が連携し、談話の結束性(cohesion)をいかに強化するかを、よりミクロなレベルで分析する。

談話:態と談話の結束性

態の選択は、単一の文やパラグラフのレベルにとどまらず、複数のパラグラフから成る文章全体、すなわち「談話(ディスコース)」の構造と結束性(cohesion)にまで影響を及ぼす。談話の結束性とは、各文やパラグラフが互いに論理的に結びつき、全体として一つのまとまった意味を形成している性質を指す。受動態は、文章全体の主題(グローバル・トピック)を一貫して維持し、情報の流れを段落間でスムーズに接続し、特定の文体(ジャンル)、特に客観性が重んじられる学術的文章のトーンを確立するための、マクロレベルでの戦略的ツールとして機能する。この最終層では、これまで見てきた統語・意味・語用の知識を統合し、より大きな談話レベルで態がどのように機能しているかを分析する。これにより、英文をミクロな視点とマクロな視点の両方から立体的に読解し、また自らも構成のしっかりした長文を構築する能力を完成させる。

1. パラグラフ間の結束性と態の選択

複数のパラグラフから成る長文において、各パラグラフはそれ自体で完結しつつも、前後のパラグラフと論理的に結びついていなければならない。このパラグラフ間の「つなぎ」を円滑にする上で、態の選択は重要な役割を担う。特に、あるパラグラフの結論部分で提示された情報が、次のパラグラフの主題(トピック)として導入される際に、受動態は効果的な橋渡し役となる。なぜなら、前パラグラフの文末(焦点位置)にある新情報を、次パラグラフの文頭(主題位置)にスムーズに移動させるという、語用層で学んだ情報構造の最適化が、パラグラフをまたいで適用されるからである。このマクロな視点を持つことで、文章全体の論理の流れがどのように構築されているかを深く理解できる。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、パラグラフ間の情報の流れ(旧情報と新情報の連鎖)を意識し、文章全体の構造を把握できる。第二に、パラグラフの冒頭で受動態が用いられている場合に、それが前パラグラフからの論理的な接続を確立するための戦略である可能性を分析できる。第三に、自身で複数のパラグラフから成る文章を作成する際に、態を効果的に用いて、パラグラフ間の移行をスムーズにし、結束性の高い文章を構築できる。第四に、長文読解において、パラグラフの冒頭を読んだ瞬間に、前パラグラフとの関係を即座に把握する読解スキルが向上する。

1.1. 前パラグラフの焦点の主題化

長文読解において、あるパラグラフから次のパラグラフへの移行が唐突に感じられることがある。しかし、優れた文章では、この移行は巧みに設計されている。その一般的な戦略の一つが、前パラグラフの最終文(あるいは結論部分)で焦点として提示された新情報を、次パラグラフの冒頭文の主題(主語)として設定することである。これにより、読者は既知の情報(前パラグラフで学んだこと)を足がかりに、新しい議論の段階へとスムーズに移行できる。

受動態は、この「焦点の主題化」を実現するための強力な手段となる。前パラグラフの焦点であった名詞句が、次パラグラフの議論においては動作の受け手となる場合、受動態を用いてその名詞句を主語に据えることで、理想的な情報の流れが生まれる。このマクロレベルでの旧情報→新情報サイクルの理解は、文章全体の設計図を読み解く鍵となる。パラグラフ間の接続を意識することで、長文全体の論理構造が透明に見えてくる。

この原理から、パラグラフ間の接続における態の機能を分析するための具体的な手順が導かれる。

手順1:あるパラグラフ(パラグラフA)の最終部分を読み、そこで焦点となっている新情報(名詞句)は何かを特定する。パラグラフの結論部分に登場する新しい概念や要素に注目する。

手順2:次のパラグラフ(パラグラフB)の冒頭文(トピックセンテンス)を読み、その主語がパラグラフAの焦点情報を受け継いでいるかを確認する。代名詞、同義語、あるいは同一名詞句による連結を確認する。

手順3:パラグラフBの冒頭文が受動態である場合、その選択が、前パラグラフからの焦点情報を主題として設定するために不可欠であったかを検証する。能動態では主題が別の要素になり、接続が不自然にならないかを思考実験する。

手順4:このパラグラフ間の情報の連鎖が、文章全体の論理展開(例:原因→結果、全体→部分、問題→解決策など)にどう貢献しているかを考察する。

例1:
(パラグラフAの末尾)…Thus, the Industrial Revolution led to the unprecedented concentration of population in urban centers.
(パラグラフBの冒頭)These newly formed urban centers were plagued by a host of problems, including poor sanitation, overcrowded housing, and rampant crime.
→ パラグラフAの焦点 the unprecedented concentration of population in urban centers を、パラグラフBが These newly formed urban centers という形で主題として引き継いでいる。2文目では受動態 were plagued by を用いることで、この主題を維持し、新たな問題点へと議論を展開している。能動態 “A host of problems plagued these urban centers.” では、主題が problems に移ってしまい、都市への焦点が弱まる。

例2:
(パラグラフAの末尾)…Ultimately, the committee proposed a radical new policy aimed at restructuring the entire organization.
(パラグラフBの冒頭)This radical new policy was met with immediate and fierce resistance from long-serving employees.
→ パラグラフAの焦点 a radical new policy を、パラグラフBが This radical new policy として主題に設定している。受動態 was met with を用いることで、主題を維持しつつ、その主題に対する反応(抵抗)という新しい情報へと議論を進めている。能動態 “Long-serving employees met this policy with fierce resistance.” では、主題が employees に唐突に変わってしまう。

例3:
(パラグラフAの末尾)…The research team eventually identified a previously unknown genetic marker linked to the disease.
(パラグラフBの冒頭)This genetic marker has since been extensively studied by laboratories around the world.
→ パラグラフAで導入された a previously unknown genetic marker が、パラグラフBで This genetic marker として主題化されている。受動態 has since been extensively studied により、遺伝マーカーを主題として維持しながら、研究の広がりという新展開を示している。

例4:
(パラグラフAの末尾)…The scandal ultimately led to the resignation of the company’s CEO.
(パラグラフBの冒頭)The resignation was followed by a dramatic restructuring of the entire management team.
→ パラグラフAの焦点 the resignation が、パラグラフBで The resignation として主題化されている。受動態 was followed by により、辞任を主題として維持しながら、その後に起こった出来事へと議論を展開している。

以上により、パラグラフ冒頭の受動態が、単独で存在するのではなく、より大きな談話構造の中で、パラグラフ間の論理的な橋渡し役として機能していることを深く理解できる。

1.2. グローバル・トピックの維持

長文、特に学術的な論文や報告書は、文章全体を貫く中心的な主題、すなわち「グローバル・トピック」を持つ。各パラグラフは、このグローバル・トピックの異なる側面(例えば、歴史、メカニズム、影響、将来の展望など)を論じる下位の単位として機能する。文章全体の結束性を維持するためには、読者が常にこのグローバル・トピックを意識できるよう、各パラグラフがそれと明確に関連している必要がある。

態の選択は、このグローバル・トピックの維持にも貢献する。あるパラグラフがグローバル・トピックのある側面を論じる際、その側面が動作の受け手である場合、受動態を用いてそれを主語に据えることで、パラグラフの主題と文章全体の主題との関連性を明確に示すことができる。なぜなら、各パラグラフのトピックセンテンス(冒頭文)の主語が、グローバル・トピックと直接的・間接的に関連していることで、読者は文章全体の構造の中で現在地を見失うことがなくなるからである。グローバル・トピックへの言及が途切れると、読者は「何の話をしているのか」と混乱してしまう。

この原理から、グローバル・トピックを維持するための態の選択を分析する手順が導かれる。

手順1:文章全体のタイトルや序論から、その文章のグローバル・トピックは何かを特定する。タイトルや序論の最終文に明確に示されていることが多い。

手順2:各パラグラフのトピックセンテンスを読み、その主語がグローバル・トピックとどのように関連しているか(同じ単語、代名詞、同義語、下位概念、関連概念など)を確認する。

手順3:あるパラグラフのトピックセンテンスが受動態である場合、その受動態がグローバル・トピックの特定の側面を主題として設定するために機能していることを確認する。

手順4:もしその文が能動態であれば、主語がグローバル・トピックから逸れてしまい、パラグラフの役割が不明確にならないかを検討する。グローバル・トピックとの関連が維持されているかを常に意識する。

例(グローバル・トピック:The Theory of Plate Tectonics):
(序論パラグラフ)This paper provides a comprehensive overview of the theory of plate tectonics, from its historical development to its modern applications.
(第1パラグラフ冒頭)The theory was first formally proposed in the 1960s, building on earlier concepts of continental drift.
(第2パラグラフ冒頭)The fundamental mechanism of plate movement is explained by convection currents in the Earth’s mantle.
(第3パラグラフ冒頭)Numerous geological phenomena, such as earthquakes, volcanic eruptions, and mountain formation, are interpreted through the lens of this theory.
(第4パラグラフ冒頭)In recent years, the theory has been refined by satellite-based GPS measurements and advanced seismological data.
→ 各パラグラフの冒頭文は、すべてグローバル・トピックである「プレートテクトニクス理論」に直接関連する要素(The theory, The fundamental mechanism, geological phenomena, the theory)を主語にしている。
→ 第1、第3、第4パラグラフでは、それぞれ受動態(was proposed, are interpreted, has been refined)を用いることで、理論の「歴史」「解釈」「発展」という側面を主題として設定し、グローバル・トピックとの一貫性を保っている。読者は各パラグラフがプレートテクトニクス理論について述べていることを常に意識できる。

以上により、態の選択が、パラグラフ内の結束性だけでなく、文章全体の構造的な統一感を維持するためのマクロな戦略として機能していることが理解できる。

2. 学術的文章(アカデミック・ライティング)と態

学術的文章、すなわち論文や研究レポートといったジャンルでは、他のどのジャンルよりも受動態が頻繁に、かつ体系的に使用される。これは、学術コミュニケーションが客観性、正確性、そして非人称性を重んじるという、そのジャンル特有の要求に、受動態の持つ機能が極めてよく合致するからである。研究者個人の主観や意見ではなく、研究プロセスや発見された事実そのものを前景化するために、動作主(研究者)を意図的に背景化する受動態が戦略的に選択される。このジャンルにおける態の使い分けを理解することは、学術論文を批判的に読解し、また自らもその作法に則って執筆するための必須の能力である。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、学術的文章で受動態が多用される理由を、客観性、非人称性、焦点化の観点から説明できる。第二に、論文の典型的なセクション(序論、方法、結果、考察)ごとに、態の選択パターンがどのように異なるか、その機能的な理由を分析できる。第三に、能動態(特に we の使用)が許容される、あるいは推奨される文脈を理解し、受動態の過剰な使用を避けた、バランスの取れた学術的文章のスタイルを認識できる。

2.1. 論文のセクションと態の選択パターン

学術論文は、通常、序論(Introduction)、方法(Methods)、結果(Results)、考察(Discussion)という標準的な構造(IMRaD構造)を持つ。態の選択は、これらの各セクションが担う機能に応じて、特徴的なパターンを示す。このパターンを理解することで、論文の各セクションを読む際の期待が明確になり、読解効率が向上する。

方法(Methods)セクションでは、実験の手順や使用した材料を記述するため、受動態が最も多用される。なぜなら、ここでの目的は、研究者個人の行為ではなく、客観的で再現可能な「手順」を記述することだからだ。「The samples were heated to 100°C.」のように、操作の対象を主語にすることで、研究者は文の表面から姿を消し、手順そのものが前景化される。これにより、他の研究者がこの手順を再現できることが強調される。

結果(Results)セクションでも、発見された事実を客観的に報告するために受動態が頻繁に用いられる。「A significant correlation was found between X and Y.」や「It was observed that…」といった表現は、結果が研究者の主観的な解釈ではなく、データから客観的に導かれたものであることを示す。発見を研究者の功績としてではなく、データが示す事実として提示するのである。

一方、考察(Discussion)セクションでは、能動態と受動態が戦略的に使い分けられる。先行研究や一般論に言及する際は受動態(It has been argued that…)が、自らの結果を解釈し、結論を主張する際は能動態(Our results suggest that… / We argue that…)が用いられる。これにより、既知の事実と自身の新たな貢献とが明確に区別される。自分たちの主張を明確にする場面では、能動態が効果的である。

序論(Introduction)では、研究の背景を述べるために受動態が、研究の目的を明確にするために能動態が使われるなど、両者が混在する。「Previous studies have shown that…(受動態的表現)」で背景を示し、「In this study, we investigate…(能動態)」で目的を示すというパターンが典型的である。

この原理から、論文の各セクションにおける態の選択を分析・適用するための手順が導かれる。

手順1:自分が読んでいる、あるいは書いているのが論文のどのセクション(方法、結果、考察)であるかを意識する。セクションの機能に応じた態の期待を持つ。

手順2:【方法】セクションでは、手順の客観性と再現性を重視し、操作対象を主語とする受動態を基本とする。「We heated the samples…」より「The samples were heated…」が好まれる。

手順3:【結果】セクションでは、発見の客観性を重視し、「〜が発見された」「〜が観察された」という受動態表現を効果的に用いる。データが主体であることを示す。

手順4:【考察】セクションでは、自身の主張や解釈を示す部分では能動態(We argue…)を、先行研究や一般論を引用する部分では受動態(It is known that…)を意識的に使い分ける。自分の貢献と既知の知識を明確に区別する。

例(方法セクション):
The participants were randomly assigned to two groups. Blood samples were collected at three time points during the study. The samples were then analyzed using high-performance liquid chromatography.
→ すべての文で受動態が使用され、手順の客観的な記述に徹している。誰がこれらの操作を行ったかは重要ではなく、何が行われたかが重要である。

例(結果セクション):
A statistically significant difference was observed between the two groups (p < .05). No adverse effects were reported by any of the participants during the study period.
→ 結果の報告において、発見が客観的な事実として提示されている。

例(考察セクション):
It has been widely believed that X leads to Y. However, our findings suggest that this relationship is more complex than previously thought. We propose a new model that accounts for these discrepancies.
→ 前半で一般論を受動態で紹介し、後半で自分たちの発見と提案を能動態で明示している。

以上により、学術論文における態の選択が、単なる慣習ではなく、各セクションの機能と科学的コミュニケーションの要求に基づいた、高度に論理的な戦略であることを理解できる。

2.2. 客観性と非人称性の修辞学

学術的文章における受動態の多用は、客観性(objectivity)と非人称性(impersonality)という、科学的言説の根幹をなす修辞的な目標を達成するための手段である。科学的な知見は、それを発見した個人の主観的な信念や感情から独立した、誰にでも検証可能な客観的な事実として提示されなければならない。受動態、特に動作主である研究者(I, we)を省略した受動態は、この「研究者個人の消去」を可能にする。

なぜこの操作が修辞的に強力かと言えば、それは文の主体を行為者(研究者)から研究対象やプロセスそのものへと移すことで、「私がこう考えた」という主観的な報告から、「(データによって)こう示された」という客観的な事実の提示へと、文のステータスを格上げするからだ。「I observed a change.」という文は個人的な経験の報告に留まるが、「A change was observed.」という文は、誰が観察したかに関わらない普遍的な事実としての響きを持つ。この「非人称化」の効果は、科学的主張の信頼性と権威を高める上で決定的な役割を果たす。

この原理から、客観性を高めるための受動態の修辞的機能を分析・運用する手順が導かれる。

手順1:記述したい内容が、個人的な意見・解釈なのか、それとも客観的な事実・手順として提示したいのかを明確に区別する。科学的な報告では後者が基本となる。

手順2:客観的な事実、実験手順、研究結果として提示したい場合は、動作主(I, we)を主語にすることを避け、研究対象やプロセスを主語とする受動態を選択する。行為者ではなく対象に焦点を当てる。

手順3:特に、思考や伝達を表す動詞(assume, believe, report など)を It is assumed that… のような非人称の受動態構文で用いることで、それが個人の見解ではなく、一般的な前提や報告であることを示す。

手順4:ただし、近年の科学界では、特に序論や考察において、we を主語とする能動態を用いることで、研究の論理展開や著者らの貢献を明確にするスタイルも推奨されている。受動態の過剰な使用は、かえって文章を曖昧で読みにくくする(特に責任の所在が不明確になる)という批判もあるため、文脈に応じたバランスが重要である。責任を明確にすべき場面では能動態を選択する。

例1:【主観的】I analyzed the data using SPSS.
→【客観的】The data were analyzed using SPSS.
→ 分析という手順そのものに焦点を当て、再現可能性を強調している。

例2:【主観的】I think this result is significant.
→【客観的】This result is considered to be significant.
→ 結果が有意であると「見なされる」という、より客観的な評価を示す。個人の意見ではなく、客観的な判断として提示される。

例3:【主観的】I hypothesize that temperature affects the reaction rate.
→【客観的】It is hypothesized that temperature affects the reaction rate.
→ 仮説が個人的な思いつきではなく、論理的な前提として立てられたことを示す。

例4:【バランスの取れた主張】It is generally known that X is true. However, we found that Y is the case under specific conditions. We therefore propose that Z.
→ 一般論を客観的に提示した上で(受動態的表現)、自分たちの発見と提案を能動態で明確に主張する。既知の知識と自身の貢献の区別が明確である。

以上により、受動態が学術的文章において、単に事実を報告するだけでなく、その報告を「客観的」かつ「非人称的」なものとして権威づけるための、洗練された修辞的装置として機能していることを理解できる。

3. 文体(ジャンル)と態の頻度

態の選択、特に受動態の使用頻度は、文章が属する文体(ジャンル)によって大きく異なる。これまで見てきたように、客観性と非人称性が重視される学術論文や科学レポート、あるいは法律文書やニュース報道といったジャンルでは、受動態は極めて高い頻度で出現する。一方で、個人の経験や感情を表現する物語、日記、手紙、あるいは日常的な会話といった非公式なジャンルでは、行為の主体が明確な能動態が圧倒的に優勢となる。

なぜこのような差が生まれるかと言えば、それは各ジャンルが持つコミュニケーション上の目的が根本的に異なるからだ。学術文が客観的な事実の伝達を目指すのに対し、物語は登場人物の行為や感情移入を促すことを目指す。態の選択は、その文章がどのジャンルに属し、どのような読者を想定し、何を達成しようとしているのかを反映する、文体上の重要な指標となる。ジャンルと態の関係を理解することで、適切な文体を選択・判断する能力が向上する。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、文章のジャンル(学術文、ニュース、物語、会話など)を特定し、そこでの受動態の使用頻度や機能について妥当な予測を立てることができる。第二に、異なるジャンルの文章を比較し、態の選択がどのように文体的な効果(フォーマルさ、客観性、主観性、臨場感など)を生み出しているかを分析できる。第三に、自身が文章を作成する際に、そのジャンルと目的に応じて、能動態と受動態の比率を適切に調整する文体的な感覚を養うことができる。

3.1. フォーマルな文体と受動態

フォーマルな文体、特に学術論文、公的報告書、法律文書、ニュース報道などで受動態が多用されるのは、主に二つの理由による。第一に、これらのジャンルでは、行為の主体(個人)よりも、行為そのもの、プロセス、規則、あるいは出来事に焦点を当てることが求められるからである。受動態は、行為の主体を背景化または消去し、出来事を客観的に記述するための最適な構文を提供する。

第二に、フォーマルな文体は、非人称的で権威あるトーンを特徴とする。受動態を用いることで、書き手は個人的な意見や感情から距離を置き、中立的で公平な観察者としての立場を演出することができる。例えば、ニュース報道で「The suspect was arrested.」と表現するのは、「Police arrested the suspect.」と言うよりも、警察の行為を強調するのではなく、逮捕という事実を客観的に報告するのに適している。このように、受動態はフォーマルなジャンルにおける客観性と非人称性の要求を満たすための修辞的な選択なのである。

この原理から、フォーマルな文体における受動態の機能を分析・適用するための手順が導かれる。

手順1:対象となる文章が、学術、行政、法、報道といったフォーマルなジャンルに属するかを確認する。これらのジャンルでは受動態の頻度が高いことを予期する。

手順2:受動態が用いられている箇所を特定し、その文が「誰が」行ったかよりも「何が」なされたかという事実に焦点を当てていることを確認する。行為者ではなく結果や過程が重要視されている。

手順3:受動態の選択が、文章全体のトーンをより客観的、非人称的、そして権威あるものにしている効果を分析する。同じ内容を能動態で書いた場合との印象の違いを比較する。

手順4:自身でフォーマルな文章を作成する際には、手順の記述、事実の報告、規則の明示など、客観性が求められる箇所で受動態を戦略的に使用する。

例1:【法律】All employees are required to complete the mandatory safety training by the end of the month.
→ 行為の主体(会社や経営者)を明示せず、「すべての従業員は〜することが要求される」という規則そのものを客観的に述べている。規則の普遍性と権威が強調される。

例2:【ニュース報道】Several historic buildings were damaged by the earthquake that struck the region last night.
→ 地震によって「建物が被害を受けた」という事実と結果に焦点を当てている。被害状況を客観的に報告するのに適している。誰が建物を所有しているかなどは二次的な情報となる。

例3:【公的報告書】It has been determined that the current infrastructure is insufficient to meet future demand.
→ 「〜と断定された」と非人称的に述べることで、特定の個人の判断ではなく、組織としての公式な結論であることを示している。決定の権威と客観性が強調される。

例4:【製品マニュアル】The device should be charged for at least three hours before first use.
→ 使用者に対する指示を、You should charge… という直接的な命令ではなく、The device should be charged… という客観的な推奨の形で提示している。これにより、よりフォーマルで丁寧な印象を与える。

以上により、フォーマルな文体における受動態の選択が、そのジャンル特有のコミュニケーション上の要求(客観性、非人称性)を満たすための、洗練された文体的戦略であることを理解できる。

3.2. インフォーマルな文体と能動態

インフォーマルな文体、例えば日常会話、友人へのメールや手紙、物語、個人のブログなどでは、能動態が圧倒的に優勢である。これは、これらのジャンルが、客観的な事実の伝達よりも、行為の主体である「人」の経験、感情、意図を生き生きと伝えることを主目的とするからだ。能動態は、「誰が何をしたか」という人間中心の物語を語るのに最も直接的で自然な構文である。

行為者を明確な主語として文頭に置くことで、文はダイナミックで、パーソナルなものになる。受動態は、このような文脈では、回りくどく、よそよそしい、あるいは不自然な印象を与えることが多い。例えば、友人に「I saw a great movie last night.」と言うのが自然であり、「A great movie was seen by me last night.」と言うと、奇妙で滑稽にさえ聞こえる。インフォーマルなコミュニケーションでは、行為の主体を明確にし、直接的な表現を用いることが、親密さや臨場感を生み出す鍵となる。

この原理から、インフォーマルな文体における態の選択を分析・適用するための手順が導かれる。

手順1:対象となる文章が、会話、物語、手紙といったインフォーマルなジャンルに属するかを確認する。これらのジャンルでは能動態が優勢であることを予期する。

手順2:行為の主体(I, you, he, she, a specific person’s name)が明確であり、その人物の行動や経験が話の中心となっていることを確認する。人間中心の語りが特徴である。

手順3:このような文脈では、行為者を主語とする能動態が、最も直接的で効果的な表現であることを理解する。受動態は距離感を生み、不自然になりやすい。

手順4:インフォーマルな文脈で受動態が使われている場合、それは特別な効果(ユーモア、皮肉、あるいは予期せぬ出来事の強調など)を狙ったものである可能性を検討する。例えば、「My bike was stolen!」は、犯人が不明な状況で被害を訴える自然な表現である。

例1:【日常会話】“I’m making dinner right now. What time are you coming home?”
→ I や you といった会話の参加者が主語であり、彼らの行動が話題の中心。能動態が自然であり、直接的なコミュニケーションが成立している。

例2:【物語】The old man opened the heavy wooden door and stepped into the dusty room. A single ray of light cut through the darkness.
→ 物語は登場人物の行動を追う形で進むため、能動態が基本となる。これにより、読者は登場人物の視点に立って物語を体験する。行為者の動きが臨場感を生む。

例3:【友人へのメール】“I finally finished that report you asked about! I’ll send it to you tomorrow.”
→ コミュニケーションの主体である I と you が中心。能動態によって、直接的でパーソナルなやり取りが成立している。親密さと自然さが感じられる。

例4:【ユーモラスな受動態】“Oops, the cake was eaten.” (子供が自分がケーキを食べたことを隠そうとして)
→ 動作主(自分)を意図的に省略した受動態。責任を回避しようとする意図が透けて見え、ユーモラスな効果を生んでいる。通常は能動態が自然な文脈での受動態使用は、特別な効果を狙っている。

以上により、インフォーマルな文体における能動態の優位性が、そのジャンルにおけるコミュニケーションの目的(主観性、直接性、臨場感)と深く結びついていることを理解できる。

4. 修辞的効果と態の選択

ここまでの議論を超え、態の選択は、時に文章に特別な修辞的効果、例えばサスペンスの創出、皮肉(アイロニー)の表明、あるいは特定の要素への劇的な焦点化といった、より文学的・芸術的な効果をもたらすために戦略的に用いられることがある。これは、態の選択が単なる情報構造の最適化にとどまらず、読者の感情や期待を操作するための高度なテクニックとなりうることを意味する。

例えば、ミステリー小説において、犯人を明かさずに被害者の視点から出来事を描写するために受動態を用いることで、サスペンスを高めることができる。このように、態の標準的な機能から意図的に逸脱することで、書き手は読者に強い印象を与え、文章の表現力を豊かにすることができる。文学的な文章を読解する際には、態の選択が持つ修辞的な意図を読み取る感性が求められる。

この原理的理解を通じて、以下の能力が確立される。第一に、受動態がサスペンスやミステリーの雰囲気を創出するためにどのように利用されるかを分析できる。第二に、態の選択が皮肉や批判といった含意をどのように伝えるかを解釈できる。第三に、能動態と受動態を意図的に対比させることで生まれる修辞的な効果を理解できる。

4.1. サスペンスの創出と視点操作

物語、特にミステリーやスリラーといったジャンルにおいて、受動態はサスペンスを創出し、読者の視点を巧みに操作するための強力な修辞的装置となる。動作主(犯人、脅威の源など)をby句で明示せず、あるいは完全に省略した受動態を用いることで、書き手は「何が起こったか」という結果だけを提示し、「誰がそれを引き起こしたのか」という最も重要な情報を隠蔽することができる。

なぜこれがサスペンスを生むかと言えば、それは読者を、情報が制限された登場人物(しばしば被害者)と同じ視点に立たせるからだ。読者は、得体の知れない脅威に「〜される」という、登場人物の不安や恐怖を共有することになる。能動態で犯人の視点から描写するのとは対照的に、受動態は未知の脅威の存在を際立たせ、読者の好奇心と不安を煽るのである。「誰が?」という問いが解決されないまま物語が進行することで、緊張感が持続する。

この原理から、サスペンス創出のための受動態の機能を分析する手順が導かれる。

手順1:物語の文脈で、動作主が不明な、あるいは脅威となる受動態文を特定する。(例: “A strange noise was heard from the attic.”)by句の不在に注目する。

手順2:その文が、読者に「誰が?」あるいは「何が?」という疑問を抱かせ、不安や好奇心を喚起している効果を分析する。情報の欠落が生む心理的効果を意識する。

手順3:その場面が、もし動作主を明かした能動態で書かれていた場合、サスペンスがいかに失われるかを比較検討する。(例: “A ghost made a strange noise…” と書けば、ミステリーは消え失せる)

手順4:物語全体を通じて、受動態による情報隠蔽が、クライマックスでの犯人の正体の暴露をいかに効果的にしているかを考察する。情報の段階的な開示という物語技法を理解する。

例1:The door was slowly pushed open. A dark figure could be seen standing in the doorway.
→ was pushed open と could be seen という受動態(および知覚動詞の受動態)が連続して使われている。ドアを「押した」主体も、人影を「見た」主体も明確にされていない。読者は、部屋の中にいる人物の視点から、未知の侵入者が現れる恐怖を体験する。

例2:He felt that he was being watched. Every shadow seemed to hold a hidden threat.
→ was being watched という進行形の受動態。誰が見ているのかが全く不明であることが、主人公のパラノイアと読者の不安を増幅させる。監視者の正体が隠されることで、脅威が遍在するように感じられる。

例3:A single red rose had been left on her pillow. No windows or doors were unlocked.
→ had been left という受動態。誰がバラを置いたのかという謎が提示される。侵入の痕跡がない(were unlocked の否定)ことが、謎をさらに深め、超自然的、あるいは極めて巧妙なストーカーの存在を示唆する。不可能犯罪の雰囲気が受動態によって醸成されている。

例4:As the detective examined the crime scene, he noticed that a crucial piece of evidence had been removed.
→ had been removed という受動態。何が、ではなく「誰が」証拠を持ち去ったのか、という新たな謎が生まれる。これは犯人が自身の痕跡を消そうとしていることを示唆し、物語に新たな展開をもたらす。受動態が新たな問いを生み出す装置として機能している。

以上により、受動態が単なる客観的描写に留まらず、物語の読者体験を能動的に構築し、サスペンスやミステリーの感情を喚起するための、計算された修辞的テクニックであることを理解できる。

4.2. 皮肉(Irony)と態の対比

皮肉(アイロニー)は、言葉の表面的な意味と、その背後にある本質的な意味とが食い違うことによって生まれる修辞技法である。態の選択、特に能動態と受動態の意図的な対比は、この皮肉を生み出すための効果的な手段となりうる。例えば、ある人物が自らの意志で積極的に行った(とされている)行為を、あえて受動態で表現することで、「彼は本当に自分の意志でやったのだろうか?」「実は誰かに操られているのではないか?」といった含意、すなわち皮肉なニュアンスを生み出すことができる。

逆に、明らかに外的要因によって引き起こされた出来事を、主語を人にして能動態で表現することで、その人物があたかもその不幸な出来事を自ら招いたかのような、皮肉な責任転嫁の響きを持たせることも可能である。このように、期待される態の選択を意図的に裏切ることで、書き手は表面的な記述の裏に隠された批判や嘲笑を暗示するのである。態と期待のずれが皮肉を生む。

この原理から、皮肉を生み出すための態の選択を分析する手順が導かれる。

手順1:文が記述している事態の性質と、そこで選択されている態(能動態か受動態か)との間に、ある種の「ずれ」や「不一致」がないかを感じ取る。期待される態と実際の態のずれに敏感になる。

手順2:その行為が主体的・能動的なものであるはずなのに、なぜ受動態で表現されているのか、その理由を考える。あるいはその逆を考える。意図的な態の選択が何を示唆しているかを推測する。

手順3:その「ずれ」が、書き手のどのような皮肉な視点(例:主体性の欠如への嘲笑、見せかけの受動性への批判など)を反映しているのかを解釈する。

手順4:文脈全体、特に書き手の全体的なトーンを手がかりに、その皮肉な解釈が妥当であるかを検証する。一文だけでなく、文脈全体から判断する。

例1:The “volunteer” was chosen by the committee to lead the arduous task.
→ volunteer(自発的な参加者)という言葉と、was chosen(選ばれた)という受動態との間に明確な矛盾がある。これは、彼が自発的に立候補したのではなく、厄介な仕事を押し付けられる形で「選ばれてしまった」という、非自発的な状況を皮肉を込めて表現している。引用符も皮肉を強調している。

例2:After complaining for weeks about his workload, he was finally relieved of his duties.
→ was relieved of his duties は、表面的には「任務を解かれた」という意味だが、文脈(仕事量への不満)から、彼が事実上「解雇された」ことを婉曲的かつ皮肉に表現している。「安心させられた(relieved)」という言葉の本来のポジティブな意味との間に皮肉な響きが生まれる。望んでいたことが最悪の形で実現した、という皮肉である。

例3:He went and got himself arrested for drunk driving.
→ got himself arrested は再帰代名詞を伴う特殊な能動態の形だが、「逮捕される」という受動的な出来事を、あたかも彼が「自ら進んで逮捕されに行った」かのように描写している。これは、彼の愚かな行為(飲酒運転)が逮捕という結果を招いたのは当然だ、という強い非難と皮肉を込めた表現である。

例4:“The decision was made, and we are all expected to follow it.” (A manager speaking to dissatisfied employees)
→ 管理者が決定の主体であるにもかかわらず、The decision was made と非人称的な受動態を用いることで、決定がどこか自分たちの手の届かない場所で下されたかのように装っている。we are all expected という受動態も、誰が期待しているのか(つまり管理者自身)を曖昧にしており、権威的で官僚的な態度を皮肉に響かせている。責任回避の姿勢が透けて見える。

以上により、態の選択が、単に視点を変えるだけでなく、言葉の額面通りの意味を裏切り、皮肉や批判といった深層のメッセージを伝えるための、高度な文学的・修辞的テクニックとして機能することを理解できる。

体系的接続

  • [M09-談話] └ 法助動詞が表すモダリティ(確信度、義務など)と態の選択が組み合わさることで、話者の主張の強さや態度がどのように調整されるかを分析する。
  • [M13-談話] └ 関係詞節内での受動態の使用が、先行詞に関する情報をいかに効率的かつ構造的に埋め込むか、複文レベルでの情報構造を考察する。
  • [M20-談話] └ 文章全体の論理展開の類型(例:原因分析、時系列記述、比較対照)ごとに、どのような態の選択パターンが典型的であるかを分析し、ジャンルごとのライティング戦略へと応用する。

このモジュールのまとめ

本モジュールでは、態(voice)を、単なる能動態と受動態の形式的な書き換え規則としてではなく、統語・意味・語用・談話の各層にまたがる、多機能的な文法装置として体系的に分析した。

統語層では、受動態の基本構造、すなわち目的語の主語化、動詞の形態変化(be + 過去分詞)、by句による動作主の表示といった統語変換のメカニズムを確立した。さらに、完了形・進行形・法助動詞と結合した複合形式や、SVOO・SVOCといった複雑な構文における受動態化の規則と制約を詳細に検討し、あらゆる構造の受動態文を正確に分析するための基礎を固めた。

意味層では、態の選択が文の意味内容に与える影響を掘り下げた。受動態が、動作主の顕在性を調整し(by句の表示・省略)、事態を被動者の視点から「状態変化」として概念化する機能を持つことを明らかにした。これにより、客観性の度合いや責任の所在の帰属といった、微妙だが重要な意味的ニュアンスが生まれることを学んだ。また、Be受動態とGet受動態の意味的な差異についても考察した。

語用層では、態が文の情報構造を最適化するための戦略的ツールとして機能することを分析した。「旧情報→新情報」の原則や「文末焦点」「文末重量」の原則に基づき、なぜ特定の文脈で受動態が選択されるのかを、書き手の情報伝達戦略という観点から解明した。これにより、態の選択を、読者の認知的負荷を軽減し、メッセージを効果的に伝えるための配慮として捉える視点を獲得した。強調構文や疑似分裂文との組み合わせ、談話マーカーとしての機能についても詳細に検討した。

そして談話層では、これら全ての知識を統合し、態がパラグラフ間の結束性を高め、文章全体の論理構造(グローバル・トピックの維持)を支えるマクロな機能を持つことを示した。特に、客観性が求められる学術論文などの特定のジャンルにおいて、態の選択がいかに体系的かつ戦略的に行われているかを分析し、態の理解が高度な読解力と表現力に直結することを明らかにした。文体(ジャンル)による態の使用頻度の違いや、修辞的効果としてのサスペンス創出や皮肉の表現についても考察した。

結論として、態の習熟とは、機械的な変換ルールの暗記ではなく、文脈の中で提示される情報、書き手の意図、そしてジャンルの要求を敏感に読み取り、最も効果的な情報伝達を実現するために、能動態と受動態という二つの異なる「レンズ」を自在に使い分ける能力に他ならない。この能力は、難関大学が要求する精密な読解力と、論理的で説得力のある文章作成能力の双方にとって、不可欠な基盤となる。


モジュール8:態と情報構造 演習編

英文読解において態の選択を正確に分析する能力は、文の表層的な意味を超えて、書き手がなぜその構文を選択したのかという深層の意図を読み解くために不可欠である。難関大学の入試では、受動態が選択されている理由を情報構造の観点から論理的に説明する力、動作受動態と状態受動態を文脈から正確に識別して適切な日本語訳を与える力、そしてby句の表示・省略が持つ意味的・語用論的な機能を読み取る力が問われる。特に、「旧情報→新情報の原則」「文末焦点の原則」「主題の連鎖」といった高度な語用論的知識を実際の文章理解と産出に適用できるかが、合否を分ける決定的な要素となる。本演習では、態の統語的形成規則から情報構造的機能、さらには談話レベルでの戦略的使用まで、講義編で習得した知識を実践的に運用する力を養成する。演習問題は、共通テスト追試・MARCH上位レベルから東大・京大・早慶上位レベルまで段階的に難易度が上昇する設計となっており、自己の到達度を正確に把握しながら弱点を特定することが可能である。

入試での出題分析

出題形式と難易度

項目評価
難易度★★★★★ 発展
分量多い
文脈理解の要求度極めて高い
情報構造の分析力極めて高い

頻出パターン

早慶

早稲田大学および慶應義塾大学の入試では、態の選択理由を情報構造の観点から分析させる問題が頻出する。長文読解において、特定の文が受動態になっている理由として、旧情報を主語に据え新情報を文末に配置するという原則や、パラグラフ内での主題の維持という観点から論理的に説明することが求められる。また、下線部和訳において、受動態が持つ「動作主の背景化」や「被動者への焦点化」といったニュアンスを日本語に適切に反映させる能力も重要な評価対象となる。特に慶應義塾大学法学部や早稲田大学政治経済学部では、学術的な論説文における受動態の戦略的使用を正確に読み取り、その機能を踏まえた訳出ができるかが問われる。受動態の選択が単なる文法的な操作ではなく、書き手の情報伝達戦略を反映した意図的な決断であることを理解していなければ、これらの問題で高得点を獲得することは困難である。

東大・京大・旧帝大

東京大学および京都大学をはじめとする旧帝国大学系の入試では、自由英作文において論理的な情報の流れを実現するために受動態を適切に運用する力が評価される。特に、学術的な文章における客観性の確立や、パラグラフ間の結束性を高めるための態の選択が重要となる。東京大学の英作文では、与えられた日本語を単に英訳するのではなく、英語として自然な情報構造を持つ文章に再構成する能力が求められ、その際に受動態を戦略的に用いて主題の連鎖を維持したり、文末焦点を実現したりする技術が不可欠である。下線部和訳では、動作受動態と状態受動態の区別、by句の省略が持つ意味的含意、強調構文との組み合わせにおける焦点化の効果など、態の深層的な機能を正確に訳出する力が問われる。京都大学では特に、受動態を含む複雑な構文の論理構造を正確に把握し、日本語として自然でありながら原文のニュアンスを保持した訳文を産出する能力が重視される。

差がつくポイント

  1. 受動態の選択を「旧情報→新情報の原則」「文末焦点の原則」「主題の連鎖」といった情報構造の観点から論理的に説明できるか。単に「受動態は目的語を主語にする」という表層的な理解ではなく、なぜその文脈でその構文が選択されているのかを、談話全体の情報の流れの中で分析する力が求められる。
  2. 動作受動態と状態受動態を文脈から正確に識別し、適切な日本語訳を与えることができるか。「The door was closed.」が「ドアが閉められた」という動作を表すのか、「ドアは閉まっていた」という状態を表すのかを、文脈の時間的・論理的な流れから判断する能力が問われる。
  3. by句の表示・省略が持つ意味的・語用論的な機能(焦点化、非人称化、責任の曖昧化など)を読み取れるか。by句が明示されている場合にはその動作主が新情報として焦点化されていること、省略されている場合には動作主の情報が重要でないか意図的に隠蔽されていることを読み取る分析力が必要である。
  4. 学術的文章における受動態の戦略的使用(客観性の確立、研究者の消去)を理解し、自らも運用できるか。論文や報告書などのフォーマルな文体において、受動態がいかに客観性と非人称性を演出するための修辞的装置として機能しているかを理解し、英作文においてもその作法に則った文章を産出できる力が評価される。

演習問題

試験時間: 60分 / 満点: 100点

第1問(25点)

次の各問いに答えなさい。

A. 次の各文において、括弧内の動詞を適切な態と時制に直しなさい。文脈に応じて能動態・受動態のいずれかを選択し、必要に応じて完了形・進行形・法助動詞との組み合わせを用いること。(各2点×5=10点)

(1) The ancient manuscript, which ( discover ) in a cave near the Dead Sea in 1947, has provided invaluable insights into the religious practices of the period.

(2) While the experiment ( conduct ), an unexpected power outage disrupted the entire laboratory system.

(3) The proposal ( discuss ) extensively by the board members when the CEO suddenly announced his resignation.

(4) It ( widely believe ) that the universe is expanding at an accelerating rate, though the underlying mechanism remains poorly understood.

(5) The data, once ( collect ) and ( analyze ), will be made available to researchers worldwide.

B. 次の各文の下線部に最も適切な選択肢を選び、記号で答えなさい。(各3点×5=15点)

(6) The new policy has been criticized by many economists. _______, it continues to be implemented by the government.

a) Therefore
b) Nevertheless
c) Furthermore
d) Meanwhile

(7) The researcher’s controversial findings _______ by the scientific community until independent verification was obtained.

a) were not accepted
b) did not accept
c) had not been accepting
d) have not accepted

(8) It is essential that all safety protocols _______ before the experiment begins.

a) are reviewed
b) be reviewed
c) will be reviewed
d) have reviewed

(9) The suspect claimed that he _______ at the crime scene by a witness who had a personal grudge against him.

a) was wrongly identified
b) wrongly identified
c) had wrongly identified
d) has been wrongly identified

(10) _______ by the sudden change in market conditions, the company was forced to revise its entire business strategy.

a) Catching
b) Caught
c) Having caught
d) To catch

第2問(25点)

次の文章を読み、下線部(A)〜©を日本語に訳しなさい。その際、受動態が選択されている理由や効果を踏まえた訳出を心がけること。

The decline of biodiversity in tropical rainforests presents one of the most pressing environmental challenges of our time. (A) While the immediate causes of habitat destruction are well documented, the complex interplay of economic, political, and social factors that drive deforestation is only beginning to be understood. For decades, conservation efforts focused primarily on establishing protected areas. However, (B) it has gradually been recognized that local communities must be actively involved in conservation initiatives if lasting change is to be achieved. This shift in perspective represents a fundamental transformation in how environmental protection is conceptualized.

Recent research has revealed that traditional ecological knowledge, passed down through generations of indigenous peoples, contains sophisticated insights into sustainable land management practices. © Such knowledge, often dismissed by Western scientists as mere folklore, is now being seriously investigated as a potential source of solutions to contemporary environmental problems. The irony is not lost on observers that the very communities whose ways of life were marginalized by modernization may hold keys to addressing the crises that modernity has produced.

第3問(25点)

次の日本語を英語に訳しなさい。情報の流れが自然になるよう、適切な態を選択すること。

(1) その画期的な発見は、当時無名だった若い研究者によってなされた。(8点)

(2) 会議で提案された新しい方針は、実施される前に徹底的に検討されるべきである。(8点)

(3) 彼の研究成果は世界中の学者から高く評価されているが、彼自身はその功績を控えめに語る。(9点)

第4問(25点)

次の英文を読み、後の問いに答えなさい。

The question of how scientific knowledge is produced and validated has been the subject of extensive philosophical debate. Traditional accounts emphasized the objective nature of scientific inquiry, portraying the scientist as a disinterested observer who simply records what nature reveals. According to this view, scientific facts are discovered rather than constructed, and the language in which they are reported is merely a transparent medium for conveying truths about the external world.

This conception of science has been challenged by scholars in the sociology of scientific knowledge. They argue that scientific facts are not simply found but are actively produced through complex social processes. Laboratory practices, institutional structures, and rhetorical conventions all play crucial roles in determining what counts as legitimate knowledge. From this perspective, the passive voice that pervades scientific writing is not an innocent stylistic choice but rather a powerful rhetorical device that serves to mask the human agency involved in knowledge production.

Consider, for example, the difference between “I heated the solution to 100°C” and “The solution was heated to 100°C.” The passive construction eliminates the researcher from the sentence, creating the impression that the procedure somehow happened independently of human intervention. This grammatical choice reinforces the ideology of objectivity by suggesting that scientific findings would be the same regardless of who conducted the research. The irony, of course, is that this very strategy of self-erasure is itself a highly deliberate rhetorical act—one that has been consciously adopted and transmitted within the scientific community as a marker of professional competence.

問1 下線部を日本語に訳しなさい。(10点)

問2 本文の第3段落で筆者が指摘している「皮肉(irony)」とは何か。本文の議論を踏まえ、80字以内の日本語で説明しなさい。(8点)

問3 本文の議論を踏まえ、学術論文において受動態が多用される理由とその修辞的効果について、100字以内の日本語で説明しなさい。(7点)

解答・解説

難易度構成

難易度配点大問
Standard(共テ追試・MARCH上位)25点第1問
Advanced(国公立・早慶中下位)25点第2問
Advanced(国公立・早慶中下位)25点第3問
Applied(東大・京大・早慶上位)25点第4問

結果の活用

得点判定推奨アクション
80点以上A態の情報構造的機能を十分に理解している。過去問演習で実践力を強化せよ。
60-79点B講義編の語用層・談話層を再読し、情報構造と態の関係を復習せよ。
40-59点C講義編の統語層・意味層から基礎を固め直すこと。
40点未満D講義編全体を体系的に再学習し、受動態の基本構造から理解を再構築せよ。

第1問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図受動態の形成規則と、完了形・進行形・法助動詞との結合における正確な運用力、および文脈から適切な態を選択する判断力を問う。
難易度Standard(共テ追試・MARCH上位)
目標解答時間12分

【思考プロセス】

状況設定

試験開始から12分が経過した時点を想定する。第1問は文法・語法の基礎力を問う設問であり、ここで時間を浪費すると後半の読解・英作文に支障をきたす。受験生が陥りやすい先入観として、「受動態の問題だから全て受動態にすればよい」という安易な判断がある。しかし、(6)〜(10)の選択問題では、文脈や文法的制約から能動態が適切な場合もあり、態の選択根拠を論理的に検討する必要がある。残り時間を意識しながらも、各設問の統語的・意味的条件を正確に分析することが求められる。

レベル1:初動判断

A問題(穴埋め): 各文において、主語と動詞の意味関係(主語は動作を行う側か受ける側か)を即座に特定し、態を決定する。次に、時間表現や従属節との関係から適切な時制を選択する。

B問題(選択): 選択肢を見る前に、空所に入るべき要素の文法的カテゴリ(接続副詞、動詞の態と時制、分詞構文の形式など)を特定する。その後、文脈の論理関係と文法的制約を照合して正答を絞り込む。

レベル2:情報の取捨選択

(1) “The ancient manuscript” は「発見される」対象であり、受動態が必須。“in 1947” という過去の一点を示す時間表現があるため、単純過去形。関係詞節内であることを確認。

(2) “the experiment” は「行われる」対象。“While” 節と主節の “disrupted” との時間的関係を分析すると、停電が起きた「まさにその時」実験が進行中だったことを表す過去進行受動態が適切。

(3) “The proposal” は「議論される」対象。“when the CEO suddenly announced” という過去の一点より前から進行していた動作を表すため、過去進行受動態。

(4) 形式主語構文 “It … that” で「〜と信じられている」という現在の一般論を表す。“widely” が動詞を修飾する副詞として挿入される位置に注意。

(5) “The data” は「収集される」「分析される」対象。“once” 以下は条件を表す分詞構文であり、過去分詞のみで受動の意味を表す。

(6) 前文で批判されている(has been criticized)にもかかわらず、後文で実施され続けている(continues to be implemented)という逆接関係。

(7) 主語 “findings” は「受け入れられる」対象。“until independent verification was obtained” という過去の時点までの状態を表すため、過去形受動態。受験生は能動態の選択肢に惑わされやすいが、主語と動詞の意味関係を確認すれば排除できる。

(8) “It is essential that S + V” という仮定法現在の構文。that節内の動詞は原形(または should + 原形)を取る。“protocols” は「検討される」対象なので受動態の原形 “be reviewed”。

(9) 主語 “he” は「特定される」対象であり、受動態が必要。主節の “claimed” より前の出来事であることと、“wrongly” の位置(過去分詞の前)を確認。

(10) 主語 “the company” は「不意を突かれた」対象であり、受動の意味を持つ過去分詞 “Caught” が適切。分詞構文における能動・受動の判断は、意味上の主語と分詞の関係から決定する。

レベル3:解答構築

文法規則を適用して正確な形式を構築し、選択問題では誤答選択肢を論理的に排除する。

判断手順ログ

手順1:主語と動詞の意味関係を確認し態を決定(「〜する」か「〜される」か)
手順2:時制を決定する時間表現・文脈を特定
手順3:アスペクト(完了・進行)の必要性を判断
手順4:選択問題では、文法的に不可能な選択肢を先に排除
手順5:残った選択肢を文脈の論理関係と照合して最終決定

【解答】

A問題
(1) was discovered
(2) was being conducted
(3) was being discussed
(4) is widely believed
(5) collected / analyzed

B問題
(6) b
(7) a
(8) b
(9) a
(10) b

【解答のポイント】

正解の論拠

(1) was discovered: 関係詞節内で “The ancient manuscript” が「発見される」対象であること、“in 1947” が過去の一点を示すことから、単純過去受動態が正解。現在完了形 “has been discovered” は、主節の現在完了形 “has provided” との時制の整合性から不適切(発見は1947年の一点の出来事であり、現在までの継続ではない)。

(2) was being conducted: “While” 節が表す時間帯と主節の過去形 “disrupted” との同時性から、「実験が行われている最中に」という進行中の動作を表す過去進行受動態が適切。単純過去 “was conducted” では、動作の進行中というニュアンスが失われる。

(3) was being discussed: “when the CEO suddenly announced” という過去の一点において、提案が「まさに議論されている最中だった」ことを表す過去進行受動態。過去完了進行受動態 “had been being discussed” も文法的には可能だが、突然の発表との同時性を強調する文脈では過去進行形が自然。

(4) is widely believed: 形式主語構文における現在形受動態。副詞 “widely” は “believe” を修飾し、「広く信じられている」という現在の一般的見解を表す。過去形 “was widely believed” では、過去の信念であって現在は異なるという含意が生じてしまう。

(5) collected / analyzed: “once” 以下は条件を表す分詞構文であり、接続詞 + 主語が省略された形。“The data” が「収集され、分析された後」という受動の意味を、過去分詞のみで表現する。“being collected and analyzed” では進行中のニュアンスが加わり不適切。

(6) b) Nevertheless: 前文「多くの経済学者から批判されてきた」と後文「政府によって実施され続けている」は逆接関係。“Nevertheless”(それにもかかわらず)が論理的に適切。“Therefore”(したがって)は因果関係、“Furthermore”(さらに)は追加、“Meanwhile”(その間に)は同時進行を表し、いずれも文脈に合わない。

(7) a) were not accepted: 主語 “findings” は「受け入れられる」対象であり、受動態が必須。“until” 以下の過去形 “was obtained” と呼応する過去形受動態。選択肢 b) と d) は能動態で主語と動詞の意味関係が不適合。c) は過去進行形で「受け入れつつあった」という意味になり文脈に合わない。

(8) b) be reviewed: “It is essential that S + V” は仮定法現在を要求する構文であり、that節内の動詞は原形を取る。“protocols” は「検討される」対象なので受動態の原形 “be reviewed”。a) “are reviewed” は直説法現在形、c) “will be reviewed” は未来形、d) “have reviewed” は能動態であり、いずれも文法的に不適切。

(9) a) was wrongly identified: 主語 “he” は「特定された」対象であり受動態が必要。主節 “claimed” と同時制の過去形受動態。“wrongly” は過去分詞 “identified” を修飾する副詞として適切な位置にある。b) と c) は能動態、d) は現在完了形で時制が不適合。

(10) b) Caught: 分詞構文において、意味上の主語 “the company” は「不意を突かれた」対象であり、受動の意味を持つ過去分詞が適切。“Catching” は能動の意味(「捕まえながら」)となり論理的に不適合。“Having caught” も能動態の完了形。“To catch” は目的・結果を表す不定詞で文脈に合わない。

誤答の論拠

(7) 選択肢 b) “did not accept” は、“findings” を主語とする能動態であり、「研究成果が受け入れなかった」という意味になって論理的に破綻する。受験生は否定形に気を取られて態の判断を誤りやすい。

(8) 選択肢 a) “are reviewed” を選ぶ誤答が多い。“It is important/essential/necessary that S + V” の構文では仮定法現在(原形または should + 原形)を用いるという規則を想起できるかが鍵。

(10) 選択肢 a) “Catching” を選ぶ誤答は、分詞構文における能動・受動の判断ミスに起因する。「会社が市場状況の変化を捕まえながら」では意味が通らないことを論理的に確認すべき。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 受動態の複合形式(完了受動態・進行受動態・仮定法現在の受動態)を問う問題、および分詞構文における態の選択を問う問題において、主語と動詞の意味関係を正確に分析し、時間表現や文法的制約と照合する手順を適用することで、安定した正答率を確保できる。

【参照】

  • [M08-統語] └ 完了形・進行形と受動態の結合規則
  • [M08-統語] └ 法助動詞と受動態の構造と解釈
  • [M12-統語] └ 分詞構文における態の選択

第2問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図受動態が選択されている語用論的・談話的理由を理解し、そのニュアンスを日本語訳に反映させる力を問う。学術的な文章における態の戦略的使用を分析する能力を評価する。
難易度Advanced(国公立・早慶中下位)
目標解答時間18分

【思考プロセス】

状況設定

試験開始から30分が経過し、第1問を終えた時点を想定する。残り時間は30分で、第2問(和訳)、第3問(英作文)、第4問(読解・論述)を処理する必要がある。第2問は配点25点であり、3つの下線部それぞれに8〜9点が配分されていると推定される。受験生が陥りやすい先入観として、「受動態は『〜される』と訳せばよい」という機械的な処理がある。しかし、学術的な文章における受動態は、情報構造の最適化、客観性の確立、主題の継続といった複合的な機能を担っており、これらを無視した訳出は減点対象となる。各下線部で受動態が担う機能を分析し、日本語として自然でありながらニュアンスを保持した訳出を目指す必要がある。

レベル1:初動判断

(A) “While” で導かれる対比構文の中で、“are well documented” と “is only beginning to be understood” が対照されている。前者は既知の旧情報、後者は新情報(これから理解される段階にある)として位置づけられている。

(B) 形式主語構文 “it has gradually been recognized that…” で、認識の変化が非人称的・客観的に提示されている。“has been recognized” の現在完了形は、過去から現在までの漸進的な変化を示す。

© 主題 “Such knowledge” が文頭に置かれ、過去の評価(“often dismissed”)と現在の評価(“is now being seriously investigated”)が対比されている。受動態の進行形が「まさに今」という時間的な即時性を強調している。

レベル2:情報の取捨選択

(A) の構造分析:

  • “While” は譲歩・対比を表す接続詞
  • 主節主語 “the complex interplay of economic, political, and social factors that drive deforestation” は非常に長い名詞句
  • “is only beginning to be understood” は「理解され始めたばかりである」という段階性を表す
  • 対比の効果:直接的原因(既知)vs 複合的要因(未解明)

(B) の構造分析:

  • “it has gradually been recognized that…” は形式主語構文
  • “has been recognized” の現在完了受動態は「認識されるようになってきた」という変化の継続を示す
  • “gradually” は認識の漸進性を強調
  • “if lasting change is to be achieved” は条件を表す “be to” 構文の受動態

© の構造分析:

  • “Such knowledge” が主題として文頭に配置
  • “often dismissed by Western scientists as mere folklore” は挿入的な過去分詞句
  • “is now being seriously investigated” は現在進行受動態で「今まさに研究されている」
  • 時間軸での評価の反転:過去の軽視 → 現在の重視
レベル3:解答構築

受動態の機能を踏まえ、以下の点に留意して訳出する:

  • 情報構造(旧情報→新情報)を日本語の語順で反映
  • 完了形・進行形が持つ時間的ニュアンスを適切に表現
  • 対比構造が明確になる訳語選択
  • 学術的文体に相応しい表現の使用
判断手順ログ

手順1:下線部の文構造(主語・述語・修飾関係)を正確に把握
手順2:受動態が選択されている理由(情報構造、客観性、主題継続など)を特定
手順3:完了形・進行形が持つ時間的ニュアンスを分析
手順4:対比構造がある場合、その対比が明確になる訳語を選択
手順5:日本語として自然な語順・表現に再構成

【解答】

(A) 生息地破壊の直接的な原因は十分に記録・文書化されている一方で、森林破壊を引き起こす経済的・政治的・社会的要因の複雑な相互作用については、理解され始めたばかりである。

(B) 永続的な変化を達成しようとするならば、地域社会が保全活動に積極的に関与しなければならないということが、次第に認識されるようになってきた。

© そのような知識は、西洋の科学者たちによって単なる民間伝承として片付けられることが多かったが、現在では現代の環境問題に対する解決策の潜在的な源泉として真剣に研究されている。

【解答のポイント】

正解の論拠

(A) において重要なのは、“While” による対比構造と、二つの受動態が持つ異なる意味合いを訳し分けることである。“are well documented” は「十分に記録・文書化されている」と訳し、既に確立された知識であることを示す。一方、“is only beginning to be understood” は「理解され始めたばかりである」と訳し、研究がまだ初期段階にあることを表現する。“only beginning to be” という表現は、単なる「理解されつつある」ではなく、「ようやく端緒についたばかり」という段階の初期性を強調しており、この微妙なニュアンスを訳出することで対比がより鮮明になる。

(B) においては、“it has gradually been recognized that…” の形式主語構文が持つ非人称性と、“has been recognized” の現在完了形が示す漸進的変化を表現することが重要である。「次第に認識されるようになってきた」という訳は、過去から現在への認識の変化が徐々に進行してきたことを示し、現在完了の継続・結果の用法を適切に反映している。また、“if lasting change is to be achieved” の “be to” 構文は「〜しようとするならば」という意図・目的を表し、単なる条件「〜が達成されるならば」よりも、積極的な行動の必要性を強調する訳となる。

© においては、主題 “Such knowledge” を文頭に維持しながら、過去と現在の評価の対比を明確にすることが求められる。“often dismissed by Western scientists as mere folklore” の挿入句は、「西洋の科学者たちによって単なる民間伝承として片付けられることが多かった」と訳し、過去における軽視を表現する。“is now being seriously investigated” は現在進行受動態であり、「現在では…真剣に研究されている」と訳すことで、「まさに今」という時間的な即時性と、過去からの転換を明示する。“dismissed” と “investigated” の対比、“often” と “now” の対比、“mere folklore” と “potential source of solutions” の対比という三重の対比構造を訳文に反映させることで、文の修辞的効果が伝わる。

誤答の論拠

(A) を「理解されている」と現在形で訳すと、“is only beginning to” の段階性が失われる。また、「理解されつつある」だけでは “only beginning” の「ようやく始まったばかり」というニュアンスが伝わらない。

(B) を「認識された」と単純過去で訳すと、現在完了形が示す「過去から現在への継続的な変化」という含意が消失する。また、“gradually” を訳出しないと、認識の変化が突然ではなく漸進的であったという重要な情報が欠落する。

© において、“often dismissed” を「しばしば却下された」と訳すと、学術文脈における「片付けられる」「軽視される」というニュアンスが失われる。また、“is now being investigated” を単に「研究されている」と訳すと、進行形が持つ「まさに今」という即時性と、過去からの転換という対比効果が薄れる。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 学術的文章における受動態の和訳問題において、以下の分析手順を適用することで安定した得点が可能である:(1) 受動態が選択されている語用論的理由(情報構造、客観性、主題継続)を特定する、(2) 完了形・進行形が持つ時間的ニュアンスを分析する、(3) 対比構造がある場合はその対比が明確になる訳語を選択する、(4) 日本語として自然でありながら原文のニュアンスを保持した表現に再構成する。

【参照】

  • [M08-語用] └ 旧情報と新情報の配置原則
  • [M08-語用] └ 主題の継続性と態の選択
  • [M08-談話] └ 学術的文章における態の選択パターン

第3問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図情報の流れを最適化するために適切な態を選択し、自然な英文を構築する力を問う。日本語の構造をそのまま英語に移すのではなく、英語として自然な情報構造を持つ文章を産出する能力を評価する。
難易度Advanced(国公立・早慶中下位)
目標解答時間15分

【思考プロセス】

状況設定

試験開始から48分が経過し、残り時間は12分で第3問と第4問を処理する必要がある。第3問は英作文であり、配点25点のうち各設問に8〜9点が配分されていると推定される。受験生が陥りやすい先入観として、「日本語の主語をそのまま英語の主語にすればよい」という直訳的発想がある。しかし、英語と日本語では情報構造が異なり、日本語では文末に新情報が来るのに対し、英語では文頭に主題、文末に焦点という配置が自然である。各設問において、どの情報を主題として文頭に配置し、どの情報を焦点として文末に配置するかを戦略的に判断する必要がある。

レベル1:初動判断

(1) 「その画期的な発見」が主題で、「当時無名だった若い研究者によって」という動作主が新情報として強調されるべき。文末焦点の原則を適用し、受動態を使用してby句を文末に配置する。

(2) 「新しい方針」が一貫した主題で、「提案された」「検討されるべき」「実施される」と連続的に受動態で表現することで主題を維持する。主題の連鎖の原則を適用。

(3) 「彼の研究成果」と「彼自身」の対比がある。前半で研究成果を主題として確立し(受動態)、後半で「彼」へと視点を転換する(能動態)。対比構造を明確にするための態の使い分け。

レベル2:情報の取捨選択

(1) の情報構造分析:

  • 主題(Topic):「その画期的な発見」→ 定冠詞 “The” で既知の情報として導入
  • 焦点(Focus):「当時無名だった若い研究者」→ 新情報として文末に配置
  • 態の選択:受動態を使用し、by句で動作主を文末に
  • 時制:「なされた」は過去の一点の出来事 → 単純過去

(2) の情報構造分析:

  • 主題:「新しい方針」→ “The new policy” として文頭に配置
  • 修飾関係:「会議で提案された」→ 過去分詞句 “proposed at the meeting” で後置修飾
  • 法助動詞:「〜されるべき」→ “should be examined”
  • 時間関係:「実施される前に」→ “before it is implemented”

(3) の情報構造分析:

  • 前半主題:「彼の研究成果」→ “His research achievements” を主語に
  • 前半述部:「高く評価されている」→ 受動態 “are highly regarded”
  • 対比:「〜が、彼自身は…」→ “but he himself…”
  • 後半:能動態で「彼」の行動を描写
レベル3:解答構築

情報構造の原則(旧情報→新情報、文末焦点、主題の連鎖)に従い、英語として自然な文を構築する。

判断手順ログ

手順1:日本語文の主題と焦点を特定
手順2:英語の情報構造原則(旧情報→新情報、文末焦点)を適用
手順3:適切な態(能動態・受動態)を選択
手順4:時制・法・アスペクトを決定
手順5:語彙・コロケーションを選択し、自然な英文として完成

【解答】

(1) The groundbreaking discovery was made by a then-unknown young researcher.

(2) The new policy proposed at the meeting should be thoroughly examined before it is implemented.

(3) His research achievements are highly regarded by scholars around the world, but he himself speaks modestly about his accomplishments.

【解答のポイント】

正解の論拠

(1) において、受動態を選択する理由は文末焦点の原則にある。「画期的な発見」は文脈上既知であり(定冠詞 “The” で導入)、「当時無名だった若い研究者」は読者にとって新しい、驚きのある情報である。受動態を用いることで、この新情報を “by a then-unknown young researcher” として文末の焦点位置に配置し、劇的な効果を生み出している。能動態 “A then-unknown young researcher made the groundbreaking discovery.” では、不定冠詞で導入される新情報が文頭に来てしまい、情報構造が不自然になる。“then-unknown” は「当時は無名だった」という意味を持つ複合形容詞であり、後の成功を暗示する効果がある。

(2) において、主題の連鎖の原則を適用する。「新しい方針」を一貫して主語の位置に維持することで、文全体の焦点が分散せず、何について述べているかが明確になる。“proposed at the meeting” は過去分詞句として “The new policy” を後置修飾し、どの方針かを限定する。“should be thoroughly examined” は義務・当為を表す法助動詞 “should” と受動態の組み合わせで「〜されるべきである」を表現する。“before it is implemented” では、“it” が “The new policy” を受けて主題を維持しており、“is implemented” という受動態で「実施される」を表している。能動態を混在させて “before the government implements it” とすると、主語が変わって主題の連鎖が途切れ、文の焦点が分散する。

(3) において、対比構造を明確にするために、前半と後半で態を使い分ける。前半 “His research achievements are highly regarded by scholars around the world” では、「研究成果」を主題として受動態で描写し、世界中の学者からの評価という客観的事実を述べる。後半 “but he himself speaks modestly about his accomplishments” では、接続詞 “but” で対比を導入し、主語を「彼自身」に転換して能動態で描写する。“he himself” の “himself” は強調の再帰代名詞であり、「彼自身は(世間の評価とは異なり)」という対比を強める。この態の対比により、「客観的な高評価」と「本人の謙虚な態度」の違いがより鮮明になる。

誤答の論拠

(1) を “A then-unknown young researcher made the groundbreaking discovery.” と能動態で表現すると、不定冠詞 “a” で導入される新情報が文頭に来てしまい、読者にとって唐突な印象を与える。英語の情報構造では、文頭は既知の情報を置く場所であり、未知の要素を突然主語にすることは避けられる傾向がある。

(2) において、主語を変えて “The government should thoroughly examine the new policy proposed at the meeting before implementing it.” とすると、文法的には正しいが、日本語原文の主題(「新しい方針」)が目的語の位置に後退してしまい、情報構造が原文と乖離する。また、動作主 “The government” が原文には明示されていないため、情報の追加となる。

(3) において、前半を “Scholars around the world highly regard his research achievements” と能動態にすると、主語が「学者たち」になり、後半の「彼自身は」との対比が「学者たち vs 彼」という構図になってしまう。原文の意図は「彼の業績(客観的評価)vs 彼自身の態度」であり、受動態を用いて「業績」を主題にすることでこの対比構造が維持される。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 英作文において情報構造を最適化する問題に広く適用可能。特に以下の場合に有効:(1) 新情報を文末に配置したい場合(文末焦点)、(2) 同一の主題を維持しながら複数の述部を連ねたい場合(主題の連鎖)、(3) 対比構造を明確にしたい場合(態の対比)。日本語原文の構造をそのまま英語に移すのではなく、英語の情報構造原則に基づいて再構成する発想が重要。

【参照】

  • [M08-語用] └ 文末焦点の原則と態の選択
  • [M08-語用] └ 主題の継続性と態の選択
  • [M08-談話] └ パラグラフ間の結束性と態の選択

第4問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図学術論文における受動態の修辞的機能を批判的に分析し、その効果を論理的に説明する力を問う。科学哲学・科学社会学の視点から言語形式と社会的機能の関係を考察する高度な読解力・論述力を評価する。
難易度Applied(東大・京大・早慶上位)
目標解答時間15分

【思考プロセス】

状況設定

試験終了まで残り12分。第4問は最高難度の問題であり、配点25点のうち問1に10点、問2に8点、問3に7点が配分されていると推定される。受験生が陥りやすい先入観として、「科学論文で受動態が使われるのは客観的だから」という表層的な理解がある。しかし、本文は科学社会学の視点から、受動態の使用を「客観性のイデオロギーを強化する修辞的装置」として批判的に分析しており、この批判的視点を理解できなければ問2・問3で的確な解答を構成することは困難である。残り時間が限られているため、下線部の構文分析と本文全体の論旨把握を効率的に行う必要がある。

レベル1:初動判断

問1(下線部和訳): 下線部は長い名詞句を主語とする文であり、“that pervades scientific writing” という関係詞節が “the passive voice” を修飾している。“is not X but rather Y” という対比構造を正確に訳出することが求められる。

問2(皮肉の説明): 第3段落の “The irony, of course, is that…” に着目し、何と何の間の矛盾・逆説が「皮肉」として指摘されているかを特定する。

問3(受動態の機能説明): 本文全体の議論を踏まえ、学術論文における受動態の (1) 使用理由と (2) 修辞的効果の両方を100字以内で説明する。

レベル2:情報の取捨選択

問1 の構造分析:

  • 主語:the passive voice that pervades scientific writing(科学的著述に浸透している受動態)
  • 動詞:is not … but rather …(〜ではなく、むしろ〜である)
  • X:an innocent stylistic choice(無邪気な文体上の選択)
  • Y:a powerful rhetorical device that serves to mask the human agency involved in knowledge production(知識生産に関与する人間の能動性を隠蔽する役割を果たす強力な修辞的装置)

問2 の論点整理:

  • 第3段落の議論:受動態を使って研究者を文から消去する戦略は「意図的な修辞行為」である
  • 皮肉の構造:「自己消去の戦略」それ自体が「高度に意図的な行為」であるという矛盾
  • つまり:客観性を演出するために主観を消すという行為が、実は主観的・意図的な選択であるという逆説

問3 の論点整理:

  • 使用理由:研究者個人を文から消去し、客観的な手順・発見として提示するため
  • 修辞的効果:科学的発見が個人の主観に依存しない普遍的事実であるという印象を与える(客観性のイデオロギーの強化)
  • 本文の批判的視点を踏まえる:これは「無邪気な選択」ではなく「意図的な修辞戦略」である
レベル3:解答構築

各問いに対して、本文の議論を正確に踏まえた簡潔かつ論理的な解答を構成する。

判断手順ログ

手順1:下線部の構文(主語・述語・修飾関係)を正確に分析
手順2:対比構造 “not X but Y” の両項を明確に訳出
手順3:第3段落の “irony” が何と何の間の矛盾かを特定
手順4:本文全体の議論(科学社会学の批判的視点)を踏まえて論述を構成
手順5:字数制限内で核心的な論点を簡潔に表現

【解答】

問1 科学的著述に広く浸透している受動態は、無邪気な文体上の選択ではなく、むしろ知識生産に関与する人間の能動性を隠蔽する役割を果たす強力な修辞的装置である。

問2 客観性を演出するために研究者の存在を文から消去するという戦略それ自体が、科学者共同体において意図的に採用・伝達されてきた高度に主観的な修辞行為であるという点。(80字)

問3 受動態は研究者という行為主体を文から消去することで、科学的発見が個人の主観に依存しない客観的事実であるという印象を与える。これは客観性のイデオロギーを強化する意図的な修辞戦略である。(91字)

【解答のポイント】

正解の論拠

問1 においては、下線部の構文を正確に分析し、対比構造を明確に訳出することが求められる。主語 “the passive voice that pervades scientific writing” は「科学的著述に広く浸透している受動態」と訳す。“pervades” は「(隅々まで)浸透している」「行き渡っている」という意味であり、単に「使われている」よりも受動態の普遍性を強調する語彙選択。“is not X but rather Y” は「Xではなく、むしろYである」という対比構造であり、この対比を明確に訳出することで筆者の主張が伝わる。“an innocent stylistic choice” は「無邪気な文体上の選択」であり、“innocent” は「無邪気な」「罪のない」という意味で、暗に「実は無邪気ではない」という含意を持つ。“a powerful rhetorical device that serves to mask the human agency involved in knowledge production” は「知識生産に関与する人間の能動性を隠蔽する役割を果たす強力な修辞的装置」であり、“rhetorical device” は「修辞的装置」「レトリックの道具」、“mask” は「隠蔽する」「覆い隠す」、“human agency” は「人間の能動性」「人間の主体的関与」と訳す。

問2 においては、第3段落で筆者が指摘している「皮肉(irony)」を正確に把握する必要がある。本文の記述 “The irony, of course, is that this very strategy of self-erasure is itself a highly deliberate rhetorical act—one that has been consciously adopted and transmitted within the scientific community as a marker of professional competence.” を分析すると、皮肉の構造は以下のように整理できる:

  • 表面上の目的:客観性を演出するために研究者(自己)を文から消去する
  • 実際の性質:この「自己消去の戦略」それ自体が「高度に意図的な(deliberate)修辞行為」である
  • 矛盾:客観性・非人称性を装うための行為が、実は主観的・意図的な選択であるという逆説

この矛盾を80字以内で簡潔に表現することが求められる。解答では「客観性を演出するため」「研究者の存在を文から消去するという戦略」「それ自体が」「意図的に採用・伝達されてきた」「高度に主観的な修辞行為である」という要素を含め、皮肉の構造を明確に示している。

問3 においては、本文全体の議論を踏まえて、学術論文における受動態の (1) 使用理由と (2) 修辞的効果の両方を100字以内で説明する必要がある。本文の議論の核心は以下の点にある:

  • 使用理由:研究者という行為主体を文から消去するため(第3段落 “The passive construction eliminates the researcher from the sentence”)
  • 修辞的効果:科学的発見が個人に依存しない客観的事実であるという印象を与える(第3段落 “creating the impression that the procedure somehow happened independently of human intervention”)
  • 批判的視点:これは「無邪気な選択」ではなく「客観性のイデオロギーを強化する」意図的な修辞戦略である(第2段落 “not an innocent stylistic choice but rather a powerful rhetorical device”、第3段落 “reinforces the ideology of objectivity”)

解答では、これらの要素を「受動態は研究者という行為主体を文から消去することで」(使用理由)、「科学的発見が個人の主観に依存しない客観的事実であるという印象を与える」(修辞的効果)、「これは客観性のイデオロギーを強化する意図的な修辞戦略である」(批判的視点)という構成で100字以内にまとめている。

誤答の論拠

問1 において、“pervades” を「使われている」と訳すと、受動態が科学的著述に「隅々まで浸透している」という普遍性が伝わらない。また、“innocent” を訳出しないと、「実は無邪気ではない」という筆者の批判的視点が失われる。“human agency” を「人間の行為」と訳すと、“agency” が持つ「能動性」「主体的関与」というニュアンスが欠落する。

問2 において、単に「受動態が客観性を演出している」と答えるだけでは、「皮肉」の構造を説明したことにならない。皮肉とは、二つの事柄の間の矛盾・逆説であり、何と何が矛盾しているのか(「客観性の演出」と「その行為自体の主観性」)を明示する必要がある。

問3 において、「客観的に見せるため」とだけ答えると、本文の批判的視点(これが「意図的な修辞戦略」であり「客観性のイデオロギー」を「強化」するものであること)が反映されない。本文は科学社会学の視点から受動態の使用を批判的に分析しており、この批判的視点を踏まえた解答が求められる。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 学術論文の文体や修辞について批判的に論じた文章の読解・論述問題において、以下の分析手順を適用することで的確な解答が可能である:(1) 下線部の構文を正確に分析し、対比構造や修飾関係を明確にする、(2) 「皮肉」「逆説」などの修辞的効果を問う設問では、何と何の間の矛盾かを特定する、(3) 本文全体の議論(著者の立場・視点)を踏まえて論述を構成する、(4) 字数制限内で核心的な論点を簡潔かつ論理的に表現する。

【参照】

  • [M08-談話] └ 客観性と非人称性の修辞学
  • [M08-談話] └ 学術的文章と態の選択パターン
  • [M08-意味] └ 受動態と責任の所在の帰属

体系的接続

  • [M06-統語] └ 時制とアスペクトの基本構造が受動態の複合形式の基盤となる
  • [M09-統語] └ 法助動詞が表すモダリティと態の選択が組み合わさり、話者の判断が受動的な事態に対して表明される
  • [M18-談話] └ 文間の結束性において受動態が果たす照応機能を分析する
  • [M19-談話] └ パラグラフ構造における主題文の設定と態の選択の関係を考察する

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