【基礎 英語】モジュール16:代名詞・指示語と照応

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目次

本モジュールの目的と構成

英文読解において、代名詞と指示語が何を指しているのかを正確に特定できなければ、文章の意味を完全に理解することは不可能である。代名詞は文中で繰り返しを避け、文章を簡潔にする機能を持つが、その先行詞が明確でなければ、読解は混乱する。特に学術的な英文では、複数の名詞句が連続して現れる中で、代名詞が遠く離れた先行詞を指すことがあり、その照応関係を見誤ると、論理展開を完全に誤解する結果となる。大学入試の長文読解では、代名詞の指示対象を問う設問が頻出し、これらの問題は受験生の照応関係把握能力を直接的に測定する。代名詞と指示語の体系的理解は、英文の結束性を認識し、談話全体の構造を把握する上で不可欠である。

本モジュールは以下の4つの層で構成される:

  • 統語:代名詞の形態と統語的機能

代名詞の形態的分類と統語的位置を理解する。人称代名詞の格変化、指示代名詞と指示形容詞の区別、不定代名詞の体系的整理を通じて、代名詞が文中で担う統語的役割を確立する。これにより、代名詞の形式からその機能を即座に識別する基盤を築く。

  • 意味:照応関係と先行詞の特定

代名詞が何を指すのかを決定する原理を理解する。照応の制約条件、曖昧性の解消方法、指示語の距離と心理的距離の関係を学び、代名詞の意味論的機能を習得する。これにより、複数の候補の中から論理的に正しい先行詞を特定する能力を養う。

  • 語用:代名詞の語用論的機能

代名詞が文脈の中でどのような情報伝達機能を果たすのかを理解する。省略された先行詞の復元、代名詞による談話管理、文体的効果といった語用論的側面を扱う。これにより、筆者の意図や視点を代名詞の選択から読み取る能力を高める。

  • 談話:照応と談話構造

複数の文や段落にわたる照応関係を追跡し、代名詞が談話全体の結束性と構造形成にどのように寄与するのかを理解する。照応連鎖の分析と情報の階層化を習得する。これにより、長文全体の情報の流れと論理構造を俯瞰する能力を完成させる。

本モジュールを修了すると、代名詞の形態と統語的位置から、その機能を正確に識別できるようになる。複数の候補の中から、統語的制約と意味的整合性に基づいて正しい先行詞を特定できるようになる。指示語の選択が反映する心理的距離や談話構造上の意図を読み取れるようになる。長文の中で複雑に絡み合った照応関係を体系的に追跡し、談話全体の構造を把握できるようになる。代名詞の曖昧性を引き起こす構造的要因を認識し、文脈情報を用いてそれを解消できるようになる。

統語:代名詞の形態と統語的機能

代名詞の理解において最も重要なのは、代名詞が文中で担う統語的位置と、その位置によって決定される形態の関係を把握することである。代名詞は名詞の代用表現であるが、名詞とは異なり、主格・目的格・所有格といった格変化を示す。この格変化は、代名詞が文中でどの統語的位置を占めるかによって決定される。人称代名詞であれば、主語位置では主格形を、動詞や前置詞の目的語位置では目的格形を、名詞を修飾する位置では所有格形を取る。この形態と統語位置の対応関係は絶対的であり、誤った形態を使用すると非文法的な文となる。指示代名詞は、単独で名詞句として機能する場合と、名詞を修飾する指示形容詞として機能する場合があり、この区別は統語的位置によって決定される。不定代名詞は、数や量に関する不特定の指示を行い、多様な形態を持つ。それぞれが異なる統語的制約と意味的特性を持ち、使用可能な文脈が限定される。この層では、代名詞の形態的分類と統語的機能を体系的に整理し、英文読解において代名詞を正確に識別し、その統語的役割を判断する能力を確立する。

1. 代名詞の機能的分類

代名詞が単に「名詞の代わりをする語」であるという表面的な定義の暗記は、その本質的な機能の理解を妨げる。実際の英文では、代名詞は名詞の単なる置き換えではなく、文の結束性を高め、情報構造を最適化し、談話の流れを制御する多岐にわたる重要な機能を担っている。代名詞の機能的理解が不十分なまま長文に取り組むと、代名詞が何を指しているのかを特定できず、文脈の論理展開を見失う結果となる。

代名詞を機能に基づいて人称代名詞・指示代名詞・不定代名詞・疑問代名詞・関係代名詞の5つに分類し、各々が文中で担う統語的役割を識別する能力が確立される。さらに、代名詞と名詞の機能的差異を理解し、なぜ特定の位置で代名詞が選択されるのかを説明できるようになる。

この機能的分類の理解は、次の記事で扱う人称代名詞の格変化、指示代名詞の距離の表現、不定代名詞の数量表現、そして疑問・関係代名詞による節構造の形成といった、より詳細な分析を可能にする。

1.1. 代名詞の定義と機能

代名詞とは、名詞句の代用表現として機能し、先行する文脈または状況の中で特定可能な実体を指示する語である。一般に代名詞を単なる「省略表現」と捉える傾向があるが、この理解は不正確である。代名詞の機能はそれだけではない。代名詞が使用されるのは、同じ名詞句を繰り返すことによる冗長性を回避し、文章の流れを円滑にするためである。名詞句が初めて導入される際には完全な名詞句が使用されるが、その後の言及では代名詞が選択されることが一般的である。この原理は「新情報は完全な名詞句で、旧情報は代名詞で」という情報構造の普遍的な原則に基づいている。この効率化は単なる便宜ではなく、人間の認知的負荷を軽減し、文章理解を促進する本質的な機能を持つ。

この原理から、代名詞を識別する具体的な手順が導かれる。手順1として、形態的特徴を確認する。人称代名詞、指示代名詞、不定代名詞は、それぞれ固有の形態を持つ。これらの形態を認識することで、代名詞を他の品詞と区別できる。これらの閉じた語彙セットは、文法機能を担うために特化しているからである。手順2として、統語的位置を確認する。代名詞は名詞句が占めることができるあらゆる統語的位置、すなわち主語、目的語、前置詞の目的語、所有格位置などに現れる。統語的位置によって代名詞の形態が決定されるため、この確認は格変化の理解に不可欠である。手順3として、指示対象を特定する。代名詞は必ず何かを指す。その指示対象は、先行する文脈の中の名詞句であるか、談話状況の中の実体である。指示対象が特定できない代名詞は、文法的には正しくても、意味的には不完全であり、読解の失敗に直結する。

例1: The researchers who conducted the longitudinal study observed that they had underestimated the complexity of the causal mechanisms, a finding whose implications were not immediately apparent.

→ whoは関係代名詞であり、先行詞 “The researchers” を修飾する。theyは人称代名詞であり、先行詞 “The researchers who conducted the longitudinal study” を指す。a findingは先行する節全体を名詞句として要約している。whoseは関係代名詞であり、先行詞 “a finding” を修飾する。

例2: This phenomenon has been documented in various contexts, but that does not mean it is universally applicable. One cannot assume that the same principles apply to all situations, each of which has its own unique characteristics.

→ Thisは指示形容詞であり、“phenomenon” を修飾し、談話の主題を導入する。thatは指示代名詞であり、“this phenomenon has been documented” という事実全体を指す。itは人称代名詞であり、“this phenomenon” を指す。Oneは不定代名詞であり、一般的な人を指す。eachは不定代名詞であり、“all situations” を受け、その個々を指す。whichは関係代名詞であり、先行詞 “each” を指す。itsは人称代名詞であり、“each” を指す。

例3: The defendant claimed that he had been unaware of the illegal nature of his actions, but the prosecution argued that this assertion contradicted his earlier testimony, in which he had acknowledged understanding the relevant statutes.

→ heは人称代名詞であり、“the defendant” を指す。hisは人称代名詞であり、“the defendant’s” を意味する。thisは指示形容詞であり、“assertion” を修飾し、「この主張」と特定する。whichは関係代名詞であり、先行詞 “his earlier testimony” を修飾する。

以上により、代名詞を形態・統語・意味の三つの側面から体系的に識別し、その機能を正確に把握することが可能になる。

1.2. 代名詞と名詞の情報構造上の差異

代名詞と名詞は、統語的には同じ位置を占めることができるが、情報構造上の機能は根本的に異なる。名詞句は新情報を導入する際に使用され、その指示対象に関する記述的内容を含む。一方、代名詞は旧情報を指示する際に使用され、記述的内容を最小限に抑える。代名詞の使用を単に「同じ単語の繰り返しを避けるため」と表面的に捉えるのでは不十分であり、この差異を情報構造の観点から理解しなければ、なぜある文脈で名詞句が使用され、別の文脈で代名詞が使用されるのかを論理的に説明できない。代名詞の選択が単なる文体上の好みではなく、読者の認知負荷を軽減し、情報の流れを円滑にするという本質的な機能を持つことを認識することが重要である。

この原理から、代名詞と名詞の使い分けを判断する手順が導かれる。手順1として、指示対象の既知性を判断する。指示対象が初めて言及される場合、または長い間言及されていなかった場合は、完全な名詞句を使用して読者の注意を喚起し、指示対象を明確にする。すでに文脈に導入されており、直近で言及されている場合は、代名詞を使用して簡潔に旧情報として処理する。手順2として、曖昧性の可能性を評価する。複数の候補が存在し、代名詞だけでは指示対象が一意に特定できない場合は、明確性を優先して名詞句を再使用する。指示対象が文脈から明確に特定できる場合は、代名詞を使用する。手順3として、文体的効果を考慮する。フォーマルな文体では、明確性を最優先して名詞句の繰り返しが許容される。一方、カジュアルな文体や物語では、リズムや流れを重視して代名詞が好まれる。

例1: The Federal Reserve’s decision to raise interest rates reflects its assessment that inflationary pressures warrant tighter monetary policy. This decision has been criticized by some economists, who argue that it may precipitate a recession. However, the central bank maintains that the rate increase is necessary, even if it entails short-term economic pain.

→ “The Federal Reserve’s decision…” は新情報を導入している。“its” は旧情報を指示している。“This decision” は旧情報を指示形容詞+名詞で再提示し、議論の新たな焦点としている。“it” は旧情報を指示している。“the central bank” は Federal Reserve の言い換えである。“the rate increase” は decision の言い換えである。

例2: Proponents of universal basic income contend that such a system would alleviate poverty. They argue that technological displacement of workers makes it imperative to decouple income from employment. Critics, however, maintain that universal basic income would disincentivize work. They point to pilot programs in which recipients reduced their working hours, suggesting that the policy might undermine labor force participation.

→ “Proponents…” から “They” への移行は旧情報として主題を継続している。“such a system” は universal basic income の言い換えである。“it” は形式目的語である。“Critics…” から “They” への移行は新たな主題を導入し、それを代名詞で継続している。“universal basic income” は曖昧さを避けるため、代名詞ではなく完全な名詞句を再使用している。“the policy” は universal basic income の言い換えである。

例3: The Supreme Court’s ruling in the landmark case established that the government’s surveillance practices violated constitutional protections. The decision prompted legislative reforms, but civil liberties advocates argue that these reforms have been insufficient. They contend that the ruling’s full implications have not been realized, and that the government continues to engage in intrusive monitoring that the Court would likely find unconstitutional if it were to revisit the issue.

→ “The Supreme Court’s ruling…” から “The decision” を経て “the ruling’s” へと、同じ実体を異なる名詞句で言い換え、旧情報として処理している。“these reforms” は新たに導入された “legislative reforms” を旧情報として受けている。“They” は旧情報を指示している。“the government”, “the Court”, “the issue” は文脈から特定可能な旧情報として、代名詞ではなく定冠詞+名詞で明確に指示している。

以上により、代名詞と名詞の情報構造上の差異を理解し、文脈の中でなぜ特定の形式が選択されるのかを論理的に説明できるようになる。

1.3. 代名詞の5つの機能的分類

代名詞は、その指示の性質と統語的機能に基づいて、人称代名詞・指示代名詞・不定代名詞・疑問代名詞・関係代名詞の5つに大別される。これらの分類名を暗記しているだけでは不十分であり、なぜこのような分類が必要なのか、その機能的な差異を理解することが重要である。この分類は、代名詞が何を指し、文中でどのような役割を果たすのかを体系的に理解するために不可欠である。各分類は、固有の形態的特徴と統語的制約を持ち、使用可能な文脈が異なる。ある一つの代名詞が文脈によって異なる機能を持つことを認識し、それに応じて文構造を正しく分析する能力に直結する。

この原理から、代名詞を分類する具体的な手順が導かれる。手順1として、形態と先行詞の有無を確認する。I, heなどの形態は人称代名詞である。this, thatは指示代名詞である。who, whichなどが先行詞を修飾する節を導いていれば関係代名詞、先行詞がなく疑問文で使われれば疑問代名詞である。one, someなどは不定代名詞である。手順2として、節を導くか確認する。関係代名詞と疑問代名詞は節を導くが、他の代名詞は単独で名詞句として機能する。手順3として、指示の性質を確認する。特定の実体を指すか、不特定の実体を指すか、未知の情報を問うか、先行詞を修飾するかを判断する。

例1: I informed the committee that those who had participated in the preliminary study would be eligible for the follow-up phase, but some declined because they believed their professional obligations would be compromised.

→ Iは人称代名詞である。thatは接続詞である。thoseは指示代名詞である。whoは関係代名詞であり、”those”を先行詞とする。someは不定代名詞であり、”those who had participated”の一部を指す。theyは人称代名詞であり、”some”を指す。theirは人称代名詞であり、”some”を指す。

例2: What distinguishes this approach from previous methodologies is its emphasis on longitudinal data, which allows researchers to track changes over time.

→ Whatは関係代名詞であり、先行詞を含む “the thing which” の意味である。thisは指示形容詞であり、”approach”を修飾する。itsは人称代名詞であり、”this approach”を指す。whichは関係代名詞であり、非制限用法として先行する節の一部を指す。

例3: One cannot underestimate the significance of procedural safeguards, which are essential for due process. What matters is not merely whether outcomes are reached expeditiously, but whether they are perceived as fair by all parties involved.

→ Oneは不定代名詞であり、一般的な人を指す。whichは関係代名詞であり、”procedural safeguards”を先行詞とする。Whatは関係代名詞であり、先行詞を含む。whetherは接続詞である。theyは人称代名詞であり、”outcomes”を指す。allは不定代名詞であり、”parties”を修飾する形容詞的用法である。

例4: The court held that the statute was unconstitutionally vague because it failed to provide adequate notice of what conduct was prohibited. This holding has significant implications for similar statutes, each of which must now be scrutinized.

→ thatは接続詞である。itは人称代名詞であり、”the statute”を指す。whatは疑問代名詞であり、間接疑問文を導く形容詞である。Thisは指示形容詞であり、”holding”を修飾する。eachは不定代名詞であり、”similar statutes”を指す。whichは関係代名詞であり、”each”を先行詞とする。

以上により、代名詞を5つの機能的分類に基づいて体系的に識別し、各代名詞の統語的・意味的機能を正確に把握することが可能になる。

2. 人称代名詞と格変化

人称代名詞は会話の参与者または談話の中で言及される実体を指し、その格変化は英語の代名詞体系の中で最も体系的である。人称代名詞を正確に理解するには、一人称・二人称・三人称という人称の区別、単数・複数という数の区別、主格・目的格・所有格・所有代名詞という格の区別を完全に習得する必要がある。これらの区別は形態的に明示され、統語的位置によって決定される。人称代名詞の格変化を理解せずに英文を読むことは、文の主語と目的語を混同し、所有関係を誤解するリスクを伴う。

人称代名詞の格変化の体系を完全に習得し、統語的位置から正しい格形を選択する能力を確立する。まず、格変化の全体像とその統語的機能を理解し、次に所有格と所有代名詞の機能的な差異を明確にする。最後に、三人称単数代名詞における性と指示対象の特定、特に性別中立的な表現としての単数theyの用法について習得する。

2.1. 人称代名詞の格変化体系

人称代名詞の格変化は、人称、数、格という三つの文法範疇の組み合わせによって決定される。英語の名詞は格による形態変化をほぼ失っているのに対し、人称代名詞はこの範疇を形態的に明示する。この格変化を単なる暗記事項と捉えるのは不適切である。この格変化が重要なのは、統語的位置と形態の対応によって、文の構造を明示的に示すためである。“He saw him” と “Him saw he”では、格形が異なることで、どちらが主語でどちらが目的語かが明確になる。もし英語に格変化がなければ、語順のみに依存して文の構造を示さなければならず、倒置や強調構文での曖昧性が増大する。格変化は、統語的位置を形態的に標示することで、文の構造を明確にする本質的な機能を持つのである。

この原理から、人称代名詞の正しい格形を選択する手順が導かれる。手順1として、統語的位置を特定する。代名詞が主語位置にあれば主格、動詞または前置詞の目的語位置にあれば目的格、名詞を修飾する限定詞の位置にあれば所有格、独立した名詞句として所有を表す位置にあれば所有代名詞を選択する。手順2として、人称と数を確認する。指示対象が話者自身であれば一人称、聞き手であれば二人称、第三者であれば三人称である。指示対象が単数であれば単数形、複数であれば複数形を選択する。三人称単数は性によってさらに区別される。手順3として、格変化表に照らして正しい形態を選択する。主格、目的格、所有格、所有代名詞の中から、統語的位置と人称・数に対応する形態を選択する。

例1: The appellate court reversed the trial court’s decision, holding that it had erred in its interpretation of the statutory language; its ruling clarified that the burden of proof rested with the plaintiff, not the defendant.

→ itは三人称単数主格であり、“the trial court” を指す。itsの1つ目は三人称単数所有格であり、“the trial court’s” の意味で “interpretation” を修飾している。Itsの2つ目は三人称単数所有格であり、“The appellate court’s” の意味で “ruling” を修飾している。

例2: The researchers acknowledged that they had encountered methodological limitations in their study design. They explained that these constraints had prevented them from establishing causal relationships, though their conclusions were presented tentatively, with a caveat that further investigation would be necessary to confirm them.

→ theyは三人称複数主格であり、“The researchers” を指す。theirは三人称複数所有格であり、“The researchers’” の意味である。themの1つ目は三人称複数目的格であり、“the researchers” を指す。themの2つ目は三人称複数目的格であり、“their conclusions” を指す。

例3: When the legislature amended the statute, it inserted a provision that required agencies to notify affected parties before implementing regulatory changes. Its intent was to enhance transparency, but critics argued that this requirement would impose undue administrative burdens on them, potentially delaying their ability to respond to emerging threats.

→ itは三人称単数主格であり、“the legislature” を指す。Itsは三人称単数所有格であり、“the legislature’s” の意味である。themは三人称複数目的格であり、“agencies” を指す。theirは三人称複数所有格であり、“agencies’” の意味である。

以上により、人称代名詞の格変化体系を完全に習得し、統語的位置に基づいて正しい格形を選択することが可能になる。

2.2. 所有格と所有代名詞の区別

所有格と所有代名詞は、どちらも所有関係を表すが、統語的機能が根本的に異なる。所有格は名詞を修飾する限定詞として機能し、必ず後続する名詞を伴う。一方、所有代名詞は独立した名詞句として機能し、後続する名詞を必要とせず、それ自体で「所有者+所有物」の両方の情報を表す。両者を単に「私の」「私のもの」という訳語で区別するのは不十分であり、本質は統語的な機能の違いにある。所有代名詞が使用される背景には、冗長性の回避という語用論的な動機があることを理解することが重要である。“This book is my book” という繰り返しを避けるために、“This book is mine” という形式が選択されるのである。

この原理から、所有格と所有代名詞を使い分ける手順が導かれる。手順1として、後続する名詞の有無を確認する。後続する名詞がある場合は所有格を使用し、後続する名詞がない場合は所有代名詞を使用する。これは最も直接的な識別方法である。手順2として、文の構造を確認する。所有格は名詞句の内部で限定詞として機能し、名詞句全体の一部となる。所有代名詞は、それ自体が完全な名詞句として、主語・目的語・補語といった統語的位置を占める。手順3として、先行文脈を確認する。所有代名詞が使用される場合、その指示対象となる「所有物」を表す名詞が、先行文脈で言及されているか、文脈上明らかでなければならない。“mine” が “my book” を意味するためには、“book” という概念が文脈で特定可能でなければならない。

例1: The plaintiff submitted her evidence to the court, while the defendant withheld his until the final hearing. Hers consisted primarily of documentary proof, whereas his relied on testimonial accounts. The judge noted that hers appeared more credible, though his could not be dismissed without further scrutiny.

→ herは所有格であり、“evidence” を修飾している。hisの1つ目は所有代名詞であり、“his evidence” を表す。後続する名詞がない。Hersは所有代名詞であり、“her evidence” を表す。主語位置にある。hisの2つ目と3つ目は所有代名詞であり、“his evidence” を表す。主語位置にある。hersは所有代名詞であり、“her evidence” を表す。主語位置にある。

例2: Our research team presented their findings at the conference, while a rival group unveiled theirs simultaneously. Their methodology differed substantially from that of their competitors, and theirs yielded results that contradicted earlier consensus.

→ Ourは所有格であり、“research team” を修飾している。theirの1つ目と2つ目は所有格であり、“findings”, “competitors” を修飾している。theirsの1つ目と2つ目は所有代名詞であり、“their findings”, “their methodology” を表している。thatは指示代名詞であり、“methodology” を指す。

例3: Each attorney presented his or her closing argument, though his was considerably longer than hers. His emphasized the weight of precedent, while hers focused on equitable considerations. The jury found his more persuasive.

→ his or herは所有格であり、“closing argument” を修飾している。hisの1つ目、2つ目、3つ目は所有代名詞であり、“his closing argument” を表している。hersの1つ目と2つ目は所有代名詞であり、“her closing argument” を表している。

以上により、所有格と所有代名詞の統語的・意味的差異を理解し、文脈に応じて正しい形式を選択することが可能になる。

2.3. 三人称単数代名詞の性と指示対象

三人称単数代名詞は、指示対象の性によって区別される。heは男性、sheは女性、itは無生物または性別が不明・無関係な生物を指す。この区別は、英語の代名詞体系において、指示対象の属性を形態的に標示する重要な機能を持つ。この区別を機械的に適用し、文脈を見失うことは避けなければならない。例えば、国や船などが擬人化されてsheで受けられる場合がある。さらに重要なのは、近年、性別が不明または無関係な単数の個人を指す場合に、“they”(単数they)が広く受け入れられている点である。性の区別が照応関係を明確化する強力な手がかりとなる一方で、現代英語の多様な表現にも対応する必要がある。

この原理から、三人称単数代名詞の正しい形式を選択し、その指示対象を特定する手順が導かれる。手順1として、指示対象の性を確認する。人物であれば、その人物の性別を確認する。動物であれば、文脈で性別が重要であればhe/she、そうでなければitを使用する。無生物であればitを使用する。手順2として、文脈で複数の候補がある場合、性の一致によって候補を絞る。手順3として、性別中立的な表現が必要な場合や、性別が不明な単数を指す場合、“he or she” または単数の “they” の使用を考慮する。現代の学術的文章では、単数の “they” が煩雑な “he or she” よりも好まれる傾向にある。

例1: The defendant claimed that he had not been present at the scene, but a witness, Ms. Smith, stated that she had seen him there. His alibi depended on corroboration from a friend, but she had subsequently recanted her statement.

→ he/him/Hisは男性形であり、“the defendant” を指す。a witness, Ms. Smith / she/herは女性形であり、目撃者を指す。a friend / sheは女性形であり、友人を指す。性の区別により、複数の登場人物の照応関係が明確になる。

例2: When a student submits their dissertation, they must defend it before a committee. The committee evaluates whether they have demonstrated mastery of their field.

→ a studentは単数名詞であり、性別不明である。theirの1つ目と2つ目は単数theyの所有格であり、“the student’s” を表している。theyの1つ目と2つ目は単数theyであり、“the student” を指す。itは中性単数主格であり、“the dissertation” を指す。

例3: The corporation announced that it would restructure its operations, but its CEO, Mr. Johnson, emphasized that this decision did not reflect dissatisfaction with his management team. He stated that the restructuring was necessitated by market conditions.

→ it/itsは中性単数であり、“the corporation” を指す。its CEO, Mr. Johnson / He/hisは男性単数であり、CEOを指す。法人が “it” で、その代表者が “he” で区別されている。

以上により、三人称単数代名詞の性による区別を理解し、単数theyのような現代的な用法も含めて、指示対象を正確に特定することが可能になる。

3. 指示代名詞と指示形容詞

指示代名詞は、空間的・心理的・談話的な距離に基づいて実体を指示する。「これ、あれ」という単純な訳語で済ませるのは不十分であり、指示代名詞はより複雑な機能を担う。指示代名詞は、独立した名詞句として機能する場合と、名詞を修飾する指示形容詞として機能する場合がある。この二つの機能を区別し、指示代名詞が表す距離の種類を理解することは、英文読解において不可欠である。特に、thisやthatが具体的な名詞句ではなく、前の文全体を指す用法は、論理展開を把握する上で極めて重要である。

指示代名詞と指示形容詞の統語的・意味的機能を体系的に理解し、その使い分けを習得する。まず、統語的な区別を明確にし、次に近称と遠称が表す多層的な「距離」の概念を学ぶ。最後に、指示代名詞が節や文全体を指す事象指示の用法を習得する。

3.1. 指示代名詞と指示形容詞の統語的区別

指示代名詞と指示形容詞は形態的には同一であるが、統語的位置によって明確に区別される。指示代名詞は独立した名詞句として機能し、主語・目的語・補語といった統語的位置を占める。一方、指示形容詞は名詞を修飾する限定詞として機能し、必ず後続する名詞を伴う。この区別を意識しないと、“This is important” と “This argument is important” の構造的な違いを説明できない。指示代名詞が単独で文脈上の実体や事象を指すのに対し、指示形容詞は後続の名詞と結びつくことで初めて指示対象を特定するという、指示のメカニズムの違いを理解できることが重要である。

この原理から、指示代名詞と指示形容詞を識別する手順が導かれる。手順1として、後続する名詞の有無を確認する。this/that/these/those の直後に名詞がある場合は指示形容詞、名詞がない場合は指示代名詞である。これが最も直接的な識別法である。手順2として、文中で占める統語的役割を確認する。主語・目的語・補語など、名詞句が置かれるべき場所に単独で存在すれば指示代名詞である。名詞句の先頭にあり、名詞を修飾していれば指示形容詞である。手順3として、指示対象を特定する。指示代名詞の場合、その指示対象は先行文脈または状況から特定される抽象的な事象や具体的な実体である。指示形容詞の場合、修飾される名詞が指示対象を特定する手がかりとなる。

例1: This conclusion rests on several assumptions, each of which merits scrutiny. This is particularly true given that these assumptions have not been empirically validated. Those who accept this reasoning must acknowledge that it depends on contested premises.

→ Thisの1つ目は指示形容詞であり、“conclusion” を修飾している。Thisの2つ目は指示代名詞であり、前文の内容全体を指す主語である。theseは指示形容詞であり、“assumptions” を修飾している。Thoseは指示代名詞であり、“people” の意味を内包し、関係詞節で修飾される主語である。thisの3つ目は指示形容詞であり、“reasoning” を修飾している。

例2: That the statute was ambiguous is beyond dispute. This ambiguity, however, does not automatically render it unconstitutional. Those who argue otherwise must demonstrate that this vagueness prevented reasonable persons from understanding what conduct was prohibited. This is a stringent standard, and that burden is difficult to meet.

→ Thatは接続詞である。Thisの1つ目は指示形容詞であり、“ambiguity” を修飾している。thisの2つ目は指示形容詞であり、“vagueness” を修飾している。Thisの3つ目は指示代名詞であり、「立証責任」を指す主語である。thatの4つ目は指示形容詞であり、“burden” を修飾している。

例3: These findings challenge conventional wisdom, but that does not mean they should be accepted uncritically. This research employed innovative methods, yet those methods have not been widely validated. This is why replication studies are necessary: they test whether these results can be reproduced.

→ Theseの1つ目は指示形容詞であり、“findings” を修飾している。thatは指示代名詞であり、前文の内容全体を指す主語である。Thisの2つ目は指示形容詞であり、“research” を修飾している。thoseは指示形容詞であり、“methods” を修飾している。Thisの3つ目は指示代名詞であり、前文の状況を指す主語である。theseの4つ目は指示形容詞であり、“results” を修飾している。

以上により、指示代名詞と指示形容詞を統語的位置に基づいて正確に区別し、それぞれの機能を理解することが可能になる。

3.2. 近称と遠称の意味的差異

指示代名詞は、近称と遠称に分類される。この区別は単なる空間的距離に留まらない。この区別が心理的距離や談話的距離をも含む多層的な概念であるという点を習得することが重要である。近称は話者が心理的に近いと感じるもの、または談話の中で最近言及されたものを指す。対照的に、遠称は心理的に遠いもの、または以前に言及されたものを指す傾向がある。指示語の選択が書き手の微妙な態度や評価、そして談話の構造を暗示する手がかりとなることを理解することが重要である。

この原理から、近称と遠称の使い分けを読み解く手順が導かれる。手順1として、空間的・時間的距離を確認する。物理的に近いもの、時間的に現在のもの、直前に言及されたものには近称が使われる。物理的に遠いもの、時間的に過去のもの、以前に言及されたものには遠称が使われる。手順2として、話者の心理的距離を推測する。肯定的な文脈や話者自身の主張には近称が、否定的な文脈や他者の主張の引用には遠称が使われる傾向がある。手順3として、談話の構造を確認する。これから議論の中心となる話題には近称、すでに完結した話題には遠称が使われる。

例1: This interpretation is supported by the statute’s legislative history, whereas that interpretation relies solely on the text’s plain meaning. Those who favor this approach argue that it better reflects legislative intent, while those who prefer that approach contend that it avoids judicial overreach.

→ This/thisは話者が現在提示している、または支持している解釈・アプローチである。that/thatは対比される、話者が距離を置いている、あるいは客観的に参照している解釈・アプローチである。

例2: In the 1980s, economists believed that deregulation would spur growth. That belief shaped policy for a generation. Today, however, this consensus is breaking down, as evidence of its negative consequences accumulates.

→ That beliefは過去の信念を指す。this consensusは現在の状況に関連するコンセンサスを指す。itsは人称代名詞であり、“deregulation” を指す。

例3: Some propose a flat tax. This would simplify the tax code. Others advocate a progressive system. That, they argue, is more equitable. The debate over these two approaches continues.

→ Thisは直前の提案を指し、その直接的な結果を述べている。Thatは少し前の提案を指し、他者の主張として引用している。theseは二つのアプローチ全体を指す。

以上により、近称と遠称の意味的差異を多層的に理解し、文脈に応じて書き手の態度や談話構造を読み取ることが可能になる。

3.3. 指示代名詞による事象指示

指示代名詞は、特定の名詞句だけでなく、節・文・段落、あるいは談話全体を指示対象とすることができる。特に、単独で主語として使われるthisとthatは、先行する文や節の内容全体、すなわち「命題」や「事実」を指す用法が頻繁に見られる。「this/thatは何を指すか」と問われた際、直前の名詞を探すだけでは正解に至れないことが多い。この用法を理解しなければ、”The experiment failed. This surprised everyone.”という文で、”This”が何を指しているのかを特定できない。この抽象的な指示関係を認識する能力は、複雑な学術的文章や論説文の読解に不可欠である。

この原理から、事象を指す指示代名詞の指示対象を特定する手順が導かれる。手順1として、後続する述語動詞の意味を確認する。述語が is surprising, means that…, suggests that… のように、事実や命題を主語として要求する動詞である場合、指示代名詞が文全体を指している可能性が高い。手順2として、直前の文や節の内容を「〜ということ」「その事実」として代入してみる。その代入で意味が通じる場合、事象指示であると判断できる。手順3として、thisとthatのニュアンスの違いを考慮する。thisは現在の議論の焦点となっている事象や、これから論じる事象を指すことが多い。thatはより客観的に、あるいは完結した事実として参照する傾向がある。

例1: The court held that the statute violated the Equal Protection Clause. This was a landmark decision, as it marked the first time the court had applied heightened scrutiny to this type of classification.

→ Thisは指示代名詞であり、先行する文全体、つまり「裁判所がその法律が平等保護条項に違反すると判示したという事実」またはその判決そのものを指す。述語 “was a landmark decision” が、具体的な物ではなく事象を評価していることから判断できる。

例2: Researchers found that participants exposed to the intervention exhibited improved cognitive performance. This suggests that the intervention was effective, though it does not establish causation.

→ Thisは指示代名詞であり、「介入にさらされた参加者が認知能力の向上を示した」という研究結果全体を指す。述語 “suggests” が、事実から結論を導く動詞であることから判断できる。

例3: That the jury found him guilty indicates that they found the latter argument more persuasive.

→ Thatは接続詞であり、“That the jury found him guilty” という名詞節を形成しており、この節全体が文の主語となっている。この場合、Thatは代名詞ではない。

例4: He failed to disclose a conflict of interest. That was a serious ethical lapse.

→ Thatは指示代名詞であり、「彼が利益相反を開示しなかった」という事実全体を指す。述語 “was a serious ethical lapse” が事実に対する評価であることから判断できる。thatが使われることで、その行為を客観的に、あるいは突き放して評価しているニュアンスが生まれる。

以上により、指示代名詞が節・文・談話全体を指示対象とする用法を理解し、複雑な照応関係を正確に追跡することが可能になる。

4. 不定代名詞の体系

不定代名詞は、特定の実体ではなく、不特定の実体や数量、あるいは一般的な概念を指す代名詞であり、some, any, all, each, every, none, one, another, other, both, either, neither など、多様な形態を持つ。個々の単語の意味は知っていても、これらが形成する体系、特に肯定・否定の文脈、個別・全体の視点、特定・不特定の区別といった原理を理解していなければ、正確な読解ができない。

不定代名詞を体系的に分類し、各代名詞の統語的・意味的機能を習得する。someとanyの使い分けの背後にある話者の前提を理解し、eachとeveryの個別性と全体性という視点の違いを把握し、one, another, otherの体系的な関係性を習得する。これにより、不定代名詞が関わる文の正確な意味とニュアンスを理解できるようになる。

4.1. some と any の使い分け

some と any は、どちらも不特定の量や数を表すが、使用される文脈が異なる。「someは肯定文、anyは否定文・疑問文」という説明は不完全である。本質的な違いは、話者の前提にある。someは「存在すること」を肯定的に前提とし、anyは「存在するかどうか不明または問わない」という中立的・否定的な前提を表す。この原理を理解することで、疑問文でもsomeが使われる場合や、肯定文でanyが使われる場合の理由を説明できる。

この原理から、some と any を使い分ける手順が導かれる。手順1として、文の種類を確認する。これは基本的な手がかりとなる。否定文やif節では通常anyが使われる。手順2として、話者の前提を推測する。疑問文で、話者が「存在する」という肯定的な答えを期待している場合はsomeが使われる。存在を純粋に問う場合はanyが使われる。手順3として、肯定文でのanyの意味を理解する。肯定文で “any” が使用される場合、「どの〜でも」「いかなる〜も」という強い一般化、すなわち譲歩の意味を表す。これは「全ての選択肢の中から任意の一つを選んでも成り立つ」ことを示す。

例1: Some critics have argued that the decision was flawed, but any objective assessment must acknowledge that it was supported by substantial evidence. If there were any procedural irregularities, they would have been raised on appeal.

→ Someは「何人かの批評家」という肯定的な存在を前提としている。anyの1つ目は肯定文での使用であり、「いかなる客観的な評価であっても」という譲歩・一般化の意味である。anyの2つ目はif節での使用であり、「もし何らかの手続き上の不備があれば」という仮定的な存在を問う。

例2: Researchers sought to determine whether any relationship existed between the variables. Some evidence suggested a correlation, but it was insufficient. Any conclusion drawn from these data must therefore be tentative, as some confounding factors may not have been controlled.

→ anyの1つ目はwhether節での使用であり、「何らかの関係が存在するかどうか」という中立的な問いである。Someの1つ目は「いくらかの証拠」の存在を示している。Anyの2つ目は肯定文での使用であり、「これらのデータから引き出されるいかなる結論も」という一般化である。someの2つ目は「いくつかの交絡因子」の存在を示唆している。

例3: Does the government have any justification for infringing upon this fundamental right? Some might argue for national security, but this justification is rarely sufficient on its own.

→ anyは疑問文での使用であり、「何らかの正当化事由があるのか」と中立的に問うている。Someは「一部の人々」の存在を示している。thisは指示形容詞であり、“justification” を修飾している。

以上により、some と any の使い分けの原理を理解し、文脈に応じてその意味とニュアンスを正確に把握することが可能になる。

4.2. each と every の差異

each と every は、どちらも「それぞれの」「すべての」と訳されるため混同されやすいが、個別性と全体性という視点の違いがある。eachは集合の中の「個々」の要素に焦点を当て、個別性を強調する。一方、everyは「集団全体」を一つのまとまりとして捉え、全体性を強調する。eachが代名詞としても形容詞としても機能するのに対し、everyは形容詞としてしか機能しないという統語的な差異も、この意味的な違いから説明できる。eachは個々の要素を指すことができるため代名詞になれるが、everyは常に集合全体に言及するため、修飾する名詞を必要とする。

この原理から、each と every を使い分ける手順が導かれる。手順1として、視点を確認する。個々の実体を一つ一つ個別に考える場合はeachを使用する。すべての実体を一つの集合として一般化して捉える場合はeveryを使用する。手順2として、統語的位置を確認する。独立した代名詞として機能している場合はeachのみが可能である。”Every of the students”という形は非文法的である。手順3として、文脈の焦点を分析する。個別の行為や属性、あるいは順番に何かを行うような文脈ではeachが好まれる。全体に適用される規則や一般化された記述ではeveryが好まれる。

例1: Each participant in the study was assigned a unique identifier, and each was instructed to complete the survey independently. Every response was then coded, ensuring that every participant’s input was systematically analyzed.

→ Eachの1つ目は形容詞であり、「参加者一人ひとり」という個別性を強調している。eachの2つ目は代名詞であり、「参加者一人ひとり」を指す。Everyの1つ目と2つ目は形容詞であり、「すべての回答」「すべての参加者の」という全体性を強調している。

例2: The court examined each claim separately. Every claim was evaluated on its own merits, and each required a distinct legal analysis. This detailed approach ensured that no claim was overlooked.

→ eachの1つ目と2つ目は形容詞であり、“claim” を修飾している。「一つ一つの主張」を個別に取り上げるニュアンスがある。Everyは形容詞であり、“claim” を修飾している。「すべての主張が例外なく」評価されたという全体性を強調している。

例3: Every student in the class was expected to participate, but each student’s contribution varied. Each brought unique perspectives, and these diverse viewpoints enriched the discussion. Every voice was valued.

→ Everyの1つ目と2つ目は形容詞であり、「クラスの生徒全員」「すべての声」という全体を指している。eachの1つ目は形容詞であり、「生徒一人ひとりの貢献」と個に焦点を当てている。Eachの2つ目は代名詞であり、「生徒一人ひとり」を指す。

以上により、each と every の個別性と全体性という視点の違いを理解し、文脈に応じて正しい形式を選択し、そのニュアンスを読み取ることが可能になる。

4.3. one, another, other の体系

one, another, other は、不特定の実体を指す不定代名詞であり、特定性と数という二つの文法範疇の組み合わせによって、複雑だが論理的な体系を形成する。この体系を丸暗記しようとするのは非効率的であり、“an + other = another” や “the + other(s) = the other(s)” という構成原理を理解することが重要である。定冠詞 “the” が付くことで「残りすべて」という特定性が生じるという、冠詞の知識とも連動しているためである。

この原理から、one, another, other を使い分ける手順が導かれる。手順1として、数の確認を行う。単数か複数かを確認する。手順2として、特定性の確認を行う。不特定か、特定かを確認する。手順3として、追加性の確認を行う。「もう一つ」という追加の意味がある場合は another を使用する。体系をまとめると、oneは不特定の1つ、anotherは不特定の「もう1つ」、the otherは残りの1つ、someは不特定のいくつか、othersは不特定の「他のいくつか」、the othersは残りのすべてである。

例1: There are three main theories. One emphasizes economic factors. Another focuses on political institutions. The other highlights cultural values.

→ 3つの理論という限定された集合の中での列挙である。Oneは最初の不特定の1つである。Anotherは追加の不特定の1つである。The otherは最後の残り1つである。

例2: Some scholars argue for strict textualism in legal interpretation, while others advocate for a more purposive approach. The former believe in adhering to the plain meaning of the text; the latter contend that legislative intent should be paramount.

→ Some… others…は学者という不特定多数の集合を、2つの対立するグループに分けている。The former… the latter…は前に述べた2つのグループをそれぞれ指す特定表現である。

例3: The study compared several interventions. One proved highly effective. Another showed modest benefits. A third yielded no significant results. Some of the other interventions had mixed outcomes.

→ One… Another… A third…は不特定の介入を順番に列挙している。Some of the other interventionsはここまでの3つを除いた「残りの介入のうちのいくつか」である。

例4: One cannot simply choose one theory and ignore the others. A comprehensive analysis requires integrating insights from all of them.

→ oneの1つ目は不定代名詞であり、一般の人を指す。oneの2つ目は不定代名詞であり、不特定の1つの理論を指す。the othersは「残りのすべての理論」である。allは不定代名詞であり、形容詞的用法である。

以上により、one, another, other の体系を構成原理から理解し、複雑な列挙や対比の構造を正確に追跡することが可能になる。

5. 疑問代名詞と関係代名詞との区別

疑問代名詞と関係代名詞は、形態が同一または類似しているため混同しやすいが、統語的・意味的機能が根本的に異なる。疑問代名詞は「未知の情報を問う」ために使われ、独立した疑問文や間接疑問文を導く。一方、関係代名詞は「先行詞を修飾する」ために使われ、形容詞節を導く。この区別を理解しなければ、“I asked what he bought.” と “I saw what he bought.” の微妙な意味の違いや、複雑な文の構造を正確に識別できない。

疑問代名詞と関係代名詞の統語的・意味的差異を体系的に理解し、両者を正確に区別する能力を確立する。

5.1. 疑問代名詞の統語的機能

疑問代名詞は、文中で主語、目的語、補語などの名詞句が担う役割を果たしつつ、その要素が「不明である」ことを示し、情報を要求する。whoは人、whatは物や事、whichは限定された選択肢の中から選ぶものを指す。wh-語で始まる疑問文を形成するほか、従属節として主節に埋め込まれる。間接疑問文では、疑問詞節全体が名詞節として機能し、主節の主語や目的語になる。「何を〜か」という疑問の意味が文の主要な構成要素となっていることを認識することが重要である。

この原理から、疑問代名詞を識別する手順が導かれる。手順1として、疑問の意味の有無を確認する。「誰が」「何を」「どちらが」といった未知の情報を問う意味が含まれているか確認する。手順2として、節全体の機能を確認する。間接疑問文の場合、wh-節全体が名詞句として機能し、動詞の目的語になっているか確認する。手順3として、語順を確認する。間接疑問文では、wh-節の内部は「主語+動詞」の平叙文の語順になる。

例1: Who bears the burden of proof in this proceeding? What standard of review applies? Which precedents are controlling?

→ Who, What, Whichはすべて直接疑問文を導く疑問代名詞である。それぞれ文の主語として機能している。

例2: Researchers asked which factors influenced outcomes. They sought to determine what mechanisms explained the observed effects and who was most likely to benefit from the intervention.

→ which, what, whoはすべて間接疑問文を導いている。“which factors…” は “asked” の目的語、“what mechanisms…” と “who…” は “determine” の目的語となる名詞節である。

例3: The statute does not specify whom the obligation falls upon. This ambiguity has led courts to ask who should be held accountable when violations occur.

→ whomは疑問代名詞であり、前置詞 “upon” の目的語として機能し、“specify” の目的語となる名詞節を導いている。whoは疑問代名詞であり、“ask” の目的語となる名詞節を導いている。

以上により、疑問代名詞の統語的機能を理解し、直接疑問文および間接疑問文におけるその役割を正確に把握することが可能になる。

5.2. 関係代名詞の統語的機能

関係代名詞は、先行する名詞を修飾し、それに関する追加情報を提供する形容詞節を導く。whoは人、whichは物・事、thatは人・物両方を指す。関係代名詞は、関係詞節の中で主語・目的語といった統語的位置を占めると同時に、節全体を先行詞に結びつける接続詞の役割も果たす。関係代名詞を「接続詞+代名詞」と学ぶことが多いが、その本質は名詞を後ろから修飾して、より複雑な名詞句を形成する機能にある。入れ子構造になった複雑な英文を解読する際、どこからどこまでがどの名詞を修飾しているのかを正確に特定する能力に直結する。

この原理から、関係代名詞を識別する手順が導かれる。手順1として、先行詞の存在を確認する。関係代名詞の直前には、それが修飾する名詞が存在する。手順2として、形容詞節としての機能を確認する。関係詞節全体が、先行詞を修飾する形容詞のように機能しているか確認する。手順3として、関係詞節内の統語的役割を確認する。関係代名詞が、節の中で主語、目的語、所有格などの役割を果たしているか確認する。

例1: The precedent which the court cited was decided a decade ago. The reasoning which it employed remains persuasive. Those who challenge this precedent must demonstrate that it was wrongly decided.

→ whichの1つ目と2つ目は関係代名詞であり、それぞれ “precedent”, “reasoning” を先行詞とし、関係詞節内で目的語である。whoは関係代名詞であり、“Those” を先行詞とし、関係詞節内で主語である。

例2: The participants who completed the study differed from those who withdrew. The former exhibited higher motivation, which complicates the interpretation of the results.

→ whoの1つ目と2つ目は関係代名詞であり、それぞれ “participants”, “those” を先行詞としている。whichは関係代名詞であり、非制限用法として先行する文の一部を先行詞としている。

例3: The evidence which the prosecution presented was compelling. The defense introduced testimony which cast doubt on its reliability. The jury, which deliberated for three days, ultimately found the defendant guilty. This verdict, which many observers found surprising, has been appealed.

→ whichの1つ目と2つ目は制限用法であり、それぞれ “evidence”, “testimony” を修飾している。whichの3つ目と4つ目は非制限用法であり、それぞれ “The jury”, “This verdict” に補足的な情報を加えている。

以上により、関係代名詞の統語的機能を理解し、先行詞との修飾関係を正確に把握することが可能になる。

5.3. what の二重機能と区別の方法

whatは、疑問代名詞としても、先行詞を含む関係代名詞としても機能するため、特に注意が必要である。どちらの用法でもwhatは名詞節を導くが、その意味が異なる。疑問代名詞のwhatは「何を〜か」という未知の情報を問う。関係代名詞のwhatは “the thing(s) which” と同義で、「〜するもの・こと」という既知または特定可能な情報を指す。この区別は、文脈と、主節の動詞の意味に依存する。

この原理から、whatの機能を区別する手順が導かれる。手順1として、主節の動詞の意味を確認する。know, ask, wonder, determine のように、知識の有無や問いを意味する動詞の目的語であれば、疑問代名詞の可能性が高い。see, believe, understand, like のように、知覚や信念、評価を表す動詞の目的語であれば、関係代名詞の可能性が高い。手順2として、「何を〜か」と訳して自然か、「〜するもの・こと」と訳して自然かを確認する。手順3として、文脈全体から、what節が未知の情報を問うているのか、特定可能な対象を指しているのかを判断する。

例1: The police couldn’t determine what the suspect was holding.

→ 動詞は determine であり、知識の欠如を表している。意味は「容疑者が何を手にしていたか」を特定できなかった、である。機能は疑問代名詞である。

例2: I cannot believe what I am seeing.

→ 動詞は believe であり、知覚の対象を評価している。意味は「私が見ているもの」を信じられない、である。機能は関係代名詞である。

例3: What truly matters is not what you have, but what you are.

→ Whatの1つ目は関係代名詞であり、文の主語である。「本当に重要なこと」を意味する。whatの2つ目は関係代名詞であり、「あなたが持っているもの」を意味する。whatの3つ目は関係代名詞であり、「あなたという存在」を意味する。

例4: She asked me what my plans were for the weekend. I told her what I was planning to do.

→ whatの1つ目は疑問代名詞であり、“ask” の目的語である。「週末の予定は何か」を意味する。whatの2つ目は関係代名詞であり、“told” の目的語である。「私がしようと計画していたこと」を意味する。

以上により、whatが持つ疑問代名詞と関係代名詞の二重機能を理解し、文脈と動詞の意味を手がかりに、その機能を正確に区別することが可能になる。

体系的接続

  • [M17-統語] └ 省略・倒置・強調構文における代名詞の扱いと、省略された先行詞の復元方法を学ぶ。
  • [M18-談話] └ 代名詞が文間の結束性をどのように形成するか、照応連鎖の追跡方法を深く学ぶ。
  • [M03-統語] └ 冠詞と代名詞の指示機能の違いと、定性の概念的関係を理解する。
  • [M15-統語] └ 接続詞と代名詞の統語的機能の区別、特に “that” の多機能性を理解する。

意味:照応関係と先行詞の特定

代名詞の意味は、その指示対象である先行詞によって決定される。代名詞が何を指すのかを正確に特定できなければ、文の意味を完全に理解することは不可能である。照応とは、代名詞と先行詞の間の指示関係を指す言語学的概念であり、この関係を正しく認識することが英文読解の基盤となる。単純な文では照応関係は自明であるが、複数の候補が存在する複雑な文では、統語的制約・意味的整合性・語用論的要因を総合的に考慮して先行詞を特定する必要がある。大学入試の長文読解では、代名詞の指示対象を特定する問題が頻出し、受験生の照応関係把握能力を直接測定する。この層では、照応の原理、先行詞特定の制約条件、曖昧性の解消方法、指示語の距離と心理的距離の関係、そして不定代名詞の指示対象の特定といった、代名詞の意味論的機能を体系的に習得し、複数の候補の中から論理的に正しい先行詞を特定する能力を確立する。

1. 照応の基本原理と制約

照応関係を正確に把握するには、代名詞がどのような原理に基づいて先行詞を指すのかを理解する必要がある。なぜ “John saw him.” では “him” が “John” を指せず、“John said that he saw Mary.” では “he” が “John” を指せるのか。この違いは、単なる文脈判断ではなく、言語に内在する構造的な制約に基づいている。

照応関係を支配する二つの基本的な制約、すなわち「統語的制約」と「意味的整合性」を習得する。第一に、代名詞が同じ節内の主語を指せないといった、文の構造に起因する制約を理解する。第二に、代名詞と先行詞の間で、性・数・生物性といった文法的な素性が一致しなければならないという整合性の原則を確立する。

これらの基本原理の理解は、後続の記事で学ぶ「顕著性」や「文脈判断」といった、より高度な先行詞特定プロセスの前提となる。これらの制約を適用することで、無数の解釈可能性の中から、文法的にあり得ない選択肢を体系的に排除し、論理的な読解の第一歩を踏み出すことが可能になる。

1.1. 照応の統語的制約

照応関係には統語的制約が存在し、代名詞が先行詞を指すことができるかどうかは、両者の統語的位置関係によって決定される。代名詞の指示対象は常に文脈で決まると考え、構造的なルールを無視するのは不適切である。最も重要な制約の一つである束縛理論によれば、人称代名詞は、自身が含まれる最小の節の中で、主語によって束縛されてはならない。すなわち、主語と同じ対象を指すことはできない。この原理を理解することで、なぜ “John saw him.” では “him” が “John” 以外の人物を指し、もしJohn自身を指すなら “John saw himself.” と再帰代名詞を使わなければならないのかを論理的に説明できる。

この原理から、照応関係の統語的な可能性を判断する手順が導かれる。手順1として、代名詞と、その候補となる先行詞の統語的な関係性を分析する。特に、両者が同一の節の中に存在するかどうかを確認する。手順2として、代名詞と候補先行詞が同一節内にあり、かつ候補先行詞がその節の主語である場合、その代名詞は主語を指すことができないと判断する。この場合、両者は異なる実体を指す。手順3として、代名詞が従属節の中にあり、候補先行詞が主節の主語である場合など、両者が異なる節に属する場合は、この制約は適用されず、代名詞は先行詞を指すことが可能になる。この場合、判断は意味的整合性や文脈に委ねられる。

例1: The committee criticized its chairman because he refused to consider their proposal.

→ heは主格代名詞であり、“because” に導かれる従属節の主語である。候補先行詞は “The committee”、“its chairman” である。“he” は従属節内にあり、“The committee” や “its chairman” は主節にある。したがって、“he” が “The committee” や “its chairman” を指すことに統語的な制約はない。意味的整合性から判断することになる。

例2: The lawyer representing the defendant argued that the court should dismiss the case against him.

→ himは目的格代名詞であり、“against” の目的語である。候補先行詞は “The lawyer”, “the defendant”, “the court” である。“him” が含まれる最小の節は “the court should dismiss the case against him” である。この節の主語は “the court” である。“him” は主語ではないため、この節の主語 “the court” を指すことは可能である。また、“him” は主節の “The lawyer” や “the defendant” を指すことにも制約はない。

例3: After he submitted the report, the manager praised the employee for his diligence.

→ heは主格代名詞であり、“After” に導かれる従属節の主語である。候補先行詞は “the manager”, “the employee” である。“he” は主節の要素を指すことが可能である。しかし、“he” が “the manager” と “the employee” のどちらを指すかは、この文だけでは構造的に曖昧である。文脈から、通常は報告書を提出するのは従業員であると判断される。

例4: The system automatically logs out a user if it detects inactivity for more than ten minutes.

→ itは主格代名詞であり、“if” に導かれる従属節の主語である。候補先行詞は “The system”, “a user” である。“it” は主節の “The system” または “a user” を指すことに制約はない。意味的整合性から、“detects inactivity” の主体は “The system” であると判断される。

以上により、束縛理論の基本原理を理解し、代名詞と先行詞の統語的な位置関係に基づいて、照応の文法的な可能性を判断することが可能になる。

1.2. 照応の意味的整合性

照応関係が成立するためには、統語的制約を満たすだけでなく、意味的整合性も要求される。代名詞と先行詞は、性、数、生物性といった文法的素性が一致しなければならない。このルールを知っていることが多いが、複数の候補が部分的に素性を共有する場合や、集合名詞、性別不明の単数など、複雑な状況で適用を誤ることがある。素性の一致が、複数の候補の中から論理的にあり得ないものを排除するための、客観的で強力なフィルターとして機能することを認識することが重要である。

この原理から、意味的整合性に基づいて先行詞を特定する手順が導かれる。手順1として、代名詞の文法的素性を正確に確認する。特に、itは中性・単数、theyは複数または性別不明の単数を指すことを念頭に置く。手順2として、候補となる先行詞を全てリストアップし、それぞれの文法的素性を分析する。集合名詞は、単数扱いされる場合と、構成員を指して複数扱いされる場合があることに注意する。手順3として、代名詞と先行詞の素性が一致しない候補を体系的に除外する。手順4として、残った候補の中から、述語動詞の選択制限を満たすものを選ぶ。

例1: The committee delivered its report to the board, but they were not satisfied with its recommendations and sent it back for revision.

→ itsの1つ目と2つ目は中性単数所有格であり、“The committee” を一つの組織体として受けている。theyは複数主格であり、“the board” の構成員を指して複数扱いされている。itは中性単数目的格であり、“its report” を指す。“committee” と “board” はどちらも集合名詞だが、文脈によって単数・複数扱いが変わる。“were not satisfied” の主語が “they” であることから、構成員を指していると判断できる。

例2: The software company, which has thousands of employees, announced that it would launch a new product. They are hoping it will revolutionize the market.

→ whichは関係代名詞であり、“The software company” を指す。itの1つ目と2つ目は中性単数主格であり、“The software company” を一つの法人として指している。Theyは複数主格であり、“The software company” の経営陣や従業員を指す。法人としての行為は “it” で、その中の人々の希望や意図は “they” で表されることがある。

例3: Each applicant must submit their portfolio online. They are also required to provide a personal statement explaining why they are suitable for the position.

→ theirの1つ目と2つ目は単数theyの所有格であり、“Each applicant” を受ける。性別が不明な単数を指す現代的な用法である。Theyの1つ目と2つ目は単数theyであり、“Each applicant” を指す。“Each applicant” は文法的には単数だが、意味的には性別を特定しない個人を指すため、単数theyで受けることが許容される。

例4: The ship struck an iceberg, which caused massive damage to her hull. The crew tried to save her, but she sank within hours.

→ whichは関係代名詞であり、“an iceberg” を指す。herの1つ目と2つ目と3つ目は女性単数であり、伝統的に船を女性として擬人化する用法である。“The ship” を指す。無生物である船が “she/her” で受けられているのは、擬人化という文体的な選択による。この知識がなければ、照応関係の特定を誤る可能性がある。

以上により、意味的整合性の原則を理解し、文法的素性の一致と述語の意味を手がかりに、先行詞の候補を論理的に絞り込むことが可能になる。

2. 先行詞の顕著性と選択

複数の候補が統語的制約と意味的整合性を満たす場合、どの候補が先行詞として選択されるかは、顕著性という語用論的要因によって決定される。顕著性とは、談話の中でその実体がどれだけ注目を集めているか、どれだけ重要であるかという度合いを指す。「最も近い名詞が先行詞」という単純なルールに頼りがちであるが、これはしばしば誤りにつながる。

先行詞の顕著性を決定する複数の要因を体系的に理解する。第一に、主語位置にある要素がなぜ目的語位置にある要素よりも顕著性が高いのかを学ぶ。第二に、談話全体の主題となっている実体が、どのようにして高い顕著性を維持するのかを理解する。

これらの原理を習得することで、「最も近い」という安易なルールから脱却し、文脈の中で認知的に最も活性化されている要素を先行詞として特定する、より高度な読解戦略を確立できる。

2.1. 統語的顕著性

統語的な位置は、先行詞の顕著性を決定する上で極めて重要な役割を果たす。特に、主語の位置にある名詞句は、目的語やその他の位置にある名詞句よりも高い顕著性を持ち、代名詞の先行詞として選択されやすい。これは「主語優先の原則」として知られている。「最も近い名詞」というルールに固執すると、この主語の優先性を見落とし、解釈を誤ることが多い。文の構造自体が、書き手がどの要素を情報の出発点として提示しているかを示しており、代名詞の解釈がその構造と密接に連動していることを理解することが重要である。

この原理から、統語的顕著性に基づいて先行詞を選択する手順が導かれる。手順1として、代名詞の候補となる先行詞を複数特定する。手順2として、各候補の統語的位置を確認する。手順3として、他の条件が同じであれば、主語の位置にある候補が、目的語の位置にある候補よりも先行詞として優先されると判断する。手順4として、この原則が、後続の文でその主語が主題として継続する蓋然性が高いという、談話の流れとも一致することを確認する。

例1: The professor praised the student because he had submitted an outstanding essay.

→ heは主格代名詞である。候補は “The professor”, “the student” である。統語的顕著性として、“The professor” の方が顕著性が高い。しかし、「素晴らしいエッセイを提出した」のは文脈上 “the student” である。この文では、意味的・文脈的整合性が統語的顕著性に優先している。主語優先は絶対的なルールではなく、強力な傾向である。

例2: John gave Bill a book, and then he left the room.

→ heは主格代名詞である。候補は “John”, “Bill” である。統語的顕著性として、主語である “John” の方が顕著性が高い。「部屋を出て行った」のは、本を渡した動作主である “John” である可能性が高い。この場合、統語的顕著性と意味的判断が一致する。

例3: The CEO fired the manager who had criticized him. He was furious about the public dissent.

→ himは目的格代名詞であり、“criticized” の目的語である。“who” を指すことはできない。したがって “The CEO” を指す。Heは主格代名詞である。候補は “The CEO”, “the manager” である。統語的顕著性として、主節の主語である “The CEO” の方が、従属節の主語である “the manager” よりも顕著性が高い。「公然の異議に激怒した」のは、解雇した側の “The CEO” であると考えるのが自然である。統語的顕著性と意味的判断が一致する。

例4: The car crashed into the wall, but it was not seriously damaged.

→ itは主格代名詞である。候補は “The car”, “the wall” である。統語的顕著性として、主語である “The car” の方が顕著性が高い。逆接の “but” があるため、「壁に衝突したのに、損傷は深刻ではなかった」という文脈である。損傷するのは通常、動いている側の “The car” である。ここでも統語的顕著性と意味的判断が一致する。

以上により、主語の優先性という統語的顕著性の原則を理解し、他の要因と組み合わせながら、最も可能性の高い先行詞を論理的に特定することが可能になる。

2.2. 談話的顕著性

先行詞の顕著性は、単一の文の中での統語的な位置だけでなく、複数の文にまたがる談話全体の構造によっても決定される。談話の主題として確立されている実体は、たとえ直前の文に登場していなくても、高い顕著性を維持し、代名詞の先行詞となり得る。文と文を孤立させて読む傾向があるが、代名詞の解決には、何がその段落や文章全体の中心的な話題であるかを常に意識することが不可欠である。長距離照応の解決や、複数の候補の中から主題となっているものを選択する際の、決定的な判断基準となることを認識することが重要である。

この原理から、談話の主題構造に基づいて先行詞を選択する手順が導かれる。手順1として、段落の主題文や、文章の導入部で提示された中心的な概念や人物を特定する。これが談話の全体的な主題となる。手順2として、代名詞が登場した際に、直前の名詞だけでなく、この全体的な主題も先行詞の候補として考慮に入れる。手順3として、代名詞を含む文の内容が、直前の文の主題よりも、この全体的な主題とより強く結びついている場合、全体的な主題が先行詞であると判断する。手順4として、代名詞が一貫して同じ実体を指し続けることで、談話の結束性が保たれていることを確認する。

例1: The rise of artificial intelligence presents both opportunities and challenges. Many industries are being transformed by automation. However, it also raises serious ethical questions about privacy and employment.

→ itは主格代名詞である。候補は “automation”, “The rise of artificial intelligence” である。第3文の内容「プライバシーと雇用に関する倫理的問題」は、“automation” という個別技術よりも、“The rise of artificial intelligence” というより大きな主題と強く結びついている。したがって、“it” は談話の主題を指す長距離照応である。

例2: The CEO announced a new strategic plan. The plan involves significant investment in renewable energy. He argued that this was essential for the company’s long-term growth. The company’s stock price rose immediately after the announcement. Investors reacted positively to the new direction. They saw it as a sign of forward-thinking leadership.

→ itは目的格代名詞である。候補は “The new direction”, “The company’s stock price”, “a new strategic plan” である。“it” を「先進的なリーダーシップのしるし」と見なす対象は、“The new direction” またはその元となった “a new strategic plan” である。談話全体の主題として、“a new strategic plan” が高い顕著性を維持している。

例3: Professor Smith is a leading expert on constitutional law. Her work has focused on the First Amendment. She has published numerous articles on freedom of speech. Although her recent book discusses the separation of powers, she is best known for her contributions in that area.

→ sheの1つ目と2つ目は主格代名詞であり、“Professor Smith” を指す。herの1つ目と2つ目は所有格であり、“Professor Smith’s” を意味する。sheの3つ目は主格代名詞である。候補は “Professor Smith” である。途中、“her recent book” という別の話題が挿入されるが、文の主語 “she” は一貫して談話の主題である “Professor Smith” を指し、主題の継続性を示している。

以上により、談話の主題構造が先行詞の顕著性に与える影響を理解し、局所的な文脈だけでなく、大域的な文脈からも先行詞を特定する能力を習得できる。

3. 照応の曖昧性と解消戦略

英文、特に複雑な構造を持つ文章では、代名詞の指示対象が一意に特定できず、照応関係が曖昧になる場合がある。この曖昧性は、複数の候補が統語的制約と意味的整合性を同時に満たす場合に生じる。読解における誤解の主要な原因となるため、なぜ曖昧性が生じるのか、そして書き手や読み手はそれをどのように解消するのかを理解することは、高度な読解力に不可欠である。

照応の曖昧性が生じる構造的要因を分析し、それを解消するための文脈的な手がかりを学ぶ。さらに、書き手自身が曖昧性を避けるために用いる表現戦略についても理解を深める。これにより、曖昧な文に遭遇した際に冷静に分析し、最も妥当な解釈を導き出す能力、そして自身が書く際に明確な文章を作成する能力を養う。

3.1. 照応の曖昧性が生じる構造的要因

照応の曖昧性は、偶然に生じるのではなく、特定の構造的要因によって引き起こされる。曖昧な文に遭遇した際に混乱するのではなく、その原因がどこにあるのかを分析する視点を持つことが重要である。主な要因は、性・数などの文法的素性が一致する候補が複数存在すること、代名詞が複数の統語的領域の名詞句を指す可能性があること、代名詞が具体的な名詞句だけでなく、節や文全体を指す可能性があること、である。曖昧性の原因を特定できれば、それを解消するためにどのような情報に注目すべきかが明確になる。

この原理から、照応の曖昧性の原因を特定する手順が導かれる。手順1として、曖昧な代名詞を特定し、その文法的素性を確認する。手順2として、その素性と一致する先行詞の候補を、文脈からすべてリストアップする。手順3として、リストアップされた候補が、なぜすべて候補となり得るのかを分析する。複数の名詞句が同じ性・数を持っていないか、代名詞が、異なる節にある複数の名詞句を指せる構造になっていないか、代名詞が、具体的な名詞句と、前の文全体の両方を指せる可能性がないか、を確認する。手順4として、これらの要因が組み合わさることで、曖昧性が生じていることを認識する。

例1: The police officer told the suspect that he had the right to remain silent.

→ 曖昧性として、“he” の先行詞として、“The police officer” と “the suspect” の両方が文法的に可能である。原因として、二つの名詞句がともに男性単数である可能性があり、統語的な制約もないためである。解消として、文脈知識や、世界知識から、“he” は “the suspect” を指すと解釈するのが最も自然である。

例2: The company acquired a startup because it wanted to expand into a new market.

→ 曖昧性として、“it” の先行詞として、“The company” と “a startup” の両方が文法的に可能である。原因として、主節の主語と目的語が、どちらも従属節の主語 “it” の先行詞になりうる構造である。解消として、文脈知識から、“it” は “The company” を指すと解釈される。

例3: The experiment failed, which was unexpected. It disappointed the researchers.

→ 曖昧性として、“It” の先行詞として、“The experiment” と、“which was unexpected” の両方が考えられる。原因として、“It” が具体的なモノと抽象的な事象の両方を指せるためである。解消として、“disappointed the researchers” の主語として、より直接的な原因は「実験が失敗したという事実」そのものであるため、“It” は前の文全体、またはそれを代表する “The experiment” を指すと解釈するのが自然である。

以上により、照応の曖昧性が生じる構造的要因を分析し、曖昧性を認識する能力を養うことができる。

3.2. 文脈情報による曖昧性の解消

照応の構造的曖昧性は、多くの場合、文脈情報を用いて解消される。文脈情報には、語彙的知識、世界知識、そして談話構造が含まれる。文法規則だけに頼るのではなく、これらの文脈情報を総動員して、複数の可能性の中から最も妥当な解釈を選択する推論能力を鍛える必要がある。高度な読解とは、単語と文法の知識を、文脈と世界知識のフレームワークの中で統合するプロセスそのものである。

この原理から、文脈情報を用いて曖昧性を解消する手順が導かれる。手順1として、動詞の選択制限を確認する。代名詞が主語や目的語である場合、その動詞が意味的にどのような名詞句と結びつきやすいかを考慮する。手順2として、世界知識と因果関係を適用する。「AがBに衝突した。それは損傷した」という文では、「衝突した側が損傷する」という世界知識から代名詞の指示対象を推測する。手順3として、談話の主題の連続性を確認する。前の文から一貫して語られている主題を代名詞が指している可能性は高い。手順4として、これらの手がかりを総合し、最も論理的で整合性の取れた解釈を導き出す。

例1: The doctor informed the patient that his condition had worsened, so he prescribed a stronger medication.

→ 曖昧な代名詞は “he” である。候補は “The doctor”, “the patient” である。文脈として、「より強い薬を処方する」という行為の主体は、通常「医者」である。解消として、“he” は “The doctor” を指す。

例2: While the committee praised the report for its thoroughness, they criticized it for its lack of concrete proposals.

→ 曖昧な代名詞は “they”, “it” である。候補として、theyは “the committee”、itは “the report” である。文脈として、“praise” と “criticize” の主体は、通常、評価者である “the committee” である。評価される対象は “the report” である。解消として、“they” は “the committee” を、“it” は “the report” を指す。

例3: The company’s profits declined last quarter. This led to a fall in its stock price. It is now facing pressure from investors.

→ 曖昧な代名詞は “It” である。候補は “The company’s profits”, “a fall in its stock price”, “The company” である。文脈として、第1文、第2文と続き、第3文で「投資家からの圧力に直面している」のは、文脈全体の主題である「会社」そのものである。解消として、“It” は “The company” を指す。

例4: The car passed the truck and then it turned left.

→ 曖昧な代名詞は “it” である。候補は “The car”, “the truck” である。文脈として、文の主語である “The car” が主題であり、後続の動作もその主題について述べられていると考えるのが自然である。解消として、“it” は “The car” を指す。

以上により、語彙的知識、世界知識、談話構造といった文脈情報を活用して、照応の曖昧性を解消し、最も妥当な先行詞を特定することが可能になる。

3.3. 曖昧性を回避する書き手の表現戦略

明確性が最優先される学術論文や法律文書など、フォーマルな文章において、書き手は照応の曖昧性を避けるために意図的な表現戦略を用いる。これらの戦略を知ることで、なぜ一見冗長に見える表現が使われるのかを理解し、読解の正確性を高めることができる。主な戦略は、代名詞の使用を避け、名詞句を繰り返すこと、代名詞の代わりに「指示形容詞+名詞」の形式を使用すること、同じ実体を異なる名詞句で言い換えること、である。これらの表現が単なる冗長ではなく、書き手による「明確化への配慮」のしるしであると認識することが重要である。

この原理から、曖昧性回避戦略を認識する手順が導かれる。手順1として、名詞句の繰り返しに注目する。同じ名詞句が短い間隔で複数回使用されている場合、代名詞では曖昧さが生じる可能性があると書き手が判断したと推測する。手順2として、指示形容詞+名詞の形式に注目する。代名詞単独よりも、修飾される名詞が加わることで指示対象がより明確になる。手順3として、同じ対象を指す異なる名詞句に注目する。“The policy” から “The measure” を経て “The initiative” のように、同じ実体を異なる語で指すことで、単調な繰り返しを避けつつ明確性を保つ。

例1: The court found that the plaintiff’s claim was valid, but the court also found that the plaintiff had failed to prove damages. Therefore, the court awarded no monetary relief.

→ 冗長に見える表現として、“the court” と “the plaintiff” が何度も繰り返されている。書き手の意図として、複数の当事者が関わる法的文脈において、“he” や “it” を使うことによる曖昧性を完全に排除し、各文の主体と対象を明確にするためである。

例2: The government proposed a new tax plan. This plan aims to simplify the tax code but has drawn criticism for its potential impact on low-income families.

→ 明確化の戦略として、2文目の冒頭で “It” を使うと、先行詞が “The government” なのか “a new tax plan” なのかが一瞬曖昧になる可能性がある。そこで “This plan” とすることで、指示対象が「計画」であることを明確にしている。

例3: The President signed the bill into law yesterday. The new legislation is designed to expand access to healthcare. This landmark measure will affect millions of citizens.

→ 言い換えの連鎖として、“the bill” から “The new legislation” を経て “This landmark measure” へと変化している。書き手の意図として、同じ対象を指しつつ、“legislation”、“measure” と異なる側面から表現することで、単調さを避けながら談話の結束性を保っている。

例4: The research team published their findings in a leading journal. These findings challenge a long-held theory. The researchers argue that this theory is no longer tenable in light of the new data.

→ 戦略の組み合わせとして、“their” は人称代名詞である。“These findings” は指示形容詞+名詞で、“findings” を明確に指示している。“The researchers” は名詞句の繰り返しで、“They” の曖昧さを回避している。“this theory” は指示形容詞+名詞で、議論の対象を明確化している。

以上により、書き手が用いる曖昧性回避の表現戦略を認識し、一見冗長に見える表現の背後にある論理的な意図を理解することが可能になる。

4. 指示語の心理的・談話的距離

指示代名詞の選択は、単なる物理的な空間や時間を超えて、話者の心理的な距離や、談話における情報の配置を反映する。thisを「近いもの」、thatを「遠いもの」と機械的に覚えるのでは不十分であり、なぜある文脈では肯定的な意見にthisが使われ、批判的な意見にthatが使われるのかを説明できなければならない。

指示語の選択が反映する多層的な「距離」の概念を体系的に学ぶ。まず、基本となる空間的・時間的距離の用法を確認し、次に、話者の態度や評価を暗示する「心理的距離」の用法を分析する。最後に、談話の中で情報がどのように配置されているかを示す「談話的距離」の用法を習得する。

これらの原理を理解することで、指示語の微妙な使い分けから、書き手の隠れた意図や文章の論理構造をより深く読み解く能力を身につけることができる。

4.1. 心理的距離と態度の表出

指示語 this と that の選択は、話者の心理的な距離を示す強力な手段である。書き手は、自分が肯定的、あるいは関与している対象を提示する際には this を、批判的、あるいは距離を置きたい対象を提示する際には that を選択する傾向がある。この使い分けは、読者を無意識のうちに書き手の視点に誘導し、特定の対象に対する感情的な反応を形作る修辞的な戦略となる。この微妙なニュアンスを見過ごし、客観的に見える文章に隠された書き手のスタンスを見抜けないことは避けなければならない。指示語の選択から書き手の隠れた評価やスタンスを読み解くことができるようになることが重要である。

この原理から、this/that の選択がもたらす心理的誘導効果を分析する手順が導かれる。手順1として、対比されている二つの概念や意見に、それぞれどの指示語が使われているかを確認する。手順2として、書き手がどちらの概念を支持しているかを、文脈中の他の評価的な語彙から判断する。手順3として、書き手が支持する側に this が、批判する側に that が使われている傾向を特定する。これにより、指示語の選択が単なる指示ではなく、評価的な行為であることがわかる。手順4として、この心理的な位置づけが、読者にどのような印象を与えるかを考察する。

例1: Proponents of the theory point to its explanatory power. That argument, however, fails to account for several key anomalies. This counter-argument, which I will now detail, provides a more comprehensive explanation.

→ That argument は、書き手がこれから反論しようとする、距離を置きたい先行研究の議論を指している。This counter-argument は、書き手自身が提示し、支持する議論を指している。This を使うことで、読者を自分の議論の側に引き込んでいる。

例2: He spent his entire presentation criticizing our proposal. I was not impressed by that kind of negativity. What we need is not that, but this: a constructive dialogue about how to move forward.

→ that kind of negativity, that は、書き手が否定的に捉え、拒絶している相手の態度や行為を指している。that によって、それらを「自分たちとは無関係な、あちら側のもの」として突き放している。this は、書き手がこれから提案する、肯定的で望ましいものを指している。this を使うことで、その提案に切迫感と重要性を与えている。

例3: Some people believe wealth is the ultimate measure of success. I could never accept that philosophy. This idea that our human worth is tied to material possessions is precisely what is wrong with modern society.

→ that philosophy は、話し手が明確に拒絶する考え方を指している。that を使うことで、その哲学との間に明確な心理的距離を置いている。This idea は、話し手が今まさに問題として取り上げ、批判しようとしている中心的な考えを指している。this を使うことで、その考えを「我々の目の前にある、この問題」として提示している。

以上により、this と that の戦略的な選択が、読者の心理に働きかけ、書き手の意図する方向へと議論を導くための強力な修辞的ツールであることを理解できる。

4.2. 談話的距離と情報配置

指示語の選択は、談話の中で情報がどのように配置されているかを示す機能も持つ。this は談話の現在の焦点、これから展開する話題、または直前に言及された情報を指す傾向がある。that は談話の以前の焦点、すでに完結した話題、または少し離れた位置にある情報を指す傾向がある。この談話的な距離感を理解することは、長文の論理構造を把握する上で極めて重要である。

この原理から、談話的距離に基づいて指示語の機能を分析する手順が導かれる。手順1として、指示語が直前の文を受けているか、それとも少し離れた文脈を参照しているかを確認する。直前を受けていれば this、離れた文脈を参照していれば that が使われる傾向がある。手順2として、指示語がこれから展開する議論を導入しているか、すでに完結した議論を参照しているかを確認する。導入なら this、参照なら that が使われる傾向がある。手順3として、この談話的な位置づけから、文章全体の論理展開を把握する。

例1: The company announced a major restructuring plan. This will involve significant layoffs. That is not a decision that was taken lightly.

→ This は直前の文を受け、これから詳細が展開される現在の焦点を示している。That は前の文の内容をやや客観的に参照し、それについての評価を述べている。

例2: In Chapter 1, we discussed the theoretical framework. In Chapter 2, we applied that framework to a case study. This chapter will synthesize the findings from those earlier chapters.

→ that framework は以前の章で導入され、すでに議論された枠組みを参照している。This chapter は現在の焦点、すなわちこれから読者が読む章を示している。those earlier chapters は以前の章を複数まとめて参照している。

例3: The initial hypothesis was that the drug would have no side effects. This assumption proved to be incorrect. That error in judgment led to significant delays in the trial.

→ This assumption は直前の文で述べられた仮説を現在の議論の焦点として取り上げている。That error は、すでに述べられた「仮説が間違っていたこと」を一歩引いた視点から参照し、その結果を述べている。

以上により、this と that の選択が談話の中での情報の位置づけをどのように示すかを理解し、長文の論理構造を把握する手がかりとすることが可能になる。

体系的接続

  • [M18-談話] └ 文間の結束性の形成において、指示語の選択が距離感と情報の流れをどのように制御するかを深く学ぶ。
  • [M19-談話] └ パラグラフの構造と主題文の関係において、指示語がパラグラフ間の接続にどのように寄与するかを理解する。
  • [M20-談話] └ 論理展開の類型において、指示語が対比、因果、列挙などの論理関係をどのように標示するかを学ぶ。
  • [M03-統語] └ 冠詞と指示語の機能的差異、特に定性と指示の関係を理解する。

モジュール16:代名詞・指示語と照応

本モジュールの目的と構成

英文読解において、代名詞と指示語が何を指しているのかを正確に特定できなければ、文章の意味を完全に理解することは不可能である。代名詞は文中で繰り返しを避け、文章を簡潔にする機能を持つが、その先行詞が明確でなければ、読解は混乱する。特に学術的な英文では、複数の名詞句が連続して現れる中で、代名詞が遠く離れた先行詞を指すことがあり、その照応関係を見誤ると、論理展開を完全に誤解する結果となる。大学入試の長文読解では、代名詞の指示対象を問う設問が頻出し、これらの問題は受験生の照応関係把握能力を直接的に測定する。代名詞と指示語の体系的理解は、英文の結束性を認識し、談話全体の構造を把握する上で不可欠である。代名詞は単なる名詞の代用表現ではなく、文の結束性を高め、情報構造を最適化し、談話全体の論理的な骨格を形成する、英文読解において不可欠な言語要素である。

本モジュールは以下の4つの層で構成される:

  • 統語:代名詞の形態と統語的機能

代名詞の形態的分類と統語的位置を理解する。人称代名詞の格変化、指示代名詞と指示形容詞の区別、不定代名詞の体系的整理を通じて、代名詞が文中で担う統語的役割を確立する。これにより、代名詞の形式からその機能を即座に識別する基盤を築く。代名詞は名詞の代用表現であるが、名詞とは異なり、主格・目的格・所有格といった格変化を示し、この格変化は代名詞が文中でどの統語的位置を占めるかによって決定される。

  • 意味:照応関係と先行詞の特定

代名詞が何を指すのかを決定する原理を理解する。照応の制約条件、曖昧性の解消方法、指示語の距離と心理的距離の関係を学び、代名詞の意味論的機能を習得する。これにより、複数の候補の中から論理的に正しい先行詞を特定する能力を養う。照応とは代名詞と先行詞の間の指示関係を指す言語学的概念であり、この関係を正しく認識することが英文読解の基盤となる。

  • 語用:代名詞の語用論的機能

代名詞が文脈の中でどのような情報伝達機能を果たすのかを理解する。省略された先行詞の復元、代名詞による談話管理、文体的効果といった語用論的側面を扱う。これにより、筆者の意図や視点を代名詞の選択から読み取る能力を高める。代名詞の使用パターンを分析することで、何がその文章の主題であり続けるのか、そしてその物語や議論が誰の視点から語られているのかを読み解くことができる。

  • 談話:照応と談話構造

複数の文や段落にわたる照応関係を追跡し、代名詞が談話全体の結束性と構造形成にどのように寄与するのかを理解する。照応連鎖の分析と情報の階層化を習得する。これにより、長文全体の情報の流れと論理構造を俯瞰する能力を完成させる。照応は談話の結束性を生み出す主要な手段であり、代名詞の連鎖は談話の骨格を形成する。

このモジュールを修了すると、以下の能力が身につく。代名詞の形態と統語的位置から、その機能を正確に識別できるようになる。複数の候補の中から、統語的制約と意味的整合性に基づいて正しい先行詞を特定できるようになる。指示語の選択が反映する心理的距離や談話構造上の意図を読み取れるようになる。長文の中で複雑に絡み合った照応関係を体系的に追跡し、談話全体の構造を把握できるようになる。代名詞の曖昧性を引き起こす構造的要因を認識し、文脈情報を用いてそれを解消できるようになる。

語用:代名詞の語用論的機能

代名詞は、単に先行詞を指示するだけでなく、情報構造の最適化、談話の管理、文体的効果の創出といった語用論的機能を担う。統語層と意味層で学んだ代名詞の形式と指示関係のルールは、実際にそれがどのような文脈で、どのような意図を持って使用されるのかを理解するための基盤に過ぎない。なぜ書き手はある箇所で代名詞を使い、別の箇所では完全な名詞句を繰り返すのか。なぜ this ではなく that を選ぶのか。これらの選択の背後には、読者の理解を導き、自らの意図を効果的に伝えるための戦略が存在する。この層では、代名詞が文脈の中でどのような情報伝達機能を果たすのか、省略された先行詞をどのように文脈から復元するのか、代名詞による談話管理がどのように行われるのか、そして代名詞の選択がもたらす文体的な効果について体系的に学ぶ。代名詞の語用論的機能を理解することで、英文の表面的な意味だけでなく、その背後にある書き手の意図や視点を読み解く、より深いレベルの読解が可能になる。

1. 情報構造と代名詞の使用

代名詞の使用は、文がどのように情報を組織し、伝達するかという情報構造と密接に関連している。情報構造の最も基本的な区別は、聞き手がすでに知っていると想定される「旧情報」と、新たに導入される「新情報」の区別である。代名詞は旧情報を、完全な名詞句は新情報を担うのが原則である。

この最初の記事での学習を通じて、代名詞と名詞句の使い分けが単なるスタイルの問題ではなく、情報伝達の効率性と明確性を最適化するための論理的な選択であることを理解する。まず、旧情報と新情報の概念を定義し、代名詞が旧情報の標識として機能する原理を学ぶ。次に、文の中での情報の配置に関わる主題と焦点の区別を理解し、代名詞が文の主題を維持する上で果たす役割を分析する。

これらの原理を習得することで、なぜ一見冗長に見える名詞句の繰り返しが必要なのか、あるいは、なぜ代名詞の使用が自然に感じられるのかを、情報構造の観点から論理的に説明できるようになる。

1.1. 旧情報と新情報の区別

情報構造の基本的な区別は、旧情報と新情報である。旧情報とは、先行する談話の中ですでに言及されているか、文脈からその存在が自明である情報を指す。新情報とは、談話の中で初めて導入される情報を指す。代名詞は旧情報を表す最も典型的な言語形式であり、完全な名詞句は新情報を導入するために使用される。一般に代名詞は「同じ単語の繰り返しを避けるため」と理解されがちであるが、この理解は不正確である。学術的・本質的には、この使い分けの根底には、人間の認知プロセスにおける情報の処理方法が反映されている。旧情報から新情報へと情報を展開させることが、理解しやすい自然な談話の流れを形成する。この原理が重要なのは、代名詞の選択が単なる文体上の好みではなく、読者の認知負荷を軽減し、情報の流れを円滑にするという本質的な機能を持つからである。

この原理から、旧情報と新情報を識別し、それに応じた言語形式の選択を理解する手順が導かれる。手順1として、文中の各名詞句が指す対象が、先行する文脈で初めて登場したか、すでに言及済みかを確認する。不定冠詞や存在文で導入される名詞句は、典型的な新情報である。手順2として、旧情報を指す際に、どのような形式が使われているかを確認する。人称代名詞、指示代名詞、定冠詞付き名詞などが、旧情報を指すための主要な手段である。手順3として、情報の流れが「旧情報から新情報へ」というパターンに従っていることを確認する。代名詞が文頭の主語として旧情報を示し、文末の動詞句がそれに関する新情報を提示するという構造は、英語の基本的な情報構造である。

例1として、A new study on climate change was published yesterday. The study, which was conducted by an international team of scientists, concludes that the rate of global warming is accelerating. It has already drawn significant attention from policymakers. という文を分析する。“A new study” は不定冠詞を伴い、新情報として導入されている。“The study” は定冠詞を伴い、直前に導入された「研究」を旧情報として受けている。“It” は人称代名詞であり、The study という旧情報を指し、この文の主題となっている。“significant attention” は新情報であり、この文の焦点となり、その研究がもたらした新たな情報を伝えている。

例2として、The government implemented a controversial tax reform. Supporters argue that it stimulates the economy, while critics contend that it disproportionately harms low-income households. The debate over this reform continues to dominate the political discourse. という文を分析する。“a controversial tax reform” は新情報として導入されている。“it” は人称代名詞であり、旧情報である「税制改革」を指している。“The debate” は定冠詞を伴う名詞句であり、文脈上存在が推測される「論争」を旧情報として導入している。“this reform” は指示形容詞と名詞の組み合わせであり、旧情報である「改革」を指し、議論の対象を明確化している。

例3として、The CEO’s sudden resignation surprised the board. They had not been aware of his intention to step down. The announcement, which came without warning, sent the company’s stock price tumbling. という文を分析する。“The CEO’s sudden resignation” は文脈全体の主題となる新情報として導入されている。“They” は人称代名詞であり、the board の構成員を複数として受け、旧情報として扱っている。“his” は人称代名詞の所有格であり、旧情報である CEO を指している。“The announcement” は定冠詞付き名詞であり、resignation を言い換えた旧情報である。

以上により、旧情報と新情報の区別を理解し、代名詞やその他の言語形式が情報構造の中で果たす役割を論理的に分析することが可能になる。

1.2. 主題と焦点の区別

情報構造のもう一つの重要な区別は、主題と焦点である。主題とは、文が「何について述べているか」を示す部分であり、通常は文頭に配置され、旧情報であることが多い。焦点とは、その文が聞き手に伝えようとする最も重要で新しい情報の中核であり、通常は文末に配置される。代名詞は、その旧情報性から主題の位置に現れることが非常に多く、一方、新情報を担う完全な名詞句は焦点の位置に現れることが多い。一般に、この区別を理解していないために、なぜ英語では It is raining. のように、意味内容のない it をわざわざ主語に立てるのかといった現象を説明できないことがある。この理解は不十分である。これは、天候のような主題が存在しない場合に、構造上の主語の位置を埋めるためであると捉えるべきである。この原理が重要なのは、代名詞が文の主題を維持し、新情報の導入を円滑にするという重要な役割を果たしていることを理解できるからである。

この原理から、文の主題と焦点を識別し、代名詞の機能を理解する手順が導かれる。手順1として、文の構造を分析し、文頭に置かれている要素、特に主語を主題の候補として特定する。この要素は通常、旧情報である。手順2として、文末に置かれている要素、特に動詞句の最後の部分を焦点の候補として特定する。この要素は、その文が伝える新情報の中核である。手順3として、代名詞が主題の位置で旧情報を維持し、焦点の位置で新しい情報が導入されるという、旧情報から新情報への流れを確認する。この流れが、理解しやすい自然な文の基本構造である。

例1として、The company launched a new advertising campaign. It specifically targets young consumers. という文を分析する。主題は “It” であり、旧情報である The company’s new advertising campaign を指している。焦点は “specifically targets young consumers” であり、そのキャンペーンに関する新情報を伝えている。情報の流れは、「そのキャンペーンは(主題)、特に若い消費者をターゲットにしている(焦点)」という自然な流れになっている。

例2として、The Supreme Court’s ruling on the case was highly controversial. While its supporters hailed it as a victory for free speech, its detractors condemned it as a threat to public safety. という文を分析する。主題として、複数の “it” は全て、旧情報である The Supreme Court’s ruling を指している。焦点は “a victory for free speech” と “a threat to public safety” であり、それぞれの節における新情報の中核であり、対比されている。情報の流れは、「その判決は(主題)、言論の自由の勝利である(焦点)」「その判決は(主題)、公共の安全への脅威である(焦点)」という対比構造が明確になっている。

例3として、What the investigation revealed was a pattern of systemic corruption. という文を分析する。主題は “What the investigation revealed” であり、調査が明らかにしたことを主題として明示的に提示している。これは疑似分裂文と呼ばれる構造である。焦点は “a pattern of systemic corruption” であり、組織的な腐敗のパターンが、その文が伝える最も重要な新情報である。

例4として、On the table was a letter. It had been left there by a mysterious stranger. という文を分析する。倒置構造として、“On the table” という場所を表す句が文頭に来て、主語 “a letter” が動詞の後に置かれている。情報の流れとして、この倒置は、焦点である新情報 “a letter” を文末に近い位置に置くための情報構造上の操作である。主題として、2文目の “It” は、導入された新情報 “a letter” を旧情報として受け、新たな主題として文を始めている。

以上により、主題と焦点の区別を理解し、代名詞が文の情報構造の中で、主題を維持し、新情報の導入を円滑にするという重要な役割を果たしていることを分析できるようになる。

2. 省略された先行詞の復元

代名詞の中には、先行詞が文中に明示的に存在せず、文脈や状況から推測する必要があるものがある。特に、一人称・二人称代名詞、一般的な人を指す不定代名詞、そして共有知識に基づく指示などがこれにあたる。多くの場合、先行詞が「書かれていない」ことに読者は混乱しがちだが、書き手は読み手との共有知識を前提として、意図的に先行詞を省略している。

この記事での学習を通じて、先行詞が明示されていない代名詞の指示対象を、文脈から論理的に復元する能力を習得する。まず、I, you, we といった代名詞が、書き手と読み手という「発話状況」そのものを参照していることを理解する。次に、one, you, they といった代名詞が、特定の個人ではなく「一般的な人々」を指す総称用法を学ぶ。最後に、専門的な文章などで、その分野の共有知識を前提として使われる代名詞の解釈方法を習得する。

2.1. 状況指示と発話参与者

一人称代名詞と二人称代名詞は、その指示対象が文中に明示的に存在せず、発話の状況そのものから特定されるという点で、特殊な代名詞である。これは直示と呼ばれる言語現象であり、I は話者自身、we は話者を含む集団、you は聞き手を指す。一般に、これらの代名詞が登場した際に、文の中から先行詞を探そうとして時間を無駄にすることがあるが、この理解は不適切である。重要なのは、これらの代名詞が、文章とその読み手が置かれている「コミュニケーションの状況」を直接参照していると認識することである。この原理が重要なのは、先行詞探しの迷路から抜け出し、発話状況という文脈を適切に活用した柔軟な読解アプローチを身につけることができるからである。

この原理から、一人称・二人称代名詞の指示対象を特定する手順が導かれる。手順1として、I または we が登場した場合、それは文章の書き手自身、または書き手を含む集団を指していると判断する。学術論文では、I argue that… は著者の主張を、We conclude that… は研究チームの結論を示す。手順2として、you が登場した場合、それは文章の読み手、すなわち「あなた」に直接語りかけていると判断する。特に、指示文、広告、教科書などで多用され、読者の関与を促す効果を持つ。手順3として、文脈によっては、you や we が特定の読み手や集団ではなく、「一般的な人々」を指す総称的な用法で使われることがあることを理解する。

例1として、In this paper, I will demonstrate that previous theories on this topic are incomplete. My analysis suggests a new framework. という文を分析する。“I” と “My” は、この論文の著者自身を指している。著者が自らの主張と分析の主体であることを明示している。

例2として、As we have seen in the previous chapter, the principles of supply and demand are fundamental to understanding market economies. We will now turn to the concept of market failure. という文を分析する。“we” は書き手と読み手を指している。教科書などで、学習のプロセスを共有する共同体を作り出す効果がある。

例3として、If you wish to apply for the scholarship, you must submit all required documents by the deadline. Your application will be reviewed by the committee. という文を分析する。“you” と “Your” は、奨学金に応募しようとしている読み手を指している。指示や告知を明確に伝えるために使われている。

例4として、We hold these truths to be self-evident, that all men are created equal. という文を分析する。“We” は宣言の主体である集合的な意志を代表している。特定の個人ではなく、国民全体を代表する我々を指している。

以上により、一人称・二人称代名詞が発話の状況そのものを参照する直示的な機能を持つことを理解し、文中に先行詞を探すのではなく、書き手と読み手の関係性からその指示対象を正しく解釈することが可能になる。

2.2. 共有知識に基づく指示の復元

専門的な文章や特定の文脈に強く依存した文章では、代名詞や定冠詞付き名詞句が、文中で明示的に導入されていないにもかかわらず、特定の対象を指すことがある。これは、書き手が読み手との間に特定の「共有知識」が存在することを前提としているためである。一般に、文章に書かれていることだけが全てだと考え、背景知識の活用を怠る傾向があるが、この姿勢は不十分である。高度な文章は、その分野における常識や、社会における共通認識を基盤として書かれているのである。この原理が重要なのは、文章を孤立したテクストとしてではなく、特定の知識コミュニティにおけるコミュニケーション行為として捉える視点を養うからである。

この原理から、共有知識に基づく指示対象を復元する手順が導かれる。手順1として、専門分野の文章で、定冠詞付き名詞句や代名詞 it が先行詞なく使われている場合、その分野で自明とされる中心的な機関や概念を指している可能性を疑う。手順2として、文章の主題や背景から、どのような共有知識が前提とされているかを推測する。例えば、アメリカの法律に関する文章であれば、The Court は合衆国最高裁判所を、The Constitution は合衆国憲法を指す。手順3として、ニュース記事などでは、社会的に広く知られている出来事や人物が、明示的な導入なしに参照されることを理解する。手順4として、文脈から推測した共有知識を当てはめて、文全体の意味が整合的になるかを確認する。

例1として、The Court granted certiorari to decide whether the new statute violates the First Amendment. It will hear oral arguments next term. という文を分析する。“The Court” は、法律の文脈、特に合衆国に関するものでは、通常「合衆国最高裁判所」を指す共有知識である。“It” は人称代名詞であり、The Court を指している。

例2として、The Fed is expected to raise interest rates again next month. This is intended to combat inflation, which remains stubbornly high. という文を分析する。“The Fed” は、経済ニュースの文脈で、「連邦準備制度」を指す共有知識である。“This” は指示代名詞であり、「金利を再び引き上げる」という予想されている行為全体を指している。

例3として、The theory of relativity revolutionized our understanding of space and time. It demonstrated that they are not absolute but are relative to the observer. という文を分析する。“The theory of relativity” は、物理学の分野における共有知識である。“It” は人称代名詞であり、The theory of relativity を指している。“they” は人称代名詞であり、space and time を指している。

例4として、In a democracy, the government must be accountable to the people. It derives its just powers from the consent of the governed. という文を分析する。“the government”、“the people”、“the governed” は、特定の政府や国民を指すのではなく、民主主義という概念における抽象的・一般的な構成要素を指している。これらは、政治思想の文脈における共有知識と言える。

以上により、専門的な文章や特定の文脈において、書き手が前提としている共有知識を推測し、それに基づいて省略された、あるいは自明とされる先行詞を正しく復元する能力を養うことができる。

3. 代名詞による談話管理と視点

代名詞は、単に文と文を繋ぐだけでなく、談話全体の流れを管理し、書き手の視点を読者に伝えるという、より高度な語用論的機能を担っている。代名詞の使用パターンを分析することで、何がその文章の主題であり続けるのか、そしてその物語や議論が誰の視点から語られているのかを読み解くことができる。

この記事での学習を通じて、代名詞が談話の構造をどのように形成し、管理するのかを学ぶ。まず、代名詞の連続使用が主題の継続を示し、新たな名詞句の導入が主題の転換を示すメカニズムを理解する。次に、一人称、二人称、三人称といった代名詞の選択が、書き手の視点をどのように決定づけるのかを分析する。

3.1. 主題の連続性と代名詞の使用

談話の中で、ある特定の対象が主題として継続している場合、その対象は代名詞によって一貫して指示される。逆に、主題が別の対象に移行する際には、新たな完全な名詞句が導入される。この、主題の連続性と変化を標示する機能は、代名詞が持つ重要な談話管理機能の一つである。一般に、各文を独立したものとして読み、代名詞の使用パターンが示す談話構造を見落とすことがあるが、この読み方は不適切である。代名詞の軌跡を追跡することで、段落、ひいては文章全体の主題がどのように展開していくかを把握することができるのである。この原理が重要なのは、代名詞が単なる繰り返し回避の道具ではなく、読解の道しるべとして、主題の継続と転換を知らせる信号の役割を果たしていることを理解できるからである。

この原理から、主題の連続性と転換を代名詞の使用パターンから認識する手順が導かれる。手順1として、代名詞、特に主語の位置にある代名詞が、複数の文にわたって同じ実体を指し続けているかを確認する。これが確認できれば、その実体が現在の談話の主題である。手順2として、代名詞ではなく、新たな完全な名詞句が文の主語として導入された箇所に注目する。これは、主題が転換した、あるいは新たな副主題が導入された可能性が高いことを示している。手順3として、主題が転換した後、今度はその新たな主題が代名詞で受けられ、連続していくパターンを確認する。これにより、談話が階層的な主題構造を持っていることを理解できる。

例1として、The plaintiff filed a lawsuit alleging breach of contract. He claimed that the defendant’s failure to deliver goods on time had caused significant financial losses. He sought both compensatory and punitive damages. The defendant, however, filed a motion to dismiss. She argued that the delay was caused by unforeseen circumstances beyond her control. という文を分析する。主題の連続として、The plaintiff から He へと、原告が主題として継続している。主題の転換として、The defendant という新たな名詞句の導入により、主題が被告に転換している。新たな主題の連続として、She から her へと、被告が新たな主題として継続している。

例2として、The European Central Bank faces a difficult dilemma. If it raises interest rates to combat inflation, it risks triggering a recession. If it keeps rates low to support growth, it may allow inflation to become entrenched. The decision it makes will have profound consequences for the entire Eurozone. という文を分析する。主題の連続として、The European Central Bank から it へと、ECBが談話の一貫した主題であり、代名詞 it で継続的に指示されている。

例3として、Artificial intelligence is rapidly evolving. It is transforming industries from manufacturing to healthcare. This technology, however, also presents significant risks. One major concern is its potential impact on employment. Another is the possibility of algorithmic bias. という文を分析する。主題の連続として、Artificial intelligence から It へと、AIが主題として継続している。主題の焦点化・転換として、This technology でAIを再提示し、そのリスクへと主題の側面を転換している。副主題の導入として、One major concern と Another により、「リスク」という新たな主題の下位項目が導入されている。

以上により、代名詞の使用パターンが主題の連続性と転換をどのように標示しているかを理解し、それを手がかりに談話の論理構造を把握することが可能になる。

3.2. 視点の一貫性と代名詞の選択

代名詞の選択は、その談話が誰の視点から語られているかを決定づける上で、決定的な役割を果たす。視点とは、物語や議論がどの登場人物の、あるいはどのような立場から語られているかを示すものである。一人称視点は語り手の主観的な経験や意見を、三人称視点は客観的な観察や報告を示す。一般に、代名詞を単なる指示語としてしか見ず、どの人称代名詞が選択されるかによって、文章全体のトーン、客観性、そして読者との関係性が大きく変わることを見落とすことがあるが、この見方は表面的である。この原理が重要なのは、代名詞の選択から書き手の立ち位置を読み取り、文章の意図をより深く理解できるようになるからである。

この原理から、代名詞の選択が示す視点を分析する手順が導かれる。手順1として、一人称代名詞の使用を確認する。I や we が使われている場合、書き手は自らの経験や意見を直接述べる「当事者」または「主観的な語り手」としての視点を採用している。手順2として、三人称代名詞のみが使われている場合、書き手は自身を文章から切り離し、「客観的な観察者」または「全知的な語り手」としての視点を採用している。これは学術論文や報道記事で標準的である。手順3として、三人称視点の中でも、特定の登場人物の内面が記述されているかに注目する。特定の人物の内面が描かれていれば、それはその人物の視点に寄り添った「限定三人称視点」である。手順4として、二人称代名詞が使われている場合、書き手が読者に直接語りかけ、読者を議論や物語に引き込もうとする視点を採用していると判断する。

例1として、In my view, the court’s decision was incorrect. I believe the judges misinterpreted the precedent, and I will outline the reasons for my conclusion in the following sections. という文を分析する。視点として、I と my の多用から、著者の主観的な意見であることが明確な一人称視点である。著者は自らの主張に責任を持つ立場を鮮明にしている。

例2として、The court’s decision was met with criticism. Legal scholars argued that the judges had misinterpreted the precedent. The ruling is expected to be appealed. という文を分析する。視点として、I, we, you が存在せず、すべての事象が客観的に報告されている三人称視点である。書き手の個人的な意見は抑制されている。

例3として、John stared at the letter. He couldn’t believe what he was reading. A wave of panic washed over him. He felt as though his world was collapsing. という文を分析する。視点として、三人称で書かれているが、Johnの思考、感情、感覚が描写されている。読者はJohnの視点を通して物語を体験する限定三人称視点である。

例4として、Imagine you are a juror in a complex trial. You must weigh conflicting evidence and decide the fate of a person’s life. How do you ensure your decision is just? という文を分析する。視点として、you と your を使うことで、読者を陪審員の立場に置き、当事者として問題について考えさせようとしている。読者の関与を促す二人称視点である。

以上により、人称代名詞の選択が、その文章が採用する視点をどのように決定づけているかを理解し、書き手の立ち位置や語りの戦略を読み解くことが可能になる。

4. 文体的効果と代名詞の選択

代名詞の選択と使用頻度は、文章の文体に大きな影響を与える。フォーマルな文体では、曖昧さを避けるために代名詞の使用が抑制され、名詞句の繰り返しが許容される傾向がある。対照的に、インフォーマルな文体では、簡潔さやリズムを重視して代名詞が頻繁に使用される。

この記事での学習を通じて、代名詞の選択が文体に与える影響を理解し、文脈に応じた適切な文体を識別、または生成する能力を養う。まず、フォーマルな文体において、なぜ一見冗長な名詞句の繰り返しが「良いスタイル」とされるのか、その論理的な理由を学ぶ。次に、インフォーマルな文体における代名詞の多用が、どのように親しみやすさや自然な流れを生み出すのかを分析する。

4.1. フォーマルな文体と名詞句の繰り返し

フォーマルな文体、特に曖昧さが致命的な結果を招きかねない法律文書や、厳密な論理性が要求される学術論文では、明確性を最優先するために、代名詞の使用を意図的に避け、完全な名詞句が繰り返される傾向がある。一般に、このような文章を「くどい」「下手な英語」と感じることがあるが、この評価は不正確である。これは書き手の能力不足ではなく、誤解の余地を徹底的に排除するための高度な文体戦略である。この原理が重要なのは、フォーマルな文体における「繰り返し」が、冗長性ではなく、論理的厳密性への配慮の表れであることを理解できるからである。

この原理から、フォーマルな文体における名詞句の繰り返しという戦略を認識する手順が導かれる。手順1として、短い範囲内で、同じ、あるいは非常によく似た完全な名詞句が複数回使用されている箇所に注目する。手順2として、その名詞句を代名詞に置き換えた場合、指示対象に曖昧さが生じる可能性がないかを検討する。複数の候補が存在したり、指示対象が複雑であったりする場合、書き手は意図的に代名詞を避けている。手順3として、特に、法律や契約の条文、あるいは複数の概念を厳密に対比する学術的な議論において、この戦略が多用されることを理解する。

例1として、The Landlord shall not be responsible for any damage to the Tenant’s property, unless such damage is caused by the Landlord’s gross negligence. The Tenant agrees to indemnify the Landlord against any claims arising from the Tenant’s use of the premises. という文を分析する。名詞句の繰り返しとして、The Landlord と The Tenant が代名詞に置き換えられることなく、一貫して繰り返されている。意図として、二者の権利と義務を明確に区別し、代名詞の使用によって「彼」が貸主か借主かという曖昧さが生じることを完全に防いでいる。

例2として、The theory of relativity predicts the curvature of spacetime, whereas quantum mechanics describes the behavior of particles at a subatomic level. The theory of relativity has been confirmed by numerous experiments, but quantum mechanics still presents profound interpretational challenges. という文を分析する。名詞句の繰り返しとして、The theory of relativity と quantum mechanics が繰り返されている。意図として、二つの異なる理論を明確に対比するために、It を使うとどちらの理論を指しているのかが文脈に依存し、曖昧になるリスクがある。

例3として、The Software is provided as is without warranty of any kind. The Licensor does not warrant that the Software will meet the Licensee’s requirements or that the operation of the Software will be uninterrupted or error-free. という文を分析する。名詞句の繰り返しとして、The Software, The Licensor, The Licensee が繰り返されている。意図として、ライセンスを提供する者、受ける者、そして製品という三者の関係と責任範囲を、一義的かつ法的に拘束力のある形で定義している。

以上により、フォーマルな文体における名詞句の繰り返しが、冗長性ではなく、明確性と厳密性を確保するための意図的な文体戦略であることを理解し、その背後にある論理的な理由を分析することが可能になる。

4.2. インフォーマルな文体と代名詞の多用

インフォーマルな文体、特に日常会話や個人的な電子メール、ブログ記事などでは、フォーマルな文体とは対照的に、代名詞が頻繁に使用される。このような文体では、名詞句の繰り返しは不自然で「堅苦しい」と見なされ、むしろ避けられる傾向にある。代名詞を多用することで、文章の流れが軽快になり、親しみやすい、自然な雰囲気が生まれる。一般に、フォーマルな文章の読解に慣れていると、インフォーマルな文章の代名詞の多さに戸惑うことがあるが、これは文体の違いを認識していないためである。この原理が重要なのは、文体の違いが、代名詞の使用頻度という文法的な特徴に明確に表れることを理解し、文脈に応じた適切なスタイルを識別する能力を養うからである。

この原理から、インフォーマルな文体における代名詞の頻繁な使用とその効果を分析する手順が導かれる。手順1として、代名詞の使用頻度が高い文章に注目する。特に、短い文が連続し、その多くが代名詞で始まっている場合、インフォーマルな文体である可能性が高い。手順2として、名詞句の繰り返しが避けられていることを確認する。同じ対象を指すのに、名詞句を再使用するのではなく、一貫して代名詞が使われている。手順3として、縮約形や口語的な表現が併用されているかを確認する。これらはインフォーマルな文体の典型的な特徴であり、代名詞の多用としばしば連動する。手順4として、これらの特徴が、書き手と読み手の間の距離を縮め、より直接的で個人的なコミュニケーションを創出している効果を認識する。

例1として、I saw that new movie yesterday. It was amazing! You should totally go see it. The actors were great, and they really brought the story to life. という文を分析する。代名詞の多用として、I, It, You, it, they が短い文章の中で頻繁に使われている。名詞句の繰り返しの回避として、that new movie は It と it で、The actors は they で受けられている。効果として、会話のような自然なリズムが生まれ、個人的な興奮や推薦の気持ちが直接的に伝わる。

例2として、I’ve been trying out this new productivity app for a week, and I have to say, it’s a game-changer. It helps me organize my tasks, and it syncs across all my devices. They’ve really thought about the user experience. という文を分析する。代名詞の多用として、I’ve, I, it’s, It, me, my, it, They’ve が使われている。縮約形の使用として、I’ve, it’s, They’ve が使われている。They の用法として、先行詞は明示されていないが、文脈から「そのアプリの開発者たち」を指している。インフォーマルな文脈ではこのような省略が許容される。効果として、読者に直接語りかけるような、個人的なレビューのスタイルを確立している。

例3として、So, John got the promotion. Yeah, I heard. He totally deserves it. He’s been working so hard. I’m really happy for him. という文を分析する。代名詞の多用として、I, He, it, He’s, I’m, him が使われている。名詞句の不在として、一度 John が登場した後は、すべて代名詞で指示されている。効果として、実際の会話のテンポと簡潔さを忠実に再現している。

以上により、インフォーマルな文体における代名詞の多用が、単なる省略ではなく、効率性、自然さ、親しみやすさを生み出すための積極的な文体戦略であることを理解し、その機能を分析することが可能になる。

5. 書き手の意図と代名詞の戦略的選択

代名詞の選択は、文法的な正しさや文体的な適切さを超えて、書き手の意図を伝え、読み手の解釈を導くための戦略的なツールとして機能することがある。例えば、あえて曖昧な代名詞を使うことで読者の好奇心を煽ったり、特定の指示語を選択することで対象への態度を暗示したりすることができる。

この記事での学習を通じて、代名詞の選択が書き手の修辞的な意図をどのように反映するのかを学ぶ。まず、this と that の選択が、対象への心理的な「接近」や「分離」をどのように示すのかを分析する。次に、所有代名詞の強調的な用法が、対比や所有権の主張をどのように際立たせるのかを理解する。

5.1. this/that の選択による心理的誘導

指示語 this と that の選択は、物理的な距離だけでなく、話者の心理的な距離を示す強力な手段である。書き手は、自分が肯定的、あるいは関与している対象を提示する際には this を、批判的、あるいは距離を置きたい対象を提示する際には that を選択する傾向がある。この使い分けは、読者を無意識のうちに書き手の視点に誘導し、特定の対象に対する感情的な反応を形作る修辞的な戦略となる。一般に、この微妙なニュアンスを見過ごし、客観的に見える文章に隠された書き手のスタンスを見抜けないことがあるが、この読み方は浅い理解にとどまる。この原理が重要なのは、指示語の選択から書き手の隠れた評価やスタンスを読み解くことができるようになるからである。

この原理から、this/that の選択がもたらす心理的誘導効果を分析する手順が導かれる。手順1として、対比されている二つの概念や意見に、それぞれどの指示語が使われているかを確認する。手順2として、書き手がどちらの概念を支持しているかを、文脈中の他の評価的な語彙から判断する。手順3として、書き手が支持する側に this が、批判する側に that が使われている傾向を特定する。これにより、指示語の選択が単なる指示ではなく、評価的な行為であることがわかる。手順4として、この心理的な位置づけが、読者にどのような印象を与えるかを考察する。

例1として、Proponents of the theory point to its explanatory power. That argument, however, fails to account for several key anomalies. This counter-argument, which I will now detail, provides a more comprehensive explanation. という文を分析する。“That argument” は、書き手がこれから反論しようとする、距離を置きたい先行研究の議論を指している。“This counter-argument” は、書き手自身が提示し、支持する議論を指している。This を使うことで、読者を自分の議論の側に引き込んでいる。

例2として、He spent his entire presentation criticizing our proposal. I was not impressed by that kind of negativity. What we need is not that, but this: a constructive dialogue about how to move forward. という文を分析する。“that kind of negativity” と “that” は、書き手が否定的に捉え、拒絶している相手の態度や行為を指している。that によって、それらを「自分たちとは無関係な、あちら側のもの」として突き放している。“this” は、書き手がこれから提案する、肯定的で望ましいものを指している。this を使うことで、その提案に切迫感と重要性を与えている。

例3として、Some people believe wealth is the ultimate measure of success. I could never accept that philosophy. This idea that our human worth is tied to material possessions is precisely what is wrong with modern society. という文を分析する。“that philosophy” は、話し手が明確に拒絶する考え方を指している。that を使うことで、その哲学との間に明確な心理的距離を置いている。“This idea” は、話し手が今まさに問題として取り上げ、批判しようとしている中心的な考えを指している。this を使うことで、その考えを「我々の目の前にある、この問題」として提示している。

以上により、this と that の戦略的な選択が、読者の心理に働きかけ、書き手の意図する方向へと議論を導くための強力な修辞的ツールであることを理解できる。

5.2. 所有代名詞の強調用法と対比

所有代名詞は、単に「~のもの」という意味を表すだけでなく、文中での配置や文脈によって、所有権を強調したり、二つの対象を明確に対比したりする修辞的な効果を持つことがある。特に、文頭や文末に置かれたり、対比構造の中で使われたりする場合、その効果は顕著になる。一般に、所有代名詞を「所有格+名詞」の単純な置き換えとしか認識せず、その戦略的な使用法を見落とすことがあるが、この認識は不十分である。この原理が重要なのは、所有代名詞が対比や所有権を強調するための戦略的なツールとして機能することを理解し、その修辞的な効果を読み解くことができるからである。

この原理から、所有代名詞の強調的な用法を分析する手順が導かれる。手順1として、所有代名詞が、文の中で特に目立つ位置に置かれていないかを確認する。手順2として、二つの異なる所有者の所有物が、所有格と所有代名詞、あるいは二つの所有代名詞を使って明確に対比されていないかを確認する。手順3として、この強調や対比が、文章全体のテーマとどのように関連しているかを考察する。

例1として、Your analysis focuses on the economic costs, while mine emphasizes the social consequences. という文を分析する。対比構造として、Your analysis と mine が while によって明確に対比されている。強調の効果として、mine を使うことで、「私の分析は」と主題を転換し、自分の視点を際立たせている。単に my analysis と繰り返すよりも、対比がシャープになる。

例2として、The company claimed the success as its own, but the real credit belongs to the research team. Theirs was the foundational work that made it all possible. という文を分析する。強調の位置として、Theirs が文頭に置かれている。強調の効果として、「彼らのものこそが…」と、研究チームの貢献を強く主張している。Their work と始めるよりも、所有権そのものが文の焦点となっている。

例3として、He presented his interpretation of the data. I, however, have a different one. His is based on a series of questionable assumptions; mine rests on empirical evidence. という文を分析する。対比構造として、His と mine がセミコロンを挟んで鋭く対比されている。強調の効果として、互いの解釈の土台の違いを際立たせ、自分の解釈の優位性を暗示している。

例4として、This victory is not mine alone. It is ours. という文を分析する。対比と統合として、mine を否定し、ours を提示することで、勝利が個人的なものではなく、チーム全体の成果であることを強調している。所有の範囲を「私」から「私たち」へと拡大する修辞的な効果がある。

以上により、所有代名詞が単なる置き換えではなく、対比や所有権を強調するための戦略的なツールとして機能することを理解し、その修辞的な効果を読み解くことが可能になる。

体系的接続

  • [M18-談話] └ 談話の結束性の形成において、本層で学んだ情報構造や主題の連続性がどのように機能するかを、よりマクロな視点から分析する。
  • [M20-談話] └ 論理展開の類型と、代名詞や指示語の選択が特定の論理展開を読者に示唆する上で果たす役割を理解する。
  • [M17-統語] └ 強調構文が、本層で学んだ主題と焦点の区別をどのように文法的に具現化するのかを、統語的な観点から深く理解する。

談話:照応と談話構造

代名詞と照応関係は、個々の文の理解に留まらず、複数の文や段落が論理的に結びつき、一つのまとまりのある談話を形成する上で不可欠な役割を果たす。統語層では代名詞の形態と機能を、意味層では先行詞特定の原理を、語用層では情報伝達と文体上の機能を学んだ。この談話層では、これらの知識を統合し、長文全体の構造を俯瞰する視点を獲得する。照応は談話の結束性を生み出す主要な手段であり、代名詞の連鎖は談話の骨格を形成する。照応関係を追跡することで、何が主題であり続け、どこで論点が転換し、どのように議論が展開していくのかを把握することができる。この層では、代名詞が談話全体の結束性と構造形成にどのように寄与するのかを理解し、照応連鎖の分析と情報の階層化を習得する。これにより、長文全体の情報の流れと論理構造を俯瞰する能力を完成させる。

1. 談話の結束性と照応

談話の結束性とは、文と文が互いに結びつき、一つのまとまりのあるテクストを形成する性質を指す。照応は、この結束性を生み出す最も基本的かつ重要な手段の一つである。代名詞が先行詞を指すことで、異なる文の間に意味的なつながりが生まれ、読者は情報を連続的に処理することができる。

この最初の記事での学習を通じて、照応が談話の結束性にどのように貢献するのかを体系的に理解する。まず、結束性の概念を定義し、照応がその中で果たす役割を明確にする。次に、代名詞以外の結束装置との関係を把握し、照応がどのように他の手段と連携して談話を形成するのかを学ぶ。

1.1. 結束性の概念と照応の役割

結束性とは、テクスト内の言語要素が互いに関連し合い、テクスト全体を統一されたまとまりとして機能させる性質である。結束性が高いテクストは、読者にとって理解しやすく、論理的な流れを追跡しやすい。照応は、ある言語要素が別の言語要素を指示することで、文と文の間に意味的なつながりを作り出す。一般に、結束性を単なる「文章のまとまり」として漠然と捉え、その具体的なメカニズムを理解していないことが多いが、この理解は不十分である。照応という具体的な言語現象を通じて結束性を分析することで、長文読解の精度が飛躍的に向上する。この原理が重要なのは、結束性の概念を理解することで、なぜある文章は読みやすく、別の文章は読みにくいのかを客観的に分析できるようになるからである。

この原理から、照応が結束性を生み出すメカニズムを理解する手順が導かれる。手順1として、代名詞や指示語を特定し、それらが先行詞を指すことで文と文の間にどのようなつながりを作っているかを確認する。手順2として、照応関係が途切れている箇所、つまり代名詞ではなく完全な名詞句が再導入されている箇所に注目する。これは主題の転換や新たな情報の導入を示すことが多い。手順3として、照応の連鎖を追跡することで、談話全体を通じて何が一貫した主題となっているかを把握する。

例1として、The Industrial Revolution transformed European society. It led to massive urbanization as workers migrated from rural areas to cities in search of employment. This migration created new social classes and altered traditional family structures. という文を分析する。“It” は The Industrial Revolution を指し、第1文と第2文を結びつけている。“This migration” は workers migrated という事象を指し、第2文と第3文を結びつけている。結束性として、照応によって、産業革命→都市化→社会階層の変化という論理的な流れが明確になっている。

例2として、Climate change poses significant threats to global biodiversity. Rising temperatures are altering habitats, forcing many species to migrate or face extinction. These changes are occurring at a pace that outstrips the ability of many organisms to adapt. Scientists warn that without immediate action, the consequences will be irreversible. という文を分析する。“These changes” は Rising temperatures are altering habitats という事象全体を指している。“the consequences” は前文で述べられた状況の結果を指している。結束性として、各文が照応を通じて前の文の内容を受け継ぎ、議論を積み上げている。

例3として、The defendant claimed he was innocent. However, his alibi was contradicted by multiple witnesses. They testified that they had seen him at the scene of the crime. This testimony proved to be decisive in the trial. という文を分析する。“he”、“his”、“him” は the defendant を一貫して指している。“They” は multiple witnesses を指している。“This testimony” は witnesses の証言全体を指している。結束性として、二つの照応連鎖が並行して進み、被告と証人という二つの主体に関する情報が統合されている。

以上により、照応が文と文を結びつけ、談話全体の結束性を生み出すメカニズムを理解し、それを手がかりに長文の論理構造を把握することが可能になる。

1.2. 照応と他の結束装置との連携

照応は結束性を生み出す唯一の手段ではなく、接続詞、語彙的結束、省略などの他の結束装置と連携して機能する。接続詞は文と文の論理関係を明示し、語彙的結束は同じ意味場の語彙を繰り返すことでテーマの一貫性を示す。これらの装置が照応と組み合わさることで、より強固で明確な結束性が生まれる。一般に、照応だけに注目し、他の結束装置との相互作用を見落とすことがあるが、この視点は不完全である。複数の結束装置がどのように連携しているかを分析することで、談話の構造をより深く理解できる。この原理が重要なのは、照応を孤立した現象として捉えるのではなく、談話を構成する複数の要素の一つとして位置づけることで、より包括的な読解力が身につくからである。

この原理から、照応と他の結束装置の連携を分析する手順が導かれる。手順1として、照応関係を特定した後、同じ文の間をつなぐ接続詞の有無を確認する。接続詞は照応が示す意味的なつながりに論理的な関係を付加する。手順2として、同じ意味場に属する語彙の繰り返しや言い換えを特定する。これは語彙的結束であり、照応と並行してテーマの一貫性を示す。手順3として、省略された要素がないか確認する。省略は照応と同様に、先行文脈の情報を参照することで結束性を生み出す。

例1として、The company faced severe financial difficulties. Therefore, it had to lay off hundreds of workers. This decision, though painful, was necessary for the firm’s survival. という文を分析する。照応として、“it” は the company を、“This decision” は lay off hundreds of workers という行為を指している。接続詞として、“Therefore” が、財政難と解雇の間に因果関係を明示している。語彙的結束として、“company” と “firm” が同義語として使われ、テーマの一貫性を示している。

例2として、Renewable energy sources are becoming increasingly cost-competitive. Solar and wind power, in particular, have seen dramatic price reductions. These developments suggest that a transition away from fossil fuels may be economically viable. という文を分析する。照応として、“These developments” は、前の2文で述べられた状況全体を指している。語彙的結束として、“Renewable energy sources”、“Solar and wind power”、“fossil fuels” が同じ意味場に属し、エネルギーというテーマを維持している。逆接・対比の暗示として、“a transition away from fossil fuels” が、fossil fuels との対比を示唆している。

例3として、The first theory emphasizes individual agency. The second, on the other hand, focuses on structural constraints. Both have merit, but neither provides a complete explanation. という文を分析する。照応として、“Both” は the first theory と the second theory を指している。省略として、“The second” のあとに theory が省略されている。接続詞として、“on the other hand” が対比を明示している。語彙的結束として、“theory”、“emphasizes”、“focuses”、“explanation” が学術的議論という意味場を維持している。

以上により、照応が接続詞、語彙的結束、省略などの他の結束装置とどのように連携して談話の結束性を生み出しているかを分析する能力を習得できる。

2. 照応連鎖の追跡

長文読解において、単一の代名詞の先行詞を特定するだけでなく、複数の代名詞が連続的に同じ実体を指す「照応連鎖」を追跡する能力が求められる。照応連鎖は、談話の骨格を形成し、何が主題であり続けているかを示す。

この記事での学習を通じて、照応連鎖を効率的に追跡し、談話の構造を把握する技術を習得する。まず、単一の照応連鎖を追跡する方法を学び、次に、複数の照応連鎖が並行して存在する場合の分離と追跡の方法を理解する。

2.1. 単一の照応連鎖の追跡

照応連鎖とは、同一の実体が複数の文にわたって代名詞や名詞句で繰り返し言及される系列を指す。談話の主題となる実体は、典型的に長い照応連鎖を形成する。この連鎖を追跡することで、読者は談話全体を通じて何が中心的な話題であるかを把握できる。一般に、各代名詞を個別に処理し、それらが形成する連鎖としてのパターンを認識しないことが多いが、この読み方は断片的な理解にとどまる。照応連鎖を意識的に追跡することで、長文の論理構造がより明確に見えてくる。この原理が重要なのは、照応連鎖の追跡が、長文読解における情報の整理と記憶の効率化に直結するからである。

この原理から、単一の照応連鎖を追跡する手順が導かれる。手順1として、段落や文章の冒頭で導入される中心的な名詞句を特定する。これが照応連鎖の出発点となる。手順2として、後続の文で、その名詞句を指す代名詞、指示語、または言い換え表現を特定し、連鎖として記録する。手順3として、連鎖が途切れる箇所、すなわち完全な名詞句が再導入される箇所や、主題が転換する箇所に注目する。手順4として、連鎖の長さと密度から、その実体が談話においてどの程度中心的であるかを判断する。

例1として、Albert Einstein was born in Germany in 1879. He showed an early aptitude for mathematics and physics. His famous paper on special relativity was published in 1905, revolutionizing our understanding of space and time. The physicist later emigrated to the United States, where he continued his research until his death in 1955. という文を分析する。照応連鎖は Albert Einstein → He → His → The physicist → his である。分析として、Einsteinが一貫した主題であり、代名詞と言い換え表現によって連鎖が維持されている。

例2として、The Amazon rainforest is one of the most biodiverse regions on Earth. It contains approximately ten percent of all species on the planet. However, this vital ecosystem is under threat from deforestation. Scientists warn that if current trends continue, it could reach a tipping point within decades. という文を分析する。照応連鎖は The Amazon rainforest → It → this vital ecosystem → it である。分析として、熱帯雨林が主題であり、代名詞 it と言い換え表現 this vital ecosystem によって連鎖が形成されている。

例3として、The European Union was established to promote peace and economic cooperation. Its founding members sought to prevent the recurrence of devastating wars. The organization has since expanded to include 27 member states. It now faces challenges ranging from economic inequality to migration. という文を分析する。照応連鎖は The European Union → Its → The organization → It である。分析として、EUが主題であり、所有格 Its、言い換え The organization、代名詞 It によって連鎖が維持されている。

以上により、単一の照応連鎖を追跡し、談話の中心的な主題を把握する技術を習得できる。

2.2. 複数の照応連鎖の並行追跡

複雑な談話では、複数の実体が同時に言及され、それぞれが独自の照応連鎖を形成することがある。例えば、対立する二つの立場、原因と結果、問題と解決策などが並行して論じられる場合である。このような場合、各連鎖を分離して追跡し、それらがどのように交差し、関連し合っているかを把握することが求められる。一般に、複数の連鎖を混同し、代名詞の指示対象を誤って特定することがあるが、この混同は読解の重大な誤りにつながる。性・数の一致や主題構造を手がかりに連鎖を分離することで、複雑な談話でも正確な読解が可能になる。この原理が重要なのは、対比、因果、並列などの複雑な論理構造を持つ学術的文章や論説文の読解に不可欠だからである。

この原理から、複数の照応連鎖を並行して追跡する手順が導かれる。手順1として、談話に登場する主要な実体を全てリストアップし、それぞれに対応する照応連鎖の出発点を特定する。手順2として、各代名詞が登場するたびに、性・数・意味的整合性を確認し、どの連鎖に属するかを判断する。手順3として、複数の連鎖が交差する箇所、すなわち異なる実体が同じ文で言及される箇所に注目し、それらの関係を把握する。手順4として、各連鎖がどのように展開し、最終的にどのような結論に至るかを追跡する。

例1として、The prosecution presented its case first. Its witnesses testified about the events of that night. The defense, however, offered a different narrative. Its attorney argued that the evidence was circumstantial. Both sides made compelling arguments, but ultimately the jury sided with the prosecution. という文を分析する。照応連鎖1は The prosecution → Its → Its witnesses → the prosecution である。照応連鎖2は The defense → Its attorney である。分析として、検察と弁護という二つの連鎖が並行し、最後に Both sides で統合され、結論が述べられている。

例2として、Darwin’s theory of evolution and Lamarck’s theory of inheritance of acquired characteristics both attempted to explain species change. The former proposed natural selection as the mechanism, while the latter suggested that organisms could pass on traits acquired during their lifetime. Darwin’s theory has since been validated by modern genetics, but Lamarck’s has been largely discredited. という文を分析する。照応連鎖1は Darwin’s theory of evolution → The former → Darwin’s theory である。照応連鎖2は Lamarck’s theory → the latter → Lamarck’s である。分析として、二つの理論が The former と the latter で明確に区別され、並行して評価が述べられている。

例3として、The company’s CEO announced a restructuring plan. She emphasized that it was necessary for long-term growth. However, union leaders strongly opposed the plan. They argued that it would lead to massive job losses. The dispute has yet to be resolved. という文を分析する。照応連鎖1は The company’s CEO → She である。照応連鎖2は union leaders → They である。照応連鎖3は a restructuring plan → it → the plan → it → The dispute である。分析として、CEO と組合指導者という二つの人物の連鎖と、計画という事物の連鎖が並行している。it は文脈から計画を指すと判断できる。

以上により、複数の照応連鎖を分離して追跡し、複雑な談話構造を把握する技術を習得できる。

3. 代名詞と談話の情報階層

談話において、全ての情報が等しい重要性を持つわけではない。中心的な主題、それを支える補足情報、背景情報などが階層的に組織されている。代名詞の使用パターンは、この情報の階層構造を反映し、何が談話の前景にあり、何が背景にあるかを示す。

この記事での学習を通じて、代名詞と情報の階層構造の関係を理解し、長文の情報を効率的に整理する能力を習得する。

3.1. 前景と背景の区別

談話情報は、前景と背景という二つの層に分けられる。前景とは、談話の主要な筋、中心的な主張、最も重要な情報を含む層である。背景とは、前景を理解するために必要な補足情報、説明、状況設定などを含む層である。代名詞は、前景にある主題を追跡する際に頻繁に使用される傾向がある。一方、背景情報を導入する際には、完全な名詞句が使用されることが多い。一般に、全ての情報を同じ重要度で処理しようとし、情報の過負荷に陥ることがあるが、この読み方は非効率的である。前景と背景の区別を意識することで、重要な情報に焦点を当てた効率的な読解が可能になる。この原理が重要なのは、長文読解において情報を階層的に整理し、要旨を把握する能力に直結するからである。

この原理から、前景と背景を区別し、情報を階層的に整理する手順が導かれる。手順1として、照応連鎖の密度が高い部分を前景、密度が低い部分を背景として識別する。主題が代名詞で連続的に受けられている部分は前景である可能性が高い。手順2として、従属節や挿入句で導入される情報は背景である傾向がある。主節の情報が前景である。手順3として、時制に注目する。物語では、単純過去形が前景、過去完了形や過去進行形が背景に対応することが多い。論説では、現在形が前景の一般的主張、過去形が背景の事例に対応することがある。

例1として、The discovery of penicillin by Alexander Fleming in 1928, which occurred quite by accident when he noticed mold inhibiting bacterial growth on a petri dish he had left uncovered, revolutionized medicine. It saved countless lives during World War II and remains one of the most widely used antibiotics today. という文を分析する。前景は “The discovery… revolutionized medicine. It saved countless lives…” である。背景は “which occurred quite by accident when he noticed…” という関係詞節であり、発見の状況を説明する背景情報である。分析として、前景の主題であるペニシリンの発見が It で受けられ、その重要性が述べられている。

例2として、Although the initial results were disappointing and many investors had already lost faith in the project, the research team persisted. They eventually achieved a breakthrough that exceeded all expectations. という文を分析する。前景は “the research team persisted. They eventually achieved a breakthrough…” である。背景は “Although the initial results were disappointing and many investors had already lost faith in the project…” という従属節であり、前景の行動の背景状況を提供している。分析として、前景の主題である研究チームが They で受けられ、その成功が述べられている。

例3として、The policy, which had been implemented with great fanfare just two years earlier, was quietly abandoned. Officials admitted that it had failed to achieve its objectives. Critics, who had opposed the measure from the start, felt vindicated. という文を分析する。前景は “The policy… was quietly abandoned. Officials admitted… Critics… felt vindicated.” である。背景は “which had been implemented with great fanfare” と “who had opposed the measure from the start” であり、補足的な背景情報である。分析として、政策、当局者、批判者という複数の連鎖が前景で展開し、関係詞節が背景情報を提供している。

以上により、前景と背景の区別を理解し、代名詞の使用パターンを手がかりに情報を階層的に整理する能力を習得できる。

3.2. 主題の階層構造

長い談話では、主題が単一ではなく、上位主題と下位主題の階層構造を形成することがある。段落の主題は、文章全体の主題の下位に位置し、文の主題は段落の主題の下位に位置する。代名詞の使用範囲は、この階層構造と対応している。上位の主題は、より広い範囲で代名詞によって参照され得る。一般に、主題を平板に捉え、その階層性を認識しないことがあるが、この認識は不十分である。主題の階層構造を意識することで、長文の論理的な組織をより深く理解できる。この原理が重要なのは、段落間の関係や文章全体の構成を把握する上で不可欠だからである。

この原理から、主題の階層構造を分析する手順が導かれる。手順1として、文章全体の上位主題を特定する。これは通常、タイトルや導入部で明示される。手順2として、各段落の下位主題を特定する。これは通常、各段落の主題文で示される。手順3として、下位主題が上位主題とどのように関連しているかを分析する。代名詞が段落を超えて上位主題を参照している場合、その段落は上位主題の展開の一部である。手順4として、主題の転換点、すなわち新たな下位主題が導入される箇所を特定する。

例1として、Globalization has transformed the world economy. という上位主題の導入に続いて、One of its most significant effects has been the rise of multinational corporations. These entities now operate across national borders, wielding enormous economic and political influence. They have created global supply chains that… という下位主題1が展開され、さらに Another consequence of globalization is increased labor mobility. Workers now migrate across continents in search of better opportunities. This movement has… という下位主題2が展開される文章を分析する。“its” は Globalization を指し、上位主題を維持している。“These entities” と “They” は multinational corporations を、“This movement” は labor mobility を指し、それぞれの下位主題を展開している。

例2として、The Renaissance marked a pivotal period in European history. という上位主題に続いて、In the arts, it witnessed an unprecedented flowering of creativity. Artists such as Leonardo and Michelangelo produced works that continue to inspire… という下位主題1(芸術)が展開され、In science, the period saw challenges to established dogma. Copernicus proposed a heliocentric model, and Galileo’s observations supported it… という下位主題2(科学)が展開される文章を分析する。“it” は The Renaissance を一貫して指し、芸術と科学という二つの下位主題が上位主題の下に組織されている。

以上により、主題の階層構造を分析し、代名詞の使用範囲との対応関係を理解することで、長文の論理的な組織を把握する能力を習得できる。

4. 照応の失敗と読解における修復

理想的な文章では、照応関係は常に明確であるが、実際には曖昧さや不整合が生じることがある。熟練した読者は、照応の失敗を認識し、文脈情報を用いて修復する能力を持っている。

この記事での学習を通じて、照応の失敗を認識し、それを修復するための戦略を習得する。これにより、不完全な文章や複雑な文章に直面しても、柔軟に対応できる読解力を身につける。

4.1. 照応の曖昧性への対処

照応の曖昧性は、代名詞の指示対象として複数の候補が文法的に可能な場合に生じる。熟練した読者は、この曖昧性に直面した際に、文脈情報、世界知識、談話構造の知識を動員して、最も妥当な解釈を導き出す。一般に、曖昧な代名詞に遭遇すると読解を諦めたり、安易に「最も近い名詞」を選んだりすることがあるが、この対処法は不適切である。曖昧性を認識し、複数の解釈可能性を検討した上で、文脈に最も整合する解釈を選択することが重要である。この原理が重要なのは、実際の文章、特に学術的な文章では、完璧に明確な照応関係ばかりではなく、読者の推論を必要とする場合が少なくないからである。

この原理から、照応の曖昧性に対処する手順が導かれる。手順1として、代名詞の指示対象として複数の候補が存在することを認識する。手順2として、各候補について、意味的整合性を検討する。述語との組み合わせが意味をなすかを確認する。手順3として、談話構造を考慮する。主題の継続性、論理展開の方向性と照らし合わせる。手順4として、複数の解釈が残る場合は、最も蓋然性の高い解釈を暫定的に採用し、後続の文脈で確認する。

例1として、The manager told the employee that he would receive a bonus. という文を分析する。曖昧性として、“he” は the manager と the employee のどちらも指し得る。対処として、文脈がなければ曖昧だが、通常、ボーナスを受け取るのは従業員であるため、he は the employee を指す可能性が高い。しかし、文脈によっては、上司自身がボーナスを受けるという状況も考えられる。

例2として、The researchers criticized the methodology because it was flawed. という文を分析する。候補として、“it” は the methodology を指す可能性が最も高い。対処として、criticized と flawed の意味的関連性から、批判の対象である methodology が it の指示対象であると判断できる。

例3として、Although the company invested heavily in the project, it ultimately failed. という文を分析する。曖昧性として、“it” は the company と the project のどちらも指し得る。対処として、「失敗した」という述語との意味的整合性を考えると、「プロジェクトが失敗した」という解釈が自然である。会社が失敗したという解釈も可能だが、文脈上、投資の対象であるプロジェクトの成否が論点である可能性が高い。

以上により、照応の曖昧性を認識し、文脈情報と推論を用いて最も妥当な解釈を導き出す能力を習得できる。

4.2. 長距離照応の処理

長距離照応とは、代名詞とその先行詞が複数の文や段落を隔てて位置する場合を指す。このような照応は、短距離照応よりも処理が困難であり、読者は先行詞を記憶から呼び出すか、文脈から推論する必要がある。一般に、直前の文にのみ先行詞を探し、長距離照応の可能性を考慮しないことがあるが、この探索範囲は狭すぎる。談話の主題は複数の文や段落にわたって維持されるため、長距離照応は頻繁に生じる。この原理が重要なのは、長文読解において、段落を超えた情報の統合が求められる場面で不可欠だからである。

この原理から、長距離照応を処理する手順が導かれる。手順1として、直前の文脈に適切な先行詞が見つからない場合、より遠い先行文脈を検索する。手順2として、談話の主題を意識する。長距離照応は、談話全体の主題を指すことが多い。手順3として、代名詞の文法的素性と意味的整合性を手がかりに、候補を絞り込む。手順4として、照応連鎖を遡ることで、元の先行詞を特定する。

例1として、The Industrial Revolution began in Britain in the late 18th century. に続いて複数の文があり、These changes spread gradually to other European countries and eventually to North America. By the end of the 19th century, it had transformed the global economy. という文章を分析する。“it” は複数の文を隔てているが、談話全体の主題である The Industrial Revolution を指している。対処として、談話の主題を追跡することで、長距離照応を解決できる。

例2として、Einstein proposed his theory of special relativity in 1905. に続いて説明があり、The scientific community was initially skeptical. さらに説明があり、Nevertheless, experimental evidence eventually confirmed it. という文章を分析する。“it” は複数の文を隔てて、his theory of special relativity を指している。対処として、何が確認されるのかという意味的整合性から、理論が先行詞であると判断できる。

例3として、The government’s new policy aims to reduce carbon emissions. に続いて政策の詳細な説明があり、Critics argue that the measures are insufficient. 批判の詳細があり、Supporters, however, contend that it represents a significant step forward. という文章を分析する。“it” は複数の文と別の主題(Critics の議論)を挟んで、The government’s new policy を指している。対処として、Supporters が支持するのは政策であるという意味的整合性から、先行詞を特定できる。

以上により、長距離照応を認識し、談話の主題を手がかりに先行詞を特定する能力を習得できる。

体系的接続

  • [M17-統語] └ 省略・倒置・強調構文における代名詞の扱いと、省略された先行詞の復元方法を学ぶ。
  • [M18-談話] └ 文間の結束性を形成する照応連鎖を、より長い談話構造の中で追跡する方法を深める。
  • [M23-談話] └ 推論と含意の読み取りにおいて、代名詞の指示対象の特定がどのように機能するかを学ぶ。

このモジュールのまとめ

本モジュールでは、代名詞と指示語の体系的理解から出発し、照応関係の特定、語用論的機能の分析、そして談話構造の把握へと段階的に学習を進めてきた。代名詞は、単なる名詞の代用表現ではなく、文の結束性を高め、情報構造を最適化し、談話全体の論理的な骨格を形成する、英文読解において不可欠な言語要素である。

統語層では、代名詞の形態的分類と統語的機能を学んだ。人称代名詞の格変化体系、指示代名詞と指示形容詞の区別、不定代名詞の体系、そして疑問代名詞と関係代名詞の識別という、代名詞を正確に認識するための基盤を確立した。これらの知識は、代名詞が文中でどのような役割を担っているかを即座に判断する能力を支える。

意味層では、照応関係の基本原理と先行詞特定のメカニズムを習得した。束縛理論に基づく統語的制約、性・数・生物性の一致という意味的整合性、そして主語優先や主題継続といった顕著性の要因を総合的に考慮することで、複数の候補の中から論理的に正しい先行詞を特定する能力を養った。また、照応の曖昧性が生じる構造的要因を分析し、文脈情報を用いてそれを解消する戦略を学んだ。指示語の心理的・談話的距離という概念は、this と that の選択が書き手の態度や談話構造を反映することを明らかにした。

語用層では、代名詞が文脈の中で担う情報伝達機能と文体的効果を学んだ。旧情報と新情報の区別、主題と焦点の配置という情報構造の原理を理解することで、代名詞と名詞句の使い分けが単なるスタイルの問題ではなく、認知的な効率性と論理的な明確性を追求した結果であることを認識した。省略された先行詞の復元、代名詞による主題の管理と視点の設定、そしてフォーマルな文体とインフォーマルな文体における代名詞使用の違いを分析することで、書き手の意図を読み解く洞察力を深めた。

談話層では、照応が談話全体の結束性と構造形成にどのように寄与するかを学んだ。照応連鎖を追跡することで、何が談話の主題であり続け、どこで論点が転換するかを把握する技術を習得した。複数の照応連鎖が並行する複雑な談話においても、各連鎖を分離して追跡し、それらの相互関係を理解する能力を養った。前景と背景の区別、主題の階層構造という概念は、長文の情報を効率的に整理し、要旨を把握する上で不可欠な視点を提供した。また、照応の曖昧性や長距離照応といった、読解において困難を生じさせる現象への対処法も習得した。

これらの学習を通じて、代名詞を単なる繰り返し回避の道具としてではなく、談話を構築し、情報を組織し、論理を展開するための精密な言語装置として理解することができるようになった。代名詞の軌跡を追うことは、書き手の思考の軌跡を追うことに他ならない。本モジュールで習得した知識と技能は、後続のモジュールで学ぶパラグラフの構造、論理展開の類型、そして長文の構造的把握へと直接的に連結し、大学入試における長文読解の確実な得点力を支える基盤となる。

入試での出題分析

出題形式と難易度

項目評価
難易度★★★★☆ 発展
分量多い
出題頻度極めて高い
配点比重高い(長文読解全体に影響)

頻出パターン

早慶

  • 複数の登場人物や概念が交錯する論説文において、代名詞の指示対象を正確に特定させる問題が頻出する。特に、対立する二つの立場が論じられる文章では、各代名詞がどちらの立場を指すかを見極める能力が問われる。
  • 指示語(this, that, these, those)が前の文や節全体を指す事象指示の用法を正確に把握させる問題が多い。下線部和訳において、指示内容を明確にした訳文を求められる。

東大・京大・旧帝大

  • 長距離照応を含む複雑な文章において、代名詞の先行詞を論理的に特定させる問題が出題される。段落を超えた照応関係の追跡が求められる。
  • 抽象度の高い哲学的・社会科学的文章において、照応連鎖を手がかりに議論の骨格を把握させる問題が頻出する。代名詞の指示対象の特定が、文章全体の要旨把握の鍵となる。

差がつくポイント

  1. 事象指示の正確な把握: this や that が具体的な名詞句ではなく、前の文や節全体が示す「事実」「状況」「議論」を指す用法を見抜けるかどうかで、得点に大きな差が生じる。特に和訳問題では、指示内容を明確にした訳文を作成できるかが評価される。
  2. 複数連鎖の分離と追跡: 対立する二者の議論など、複数の照応連鎖が並行する文章において、各代名詞がどの連鎖に属するかを正確に識別できるかどうかが、正答率を大きく左右する。性・数の一致や意味的整合性を手がかりに、論理的に判断する能力が求められる。
  3. 談話構造の意識: 代名詞の指示対象を個々の文レベルで探すのではなく、段落や文章全体の主題構造を意識しながら特定できるかどうかが、長文読解の精度を決定する。主題の継続と転換を代名詞の使用パターンから読み取る能力が重要である。

演習問題

試験時間: 60分 / 満点: 100点

第1問(25点)

次の英文を読み、下線部(1)~(5)の代名詞・指示語が指す内容として最も適切なものを、それぞれa~dの中から一つ選べ。

The theory of plate tectonics revolutionized our understanding of the Earth’s surface. (1)It provides a comprehensive framework for explaining geological phenomena such as earthquakes, volcanic activity, and mountain formation. Before this theory was widely accepted, the distribution of fossils and rock formations across continents had been a puzzle. (2)This was particularly intriguing because similar species were found on landmasses separated by vast oceans. Alfred Wegener proposed (3)his theory of continental drift in the early 20th century, suggesting that the continents had once been joined together. However, Wegener could not provide a convincing mechanism for how the continents moved. It was not until the 1960s that scientists discovered the process of seafloor spreading, which provided (4)that missing mechanism. (5)These convection currents in the Earth’s mantle drive the movement of tectonic plates, finally explaining what Wegener had hypothesized decades earlier.

(1) It
a. The Earth’s surface
b. Our understanding
c. The theory of plate tectonics
d. Geological phenomena

(2) This
a. The theory of plate tectonics
b. The fact that the distribution of fossils and rock formations had been puzzling
c. The wide acceptance of the theory
d. The discovery of continental drift

(3) his
a. A scientist who studied fossils
b. Alfred Wegener’s
c. A geologist’s
d. The author’s

(4) that
a. The theory of continental drift
b. A convincing mechanism for continental movement
c. The process of seafloor spreading
d. The discovery made in the 1960s

(5) These
a. Tectonic plates
b. Scientists in the 1960s
c. Convection currents
d. The continents

第2問(25点)

次の英文を読み、下線部(1)(2)を和訳せよ。その際、指示語が指す内容を明確にして訳すこと。

(1) Proponents of artificial intelligence argue that machines can, in principle, achieve genuine consciousness. Critics, however, contend that no matter how sophisticated the computation, they are merely simulating thought, not experiencing it. Resolving this debate is not just an academic exercise; it has profound ethical implications for our future.

(2) The stock market crash of 1929 triggered the Great Depression. The economic collapse that followed was unprecedented in its scale and duration. Few at the time understood the structural vulnerabilities that had made such a catastrophe possible.

第3問(25点)

次の英文を読み、後の問いに答えよ。

Senator Smith and Senator Jones engaged in a heated debate over the proposed consumer protection bill. Smith argued that the bill would stifle innovation and harm economic growth. “Excessive regulation,” he declared, “discourages investment and kills jobs.” Jones, however, countered that the current lack of oversight had led to widespread consumer harm. “He talks about innovation,” she said, “but what about the innovation that harms people? This is precisely what the bill is designed to prevent.” Smith dismissed her concerns as exaggerated, claiming that market forces would naturally correct any abuses. Jones shook her head. “That kind of thinking is exactly why we need this legislation,” she responded. “The market has failed to protect consumers, and it will continue to fail without government intervention.” As the debate concluded, she noted that they clearly had a fundamental disagreement about the role of government in the economy.

問1:下線部 This が指す内容を日本語で説明せよ。

問2:下線部 they が指すものを明らかにした上で、二人の意見の相違の内容を30字以内の日本語で説明せよ。

第4問(25点)

次の英文を読み、後の問いに答えよ。

Moral philosophy has long grappled with the question of what makes an action right or wrong. Deontology and consequentialism represent two fundamentally different approaches to this question. The former holds that certain actions are inherently right or wrong, regardless of their outcomes. The latter, in contrast, judges the morality of an action solely by its consequences.

Consider a classic thought experiment: a runaway trolley is heading toward five people who will be killed unless the trolley is diverted. You can pull a lever to divert it onto a side track, where it will kill one person instead of five. A consequentialist would likely argue that pulling the lever is morally obligatory, as it minimizes overall harm. This actionsaves a net four lives.

A deontologist, however, might argue that actively causing someone’s death, even to save others, violates a fundamental moral principle. By pulling the lever, they would reason, you become complicit in a killing, whereas allowing the trolley to continue on its course, though tragic, does not make you a murderer. That decision, while resulting in more deaths, avoids the moral taint of intentional killing.

This tension between the two frameworks illustrates a profound challenge in ethics: how do we weigh the consequences of our actions against the intrinsic nature of those actions themselves?

問1:The former と The latter がそれぞれ指すものを英語で答えよ。

問2:下線部 This action, they, That decision がそれぞれ指す内容を日本語で説明せよ。

解答・解説

難易度構成

難易度配点大問
標準50点第1問、第2問
発展50点第3問、第4問

結果の活用

得点判定推奨アクション
80点以上A照応関係の理解は十分に高い水準にある。過去問演習に進み、より多様な文脈での応用力を磨くこと。
60-79点B基本的な照応関係は把握できているが、複数の候補が存在する複雑な文脈での判断に課題が見られる。間違えた問題に関連する講義編の項目を復習し、論理的推論の精度を高めること。
40-59点C照応関係の特定に系統的な弱点がある可能性が高い。特に、事象指示や談話構造の理解が不十分な場合が多い。講義編の意味層・談話層を再学習し、照応の基本原理から体系的に理解し直すこと。
40点未満D代名詞の機能に関する基礎的理解が不十分な状態である。講義編の統語層から段階的に学習をやり直し、各代名詞の形態と機能の対応関係を確実に習得することから始める必要がある。

第1問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図学術的な説明文において、複数の名詞句や概念が導入される中で、基本的な代名詞・指示詞の指示対象を正確に特定できるかを問う。
難易度標準
目標解答時間10分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定

各下線部の品詞と文法機能、そして文法的素性を特定する。これにより、先行詞の候補となりうる名詞句の範囲を文法的に限定する。

レベル2:検証観点

文法的素性が一致する候補の中から、直前の文脈や文全体の論理の流れと最も整合性の取れるものを選択する。特に、this/thatの選択には、談話的な距離感も考慮に入れる。

【解答】

(1) c
(2) b
(3) b
(4) b
(5) c

【解答のポイント】

正解の論拠:

(1) It は三人称単数中性の主格代名詞である。直前の文の主題は「プレートテクトニクス理論」であり、「地質現象の包括的な枠組みを提供する」という述語の主体として最も意味的に適切なのは「理論」そのものである。

(2) This は指示代名詞で、直前の文の内容を指す。「大陸を横断する化石や岩石の分布が謎であった」という事実そのものを指している。

(3) his は三人称単数男性の所有格である。直前の文で言及された男性は Alfred Wegener のみである。

(4) 指示代名詞 that は、文脈上少し離れた、あるいは対比される対象を指す。ここでは、Wegenerが提供「できなかった」と述べられている a convincing mechanism を、プレートテクトニクス理論が提供「した」ものとして指している。

(5) These は複数形の指示形容詞である。直前の文で導入された convection currents を修飾している。「これらの対流が…」と続く文脈とも完全に一致する。

誤答の論拠:

(1) a, bは理論の一部であり、dは理論が説明する対象であって、枠組みを提供する主体ではない。
(2) aは文脈に登場しない。dはWegenerが提唱したものであり、「謎」そのものではない。cは範囲が広すぎる。
(3) a, cは不特定であり、文脈から特定できない。dは文法的にありえない。
(4) a, dは「メカニズム」そのものではない。cはメカニズムを提供した過程であり、メカニズムそのものではない。
(5) a, dは動かされる対象であり、動かす主体ではない。bは人であり、convection currents とは無関係である。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 説明文において、主題が「概念→具体例→別の概念」と展開する場合、指示詞が直前の名詞句だけでなく、文脈上の主題や対比対象を指す可能性を常に考慮することで、同様の問題に対応可能である。

【参照】

  • [M16-意味] └ 照応の基本原理と制約
  • [M16-意味] └ 指示語の心理的・談話的距離

第2問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図指示語が具体的な名詞句ではなく、前の文脈が示す「傾向」や「議論」といった抽象的な事象を指す場合に、その内容を正確に把握し、訳文に反映させる能力を問う。
難易度標準
目標解答時間10分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定

下線部の指示語が、それぞれどの先行文脈を指しているかを特定する。debate, catastrophe といった名詞をヒントに、先行文脈からその具体的な内容を探す。

レベル2:検証観点

特定した指示内容を、直訳的に「この論争」「そのような大惨事」と訳すだけでなく、日本語の文脈として自然になるように、より具体的な内容を補って訳出する。

【解答】

(1) この論争を解決することは単なる学術的な演習ではない。それは我々の未来にとって、深遠な倫理的含意を持つのである。

(「この論争」とは、機械が真の意識を獲得できるか否かという議論を指す。「それ」は「この論争を解決すること」を指す。)

(2) 当時、そのような大惨事を引き起こした構造的な脆弱性を理解していた者はほとんどいなかった。

(「そのような大惨事」とは、直前に述べられている「規模と期間において前例のない経済崩壊」を指す。)

【解答のポイント】

正解の論拠:

(1) this debate は、直前までに述べられている「AIが意識を持つか(支持者の主張)否か(批判者の主張)」という対立そのものを指す。これを「この論争」と正確に訳出し、文脈に組み込むことができている。it は Resolving this debate という動名詞句を受けている。

(2) such a catastrophe の such は「そのような」と訳し、直前に述べられている「前例のない規模と期間の経済崩壊」を指すことを示す。訳文がその内容を反映している必要がある。

誤答の論拠:

(1) 単に「これを解決することは」と訳した場合、指示内容が不明確で減点となる。
(2) 「大惨事を引き起こした脆弱性」と訳すだけでは、such が持つ「前に述べたようなひどい」というニュアンスが欠落する。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 下線部和訳で指示語が出てきた場合、常にその指示内容を特定し、「その内容を訳文に補う」という原則を適用することで、同様の問題で高得点が期待できる。

【参照】

  • [M16-意味] └ 指示代名詞による節・文・談話全体への指示
  • [M16-談話] └ 代名詞と談話の結束性

第3問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図複数の登場人物が対立する議論において、複数の照応連鎖を正確に追跡し、各代名詞がどちらの人物を指しているかを分離・特定する能力を問う。
難易度発展
目標解答時間15分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定

his, He, She といった代名詞が登場するたびに、その性別と文脈から、スミス議員(男性)とジョーンズ議員(女性)のどちらを指すかを特定し、二つの照応連鎖を区別する。

レベル2:検証観点

問1の This は事象指示であり、直前の “what about the innovation that harms people?” という発言内容を指すと判断する。問2の they はスミス議員とジョーンズ議員の二人を指す複数形であり、二人の「意見の相違」の内容を、それぞれの主張の核心から抽出する。

【解答】

問1:This が指す内容は、「人々を害するイノベーション」である。

問2:they が指すのは、スミス議員とジョーンズ議員の二人である。意見の相違の内容は、「政府による経済への介入の是非。」(14字)または「市場の自律性と政府規制の必要性。」(16字)

【解答のポイント】

正解の論拠:

問1: ジョーンズ議員は「彼はイノベーションについて語るが、人々を害するイノベーションについてはどうか? これこそが、この法案が防ごうとしているものだ」と述べている。文脈から、This が指すのは、彼女が対置した「人々を害するイノベーション」であることが明確である。

問2: 最後の文で、ジョーンズ議員が、they が根本的な意見の相違を持っていると結論づけている。文脈上、彼女と対立しているのはスミス議員であるため、they は二者を指す。彼らの対立の核心は、スミスが「市場は自律的に機能する」と主張し規制に反対するのに対し、ジョーンズが「市場は失敗するため政府の介入が必要」と主張している点にある。

誤答の論拠:

問1: This を「スミス議員の議論」や「イノベーション全般」と誤解すると、文脈に合わなくなる。

問2: they を「有権者」や「議員一般」と誤解すると、文脈から逸脱する。「意見の相違」の内容を単に「法案への賛否」とすると、根本的な対立点を捉えきれていないため不十分である。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 対立する二者の議論では、それぞれの照応連鎖を区別して追跡し、指示語がどちらの陣営の主張を指しているかを常に明確にすることで、同様の複雑な議論の読解に応用できる。

【参照】

  • [M16-意味] └ 先行詞の顕著性と選択
  • [M16-談話] └ 複数の照応連鎖の並行追跡

第4問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図抽象度の高い哲学的な文章において、対比される二つの概念を指すための形式的な指示表現や、複雑な条件節の中で使われる代名詞の指示対象を正確に特定する能力を問う。
難易度発展
目標解答時間20分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定

The former(前者)と The latter(後者)が、直前に列挙された二つの要素のそれぞれを指すことを確認する。各代名詞について、それが登場する文脈(トロッコ問題の思考実験)の中での役割を特定する。

レベル2:検証観点

This action は「レバーを引く」という具体的な行為、they は義務論者の思考プロセスにおける主語、That decision は義務論者が下すであろう「何もしない」という結論を指す。それぞれの指示対象を、思考実験の文脈から論理的に導き出す。

【解答】

問1:
The former: Deontology
The latter: consequentialism

問2:
This action: レバーを引くという行為。
they: 義務論者(A deontologist)。
That decision: (結果としてより多くの人が亡くなるとしても)意図的な殺害行為に加担すべきではないという観点から、義務論者が下すであろう「何もしない」という決定。

【解答のポイント】

正解の論拠:

問1: “Deontology and consequentialism represent two…” と述べた後、The former は先に述べられた「義務論」、The latter は後に述べられた「帰結主義」を指す。これは形式的なルールである。

問2:

  • This action: 直前の “pulling the lever” という動名詞句で示された具体的な行為を指す。
  • they: “A deontologist, however, might argue that… Therefore, they might conclude…” という流れから、they は A deontologist を受けている。単数形の名詞を複数形の they で受ける用法だが、ここでは一般的な立場を代表する人物として複数形で受けているか、あるいは単数theyの用法である。
  • That decision: That は、直前に述べられた義務論者の結論、すなわち「何もしないという決定」を指す。この決定が二つの倫理体系の間の緊張を浮き彫りにすると文が続いている。

誤答の論拠:

That decision を「レバーを引く決定」と誤解すると、文脈と完全に矛盾する。義務論者はレバーを引かないと結論づけているためである。

【再現性チェック】

この解法が有効な条件: 抽象的な理論が対比され、その後、具体例でその理論が適用される構造の文章では、まず各理論の定義を正確に押さえ、具体例の中の各行為や判断がどちらの理論に基づいているかを常に紐づけながら読み進めることで、同様の問題に対応できる。

【参照】

  • [M16-語用] └ 代名詞による談話管理と視点
  • [M16-談話] └ 照応の失敗と読解における修復

体系的接続

  • [M17-統語] └ 省略・倒置・強調構文における代名詞の扱いと、省略された先行詞の復元方法を学ぶ。
  • [M18-談話] └ 文間の結束性を形成する照応連鎖を、より長い談話構造の中で追跡する方法を深める。
  • [M23-談話] └ 推論と含意の読み取りにおいて、代名詞の指示対象の特定がどのように機能するかを学ぶ。
目次