目次
問題 / 解答
第一部:語彙の意味・用法
問題 1
- 解答例: エ.不遜
- 解説:
- 「傲慢(ごうまん)」は、人を見下して、おごり高ぶる態度を意味します。選択肢の中で最も意味が近いのは「不遜(ふそん)」です。「不遜」も、思い上がっていて、へりくだる気持ちがないことを表します。
- ア.「謙虚(けんきょ)」は、控えめで、素直に相手の意見などを受け入れるさま。傲慢の対義語です。
- イ.「無関心(むかんしん)」は、興味や関心がないこと。
- ウ.「畏敬(いけい)」は、偉大なものとして、おそれ敬うこと。
- 文脈:「自然に対する人間の傲慢な態度」とは、人間が自然を支配できると考え、自然に対して敬意を払わない、おごり高ぶった態度を指しています。
問題 2
- 解答例: 自己同一性。自分が自分であるという確信や、帰属意識。
- 解説:
- 「アイデンティティ(identity)」は、①自己同一性(自分が他の誰でもない自分であるという意識、連続性・一貫性を持つ自己像)、②帰属意識(自分がどの集団や文化に属しているかという意識)などの意味で使われます。
- 評論では特に、個人が社会や文化の中で「自分は何者か」を問い、確立していくプロセスに関連して用いられることが多い語です。グローバル化によって、多様な価値観に触れる機会が増え、自己のアイデンティティが揺らぎやすくなる、あるいは再構築を迫られるといった文脈で使われます。
問題 3
- 解答例: ウ.抽象的
- 解説:
- 「具体的(ぐたいてき)」は、個々の事物に即していて、形や内容がはっきりしているさまを表します。
- その対義語は「抽象的(ちゅうしょうてき)」です。「抽象的」は、個々の事物から共通の性質を抜き出して、一般的な概念として捉えるさま、あるいは、具体的でなく、観念的で分かりにくいさまを表します。
- ア.「詳細(しょうさい)」は、細かな点まで詳しいこと。具体的と類義的な側面もあります。
- イ.「普遍的(ふへんてき)」は、広く全体に行き渡るさま、あらゆる場合に当てはまるさま。特定の個別の事象に限定されない点で抽象性と関連しますが、直接の対義語ではありません。
- エ.「個別的(こべつてき)」は、一つ一つ別々であるさま。具体的と近い意味合いです。
問題 4
- 解答例: イ.考察
- 解説:
- 文脈は、複雑な社会現象を多角的な視点から「どうする」ことが不可欠かを問うています。「考察(こうさつ)」は、物事を明らかにするために、よく調べて深く考えることを意味し、文脈に最も適合します。
- ア.「捨象(しゃしょう)」は、物事のある側面や性質を取り上げる際に、他の側面や性質を無視すること、抽象化の一過程です。
- ウ.「想起(そうき)」は、過去の出来事などを思い出すこと。
- エ.「踏襲(とうしゅう)」は、それまでのやり方や方針を受け継いで、そのまま従うこと。
問題 5
- 解答例: ウ.意味や趣旨を押し広げて説明すること。
- 解説:
- 「敷衍(ふえん)」は、元々ある事柄の意味や趣旨を、例を挙げたり言い換えたりしながら、分かりやすく押し広げて説明することを意味します。難解な事柄を易しく説き明かすような場合に用いられます。
- ア、イ、エは敷衍の意味とは異なります。特にア「要約」は、むしろ内容を短くまとめることであり、敷衍とは逆の方向性です。
問題 6
- 解答例: 一見、真理に反するように見えるが、よく考えると真理を言い当てていること。例:「負けるが勝ち」など。
- 解説:
- 「逆説(パラドックス)」は、①一見すると矛盾していたり、常識に反するように見えたりするけれども、よく考えると一面の真理を言い当てている表現や事柄、②論理的に正しい推論から、受け入れがたい矛盾した結論が導かれること、を指します。
- 問題文の「急がば回れ」は、急いでいる時こそ、危険な近道ではなく、遠回りでも安全確実な道を選ぶ方が結果的に早い、という意味で、①の意味での逆説にあたります。他の例としては、「負けるが勝ち」(一時的に相手に勝ちを譲る方が、最終的には自分の利益になる)などが挙げられます。
問題 7
- 解答例: イ.無視し
- 解説:
- 「意に介する(いにかいする)」は、気にかける、心配する、という意味の慣用句です。その否定形「意に介さず」は、気にかけない、問題にしない、無視する、という意味になります。
- ア「尊重し」、ウ「理解し」、エ「考慮し」は、いずれも相手のことや意見を気にかける方向の意味合いであり、「意に介さず」とは逆の意味です。
問題 8
- 解答例: ア.結束
- 解説:
- 文脈は、個人の自由が尊重される一方で、共同体の何かが弱まったかを問うています。「結束(けっそく)」は、人々の団結やつながりの強さを意味し、個人の自由(個人主義)が強調されると、共同体の結束が弱まることがある、という対比関係から、文脈に最も適合します。
- イ.「排他性(はいたせい)」は、仲間以外を排斥する性質。
- ウ.「効率性(こうりつせい)」は、能率の良さ。
- エ.「匿名性(とくめいせい)」は、名前を隠していること。これらは共同体の性質の一部ではありえますが、個人の自由との対比で弱まるものとして最も一般的なのは「結束」です。
問題 9
- 解答例: 抽出 (または 抽象)
- 解説:
- 「捨象(しゃしょう)」は、多くの具体的な事物や現象の中から、ある特定の性質・側面だけを取り上げ、他の性質・側面を捨て去ることを意味します。これは抽象化のプロセスの一部です。
- これと対比的に、多くの事物や現象の中から、共通する性質・要素を抜き出すことを「抽出(ちゅうしゅつ)」と言います。また、具体的なものから共通の性質を引き出して一般的な概念を作り出すこと全体を「抽象(ちゅうしょう)」と言い、捨象はこの抽象の過程に含まれる操作ですが、文脈によっては捨象と抽象が対比的に用いられることもあります。(ここでは「抽出」がより直接的な対比関係として考えやすいでしょう)
問題 10
- 解答例: ウ.それとなく教え示すこと
- 解説:
- 「示唆(しさ)」は、直接的ではない形で、それとなく手がかりを与えたり、ある方向性を示したりすることを意味します。ヒントや暗示に近いニュアンスです。
- ア「明確な結論」、イ「直接的な指示」は、示唆の持つ間接性とは異なります。エ「強い反論」は全く意味が違います。
- 文脈:「重要な示唆を与える」とは、調査結果が、今後の政策を考える上で重要なヒントや手がかり、あるいは方向性を示している、という意味合いです。
問題 11
- 解答例: イ.感覚や経験を超えた、思考によって捉えられる本質的な領域
- 解説:
- 「形而上(けいじじょう)」は、形を持たず、感覚によっては捉えることができず、思考によってのみ認識される、物事の本質や根源に関する領域を指します。「形而下(けいじか)」(具体的な形を持ち、感覚で捉えられる物質的な世界)と対比される概念です。
- 哲学における存在論(存在とは何か)、認識論(認識はどのように可能か)、倫理学(善悪とは何か)などが形而上学的な問いの例です。
- アは形而下の世界、ウ、エは形而上とは異なる領域です。
問題 12
- 解答例: ウ.伝承
- 解説:
- 文脈は、文化が世代間で「どのように」受け継がれていくかを問うています。「伝承(でんしょう)」は、古くからのしきたり・信仰・言い伝えなどを、後世に伝え残すこと、また、伝えられることを意味し、文化の継承を表すのに最も適切な語です。
- ア.「創造(そうぞう)」は、新しく作り出すこと。
- イ.「批判(ひはん)」は、是非を判断し、誤りや欠点を指摘すること。
- エ.「分析(ぶんせき)」は、物事を細かく分けて要素や構造を明らかにすること。
問題 13
- 解答例: ある時代や分野において支配的な、物の見方や考え方の枠組み。
- 解説:
- 「パラダイム(paradigm)」は、元々は科学史家トーマス・クーンが提唱した概念で、特定の時代の科学者共同体に共有されている、研究の前提となる理論、法則、モデル、価値観などの総体を指します。
- より広く、ある時代や社会、分野において支配的な、思考の枠組み、規範、物の見方、といった意味でも用いられます。「パラダイムシフト」は、この支配的な枠組みが根本的に転換することを意味します。
問題 14
- 解答例: エ.くどい
- 解説:
- 「冗長(じょうちょう)」は、文章や話などが、無駄が多くて長たらしいさまを表します。くどくどとしていて、要領を得ないニュアンスです。選択肢の中で最も意味が近いのは「くどい」です。
- ア.「簡潔(かんけつ)」は、短くて要点がまとまっているさま。冗長の対義語です。
- イ.「明瞭(めいりょう)」は、はっきりしていて分かりやすいさま。
- ウ.「複雑(ふくざつ)」は、物事が込み入っているさま。冗長とは意味が異なります。
問題 15
- 解答例: エ.明示的
- 解説:
- 「暗黙(あんもく)」は、言葉に出して言わないうちに、互いの気持ちや考えが一致しているさま、あるいは、はっきりと言葉で示されていないさまを表します。「暗黙の了解」「暗黙のルール」のように使われます。
- その対義語は、はっきりと言葉や形で示すことを意味する「明示的(めいじてき)」です。「明示的な指示」「明示的な合意」のように使われます。
- ア「秘密」は隠すこと、イ「共通」は複数のものに当てはまること、ウ「形式」は外形や手続きであり、対義語ではありません。
問題 16
- 解答例: イ.相対化
- 解説:
- 文脈は、異文化理解のために自文化の価値観を「どうする」必要があるかを問うています。「相対化(そうたいか)」は、ある物事を絶対的なものとしてではなく、他の物事との比較や関係性の中で捉え直すことを意味します。自文化の価値観が唯一絶対のものではないと認識し、他の文化との比較の中でその位置づけを考えることが、異文化理解の前提となります。
- ア.「絶対視(ぜったいし)」は、絶対的なものとみなすこと。相対化の逆です。
- ウ.「普遍化(ふへんか)」は、広く一般的に適用できるようにすること。
- エ.「固定化(こていか)」は、動かないように定めること。
問題 17
- 解答例: イ.論理的な必然性がない、任意であること。
- 解説:
- 「恣意的(しいてき)」は、論理的な必然性や客観的な根拠に基づかず、その時の思いつきや自分勝手な判断で物事を行うさまを表します。気ままである、任意である、という意味合いで使われます。
- 言語学のソシュールの用語として使われる場合、「犬」という音声(シニフィアン)が、動物のイヌ(シニフィエ)を指すことに必然的な結びつきはなく、たまたまその言語体系の中でそのように結びつけられているだけである、という言語の性質を「恣意性」と呼びます。この意味では、イが最も適切です。
- ア、ウ、エは恣意性の意味とは異なります。
問題 18
- 解答例: ある事柄を説明する際に、それと類似した別の事柄との類推によって理解を促す方法。
- 解説:
- 「アナロジー(analogy)」は、類推、類比と訳されます。未知の事柄や複雑な事柄 A を説明・理解するために、既知の類似した事柄 B を引き合いに出し、「A は B と似ている」と考える思考方法です。
- 例えば、原子の構造を説明するために太陽系のモデルを用いたり、心臓の働きをポンプに例えたりするのがアナロジーです。理解を助ける有効な手段ですが、類似点に注目するあまり、相違点を見落とす危険性もあります。
問題 19
- 解答例: ウ.複雑に絡み合い
- 解説:
- 「錯綜(さくそう)」は、物事が複雑に入り混じり、もつれている状態を表します。「情報が錯綜する」「利害が錯綜する」のように使われます。選択肢の中では「複雑に絡み合い」が最も意味が近いです。
- ア「単純化し」、イ「明確化し」は逆の意味。エ「順番に発生し」は時間的な前後関係であり、絡み合う状態とは異なります。
問題 20
- 解答例: イ.限界
- 解説:
- 文脈は、「~を認めつつも、有効性を主張した」という逆接の関係(「つつも」)になっています。有効性を主張する一方で認めざるを得ない、理論のマイナス面や不完全さを示す語が入ると考えられます。「限界(げんかい)」はその理論が適用できる範囲や能力の限度を意味し、文脈に適合します。
- ア「完璧性」やウ「新規性」、エ「普遍性」は理論のプラス面であり、逆接の関係が成り立ちにくくなります。
問題 21
- 解答例: ウ.落とし穴
- 解説:
- 「陥穽(かんせい)」は、文字通りには獣などを捕らえるための落とし穴を意味しますが、比喩的に、人を陥れるための計略や、思わぬ危険、盲点を指す言葉として使われます。「安易な一般化の陥穽」とは、物事を大雑把に一般化してしまうことによって見落としてしまう危険性や誤謬(ごびゅう)を指します。
- ア「利点」、イ「可能性」、エ「解決策」は意味が異なります。
問題 22
- 解答例: ある命題(テーゼ)と、それと矛盾する命題(アンチテーゼ)が対立し、それらを統合してより高次の結論(ジンテーゼ)へ至る思考のプロセス。
- 解説:
- 「弁証法(べんしょうほう)」は、ヘーゲル哲学などで知られる思考様式・論理です。基本的な図式は、「正(テーゼ)→反(アンチテーゼ)→合(ジンテーゼ)」という対立と統合による発展のプロセスです。
- 例えば、「個人主義(正)」と「全体主義(反)」が対立し、両者の良い面を取り入れて「個人の自由と共同体の調和(合)」を目指す、といった考え方が弁証法的な発展として説明されることがあります。歴史や思考が、矛盾や対立を乗り越えることによって進歩していく、というダイナミックな捉え方をします。
問題 23
- 解答例: エ.害悪
- 解説:
- 「弊害(へいがい)」は、ある事柄に伴って生じる、良くない影響や害のことを指します。「害悪(がいあく)」も、害になること、悪いことを意味し、弊害と非常に近い意味で使われます。
- ア「恩恵(おんけい)」、イ「利点(りてん)」はプラスの影響であり、対義語です。ウ「課題(かだい)」は解決すべき問題点を指しますが、弊害や害悪ほど直接的な「害」のニュアンスは強くありません。
問題 24
- 解答例: イ.翻案
- 解説:
- 文脈は、古典文学を「現代語に」直して読者に届けた、という状況です。
- ア「翻訳(ほんやく)」は、ある言語で書かれたものを別の言語に移し替えることです。古典から現代語への場合は翻訳とは少し異なります。
- イ「翻案(ほんあん)」は、元の作品の筋や内容を活かしながら、時代設定や登場人物などを変えて、新しい作品として作り直すことです。古典文学を現代の読者向けに分かりやすく書き直す場合、「翻案」が適切なことがあります。(ただし、単に現代語訳するだけなら「現代語訳」という言葉が最も正確です。)選択肢の中では「翻案」が比較的近いですが、文脈によっては「現代語訳」が最適な場合もあります。この問題では、選択肢から選ぶなら「翻案」が最も可能性が高いですが、設問としてやや曖昧さが残ります。
- ウ「引用(いんよう)」は、他人の文章などをそのまま引いてくること。
- エ「注釈(ちゅうしゃく)」は、語句の意味などを説明すること。
問題 25
- 解答例: 本来の現実から離れ、特定の立場や利益のために偏った見方や考え方を正当化する虚偽意識。
- 解説:
- 「イデオロギー(ideology)」は、元々は特定の社会集団や階級に共有される、政治的・社会的な思想、信条、価値観の体系を指す中立的な言葉でした。
- しかし、マルクス主義などの影響で、支配階級が自らの支配を正当化するために人々(被支配階級)に植え付ける、現実を歪めた偏見や虚偽の意識(虚偽意識)といった否定的なニュアンスで使われることも多くなりました。この意味合いでは、イデオロギーは客観的な現実認識を妨げるものとして批判的に捉えられます。
問題 26
- 解答例: イ.多様的
- 解説:
- 「画一的(かくいつてき)」は、何もかもが一様で、個性や変化がないさまを表します。「画一的な教育」「画一的な都市景観」のように使われます。
- その対義語としては、様々な種類や性質のものが存在することを意味する「多様的(たようてき)」が最も適切です。「多様な価値観」「生物多様性」のように使われます。
- ア.「個別的(こべつてき)」は、一つ一つ別々であるさま。画一的の対義語になりえますが、「多様的」の方がより一般的な対比関係を示します。
- ウ「先進的」、エ「伝統的」は異なる観点からの評価です。
問題 27
- 解答例: イ.理由・根拠
- 解説:
- 「所以(ゆえん)」は、「~するところのもの」という意味から転じて、「理由」「わけ」「根拠」を意味する名詞として使われます。「彼が信頼される所以」「この結論に至った所以」のように使われます。
- ア「結果」、ウ「目的」、エ「方法」は意味が異なります。
問題 28
- 解答例: ア.潜在的
- 解説:
- 文脈は、複雑な現象の背後にある「どのような」法則性を見出すか、を問うています。「潜在的(せんざいてき)」は、表面には現れずに内部に隠れて存在しているさまを表します。現象の背後に隠れている法則性、という意味で文脈に合います。「潜在的な能力」「潜在的なリスク」のように使われます。
- イ.「偶発的(ぐうはつてき)」は、たまたま起こるさま。法則性とは逆の概念です。
- ウ.「多元的(たげんてき)」は、根源や要素が複数あるさま。
- エ.「不可避的(ふかひてき)」は、避けることができないさま。
問題 29
- 解答例: ある事柄(A)を、それとは別の類似した事柄(B)を用いて表現することで、Aの特徴や本質を分かりやすく、あるいは生き生きと伝える機能。
- 解説:
- 「メタファー(metaphor)」は、隠喩(いんゆ)と訳され、比喩表現の一種です。「AはBのようだ」という形をとる直喩(シミリ)とは異なり、「AはBだ」という形で、A(本題)をB(比喩)で直接表現します。
- 「人生は旅である」では、「人生」(A)を「旅」(B)という別の概念で表現することで、「人生には様々な出来事や出会いがあり、目的地に向かって進んでいくものだ」といった含意を読者に伝え、人生という抽象的な概念の理解を助ける機能を持っています。
問題 30
- 解答例: エ.対象化し
- 解説:
- 「客観視(きゃっかんし)」は、自分自身や自分の置かれた状況などを、主観や感情を交えずに、あたかも外部の対象物であるかのように冷静に観察・分析することを意味します。「対象化(たいしょうか)」も、あるものを自己から切り離し、認識や操作の対象として捉えることを意味し、「客観視」と非常に近い意味合いで使われます。
- ア「肯定し」は認めること、イ「主観的に捉え」は客観視の逆、ウ「感情的に反発し」は冷静さとは逆です。
第二部:漢字の読み・書き
問題 31
- 解答例: はんようせい
- 解説: 「汎」は広く行き渡る意。「汎用」は様々な方面に広く用いることができること。「汎用性」はその性質。
問題 32
- 解答例: 隻(または石)量 (※通常は「度量」が使われる。「度量(どりょう)が大きい/小さい」など。設問の意図が「度量」であれば、正解は「度量」。もし別の意図があれば補足が必要。)
- 解説: 「セキリョウ」という熟語は一般的ではありません。「度量(どりょう)」であれば、人の言動を受け入れる心の広さを意味します。「彼は会議で度量のある態度を~」などとなります。もし「石量(せきりょう)」であれば、岩のようにどっしりとした量感を意味するかもしれませんが、一般的ではありません。
問題 33
- 解答例: あつれき
- 解説: 「軋」も「轢」も、きしる、車輪が物を轢く意。転じて、人と人との間の不和や摩擦、利害の衝突を意味します。「軋轢が生じる」など。
問題 34
- 解答例: 悟
- 解説: 「悟(さと)る」は、物事の真の意味や本質を理解すること、迷いから覚めること。
問題 35
- 解答例: ぜいじゃく
- 解説: 「脆」も「弱」も、もろくて弱い意。「脆弱な地盤」「脆弱な体制」など。
問題 36
- 解答例: 蒙
- 解説: 「蒙(こうむ)る」は、恩恵や損害などを身に受けること。「被害を蒙る」「ご指導を蒙る」など。
問題 37
- 解答例: しょうりょう
- 解説: 「渉」は広く歩き回る、広く関係する意。「猟」は狩りをする意。「渉猟」は、書物を広く読みあさること、探求すること。
問題 38
- 解答例: 頓挫
- 解説: 「頓」は急に、とどこおる意。「挫」はくじける意。「頓挫」は、計画や事業などが途中でくじけ、進行が止まること。
問題 39
- 解答例: きだい
- 解説: 「稀」はまれなこと。「代」は時代、世。「稀代」は、世にもまれなこと、非常に珍しいこと。「稀代の英雄」など。
問題 40
- 解答例: 議事
- 解説: 「議事」は会議での話し合いや、その内容。「議事録」は会議の内容を記録したもの。
問題 41
- 解答例: しい
- 解説: 「恣」はほしいままにする意。「恣意」は、自分勝手な考え、気まぐれな判断。(語彙問題17参照)
問題 42
- 解答例: 難破
- 解説: 「難破」は、船舶が暴風雨などにより、沈没したり、航行不能になったりすること。
問題 43
- 解答例: ひっきょう
- 解説: 「畢」はおわる意。「竟」もつきる、おわる意。「畢竟」は、結局、つまるところ、最終的には、という意味の副詞。
問題 44
- 解答例: 改竄
- 解説: 「竄」は文字を直す、勝手に変える意。「改竄」は、文書などの字句を、悪用するためなどに不正に書き直すこと。
問題 45
- 解答例: こくめい
- 解説: 「克」はよく~できる意。「明」は明らか。「克明」は、細かな点まで念を入れて、詳しくてはっきりしているさま。「克明な記録」など。
問題 46
- 解答例: 集中
- 解説: 「集中」は、一か所に集まること、集めること。
問題 47
- 解答例: いちべつ
- 解説: 「瞥」はちらっと見る意。「一瞥」は、ちらっとひと目見ること。「一瞥する」など。
問題 48
- 解答例: 覆
- 解説: 「覆(くつがえ)す」は、ひっくり返すこと、それまでの状態や決定などを根本から変えること。
問題 49
- 解答例: けいしょう
- 解説: 「警」は警戒する、いましめる意。「鐘」はかね。「警鐘」は、危険を知らせ警戒を促すために鳴らす鐘。転じて、危険に対する警告。「警鐘を鳴らす」という慣用句でよく使われる。
問題 50
- 解答例: 容赦
- 解説: 「容」はゆるす意。「赦」もゆるす意。「容赦」は、過ちや罪などをゆるすこと。手加減すること。「容赦なく」は、手加減せずに、厳しく、という意味。
問題 51
- 解答例: ねつぞう
- 解説: 「捏」はこねる、でっちあげる意。「造」はつくる意。「捏造」は、事実でないことを事実であるかのように作り上げること。でっちあげ。
問題 52
- 解答例: 決裂
- 解説: 「決」はきれる、やぶれる意。「裂」もさける、やぶれる意。「決裂」は、話し合いなどがまとまらず、物別れになること。
問題 53
- 解答例: ふめい
- 解説: 「不明」は、①明らかでないこと、②見識や能力が足りないこと、を意味します。この文脈では②の意味で、自分の至らなさを指しています。
問題 54
- 解答例: 変遷
- 解説: 「変」はかわること。「遷」もうつること、かわること。「変遷」は、時間とともに物事の状態が移り変わっていくこと。「時代の変遷」など。
問題 55
- 解答例: こそく
- 解説: 「姑」はしばらく、かりそめの意。「息」はいきる、やすむ意。「姑息」は、本来は「一時しのぎ」「その場のがれ」を意味しますが、現在では一般的に「卑怯なさま」「正々堂々としていないさま」という意味で使われることが多いです。後者の意味で使われることが多いですが、本来の意味も覚えておく必要があります。
問題 56
- 解答例: 嘱望
- 解説: 「嘱」は頼む、期待する意。「望」はのぞむ意。「嘱望」は、将来に大きな期待をかけること。「将来を嘱望される」という形でよく使われる。
問題 57
- 解答例: かくしつ
- 解説: 「確」はかたい、しっかりした意(ここでは「石」が隠れているとも)。「執」はとらわれる、こだわり。「確執」は、互いに自分の意見を強く主張して譲らないことから生じる、不和や争い。
問題 58
- 解答例: 魅了
- 解説: 「魅」は人の心をひきつける意。「了」は終わる、すっかり~する意。「魅了」は、人の心をすっかりひきつけて夢中にさせること。
問題 59
- 解答例: ふんきゅう
- 解説: 「紛」はみだれる、もつれる意。「糾」もあざなう、もつれる意。「紛糾」は、意見や主張などがもつれて、物事がまとまらなくなること。
問題 60
- 解答例: 補塡 (塡は土へんに真)
- 解説: 「補」はおぎなう意。「塡」はうめる、おぎなう意。「補塡」は、不足や欠損を補い埋めること。「赤字を補塡する」など。(※「補填」と書かれることも多いですが、本来は「補塡」が正しい表記です。)
第三部:総合問題
問題 61
- 解答例: イ.波及
- 解説:
- 文脈は、西洋思想が世界的に「広がった」ことを示しています。
- ア「吹及」という語はありません。
- イ「波及(はきゅう)」は、波が広がるように、影響や効果が次々と同じような形で広がっていくことを意味し、文脈に合います。「思想が波及する」のように使います。
- ウ「普及(ふきゅう)」は、広く一般に行き渡ることを意味します。近い意味ですが、「波及」の方が影響が広がっていくプロセスをより動的に捉えるニュアンスがあります。思想や価値観の広がりには「波及」が使われることも多いです。
- エ「不朽(ふきゅう)」は、朽ちないこと、長く後世に残ること。「不朽の名作」など。
問題 62
- 解答例: 誤:「的を得た」 → 正:「的を射た(まとをいた)」
- 解説:
- 「的を得る」は慣用句として誤用されやすい表現です。正しくは「的を射る」で、要点や核心を的確に捉えている、という意味です。「当を得る(とうをえる)」も、道理にかなっている、適切である、という意味で似た状況で使えますが、「的を射る」がより直接的に「要点を突いている」ニュアンスです。
問題 63
- 解答例: ウ.鏡
- 解説:
- 「~を鏡とする」という慣用表現があり、過去の出来事や他者の例などを、自分の行動や判断の参考にしたり、反省の材料にしたりすることを意味します。歴史を教訓として未来に活かす、という文脈に最も適合します。
- ア「糧(かて)」は、食料、転じて活動の源となるもの。「心の糧」など。
- イ「盾(たて)」は、防御の武具、転じて何かを守るためのもの。「矛盾」の語源。
- エ「礎(いしずえ)」は、建物の土台、転じて物事の基礎。「平和の礎」など。
問題 64
- 解答例: 分析
- 解説: 文脈から、現状を細かく分けて調べ、要素や構造を明らかにすることが求められていると考えられます。「分析」が適切です。
問題 65
- 解答例: 指摘:「煮詰まっていない」 → 修正:「煮詰まっていない」を「練られていない」「詰められていない」などに修正するか、文脈によっては「議論が煮詰まっていない」のように使う。
- 解説:
- 「煮詰まる」は、本来、議論や考えなどが十分に練られ、結論が出る段階に近づくことを意味します。(例:「議論が煮詰まってきた」)
- しかし、近年、「行き詰まる」「考えが進まない」という、本来とは逆の意味で誤用されることが非常に多くなっています。
- 問題文の「煮詰まっていない部分が多い」は、後者の誤用に基づいている可能性が高いです。もし「十分に練られていない」という意味で使っているなら、「練られていない」「詰められていない」「検討が不十分な」などに直すのが適切です。もし「議論が進んでいない」という意味なら、「議論が煮詰まっていない」のように使うことも考えられますが、誤解を招きやすい表現です。
問題 66
- 解答例: イ.顕著
- 解説:
- 文脈は、情報技術の「どのような」進歩によって社会が変容したかを問うています。「顕著(けんちょ)」は、際立って目立つさま、はっきり分かるさまを表し、「顕著な進歩」は文脈に合います。
- ア「脆弱(ぜいじゃく)」はもろくて弱いさま。
- ウ「姑息(こそく)」は一時しのぎ、または卑怯なさま。
- エ「錯綜(さくそう)」は複雑に入り組むさま。
問題 67
- 解答例: (1)感心 (2)関心
- 解説:
- (1)「感心(かんしん)」は、優れた技量や行い、考えなどに心を動かされ、立派だと思うこと。
- (2)「関心(かんしん)」は、物事に興味を持ち、注意を向けること。
問題 68
- 解答例: 誤:「羽目にはならない」 → 正:「(秘密を漏らす)ようなことはない」または「(秘密を漏らす)心配はない」など。(「羽目になる」は悪い結果になる意)
- 解説:
- 「羽目(はめ)になる」は、好ましくない状況や結果に陥ることを意味します。(例:「遅刻して、ひどい羽目になった」)
- 問題文では、「秘密を漏らす」という好ましくない事態が「起こらないだろう」と言いたいので、「~ような羽目にはならない」という使い方は不自然です。「~ようなことはないだろう」「~心配はないだろう」などとするのが適切です。あるいは、「彼は口が堅いので、秘密を漏らすような【へま】はしないだろう」のように「へま」を使うことも考えられます。
問題 69
- 解答例: ウ.助長
- 解説:
- 文脈は、グローバル資本主義が経済格差を「どうする」傾向があるかを問うています。「助長(じょちょう)」は、ある傾向や望ましくない事態を、さらに強める、勢いづかせることを意味します。「格差を助長する」はよく使われる表現であり、文脈に適合します。
- ア「是正(ぜせい)」は、悪い点を改め正すこと。
- イ「隠蔽(いんぺい)」は、都合の悪いことを隠すこと。
- エ「抑制(よくせい)」は、勢いを抑えとどめること。助長の対義語に近い。
問題 70
- 解答例: (1)帰省 (2)規制
- 解説:
- (1)「帰省(きせい)」は、休暇などで一時的に故郷へ帰ること。
- (2)「規制(きせい)」は、規則によって物事を制限したり、取り締まったりすること。
問題 71
- 解答例: 指摘:「役不足」 → 修正:「力不足(ちからぶそく)」または「力量不足(りきりょうぶそく)」
- 解説:
- 「役不足(やくぶそく)」は、その人の力量に対して、与えられた役目や地位が軽すぎること、不相応に軽い役であることを意味します。(例:「彼ほどの人物にこの仕事は役不足だ」)
- 問題文のように、「その人の力量では、その役目を果たすには不十分だ」という意味で使うのは誤用です。この場合は、「力不足」「力量不足」などを用いるのが適切です。
問題 72
- 解答例: ウ.示唆
- 解説:
- 文脈は、遺跡の遺物が当時の生活様式を「どうする」かを問うています。「示唆(しさ)」は、それとなく手がかりを与える、暗示することを意味します。遺物が当時の生活を直接語るわけではありませんが、それらを手がかりに生活様式を推測できる、という意味で「示唆する」が適切です。
- ア「捏造(ねつぞう)」はでっちあげること。
- イ「隠蔽(いんぺい)」は隠すこと。
- エ「否定(ひてい)」は打ち消すこと。
問題 73
- 解答例: (1)称 (2)証 (3)証
- 解説:
- (1)「称賛(しょうさん)」は、褒めたたえること。「称」はたたえる意。
- (2)「証明(しょうめい)」は、ある事柄が真実であることを証拠を挙げて明らかにすること。「証」はあかし、あきらかにする意。
- (3)「証拠(しょうこ)」は、ある事柄の真偽を明らかにするための根拠となるもの。「証」はあかし。
問題 74
- 解答例: 誤:「嘘から出た実(うそからでたまこと)」 → 正:「瓢箪から駒(ひょうたんからこま)」
- 解説:
- 「嘘から出た実」は、初めは嘘だったことが、偶然に事実となってしまうことを意味します。
- 「瓢箪から駒」は、思いもよらないこと、意外なことが起こること、また、冗談半分で言ったことが実現してしまうことを意味します。
- 問題文の「彼の話はいつも大げさで」という前置きからすると、「(大げさな話や冗談のような話が)思いがけず本当のことになる」という意味合いで使われている可能性が高く、その場合は「瓢箪から駒」の方がより自然です。ただし、「大げさな嘘が現実になった」と解釈すれば「嘘から出た実」も完全に誤りとは言い切れないかもしれませんが、一般的には「瓢箪から駒」が想起されやすい文脈です。
問題 75
- 解答例: ア.解明
- 解説:
- 文脈は、科学が自然界の法則性を「どうしようと」試みてきたかを問うています。「解明(かいめい)」は、不明な点や疑問点を解きほぐし、明らかにすることを意味し、科学的な探求の目的を表すのに最も適切です。
- イ「創作(そうさく)」は新しく作り出すこと。
- ウ「隠蔽(いんぺい)」は隠すこと。
- エ「踏襲(とうしゅう)」は受け継ぐこと。