構造分析 応用演習:多様なテクストへの適用(演習編)

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目次

問題セット 1(評論:序論・本論・結論型に近い構造)

問題 1

  • 解答例: AI技術の進化がもたらす雇用・プライバシー・倫理等の課題に対処し、人間との共生社会を築くためには、技術開発と共に社会的ルール整備や倫理的議論の深化が急務である。(78字)
  • 解説: 結論である【5】段落の内容を中心に、本論で挙げられた具体的な課題(雇用、プライバシー、倫理)にも簡潔に触れながら、筆者の最終的な主張(ルール作りと議論の深化が急務)をまとめることが求められます。字数制限内で要点を過不足なく盛り込む必要があります。

問題 2

  • 解答例: 序論として、現代社会におけるAI技術の恩恵と、それによって生じる新たな課題(雇用、プライバシー、倫理)を提示し、本稿で論じるテーマ(留意すべき課題)を導入する役割を果たしている。
  • 解説: 【1】段落は、一般的に認識されているAIのメリットを述べつつ、「しかし」以降で本論で扱う課題を列挙し、問題提起を行っています。文章全体の導入部として、テーマ設定と議論の方向性を示しています。

問題 3

  • 解答例:
    1. 雇用喪失(特に定型的業務の代替と格差拡大の可能性)
    2. プライバシー侵害(データ収集・利用、監視社会化の懸念)
    3. 倫理的ジレンマ(AIの自律判断に伴う責任問題、差別助長の危険性)
  • 解説: 本論である【2】、【3】、【4】段落でそれぞれ展開されている中心的な課題を抜き出します。単語だけでなく、どのような問題なのかが分かるように補足するとより良いでしょう。

問題 4

  • 解答例: (ツリー構造風の例) [AI技術の社会実装における課題(本論)] / | \ [①雇用問題]【2】 [②プライバシー問題]【3】 [③倫理問題]【4】 ↓ ↓ ↓ [・定型業務代替 [・データ収集・利用 [・自律判断の責任 ・スキル格差拡大] ・監視社会化懸念] ・差別助長リスク] (→ 各課題が結論【5】で述べられる対処法の必要性に繋がる)
  • 解説: 本論である【2】~【4】段落は、AIがもたらす課題を「雇用」「プライバシー」「倫理」という三つの側面から並列的に(「しかし」「また」「さらに」などの接続詞で区切りながら)論じています。それぞれの課題について、具体的な懸念事項が付随しています。この並列的な論点提示と、それぞれの具体的内容を示す階層構造を図式化することがポイントです。ツリー構造や箇条書きによるアウトライン形式などが考えられます。最終的にこれらの課題が結論【5】で述べられる対処法の必要性に繋がることを意識すると、全体の流れがより明確になります。(形式は自由なので、要素間の関係性が分かれば他の形式でも可)

問題セット 2(説明文:分類・列挙型を含む構造)

問題 5

  • 解答例: 傾聴(アクティブ・リスニング)、共感的傾聴、批判的傾聴(クリティカル・リスニング)
  • 解説: 【2】~【4】段落で、「第一に」「第二に」「第三に」というマーカーを用いて、三種類の「聞く」技術が順に説明されています。

問題 6

  • 解答例:| 聞く技術の種類 | 主な目的・特徴 | 重要な点・求められる態度など || ————– | ——————————————————————————— | ———————————————————————————————- || 傾聴 | (相手が話しやすい雰囲気を作り、話の内容や意図を注意深く理解すること) | (相槌・うなずき・質問、非言語メッセージへの注意、相手への関心・敬意、話を遮らない) || 共感的傾聴 | (相手の感情に寄り添い、その気持ちを受け止め、共感していることを伝えること) | (気持ちの受容、共感の言語的・態度的表現(安易な同情とは異なる)、信頼関係の深化) || 批判的傾聴 | (話の内容を客観的に分析し、その論理性・妥当性・根拠などを吟味・評価すること) | (感情に流されない、事実と意見の区別、多角的視点、客観的分析・評価、ビジネスや議論での必要性) |
  • 解説: 各段落(【2】~【4】)から、それぞれの技術の定義、目的、具体的な方法、求められる態度などを読み取り、表の項目に対応するように整理します。

問題 7

  • 解答例: エ.分類・列挙型の構成で、「聞く」技術を種類別に説明している。
  • 解説: 【1】段落で「聞く」技術の重要性と種類があることを述べた後、【2】~【4】段落で「第一に」「第二に」「第三に」と三つの種類を具体的に説明・列挙し、【5】段落でそれらの使い分けの重要性を述べてまとめています。これは典型的な分類・列挙型の構成です。他の選択肢(三段構成、起承転結、問題解決)には当てはまりません。

問題 8

  • 解答例:
    1. コミュニケーションの目的(例:相手との関係構築か、情報の正確な評価か、感情的なサポートかなど)
    2. コミュニケーションの状況や場面(例:日常会話か、ビジネス交渉か、学術議論か、悩み相談かなど) (他の可能性:相手との関係性、相手の状態、時間的制約など)
  • 解説: 【5】段落では「目的や状況に応じて使い分けることが肝要」と述べられています。また、【2】~【4】で説明された各技術の特徴からも、どのような目的(関係構築、共感、分析評価など)で、どのような場面(日常、ビジネス、議論など)なのかによって、適切な聞き方が異なってくると考えられます。これらの要素を具体的に挙げることが求められます。

問題セット 3(随筆:構造が捉えにくい文章)

問題 9

  • 解答例: 雨、時間(過去・現在・未来)、記憶(アルバム、写真)
  • 解説: 文章全体を通して、「雨」の情景が描かれ、「時間」の経過やその意味合いが意識され、「アルバム」や「写真」をきっかけとした「記憶」の想起が中心的な要素となっています。その他、「祖父」「友人」「紫陽花」なども繰り返し登場するモチーフですが、より抽象的で全体を貫く要素として上記3つが挙げられます。

問題 10

  • 解答例:
    • 【1】段落:現在の情景(雨、紫陽花)と、古いアルバムを開くきっかけ。
    • 【2】段落:過去の記憶①(幼い自分と祖父の写真)、幸福感と当時の時間感覚の回想。
    • 【3】段落:過去の記憶②(学生時代の友人との写真)、若さと希望、時間経過による変化と切なさの回想。
    • 【4】段落:再び現在の情景(雨、紫陽花)に戻り、記憶と時間の意味について内省し、変わらないものの存在を示唆。
  • 解説: 各段落がどのような情景や記憶、思索を扱っているかを、キーワードを含めながら簡潔にまとめます。時間軸の移動(現在→過去→現在)と、描写対象(情景→写真→情景)、そして筆者の心情の変化(回想→切なさ→内省)を捉えることがポイントです。

問題 11

  • 解答例: 明確な論理展開や典型的な構成類型(序論・本論・結論など)は見られない。むしろ、雨の日の情景描写をきっかけに、アルバムの写真を通して過去の記憶(幼少期→学生時代)を辿り、最後に再び現在の情景と内面的な思索に戻るという、自由な連想や意識の流れ、時間的な推移(現在→過去→現在)に基づいた構成になっていると考えられる。
  • 解説: 随筆は、評論のように厳密な論理構成を持たないことが多いです。この文章も、雨の日の情景描写から始まり、アルバムを媒体とした過去への旅があり、再び現在の思索へと戻る、という自然な意識の流れに沿った構成と捉えるのが適切です。起承転結とも少し異なり、明確な「転」があるわけではありません。論理的な繋がりよりも、情景、記憶、心情の連なりによって構成されています。

問題 12

  • 解答例: 雨の日に過去を回想し、時間の経過とその残酷さ、変化を感じつつも、変わらない記憶や大切なものの存在に静かに思いを馳せる、内省的な心情。(59字)
  • 解説: 文章全体の流れ(過去への回想と現在の思索)と、特に【4】段落の「時間は流れ、多くのものを変えていく。しかし、変わらないもの、変えたくないものも、確かに存在するのかもしれない。」という記述から、時間の流れと変化に対する認識、そしてその中で変わらないものの価値を見出そうとする筆者の内省的な心情を読み取ることが中心となります。

問題セット 4:複数テクストの比較構造分析

問題 13

  • 解答例:
    • 観点1:特定の対象や集団への偏り・排他性を生む点。(文章Eでは身近な人や内集団への共感、文章FではSNS上の閉じた繋がりによる排他性)(59字)
    • 観点2:より大きな視点や多様な価値観からの乖離・分断を助長する点。(文章Eでは公正さの欠如、文章Fではアルゴリズムによる視野狭隘化と社会分断)(60字)
  • 解説:
    • 文章Eでは、共感が身近な対象や内集団に偏りやすく、結果として公正さを欠いたり(【E-2】)、外集団への排他性を生んだりする(【E-3】)という問題点が指摘されています。
    • 文章Fでは、SNS上の繋がりが表層化し(【F-2】)、自己演出と承認欲求に偏り(【F-3】)、アルゴリズムによって視野が狭まり社会分断を招く(【F-4】)という問題点が指摘されています。
    • これらの問題点の中から、両者に共通する要素として、「特定の対象への偏り・排他性」と「全体性・多様性からの乖離・分断」という二つの観点を抽出しまとめます。

問題 14

  • 解答例: 共通して、感情や安易な繋がりに流されず、現状を批判的に認識し、主体的に関与・制御していく必要性を説く。相違点として、Eは共感を理性や熟慮で補完・制御する知性の重要性を強調する一方、Fはオンラインに偏らず現実の関係性を重視し、多様な情報に触れる努力を強調する。(119字)
  • 解説:
    • 共通点: 文章E(【E-4】)は共感に盲目的に依存せず理性で制御することを、文章F(【F-5】)はSNSの負の側面を自覚し意識的に距離を取ることを提言しており、どちらも現状(共感/SNSの繋がり)を批判的に捉え、主体的な制御や関与を求めている点で共通しています。
    • 相違点: 文章Eの強調点は「理性・熟慮・知性」による感情(共感)のコントロールであるのに対し、文章Fの強調点は「現実世界での関係構築」や「多様な情報へのアクセス」といった具体的な行動によるオンライン空間への向き合い方の修正にあります。このニュアンスの違いを明確にします。

問題 15

  • 解答例: 文章Eは、「共感」が持つとされる一般的な肯定論(【E-1】)に対し、「しかし」「さらに」を用いて負の側面(偏り【E-2】、対立助長【E-3】)を段階的に追加・展開し、その危険性を論証する。一方、文章Fは、SNSの肯定論(【F-1】)に対し、「しかし」以降で「まず」「さらに」「また」を用いて、繋がり(【F-2】)、心理(【F-3】)、情報空間(【F-4】)という複数の側面から問題点を分類・列挙して多角的に論証している。
  • 解説:
    • 文章Eは、共感の肯定的な側面を前提としつつ、その「影」となる部分を「負の側面」「さらに(別の)危険性」という形で、論点を深掘りしていく構造をとっています。
    • 文章Fは、SNSの肯定的な側面に対し、その問題点を「繋がり自体の質」「利用者の心理」「情報環境」という異なるカテゴリーに分類し、それぞれを並列的に挙げていく構造をとっています。
    • このように、両者の本論部分における論点の提示の仕方(段階的展開 vs 分類・列挙)と、それによる論証構造の違いを具体的に指摘することが求められます。

問題 16

  • 解答例: 現代社会では、共感が時に偏見を助長し(文章E)、SNS上の繋がりが表層化・固定化しやすい(文章F)。感情や雰囲気に流されず、物事を批判的に捉え(Eの知性)、オンラインと現実のバランスを取り、多様な視点に開かれ続けようとする主体的な姿勢(Fの姿勢)は、複雑化する社会の中で他者と真に理解し合い、分断を乗り越えてより良い関係性や社会を築く上で不可欠な意義を持つと考える。(195字)
  • 解説: まず、両文章が指摘する現代社会の問題点(共感の偏り、SNSの弊害)を簡潔に踏まえます。その上で、文章Eが求める「知性」(理性、バランス感覚)と文章Fが求める「姿勢」(主体性、現実重視、多様性希求)が、これらの問題に対処し、より良い社会(他者理解、分断克服、豊かな関係性)を築くためにどのように重要なのかを、自分の言葉で論理的に結びつけて述べます。両者の提言を統合し、現代社会における普遍的な意義へと繋げることがポイントです。単なる要約に留まらず、設問の要求である「あなたの考え」を、本文の内容を踏まえつつ示す必要があります。
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