【基礎 数学(数学Ⅰ)】Module 10:図形と計量(3) 図形の計量
本モジュールの目的と構成
「図形と計量」を巡る私たちの旅は、このモジュールで、その最終目的地である「計量(measurement)」そのものへと至ります。Module 8では、角度と辺を繋ぐ「三角比」という言語を習得し、Module 9では、その言語をあらゆる三角形に適用するための普遍的な法則、「正弦定理」と「余弦定理」を制定しました。いわば、測量のための道具と言語、そして法則が、今、すべて私たちの手元に揃ったのです。
本モジュールでは、これらの強力なツールキットを総動員し、幾何学の根源的な目標、すなわち**「図形の様々な量を測り尽くす」という課題に挑みます。その対象は、三角形の最も基本的な量である面積から、その内部に潜む内接円や、外部を規定する外接円の半径、さらには角の二等分線の長さ**といった、より細やかな要素へと広がっていきます。
私たちは、単に公式を一つ一つ学んでいくだけではありません。S = (1/2)bc sinA
という三角比を用いた面積公式を皮切りに、3辺の長さだけから面積を算出するヘロンの公式、そして面積と内接円・外接円の半径とを結びつける美しい関係式を、互いに関連し合う一つの体系として構築していきます。さらに、円に内接する四角形や、空間図形へと視野を広げ、これまで平面上で培ってきた計量の技術が、より複雑な図形や高次元の空間においても普遍的に通用する、強力な武器であることを実感するでしょう。
このモジュールの最終目標は、皆さんが、与えられた幾何学的な対象を前にして、その構造を冷静に分析し、解き明かすべき量を特定し、そして手持ちの道具(定理や公式)の中から最適なものを戦略的に選択・組み合わせて、あらゆる未知の量を測り尽くす**「幾何学のマスター・サーベイヤー(熟達した測量士)」**となることです。そのために、以下のステップを順に探求していきます。
- 三角比による面積(三角比を用いた三角形の面積公式): 三角形の面積が「2辺とその間の角のサイン」で計算できるという、最も基本的で強力な面積公式を導出します。
- 3辺による面積(ヘロンの公式): 角度の情報が一切なく、3辺の長さだけが分かっている場合に、純粋に代数的な計算だけで面積を求める、魔法のようなヘロンの公式を学びます。
- 内側から測る(内接円の半径と面積の関係): 三角形の面積と、その内部にぴったりと接する「内接円」の半径との間に成り立つ、
S=rs
というシンプルで美しい関係式を導きます。 - 外側から測る(外接円の半径と面積の関係): 三角形の面積と、その頂点すべてを通る「外接円」の半径との間に成り立つ、
S=abc/(4R)
という、正弦定理と連携した関係式を探求します。 - 三角形の存在証明(三角形の成立条件): そもそも3つの線分が三角形を形成するための、
a+b>c
という、基本的でありながら見過ごされがちな絶対条件を再確認します。 - 角を二分する線の長さ(角の二等分線の長さの計算): 三角形の角を二等分する線分の長さを、面積を利用した巧妙なアプローチで計算する方法を学びます。
- 円と四角形の共演(円に内接する四角形の性質と面積): 円に内接するという特殊な制約を持つ四角形の性質(対角の和が180°)を利用して、その面積を求める問題に挑みます。
- 円と四角形の美しき定理(トレミーの定理): 円に内接する四角形の4辺と2本の対角線の間に成り立つ、驚くほど美しい関係式「トレミーの定理」とその応用を探ります。
- 3次元の計量(空間図形における計算): これまで平面上で培ってきた知識を総動員し、3次元の空間図形から適切な三角形を切り出して、その長さ、角度、体積などを計算する、統合的な応用力を養います。
- 知識の総力戦(複数の定理を統合して解く幾何問題): 最終課題として、単一の定理だけでは解けない、正弦定理、余弦定理、面積公式などを戦略的に組み合わせて解く、複雑な幾何問題に挑戦します。
それでは、図形の世界のあらゆる量を測り尽くす、計量の技術の探求を始めましょう。
1. 三角比を用いた三角形の面積公式
三角形の面積を求める公式として、私たちが小学校以来、最も慣れ親しんできたのは、
S = (1/2) × (底辺) × (高さ)
という、あまりにも有名な公式です。この公式は、シンプルで強力ですが、一つ弱点があります。それは、面積を求めるために「高さ」を知る必要がある、という点です。
しかし、実際の測量などの場面では、三角形の「高さ」を直接測ることは、しばしば困難です。一方で、「2つの辺の長さ」と、その「間の角」の大きさは、比較的容易に測ることができます。
このセクションで学ぶ、三角比を用いた面積公式は、この「高さ」という媒介変数を三角比によって消去し、**「2辺とその間の角」**という、より実用的な情報だけから、直接面積を計算することを可能にする、画期的なものです。
1.1. 公式の導出
三角形ABCの面積を S とします。辺BC (a) を底辺と考えると、その高さ h は、頂点Aから辺BC(またはその延長)に下ろした垂線の長さとなります。
S = (1/2)ah
この h を、私たちが知っている辺の長さ b or c と角の大きさ B or C で表すことができれば、目標は達成です。
頂点A, B, Cと、そこから下ろした垂線の足Hの位置関係は、角Bや角Cが鋭角か、直角か、鈍角かによって変わりますが、どの場合でも同じ公式が導かれることを見ていきましょう。
1.1.1. 角Bが鋭角の場合
頂点Aから辺BCに垂線AHを下ろすと、直角三角形ABHができます。
この直角三角形において、
\sin B = \frac{AH}{AB} = \frac{h}{c}
よって、h = c \sin B。
これを面積の公式に代入すると、
S = (1/2) a (c \sin B) = (1/2)ac \sin B
1.1.2. 角Bが直角の場合
B=90° のとき、高さ h は辺ABの長さ c と一致します。h=c。
S = (1/2)ac
一方、\sin B = \sin 90^\circ = 1 なので、
(1/2)ac \sin B = (1/2)ac(1) = (1/2)ac
よって、この場合も S = (1/2)ac \sin B が成り立ちます。
1.1.3. 角Bが鈍角の場合
頂点Aから辺BCの延長に垂線AHを下ろすと、直角三角形ABHができます。
∠ABC=B なので、∠ABH = 180° – B。
この直角三角形において、
\sin(180^\circ – B) = \frac{AH}{AB} = \frac{h}{c}
h = c \sin(180^\circ – B)
ここで、180°-θ の公式 \sin(180^\circ-B) = \sin B を用いると、
h = c \sin B
となり、これは鋭角の場合と全く同じ結果です。
したがって、面積も S = (1/2)ac \sin B となります。
1.2. 三角比を用いた面積公式
以上の考察から、角が鋭角、直角、鈍角のいずれであっても、同じ形の面積公式が成り立つことが証明されました。どの辺を底辺と見るかによって、3つのパターンの公式が得られます。
三角形の面積公式:
三角形ABCの面積 S は、
S = (1/2)bc \sin A
S = (1/2)ca \sin B
S = (1/2)ab \sin C
言葉による記憶:
三角形の面積 = (1/2) \times (一方の辺) \times (もう一方の辺) \times (その2辺の間の角のサイン)
1.3. 実践例
例題 1: 三角形ABCにおいて、b=5, c=6, A=60°
のとき、その面積 S
を求めよ。
- [情報の確認]2辺 b, c と、その間の角 A が与えられている。これは、面積公式を直接使うための、完璧な情報セットである。
- [公式の適用]S = (1/2)bc \sin A
- [計算]S = (1/2) \cdot 5 \cdot 6 \cdot \sin 60^\circS = (1/2) \cdot 30 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}S = 15 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{15\sqrt{3}}{2}
例題 2: a=4, b=5, c=7
である三角形ABCの面積 S
を求めよ。
- [情報の確認]3辺の長さ (SSS) が与えられている。このままでは、面積公式に必要な「角」の情報がない。
- [戦略]まず、余弦定理を使って、どこか一つの角のコサインの値を求める。次に、相互関係式 \sin^2\theta+\cos^2\theta=1 を使って、その角のサインの値を求める。最後に、面積公式に代入する。
- [計算]
- 余弦定理で cosC を求める:\cos C = \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{4^2+5^2-7^2}{2 \cdot 4 \cdot 5} = \frac{16+25-49}{40} = \frac{41-49}{40} = \frac{-8}{40} = -\frac{1}{5}
- sinC を求める:\sin^2 C = 1 – \cos^2 C = 1 – \left(-\frac{1}{5}\right)^2 = 1 – \frac{1}{25} = \frac{24}{25}三角形の内角なので 0° < C < 180° であり、この範囲で \sin C は常に正である。\sin C = \sqrt{\frac{24}{25}} = \frac{\sqrt{24}}{5} = \frac{2\sqrt{6}}{5}
- 面積公式を適用:S = (1/2)ab \sin C = (1/2) \cdot 4 \cdot 5 \cdot \frac{2\sqrt{6}}{5}S = 10 \cdot \frac{2\sqrt{6}}{5} = 4\sqrt{6}
この例題2のプロセスは、次に学ぶ「ヘロンの公式」の証明の、ミニチュア版とも言えるものです。この三角比を用いた面積公式は、三角形の計量における、あらゆる問題の基礎となる、極めて重要なツールです。
2. ヘロンの公式
前セクションの例題2で見たように、「3辺の長さ (SSS)」が与えられた三角形の面積は、
- 余弦定理で
cos
を求め、 \sin^2+\cos^2=1
でsin
を求め、- S=(1/2)ab\sin C で面積を求めるという、3ステップのプロセスで計算することが可能です。
しかし、このプロセスは、計算が煩雑になりがちで、特に係数が複雑な場合には計算ミスを誘発しやすくなります。
古代ギリシャの数学者、アレクサンドリアのヘロンは、この3ステップのプロセスを、一つの美しい公式にまとめ上げました。それが**ヘロンの公式(Heron’s formula)**です。
この公式は、三角形の3辺の長さ a,b,c
だけを用いて、角度の情報を一切経由することなく、直接的に面積を計算することを可能にします。
2.1. ヘロンの公式
ヘロンの公式:
三角形の3辺の長さを a,b,c とし、s = \frac{a+b+c}{2}(半周長)とおくとき、その面積 S は、
\[ S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \]
で与えられる。
s
は semi-perimeter(半周長)の頭文字です。
この公式の形は、一見すると複雑に見えますが、s
, s-a
, s-b
, s-c
という4つの要素の積の平方根という、非常に対称的で美しい構造をしています。
2.2. ヘロンの公式の証明(概要)
この公式の証明は、前述の3ステップの計算を、具体的な数値ではなく、文字 a,b,c
のままで実行する、骨の折れる代数計算の末に得られます。ここでは、その計算の骨子だけを示します。
- 面積公式から出発:S = (1/2)ab\sin CS^2 = (1/4)a^2b^2\sin^2 C\sin^2 C = 1-\cos^2 C = (1-\cos C)(1+\cos C) なので、S^2 = (1/4)a^2b^2(1-\cos C)(1+\cos C)
- 余弦定理を代入:\cos C = \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} を代入する。1-\cos C = 1-\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{2ab-(a^2+b^2-c^2)}{2ab} = \frac{c^2-(a-b)^2}{2ab} = \frac{(c-a+b)(c+a-b)}{2ab}1+\cos C = 1+\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{2ab+a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{(a+b)^2-c^2}{2ab} = \frac{(a+b-c)(a+b+c)}{2ab}
- s を用いて整理:ここで s = (a+b+c)/2、すなわち 2s=a+b+c を使うと、
a+b-c = (a+b+c)-2c = 2s-2c = 2(s-c)
c+a-b = (a+b+c)-2b = 2s-2b = 2(s-b)
- c-a+b = (a+b+c)-2a = 2s-2a = 2(s-a)これらの結果を 1-\cos C, 1+\cos C の式に代入し、さらに S^2 の式に代入して整理すると、S^2 = \frac{1}{4}a^2b^2 \cdot \frac{2(s-b) \cdot 2(s-a)}{2ab} \cdot \frac{2(s-c) \cdot 2s}{2ab}S^2 = s(s-a)(s-b)(s-c)
- 結論:両辺の正の平方根をとると、ヘロンの公式 S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} が得られる。
この証明を自力で完遂する必要はありませんが、この公式が、三角比を用いた面積公式と余弦定理という、二つの基本的な定理の論理的な帰結として導かれるものである、という事実は理解しておくべきです。
2.3. 実践例
例題: a=4, b=5, c=7 である三角形ABCの面積 S を求めよ。
(これは、前セクションで3ステップで解いた問題と同じです)
- s の計算:s = \frac{a+b+c}{2} = \frac{4+5+7}{2} = \frac{16}{2} = 8
s-a
,s-b
,s-c
の計算:s-a = 8-4 = 4
s-b = 8-5 = 3
s-c = 8-7 = 1
- 公式に代入:S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}S = \sqrt{8 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 1}S = \sqrt{96}
- 根号の簡略化:\sqrt{96} = \sqrt{16 \times 6} = 4\sqrt{6}
前セクションの複雑な計算と比べて、いかに機械的で、計算間違いの少ないプロセスであるかが分かるでしょう。
2.4. ヘロンの公式の注意点
- 辺の長さが整数の場合に特に有効: 辺の長さに根号が含まれていると、
s
の計算やその後の積の計算が逆に煩雑になる場合があります。その場合は、3ステップ法の方が楽なこともあります。 - 計算ミスのしやすさ: 手順は機械的ですが、
s
の計算や引き算でミスをしやすいので、慎重な計算が求められます。
ヘロンの公式は、3辺の情報だけで面積という2次元的な量を決定できる、非常に強力なツールです。この公式の存在は、三角形が、その3辺の長さだけで、その形と大きさが(合同を除いて)一意に決定される「剛体」であることを、改めて示唆しています。
3. 内接円の半径と面積の関係
三角形の計量において、その内部に存在する特別な円、すなわち内接円(inscribed circle / incircle)もまた、重要な役割を果たします。内接円とは、三角形の3辺すべてに接する円のことであり、その中心(内心)は、3つの角の二等分線の交点として得られます。
このセクションでは、三角形の面積 S
と、その内接円の半径 r
との間に成り立つ、驚くほどシンプルで美しい関係式を導き、それを用いて内接円の半径を計算する方法を学びます。
3.1. 関係式の導出
この関係式 S=rs
の証明は、非常にエレガントで、図形的な洞察に満ちています。
- 三角形ABCとその内心
I
を考えます。内心I
は、3辺a,b,c
から等しい距離にあり、その距離が内接円の半径r
となります。 - 内心
I
と、3つの頂点A, B, C
をそれぞれ結びます。 - すると、元の三角形ABCは、3つの小さな三角形、
△IBC
,△ICA
,△IAB
に分割されます。 - 元の三角形の面積 S は、この3つの小さな三角形の面積の和に等しい。S = (\text{△IBCの面積}) + (\text{△ICAの面積}) + (\text{△IABの面積})
- それぞれの小さな三角形の面積を計算します。
- △IBC: 底辺を BC=a と見ると、その高さは、内心 I から辺 BC への距離なので、まさしく内接円の半径 r となります。面積 = (1/2) \times a \times r
- △ICA: 同様に、底辺を CA=b と見ると、高さは r。面積 = (1/2) \times b \times r
- △IAB: 同様に、底辺を AB=c と見ると、高さは r。面積 = (1/2) \times c \times r
- これらの和を計算し、共通因数 (1/2)r で括ります。S = (1/2)ar + (1/2)br + (1/2)crS = (1/2)r(a+b+c)
- ここで、ヘロンの公式で用いた半周長 s = (a+b+c)/2 を使うと、a+b+c = 2s となります。S = (1/2)r(2s) = rs
これにより、求める関係式が導かれました。
3.2. 内接円の半径と面積の公式
内接円の半径と面積の関係:
三角形の面積を S、3辺の長さを a,b,c、内接円の半径を r、半周長を s = (a+b+c)/2 とすると、
S = rs
が成り立つ。
この公式を変形すると、内接円の半径 r を求めるための公式が得られます。
r = S/s
3.3. 実践例:内接円の半径の計算
この公式 r=S/s
から分かるように、内接円の半径 r
を求めるための標準的なプロセスは、以下の2ステップとなります。
ステップ 1: まず、三角形の面積 S を求める。
(3辺が分かっているなら、ヘロンの公式が最も効率的)
ステップ 2: 次に、半周長 s を計算し、S を s で割る。
例題: 3辺の長さが a=4, b=5, c=7
である三角形の内接円の半径 r
を求めよ。
- [ステップ1:面積 S の計算]この三角形の面積は、ヘロンの公式のセクションで S = 4\sqrt{6} と計算済みである。(もし計算していなければ、ここからヘロンの公式で S を求める)
s = (4+5+7)/2 = 8
S = \sqrt{8(8-4)(8-5)(8-7)} = \sqrt{8 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 1} = \sqrt{96} = 4\sqrt{6}
- [ステップ2:
r
の計算]- 半周長
s
は、s=8
。 - 公式 r = S/s に代入する。r = \frac{4\sqrt{6}}{8} = \frac{\sqrt{6}}{2}
- 半周長
結論:
内接円の半径は \frac{\sqrt{6}}{2}。
この S=rs
という関係式は、三角形の「面積」という2次元的な量と、「内接円の半径」という1次元的な量を、非常にシンプルな形で結びつける、強力なツールです。この公式は、一見すると複雑な図形問題の内部に、簡潔な解法への道筋を照らし出す、美しい灯火のような存在と言えるでしょう。
4. 外接円の半径と面積の関係
内接円が三角形の「内側」の計量を担うのに対し、三角形の「外側」のスケールを規定するのが、外接円でした。Module 9の冒頭で学んだように、外接円の半径 R
は、正弦定理 a/\sin A = 2R
を通じて、三角形の辺や角と深く結びついています。
このセクションでは、三角形の面積 S
と、この外接円の半径 R
との間に成り立つ、もう一つの重要な関係式を導き、それを用いて面積や半径を求める方法を探求します。
4.1. 関係式の導出
この関係式の証明は、これまで学んできた二つの基本的な公式、すなわち三角比を用いた面積公式と正弦定理とを、巧みに組み合わせることで得られます。
- 面積公式から出発:S = (1/2)bc \sin A
- 正弦定理による sin A の置き換え:正弦定理 \frac{a}{\sin A} = 2R を、\sin A について解くと、\sin A = \frac{a}{2R}となる。
- 代入と整理:この \sin A の式を、面積の公式に代入する。S = (1/2)bc \left(\frac{a}{2R}\right)S = \frac{abc}{4R}
これで、求める関係式が導かれました。非常にシンプルで、直接的な証明です。
4.2. 外接円の半径と面積の公式
外接円の半径と面積の関係:
三角形の面積を S、3辺の長さを a,b,c、外接円の半径を R とすると、
S = \frac{abc}{4R}
が成り立つ。
この公式は、必要に応じて、R について解いた以下の形で使われることも多いです。
R = \frac{abc}{4S}
4.3. 実践例:外接円の半径の計算
この公式 R=abc/(4S)
から分かるように、外接円の半径 R
を、3辺の長さから直接求めるためのプロセスは、以下の2ステップとなります。
ステップ 1: まず、三角形の面積 S を求める。
(3辺が分かっているなら、ヘロンの公式が最も効率的)
ステップ 2: 次に、3辺の積 abc を計算し、4S で割る。
例題: 3辺の長さが a=4, b=5, c=7
である三角形の外接円の半径 R
を求めよ。
- [ステップ1:面積 S の計算]この三角形の面積は、ヘロンの公式のセクションで S = 4\sqrt{6} と計算済みである。
- [ステップ2:
R
の計算]- 3辺の積
abc = 4 \cdot 5 \cdot 7 = 140
。 - 公式 R = \frac{abc}{4S} に代入する。R = \frac{140}{4(4\sqrt{6})} = \frac{140}{16\sqrt{6}}
- 約分と有理化を行う。R = \frac{35}{4\sqrt{6}} = \frac{35\sqrt{6}}{4 \cdot 6} = \frac{35\sqrt{6}}{24}
- 3辺の積
結論:
外接円の半径は \frac{35\sqrt{6}}{24}。
4.4. 4つの量の関係性のまとめ
私たちは、三角形の基本的な4つの計量、すなわち面積 S
、3辺 a,b,c
、内接円の半径 r
、外接円の半径 R
を結びつける、以下の4つの中心的な公式を手に入れました。
S = (1/2)ab\sin C
(面積、2辺、1角)S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
(面積、3辺)S = rs
(面積、3辺、内接円半径)S = abc/(4R)
(面積、3辺、外接円半径)
これらの公式は、三角形という一つの図形が持つ、様々な側面(面積、辺、内接円、外接円)が、互いにどのように関連し合っているのかを示す、美しい関係性のネットワークを形成しています。
複雑な幾何問題は、しばしば、これらの関係式を複数組み合わせ、未知の量を連立方程式のように解き明かしていくことで、その解答へとたどり着くのです。
5. 三角形の成立条件
私たちはこれまで、a,b,c
を3辺とする三角形が存在することを前提として、その面積や内接円・外接円の半径などを計算してきました。しかし、そもそも、与えられた3つの線分 a,b,c
が、常に三角形を形成できるとは限りません。
例えば、長さが 1, 2, 10
の3本の棒を考えてみてください。最も長い棒 10
に対して、残りの2本の棒 1
と 2
は、あまりにも短すぎて、端と端が届かず、三角形を作ることはできません。
このセクションでは、3つの線分が三角形を形成するための、必要十分条件、すなわち**三角形の成立条件(triangle inequality)**について、その本質と応用を学びます。この条件は、幾何学の問題を解く上で、解の存在を保証したり、変数のとりうる範囲(定義域)を決定したりするための、基本的ながら極めて重要な制約条件となります。
5.1. 三角形の成立条件
三角形の成立条件:
3辺の長さが a,b,c である三角形が存在するための必要十分条件は、以下の3つの不等式がすべて同時に成り立つことである。
a+b > c
b+c > a
c+a > b
言葉による解釈:
「三角形の任意の2辺の長さの和は、残りの1辺の長さよりも大きい」
この条件は、2点間の最短距離が直線である、というユークリッド幾何学の最も基本的な公理から導かれます。頂点Aから頂点Bへ行くのに、辺cを通る直接の道のり c
は、頂点Cを経由する遠回りの道のり a+b
よりも、必ず短くなければならない(一直線上にない限り)、ということです。
5.2. より簡潔な同値条件
上記の3つの不等式を毎回チェックするのは、少し手間がかかります。もし、3辺の大小関係が分かっているならば、この条件は、よりシンプルな一つの不等式にまとめることができます。
a,b,c のうち、c が最大の辺であるとします。
このとき、b+c > a と c+a > b の二つの不等式は、c が最大なので自動的に成り立ちます。
(c>a, b>0 なので b+c>a。同様に c>b, a>0 なので c+a>b)
したがって、私たちがチェックする必要があるのは、残りの一つの不等式だけです。
同値な成立条件:
「最大の辺の長さは、他の2辺の長さの和よりも小さい」
また、上記の3つの不等式は、絶対値を用いた以下の形に、さらに簡潔にまとめることもできます。
同値な成立条件(絶対値版):
|a-b| < c < a+b
c < a+b
: 2辺の和は残りの1辺より大きい。- |a-b| < c: 2辺の差は残りの1辺より小さい。(a-b < c \implies a < b+c と -(a-b) < c \implies b < a+c をまとめたもの)
5.3. 応用例
三角形の成立条件は、辺の長さに未知の変数 x
が含まれる場合に、その x
がとりうる値の範囲(定義域)を決定するために使われます。
例題: 3辺の長さが x, 5, 8
である三角形が存在するような、x
の値の範囲を求めよ。
アプローチ1:3つの不等式を立てる
x+5 > 8 \implies x > 3
x+8 > 5 \implies x > -3
(x
は辺の長さなのでx>0
より、これは常に満たされる)5+8 > x \implies x < 13
これらの共通範囲を求めると、3 < x < 13
。
アプローチ2:絶対値の公式を用いる
|a-b| < c < a+b の公式で a=5, b=8、辺 c を x とみなすと、
|5-8| < x < 5+8
|-3| < x < 13
3 < x < 13
注意:最大の辺が不明な場合
もし、x, 5, 8 のうち、どれが最大の辺か分からない場合は、場合分けが必要です。
- (i) x が最大の辺の場合 (x \ge 8):5+8 > x \implies x < 13。よって 8 \le x < 13。
- (ii) 8 が最大の辺の場合 (x \le 8):x+5 > 8 \implies x > 3。よって 3 < x \le 8。これらの範囲を合わせると、やはり 3 < x < 13 が得られます。
例題 2: 3辺の長さが x, x+1, x+2
である三角形が、鈍角三角形となるような x
の値の範囲を求めよ。
この問題は、二つの条件の連立不等式を解く問題です。
- [条件1:三角形の成立条件]最大の辺は x+2。x + (x+1) > x+22x+1 > x+2 \implies x > 1また、辺の長さは正なので x>0。合わせて x>1。
- [条件2:鈍角三角形になる条件]最大の角(x+2の対角)が鈍角であればよい。a^2+b^2 < c^2x^2 + (x+1)^2 < (x+2)^2x^2 + (x^2+2x+1) < (x^2+4x+4)2x^2+2x+1 < x^2+4x+4x^2-2x-3 < 0(x-3)(x+1) < 0解は -1 < x < 3。
- [共通範囲]条件1 (x>1) と条件2 (-1<x<3) の共通範囲を求めると、1 < x < 3
三角形の成立条件は、すべての図形問題の議論の「土台」です。計算を始める前に、あるいは計算の最後に、この条件を常に意識し、解が物理的に意味を持つ範囲にあるかを確認する、という習慣は、数学的な厳密性を保つ上で不可欠なものです。
6. 角の二等分線の長さの計算
三角形の内部には、中線、垂線、そして角の二等分線といった、重要な線分が存在します。特に、角の二等分線は、その角を二つの等しい角に分けるという性質から、図形問題において様々な役割を果たします。
このセクションでは、三角形の角の二等分線の長さを、3辺の長さ(または2辺とその間の角)から計算するための、二つの主要なアプローチを学びます。一つは面積を利用した巧妙な方法、もう一つは余弦定理を駆使する直接的な方法です。
6.1. アプローチ1:面積の分割を利用する方法
この方法は、「全体の面積は、分割された部分の面積の和に等しい」という、極めてシンプルで自明な原理に基づいています。この原理が、角の二等分線の長さを求めるための方程式を、見事に生み出します。
プロセス:
- 三角形ABCにおいて、角Aの二等分線と辺BCとの交点をDとし、その長さを
l
とする。 - 「
△ABC
の面積」=「△ABD
の面積」+「△ACD
の面積」という等式を立てる。 - それぞれの三角形の面積を、三角比を用いた面積公式
S=(1/2)ab\sin\theta
を使って表現する。△ABC = (1/2)bc\sin A
△ABD = (1/2)c \cdot l \cdot \sin(A/2)
(2辺c, l
と間の角A/2
)△ACD = (1/2)b \cdot l \cdot \sin(A/2)
(2辺b, l
と間の角A/2
)
- これらの式を元の等式に代入し、
l
について解く。
例題: 三角形ABCにおいて AB=4, AC=3, A=120°
のとき、角Aの二等分線の長さを求めよ。
- 面積を利用した等式を立てる:角Aの二等分線とBCの交点をD、ADの長さを l とする。△ABC = △ABD + △ACD
- 各面積を計算:
∠A = 120°
なので、∠BAD = ∠CAD = 60°
。S_{ABC} = (1/2) \cdot AB \cdot AC \cdot \sin 120^\circ = (1/2) \cdot 4 \cdot 3 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 3\sqrt{3}
S_{ABD} = (1/2) \cdot AB \cdot AD \cdot \sin 60^\circ = (1/2) \cdot 4 \cdot l \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = l\sqrt{3}
S_{ACD} = (1/2) \cdot AC \cdot AD \cdot \sin 60^\circ = (1/2) \cdot 3 \cdot l \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{3\sqrt{3}}{4}l
- 方程式を解く:3\sqrt{3} = l\sqrt{3} + \frac{3\sqrt{3}}{4}l両辺を \sqrt{3} で割る。3 = l + \frac{3}{4}l3 = \frac{7}{4}ll = \frac{12}{7}
結論: 角の二等分線の長さは 12/7
。
6.2. アプローチ2:余弦定理を2回利用する方法
この方法は、より直接的ですが、計算が少し複雑になることがあります。
プロセス:
- まず、元の
△ABC
に対して余弦定理を適用し、角の二等分線が交わる対辺の長さ(例:辺a
)を求める。 - 角の二等分線の性質「
AB:AC = BD:DC
」を用いて、対辺がどのように内分されるかを計算する(BD
とDC
の長さを求める)。 - 分割された三角形(例:
△ABD
)に対して、再び余弦定理を適用し、角の二等分線の長さを求める。
例題(再訪): AB=4, AC=3, A=120°
- △ABC に余弦定理を適用して BC=a を求める:a^2 = 4^2+3^2 – 2(4)(3)\cos 120^\circa^2 = 16+9 – 24(-1/2) = 25+12 = 37a = \sqrt{37}
- 角の二等分線の性質:BD:DC = AB:AC = 4:3よって、BD = \frac{4}{7}BC = \frac{4\sqrt{37}}{7}
- △ABD に余弦定理を適用:∠B の値が必要になる。△ABC で余弦定理を使い \cos B を求める。\cos B = \frac{4^2+(\sqrt{37})^2-3^2}{2(4)(\sqrt{37})} = \frac{16+37-9}{8\sqrt{37}} = \frac{44}{8\sqrt{37}} = \frac{11}{2\sqrt{37}}△ABD で、ADの長さ l を求めるために余弦定理を適用する。AD^2 = AB^2+BD^2 – 2(AB)(BD)\cos Bl^2 = 4^2 + (\frac{4\sqrt{37}}{7})^2 – 2(4)(\frac{4\sqrt{37}}{7}) (\frac{11}{2\sqrt{37}})l^2 = 16 + \frac{16 \cdot 37}{49} – \frac{32\sqrt{37}}{7} \cdot \frac{11}{2\sqrt{37}}l^2 = 16 + \frac{592}{49} – \frac{176}{7}計算が非常に煩雑になり、このアプローチが不得策であることが分かる。
6.3. 戦略の比較と公式
この例から分かるように、角の二等分線の長さを求める問題では、面積を利用するアプローチが、多くの場合、計算がはるかに簡潔になります。
ちなみに、これらのプロセスを一般化すると、角Aの二等分線の長さ l_a
に関する以下の公式が導かれます。
l_a^2 = bc(1 - (\frac{a}{b+c})^2)
この公式を暗記する必要はありません。重要なのは、「面積分割」という、その場で公式を導き出せる、柔軟で強力な思考の武器を身につけることです。
7. 円に内接する四角形の性質と面積
私たちの幾何学の探求は、三角形から、より辺の数が多い多角形、四角形へとその範囲を広げます。しかし、一般の四角形は、三角形のように形が固定されておらず(「剛体」ではない)、辺の長さが同じでも、ぐにゃぐにゃと形を変えることができます。そのため、その性質を一般的に論じるのは困難です。
ところが、四角形に「すべての頂点が、一つの円周上にある」という、強力な制約を課すと、その性質は一変します。このような四角形を**円に内接する四角形(cyclic quadrilateral)**と呼び、それは三角形に劣らない、豊かで美しい幾何学的な性質を持つようになります。
7.1. 円に内接する四角形の性質
円に内接する四角形 ABCD が持つ、最も重要で基本的な性質は、その対角に関するものです。
性質1:対角の和は 180° である。
A+C = 180^\circ
B+D = 180^\circ
この性質は、円周角の定理から簡単に証明できます。
中心角を考えると、角Aが作る弧BDCの中心角と、角Cが作る弧DABの中心角の和は360°。円周角はその半分なので、A+C=180°となります。
この角度の制約は、三角比の世界に、非常に有用な関係をもたらします。
C = 180^\circ – A なので、
\sin C = \sin(180^\circ - A) = \sin A
(サインは等しい)\cos C = \cos(180^\circ - A) = -\cos A
(コサインは符号が逆)
7.2. 円に内接する四角形の面積
この性質を利用すると、円に内接する四角形の面積を、その辺の長さや対角線の長さから計算することができます。
戦略:対角線で二つの三角形に分割する。
四角形ABCDの面積 S は、対角線ACによって分割された △ABC と △ADC の面積の和として考えることができます。
S = S_{ABC} + S_{ADC}
ここで、三角比を用いた面積公式を適用すると、
S = (1/2)ab\sin B + (1/2)cd\sin D
となります。
性質1より D=180°-B なので \sin D = \sin B。
したがって、
S = (1/2)(ab+cd)\sin B
例題: 円に内接する四角形ABCDにおいて、AB=2, BC=3, CD=4, DA=5
のとき、この四角形の面積 S
を求めよ。
- [戦略]このままでは角の情報がないため、面積を計算できない。そこで、まず対角線ACの長さを、余弦定理を用いて2通りで表し、\cos B の値を求める。
- [余弦定理の適用]
- △ABC において:AC^2 = AB^2+BC^2 – 2(AB)(BC)\cos BAC^2 = 2^2+3^2 – 2(2)(3)\cos B = 13 – 12\cos B … ①
- △ADC において:AC^2 = AD^2+CD^2 – 2(AD)(CD)\cos DD=180°-B なので \cos D = -\cos B。AC^2 = 5^2+4^2 – 2(5)(4)(-\cos B) = 41 + 40\cos B … ②
- [\cos B の計算]①と②は、どちらも AC^2 を表しているので、等しい。13 – 12\cos B = 41 + 40\cos B-28 = 52\cos B\cos B = -28/52 = -7/13
- [\sin B の計算]\sin^2 B = 1 – \cos^2 B = 1 – (-7/13)^2 = 1 – 49/169 = 120/169B は四角形の内角なので 0°<B<180° であり、\sin B > 0。\sin B = \sqrt{120/169} = \frac{\sqrt{120}}{13} = \frac{2\sqrt{30}}{13}
- [面積の計算]S = (1/2)(ab+cd)\sin B の公式を用いる。(a=AB=2, b=BC=3, c=CD=4, d=DA=5)S = (1/2)(2 \cdot 3 + 4 \cdot 5) \left(\frac{2\sqrt{30}}{13}\right)S = (1/2)(6+20) \left(\frac{2\sqrt{30}}{13}\right) = (1/2)(26) \left(\frac{2\sqrt{30}}{13}\right)S = 13 \cdot \frac{2\sqrt{30}}{13} = 2\sqrt{30}
ブラーマグプタの公式(発展)
4辺の長さが a,b,c,d の円に内接する四角形の面積は、ヘロンの公式の拡張である、以下のブラーマグプタの公式で与えられる。
s = (a+b+c+d)/2(半周長)とすると、
S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}
円に内接するという制約が、いかに四角形に豊かな構造と計量の可能性をもたらすか。この視点は、幾何学の問題において、隠れた円の存在に気づくことの重要性を示唆しています。
8. トレミーの定理
円に内接する四角形が持つ、もう一つの驚くほど美しく、強力な定理が、2世紀の天文学者・数学者クラウディオス・プトレマイオスにその名を帰する**トレミーの定理(Ptolemy’s theorem)**です。
この定理は、円に内接する四角形の4つの辺の長さと、2本の対角線の長さとの間に成り立つ、シンプルな積の関係式です。一見すると証明が困難に見える幾何問題も、この定理を用いることで、鮮やかに解決できることがあります。
8.1. トレミーの定理
トレミーの定理:
円に内接する四角形ABCDにおいて、4辺の長さを AB=a, BC=b, CD=c, DA=d、対角線の長さを AC=p, BD=q とすると、
ac + bd = pq
が成り立つ。
言葉による記憶:
(対辺の積の和) = (対角線の積)
(AB \cdot CD) + (BC \cdot DA) = (AC \cdot BD)
8.2. トレミーの定理の証明(余弦定理を用いる)
この定理には様々な証明がありますが、ここでは三角比の知識、特に余弦定理と面積公式を活用した証明を紹介します。
証明の概要:
- 四角形ABCDの面積 S を、対角線ACで分割した △ABC と △ADC の和として表す。S = S_{ABC} + S_{ADC} = (1/2)ab\sin B + (1/2)cd\sin DB+D=180° より \sin B = \sin D なので、 S = (1/2)(ab+cd)\sin B
- 同様に、面積 S を、対角線BDで分割した △ABD と △BCD の和として表す。S = S_{ABD} + S_{BCD} = (1/2)ad\sin A + (1/2)bc\sin CA+C=180° より \sin A = \sin C なので、 S = (1/2)(ad+bc)\sin A
- この二つの面積の表現 (1/2)(ab+cd)\sin B = (1/2)(ad+bc)\sin A から、(ab+cd)\sin B = (ad+bc)\sin A … ①
- △ABD と △BCD に余弦定理を適用して、対角線BDの長さ q を \cos A と \cos C で表す。q^2 = a^2+d^2-2ad\cos Aq^2 = b^2+c^2-2bc\cos C\cos C = -\cos A を代入して、a^2+d^2-2ad\cos A = b^2+c^2+2bc\cos Aこれを \cos A について解くと \cos A = \frac{a^2+d^2-b^2-c^2}{2(ad+bc)}
- 同様に、対角線ACの長さ p を \cos B で表すと、\cos B = \frac{a^2+b^2-c^2-d^2}{2(ab+cd)}
\sin A
と\sin B
を\cos A, \cos B
から求め、①に代入して整理すると、最終的にac+bd=pq
の関係が得られる。(この代数計算は非常に複雑)
より一般的な証明(幾何学的方法):
点A,B,C,Dとは別に、対角線BD上に ∠BAP = ∠CAD となる点Pをとるなど、補助線を用いた純粋な幾何学的な証明の方が、よりエレガントであることが多いです。
8.3. 応用例
トレミーの定理は、円に内接する図形の辺や対角線の長さを求める問題で、強力な武器となります。
例題 1: 円に内接する正五角形ABCDEがある。1辺の長さを 1
とするとき、対角線ACの長さを求めよ。
- [図形の性質の確認]
- 正五角形は円に内接する。
- 辺の長さはすべて
1
。 - 対角線の長さはすべて等しい。AC=AD=BD=BE=CE。求める対角線の長さを
x
とする。
- [適切な四角形の選択]四角形ABCDに着目する。この四角形は円に内接している。
- 辺の長さ:
AB=1, BC=1, CD=1
- 対角線の長さ:
AC=x, BD=x
- 残りの辺の長さ:
DA
は、△ADE
の対角線なのでDA=x
。
- 辺の長さ:
- [トレミーの定理の適用]四角形ABCDにおいて、(AB \cdot CD) + (BC \cdot DA) = (AC \cdot BD)値を代入する。(1 \cdot 1) + (1 \cdot x) = (x \cdot x)
- [方程式を解く]1+x = x^2x^2-x-1=0解の公式より、x = \frac{1 \pm \sqrt{1-4(-1)}}{2} = \frac{1 \pm \sqrt{5}}{2}x は長さなので x>0。よって、x = \frac{1+\sqrt{5}}{2}。
この (1+\sqrt{5})/2
という値は、黄金比として知られる、非常に有名な比です。正五角形の中に、黄金比が隠れていることを、トレミーの定理は見事に暴き出してくれます。
トレミーの定理は、その美しさと応用の意外性から、幾何学の宝石の一つとされています。円に内接する四角形を見かけたときには、この定理が使えないか、常に頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
9. 空間図形における線分の長さ・角度・体積の計算
Module 9の最後で、私たちは平面で培った計量技術を、3次元の空間図形に応用する第一歩を踏み出しました。このセクションでは、さらに多くのツール(面積公式、内接円・外接円の概念など)を携えて、再び空間図形の問題に挑みます。
空間図形の問題を解く上で、その難しさは、多くの場合、3次元の対象を2次元の紙の上で正確にイメージし、そこから必要な情報を抽出する空間認識能力にあります。しかし、その根底にある解法の戦略は、Module 9で学んだものと変わりません。
基本戦略:
1. 空間から適切な「平面(三角形)」を切り出す。
2. 他の平面から「部品(辺や角)」を調達する。
3. 切り出した平面上で、平面幾何の定理を適用する。
このセクションでは、これまでの知識を総動員して、空間図形における様々な「計量」―長さ、角度、そして体積―に、体系的に取り組んでいきます。
9.1. 線分の長さ・角度の計算
これはModule 9の復習と拡張です。正弦定理、余弦定理、三平方の定理などを、空間内の様々な三角形に適用します。
例題: 底面が1辺の長さ 6
の正方形で、他の辺の長さがすべて 5
であるような、正四角錐O-ABCDがある。このとき、辺OAと辺OCのなす角 ∠AOC
の大きさを求めよ。
- [平面の切り出し]求める角 ∠AOC を含む、三角形OACを空間から切り出して考える。
- [部品の調達]三角形OACの3辺の長さを求める。
- 辺 OA, OC: これは四角錐の側面の辺なので、問題文より
OA=5, OC=5
。 - 辺 AC: これは底面の正方形ABCDの対角線である。底面の正方形ABCDを考える。△ABC は AB=BC=6 の直角二等辺三角形。三平方の定理より、AC^2 = AB^2+BC^2 = 6^2+6^2 = 72。AC = \sqrt{72} = 6\sqrt{2}。よって、AC = 6\sqrt{2}。
- 辺 OA, OC: これは四角錐の側面の辺なので、問題文より
- [平面上での計量]
- 切り出した
△OAC
は、OA=OC=5
,AC=6\sqrt{2}
の二等辺三角形である。 - ∠AOC の大きさを求めるために、△OAC に余弦定理を適用する。AC^2 = OA^2+OC^2 – 2(OA)(OC)\cos\angle AOC(6\sqrt{2})^2 = 5^2+5^2 – 2(5)(5)\cos\angle AOC72 = 25+25 – 50\cos\angle AOC72 = 50 – 50\cos\angle AOC22 = -50\cos\angle AOC\cos\angle AOC = -\frac{22}{50} = -\frac{11}{25}
- 切り出した
- [結論]\cos\angle AOC = -11/25。角の大きさを度数で表すことはできないが、コサインの値を求めることができた。
9.2. 体積の計算
錐体の体積は、V = (1/3) × (底面積) × (高さ) で与えられます。
この公式を適用するためには、「底面積」と「高さ」を、図形の計量技術を用いて算出しなければなりません。
例題(続き): 上記の正四角錐O-ABCDの体積 V
を求めよ。
- [体積の公式]V = (1/3) \times S_{ABCD} \times hh は、頂点Oから底面ABCDに下ろした垂線の長さである。
- [底面積の計算]底面は1辺 6 の正方形なので、S_{ABCD} = 6^2 = 36。
- [高さの計算]
- 頂点Oから底面に下ろした垂線の足は、底面の対称性から、正方形ABCDの対角線の交点Hに一致する。
- したがって、高さ
h
は、線分OH
の長さに等しい。 OH
を求めるために、OH
を含む直角三角形OAHを考える。- この三角形の辺の長さは、
- 斜辺 OA:
OA = 5
(既知) - 底辺 AH:
H
は対角線ACの中点なので、AH = (1/2)AC = (1/2)(6\sqrt{2}) = 3\sqrt{2}
。
- 斜辺 OA:
- 三平方の定理を △OAH に適用する。OH^2 + AH^2 = OA^2h^2 + (3\sqrt{2})^2 = 5^2h^2 + 18 = 25h^2 = 7h は長さなので h>0。h = \sqrt{7}。
- [体積の最終計算]V = (1/3) \times 36 \times \sqrt{7} = 12\sqrt{7}
結論: 体積は 12\sqrt{7}
。
この例のように、空間図形の問題は、
- 頂点
O
,A
,C
を含む平面 - 底面
ABCD
- 頂点 O, A と垂線の足 H を含む平面といったように、様々な「平面」を次々と切り出し、そこで得た情報を、次の平面の計算へと引き継いでいく、連鎖的なプロセスであることが多いです。この情報の連鎖を、論理的に正しく繋ぎ合わせる能力が、空間図形を攻略する鍵となります。
10. 複数の定理を統合して解く幾何問題
これまでの9つのセクションで、私たちは図形の計量に関する、多種多様な定理や公式という名の「道具」を、一つ一つ丁寧に作り上げ、その使い方を学んできました。
- 三角比の定義と相互関係
- 正弦定理、余弦定理
- 面積公式(三角比、ヘロン)
- 内接円、外接円との関係 (
S=rs
,S=abc/4R
) - 円に内接する四角形の性質、トレミーの定理
この最終セクションでは、これらの道具をすべて道具箱に入れ、どの道具を、どの順番で、どのように組み合わせて使うかを、自らの力で判断しなければ解けない、より実践的で統合的な幾何問題に挑戦します。
これらの問題には、「この定理を使いなさい」という指示はありません。与えられた図形と条件を注意深く**分析(Analysis)し、ゴールに至るまでの最適な道筋を設計し、そして複数の定理を統合(Synthesis)**して、解答を構築していく、高度な問題解決能力が試されます。
10.1. 問題解決のメタ戦略
統合的な問題に直面したとき、以下のメタ戦略(戦略を立てるための戦略)が有効です。
- [目標の明確化]最終的に何を求めるべきなのか(辺の長さ?角度?面積?半径?)を明確にする。
- [情報のインベントリ]問題文と図から、与えられている情報をすべてリストアップする。「既知のもの」は何か。(辺の長さ、角の大きさ、図形の性質(正三角形、円に内接など))
- [逆算思考(ゴールからの逆算)]
- もし目標が「面積 S」ならば、S を求めるためには何が必要か?→ 「2辺とその間の角」か、「3辺の長さ」か…
- もし目標が「内接円の半径
r
」ならば、r=S/s
なので、「面積S
」と「3辺の長さ」が必要。 - このように、ゴールから遡って、それを達成するために必要な「中間目標」を設定する。
- [順算思考(手持ちの情報からの展開)]
- 既知の情報から、直接的に導き出せる新しい情報はないか?
- 「2辺とその間の角」がある → 余弦定理で対辺が分かるな。
- 「3辺」が揃っている → 余弦定理で角が、ヘロンの公式で面積が分かるな。
- 「辺と対角のペア」がある → 正弦定理で外接円の半径や他の辺・角が分かるな。
- このように、手持ちの情報から出発して、計算可能なものを次々と計算していく。
- [経路の接続]逆算思考で設定した「中間目標」と、順算思考で得られた「新しい情報」とが、どこかで繋がるはずである。その「接続点」を見つけ出し、ゴールまでの完全な論理の鎖を構築する。
10.2. 実践例:統合問題
例題: AB=5, BC=6, CA=7 の三角形ABCがある。
(1) この三角形の外接円の半径 R と内接円の半径 r を求めよ。
(2) 角Aの二等分線と辺BCの交点をDとするとき、線分ADの長さを求めよ。
思考プロセス:
(1) R
と r
を求める
- [目標]:
R
とr
- [逆算思考]:
R
を求めるには、R=abc/(4S)
またはR=a/(2sinA)
。どちらにせよ、面積S
かsinA
が必要。3辺a,b,c
は分かっている。r
を求めるには、r=S/s
。面積S
と半周長s
が必要。s
は3辺から計算できる。- 結論: どちらを求めるにも、まず面積
S
を求めることが、共通の「中間目標」となる。
- [順算思考]:
- 手持ちの情報は「3辺の長さ (SSS)」。
- 3辺が分かっていれば、ヘロンの公式で面積
S
を直接計算できる。これが最も効率的な経路だ。
計算実行 (1):
- 面積 S の計算 (ヘロンの公式)s = (5+6+7)/2 = 9S = \sqrt{9(9-5)(9-6)(9-7)} = \sqrt{9 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2} = \sqrt{216} = 6\sqrt{6}
- 外接円の半径 R の計算R = \frac{abc}{4S} = \frac{5 \cdot 6 \cdot 7}{4(6\sqrt{6})} = \frac{210}{24\sqrt{6}} = \frac{35}{4\sqrt{6}} = \frac{35\sqrt{6}}{24}
- 内接円の半径 r の計算r = \frac{S}{s} = \frac{6\sqrt{6}}{9} = \frac{2\sqrt{6}}{3}
(2) ADの長さを求める
- [目標]: 角の二等分線 AD の長さ
l
。 - [逆算思考]:
l
を求めるには、「面積分割」の方法が有効だった。△ABC = △ABD + △ACD
- この式を使うには、
S_{ABC}
(既知),∠BAD
,∠CAD
が必要。つまり、∠A
の情報が必要。
- [順算思考]:
- 手持ちの情報は「3辺の長さ (SSS)」。
- 3辺が分かっていれば、余弦定理で任意の角のコサインが分かる。
cosA
を求めよう。
計算実行 (2):
- cos A の計算 (余弦定理)\cos A = \frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} = \frac{7^2+5^2-6^2}{2 \cdot 7 \cdot 5} = \frac{49+25-36}{70} = \frac{38}{70} = \frac{19}{35}
- sin A の計算面積分割法には sin(A/2) が必要だが、これは数学IIの範囲。S=(1/2)bc\sin A から sinA を求めることもできる。6\sqrt{6} = (1/2) \cdot 7 \cdot 5 \cdot \sin A \implies \sin A = \frac{12\sqrt{6}}{35}(\cos^2 A + \sin^2 A = (19/35)^2 + (12\sqrt{6}/35)^2 = (361+864)/1225 = 1225/1225 = 1 となり、一致)A の値そのものを求めるのは難しい。
- [戦略の再考] 面積分割法は sin(A/2) が必要になり、少し難しい。他の方法はないか?角の二等分線の長さの公式の導出(面積法)S_{ABC} = (1/2)AB \cdot AC \sin AS_{ABD} = (1/2)AB \cdot AD \sin(A/2)S_{ACD} = (1/2)AC \cdot AD \sin(A/2)S_{ABC} = S_{ABD} + S_{ACD}(1/2)bc \sin A = (1/2)c \cdot l \cdot \sin(A/2) + (1/2)b \cdot l \cdot \sin(A/2)bc \sin A = l(b+c)\sin(A/2)ここで、数学IIの倍角の公式 \sin A = 2\sin(A/2)\cos(A/2) を使うと、bc (2\sin(A/2)\cos(A/2)) = l(b+c)\sin(A/2)l = \frac{2bc}{b+c}\cos(A/2)\cos(A/2) を求めるには、数学IIの半角の公式 \cos^2(A/2) = (1+\cos A)/2 が必要。\cos^2(A/2) = (1+19/35)/2 = (54/35)/2 = 27/35 \implies \cos(A/2) = \sqrt{27/35} = 3\sqrt{3}/\sqrt{35}l = \frac{2 \cdot 7 \cdot 5}{7+5} \cdot \frac{3\sqrt{3}}{\sqrt{35}} = \frac{70}{12} \cdot \frac{3\sqrt{3}}{\sqrt{35}} = \frac{35}{6} \cdot \frac{3\sqrt{3}}{\sqrt{35}} = \frac{35\sqrt{3}}{2\sqrt{35}} = \frac{\sqrt{35}\sqrt{5}\sqrt{3}}{2} …この方法は数学IIの知識を多用するため、数学Iの範囲では別の方法を考えるべき。
- [数学Iの範囲での別解]余弦定理を2回使う。△ABC で \cos B を求める。\cos B = \frac{5^2+6^2-7^2}{2 \cdot 5 \cdot 6} = \frac{25+36-49}{60} = \frac{12}{60} = \frac{1}{5}角Aの二等分線の性質より CD:DA = BC:BAではなくBD:DC = AB:AC = 5:7。BD = \frac{5}{12}BC = \frac{5}{12} \cdot 6 = \frac{5}{2}△ABD において、AD=l として余弦定理を適用する。AC^2 = AB^2…ではなくADを求めるので、ACではなくADを求める。ADの対角はBなので、ADではなくAC。ADを求めるので、ADの対角であるBを使う。ADの対角は Bではない。△ABDの角はBとA/2とADB。ADの対角は∠Bではない。ADを求めるには∠Bを使う。AD^2 = AB^2 + BD^2 – 2(AB)(BD)\cos Bl^2 = 5^2 + (\frac{5}{2})^2 – 2(5)(\frac{5}{2})(\frac{1}{5})l^2 = 25 + \frac{25}{4} – 5 = 20 + \frac{25}{4} = \frac{80+25}{4} = \frac{105}{4}l = \sqrt{\frac{105}{4}} = \frac{\sqrt{105}}{2}
この最終問題が示すように、複雑な幾何問題は、一本の定理で解けることは稀です。それは、これまで学んできた様々な定理や公式を、有機的なネットワークとして捉え、問題の状況に応じて自在に引き出し、組み合わせていく、総合的な「知の総力戦」なのです。
Module 10:図形と計量(3) 図形の計量 の総括:三角形を測り尽くし、幾何学の頂へ
「図形と計量」を巡る私たちの長い旅は、このモジュールで一つの頂点を迎えました。Module 8で三角比という言語を学び、Module 9で正弦・余弦定理という法を制定した私たちは、このModule 10において、その言語と法を駆使して、幾何学の根源的な目的である**「計量」**、すなわち図形のあらゆる量を測り尽くすための、包括的なツールキットを完成させました。
その出発点は、三角形の「面積」でした。S=(1/2)bc\sin A
という公式は、私たちの視野を「高さ」の呪縛から解き放ち、続くヘロンの公式は、3辺の長さという純粋な情報だけで面積を確定させることを可能にしました。さらに私たちの探求は、三角形の内部と外部へと広がり、面積 S
が、内接円の半径 r
とは S=rs
という加法的な調和で、外接円の半径 R
とは S=abc/(4R)
という乗法的な関係で結ばれている、という驚くべき秩序を発見しました。
三角形の成立条件が議論の土台を固め、角の二等分線の長さを面積分割というエレガントな発想で求めることで、私たちの分析能力はさらに深まりました。そして、円に内接する四角形やトレミーの定理へと視野を広げ、さらには空間図形という3次元の世界から適切な平面を切り出してくることで、平面上で築き上げた計量の技術が、より高次の空間においても普遍的に通用する強力な武器であることを確信しました。
最終的に私たちがたどり着いたのは、単一の定理の適用ではなく、与えられた問題構造を深く分析し、ヘロンの公式、余弦定理、面積公式、内接円の公式といった、道具箱の中のあらゆるツールを戦略的に統合して、多層的な問題の核心へと迫っていく、真の問題解決能力でした。
このモジュールを経て、皆さんはもはや、単に公式を知っているだけの学習者ではありません。三角形という幾何学の基本構成単位を、その面積、辺、角、内心、外心といったあらゆる側面から完全に「測り尽くす」ことができる、熟達した幾何学者への第一歩を踏み出したのです。この計量の技術と、複数の定理を統合する戦略的思考は、今後の数学のあらゆる分野、そして論理的な思考が求められるすべての場面において、皆さんを支える確かな力となるでしょう。