2順列 (P):基本的な計算と隣り合う・隣り合わない問題の解法

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場合の数を考える上で、「順列」は「組合せ」と並んで非常に重要な概念です。順列とは、いくつかの異なるものの中からいくつかを選んで、順番を区別して一列に並べる方法が何通りあるかを考えるものです。ここでは、順列の基本的な計算方法である「P」記号の使い方、そして応用問題として頻出の「隣り合う場合」「隣り合わない場合」の考え方について詳しく解説します。


目次

第1章:順列 (Permutation) とは?

まず、順列の基本的な考え方と、その計算に使われる記号について理解しましょう。

1. 順列の定義

  • 異なる n 個のものの中から、異なる r 個を選んで一列に並べる並べ方の総数を「n 個から r 個取る順列」といい、その総数を記号 nPr で表します。
  • ポイントは「異なるものから選ぶ」ことと、「順番を区別する」ことです。
    • 例:A, B, C の3文字から2文字を選んで並べる場合、(A, B) と (B, A) は異なる並べ方として数えます。これが順列の考え方です。
  • 具体的な例:
    • 5人の候補者の中から、会長、副会長、書記を1人ずつ選ぶ方法(役職が異なるので順番が重要)→ 順列
    • 7種類の色から3色を選んで、左から順に旗に塗る方法 → 順列

2. 階乗 (Factorial) の記号「!」

  • 順列の計算には「階乗」という計算がよく使われます。
  • 1から n までのすべての自然数の積を n の階乗といい、n! で表します。
    • n! = n × (n – 1) × (n – 2) × … × 3 × 2 × 1
  • 例:
    • 3! = 3 × 2 × 1 = 6
    • 5! = 5 × 4 × 3 × 2 × 1 = 120
  • 特殊なケースとして、0! = 1 と定義されます。これは、nPr の公式などを矛盾なく成り立たせるための約束事です。

3. nPr の計算方法

  • n 個から r 個取る順列 nPr は、次のように計算できます。
    • nPr = n × (n – 1) × (n – 2) × … × (n – r + 1) (n から始めて r 個の数を掛ける)
  • 階乗を使うと、次のように表現できます。
    • nPr = n! / (n – r)!
  • 例:7P3 の計算
    • 7 × 6 × 5 = 210 (7から始めて3つの数を掛ける)
    • または、7! / (7 – 3)! = 7! / 4! = (7 × 6 × 5 × 4 × 3 × 2 × 1) / (4 × 3 × 2 × 1) = 7 × 6 × 5 = 210
  • 例:5P5 の計算 (n 個のものすべてを並べる場合)
    • 5 × 4 × 3 × 2 × 1 = 120
    • または、5! / (5 – 5)! = 5! / 0! = 5! / 1 = 120
    • このように、n 個すべてを並べる順列 nPn は n! となります。

第2章:順列の基本的な計算問題

nPr の計算方法を使って、基本的な問題を解いてみましょう。

1. 例題:数字の並び方

  • 問題: 1, 2, 3, 4, 5 の5個の数字から異なる3個を選んで並べ、3桁の整数を作る。何通りの整数が作れるか?
  • 考え方:
    • 5個の異なる数字から3個を選んで「並べる」ので、順列の問題です。
    • 百の位、十の位、一の位の順番が区別されます。
    • 使う公式は 5P3 です。
  • 計算:
    • 5P3 = 5 × 4 × 3 = 60
  • 答え: 60通り

2. 例題:役員の選び方

  • 問題: 10人の部員の中から、部長、副部長、会計を1人ずつ選ぶ。選び方は何通りあるか?ただし、兼任は認めない。
  • 考え方:
    • 10人の異なる部員から3人を選び、部長、副部長、会計という「異なる役職(順番)」に割り当てるので、順列の問題です。
    • 使う公式は 10P3 です。
  • 計算:
    • 10P3 = 10 × 9 × 8 = 720
  • 答え: 720通り

第3章:応用問題:「隣り合う」順列

特定のものが「隣り合う」ように並べる場合の数を考える問題は頻出です。

1. 「隣り合う」問題の基本的な考え方

  • ステップ1:隣り合うものを「ひとかたまり」とみなす。
    • 隣り合ってほしい要素を一つのグループとして扱います。
  • ステップ2:「ひとかたまり」と残りの要素を並べる。
    • 全体の要素数が減ったと考えて、その順列を計算します。
  • ステップ3:「ひとかたまり」の中での並び方を考える。
    • ひとかたまりにしたグループ内部での並び順も考慮し、その順列(階乗)を計算します。
  • ステップ4:ステップ2とステップ3の結果を掛け合わせる(積の法則)。
    • 全体の並べ方 × かたまり内部の並べ方 = 求める場合の数

2. 例題:男子が隣り合う並び方

  • 問題: 男子3人、女子4人の合計7人が一列に並ぶとき、男子3人が隣り合う並び方は何通りあるか?
  • 考え方:
    • ステップ1: 隣り合う男子3人を「ひとかたまり」 (M M M) とみなす。
    • ステップ2: この「ひとかたまり」と女子4人 (G G G G) の合計5つの要素を一列に並べる。並べ方は 5! 通り。
    • ステップ3: 「ひとかたまり」の中での男子3人の並び方は 3! 通り。
    • ステップ4: 積の法則により、ステップ2とステップ3の結果を掛け合わせる。
  • 計算:
    • (ひとかたまりと女子4人の並び方) × (男子3人の並び方)
    • 5! × 3! = (5 × 4 × 3 × 2 × 1) × (3 × 2 × 1) = 120 × 6 = 720
  • 答え: 720通り

3. 例題:特定の文字が隣り合う並び方

  • 問題: SUCCESS の7文字をすべて使って一列に並べるとき、3つの S がすべて隣り合う並び方は何通りあるか?
    • 注意: この問題には「同じものを含む順列」の考え方も必要ですが、ここでは「隣り合う」の考え方に焦点を当てます。(※本来は「同じものを含む順列」の知識が必要です。後の記事で詳しく扱います)
    • 簡単のため、ここでは仮に S が S1, S2, S3 と区別できるものとして「隣り合う」考え方のみ説明します。
  • 考え方(仮):
    • ステップ1: 3つの S (S1 S2 S3) を「ひとかたまり」とみなす。
    • ステップ2: この「ひとかたまり」と残りの U, C, C, E の4文字(これも一旦区別すると U, C1, C2, E)、合計5つの要素を並べる。並べ方は 5! 通り。
    • ステップ3: 「ひとかたまり」の中での S1, S2, S3 の並び方は 3! 通り。
    • ステップ4: 5! × 3! = 120 × 6 = 720 通り。(※これは S を区別した場合の計算です。実際には同じものを含む順列の計算が必要です。)
    • 正しい考え方(概要): (SSS) U C C E の5つを並べる。ただしCが2つ同じもの。並べ方は 5! / 2! = 60通り。SSS内部の並びは区別しないので1通り。よって60通り。(詳細は別記事)

第4章:応用問題:「隣り合わない」順列

特定のものが「隣り合わない」ように並べる場合の数も重要です。これには主に2つのアプローチがあります。

1. アプローチ1:全体から「隣り合う場合」を除く(余事象の考え方)

  • ステップ1:すべての並び方(全事象)を計算する。
  • ステップ2:指定された要素が「少なくとも1組隣り合う」場合を計算する。
    • 注意:3つ以上が隣り合わない場合、「2つだけ隣り合う」場合と「3つすべてが隣り合う」場合などを分けて考える必要があり、複雑になることがあります。この方法は、特に「2つのものが隣り合わない」場合に有効です。
  • ステップ3:全体から「隣り合う場合」を引く。
    • 全事象 – 隣り合う場合の数 = 隣り合わない場合の数

2. アプローチ2:「間に入れる」または「先に他を並べる」考え方

  • ステップ1:隣り合わないようにしたい要素以外のものを先に並べる。
  • ステップ2:先に並べたものの「間」または「両端」に、隣り合わないようにしたい要素を入れる場所を選ぶ。
  • ステップ3:選んだ場所に、隣り合わないようにしたい要素を並べる順列を計算する。
  • ステップ4:ステップ1とステップ3の結果を掛け合わせる(積の法則)。
    • この方法は、特に「指定された要素がすべて隣り合わない」場合に有効です。

3. 例題:男子が隣り合わない並び方

  • 問題: 男子3人、女子4人の合計7人が一列に並ぶとき、男子3人が誰も隣り合わない並び方は何通りあるか?
  • 考え方(アプローチ2:間に入れる):
    • ステップ1: 男子以外、つまり女子4人を先に一列に並べる。並べ方は 4! 通り。
      • 例: G G G G
    • ステップ2: 女子4人の間と両端には、男子を入れることができる場所が 5箇所 ( _ ) ある。
      • _ G _ G _ G _ G _
    • ステップ3: この5箇所の候補から、男子3人が入る場所を3箇所選んで並べる。選び方は 5P3 通り。(場所を選び、かつ、どの男子が入るか区別するため)
    • ステップ4: 積の法則により、ステップ1とステップ3の結果を掛け合わせる。
  • 計算:
    • (女子4人の並び方) × (男子3人を女子の間と両端に入れる並び方)
    • 4! × 5P3 = (4 × 3 × 2 × 1) × (5 × 4 × 3) = 24 × 60 = 1440
  • 答え: 1440通り

4. 例題:特定の文字が隣り合わない並び方 (a, b が隣り合わない)

  • 問題: a, b, c, d, e の5文字をすべて使って一列に並べるとき、a と b が隣り合わない並び方は何通りあるか?
  • 考え方(アプローチ1:余事象):
    • ステップ1: 全体の並び方。5文字すべてを並べるので 5! = 120通り。
    • ステップ2: a と b が隣り合う場合を計算する。(ab) をひとかたまりと見る。
      • (ab), c, d, e の4つの要素の並び方:4! = 24通り。
      • ひとかたまり (ab) の中の並び方 (ab または ba):2! = 2通り。
      • よって、a と b が隣り合う並び方は 4! × 2! = 24 × 2 = 48通り。
    • ステップ3: 全体から隣り合う場合を引く。
      • 120 – 48 = 72通り。
  • 考え方(アプローチ2:間に入れる):
    • ステップ1: a, b 以外の c, d, e の3文字を並べる。3! = 6通り。
      • 例: c d e
    • ステップ2: c, d, e の間と両端には、a, b を入れる場所が 4箇所 ( _ ) ある。
      • _ c _ d _ e _
    • ステップ3: この4箇所から a と b が入る場所を2箇所選んで並べる。選び方は 4P2 通り。
      • 4P2 = 4 × 3 = 12通り。
    • ステップ4: 積の法則により、ステップ1とステップ3の結果を掛け合わせる。
      • 3! × 4P2 = 6 × 12 = 72通り。
  • 答え: 72通り (どちらのアプローチでも同じ結果になる)

第5章:まとめと注意点

順列は場合の数の基本であり、多くの応用問題の基礎となります。

1. 順列 (nPr) のポイント

  • 異なる n 個から r 個を選んで順番に並べる
  • 計算式:nPr = n × (n – 1) × … × (n – r + 1) = n! / (n – r)!
  • 特に、n 個すべてを並べる場合は nPn = n!

2. 隣り合う問題の解き方

  • 隣り合うものを**「ひとかたまり」**と見る。
  • (全体の並び方) × (かたまり内部の並び方) を計算する。

3. 隣り合わない問題の解き方

  • 余事象: 全体から「隣り合う場合」を引く(特に2つが隣り合わない場合に有効)。
  • 間に入れる: 他のものを先に並べ、その「間や両端」に入れる(特に指定されたものすべてが隣り合わない場合に有効)。

4. 注意点

  • 組合せとの区別: 順列は「順番を区別する」場合に適用されます。単に「選ぶだけ」で順番を問わない場合は「組合せ (C)」を用います。問題文をよく読み、順番が関係あるかを見極めることが重要です。
  • 同じものを含む場合: 並べるものの中に同じものが含まれる場合は、単純な nPr や n! では計算できず、「同じものを含む順列」の考え方が必要になります(後の記事で詳述)。
  • 計算ミス: 階乗や P の計算は数が大きくなりやすいため、計算ミスに注意が必要です。

潜在的なリスクについて:

この記事では、基本的な順列の計算と、「隣り合う」「隣り合わない」という典型的な応用問題に焦点を当てました。しかし、順列には円順列、じゅず順列、同じものを含む順列など、さらに多様なバリエーションが存在します。これらの特殊なケースについては、それぞれ別の考え方や公式が必要となります。また、「隣り合わない」問題で対象が3つ以上になると、余事象の考え方(全体から引く方法)は非常に複雑になることがあり、「間に入れる」方法がより有効な場合が多いなど、問題設定に応じた適切な解法の選択が求められます。この記事の内容だけで全ての順列問題を解けるわけではない点にご留意ください。

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