4組合せ (C):基本的な計算と「選ぶだけ」の問題を攻略

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場合の数を学ぶ上で、「順列(P)」と並んで根幹をなすのが「組合せ(C)」です。順列が選んだものを「並べる順番」まで区別したのに対し、組合せは単純に「選ぶ」だけで、その順番は問いません。例えば、チームメンバーを選ぶ、いくつかの品物を選ぶといった場面で使われます。ここでは、組合せの基本的な考え方、計算方法 (nCr)、そして典型的な問題の解き方について解説します。


目次

第1章:組合せ (Combination) とは?

まず、組合せがどのような考え方なのか、順列との違いを明確にしながら理解しましょう。

1. 組合せの定義 – 順番は関係ない選び方

  • 異なる n 個のものの中から、順番を区別せずに r 個を選ぶ選び方の総数を「n 個から r 個取る組合せ」といい、その総数を記号 nCr または C(n, r) 、 (rn​) などで表します。
  • 最大のポイントは「順番を区別しない」ことです。選ばれた要素の集合(メンバー)が同じであれば、どのような順番で選ばれたとしても1通りと数えます。
  • 具体例:
    • A, B, C の3人から2人の代表を選ぶ場合。
    • 選び方として考えられるのは {A, B}, {A, C}, {B, C} の3組です。
    • {A, B} という組を選ぶことと、{B, A} という組を選ぶことは、最終的な代表メンバーが同じなので、組合せでは同一の選び方(1通り)とみなします。
    • したがって、3人から2人を選ぶ組合せの総数は 3通り となります。

2. 順列 (P) との違い

  • 順列 (nPr): n 個から r 個を選んで、一列に並べる。順番が異なれば違うものとして数える。
    • 例:A, B, C から2人を選んで会長・副会長にする → (A会長, B副会長) と (B会長, A副会長) は違う。計算は 3P2 = 6通り。
  • 組合せ (nCr): n 個から r 個を選ぶだけ。選んだメンバーの組が同じなら、順番に関係なく同じものとして数える。
    • 例:A, B, C から2人の代表を選ぶ → {A, B} と {B, A} は同じ。計算は 3C2 = 3通り。
  • 問題文を読んで、「選んだあとに並べる必要があるか?」「役職や位置など、順番に意味があるか?」を考えることが、P と C を使い分ける鍵となります。

3. 具体例:チームメンバーの選出

  • 10人の選手の中から、試合に出場する3人を選ぶ方法は何通りか?
    • この場合、選ばれた3人が誰であるかが重要であり、選ばれた順番は関係ありません(特定のポジションが決まっていない限り)。
    • したがって、これは組合せの問題となり、10C3 で計算します。(計算方法は後述)

第2章:組合せの計算方法 (nCr)

組合せの総数を求めるための公式 nCr と、その使い方を学びましょう。

1. nCr の計算公式

  • n 個から r 個取る組合せ nCr は、次の公式で計算できます。
    • nCr = nPr / r!
    • または、順列の公式 nPr = n! / (n – r)! を代入して、
    • nCr = n! / {r! × (n – r)!}
  • 具体的な計算手順としては、以下のように書くと分かりやすいです。
    • nCr = {n × (n – 1) × … × (n – r + 1)} / {r × (r – 1) × … × 1}
    • つまり、「分母は r から 1 までの r 個の数の積 (r!)」、「分子は n から始めて r 個の数の積 (nPr の分子部分と同じ)」となります。

2. 公式の導出:順列との関係から

  • なぜ nCr = nPr / r! となるのかを理解しましょう。
  • 順列 (nPr) は、「n 個から r 個を選び (Step1)、その選んだ r 個を一列に並べる (Step2)」という2段階のプロセスと考えることができます。
  • Step1 の「n 個から r 個を選ぶ」方法が nCr 通りです。
  • Step2 の「選んだ r 個を一列に並べる」方法は、r 個のものを並べる順列なので r! 通りです。
  • 積の法則により、この2段階のプロセスの総数 nPr は、次のように表せます。
    • nPr = (Step1 の場合の数) × (Step2 の場合の数)
    • nPr = nCr × r!
  • この式を変形すると、組合せの公式が得られます。
    • nCr = nPr / r!

3. 計算を楽にするコツ:nCr = nC(n-r)

  • 組合せには、次の重要な性質があります。
    • nCr = nC(n-r)
  • これは、「n 個の中から r 個を選ぶ」ことは、「n 個の中から残す (n – r) 個を選ぶ」ことと同じであることを意味します。どちらかを選べば、他方は自動的に決まります。
  • この性質を使うと、計算が楽になることがあります。特に r が n の半分より大きい場合に有効です。
  • 例:10C8 の計算
    • 公式通り計算すると:10C8 = (10 × 9 × 8 × 7 × 6 × 5 × 4 × 3) / (8 × 7 × 6 × 5 × 4 × 3 × 2 × 1)
    • これは大変です。
    • nCr = nC(n-r) の性質を使うと:10C8 = 10C(10-8) = 10C2
    • 10C2 = (10 × 9) / (2 × 1) = 90 / 2 = 45
    • 計算が非常に簡単になりました。

4. 具体的な計算例

  • 例1:7C3 の計算
    • 7C3 = (7 × 6 × 5) / (3 × 2 × 1) = (7 × 6 × 5) / 6 = 7 × 5 = 35
  • 例2:6C4 の計算
    • 6C4 = 6C(6-4) = 6C2 (性質を利用)
    • 6C2 = (6 × 5) / (2 × 1) = 30 / 2 = 15
  • 例3:5C5 の計算 (n 個から n 個すべてを選ぶ)
    • 5C5 = 5! / (5! × 0!) = 1 / 1 = 1 (選び方は1通りしかない)
    • 性質を使うと、5C5 = 5C(5-5) = 5C0。
    • nC0 = 1 と定義されます(n個から0個選ぶ方法は「選ばない」という1通り)。
    • よって 5C0 = 1。

第3章:組合せの基本的な問題

nCr を使って、典型的な組合せの問題を解いてみましょう。

1. 例題:グループの選び方

  • 問題: 9人の生徒の中から、4人の委員を選ぶ方法は何通りあるか?
  • 考え方:
    • 9人の異なる生徒から4人を選ぶ。委員に選ばれる順番は関係ない(単なる委員)。
    • したがって、組合せの問題であり、9C4 を計算する。
  • 計算:
    • 9C4 = (9 × 8 × 7 × 6) / (4 × 3 × 2 × 1)
    • 約分する:(9 × 2 × 7 × 1) / (1 × 1 × 1 × 1) = 126 (8を4×2で、6を3で割る)
  • 答え: 126通り

2. 例題:図形(点から直線・三角形)の個数

  • 問題: 平面上に、どの3点も一直線上にない7個の点がある。これらの点のうち、2点を結んでできる直線は何本あるか?また、3点を結んでできる三角形は何個あるか?
  • 考え方(直線):
    • 直線は、7個の点から2個の点を選べば一意に決まる。
    • 選ぶ点の順番は関係ない(点Aと点Bを結ぶ直線と、点Bと点Aを結ぶ直線は同じ)。
    • したがって、7個の点から2個を選ぶ組合せ 7C2 を計算する。
  • 計算(直線):
    • 7C2 = (7 × 6) / (2 × 1) = 42 / 2 = 21
  • 答え(直線): 21本
  • 考え方(三角形):
    • 三角形は、7個の点から3個の点を選べば一意に決まる(どの3点も一直線上にないため)。
    • 選ぶ点の順番は関係ない(△ABCと△BACは同じ三角形)。
    • したがって、7個の点から3個を選ぶ組合せ 7C3 を計算する。
  • 計算(三角形):
    • 7C3 = (7 × 6 × 5) / (3 × 2 × 1) = (7 × 6 × 5) / 6 = 35
  • 答え(三角形): 35個

3. 例題:特定の条件を含む選び方(~を含む、~を含まない)

  • 問題: 男子6人、女子4人の合計10人の中から、4人の代表を選ぶ。
    • (1) 特定の男子 A さんを必ず含むように選ぶ方法は何通りか?
    • (2) 特定の女子 B さんを必ず含まないように選ぶ方法は何通りか?
    • (3) 男子2人、女子2人を選ぶ方法は何通りか?
  • 考え方 (1):Aさんを含む
    • 4人の枠のうち、1人は A さんで確定している。
    • 残りの (4 – 1) = 3 人の代表を、A さんを除く残りの (10 – 1) = 9 人の中から選べばよい。
    • したがって、9人から3人を選ぶ組合せ 9C3 を計算する。
  • 計算 (1):
    • 9C3 = (9 × 8 × 7) / (3 × 2 × 1) = (3 × 4 × 7) / 1 = 84
  • 答え (1): 84通り
  • 考え方 (2):Bさんを含まない
    • 最初から B さんは除外して考える。
    • つまり、B さんを除く残りの (10 – 1) = 9 人の中から、4人の代表を選ぶ。
    • したがって、9人から4人を選ぶ組合せ 9C4 を計算する。
  • 計算 (2):
    • 9C4 = (9 × 8 × 7 × 6) / (4 × 3 × 2 × 1) = 126 (第3章 例題1で計算済み)
  • 答え (2): 126通り
  • 考え方 (3):男子2人、女子2人
    • これは2段階の選択と考える(積の法則)。
    • Step1: 男子6人の中から2人を選ぶ(組合せ 6C2)。
    • Step2: 女子4人の中から2人を選ぶ(組合せ 4C2)。
    • Step1 と Step2 は独立しているので、それぞれの結果を掛け合わせる。
  • 計算 (3):
    • 6C2 = (6 × 5) / (2 × 1) = 15
    • 4C2 = (4 × 3) / (2 × 1) = 6
    • 求める場合の数 = 6C2 × 4C2 = 15 × 6 = 90
  • 答え (3): 90通り

第4章:組合せと他の概念との関係

組合せは、順列や確率といった他の数学的概念と密接に関連しています。

1. 順列と組合せの使い分け

  • 何度も強調しますが、最も重要なのは「順番を区別するかどうか」です。
    • 区別する(並べる、役職があるなど)→ 順列 (P)
    • 区別しない(選ぶだけ、グループを作るなど)→ 組合せ (C)
  • 迷ったときは、「選んだ後に並べる必要があるか?」と考えてみましょう。もし並べる必要があるなら、それは順列か、あるいは組合せで選んでから並べる(C × P!)という操作になります。

2. 確率計算への応用

  • 確率は「(注目する事象の場合の数) / (起こりうるすべての事象の場合の数)」で計算されます。
  • この「場合の数」を計算する際に、組合せ (nCr) が非常によく使われます。
  • 例: 赤玉5個、白玉3個が入った袋から、同時に2個の玉を取り出すとき、2個とも赤玉である確率。
    • 全事象:8個の玉から2個を選ぶ組合せ → 8C2 = (8×7)/(2×1) = 28通り。
    • 注目する事象:5個の赤玉から2個を選ぶ組合せ → 5C2 = (5×4)/(2×1) = 10通り。
    • 確率 = 10 / 28 = 5 / 14。
  • このように、確率の問題を解くためには、組合せの計算が必須となる場面が多くあります。

第5章:まとめと注意点

組合せは、「選ぶ」という操作に特化した考え方です。

1. 組合せ (nCr) のポイント整理

  • 異なる n 個から r 個順番を区別せずに選ぶ
  • 計算式:nCr = nPr / r! = n! / {r! × (n – r)!}
  • 性質:nCr = nC(n-r) (計算の簡略化に役立つ)
  • nC0 = 1nCn = 1

2. どんなときに組合せを使うか?

  • 代表、委員、グループなどを選ぶとき。
  • 複数のものの中からいくつかを取り出す、抜き出すとき(取り出す順番が問われない場合)。
  • 図形の構成要素(点、直線、対角線など)の数を数えるとき。
  • 確率の問題で、場合の数を数えるとき。

3. 注意事項

  • 異なるものから選ぶ: nCr の公式は「異なる n 個のもの」が前提です。同じものを含む場合は、「重複組合せ(H)」という別の考え方が必要になります(後の記事で詳述)。
  • 重複なく選ぶ: 基本的な組合せでは、同じものを複数回選ぶことはできません(非復元抽出)。重複を許して選ぶ場合は、「重複組合せ(H)」を使います。
  • 順列との混同: 問題文の意図を正確に読み取り、順番を区別する必要があるのかないのかを慎重に判断してください。ここを間違えると、答えが大きく変わってしまいます。

潜在的なリスクについて:

この記事では、基本的な組合せ (nCr) の計算と、それを用いた典型的な「選び方」の問題について解説しました。しかし、組合せの概念はさらに広く応用されます。例えば、選んだものをさらにグループに分ける「組分け問題」や、同じものを含む場合の選び方を扱う「重複組合せ」、特定の条件が複雑に絡み合う問題など、より発展的な内容については、この記事だけではカバーしきれません。特に、順列 (P) と組合せ (C) の使い分けは、場合の数・確率を学ぶ上で最もつまずきやすいポイントの一つであり、多くの演習を通じて正確な判断力を養う必要があります。

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