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「ただよび」復活より考える、YouTube予備校のエコシステム戦略

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目次

概観(以前のもの)

 「ただよび」の公式サイトが閉鎖しているため、以前のものを再掲している。
 特段な特徴はなく、一般的に付加価値の低い汎用的な基礎・基本系の学習を無料で、一般的に付加価値の高い専門的な応用・発展系の学習および特定の大学入試・資格試験を中心に有料で提供している。

理念

 公式HPによれば、「ただよび」の理念は、「学ぶ意欲があれば、環境に関係なく、一流講師の授業がいつでもどこでも受けられ、大学合格を目指すことができる社会をつくること」、である。

 事業名に「ただ」とあるように、当初、無料であることが提案価値の中核であった。いつの間にか、プレミアムコースが追加され、参考書が出版され、というように有料コンテンツが増えていった。なので、全てが「ただ」というわけではない。とは言え、十分なコンテンツが「ただ」で配信されている。

サービス

 基礎から応用、志望校対策まで、フルラインナップで授業が提供されている。また、若干ではあるものの、社会人向けの講座も扱っている。
 以下のものに加え、法人向けに学習支援系ソフトを提供しているが、これは扱わない。

ベーシック:無料

 基礎・基本の講座をYouTube上で、無料で配信するというもの。昨今の問題をうけて講師の配信している動画を視聴した限りでは、共通テスト・日東駒専、のレベルに合格することのようである。

 文系と理系とでチャンネルが分かれており、再生リストでシリーズを選べるようになっている。ただし、文系でも理系でも課される科目については、2つのチャンネルを跨ぐ必要があり、1つのチャンネルで完結することはない。

プレミアム:有料

 応用・志望校対策の講座を月額定額制で配信するというもの。料金は、税込1980円/月、である。テキストは別売で、1320円/冊、である。

 ベーシックと併せて視聴することで、基礎から入試まで全てに対応することができる。ただし、志望校対策がベーシックでも公開されている大学もあるので、ベーシックとプレミアムがどのような区別・目的があるのかは不明。おそらく、「ただよび」としての戦略が曖昧なのだろう。

参考書

 直接的なサービスではないが、参考書も出版している。Amazonのレビューを見る限りでは、講師のファン向けの参考書の印象が強い。説明欄を見る限りでは、映像授業との相乗効果を謳う文句は入っていない。価格は1500円前後と標準的。

エコシステム戦略

概要

 ここ2年はエコシステム研究の動向を怠っていたので確認できていないが、少なくとも2年前は3つの系譜を持つビジネス・エコシステムが主流で、それに新しく1つ加わり、4つになったと記憶している。日本では提唱者の定義などを引用する傾向があるが、そもそも世界的に定義が定まっていないものを、形式的に定義づけても意味はない。

 今回は、私が推している、補完財による結合によって価値が増大する関係、と定義づける。エコシステムとは、日本的に言えば経済圏である。〇〇経済圏という言葉を聞いたことがあるだろう。
 例えば、楽天経済圏である。楽天経済圏はポイントサービスを中心に様々なサービスが提供されており、価値が増大していると言える。単体のサービスでも十分に価値高めていると言える。他にも、Apple製品の「製品間のシームレスな連携」も当てはまる。
 さらに言えば、エコシステムは一社完結系と他社連結系とで類型化される。先ほどのポイントサービスを例に取れば、楽天やdocomoは比較的一社で完結していると言える。一方で、ポンタポイントやTポイントは様々なサービスが加盟している。

ただよびの展開

 今回、ただよび、の復活に関わる動画をいくつか視聴する中で、今までとは別の収益構造をもっている印象を受けた。動画を視聴する限りでは、クラウドファンディング(寄付)と広告収益、不明であるが出版関係、この辺が想像つくところだろう。となると、講師への利益配分は寄付と広告収入が主で、一部講師には出版関係が加わるといったところだろうか。もちろん、高校への講師派遣などサービスの展開は様々である。

 今回、一連の関連動画を視聴して感じたことは、コラボとゲートウェイ、である。
 コラボとは、一時、様々なYouTuberが取り入れていた手法で、前後編で分けて別々のチャンネルで動画を投稿し、両チャンネルで視聴回数を稼ぐ、というもの。他にも、質問と回答、を組み合わせる手法もある。このように、一つのトピックについてチャンネルを跨いで動画投稿することで、小規模ながら経済圏を確立し、その経済圏で視聴回数を稼ぐことができる。実は、「ただよび倒産」も当てはまる。様々な人物が自社メディアで情報発信をすることで、そのトピックスについて知りたい人(この数が経済規模)を集中的に提供することができる。
 ゲートウェイとは、入り口という意味であるが、いわゆるフリーミアムである。ただ、これは前項で示した「従来の『ただよび』」と同じである。しかし、今回は異なっている。何が違うのかというと、付加価値の高い有料サービスの提供主体が「ただよび」ではなく「講師個人のサービス」ということである。つまり、「ただよび」で授業等を無料提供して質を知ってもらい、自身の提供する有料サービスへ誘引するのである。これにより、「ただよび」へのコンテンツ提供は広告宣伝費となるので、難しいだろうが、プラスになる可能性がある。

おわりに

 正直なところ「もりてつ」氏が頻繁に動画を投稿していることから、コラボ程度はあるだろうな、という予想はしていた。また、チャンネルの運営・コンサル機能を担うことも予想はしていた。「もりてつ」氏の有する同様の授業動画を扱うチャンネルとのカニバリ、「ただよび」と「もりてつ」氏との関係性については気になっていた。前者については、今でも不明のままだが、後者については「ただよび」としては「森田先生(もりてつ氏)と宗先生に手伝ってもらうことを前提に『ただよび』を買収」とのことだが、独立性は強い方針のようだ。実際、資金面の提供を「もりてつ」氏から受けていないこと。その理由として、「他の講師との上下関係ができてしまうことを避けるため」、としている。今後、両者の関係性がどうなっていくのか、には注目していきたい。
 驚かされたのが、フリーミアム・モデル(ほぼ予想)で収益化するということだ。ルートや受講モデルは様々な映像予備校で提供されているので、今日では全く新しくない。ただ、これを個人で有料サービスを提供する講師が担当するとなると話は全く変わってくる。基本学習は「ただよび」で、応用学習は「私のサービスで」となるのではないか、という点に注目していきたい。

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