【基盤 英語】モジュール2:名詞の種類と識別基準

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目次

本モジュールの目的と構成

英文を読む際、”information”に冠詞aを付けてしまう、”news”を複数形として扱ってしまうといった誤りは、名詞の種類を正確に識別できていないことに起因する。名詞は英文中で主語・目的語・補語として機能する中心的な語類であるが、その種類によって冠詞の選択、数の扱い、限定詞との共起関係が根本的に異なる。種類の識別を誤れば、文法的に不適格な文を産出するだけでなく、読解においても名詞句の指示対象を取り違え、文意の把握に失敗する。名詞の種類を体系的に理解し、各種類の形態的・統語的特徴に基づいて正確に識別する能力を確立することが、本モジュールの目的である。

本モジュールは以下の4つの層で構成される:

統語:名詞の形態的分類と識別
名詞を可算名詞と不可算名詞に大別し、さらに普通名詞・固有名詞・集合名詞・物質名詞・抽象名詞という下位分類の定義と識別基準を確立する。各分類の形態的特徴(複数形の有無、冠詞との共起パターン)を手順化し、初見の名詞に対しても分類を判定できる能力を養成する。

意味:名詞の種類と意味的特性の対応
各名詞の種類が持つ意味的特性を理解し、可算・不可算の区別が単なる形式的分類ではなく、対象の捉え方(個別的か連続的か)を反映していることを把握する。多義語が種類によって意味を変える現象や、文脈に応じた可算・不可算の転換を正確に処理できる能力を確立する。

語用:名詞の種類に応じた表現選択
名詞の種類に基づいて、冠詞・限定詞・数量表現を正確に選択する能力を養成する。much/manyの使い分け、a few/a littleの選択など、名詞の種類が表現選択を規定する場面での判断手順を確立する。

談話:名詞句の文章内での機能と照応
文章中で名詞句がどのように導入され、再度言及される際にどのような形式(代名詞・指示語・同義表現)で照応されるかを把握する。名詞の種類が照応形式に与える影響を理解し、複数文にまたがる名詞句の追跡能力を確立する。

このモジュールを修了すると、初見の名詞に出会った際にその種類を形態的・統語的特徴から判定し、種類に応じた冠詞選択や数の処理を正確に実行できるようになる。共通テストや中堅私大の文法問題で頻出する名詞の数・冠詞に関する設問に対して、暗記ではなく名詞の種類という原理から解答を導出する力が身につく。加えて、読解場面で名詞句の指示対象を正確に特定し、文章全体の意味を追跡する能力が確立される。これらの能力は、後続のモジュールで冠詞の体系的理解や名詞句の複雑な構造を学ぶ際の出発点となる。

統語:名詞の形態的分類と識別

英文の中で名詞がどのような形態をとるかは、その名詞がどの種類に属するかによって決まる。可算名詞は複数形語尾-sを持ちうるが、不可算名詞は原則として複数形をとらない。この形態的差異は冠詞の選択にも直結し、a/anは可算名詞の単数形にのみ付与される。統語層を終えると、名詞の形態的特徴(複数形の可否、冠詞との共起パターン、限定詞との組み合わせ)に基づいて、名詞の種類を正確に判定できるようになる。品詞の基本的な名称と機能の理解を備えていれば、ここから先の分析に進められる。普通名詞と固有名詞の区別、可算名詞と不可算名詞の識別、集合名詞・物質名詞・抽象名詞の判定を扱う。統語層の能力がなければ、意味層以降で名詞の意味的特性や表現選択を正確に処理することは困難となる。

【関連項目】

[基盤 M01-統語]
└ 品詞の機能的定義と分類体系を確認する

[基盤 M09-統語]
└ 冠詞の種類と名詞との共起関係を把握する

[基盤 M14-統語]
└ 文の要素としての名詞の統語的機能を確認する

【基礎体系】

[基礎 M02-統語]
└ 名詞句の内部構造と限定の仕組みを理解する

[基礎 M03-意味]
└ 冠詞と名詞の指示機能の原理的理解を深める

1. 可算名詞と不可算名詞の定義と識別

名詞の学習において最初に直面する問題は、ある名詞が可算であるか不可算であるかをどのように判定するかである。”I need an information.”という文が不適格であるのは、informationが不可算名詞であり冠詞aを伴えないためであるが、この判定を「informationは不可算だから覚える」という方法で処理していては、初見の名詞に対応できない。

可算名詞と不可算名詞の識別能力によって、次の能力が確立される。第一に、名詞の形態的特徴から可算・不可算を判定できるようになる。第二に、辞書の表記([C]と[U])を正確に読み取れるようになる。第三に、冠詞a/anを付与できる名詞とできない名詞を区別できるようになる。第四に、someやmuchなどの数量表現が可算・不可算のどちらと共起するかを判断できるようになる。

可算・不可算の識別は、次の記事で扱う固有名詞・集合名詞・物質名詞・抽象名詞の下位分類へと直結する。

1.1. 可算名詞と不可算名詞の定義

一般に可算名詞と不可算名詞は「数えられるものが可算、数えられないものが不可算」と漠然と理解されがちである。しかし、この理解は”furniture”(家具)が不可算である理由を説明できないという点で不正確である。椅子や机は物理的に数えられるにもかかわらず、furnitureは不可算名詞として扱われる。同様に、“luggage”(荷物)や”equipment”(装置)も、構成要素は個別に存在するが英語では不可算名詞に分類される。この事実は、可算・不可算の区別が対象の物理的な数え易さとは別の原理に基づいていることを示している。学術的・本質的には、可算名詞とは「個別の境界を持つ単位として認識され、複数形語尾-sを付与できる名詞」であり、不可算名詞とは「連続的・均質的な実体として認識され、原則として複数形をとらない名詞」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、可算・不可算の区別は対象の物理的性質ではなく、英語がその対象をどのような単位として捉えるかという言語的規約に基づいているためである。たとえば日本語では「家具を三つ買った」と数えられるが、英語ではfurnitureを一つの均質的な集合概念として扱うため、three furnituresとはできない。このように、可算・不可算の区別は言語ごとに異なる概念化の方法を反映しており、日本語の感覚を直接持ち込むことができない領域である。受験生がこの領域で誤りを犯す最大の原因は、日本語では数えられるという直感を英語にそのまま適用してしまうことにある。

この原理から、名詞の可算・不可算を判定する具体的な手順が導かれる。手順1では複数形の可否を確認する。当該名詞に-sを付けて複数形にできるかを確認することで、可算名詞かどうかの第一段階の判定ができる。手順2では冠詞a/anとの共起を確認する。a/anを付けて自然な表現になるかを検証することで、可算単数形としての使用が可能かどうかを判定できる。手順3では辞書の品詞表記を確認する。辞書で[C](countable)と表記されていれば可算名詞、[U](uncountable)と表記されていれば不可算名詞であり、[C, U]の両方が記載されている場合は意味によって可算・不可算が切り替わることを意味する。

例1: I bought three books at the store.
→ booksに複数形語尾-sが付与されている。a bookという形も自然である。
→ 判定:可算名詞。個別の境界を持つ単位として認識されている。

例2: She gave me some advice on the matter.
→ advicesという複数形は不適格である。an adviceという形も不自然である。
→ 判定:不可算名詞。個別の単位に分割できない連続的な実体として扱われる。

例3: The furniture in the room was expensive.
→ furnituresという複数形は不適格である。a furnitureも不自然である。
→ 判定:不可算名詞。椅子や机は個別に数えられるが、英語ではfurnitureを総称的・均質的な実体として捉える。

例4: We need more equipment for the experiment.
→ equipmentsという複数形は不適格である。an equipmentも不自然である。
→ 判定:不可算名詞。個々の機器は数えられるが、equipmentは集合的な概念として不可算に分類される。

以上により、名詞の形態的特徴と辞書表記を手がかりとして、可算名詞と不可算名詞を正確に判定することが可能になる。

1.2. 不可算名詞の主要カテゴリと数量表現

不可算名詞とは何か。「数えられないから不可算」という回答は、不可算名詞の内部にどのような種類があるか、また不可算名詞の量をどのように表現するかを説明できないという点で不十分である。学術的・本質的には、不可算名詞は物質名詞(water, goldなど素材・物質を表す語)、抽象名詞(information, adviceなど抽象概念を表す語)、集合的不可算名詞(furniture, equipmentなど集合概念を表す語)の三つのカテゴリに分類される。この分類が重要なのは、カテゴリごとに典型的な数量表現の選択パターンが異なり、また可算転換が生じる条件もカテゴリによって異なるためである。物質名詞はa glass of, a piece ofのような容器・単位による個別化が典型的であり、抽象名詞はa piece of, an act ofのような抽象的単位による個別化が多く、集合的不可算名詞はa piece of, an item ofのような構成要素を取り出す個別化が用いられる。受験生がこの領域で犯しやすい誤りは、不可算名詞を一括りにして全て同じ処理を適用してしまうことであり、カテゴリの違いを意識することが正確な処理の出発点となる。

この原理から、不可算名詞を正確に扱う手順が導かれる。手順1ではカテゴリを特定する。当該名詞が素材・物質を指すか、抽象概念を指すか、個別要素の集合を指すかを確認することで、適切な数量表現の選択に進める。手順2では数量表現を選択する。不可算名詞にはmuch, a little, a great deal ofなどを用い、many, a few, severalは使用できないことを確認することで、文法的に適格な表現を産出できる。手順3では個別単位が必要な場合の処理を確認する。a piece of advice, a glass of waterのように、単位名詞を用いて不可算名詞に数量の境界を与えることで、不可算名詞でありながら個別の量を表現できる。

例1: Could I have a glass of water?
→ waterは物質名詞(不可算)。a waterとは言えないため、a glass ofという単位名詞で量を限定する。
→ 適切な数量表現:much water, a little water, two glasses of water

例2: She has a lot of experience in teaching.
→ experienceは抽象名詞(不可算)。an experienceとすると「一つの経験・体験」という可算用法に転換するため、意味が異なる点に注意が必要である。
→ 適切な数量表現:much experience, a great deal of experience

例3: Let me give you a piece of advice.
→ adviceは抽象名詞(不可算)。an adviceは不適格であり、a piece ofを用いて個別化する。
→ 適切な数量表現:some advice, a piece of advice, two pieces of advice

例4: We need to buy some new furniture.
→ furnitureは集合的不可算名詞。個別に数える場合はa piece of furniture, an item of furnitureとする。
→ 適切な数量表現:much furniture, a lot of furniture, several pieces of furniture

以上により、不可算名詞をカテゴリ別に分類し、各カテゴリに応じた数量表現を正確に選択する能力が確立される。

2. 普通名詞と固有名詞の定義と識別

名詞を分類する際、可算・不可算の区別と並んで基本となるのが、普通名詞と固有名詞の区別である。”japan”と”Japan”はつづりが同一でも、前者は漆器を意味する普通名詞、後者は国名を表す固有名詞であり、冠詞の有無と大文字表記が異なる。この区別を正確に行えなければ、文法問題での冠詞選択を誤るだけでなく、読解においても指示対象の同定に支障をきたす。

普通名詞と固有名詞の識別能力によって、次の能力が確立される。第一に、名詞が特定の唯一の対象を指す固有名詞か、ある類の成員を指す普通名詞かを判定できるようになる。第二に、固有名詞の大文字表記規則を正確に適用できるようになる。第三に、固有名詞に冠詞theが付く場合と付かない場合を区別できるようになる。

普通名詞と固有名詞の識別は、後続の記事で扱う集合名詞の理解や、意味層での名詞の指示対象の特定に直結する。

2.1. 普通名詞と固有名詞の定義と判定手順

一般に固有名詞は「人名や地名など大文字で始まる名詞」と理解されがちである。しかし、この理解では”the United States”にtheが付く理由や、”the Thames”と”London”で冠詞の有無が異なる理由を説明できないという点で不十分である。学術的・本質的には、固有名詞とは「特定の唯一の対象に付与された名称であり、その対象を他の対象から区別するために用いられる名詞」であり、普通名詞とは「ある類に属する任意の成員を指す名詞」として定義されるべきものである。この定義が重要なのは、固有名詞は指示対象が唯一に定まるために原則として冠詞を必要としないが、歴史的・慣習的な理由でtheを伴う固有名詞が存在するという例外の理解に繋がるためである。theを伴う固有名詞にはいくつかのパターンがあり、複数語からなる国名(the United Kingdom, the United States)、河川名(the Nile, the Thames)、山脈名(the Alps, the Andes)、海洋名(the Pacific, the Atlantic)などが代表的である。これらにtheが付く歴史的背景として、元来は普通名詞句であったもの(the united states=合衆された州群、the alps=高い山々)が固有名詞化した経緯があり、theはその名残として残存している。一方、単一語の都市名・国名・人名は純粋に固有の名称であるためtheを必要としない。この原理を把握しておくと、初見の固有名詞にtheが必要かどうかをある程度予測できるようになる。

この原理から、普通名詞と固有名詞を判定する手順が導かれる。手順1では大文字表記を確認する。文頭以外で語頭が大文字であれば固有名詞の可能性が高いと判断でき、判定の出発点となる。手順2では唯一性を検証する。その名詞が世界に一つしかない特定の対象を指しているかを確認することで、固有名詞としての地位を確定できる。手順3では冠詞の要否を判定する。人名・都市名・国名(単一語)は原則無冠詞、複数語からなる国名や河川名・山脈名は慣習的にtheを伴うことを確認することで、適切な冠詞処理ができる。

例1: Tokyo is the capital of Japan.
→ Tokyo, Japanはいずれも文頭以外で大文字。唯一の都市・国を指す。
→ 判定:固有名詞。単一語の都市名・国名であり、無冠詞。

例2: The United Kingdom consists of four countries.
→ United Kingdomは大文字表記で唯一の国家を指すが、複数語からなる国名であるためtheを伴う。
→ 判定:固有名詞。複数語構成の国名にはtheが付く慣習がある。

例3: I bought a book about the history of the Nile.
→ bookは大文字表記でなく、任意の一冊を指す普通名詞(可算)。Nileは唯一の河川を指す固有名詞で、河川名にはtheが付く。
→ 判定:bookは普通名詞、the Nileは固有名詞。

例4: She works at a university in Cambridge.
→ universityは普通名詞(任意の大学)。Cambridgeは固有名詞(特定の都市)で無冠詞。
→ 判定:universityは普通名詞、Cambridgeは固有名詞。

以上により、名詞の大文字表記・唯一性・冠詞パターンという三つの手がかりから、普通名詞と固有名詞を正確に判定することが可能になる。

3. 集合名詞の定義と識別

集合名詞は、名詞の種類の中でも特に誤りが生じやすい領域である。”The team is ready.”と”The team are arguing.”のいずれが正しいかという問いに対して、集合名詞の性質を理解していなければ判断できない。集合名詞は一つの語で複数の構成員からなる集団を指すため、単数扱いにも複数扱いにもなりうるという特殊性を持つ。

集合名詞の識別能力によって、次の能力が確立される。第一に、集合名詞を他の名詞の種類から区別できるようになる。第二に、集合名詞が単数扱いになる場合と複数扱いになる場合の基準を理解できるようになる。第三に、主語と動詞の一致において集合名詞を正確に処理できるようになる。

集合名詞の理解は、語用層での表現選択や談話層での照応関係の把握においても前提となる。

3.1. 集合名詞の定義と数の扱い

集合名詞には二つの捉え方がある。一つは集団を一つの単位として見る捉え方、もう一つは集団の構成員に焦点を当てる捉え方である。family, team, committeeが単数動詞をとる場合と複数動詞をとる場合があるのは、この二つの捉え方のいずれを話者が採用しているかによる。「人の集まりを表す名詞」という理解だけでは、この動詞選択の揺れを処理できない。学術的・本質的には、集合名詞とは「複数の構成員からなる集団を一つの単位として指す名詞」であり、話者がその集団を一体的な単位として捉えるか、構成員の個別性に焦点を当てるかによって、単数扱い・複数扱いが切り替わるものとして定義されるべきである。この定義が重要なのは、主語と動詞の一致という文法規則の適用において、集合名詞の扱いを誤ると文法問題で失点するだけでなく、読解でも文の主述関係を取り違えるためである。なお、集合名詞の単数・複数扱いにはイギリス英語とアメリカ英語で傾向の違いがある。イギリス英語では複数扱い(The team are…)がより一般的であるのに対し、アメリカ英語では単数扱い(The team is…)が優勢である。入試英語ではアメリカ英語の基準が多く採用されるが、イギリス英語の用例に出会った際に混乱しないためにも、判定の原理を理解しておくことが重要である。さらに、policeやpeopleのように常に複数扱いとなる集合名詞と、family, teamのように文脈次第で切り替わる集合名詞を区別する必要がある。

この原理から、集合名詞の数の扱いを判定する手順が導かれる。手順1では集合名詞であるかを確認する。当該名詞が複数の構成員からなる集団を指すかどうかを検証することで、集合名詞としての判定ができる。手順2では文脈から単位性か個別性かを判断する。集団全体が一つのまとまりとして行動・状態を共有している場合は単数扱い、構成員が個別に異なる行動・状態をとっている場合は複数扱いとなることを確認することで、動詞の数を正確に選択できる。手順3では代名詞の照応を確認する。単数扱いの場合はit、複数扱いの場合はtheyで受けることを検証することで、文全体の整合性を保てる。

例1: The committee has decided to postpone the meeting.
→ committeeは集合名詞。委員会全体が一つの決定を下しており、一体的な単位として機能している。
→ 判定:単数扱い。動詞はhas(三人称単数)。

例2: The family are discussing their plans for the holiday.
→ familyは集合名詞。家族の構成員がそれぞれの計画について議論しており、個別性に焦点がある。
→ 判定:複数扱い。動詞はare、代名詞はtheir。

例3: The audience was impressed by the performance.
→ audienceは集合名詞。観客全体が一様に感銘を受けており、一体的な反応として描写されている。
→ 判定:単数扱い。動詞はwas。

例4: The police are investigating the incident.
→ policeは常に複数扱いとなる集合名詞である。a policeとは言えず、単数の警察官を指す場合はa police officerとする。
→ 判定:複数扱い(常時)。動詞はare。

以上により、集合名詞を正確に識別し、文脈に応じた単数・複数の扱いを判定する能力が確立される。

4. 物質名詞と抽象名詞の定義と識別

物質名詞と抽象名詞は、いずれも不可算名詞に属するが、指示する対象の性質が異なる。物質名詞は具体的な素材や物質を指し、抽象名詞は目に見えない概念や性質を指す。この区別を明確にしておくことは、数量表現の選択だけでなく、可算用法への転換(a glass of water, a kindnessなど)を理解する上でも不可欠である。

物質名詞と抽象名詞の識別能力によって、次の能力が確立される。第一に、不可算名詞の中でも物質を指すものと概念を指すものを区別できるようになる。第二に、物質名詞が「種類」や「一杯」の意味で可算化される場合を識別できるようになる。第三に、抽象名詞が具体的な事例を指して可算化される場合を識別できるようになる。

物質名詞・抽象名詞の識別は、意味層で名詞の種類による意味変化を扱う際の前提となる。

4.1. 物質名詞と抽象名詞の定義と可算転換

物質名詞と抽象名詞とは、不可算名詞の中の二つの下位範疇である。「物質は数えられない素材、抽象は目に見えないもの」という理解では、”two coffees”や”a beauty”のように不可算名詞が可算的に使われる場合を説明できない。学術的・本質的には、物質名詞とは「均質で分割しても同質性を保つ素材・物質を指す名詞」であり、抽象名詞とは「行為・状態・性質・概念など非物質的な対象を指す名詞」として定義されるべきものである。物質名詞の典型例としてwater, gold, iron, woodなどがあり、これらは一部を取り出しても全体と同じ性質を保つ(水の一部もやはり水である)。抽象名詞の典型例としてinformation, advice, knowledge, beautyなどがあり、これらは空間的に限定された個体として存在しない。この定義が重要なのは、物質名詞は「種類」や「一定量」を表す場合に可算化され、抽象名詞は「具体的な事例・行為」を表す場合に可算化されるという転換規則を理解するためである。可算転換が生じると意味が変化するため、冠詞の有無が意味選択の重大な手がかりとなる。この現象は入試で頻出し、paper(紙→論文)、glass(ガラス→コップ)、iron(鉄→アイロン)などの語が代表例となる。

この原理から、物質名詞・抽象名詞を識別し可算転換を処理する手順が導かれる。手順1では対象の性質を確認する。当該名詞が具体的な素材・物質を指すか、非物質的な概念を指すかを判断することで、物質名詞と抽象名詞の区別ができる。手順2では可算転換の有無を確認する。冠詞a/anが付与されている場合や複数形語尾-sが付いている場合、不可算名詞が可算用法に転換している可能性を検討することで、意味の変化を正確に捉えられる。手順3では転換後の意味を特定する。物質名詞の可算化は「種類」(two teas=二種類の茶)または「一杯・一皿」(a coffee=一杯のコーヒー)を意味し、抽象名詞の可算化は「具体的な事例」(a kindness=一つの親切な行為)を意味することを確認することで、文意を正確に把握できる。

例1: Water is essential for life.
→ waterは物質名詞(不可算)。均質な液体として捉えられており、無冠詞・単数形。
→ 判定:物質名詞の基本用法。

例2: Could I have two coffees, please?
→ coffeeは物質名詞だが、two coffeesと複数形になっている。「二杯のコーヒー」を意味する可算転換。
→ 判定:物質名詞の可算転換(一杯の意味)。

例3: Beauty is in the eye of the beholder.
→ beautyは抽象名詞(不可算)。「美しさ」という概念全体を指しており、無冠詞。
→ 判定:抽象名詞の基本用法。

例4: She did me a kindness by helping with the project.
→ kindnessは抽象名詞だが、a kindnessと冠詞aが付いている。「一つの親切な行為」という具体的事例を指す可算転換。
→ 判定:抽象名詞の可算転換(具体的事例の意味)。

以上により、物質名詞と抽象名詞を正確に識別し、可算転換が生じた場合の意味変化を読み取る能力が確立される。

5. 名詞の種類の総合的識別

ここまでの記事で、可算・不可算の区別、普通名詞と固有名詞の区別、集合名詞の数の扱い、物質名詞と抽象名詞の可算転換を個別に学習してきた。しかし、実際の英文では一つの名詞に対して複数の判定を同時に行わなければならない場面が多い。”The glass broke.”のglassが物質名詞(ガラスという素材)なのか可算の普通名詞(コップ)なのかは、文脈によって決まる。

名詞の総合的識別能力によって、次の能力が確立される。第一に、文脈の中で名詞の種類を正確に判定する統合的な手順を運用できるようになる。第二に、同一の語形が複数の種類にまたがる場合を識別できるようになる。第三に、名詞の種類の判定結果を冠詞選択・数量表現選択・主語動詞一致に正確に反映できるようになる。

本記事は統語層の最終記事であり、ここで確立された識別能力は意味層以降の全ての学習の前提となる。

5.1. 名詞の種類の統合的判定手順

名詞の種類の判定において、多くの名詞は文脈に応じて複数の種類として機能しうる。「一つの名詞には一つの種類が対応する」と理解すると、glassが「ガラス」(物質名詞)にも「コップ」(可算の普通名詞)にもなりうることを処理できない。学術的・本質的には、名詞の種類は語彙に固定されたラベルではなく、文脈の中での用法によって決定されるものとして認識されるべきである。この認識が重要なのは、名詞の種類を文脈から判定する能力がなければ、冠詞・数量表現・主語動詞一致の全てにおいて誤りが生じるためである。入試問題では、まさにこの文脈依存的な種類判定を問う設問が出題される。たとえば、同一語形の名詞が文中で異なる種類として使用されている場合に、それぞれの用法を正確に識別させる問題や、名詞の種類の判定に基づいて正しい冠詞・数量表現を選択させる問題が典型である。こうした問題に対処するには、形態的手がかり(冠詞・複数形語尾)と文脈情報(名詞が指す対象の性質)の二つを統合する判定手順を身につける必要がある。

この原理から、名詞の種類を総合的に判定する手順が導かれる。手順1では形態的手がかりを確認する。冠詞の有無、複数形語尾-sの有無、数量表現との共起を確認することで、可算・不可算の仮判定ができる。手順2では文脈による検証を行う。名詞が指す対象が個別の境界を持つ単位か、連続的な実体か、唯一の固有対象か、複数の構成員からなる集団かを文脈から判断することで、仮判定を確定または修正できる。手順3では文法処理に反映する。確定した名詞の種類に基づいて、冠詞の選択(a/an/the/無冠詞)、動詞の数の一致(単数形/複数形)、数量表現の選択(much/many等)を実行することで、文法的に適格な処理が完了する。

例1: The glass on the table is mine.
→ 形態:冠詞theが付き、単数形。文脈:テーブルの上の「コップ」を指している。
→ 判定:可算の普通名詞(コップの意味)。動詞isは単数一致。

例2: Glass is a fragile material.
→ 形態:無冠詞・単数形・複数形語尾なし。文脈:素材としてのガラス全般を指している。
→ 判定:物質名詞(不可算)。素材としてのガラスを均質的に捉えている。

例3: The company has expanded its operations overseas.
→ 形態:冠詞theが付き、単数形。文脈:会社全体が一つの主体として事業を拡大している。
→ 判定:集合名詞(単数扱い)。動詞hasは単数一致、代名詞itsで照応。

例4: I had an interesting experience during the trip.
→ 形態:冠詞anが付いている。文脈:旅行中の「一つの具体的な体験」を指している。
→ 判定:抽象名詞の可算転換。不可算のexperience(経験全般)が、具体的事例を指して可算化されている。

以上により、名詞の形態的手がかりと文脈情報を統合して名詞の種類を判定し、その結果を文法処理に正確に反映する能力が確立される。

意味:名詞の種類と意味的特性の対応

統語層では名詞の種類を形態的・統語的な特徴から識別する手順を確立した。意味層では、名詞の種類が意味の把握にどのように関わるかを扱う。同じ語形でも可算用法と不可算用法で意味が大きく変わる名詞(paper=紙/論文、iron=鉄/アイロン)が存在し、名詞の種類の判定は単なる文法処理ではなく意味の決定に直結する。意味層を終えると、名詞の種類に基づいて語の意味を正確に選択し、文脈に応じた可算・不可算の転換を処理できるようになる。統語層で確立した名詞の形態的分類と識別基準を前提とする。可算・不可算による意味変化、文脈に応じた名詞の種類の転換、多義名詞の意味選択を扱う。意味層の能力は、語用層で冠詞や数量表現を正確に選択する際の判断根拠となる。

【関連項目】

[基盤 M26-意味]
└ 多義語の処理方法と文脈に基づく語義選択を確認する

[基盤 M29-意味]
└ 文脈からの語義推測手順との関係を把握する

【基礎体系】

[基礎 M02-意味]
└ 名詞句の構造と限定の原理的理解を深める

1. 可算・不可算による意味変化

英文中で同一の語形が可算名詞として使われる場合と不可算名詞として使われる場合では、指示する対象が異なることがある。paperが不可算であれば「紙」という素材を指し、可算であれば「論文・新聞」という個別の文書を指す。この意味変化を識別できなければ、文意の把握に重大な誤りが生じる。

可算・不可算による意味変化の識別能力によって、次の能力が確立される。第一に、同一語形の名詞が可算用法と不可算用法で異なる意味を持つ場合を識別できるようになる。第二に、文脈から適切な意味を選択できるようになる。第三に、辞書で[C]と[U]が併記されている名詞の意味の使い分けを理解できるようになる。

可算・不可算による意味変化の理解は、次の記事で扱う文脈に応じた名詞の種類の転換を理解する基盤となる。

1.1. 可算・不可算で意味が変わる名詞の識別

一般に名詞の意味は「一つの名詞には一つの意味が対応する」と理解されがちである。しかし、この理解ではpaperが「紙」にも「論文」にもなりうることを体系的に説明できないという点で不十分である。学術的・本質的には、名詞の可算・不可算の区別は対象の捉え方の違いを反映しており、不可算用法では素材・概念としての連続的な実体を、可算用法では個別の境界を持つ具体物・事例を指すものとして理解されるべきである。この原理が重要なのは、冠詞や複数形の有無が意味の手がかりとなり、名詞の種類を判定することが正確な意味選択に直結するためである。英語には、可算・不可算の区別によって意味が分岐する名詞が数多く存在する。代表的なものとしてpaper(紙/論文)、iron(鉄/アイロン)、glass(ガラス/コップ)、stone(石材/個別の石)、light(光/照明器具)、wood(木材/森)、work(仕事/作品)、room(空間/部屋)などがあり、入試では高い頻度で出題される。これらの語に共通するのは、不可算用法では均質な素材や抽象概念を表し、可算用法では個別化された具体物を表すという規則性である。この規則性を理解していれば、個々の語の可算・不可算の意味対をすべて暗記しなくても、冠詞・複数形の有無から意味を推測できるようになる。

この原理から、可算・不可算で意味が変わる名詞を処理する手順が導かれる。手順1では冠詞と数の形態を確認する。冠詞a/anが付いているか、複数形語尾-sが付いているかを確認することで、可算用法か不可算用法かの仮判定ができる。手順2では文脈から意味を特定する。名詞の前後の語句や文全体の内容から、当該名詞がどの意味で使われているかを判断することで、正確な意味選択ができる。手順3では辞書の[C]/[U]表記と照合する。判定した意味が辞書の記載と整合しているかを確認することで、判定の精度を高められる。

例1: I need some paper to print the document.
→ paperは無冠詞・単数形。印刷のための素材としての「紙」を指している。
→ 判定:不可算用法。素材としてのpaperは連続的・均質的な実体。

例2: She published a paper on climate change.
→ paperに冠詞aが付いている。気候変動に関する「論文」という個別の文書を指している。
→ 判定:可算用法。個別の文書としてのpaperは境界を持つ単位。

例3: The factory produces iron for construction.
→ ironは無冠詞・単数形。建設用の素材としての「鉄」を指している。
→ 判定:不可算用法。素材としてのironは均質的な物質。

例4: She bought a new iron to press her clothes.
→ ironに冠詞aが付き、newで修飾されている。衣服をプレスするための「アイロン」という器具を指している。
→ 判定:可算用法。器具としてのironは個別の境界を持つ具体物。

以上により、名詞の冠詞・数の形態と文脈情報を統合して、可算・不可算による意味変化を正確に識別する能力が確立される。

2. 文脈に応じた名詞の種類の転換

前の記事では、同一語形の名詞が辞書上[C]と[U]の両方を持つ場合の意味変化を扱った。本記事では、もともと一方の用法が基本である名詞が、特定の文脈で他方の用法に転換する現象を扱う。”two coffees”のように、本来不可算のcoffeeが可算的に使われる場合、その転換にはどのような意味的規則が働いているかを理解することが目標となる。

文脈に応じた名詞の種類の転換を理解することで、次の能力が確立される。第一に、不可算名詞が可算化される場合の意味変化の規則性を把握できるようになる。第二に、可算名詞が不可算化される場合の意味変化を識別できるようになる。第三に、入試の文法問題や読解で名詞の転換用法に出会った際に正確に対処できるようになる。

名詞の転換に関する理解は、語用層での冠詞・数量表現の選択を支える判断根拠となる。

2.1. 不可算名詞の可算化と可算名詞の不可算化

一般に名詞の可算・不可算は「固定された属性」と理解されがちである。しかし、この理解では”two beers”や”There is too much car on this road.”のような用法を処理できないという点で不正確である。学術的・本質的には、可算・不可算の区別は名詞に固有の属性ではなく、話者がその対象をどのように概念化するかに応じて動的に変化するものとして理解されるべきである。不可算名詞の可算化は「種類化」「一杯・一皿化」「具体事例化」の三つのパターンで生じ、可算名詞の不可算化は「素材化」「抽象概念化」のパターンで生じる。この動的な転換の仕組みを理解することが重要なのは、転換が生じるたびに意味が体系的に変化するからである。種類化とは、物質名詞が「その物質の種類」を意味する用法(two teas=二種類の茶)であり、一杯・一皿化とは、物質名詞が「一杯分」「一皿分」を意味する用法(a coffee=一杯のコーヒー)である。具体事例化とは、抽象名詞が「一つの具体的な行為・出来事」を意味する用法(a kindness=一つの親切な行為)である。一方、可算名詞の不可算化は、個別の具体物としてではなく素材や概念として捉え直す操作であり、chicken(鶏→鶏肉)、lamb(子羊→ラム肉)のように食材化するパターンが典型的である。

この原理から、名詞の転換を識別する手順が導かれる。手順1では基本用法を確認する。当該名詞が辞書上主として[C]か[U]かを把握することで、転換が生じているかどうかの判断基準を持てる。手順2では転換の手がかりを検出する。不可算名詞に冠詞a/anや複数形語尾-sが付いている場合は可算化、可算名詞が無冠詞・単数形で素材的に使われている場合は不可算化が生じていることを確認できる。手順3では転換の種類と意味を特定する。可算化であれば「種類」「一杯」「具体事例」のいずれか、不可算化であれば「素材」「抽象概念」のいずれかを文脈から判断することで、正確な意味把握ができる。

例1: This region produces three excellent wines.
→ wineは基本的に不可算(物質名詞)。three winesと複数形になっている。
→ 転換:可算化(種類化)。「三種類の優れたワイン」を意味する。

例2: I’ll have a beer, please.
→ beerは基本的に不可算。a beerと冠詞aが付いている。
→ 転換:可算化(一杯化)。「ビールを一杯」を意味する。

例3: There’s a lot of chicken in this dish.
→ chickenは可算名詞(鶏)が基本。無冠詞・単数形で量的に扱われている。
→ 転換:不可算化(素材化)。「鶏肉」という食材を均質的な素材として捉えている。

例4: She has a lot of experience, but that was quite an experience.
→ 前半のexperienceは不可算(経験全般)。後半のan experienceは可算化(具体事例化)。
→ 転換:同一文中で不可算用法と可算用法が共存している。

以上により、名詞の可算・不可算の転換を文脈から正確に識別し、転換に伴う意味変化を把握する能力が確立される。

3. 名詞の種類と文意の決定

名詞の可算・不可算の判定は、個々の語の意味選択だけでなく、文全体の意味解釈を左右する。”There was a light in the room.”と”There was light in the room.”では、冠詞aの有無だけで文意が「部屋に照明器具が一つあった」から「部屋に光があった」へと変化する。名詞の種類の判定を文意の解釈に活用できなければ、読解において重大な誤解が生じうる。

名詞の種類が文意に与える影響の理解によって、次の能力が確立される。第一に、冠詞の有無や数の形態が文全体の意味をどのように決定するかを把握できるようになる。第二に、名詞の種類の誤認が文意の取り違えにつながる場面を予測し、回避できるようになる。第三に、読解問題で名詞句の解釈が文意の理解に直結する設問に対応できるようになる。第四に、英作文において名詞の種類に応じた正確な文を産出できるようになる。

名詞の種類と文意の関係の理解は、次の記事で扱う多義名詞の意味選択を文レベルで検証する能力の前提となる。

3.1. 名詞の種類が文全体の意味解釈に与える影響

一般に名詞の可算・不可算の区別は「文法問題で問われる形式的な知識」と理解されがちである。しかし、この理解では、同一の語が可算用法と不可算用法で文全体の意味を根本的に変えてしまう現象を見落とすという点で不十分である。学術的・本質的には、名詞の種類(可算・不可算)は文の命題内容そのものを決定する要因であり、冠詞や複数形語尾といった形態的標識は、話者がその対象をどのような実体として捉えているかを読者に伝える意味的信号として機能するものである。この認識が重要なのは、名詞の種類の判定を「文法の正誤判断」だけでなく「文意の正確な把握」に活用する視点を持てるようになるためである。

この原理を具体的に理解するために、冠詞の有無が文意を分岐させる典型的なパターンを整理する。第一のパターンは、物質名詞が可算化されることで「素材→具体物」へと文意が変わるケースである。”There was glass on the floor.”は「床にガラス(の破片・素材)があった」を意味するが、”There was a glass on the floor.”は「床にコップが一つあった」を意味する。冠詞aの有無だけで、床に散乱した危険な状況と、コップが置かれた日常的な状況という全く異なる場面が描写される。第二のパターンは、抽象名詞が可算化されることで「概念全般→具体的事例」へと文意が変わるケースである。”She showed great kindness.”は「彼女は大きな優しさを示した」(性質・態度全般)を意味するが、”She did me a kindness.”は「彼女は私に一つの親切な行為をしてくれた」(個別の行為)を意味する。第三のパターンは、可算名詞が不可算化されることで「個体→素材」へと文意が変わるケースである。”I had chicken for dinner.”は「夕食に鶏肉を食べた」(食材としての鶏)を意味するが、”I had a chicken in the yard.”は「庭に一羽の鶏がいた」(生きた個体としての鶏)を意味する。

これらのパターンは個別の語の暗記として処理するのではなく、「不可算用法=連続的・均質的な捉え方」「可算用法=個別の境界を持つ捉え方」という統語層で確立した原理の意味レベルでの帰結として理解すべきものである。この理解があれば、初見の名詞であっても、冠詞の有無から文意の方向性を予測できるようになる。さらに、入試の読解問題において、名詞の種類の判定が文意把握に決定的な役割を果たす場面がある。たとえば英文和訳で”She had little room to negotiate.“という文に出会った場合、roomが不可算であること(冠詞なし・単数形)に気づかなければ「交渉する部屋がほとんどなかった」と誤訳する。正しくは「交渉する余地がほとんどなかった」であり、roomの不可算用法(=空間・余地)を識別することが正確な訳出の条件となる。また、共通テストの読解問題では、文中の名詞が可算用法か不可算用法かによって、筆者が対象をどう捉えているかが変わり、それが文章全体の論旨理解に影響することがある。たとえば、“Industry has transformed the region.”(不可算=産業全般)と”An industry has transformed the region.”(可算=一つの特定の産業)では、地域を変革した主体の範囲が異なり、後続の議論の方向性も変わってくる。

この原理から、名詞の種類を文意の解釈に活用する手順が導かれる。手順1では名詞の形態的標識を確認する。冠詞の有無、複数形語尾の有無を確認し、当該名詞が可算用法か不可算用法かを判定することで、文意の候補を絞り込める。手順2では判定結果を文意に反映する。可算用法であれば「個別化された具体物・事例」として、不可算用法であれば「連続的・均質的な素材・概念」として文意を解釈することで、文全体の意味を正確に把握できる。手順3では前後の文脈と照合する。名詞の種類に基づく文意の解釈が前後の文脈と整合するかを検証することで、解釈の妥当性を確認できる。

例1: There was a light in the window.
→ lightに冠詞aが付いている。可算用法であり「一つの照明器具」を意味する。
→ 文意:「窓に照明器具が一つあった」。器具としてのlightが描写されている。

例2: There was light in the window.
→ lightは無冠詞・単数形。不可算用法であり「光」を意味する。
→ 文意:「窓に光があった」。物理現象としての光が描写されている。冠詞aの有無だけで場面が異なる。

例3: She has experience in the field.
→ experienceは無冠詞・単数形。不可算用法であり「経験全般」を意味する。
→ 文意:「彼女はその分野での経験がある」。蓄積された経験の総体として捉えられている。

例4: She had an unpleasant experience at the airport.
→ experienceに冠詞anが付いている。可算用法であり「一つの具体的な体験」を意味する。
→ 文意:「彼女は空港で不快な体験をした」。個別の出来事として捉えられている。

以上により、名詞の種類の判定を文全体の意味解釈に活用し、冠詞の有無が文意を決定する場面を正確に処理する能力が確立される。

4. 名詞の種類と多義性の処理

名詞の種類に関する知識は、多義語の処理と密接に関わる。辞書で一つの名詞に複数の意味が記載されている場合、可算用法と不可算用法の違いが意味の選択基準となることが多い。本記事では、名詞の種類の判定を多義語の意味選択に活用する方法を扱う。

名詞の種類に基づく多義性の処理能力によって、次の能力が確立される。第一に、辞書の[C]/[U]表記を意味選択の手がかりとして活用できるようになる。第二に、文脈と名詞の種類を組み合わせて、複数の意味候補から正確な意味を選択できるようになる。第三に、共通テストや中堅私大の語彙問題で、名詞の多義性を利用した設問に対応できるようになる。

本記事は意味層の最終記事であり、ここで確立された能力は語用層での表現選択に直結する。

4.1. 名詞の種類を手がかりとした意味選択

多義語の処理は「複数の意味を暗記して文脈で選ぶ」と理解されがちである。しかし、この理解では新たな文脈に出会うたびに暗記した意味リストを総当たりで照合しなければならず、効率が低いという点で不十分である。学術的・本質的には、名詞の多義性の多くは可算・不可算の転換と連動しており、名詞の種類を判定することが意味の絞り込みの第一段階として機能するものとして理解されるべきである。この原理が重要なのは、名詞の種類の判定という統語的操作を意味選択に活用することで、暗記量を減らしながら正確な処理が可能になるためである。具体的には、多義名詞に出会った際に、まず冠詞・複数形の有無から可算・不可算を判定し、次に可算であれば「個別化された具体物・事例」系の意味を、不可算であれば「素材・概念」系の意味を候補とするという手順で処理できる。たとえばworkという語は、不可算では「仕事・労働」(I have a lot of work.)、可算複数形worksでは「作品」(the complete works of Shakespeare)や「工場・工事」を意味する。冠詞・複数形の形態を確認するだけで、意味候補を大幅に絞り込むことができるのである。room(不可算=空間、可算=部屋)、light(不可算=光、可算=照明器具)、time(不可算=時間、可算=回数・時代)なども同じ原理で処理できる。この手順の有効性は、英文和訳の場面で特に顕著に現れる。英文和訳において名詞の意味を誤ると、訳文全体の意味が不正確になる。たとえば”She had little room to maneuver.”を「彼女には操作する部屋がほとんどなかった」と訳すのは、roomの不可算用法(空間・余地)を見落とした誤訳であり、正しくは「彼女には動く余地がほとんどなかった」となる。冠詞がなく単数形で使われている点が不可算用法の形態的手がかりであり、この手がかりを意識するだけで誤訳を防ぐことができる。同様に、”Times have changed.”のtimesが可算複数形であることから「時代」の意味であると判定でき、「時間が変わった」という不自然な訳を回避できる。入試の和訳問題で名詞の意味を正確に選択するためには、この「形態→種類判定→意味絞り込み」の手順を機械的に適用する習慣を身につけることが有効である。

加えて、多義名詞の処理において前の記事で扱った「名詞の種類と文意の決定」の知識を統合することで、処理の精度はさらに高まる。語レベルの意味選択(本記事)と文レベルの意味解釈(前記事)を組み合わせることで、多義名詞の処理は二重のチェック体制をとることになる。すなわち、まず形態的手がかりから名詞の種類を判定して意味候補を絞り込み(語レベル)、次にその候補が文全体の意味解釈と整合するかを検証する(文レベル)。この二段階のチェックにより、多義名詞を含む文の誤読リスクが大幅に低減される。

この原理から、名詞の種類を手がかりとした意味選択の手順が導かれる。手順1では名詞の種類を判定する。冠詞・複数形語尾・数量表現などの形態的手がかりから、当該名詞が可算用法か不可算用法かを判定することで、意味候補を絞り込める。手順2では文脈と照合する。名詞の種類による意味候補の絞り込み結果を文脈と照合し、最も適合する意味を選択することで、正確な意味把握ができる。手順3では選択結果を検証する。選択した意味で文全体の意味が整合するかを確認することで、判定の精度を担保できる。

例1: He threw a stone at the window.
→ stoneに冠詞aが付いている。可算用法であり、「一つの石」を指す。
→ 意味選択:可算のstone=個別の石。不可算のstone(石材)ではない。

例2: The building is made of stone.
→ stoneは無冠詞・単数形。不可算用法であり、建材としての「石材」を指す。
→ 意味選択:不可算のstone=素材としての石。可算の「個別の石」ではない。

例3: She has a good head for business.
→ headに冠詞aが付いている。可算用法であり、「頭脳・才能」という比喩的な意味で使われている。
→ 意味選択:可算のhead=身体部位または能力。文脈から「ビジネスの才覚」と判断。

例4: Light travels faster than sound.
→ lightは無冠詞・単数形。不可算用法であり、「光」という物理現象を指す。可算のa light(照明器具)とは区別される。
→ 意味選択:不可算のlight=光。a lightであれば「照明器具」。

以上により、名詞の種類の判定を意味選択の手がかりとして活用し、多義名詞の正確な意味を文脈から効率的に特定する能力が確立される。

語用:名詞の種類に応じた表現選択

統語層で名詞の種類を形態的に識別し、意味層で種類と意味の対応関係を把握した。語用層では、名詞の種類の判定結果を実際の表現選択に反映する手順を確立する。”much water”は適格だが”much books”は不適格であるように、数量表現の選択は名詞の種類によって厳密に制約される。語用層を終えると、名詞の種類に基づいて冠詞・限定詞・数量表現を正確に選択し、文法的に適格な英文を産出できるようになる。意味層で確立した名詞の種類と意味的特性の対応関係を前提とする。名詞の種類による数量表現の選択、限定詞との共起規則、冠詞選択の基本原則を扱う。語用層の能力は、談話層で名詞句の文章内での機能と照応を扱う際に、個々の名詞句の文法的特性を正確に把握する判断根拠となる。

【関連項目】

[基盤 M09-語用]
└ 冠詞の種類と用法の体系的理解を確認する

[基盤 M30-語用]
└ コロケーションの認識と名詞句の自然な組み合わせを把握する

【基礎体系】

[基礎 M03-語用]
└ 冠詞と名詞の指示機能の原理を深める

1. 名詞の種類と数量表現の選択

名詞の種類を正確に判定できたとしても、その判定結果をmuch/many、a few/a little、some/anyなどの数量表現の選択に正しく反映できなければ、文法的に不適格な文を産出する。共通テストや中堅私大の文法問題では、名詞の可算・不可算と数量表現の組み合わせを問う設問が高い頻度で出題される。

数量表現の選択能力によって、次の能力が確立される。第一に、可算名詞専用の数量表現と不可算名詞専用の数量表現を正確に区別できるようになる。第二に、両方に使える数量表現(some, a lot of等)の用法を把握できるようになる。第三に、文法問題で数量表現の正誤を判定できるようになる。

数量表現の選択は、次の記事で扱う限定詞との共起規則を理解する前提となる。

1.1. 可算・不可算による数量表現の使い分け

一般に数量表現は「many=たくさん、much=たくさん」のように同義として理解されがちである。しかし、この理解ではmanyとmuchを交換可能と誤認し、”much books”のような不適格な文を産出するという点で不正確である。学術的・本質的には、manyは可算名詞の複数形にのみ共起し、muchは不可算名詞にのみ共起する数量表現であり、この共起制約は名詞の種類(可算・不可算)によって文法的に決定されるものとして理解されるべきである。この原理が重要なのは、数量表現の選択ミスは文法問題で直接的な失点につながるだけでなく、読解においても名詞の種類の誤認を引き起こすためである。数量表現は可算専用・不可算専用・共用の三つのグループに体系的に分類でき、この分類を把握しておけば、個々の数量表現を一つずつ暗記する必要がなくなる。可算専用のグループにはmany, a few, few, several, a number ofが属し、不可算専用のグループにはmuch, a little, little, a great deal of, a large amount ofが属する。共用のグループにはsome, any, a lot of, lots of, plenty of, enough, no, allが属し、これらは可算複数・不可算のいずれとも共起できる。この三分類を理解していれば、名詞の種類を判定した時点で、使用可能な数量表現の候補が自動的に絞り込まれる。さらに、few/littleとa few/a littleの意味上の対立にも注意が必要である。冠詞aの有無が肯定・否定の意味を分ける点は、入試で非常に高い頻度で問われる。

この原理から、名詞の種類に基づいて数量表現を選択する手順が導かれる。手順1では名詞の可算・不可算を判定する。統語層で確立した手順に従い、当該名詞の種類を確定することで、選択可能な数量表現の範囲を限定できる。手順2では可算名詞専用・不可算名詞専用・共用の三類に基づいて数量表現を選択する。可算名詞にはmany, a few, few, several, a number ofを、不可算名詞にはmuch, a little, little, a great deal ofを、両方に使えるものとしてsome, any, a lot of, plenty ofがあることを確認することで、適切な表現を選択できる。手順3では否定的意味と肯定的意味の区別を確認する。few/littleは「ほとんどない」(否定的)、a few/a littleは「少しある」(肯定的)という意味の違いがあることを検証することで、文意に合致した数量表現を選べる。

例1: There are many students in the library.
→ studentsは可算名詞の複数形。manyは可算名詞専用の数量表現。
→ 判定:適格。muchに置き換えると不適格(much studentsは不可)。

例2: We don’t have much time left.
→ timeは不可算名詞。muchは不可算名詞専用の数量表現。
→ 判定:適格。manyに置き換えると不適格(many timeは不可)。

例3: There are a few problems we need to discuss.
→ problemsは可算名詞の複数形。a fewは「少しある」(肯定的)の意味。
→ 判定:適格。a littleに置き換えると不適格(a little problemsは不可)。fewとすると「ほとんどない」と否定的意味に変わる。

例4: She has little interest in politics.
→ interestは不可算名詞。littleは「ほとんどない」(否定的)の意味。
→ 判定:適格。fewに置き換えると不適格(few interestは不可)。a littleとすると「少しある」と肯定的意味に変わる。

以上により、名詞の種類に基づいて数量表現を正確に選択し、肯定的・否定的意味の違いも含めて適切な表現を運用する能力が確立される。

2. 名詞の種類と限定詞・冠詞の基本的選択

数量表現に加え、名詞の種類は冠詞(a/an, the, 無冠詞)や限定詞(this, that, each, every等)の選択にも直接的に関わる。”every information”が不適格であるのは、everyが可算名詞の単数形にのみ共起する限定詞であり、不可算名詞のinformationとは共起できないためである。

限定詞・冠詞の基本的選択能力によって、次の能力が確立される。第一に、冠詞a/anを付与できる名詞の条件を正確に判定できるようになる。第二に、each, every, anotherなどの限定詞と名詞の種類の共起制約を把握できるようになる。第三に、文法問題で冠詞・限定詞の正誤を判定できるようになる。

限定詞・冠詞の選択は、談話層で名詞句の文章内での機能を扱う際の基礎となる。

2.1. 冠詞・限定詞と名詞の種類の共起規則

冠詞の選択は「初出はa/an、既出はthe」と単純に理解されがちである。しかし、この理解では不可算名詞にa/anを付けられないという制約を見落とし、”a furniture”のような不適格な文を産出するという点で不十分である。学術的・本質的には、冠詞・限定詞の選択は名詞の種類(可算単数・可算複数・不可算)によってまず候補が制約され、その上で文脈(特定・不特定・総称)によって最終的に決定されるものとして理解されるべきである。この二段階の判定が重要なのは、名詞の種類による制約を無視して文脈だけで冠詞を選ぶと、構造的な文法エラーが生じるためである。第一段階の制約を整理すると、a/anは可算名詞の単数形にのみ共起し、theは可算単数・可算複数・不可算の全てに共起でき、無冠詞は可算複数と不可算に限られる(可算単数の無冠詞は原則不可)。限定詞についても同様の制約があり、each, every, anotherは可算単数のみ、theseやthoseは可算複数のみ、this, thatは可算単数または不可算と共起する。受験生が犯しやすい典型的な誤りとして、“every students”(everyは単数のみ)、“a information”(不可算にaは不可)、“much books”(muchは不可算のみ)などがある。これらの誤りは全て、名詞の種類による共起制約を見落としたことに起因する。第二段階では、第一段階で候補として残った冠詞・限定詞の中から、文脈に基づいて最終選択を行う。特定の対象を指す場合はthe、不特定の対象を指す場合は可算単数ならa/an・可算複数ならsome・不可算ならsomeまたは無冠詞を選択する。

この原理から、冠詞・限定詞を選択する手順が導かれる。手順1では名詞の種類と数を確定する。可算単数・可算複数・不可算の三分類のいずれに該当するかを判定することで、共起可能な冠詞・限定詞の範囲を確定できる。手順2では共起制約を適用する。a/anは可算単数のみ、each/everyは可算単数のみ、theは三分類全てに使用可能、無冠詞複数形・無冠詞不可算は総称的用法となることを確認することで、不適格な組み合わせを排除できる。手順3では文脈に基づいて最終選択を行う。特定の対象を指す場合はthe、不特定の対象を指す場合は可算単数ならa/an・可算複数ならsome・不可算ならsomeを選択することで、文法的に適格かつ意味的に正確な冠詞処理が完了する。

例1: I need a chair for the meeting room.
→ chairは可算名詞・単数形。不特定の一脚を指している。
→ 判定:a+可算単数。共起規則に適格。

例2: I need furniture for the meeting room.
→ furnitureは不可算名詞。a furnitureは不適格。不特定の量を指す場合はsomeを用いてsome furnitureとする。
→ 判定:無冠詞またはsome+不可算。a/anは使用不可。

例3: Every student must submit the report by Friday.
→ studentは可算名詞・単数形。everyは可算単数のみと共起する。
→ 判定:every+可算単数。共起規則に適格。every studentsは不適格。

例4: She bought the equipment for the laboratory.
→ equipmentは不可算名詞。theは不可算名詞にも使用可能。特定の装置を指している。
→ 判定:the+不可算。共起規則に適格。an equipmentは不適格。

以上により、名詞の種類による共起制約を第一段階、文脈による意味判断を第二段階として、冠詞・限定詞を正確に選択する能力が確立される。

3. 名詞の種類が関わる文法問題の処理

本記事は語用層の最終記事であり、これまでに学習した名詞の種類の識別、数量表現の選択、冠詞・限定詞の共起規則を統合して、実際の文法問題を処理する能力を確立する。共通テストや中堅私大の文法問題では、名詞の種類に関わる誤りを選択肢に含めた設問が頻出する。

名詞の種類が関わる文法問題の処理能力によって、次の能力が確立される。第一に、選択肢の中から名詞の種類に基づく文法的誤りを検出できるようになる。第二に、正答の根拠を名詞の種類という原理から説明できるようになる。第三に、初見の名詞に対しても、辞書を参照せずに文中の形態的手がかりから判断できるようになる。

語用層で確立された能力は、談話層での名詞句の照応関係の把握に直結する。

3.1. 名詞の種類に基づく文法問題の判断手順

では、名詞の種類に関わる文法問題を実際にどのように処理すればよいか。「正解の選択肢を覚える」という方法では初見の問題に対応できず、類似した設問に対しても暗記した解答のパターンマッチングに頼らざるをえない。学術的・本質的には、名詞の種類に関わる文法問題は「名詞の種類の判定→共起制約の適用→不適格な選択肢の排除」という三段階の手順で処理されるべきものである。この手順が重要なのは、名詞の種類という原理に基づけば、選択肢の正誤を論理的に導出でき、暗記に依存しない確実な判断が可能になるためである。入試の文法問題において、名詞の種類が問われるパターンは大きく三つに分類できる。第一に、不可算名詞にa/anや複数形語尾を付けた選択肢を含む問題(an information, advicesなどが誤答として配置される)。第二に、可算専用の数量表現を不可算名詞と組み合わせた選択肢を含む問題(many information, several equipmentなどが誤答として配置される)。第三に、可算単数専用の限定詞を可算複数または不可算と組み合わせた選択肢を含む問題(every students, each informationなどが誤答として配置される)。これら三つのパターンを把握しておくことで、選択肢を見た瞬間に検証すべき観点が明確になり、効率的な解答が可能になる。

この原理から、文法問題を処理する手順が導かれる。手順1では設問中の名詞の種類を判定する。名詞の形態的特徴と文脈から可算・不可算を確定することで、選択肢の評価基準が得られる。手順2では各選択肢の共起制約を検証する。選択肢に含まれる数量表現・限定詞・冠詞が、判定した名詞の種類と共起可能かを確認することで、不適格な選択肢を排除できる。手順3では残った選択肢の意味的適切性を検証する。文法的に適格な選択肢が複数ある場合、文脈の意味に最も合致するものを選択することで、正解に到達できる。

例1: We need ( ) about the new policy.
選択肢:(a) an information (b) informations © some information (d) many information
→ informationは不可算名詞。(a)のanは不可算と共起不可。(b)の複数形は不可算に不適格。(d)のmanyは可算専用。
→ 正解:© some information。someは不可算名詞と共起可能。

例2: ( ) student must complete the assignment.
選択肢:(a) Every (b) All © Much (d) A few
→ studentは可算名詞・単数形。(a) everyは可算単数と共起可能。(b) allは可算複数またはall the+名詞の形。© muchは不可算専用。(d) a fewは可算複数専用。
→ 正解:(a) Every。可算単数との共起に適格。

例3: There is ( ) traffic on this road today.
選択肢:(a) many (b) a few © several (d) a lot of
→ trafficは不可算名詞。(a) many, (b) a few, © severalはいずれも可算専用。
→ 正解:(d) a lot of。可算・不可算の両方に使用可能。

例4: She gave us several ( ) of advice.
選択肢:(a) advices (b) piece © pieces (d) advice
→ adviceは不可算名詞。severalは可算複数と共起する。pieces of adviceの形で不可算名詞を個別化する。
→ 正解:© pieces。単位名詞pieceの複数形でseveralとの共起が成立。

以上により、名詞の種類の判定→共起制約の適用→選択肢の排除という体系的な手順で文法問題を処理する能力が確立される。

談話:名詞句の文章内での機能と照応

語用層までで確立した名詞の種類の識別能力と表現選択能力は、個々の文の中での処理に焦点を当てていた。談話層では、複数の文にまたがって名詞句がどのように導入され、再度言及される際にどのような形式で照応されるかを扱う。”A student entered the room. The student was carrying a heavy bag.”のように、初出の名詞句にはa/anが付き、再度言及される際にはtheが付くという照応のパターンは、名詞の種類と密接に関わっている。談話層を終えると、文章中で名詞句の指示対象を追跡し、照応関係を正確に把握できるようになる。語用層で確立した冠詞・限定詞の選択能力を前提とする。名詞句の導入と再言及のパターン、代名詞による照応と名詞の種類の関係、文章全体における名詞句の追跡を扱う。談話層の能力は、共通テストの読解問題で代名詞の指示対象を特定する設問や、文章の論理展開を追跡する設問に対応する際に発揮される。

【関連項目】

[基盤 M03-談話]
└ 代名詞の種類と照応機能の全体像を確認する

[基盤 M54-談話]
└ 指示語の照応関係と文章中での追跡方法を把握する

【基礎体系】

[基礎 M16-談話]
└ 代名詞・指示語と照応の原理的理解を深める

1. 名詞句の導入と再言及のパターン

文章中で名詞句が初めて登場する際と、再度言及される際では、冠詞や指示語の選択が変化する。この変化のパターンは名詞の種類によって異なり、可算名詞と不可算名詞では初出時の冠詞が異なるため、照応のパターンも異なる。

名詞句の導入と再言及のパターンの理解によって、次の能力が確立される。第一に、文章中で名詞句が初めて導入される際のa/an, some, 無冠詞の使い分けを理解できるようになる。第二に、再言及時にtheや指示語が付与される理由を名詞の種類に即して説明できるようになる。第三に、読解問題でtheの指示対象を正確に特定できるようになる。

名詞句の導入と再言及のパターンは、次の記事で扱う代名詞による照応を理解する前提となる。

1.1. 初出と再言及における冠詞の変化

冠詞の使い分けは「初出はa、既出はthe」と理解されがちである。しかし、この理解では不可算名詞の初出時にaが使えないこと、また初出であってもtheが付く場合があることを処理できないという点で不十分である。学術的・本質的には、名詞句の導入と再言及における冠詞の選択は「名詞の種類による制約」と「談話における情報の新旧」の二つの要因によって決定されるものとして理解されるべきである。可算単数の初出はa/an、不可算の初出は無冠詞またはsome、再言及時はいずれもtheまたは指示語で受けるというパターンは、この二要因の組み合わせから導かれる。この二要因の組み合わせを体系的に整理すると、初出時のパターンは三つに分類できる。可算単数名詞の初出はa/an+名詞(a student, an idea)、可算複数名詞の初出はsome/several/数詞+名詞(some students, three books)、不可算名詞の初出はsome+名詞または無冠詞(some water, information)となる。再言及時のパターンは名詞の種類にかかわらず共通しており、the+名詞(the student, the water)、指示語+名詞(this idea, that information)、または代名詞(it, they)で照応される。読解問題でtheが付いた名詞句に出会った場合、「この名詞句はどこで初出されたか」を遡って特定することが、指示対象の確定に直結する。初出であってもtheが付く場合としては、文脈上唯一と特定される対象(the sun, the president)、直前の内容から推論可能な対象(He entered a room. The ceiling was very high.—部屋に入ったことからceilingの存在が推論される)、修飾語句によって限定される対象(the book that I bought yesterday)がある。

この原理から、名詞句の導入と再言及を処理する手順が導かれる。手順1では初出の名詞句の種類を判定する。可算単数か、可算複数か、不可算かを確定することで、初出時の冠詞パターンが決まる。手順2では再言及時の冠詞を確認する。同一の指示対象に再度言及する場合はtheを付与し、読者が「どの対象を指しているか」を特定できる状態にすることで、情報の連続性が保たれる。手順3では照応の連鎖を追跡する。文章中で同一の対象が三回以上言及される場合、the+名詞、代名詞(it, they等)、指示語(this, that等)のいずれかで照応されることを確認することで、文章全体の指示対象の追跡ができる。

例1: A man entered the room. The man was wearing a black coat.
→ 初出:a man(可算単数・不特定)。再言及:the man(同一対象を特定)。
→ パターン:可算単数の標準的な初出→再言及パターン。

例2: Some water spilled on the floor. The water quickly spread across the tiles.
→ 初出:some water(不可算・不特定の量)。再言及:the water(同一の水を特定)。
→ パターン:不可算名詞の初出→再言及パターン。a waterとはできないためsomeで導入。

例3: Several students were absent. The students had all caught the flu.
→ 初出:several students(可算複数・不特定)。再言及:the students(同一の学生たちを特定)。
→ パターン:可算複数の初出→再言及パターン。

例4: I received some advice from my teacher. The advice turned out to be very useful.
→ 初出:some advice(不可算・不特定)。再言及:the advice(同一の助言を特定)。
→ パターン:不可算名詞(抽象名詞)の初出→再言及パターン。

以上により、名詞の種類と情報の新旧を組み合わせて、文章中の名詞句の導入と再言及における冠詞の変化を正確に追跡する能力が確立される。

2. 代名詞による照応と名詞の種類

前の記事ではthe+名詞による再言及を扱ったが、実際の文章では代名詞(it, they, one等)による照応が多用される。名詞の種類は代名詞の選択にも影響を与え、可算単数はit/one、可算複数はthey/ones、不可算名詞はitで受けるという対応がある。

代名詞による照応の理解によって、次の能力が確立される。第一に、代名詞の指示対象を名詞の種類に基づいて特定できるようになる。第二に、it/they/oneの使い分けの根拠を理解できるようになる。第三に、共通テストの読解問題で代名詞の指示対象を問う設問に確実に対応できるようになる。

代名詞による照応の理解は、次の記事で扱う文章全体における名詞句の追跡の前提となる。

2.1. 名詞の種類に基づく代名詞の選択

代名詞には二つの機能がある。一つは先行する名詞句と同一の対象を指す機能(it, they)、もう一つは先行する名詞句と同種だが別の個体を指す機能(one, ones)である。「名詞の繰り返しを避けるための代わりの語」という理解だけでは、同一文中にit, they, one, onesが混在する場合にどれが何を指しているかを判定できない。学術的・本質的には、代名詞の選択は先行する名詞句の種類(可算単数・可算複数・不可算)と指示の性質(同一個体か、同種の別個体か)によって決定されるものとして理解されるべきである。itは「同一の個体・量」を指し、oneは「同種の別個体」を指すという区別は、名詞の種類と密接に関わる。この区別が入試で問われる典型的な場面として、”I lost my pen, so I need to buy it.”と”I lost my pen, so I need to buy one.”の違いがある。前者は「失くした同じペンを買う」(論理的に不自然)、後者は「同種の別のペンを買う」(自然)である。代名詞の指示対象を正確に特定するためには、先行名詞句の種類と代名詞の数の一致を確認することが不可欠である。可算単数名詞はit(同一個体)またはone(同種別個体)で受け、可算複数名詞はthey/them(同一集団)またはones(同種別集団)で受け、不可算名詞はit(同一の量・概念)で受ける。不可算名詞にはoneを使用できない点が重要であり、”I need some information. Can you give me one?”は不適格で、”Can you give me some?”とする必要がある。

この原理から、代名詞の指示対象を特定する手順が導かれる。手順1では先行する名詞句を特定する。代名詞の近くにある名詞句の中から、文法的に照応可能な候補(数・性の一致)を挙げることで、候補を絞り込める。手順2では名詞の種類と代名詞の対応を確認する。可算単数→it(同一個体)/one(同種別個体)、可算複数→they/them(同一集団)/ones(同種別集団)、不可算→it(同一の量・概念)という対応を適用することで、正確な指示対象の特定ができる。手順3では文脈と照合して確定する。候補が複数ある場合、文の意味から最も自然な照応関係を選択することで、指示対象を確定できる。

例1: I lost my pen, so I need to buy one.
→ oneは「同種の別個体」を指す。my pen(特定のペン)を失ったので、別のペンを買う。
→ 判定:one=a pen(同種の別の可算単数)。itとすると「失くした同じペンを買う」となり不自然。

例2: I found your pen. Here, take it.
→ itは「同一の個体」を指す。あなたのペンそのものを見つけたので、そのペンを渡す。
→ 判定:it=your pen(同一の可算単数個体)。

例3: The information was useful. I will share it with my team.
→ itは不可算名詞informationを受けている。「同一の情報」を共有する。
→ 判定:it=the information(同一の不可算名詞)。

例4: I like these shoes, but those ones are cheaper.
→ onesは「同種の別集団」を指す。these shoes(これらの靴)に対して、those ones(あちらの靴)は同種の別の靴。
→ 判定:ones=shoes(同種の別の可算複数)。

以上により、名詞の種類と指示の性質に基づいて代名詞の指示対象を正確に特定する能力が確立される。

3. 文章全体における名詞句の追跡

談話層の最終記事として、これまでに学習した名詞句の導入・再言及のパターンと代名詞による照応を統合し、複数の段落にまたがる文章全体で名詞句の指示対象を追跡する能力を確立する。共通テストの読解問題では、文章の冒頭で導入された名詞句が、代名詞やthe+名詞、同義表現といった多様な形式で繰り返し言及される。これらの照応関係を正確に把握できなければ、文章の論理展開を見失う。

文章全体における名詞句の追跡能力によって、次の能力が確立される。第一に、文章中で同一の指示対象が形式を変えて繰り返される場合に、それらが同一対象を指していることを識別できるようになる。第二に、複数の名詞句が文章中に存在する場合に、代名詞がどの名詞句を受けているかを判定できるようになる。第三に、読解問題の「下線部の指す内容を答えよ」形式の設問に確実に対応できるようになる。

本記事は談話層の最終記事であり、ここで確立された能力はモジュール全体の到達目標である名詞句の正確な処理を完成させる。

3.1. 照応連鎖の追跡手順

読解では「代名詞の指す内容は前の文にある」と理解されがちである。しかし、この理解では照応の距離が長い場合(数文前の名詞句を指す場合)や、同義表現による再言及(the machine→the device→itのような連鎖)を追跡できないという点で不十分である。学術的・本質的には、文章中の名詞句の照応は「照応連鎖」として把握されるべきものであり、初出の名詞句から始まる指示対象が、the+名詞→同義表現→代名詞という形式の変化を経ながら文章中を貫通する線として追跡されるものとして理解されるべきである。この認識が重要なのは、照応連鎖を意識することで、文章全体の指示構造を見通しよく把握できるためである。照応連鎖の追跡において特に注意すべきは、同義表現による再言及と、名詞の種類の転換を伴う再言及である。たとえば、a new machine→the device→itという連鎖では、machineとdeviceは異なる語形だが同一の対象を指す同義表現である。また、some equipment→the machines→theyという連鎖では、equipmentは不可算名詞、machinesは可算複数名詞であり、名詞の種類が転換している。このような場合、theyが指すのは直近の可算複数名詞the machinesであり、不可算名詞のequipmentではない。名詞の種類の整合性を検証することで、照応先の誤認を防ぐことができる。共通テストの読解問題で代名詞の指示対象を問う設問に出会った場合、この照応連鎖を遡って追跡し、候補の名詞句と代名詞の数・種類の一致を確認するという手順が有効である。

この原理から、照応連鎖を追跡する手順が導かれる。手順1では初出の名詞句を特定する。a/anまたはsomeで導入された名詞句が照応連鎖の起点となることを確認することで、追跡の出発点が定まる。手順2では再言及の形式を識別する。the+名詞、指示語(this/that/these/those)+名詞、同義表現(the machine→the device等)、代名詞(it/they/one等)のいずれかで照応が続くことを確認することで、連鎖のつながりを把握できる。手順3では名詞の種類の整合性を検証する。照応連鎖の各要素が、名詞の種類(可算・不可算・単数・複数)において矛盾なく一致しているかを確認することで、誤った照応を排除できる。

例1: A new policy was announced last week. The policy requires all employees to submit reports monthly. It has received mixed reactions.
→ 照応連鎖:a new policy(初出・可算単数)→ the policy(the+名詞による再言及)→ it(代名詞による照応)
→ 全て可算単数で一致。itはthe policyを、the policyはa new policyを指す。

例2: Some research was conducted on the topic. The findings were published in a journal. They contradicted earlier studies.
→ 照応連鎖:some research(初出・不可算)→ the findings(同義的再言及・可算複数に転換)→ they(代名詞)
→ researchは不可算だが、findingsは可算複数。theyはthe findingsを指す。researchとfindingsの種類が異なるため、theyがresearchを指す可能性は排除される。

例3: The team presented a proposal. The plan was well-received by the committee. They approved it immediately.
→ 照応連鎖:a proposal(初出・可算単数)→ the plan(同義表現による再言及)→ it(代名詞)
→ proposalとplanは同義表現。itはthe plan/proposalを指す。theyはthe committeeを指す(可算複数扱い)。

例4: We purchased some equipment for the laboratory. The new devices arrived yesterday. They were installed by technicians.
→ 照応連鎖:some equipment(初出・不可算)→ the new devices(同義的再言及・可算複数に転換)→ they(代名詞)
→ equipmentは不可算だが、devicesは可算複数。theyはthe new devicesを指す。

以上により、照応連鎖を起点から追跡し、形式の変化や名詞の種類の整合性を検証しながら、文章全体の指示構造を正確に把握する能力が確立される。

このモジュールのまとめ

このモジュールでは、名詞の可算・不可算の定義と識別という統語層の理解から出発し、意味層における名詞の種類と意味的特性の対応、語用層における数量表現・冠詞・限定詞の選択、談話層における名詞句の文章内での照応関係の追跡という四つの層を体系的に学習した。これらの層は段階的に積み上がる構造を持ち、統語層での形態的識別が意味層での意味選択を可能にし、意味層での理解が語用層での表現選択を支え、語用層での文法的処理能力が談話層での文章全体の追跡を実現するという階層的な関係にある。

統語層では、可算名詞と不可算名詞の定義を「個別の境界を持つ単位」対「連続的・均質的な実体」として確立し、複数形語尾-sの可否、冠詞a/anとの共起、辞書の[C]/[U]表記という三つの手がかりに基づく判定手順を習得した。さらに、普通名詞と固有名詞の区別では、大文字表記・唯一性・冠詞パターンの三つの手がかりを体系化し、固有名詞にtheが付く場合と付かない場合の原理を理解した。集合名詞については、集団を一体的な単位として捉えるか構成員の個別性に焦点を当てるかによって単数・複数扱いが切り替わるという判定基準を確立し、policeのように常に複数扱いとなる語との区別も習得した。物質名詞と抽象名詞については、均質性と非物質性という対象の性質に基づく分類と、可算転換が生じた場合の意味変化の規則を把握した。そしてこれらの個別的な知識を統合し、名詞の形態的手がかりと文脈情報を組み合わせた総合的な判定手順を確立した。

意味層では、同一語形の名詞が可算用法と不可算用法で異なる意味を持つ現象(paper=紙/論文、iron=鉄/アイロン)を体系的に理解し、冠詞・複数形の有無を意味選択の手がかりとして活用する方法を習得した。不可算名詞の可算化(種類化・一杯化・具体事例化)と可算名詞の不可算化(素材化・抽象概念化)という転換の規則性を把握し、名詞の形態から意味変化の方向を予測できるという規則性を理解した。さらに、名詞の種類の判定が個々の語の意味選択にとどまらず、冠詞の有無による文全体の意味解釈の分岐を左右することを確認し、語レベルと文レベルの双方で名詞の種類を活用する能力を確立した。この二重のチェック体制により、多義名詞の処理は「形態→種類判定→意味絞り込み→文意との照合」という一貫した手順として体系化された。

語用層では、名詞の種類に基づく数量表現の選択規則を習得した。many/muchの使い分けは可算/不可算の区別に直結し、a few/a littleの使い分けは可算/不可算と肯定・否定の二軸で整理できる。冠詞・限定詞と名詞の種類の共起制約を「名詞の種類による制約→文脈による最終選択」の二段階で処理する手順を確立し、この手順を文法問題に適用して「名詞の種類の判定→共起制約の適用→不適格な選択肢の排除」という体系的な解法を獲得した。

談話層では、名詞句の初出(a/an, some, 無冠詞)と再言及(the, 指示語, 代名詞)のパターンが名詞の種類によって異なることを理解し、代名詞(it/they/one/ones)の選択が先行名詞句の種類と指示の性質に基づくことを把握した。itとoneの使い分け、theyとonesの使い分けを「同一個体か同種の別個体か」という基準で整理し、照応連鎖という概念を用いて文章全体で名詞句の指示対象を追跡する手順を確立した。特に、不可算名詞と可算複数名詞が並存する文脈での代名詞の照応先特定は、名詞の種類の整合性に基づく弁別が有効であることを確認した。

これらの能力を統合することで、初見の名詞に出会った際にその種類を判定し、種類に応じた文法処理を正確に実行し、さらに文章中での名詞句の指示対象を追跡する一貫した能力が確立される。このモジュールで確立した名詞の種類の識別能力と処理手順は、後続のモジュールで代名詞の体系的理解、冠詞の詳細な用法、名詞句の複雑な構造を学ぶ際の出発点となる。

演習編

名詞の種類の識別は、英文法の中でも文法問題・読解問題の双方に直結する能力である。可算・不可算の判定を誤れば冠詞選択や数量表現の選択で失点し、名詞の種類による意味変化を見落とせば読解で文意を取り違える。共通テストでは名詞の種類に関わる文法・語法の知識を前提とした設問が出題され、MARCH・関関同立レベルの私大入試でも名詞の可算・不可算と冠詞・数量表現の正誤を問う設問が頻出する。地方国立大学の英文和訳・英作文問題でも、名詞の種類に応じた正確な処理能力が求められる。以下の演習は、講義編で確立した原理と手順を実際の問題形式で適用し、名詞の種類の識別→表現選択→照応関係の追跡という一連の処理能力を検証するものである。全3大問で構成され、第1問は名詞の種類の識別と数量表現の選択、第2問は可算・不可算による意味変化と冠詞選択、第3問は文章中の名詞句の照応関係の追跡を扱う。

【出題分析】

出題形式と難易度

項目評価
難易度★★☆☆☆ 基礎〜標準
分量全3大問・試験時間20分
語彙レベル教科書章末〜共テ本試レベル
構文複雑度単文〜重文中心

頻出パターン

共通テストでは、名詞の可算・不可算の判定を前提とした冠詞・数量表現の正誤判定が文法項目として問われる。特に、不可算名詞にa/anを付与する誤りや、much/manyの使い分けを問う設問が標準的な出題パターンである。読解問題では、代名詞の指示対象を特定させる設問が出題され、名詞の種類の一致が正答の根拠となる場合が多い。

MARCH・関関同立では、名詞の可算・不可算の転換(coffee→coffees等)を含む設問が出題され、名詞の種類と意味変化の関係を理解していなければ対応が困難である。語法問題として、furniture, equipment, informationなどの不可算名詞に複数形語尾を付けた選択肢が誤答として含まれるパターンが定番となっている。

地方国立大学では、英文和訳において名詞の可算・不可算が意味の決定に関わる文が出題されることがあり、名詞の種類の判定が正確な訳出の前提となる。

差がつくポイント

名詞の種類の判定において、furniture, equipment, information, adviceなどの「見た目は数えられそうだが不可算」の名詞を正確に識別できるかどうかが差を生む。特に、これらの名詞を単位名詞(a piece of, an item of)で個別化する処理を確実に行えるかが重要である。

可算・不可算の転換による意味変化において、同一語形の名詞が文脈によって異なる意味を持つ場合(paper=紙/論文、glass=ガラス/コップ)に、冠詞の有無を手がかりとして意味を正確に選択できるかどうかが得点を左右する。

照応関係の追跡において、代名詞it/theyが複数の名詞句候補のうちどれを指しているかを、名詞の種類(単数/複数、可算/不可算)の一致に基づいて判定できるかどうかが、読解問題の正答率に直結する。

演習問題

試験時間: 20分 / 満点: 100点

第1問(40点)

次の各文の空所に入る最も適切なものを、(a)〜(d)の中から一つ選べ。

(1) Could you give me (  ) on how to improve my essay?
(a) an advice (b) some advices © a few advice (d) some advice

(2) (  ) luggage was left unattended at the airport.
(a) A (b) Some © Many (d) Several

(3) There were (  ) cars parked along the street.
(a) much (b) a great deal of © a number of (d) a little

(4) She has (  ) knowledge of French grammar.
(a) many (b) few © little (d) a few

(5) (  ) child in the class received a certificate.
(a) All (b) Much © Each (d) A lot of

(6) We need to collect (  ) before making a decision.
(a) many evidences (b) an evidence © more evidence (d) a few evidences

(7) There has been (  ) in the negotiations this week.
(a) a few progresses (b) many progress © some progress (d) several progresses

(8) She bought (  ) for the living room.
(a) a new furniture (b) some new furnitures © a new piece of furniture (d) new furnitures

第2問(40点)

次の各組の文について、下線部の名詞の(ア)名詞の種類(可算/不可算)と(イ)文中での意味を、それぞれ答えよ。

(1a) She has a lot of 【experience】 in marketing.
(1b) Studying abroad was 【an experience】 I will never forget.

(2a) 【Glass】 is made by heating sand to extremely high temperatures.
(2b) She accidentally knocked over 【a glass】 of water.

(3a) I need to buy some 【wood】 to build a bookshelf.
(3b) We walked through 【the woods】 for about an hour.

(4) The news reported that several 【works】 by the artist had been stolen from the gallery, and that the 【work】 of restoring the damaged paintings would take months.

(5a) There was 【light】 coming through the curtains.
(5b) She turned on 【a light】 in the hallway.

第3問(20点)

次の英文を読み、設問に答えよ。

A local government recently introduced a new recycling program. The program encourages residents to separate their waste into five categories. Some information about the categories was distributed to every household in the area.

Many residents found the new system confusing at first. The guidelines were difficult to follow because some materials could belong to more than one category. However, after a few weeks of practice, most people became comfortable with the process. They reported that it was actually simpler than they had expected.

The government also provided some equipment to help residents sort their waste. The machines were installed at community centres across the district. They can process up to 500 kilograms of waste per day. Officials believe the program will reduce landfill waste by approximately 30% within a year.

(1) 第2段落第4文のTheyが指す内容を英語で答えよ。

(2) 第2段落第4文のitが指す内容を英語で答えよ。

(3) 第3段落第3文のTheyが指す内容を英語で答えよ。また、some equipment(不可算名詞)ではなくthe machines(可算複数名詞)が照応の先行詞となる理由を、名詞の種類に基づいて日本語で40字以内で説明せよ。

解答・解説

難易度構成

難易度配点大問
基礎40点第1問
標準40点第2問
発展20点第3問

結果の活用

得点判定推奨アクション
80点以上A基礎体系へ進む
60-79B誤答箇所の講義編を再読後、類題で確認
40-59C統語層・意味層の記事を再読し、判定手順を整理してから再挑戦
40点未満D該当講義を復習後に再挑戦

第1問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図名詞の可算・不可算の判定と数量表現・冠詞・限定詞の共起制約の適用能力を検証する
難易度基礎
目標解答時間8分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定 → 各空所の前後の名詞の種類(可算/不可算)を判定し、選択肢との共起制約を検証する。

レベル2:検証観点 → 各選択肢が可算専用・不可算専用・共用のいずれかを確認し、名詞の種類と照合する。

【解答】

小問解答
(1)(d) some advice
(2)(b) Some
(3)© a number of
(4)© little
(5)© Each
(6)© more evidence
(7)© some progress
(8)© a new piece of furniture

【解答のポイント】

正解の論拠:(1) adviceは不可算名詞。(a) an adviceは不可算にa/anを付けているため不適格。(b) some advicesは不可算名詞に複数形語尾を付けているため不適格。© a few adviceはa fewが可算複数専用のため不適格。(d) some adviceはsomeが不可算名詞と共起可能であり適格。

(2) luggageは不可算名詞。(a) Aは可算単数専用のため不適格。© Manyと(d) Severalは可算複数専用のため不適格。(b) Someは不可算名詞と共起可能であり、「いくつかの荷物」を意味する。

(3) carsは可算名詞の複数形。(a) muchは不可算専用、(b) a great deal ofは不可算専用、(d) a littleは不可算専用。© a number ofは可算複数と共起し「多数の」を意味する。

(4) knowledgeは不可算名詞。(a) manyと(b) fewは可算複数専用、(d) a fewも可算複数専用。© littleは不可算名詞と共起し「ほとんどない」(否定的)を意味する。文脈上、フランス語文法の知識が乏しいという意味で適切。

(5) childは可算名詞・単数形。(a) Allは可算複数またはall the+名詞の形で使用。(b) Muchは不可算専用。(d) A lot ofは可算複数または不可算と共起。© Eachは可算単数と共起し「それぞれの」を意味する。

(6) evidenceは不可算名詞。(a) many evidencesと(d) a few evidencesは不可算名詞に複数形語尾を付けているため不適格。(b) an evidenceは不可算にa/anを付けているため不適格。© more evidenceはmoreが可算・不可算の両方と共起可能であり適格。

(7) progressは不可算名詞。(a) a few progressesと(d) several progressesは不可算名詞に複数形語尾を付けているため不適格。(b) many progressはmanyが可算複数専用のため不適格。© some progressはsomeが不可算名詞と共起可能であり適格。

(8) furnitureは不可算名詞。(a) a new furnitureは不可算にa/anを付けているため不適格。(b) some new furnituresと(d) new furnituresは不可算名詞に複数形語尾を付けているため不適格。© a new piece of furnitureは単位名詞pieceを用いて不可算名詞を個別化しており適格。

誤答の論拠:各問で最も多い誤答パターンは、名詞の種類を確認せずに日本語の意味だけで選択肢を選ぶケースである。(6)で「たくさんの証拠」からmany evidencesを選んでしまう、(8)で「新しい家具を一つ」からa new furnitureを選んでしまうなどの誤りは、名詞の種類の判定という第一段階を飛ばしたことに起因する。

【再現性チェック】

名詞の可算・不可算を判定し、選択肢の共起制約を検証して不適格な選択肢を排除するという手順は、名詞と数量表現・限定詞の組み合わせを問う全ての文法問題に適用可能。

【参照】 [基盤 M02-統語] └ 可算名詞と不可算名詞の定義と識別手順
[基盤 M02-語用] └ 名詞の種類と数量表現・限定詞の共起規則

第2問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図名詞の可算・不可算による意味変化と可算転換を文脈から正確に識別する能力を検証する
難易度標準
目標解答時間8分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定 → 各下線部の名詞について、冠詞・複数形語尾の有無を確認し、可算用法か不可算用法かを判定する。

レベル2:検証観点 → 可算・不可算の判定結果と文脈を照合し、名詞がどの意味で使われているかを特定する。同一語形が異なる種類で使われている組を比較して意味の違いを明確にする。

【解答】

小問(ア)名詞の種類(イ)文中での意味
(1a)不可算名詞経験(マーケティングにおける経験全般)
(1b)可算名詞(可算転換)一つの体験(留学という具体的な体験)
(2a)不可算名詞ガラス(素材としてのガラス)
(2b)可算名詞コップ(ガラス製の容器)
(3a)不可算名詞木材(建材としての木)
(3b)可算名詞(複数形)森(樹木が生い茂る場所)
(4) works可算名詞(複数形)作品(芸術家の個別の作品)
(4) work不可算名詞作業・仕事(修復という活動全般)
(5a)不可算名詞光(物理現象としての光)
(5b)可算名詞照明器具(廊下の照明)

【解答のポイント】

正解の論拠:(1a)(1b) experienceは不可算用法では「経験全般」、可算用法では「一つの具体的な体験」を意味する。(1b)のan experienceは冠詞aが付いており、留学という個別の体験を指す可算転換(具体事例化)の典型例。

(2a)(2b) glassは不可算用法では「ガラスという素材」、可算用法では「コップ・グラス」を意味する。(2a)はGlass is…と無冠詞・単数形で素材全般を指し、(2b)はa glassと冠詞aが付いて個別の容器を指す。

(3a)(3b) woodは不可算用法では「木材」、可算複数形woodsでは「森・林」を意味する。(3a)のsome woodは建材としての木材、(3b)のthe woodsは「その森」を指す。woodが複数形になると意味が大きく変わる典型例。

(4) 同一文中でworksとworkが共存している。worksは可算複数形で「複数の作品」、workは不可算で「修復作業」を意味する。同一語形の可算・不可算が同一文中で異なる意味で使われる高度な例。

(5a)(5b) lightは不可算用法では「光」(物理現象)、可算用法では「照明器具」を意味する。(5a)はThere was light…と無冠詞・単数形で光全般を指し、(5b)はa lightと冠詞aが付いて個別の照明器具を指す。講義編の記事3(名詞の種類と文意の決定)で扱った”There was light / There was a light”の区別がそのまま問われている。

誤答の論拠:(3b)のthe woodsを「木材」と訳してしまう誤りが典型的。複数形語尾-sが付いている点に注目すれば、不可算の「木材」ではなく可算の「森」であることが判定できる。(5a)と(5b)の違いを見落とし、両方とも「光」と訳してしまう誤りも多い。冠詞aの有無が文意を決定的に分けている点に注意が必要。

【再現性チェック】

冠詞・複数形の有無を手がかりとして名詞の可算・不可算を判定し、文脈と照合して意味を選択するという手順は、同一語形が複数の種類で使用される全ての名詞に適用可能。

【参照】 [基盤 M02-意味] └ 可算・不可算による意味変化の識別手順
[基盤 M02-意味] └ 名詞の種類と文意の決定

第3問 解答・解説

【戦略的情報】

項目内容
出題意図文章全体における名詞句の照応連鎖を追跡し、代名詞の指示対象を名詞の種類の整合性に基づいて正確に特定する能力を検証する
難易度発展
目標解答時間4分

【思考プロセス】

レベル1:構造特定 → 代名詞they/itの直前の文脈から先行名詞句の候補を特定し、数(単数/複数)と名詞の種類(可算/不可算)の一致を確認する。

レベル2:検証観点 → 候補が複数ある場合、文の意味および名詞の種類の整合性から最も自然な照応関係を選択し、照応連鎖全体の一貫性を検証する。

【解答】

小問解答
(1)most people(またはMany residents)
(2)the new system(またはthe process)
(3)The machines。理由:theyは複数形の代名詞であり、不可算名詞のequipmentはtheyで受けられない。可算複数のthe machinesと数が一致するため。

【解答のポイント】

正解の論拠:(1) 第2段落第4文”They reported that it was actually simpler than they had expected.”のTheyは複数形の代名詞。直前の文で”most people”が主語として登場しており、「大多数の人々がそう報告した」という文意と一致する。第1段落の”Many residents”も照応連鎖の起点として有効。

(2) 同文のitは単数の代名詞。指示対象の候補としてthe new system(第2段落第1文で言及)およびthe process(第2段落第3文で言及)がある。文脈上「そのシステム(プロセス)は予想より実際には簡単だった」という意味であり、the new systemまたはthe processのいずれも適格。

(3) 第3段落第3文”They can process up to 500 kilograms of waste per day.”のTheyは複数形の代名詞。直前にsome equipment(不可算)とThe machines(可算複数)がある。theyは複数の先行詞を受ける代名詞であり、不可算名詞のequipmentをtheyで照応することは文法的に不自然である。the machinesは可算複数であり、theyとの数の一致が成立する。

誤答の論拠:(3)でTheyをsome equipmentの照応と誤認する答えが典型的。equipmentは不可算名詞であり、複数代名詞theyの先行詞としては不適格であるという名詞の種類に基づく判断が求められる。

【再現性チェック】

代名詞の指示対象を、数の一致と名詞の種類の整合性に基づいて特定する手順は、複数の名詞句が混在する文章での読解問題全般に適用可能。特に、不可算名詞と可算複数名詞が近接して出現する場合に、theyの照応先を名詞の種類から絞り込む技法は汎用性が高い。

【参照】 [基盤 M02-談話] └ 名詞句の導入と再言及のパターン
[基盤 M02-談話] └ 照応連鎖の追跡手順

【関連項目】

[基盤 M03-統語]
└ 代名詞の種類と識別基準を確認し、照応処理能力を強化する

[基盤 M09-統語]
└ 冠詞の種類と用法を体系的に学び、名詞句の処理能力を発展させる

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