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早稲田大学 法学部 2024年度 現代文

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目次

(四)

問二十一

 まず、傍線部解釈を行う。すると、「『別の』生活様式」とあり、提示文であることが分かる。また、さらに次の文で「それは」とあることから、次の文以降で「別の生活様式」に関する説明がなされていることが分かる。
 テリトリーとノマドの対比構造は既に示されているのだから、これをヒントにすれば、容易に正解することができる。

 消去法や整合性を細かく確認すると、表現が細かいが故に時間を浪費してしまう。そのため、全ての選択肢の正誤を細かく判定するような解法はオススメしない。問題集・過去問や予備校・塾などでは、解説として、全ての選択肢を本文と照合し、その正誤を判定する嫌いがあるが、これは全くもって実践的ではない。

解答例

ホ:ある土地や領域を自己に固有のものとして排他的に所有し、教会を管理しながら棲みつくテリトリー論的生存様式に対し、ある場を占拠しテントを張るという所有でも無所有でもないし実践をとおして、独占的所有という観念が発生する条件明らかにし、それとは異なるあり方を示す生存様式。

問二十二

 傍線部前後(一つの段落内)が回答根拠となるので、間違えることはないだろう。間違えるのだとすれば、文字が読めていないので、単語や接続詞の理解を確認するといい。難関大では、硬質な文章であるが故に文字が読めない・理解できない、という課題は皆通る道である。自覚し、一つ一つ調べることで、理解を深めることができる。
 今回の問題は、「自己同一性が土地に紐づくか(テリトリー)、自身に紐づくか(ノマド)」、ということがテーマにになっている。直前部の内容は、土地を移動した場合、土地と紐づいた固有性は放棄され、移動先の土地で、固有性が形成され、この過程において、人間に紐づく固有性は無視(宙吊り)される、というもの。

解答例

ハ:ドゥルーズにおけるノマディズムとは、アイデンティティや固有性を温存したままある領土から別の領土へと移動することではなく、一切の領域における固有性を廃棄し、所有の対象となる領域の同一性を停止し、究極的には主体自身のアイデンティティを宙吊りにすることであるから。

問二十三

 「テリトリー」の具体的な特徴に関する問題
 傍線部を含む段落の内容が概ね回答根拠となる。「テリトリー」に関する基本情報を前半部分で理解しておくことが前提となるが、さほど時間をかけずに正答したい問題。こうした問題を消去法などと余計なことをせずに、短時間で解くことが、記述問題の得点率を高めることができる。
 また、選択肢検討の基本的な方法として、読点(、)ごとに要素を確認していくことをオススメする。全てとは言わないが、多くの選択肢問題は、同じような構造で選択肢が作られている。そのため、選択肢全体の文意・解釈を比較する必要は必ずしもなく、要素ごとの比較で十分なことがほとんどである。

確認事項

  • 私的領域の決定要因
  • 固有性と私的領域の関係性
解答例

イ:「土地の問い」の第一のタイプとしての生存権の分割をめぐる思考は、他者との共有なき排他的独占領域を裁断することに存しており、その結果生ずる、どんな個体にも、自己に対して本来的に賦与された固有性に従い、本質主義的なしかたでその限界内でのみ生きようと命ずるシステムのこと。

問二十四

 やや難しいが、これが分からないと記述問題の回答は難しい。こうした本文の中核テーマと密接に関わる設問は総じて難しいことが多く、間違えることは仕方ない面もある。ただ、理解ができない、というレベル感であると、要約系の設問には対応できない。

 イメージとしては、「ノマド」の視点から「ストラテジー」の視点を批判的に視ている、ということ。そういう意味では、「ストラテジー」の視点による私的領域と固有性の決定方法を批判している内容を「ノマド」の視点を参考にすれは、自然と回答することができる。
 とは言っても、回答根拠を多くは傍線部を含む段落によるものであるから、よく読んで選択肢を比較すれば、さほど難しくはない。前項の選択肢比較の方法を参考にして欲しい。

解答例

ニ:生きることは本来、それに先行する原理や上位の原理を一才持たない無原理的(アナーキー)なものであり、生こそはどんな超越的基準によっても正当化される必要がない産出する力能であるにもかかわらず、その力能の産物である法や規則のほうが正を価値評価するという事態のこと。

問二十五

解説、準備中

 設問テーマから機械的にキーワードを抽出し、繋ぎ合わせるのではなく、問いに答える、という観点から採点基準を意識して回答する。模試や問題集の解説では、採点基準をキーワード単位で掲載されることが多いが、実際には、文意や設問の意図が考慮されると考えるのが試験の通例である。対比が問われているのならば「一方で」を用いて後半に重要な情報を記述する。因果が問われているのならば、「なので」を用いで、前半に原因・後半に結果を記述する。こうした文章構造を以って設問の意図を理解している、と採点者に伝えることも重要であろう。

解答例

 対比構造に重点を置き、合否に影響しない程度(約8割)を目標にする回答例である。また、解答方針の都合上、予備校等の解答例とは表現が大きく異なることに留意いただきたい。

個体は、生存以前に階層構造を持つ垂直的なカテゴリーに割り振られ、そこで与えられる排他的な固有性の制約されることなく、生存以後に特性や形質を価値評価することによって、超越的な基準に越権されることのない水平的なカテゴリーの中で同質的に扱われ、独立的に自らが自らの目的を決定し、存在しているということ。

おわりに

 早稲田大学法学部を受験する学生であれば大丈夫だとは思うが、もはや背景知識の理解などで解ける問題は出題されない。今回の試験においても地動説に関する若干の知識やテリトリー・ノマドの意味、といった中核テーマの意味理解というのはあると思う。しかし、設問で問われるのはそれ自体ではないし、当然、そんな知識があっても得点に影響することはない。
 文章・設問、ともに非常に難度の高いものであったが、文章内における内容(テーマ)の分岐点は概ね明確であった。他の学部、他の大学でも共通して言えることだが、文章構造を意識して、文章全体を意識して読めると正答率が上がるように感じた。また、選択肢の構造が同等の設問が多いので、選択肢の作られ方から採点基準となる要素を抽出し、それごとに比較検討していくような解法ができると良い。現代文に関しては、東京大学や一橋大学を志望する学生を意識した、選択肢問題でありながらも本格的な問題であるように感じた。

 ただし、難関大を基準とした試験難易度でいうと、間違いなく簡単である。現代文を重要科目として捉え、他の科目と同様に学習していることが前提であるが、せいぜい2問ミス(選択肢のみ、かつ漢字・四字熟語の設問を含まない)だろう。また、記述問題は7割は堅いだろう。
 繰り返しになるが、オススメの回答方法としては、「消去法を用いず、採点基準(問に対する答)を意識した上で、積極的に選択」するという方法、である。早大現代文(英語もそうだが)は、必ずしも本文表現がそのまま選択肢で用いられているわけではない。にも関わらず、表現の整合性を細かく確認していると、時間が足りなく可能性がある。こうした実践的な諸問題を解決し、試験に臨んでいただきたい。

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