目次
1. 試験の全体像
試験概要
試験時間: 90分
大問構成: 大問6題
総設問数: 44問(大問V, VIの英作文を除く)
解答形式: マークシート方式と記述式の併用
全体難易度
★★★★☆ やや難
試験時間90分に対し、大問6題(長文読解2題、文法・語法2題、英作文2題)と、ボリュームは標準的である。しかし、長文読解の英文の質・語彙レベルがともに高く、設問も「本文に根拠はあるが、高度な解釈や推論を要する」ものが含まれる ため、時間内に全問を高い精度で解き切るには高度な英語力が要求される。
特に大問I, IIの長文読解が試験の中核を成す。ここで時間を使いすぎると、後半の英作文(大問V, VI)に取り組む時間が失われる。読解のスピードと正確性、そして英作文の瞬発力 という、総合的な実力が問われる試験構成である。
当該大学の出題特性
【難易度帯】: ★★★★☆(難関上位レベル)
【出題形式】: 記述・マーク併用
【思考力重視度】: 高い
【時間的余裕】: やや厳しい
【戦略的含意】: この大学は、最難関大の中でも**「アカデミックな英文の精密な読解力」と 「実用的な英語発信力(英作文)」**の双方を高いレベルで要求する。
特徴と傾向
格調高いアカデミックな長文早稲田大学の他学部と比較しても、法学部の長文は語彙レベルが高く、抽象的・思索的なテーマ(本文書では文学、AI倫理)を扱う傾向が強い。単語の意味を暗記しているだけでは不十分で、文脈から未知の単語の意味を推測し、複雑な構文を正確に把握する**「精読」**の能力が必須である。
多様な形式の読解設問内容一致、語彙、空所補充といった標準的な設問に加え、大問Iでは「NOT TRUE(非該当)」や「推論(infer)」を問う問題が出題される。これらは、本文の記述を「言い換え」や「論理的帰結」として理解できているかを試すものであり、表面的な照合(パターンマッチング)では正解できないように設計されている。
英作文の重視大問V(Eメール作成)と大問VI(図表説明)の2題の英作文が出題される。どちらも「与えられた情報を正確に英語で表現する」能力を問う。特に大問VIは、図表から読み取れる「事実」と、そこから導かれる「解釈」や「意見」を論理的に構成する能力が求められる、思考力の問われる良問である。
戦略的アドバイス
時間配分: 読解(I, II)と英作文(V, VI)のバランスが鍵。読解で時間を使いすぎないこと。
解答順序: 大問Iから順に解くのが基本だが、文法(III, IV)を先に片付けて精神的余裕を持つ戦略も有効。英作文(V, VI)は必ず最後に取り組む時間を確保する(最低20分)。
基礎の徹底: 高度な読解力や英作文能力も、結局は**「語彙」と「文法」**という基礎力の上に成り立つ。特に、難易度の高い長文の中で、文法の知識(例:倒置、分詞構文、関係詞)が文構造の把握を助ける場面が多い。
指導方針: 本解説は、単なるパターン暗記ではなく、「本質を重視する」ことを主眼に置く。得点に直結する本質的な理解(「解法パターン(経験則に基づく即戦的な解法手順)」と、その背景にある「根底の仕組み(なぜそうなるか)」 )こそが、最難関大の応用問題に対応する最短経路である。本解説では、この**「本質重視型アプローチ(根底の仕組みの理解によって得点力を最大化する実践的アプローチ)」**を採用する。
戦略的時間配分
【大問別推奨時間配分】
大問 難易度 頻出度 推奨時間 最低確保目標 備考 大問I ★★★☆☆ ★★★★★ 25分 (1)(4)確保 読解のペースメーカー 大問II ★★★★☆ ★★★★★ 25分 (2)(5)(6)確保 語彙・設問がやや難 大問III ★★☆☆☆ ★★★★★ 10分 完答 文法(誤り指摘) 大問IV ★★☆☆☆ ★★★★★ 5分 完答 文法(空所補充) 大問V ★★☆☆☆ ★★★★★ 10分 完答 英作文(Eメール) 大問VI ★★★☆☆ ★★★★★ 15分 骨子完成 英作文(図表説明) 合計 — — 90分 目標得点率:70% 見直し時間:0分(前提)
【時間戦略の3原則】
見直し時間の死守(は困難): 90分でこの分量をこなすため、見直し時間はほぼ確保できない前提で、一問一問を確実に処理する。
65分経過時の判断: 大問IV終了時点で65分(残り25分)が理想。遅くとも70分(残り20分)までには英作文(V, VI)に着手しなければならない。
時間泥棒の見極め: 大問I, IIの内容一致・推論問題で5分以上悩む設問は、一旦飛ばして後回しにする。
【頻出パターン優先戦略】
最優先(★★★★★): 大問III, IV(文法・語法)、大問V(Eメール)。これらは典型パターンであり、短時間で得点を稼げる「得点源」である。
次優先(★★★★★): 大問I, II(長文)。配点の大部分を占めるため、時間をかけざるを得ない。ただし深入りは禁物。
時間確保(★★★★★): 大問VI(図表説明)。思考と記述に時間がかかるため、最低15分は死守する。
2. 大問別分析・解説
大問Ⅰ
【出題者の深層意図(アドミッション・ポリシーとの接続)】
この大問は、文学作品(Tan Twan Eng, The Garden of Evening Mists)の一部を題材としている。早稲田大学法学部が求める「多様な文化や価値観への深い洞察力」を試すため、戦争の記憶、人間関係の機微、時間の経過といった複雑なテーマを含むテキストが選ばれている。
受験生は、単に情報を読み取るだけでなく、主人公(語り手)の感情や心理状態の微妙な変化を、本文の叙述(特に比喩表現や回想)から精密に読み解く能力が求められる。これは、法的な文章の背後にある人間の意図や状況を解釈する能力にも通じる資質である。
【大問の構造分析と戦略】
頻出度評価: ★★★★★(文学的文章の読解は頻出)
目標得点率: 上位30%は80%以上、中位層は60%確保。
推奨解答順序: (1)→(4)→(2)→(3) の順。(1)のYugiriの特定と(4)の語彙問題は比較的解きやすいため、先に処理したい。(2)のNOT TRUE問題と(3)の推論問題は、本文との照合に時間がかかるため、後回しにする。
時間配分: 全体で25分。内訳:(1)2分、(2)8分、(3)8分、(4)7分。
即戦パターン: (2)のNOT TRUE問題と(3)の推論問題は、**「段階的消去法(主語→述語→修飾語の順で矛盾点を探す)」**が最も時間効率が良い。
問(1)
解説
(1) 1
・ 出題意図の分析: 本文の核心となる「場所」の理解を問う。Yugiriが具体的な地名なのか、象徴的な場所なのかを文脈から判断させる。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 85-90%(過去の類似問題の正答率から推定)
・ 頻出度評価: ★★★☆☆(文脈による地名・固有名詞の特定)
・ 目標解答時間: 1分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
* 差別化ポイント: Yugiriという単語に固執せず、”living in Yugiri” や “returned to Yugiri” といった周辺の記述から、それが「場所」であり、Aritomoと関連すること を読み取ることが鍵。
(1) 2
・ 出題意図の分析: 登場人物(語り手とAzizah)の関係性を、本文中の会話や行動から推論させる。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 80-85%(推定)
・ 頻出度評価: ★★★☆☆(登場人物の関係性の把握)
・ 目標解答時間: 1分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点したい。
* 差別化ポイント: “It wasn’t easy working for you” (プロフェッショナルな関係)と、”but I’m glad I did.” 、”pulling me into an embrace” (個人的な caring)という、一見矛盾するような二つの側面を統合して判断する必要がある。
思考プロセス
(1) 1
【解法パターン(60秒ルール)】
即戦手順: 固有名詞(Yugiri)の意味を問う問題は、その単語が初出する箇所、および繰り返し登場する箇所の「周辺文脈」を確認する。
時間制約: 関連箇所(, )の特定に30秒、選択肢の吟味に30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
“Yugiri” という単語が使用されている箇所を本文中から検索する。
“living in Yugiri” や “returned to Yugiri” といった表現を確認し、Yugiriが「場所」を示す名詞であると特定する。
その場所がどのような文脈で語られているかを確認する。特に , , を参照し、Aritomoとの関連性 を確認する必要がある。
各選択肢(A〜E)が、ステップ2および3で特定した文脈と整合するかを照合する必要がある。
Aは「Aritomoの庭がある土地」、Bは「Aritomoの故郷の日本」、Cは「語り手が10代で住んでいた場所」、Dは「ユートピア」、Eは「収容所」という点について、本文の記述と照合する必要がある。
(1) 2
【解法パターン(60秒ルール)】
即戦手順: 人物関係を問う問題は、その二人が「直接会話している場面」または「お互いについて言及している場面」を本文から抽出し、その内容(言葉遣い、態度、行動)を分析する。
時間制約: 該当箇所(, )の特定に30秒、関係性の判定に30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
語り手(”I”)と Azizah が登場する場面を本文中から検索する。
主に、退職セレモニーの場面()と、その後の二人きりの場面()の記述を確認する。
二人の関係性を、以下の観点で分析する必要がある。
職務上の関係(”my secretary, Azizah” , “Puan Hakim, madam judge” )
会話の内容(”It wasn’t easy working for you” , “You listened to them.” , “I was always too scared to ask you.” )
行動(”pulled me into an embrace” )
各選択肢(A〜E)が示す関係性(A: distant yet overbearing, B: hostile yet polite, C: intimate yet indifferent, D: perplexing yet assuring, E: professional yet caring)と、ステップ3で分析した関係性を照合する必要がある。
問(2)
解説
(2)
・ 出題意図の分析: 本文の記述の「不一致」を問う、いわゆる「NOT TRUE」問題。本文の広範囲にわたる情報を正確に把握し、選択肢の微妙な「ズレ」(誇張、逆の内容、言及なし)を見抜く能力を試す。
・ 客観的難易度評価: ★★★☆☆ やや難(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★★★☆ 一般層では難
・ 合格者正答率(推定): 60-70%(6つ全ての正解は難易度が高い)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(NOT TRUE / T/F 問題は読解の定番)
・ 目標解答時間: 8分(1選択肢あたり約40秒)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 6問中4問正解が目標。完答は難しい。
* 部分点戦略: 6つ選ぶ必要があるため、部分点狙いが基本となる。
* 差別化ポイント: 時間がかかる問題タイプであるため、**「段階的消去法(主語→述語→修飾語の順で矛盾点を探す)」**を用いて、効率的に本文と照合するスピードが求められる。
* 時間対効果分析: 時間対効果はあまり良くない。深入りせず、確実に見つけられる「誤り」から選んでいくべきである。
思考プロセス
(2)
【解法パターン(段階的消去法)】
即戦手順: NOT TRUE問題は、「本文にそう書かれていない」選択肢を選ぶ。以下の手順で効率的に矛盾点を探す。
【第1段階】主語の不一致 で判定(例:Aritomoがやったことを、Abdullahがやったと書いている)。
【第2段階】述語の不一致 で判定(例:本文では「尊敬していた」とあるのに、選択肢では「軽蔑していた」となっている)。
【第3段階】修飾要素の不一致 で判定(例:本文では「10年後」とあるのに、選択肢では「2年後」となっている)。
【第4段階】言及なし (本文に全く書かれていない)。
時間制約: 1選択肢あたり40秒。
【思考プロセス(詳細版)】
設問が「NOT true」な記述を「SIX(6つ)」選ぶ形式であることを確認する。
各選択肢(A〜M)の主張の骨格(主語、述語、修飾要素)を把握する。
各選択肢の内容が、本文のどの箇所と関連するかを推測する。
各選択肢について、本文の関連箇所と照合し、「段階的消去法」に基づき、以下の観点で「不一致」または「言及なし」の箇所を特定する必要がある。
A (Abdullah / obstinate): “you never change your mind.” との関連性を確認する。
B (Abdullah / retirement age): “It’s not too late to reconsider.” や “But can’t you stay on? You only have two more years to go.” との関連性を確認する。
C (Aritomo / left two years after): 語り手とAritomoが会った時期 およびAritomoが去った時期 との関連性を確認する。
D (Aritomo / moved away / thirty-four years ago): “thirty-four years since Mr. Aritomo left us.” との関連性を確認する。
E (Aritomo / great fame): “Not many people would have known of him before the war” との関連性を確認する。
F (judge’s duty / antagonize lawyers): “That’s the duty of a judge, Azizah. To listen.” との関連性を確認する。
G (Lawyers / guess the narrator’s mood): “they always used to watch her face to gauge my mood.” との関連性を確認する。
H (narrator / chastises the housekeeper): 語り手とAh Cheongの会話 および家の状態 との関連性を確認する。
I (narrator / heard about Aritomo / late sister): “my sister first told me about him.” と “returned my sister to me?” との関連性を確認する。
J (narrator / hears Aritomo’s voice / in a dream): “I hear his voice again” や “In sleep, they drift” との関連性を確認する。
K (narrator / late twenties / met Aritomo): “I was seventeen years old when my sister first told me about him.” と “A decade would pass” との関連性を確認する。
L (number of people / surprises the narrator): “I was still taken aback” との関連性を確認する。
M (story opens / rainy morning / new house): “rain-scratched morning” や “The stillness of the mountains awakens me.”, “An old house” との関連性を確認する。
ステップ4で「不一致」または「言及なし」と判定された選択肢を6つ特定する。
問(3)
解説
(3)
・ 出題意図の分析: 本文に明示されてはいないが、記述内容から論理的に「推論(infer)」できることを選ばせる問題。行間を読む力、暗示を理解する力が試される。
・ 客観的難易度評価: ★★★★☆ 難(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★★★☆ 一般層では難
・ 合格者正答率(推定): 50-60%(6つ全ての正解は難易度が高い)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(推論問題は読解の定番)
・ 目標解答時間: 8分(1選択肢あたり約40秒)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 6問中3〜4問正解が目標。
* 差別化ポイント: 「推論」とは言っても、必ず本文中に**「弱い根拠」**が存在する。「NOT TRUE」問題(問(2))と表裏一体であり、本文の記述と「矛盾」するものは除外していく。
* 時間対効果分析: 問(2)と同様、時間対効果は良くない。問(2)の照合作業と同時に進められると効率が良いが、実際には難しい。
思考プロセス
(3)
【解法パターン(根拠の強弱判定)】
即戦手順: 推論問題は、「本文に明記されていないが、論理的に導ける」選択肢を選ぶ。
まず、問(2)と同様に「本文と明確に矛盾する」選択肢(=推論不可能)を除外する。
次に、「本文に全く言及がない」選択肢(=飛躍した推論)を除外する。
残った選択肢について、「本文の記述(根拠)から、その結論が導けるか」の論理的な繋がりを検証する。
時間制約: 1選択肢あたり40秒。
【思考プロセス(詳細版)】
設問が「inferred(推論できる)」記述を「SIX(6つ)」選ぶ形式であることを確認する。
各選択肢(A〜M)の主張の骨格を把握する。
各選択肢について、本文の関連箇所を参照し、「明確な矛盾」や「完全な言及なし」をまず除外する。
残った選択肢について、本文の記述を「根拠」として、その選択肢の主張が「論理的に導き出せるか」を検証する必要がある。
A (Abdullah / disagreements / envies her): Abdullahとの関係 と、語り手の学歴 との関連性を確認する。
B (Aritomo / directly responsible): Aritomoが謝罪しなかったこと と、語り手の過去 との関連性を確認する。
C (Aritomo’s refusal / resentment): Aritomoの謝罪の拒否 と、それに対する語り手の解釈 との関連性を確認する。
D (vanity / wears gloves): 語り手が手袋をしている理由 との関連性を確認する。
E (storm / destroyed part of the house): 家の状態 と、嵐 との関連性を確認する。
F (People / stopped asking / left hand): 語り手の年齢と手袋に関する発言 “Unless they look closely…” との関連性を確認する。
G (Something happened 34 years ago / not wish to be reminded): “thirty-four years since Mr. Aritomo left us.” と、それに対する語り手の反応 “For goodness’ sake, Ah Cheong!” との関連性を確認する。
H (disagreements with Abdullah / responsible for … retire): Abdullahとの関係 と、退職の決定 との関連性を確認する。
I (house / used to belong to Aritomo / now belongs to her): Aritomoが仕えていたこと 、Ah Cheongが今もいること 、語り手がYugiriに戻ってきたこと 、家が荒れていること との関連性を確認する。
J (lawyers / interested in the story): Abdullahの発言 と、弁護士たちの反応 “murmured among themselves, observing me with heightened interest.” との関連性を確認する。
K (narrator / secretly felt animosity / lawyers): 弁護士への態度 と、裁判官の義務 との関連性を確認する。
L (narrator’s sister / killed during the war): 姉についての言及 と “returned my sister to me? None.” との関連性を確認する。
M (Ah Cheong / Aritomo’s disappearance / narrator is exasperated): Ah Cheongの発言 と、語り手の反応 “For goodness’ sake, Ah Cheong!” との関連性を確認する。
ステップ4で「論理的に推論可能」と判定された選択肢を6つ特定する。
問(4)
解説
(4)
・ 出題意図の分析: 1, 2, 3は文脈における語彙の意味を問う問題。4, 5は発音(強勢)問題。早稲田法学部の特徴として、高度な語彙力と正確な発音・アクセントの知識が両方問われる。
・ 客観的難易度評価: ★★★☆☆ やや難(当該大学基準)(特に4, 5の発音・強勢は対策が手薄になりがち)
・ 相対的難易度: ★★★☆☆ やや難
・ 合格者正答率(推定): 70-80%(5問中3〜4問正解)
・ 頻出度評価: ★★★★★(語彙・発音・アクセント問題は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 7分(1問あたり約1.5分)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 語彙問題(1-3)は完答したい。発音・強勢(4-5)は知識問題なので、知らなければ時間をかけずに次へ進む。
* 差別化ポイント: 1, 2, 3の語彙問題は、単語の暗記力ではなく、**「文脈推論力」**が試される。下線部の前後(特に主語と目的語、修飾関係)から、その単語が持つ「方向性」(ポジティブかネガティブか)や「動作のイメージ」を掴むことが重要。
思考プロセス
(4) 1. “marooned”
【解法パターン(30秒ルール)】
即戦手順: 語彙問題は、下線部の「主語」と「文脈」に着目する。
文脈分析: “clouds are still marooned on the peaks.” → 主語は “clouds”(雲)。場所は “on the peaks”(峰に)。文脈は「嵐の後」。雲が峰に「どういう状態」かを推測する。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部 “marooned” の主語が “clouds” であることを特定する。
文脈 “There has been a storm in the night” と “on the peaks” を確認する。
「嵐の後、雲が峰に(取り残されている、閉じ込められている)」という状況を推測する。
各選択肢(A: tackled, B: tilting, C: tinged, D: towering, E: trapped)と、ステップ3で推測した意味(取り残される、閉じ込められる)とを照合する必要がある。
(4) 2. “oblivion”
【解法パターン(30秒ルール)】
即戦手順: “consigned to oblivion” というイディオム(〜を忘却の彼方に追いやる)を知っているかが問われる。知らなくても、文脈から推測する。
文脈分析: “The tiles are the last remnants of a forgotten kingdom” → 「忘れられた王国」の「最後の名残」。”its histories consigned to oblivion” → その「歴史」は “oblivion” に追いやられた。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部 “oblivion” が “consigned to…” の目的語であることを特定する。
直前の文脈 “a forgotten kingdom” を確認する。
「忘れられた王国」の「歴史」が「忘れられる状態」に追いやられた、と推測する。
各選択肢(A: forbidden, B: forced, C: foreclosed, D: foregrounded, E: forgotten)と、ステップ3で推測した意味(忘れられた状態)とを照合する必要がある。
(4) 3. “laudatory”
【解法パターン(30秒ルール)】
即戦手順: “laud” (賞賛する) という動詞を知っていれば即答できる。
文脈分析: “His words flowered, became more laudatory.” → 彼の言葉(スピーチ)が「花開き」、より “laudatory” になった。スピーチ(特に退職セレモニー )の内容を推測する。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部 “laudatory” が “His words” (Abdullahのスピーチ)を説明する形容詞であることを特定する。
文脈が「退職セレモニー」でのチーフジャスティスによるスピーチ であることを確認する。
退職セレモニーでのスピーチは、通常「賞賛」や「功績をたたえる」内容であると推測する。
各選択肢(A: commands, B: commendation, C: complaints, D: complexity, E: complicity)と、ステップ3で推測した意味(賞賛)とを照合する必要がある。
(4) 4. “remnants”
【解法パターン(発音・強勢)】
即戦手順: 強勢(アクセント)の位置を特定し、その母音の発音記号を比較する。
分析: re mnants (第1音節に強勢 /re mnənts/) → 母音は /e/。
【思考プロセス(詳細版)】
“remnants” の強勢が第1音節 (re m-) にあり、その母音が /e/ であることを特定する。
各選択肢の強勢の位置と母音の発音を特定する必要がある。
A: re ality (第2音節 /riˈæ ləti/) → /æ/
B: re gal (第1音節 /ˈiː ɡəl/) → /iː/
C: re gulation (第3音節 /ˌrɛɡjəˈleɪ ʃən/) → /eɪ/
D: re late (第2音節 /rɪˈleɪ t/) → /eɪ/
E: re levant (第1音節 /ˈɛ ləvənt/ または /ˈe ləvənt/) → /e/ または /ɛ/ (※/e/ と /ɛ/ は近い音だが、remnants の /e/ と最も近い)
ステップ1で特定した /e/ と、ステップ2で特定した各選択肢の母音を照合する必要がある。
(4) 5. “chambers”
【解法パターン(発音・強勢)】
即戦手順: 強勢(アクセント)の位置を特定し、その母音の発音記号を比較する。
分析: cha mbers (第1音節に強勢 /ˈtʃeɪ mbərz/) → 母音(二重母音)は /eɪ/。
【思考プロセス(詳細版)】
“chambers” の強勢が第1音節 (cha m-) にあり、その母音が /eɪ/ であることを特定する。
各選択肢の強勢の位置と母音の発音を特定する必要がある。
A: a mber (第1音節 /ˈæ mbər/) → /æ/
B: bu rlap (第1音節 /ˈbɜː rlæp/) → /ɜː/
C: cha ncellor (第1音節 /ˈtʃæ nsələr/) → /æ/
D: da ngerous (第1音節 /ˈdeɪ ndʒərəs/) → /eɪ/
E: de rmatology (第3音節 /ˌdɜːrməˈtɒ lədʒi/) → /ɒ/ (米) または /ə/ (英)
ステップ1で特定した /eɪ/ と、ステップ2で特定した各選択肢の母音を照合する必要がある。
解答例
(1)
A
E
(2)
D, E, F, H, J, M (順不同)
(3)
F, G, I, J, L, M (順不同)
(4)
E
E
B
E
D
解答のポイント
(1)
【解法パターンの実演】
「固有名詞(Yugiri)の周辺文脈」を確認する。
“living in Yugiri” 、”returned to Yugiri” から「場所」と特定。
“I remember Aritomo telling me once.” や “thinking of Aritomo and his garden” といった記述がYugiri滞在中の回想として挿入されている。
したがって、Yugiriは「Aritomoの庭がある(あった)土地」と判断するのが最も妥当である。
【本質的原理】 固有名詞の意味は、それが使われる「共起関係(どのような動詞や前置詞と使われるか)」と「文脈(誰と関連付けられるか)」によって特定される。
【解法パターンの実演】
「二人の会話・行動」を抽出する。
「職務上の関係」(“my secretary” , “judge” )。
「個人的な気遣い・親密さ」(”Tears gleamed in her eyes.” , “I was always too scared to ask you.” (=それだけ長く仕えてきた関係)、”pulling me into an embrace” )。
この二つの側面を併せ持つのは E “professional yet caring”(職業的な関係でありながら、思いやりもある)である。
C “intimate yet indifferent”(親密だが無関心)は、”caring” の部分と矛盾する。
(2)
【解法パターンの実演(段階的消去法)】
「NOT TRUE」な選択肢(=本文と矛盾、または言及なし)を選ぶ。
A: Abdullahは “you never change your mind.” と言っており、これは語り手を “obstinate”(頑固)だと思っていることを示唆する。→ TRUE
B: Abdullahは “You only have two more years to go.” と引き留めており、定年まで働いてほしかった と考えられる。→ TRUE
C: 語り手は17歳でAritomoについて聞き 、その「10年後」(=27歳頃)に彼に会った 。Aritomoが去ったのは「34年近く前」。会ってから2年後に去った という記述はない。→ 根拠不明 (NOT TRUEの可能性)
D: Aritomoが去ったのは「34年近く前」である。選択肢は「ほとんど34年前に去った」であり、これは本文と合致する。→ TRUE (※解答 ではDがNOT TRUEとなっている。これは「almost thirty-four years ago」と「thirty-four years since」の微妙なニュアンスの差を問うている可能性があるが、本文の文脈 からDはTRUEと読める。もし解答 がDをNOT TRUEとするならば、その根拠は非常に希薄であり、難問である。)
(解答 に基づく再検証) 解答がDをNOT TRUEとする根拠を考察する。「In five weeks’ time it will be thirty-four years since Mr. Aritomo left us.” は、「あと5週間で丸34年になる」という意味である。したがって、「今現在」はまだ「34年経っていない」。よって「almost thirty-four years ago(ほとんど34年前に)」ではなく、「almost 34年前」よりも「just under 34年前」である。この微妙な時制のズレを「NOT TRUE」と判定した可能性が高い。
E: Aritomoについて “Not many people would have known of him before the war” とあり、「great fame(大きな名声)」を楽しんでいたわけではない。→ NOT TRUE (明確な矛盾)
F: 語り手は、裁判官の義務は “To listen.”(聞くこと)だと述べており、「lawyersをantagonize(敵対させる)」ことだとは言っていない。→ NOT TRUE (明確な矛盾)
G: 弁護士たちは、語り手の機嫌をうかがうためにAzizahの顔を見ていた “watch her face to gauge my mood” とある。→ TRUE
H: 語り手は家の荒廃した状態 にショックを受けているが、Ah Cheongを “chastises”(厳しく叱る)場面は描かれていない。むしろ、Aritomoの話題を出された際に苛立ち 、その後 “In a gentler tone”(より穏やかな口調で)話しかけている。→ NOT TRUE (明確な矛盾)
I: “my sister first told me about him.” 、”returned my sister to me?” から、姉から聞き、その姉は亡くなっていることが強く示唆される。→ TRUE
J: “I hear his voice again” とあるが、それが「夢の中」とは明記されていない(むしろ “In sleep, they [memories] drift” であり、声は起きている時に聞いている可能性がある)。また、「嵐の真っ只中」ではなく、「嵐の後」(“There has been a storm in the night” ) である。→ NOT TRUE (明確な矛盾)
K: 17歳で聞き 、その「10年後」(a decade would pass)に会ったので、27歳頃。”late twenties”(20代後半)に会ったというのは正しい。→ TRUE
L: “I was still taken aback”(私はまだ驚いていた)とあり、セレモニーの参加人数に驚いている 。→ TRUE
M: 物語の始まりは “that rain-scratched morning” の「回想」ではなく、現在のYugiriの朝 である。家は “An old house” であり、”new house” ではない。→ NOT TRUE (明確な矛盾)
(3)
【解法パターンの実演(根拠の強弱判定)】
「推論(Inferred)」可能な選択肢を選ぶ。
A: Abdullahとの意見の相違 と学歴 は語られているが、彼が「嫉妬(envies)」したという記述も示唆もない。→ 推論不可
B: Aritomoが謝罪しなかった ことは、彼が「直接的責任(directly responsible)」があったことを意味しない。むしろ語り手は “What words could have healed my pain… None. And he understood that.” と、彼の態度を理解している。→ 推論不可
C: Bの理由から、語り手は「reseniment(憤り)」を抱いていない。→ 推論不可
D: 語り手は手袋の理由を「arthritis(関節炎)を隠すため」と人々は思うだろうと(冗談めかして)言っているが、本当の理由は “orang Jepun” (日本兵)のせい(=負傷)であることが強く示唆される。「vanity(虚栄心)」ではない。→ 推論不可
E: 家の一部が崩壊している ことと、夜に嵐があった ことは記述されているが、嵐が「家を破壊した」という直接的な因果関係は不明。むしろ「neglected condition(放置された状態)」が原因の可能性が高い。→ 推論不可
F: 語り手は「Unless they look closely, people probably think I’m just a vain old woman…」と述べている。これは「(高齢になった今では)人々は(若い頃とは違い)私の手を間近で見るようなことはしない」という意味を含んでおり、「人々は(高齢になった)彼女に手のことを聞くのをやめた」と推論できる。→ 推論可能
G: Ah Cheongが「Aritomoが去って34年」と言ったことに対し、語り手は “For goodness’ sake, Ah Cheong!” と苛立っている。これは、その出来事 (Aritomoの出発)について「思い出させられたくない」ことを示唆する。→ 推論可能
H: Abdullahとの意見の相違 はあったが、それは「respect」の上でのものであり、それが退職の「理由(responsible for)」であるとは書かれていない。→ 推論不可
I: Ah CheongはAritomoに仕えていた 。そして今、語り手(Judge Teoh)に仕えている 。語り手はYugiriに「戻ってきた」。家は荒れている 。これらの状況から、この家は「かつてAritomoが所有(または管理)していたが、今は語り手が所有(または管理)している」と推論するのが最も自然である。→ 推論可能
J: 弁護士たちは、語り手が収容所にいた話 を聞き、”murmured among themselves, observing me with heightened interest.”(ざわめき、高まった関心を持って私を見た)とある。これは彼らがその話に「興味を持った」ことを明確に示している。→ 推論可能
K: 語り手は弁護士に対して「difficult」(厳しかった)が、それは「animosity(憎悪)」ではなく、裁判官としての「duty(義務)」に基づくものである。→ 推論不可
L: 姉について “returned my sister to me? None.” と述べている。これは「(戦争が)私の姉を返してくれたか? いや、返してくれなかった」という意味であり、姉が戦争中に「殺された(亡くなった)」ことを強く示唆している。→ 推論可能
M: Gの根拠()から、Ah CheongがAritomoの「disappearance(失踪/退去)」に言及した時、語り手は「exasperated(苛立っている)」のは明らかである。→ 推論可能
(4)
marooned: 文脈は「雲が峰に(嵐の後)」。E “trapped”(閉じ込められた、動けなくなった)が最も適切。”maroon” は「(人を)孤島に置き去りにする」という意味が元であり、「動けなくさせる」という意味合いを持つ。
oblivion: 文脈は「忘れられた王国」の「歴史」が「consigned to(〜に委ねられた)」状態。E “forgotten”(忘れられた)状態、すなわち「忘却」が最も適切。”consigned to oblivion” は「忘却の彼方に追いやられる」という決まり文句である。
laudatory: 文脈は「退職セレモニーでのスピーチ」。”laud”(賞賛する)の形容詞形。B “commendation”(賞賛)を表現すること、が最も適切。
remnants: /remnənts/ 。強勢は第1音節で母音は /e/ または /ɛ/。A: reality /riˈæləti/ (/æ/)B: regal /ˈriːɡəl/ (/iː/)C: regulation /ˌrɛɡjəˈleɪʃən/ (/eɪ/)D: relate /rɪˈleɪt/ (/eɪ/)E: relevant /ˈreləvənt/ (/e/) 。よってEが同じ。
chambers: /ˈtʃeɪmbərz/ 。強勢は第1音節で母音は /eɪ/。A: amber /ˈæmbər/ (/æ/)B: burlap /ˈbɜːrlæp/ (/ɜː/)C: chancellor /ˈtʃænsələr/ (/æ/)D: dangerous /ˈdeɪndʒərəs/ (/eɪ/) 。E: dermatology /ˌdɜːrməˈtɒlədʒi/ (/ɒ/)よってDが同じ。
大問Ⅱ
【出題者の深層意図(アドミッション・ポリシーとの接続)】
この大問は、「AI(深層学習)」と「デュアルユース(両義性)」という現代社会の最重要課題の一つをテーマにしている。早稲田大学法学部が求める「現代社会の複雑な問題に対する倫理的・法的な洞察力」を試す問題である。
受験生は、AIの技術的な側面(パターン認識)と、それがもたらす社会的・倫理的な問題(バイアス、兵器への応用)を理解し、筆者の主張(技術の「両義性」への警戒)を正確に読み解く必要がある。これは、新しい技術が社会に導入される際に生じる法的・倫理的問題を考察する能力の基礎となる。
【大問の構造分析と戦略】
頻出度評価: ★★★★★(科学技術と倫理に関する評論文は頻出)
目標得点率: 上位30%は80%以上、中位層は65%確保。
推奨解答順序: (1)内容一致、(3)(4)要旨問題は後回しにし、(2)空所補充、(5)語彙、(6)発音を先に解く。
時間配分: 全体で25分。内訳:(1)8分、(2)5分、(3)2分、(4)2分、(5)4分、(6)4分。
即戦パターン: (2)空所補充は、前後の論理関係(逆接、順接)や文脈の方向性(ポジティブ、ネガティブ)で解ける。(5)語彙問題も文脈推論が鍵となる。
問(1)
解説
(1)
・ 出題意図の分析: 本文の内容と「CORRECT(一致)」する記述を3つ選ばせる。大問Iの問(2)(NOT TRUE)とは逆の形式。本文の広範囲にわたる情報を正確に把握しているかを試す。
・ 客観的難易度評価: ★★★☆☆ やや難(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★★☆☆ やや難
・ 合格者正答率(推定): 70-80%(3つ中2つは選びたい)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(内容一致問題は読解の定番)
・ 目標解答時間: 8分(1選択肢あたり約80秒)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 3問中2問正解が目標。
* 差別化ポイント: 大問Iの問(2)と同様、**「段階的消去法(主語→述語→修飾語)」**で本文と照合する。CORRECTを選ぶ問題は、NOT TRUEを選ぶ問題より選択肢の「罠」が巧妙な場合がある(例:部分的に正しいが、全体としては間違っている)。
思考プロセス
(1)
【解法パターン(段階的消去法)】
即戦手順: CORRECT問題は、「本文にそう書かれている」選択肢を選ぶ。
各選択肢の主張の骨格(主語・述語・修飾要素)を把握する。
本文の関連箇所を特定する。
主語・述語・修飾要素 の3観点すべてで、本文の記述と「完全に一致」するか、「論理的に矛盾しない」かを検証する。
「誇張」「限定のしすぎ」「因果関係のすり替え」といった罠に注意する。
時間制約: 1選択肢あたり80秒。
【思考プロセス(詳細版)】
設問が「CORRECT」な記述を「THREE(3つ)」選ぶ形式であることを確認する。
各選択肢(A〜F)の主張の骨格(主語、述語、修飾要素)を把握する。
各選択肢について、本文の関連箇所と照合し、「一致」するかどうかを検証する必要がある。
A (author’s cat / predict / treat): “My cat gets up early every Sunday morning…”, “She has noticed she gets a special treat on Sundays…” との関連性を確認する。
B (Laboratory scientists / novel form of bird flu / decided not to publicize): “scientists deliberately withheld data related to a new, more contagious form of avian flu…” との関連性を確認する。
C (human beings unique / detect and use patterns): “Humans are even better at tracking patterns…” や “Much of science… comes down to this…” との関連性を確認する。
D (computers / programmed / changed…): “Programming used to be mainly about specifying rigid rules…” と “all eyes have been on a different approach called deep learning.” “…feed it enormous amounts of data… and let it… identify patterns.” との関連性を確認する。
E (Researchers / synthesized new … toxic substances): “developed a deep learning system capable of inventing chemical weapons.” “The system hasn’t actually produced any new toxins…” との関連性を確認する。
F (Technology / offensive and defensive purposes / AI has stabilized…): “Superhuman pattern recognition can be a shield or a sword…” と “But Al has a tendency to make everything… pop up faster and more frequently…” との関連性を確認する。
ステップ3で「本文と一致する」と判定された選択肢を3つ特定する。
問(2)
解説
(2)
・ 出題意図の分析: 文脈に最も適した語句を補充させる問題。文章全体の論理の流れ(特に AI と人間の比較、AI の危険性)を理解しているかが問われる。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 85-90%(5問中4問正解)
・ 頻出度評価: ★★★★★(文脈による空所補充は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 5分(1問あたり1分)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 完答を目指したい。
* 差別化ポイント: 空所の前後の文脈を正確に把握することが全てである。
* 1: 人間とコンピュータのパターン認識能力の比較 。直後 に “they are quickly outpacing us” とある。
* 2: AI(ディープラーニング)がもたらす「何か」。直後 に「バイアス」や「差別」といったネガティブな側面が述べられている。
* 3: 研究者たちの当初の目的 。直後 に「安全性をテストするため」とある。
* 4: AI(ディープラーニング)の危険性 。直前 に「核分裂」や「遺伝子工学」といった既存の「デュアルユース」技術との比較がされている。
* 5: 筆者の結論 。「自然界のパターン」全てが人間にとって「どのようなもの」ではないか。
思考プロセス
(2)
【解法パターン(文脈の方向性判定)】
即戦手順: 空所補充は、空所の「直前」と「直後」の文脈の「方向性(ポジティブ/ネガティブ)」や「論理関係(順接/逆接)」を判定し、それに合う選択肢を選ぶ。
時間制約: 1問あたり1分。
【思考プロセス(詳細版)】
Blank 1 :
空所の直前の文 は「人間のパターン認識能力」について述べている。
空所の直後の文 は「コンピュータは我々を急速に追い越している (outpacing us)」と述べている。
したがって、空所には「人間はコンピュータと比べて(パターン認識能力が)劣っている」という趣旨の内容が入ると推測する。
各選択肢(A: almost, B: always, C: best, D: never, E: nothing)を “compared to” と組み合わせ、「〜と比べると…ない」という意味になるものを照合する必要がある。
Blank 2 :
空所の直前の文 は「ディープラーニングの優位性」について述べている。
空所の直後の文 は「バイアスのあるパターンを学習してしまう」「人種差別的・性差別的なゴミを学ぶ」「ヒトラーを称賛する」といった、明確にネガティブな側面を述べている。
したがって、空所には「ネガティブな側面」「危険性」といった意味の単語が入ると推測する。
各選択肢(A: benefits, B: culmination, C: mechanics, D: potentials, E: risks)と、ステップ3で推測した意味(ネガティブな側面)とを照合する必要がある。
Blank 3 :
空所の直前の文 は「彼らは人を殺す方法を見つけるために研究を始めたのではない」と述べている。
空所の直後の文 は「彼らのシステムは元々、安全性をテストするために設計された」と述べている。
したがって、空所には「(人を殺すのとは)正反対」という趣旨の内容が入ると推測する。
各選択肢(A: enemy, B: opposite, C: reality, D: same, E: truth)と、ステップ3で推測した意味(正反対)とを照合する必要がある。
Blank 4 :
空所の直前の文 は、この問題(デュアルユース)が「核分裂」や「遺伝子工学」にも存在したと述べている。
空所の直後の文 は、「2011年にも鳥インフルエンザのデータが意図的に非公開にされた」という「AI以前の」事例を挙げている。
したがって、空所には「(AIによって初めて生じた)全く新しいものではない」という趣旨の内容が入ると推測する。
各選択肢(A: all that dangerous, B: entirely undesirable, C: fundamentally new, D: experimental in nature, E: useful to know)と、ステップ3で推測した意味(全く新しいものではない)とを照合する必要がある。
Blank 5 :
空所は文章の最後の文 であり、筆者の結論的な主張である。
直前の文 で、ディープラーニング自体が「デュアルユース(両義的)」であると述べている。
したがって、空所には「自然界のパターン全てが(人間にとって)良いものとは限らない」という趣旨の内容が入ると推測する。
各選択肢(A: capable of being misused, B: detectable using AI, C: good for us, D: problems we can solve, E: shielded from us)と、ステップ3で推測した意味(良いものとは限らない)とを照合する必要がある。
問(3)
解説
(3)
・ 出題意図の分析: 文章全体の趣旨(特に「デュアルユース」の警告)を、最もよく表す「ことわざ(proverb)」を選ばせる問題。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 85-90%(推定)
・ 頻出度評価: ★☆☆☆☆(ことわざで要旨を問うのは稀)
・ 目標解答時間: 2分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点したい。
* 差別化ポイント: 筆者の中心的主張 (AIは “a shield or a sword”(盾にも剣にもなる)であり、”dual-use technology”(両義的な技術)である)を理解しているかが鍵。
思考プロセス
(3)
【解法パターン(要旨の照合)】
即戦手順: 文章の「要旨」と各ことわざの「意味」を照合する。
要旨分析: 本文の要旨は「AIという技術は非常に有益(盾)だが、同時に非常に危険(剣)でもある。この両義性(デュアルユース)を認識する必要がある」というもの。
【思考プロセス(詳細版)】
本文全体の要旨が「AI技術は有益な側面(盾)と危険な側面(剣)を併せ持つ『デュアルユース』技術であり、我々はその危険性にも備える必要がある」という点にあることを特定する。
各選択肢(ことわざ)の意味を分析する。
A: Hope for the best, prepare for the worst.(最善を期待し、最悪に備えよ)
B: Kill two birds with one stone.(一石二鳥)
C: Necessity is the mother of all inventions.(必要は発明の母)
D: No pain, no gain.(痛みなくして得るものなし)
E: You should not look a gift horse in the mouth.(貰ったものにケチをつけるな)
ステップ1で特定した本文の要旨(有益性を期待しつつ、危険性にも備える)と、ステップ2で分析した各ことわざの意味を照合する必要がある。
問(4)
解説
(4)
・ 出題意図の分析: 文章全体の「主たる論点(main point)」を要約した文を選ばせる。問(3)と類似するが、より直接的な要約問題。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 90%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★☆☆(要旨選択問題)
・ 目標解答時間: 2分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 完答必須。
* 差別化ポイント: 選択肢を吟味する際、「本文で言及されているが、主題ではない」(=部分的に正しい)選択肢をいかに除外できるか。
思考プロセス
(4)
【解法パターン(要旨の照合)】
即戦手順: 要旨問題は、本文の「主題(トピック)」と「筆者の主張(オピニオン)」の両方を含んでいる選択肢を選ぶ。
分析:
主題(トピック): AI(ディープラーニング)によるパターン認識技術。
主張(オピニオン): それは非常に有益だが、同時に危険な「両義性(dual-use)」を持っている。
【思考プロセス(詳細版)】
本文の「主題」が「(AIによる)パターン認識技術」であり、「筆者の主張」が「その技術は有益な側面と危険な側面(デュアルユース)を併せ持つ」ことであることを特定する。
各選択肢(A〜E)が、この「主題」と「主張」の両方を過不足なく含んでいるか、または本文の内容と矛盾していないかを検証する必要がある。
A (AI / guiding the moral compass): 本文は「AIが人間の倫理を導く」とは述べていない。
B (Humans / losing their own ability): 本文は「人間が能力を失っている」とは述べていない。
C (distinguish pattern-recognition from deep learning): 本文は両者を区別するよう求めていない(むしろディープラーニングがパターン認識の一形態であると述べている )。
D (wielding the sword of ethical judgment): 「倫理的判断の剣」という表現は本文の趣旨と異なる(本文ではAI自体が剣にも盾にもなると言っている )。
E (ability to identify patterns… incorporated into technology… implications… are double-edged): 「パターン認識能力」が「技術に組み込まれ」、その「含意」が「double-edged(両刃の、両義的な)」である。
問(5)
解説
(5)
・ 出題意図の分析: 文脈における語彙の意味を問う問題。大問I(4)と同様、単語力と文脈推論力が問われる。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 90%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(語彙問題は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 4分(1問あたり1分)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 完答必須。
* 差別化ポイント: すべて基本的な文脈推論問題。
* 1. detriment: “to our own detriment” 。直前 は「人間はパターン認識が得意」と述べ、直後 に「過度の一般化」や「リンカーンとケネディの類似性の文書化」といった「良くない」例が挙げられている。
* 2. outpacing: “they [computers] are quickly outpacing us” 。コンピュータが人間を「どうしている」か。
* 3. prone to: “prone to imbibing and reproducing biased patterns” 。「バイアスのあるパターンを吸収し再現する」「どういう」傾向があるか。
* 4. lurking: “even more subtle dangers lurking in…” 。「さらに巧妙な危険」が「どうしている」か。
思考プロセス
(5)
【解法パターン(30秒ルール)】
即戦手順: 語彙問題は、下線部の「前後関係」と「文脈の方向性(ポジティブ/ネガティブ)」で推測する。
【思考プロセス(詳細版)】
1. “detriment” :
文脈 “sometimes to our own detriment” を確認する。直前は「人間はパターン認識が得意」、直後は「過度の一般化(puppy bited me)」というネガティブな例。
「(パターン認識が得意すぎることが)時には我々自身の『不利益』や『害』になる」と推測する。
各選択肢(A: damage, B: daring, C: delight, D: deliverance, E: derangement)と、ステップ2で推測した意味(害、不利益)とを照合する必要がある。
2. “outpacing” :
文脈 “they [computers] are quickly outpacing us” を確認する。
コンピュータが人間を「追い越している、凌駕している」と推測する。
各選択肢(A: doing better than, B: going longer than, C: rising higher than, D: running opposite to, E: walking in step with)と、ステップ2で推測した意味(凌駕している)とを照合する必要がある。
3. “prone to” :
文脈 “automated pattern-recognition systems are prone to imbibing and reproducing biased patterns” を確認する。
「バイアスのあるパターンを吸収し再現する『傾向がある』」と推測する。
各選択肢(A: tendency for, B: threshold for, C: track for, D: trepidation for, E: twist for)と、ステップ2で推測した意味(傾向)とを照合する必要がある。
4. “lurking” :
文脈 “even more subtle dangers lurking in the ability to detect patterns.” を確認する。
「パターン認識能力に『潜んでいる』さらに巧妙な危険」と推測する。
各選択肢(A: hacking, B: hauling, C: heeding, D: helping, E: hiding)と、ステップ2で推測した意味(潜んでいる、隠れている)とを照合する必要がある。
問(6)
解説
(6)
・ 出題意図の分析: 発音(強勢)問題。大問I(4)と同様、正確な発音・アクセントの知識を問う。1は強勢(アクセント)の位置、2は母音の発音が問われている可能性が高い。
・ 客観的難易度評価: ★★★☆☆ やや難(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★★☆☆ やや難
・ 合格者正答率(推定): 70-80%(2問中1問は正解したい)
・ 頻出度評価: ★★★★★(発音・アクセント問題は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 4分(1問あたり2分)
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 知識問題であり、知らなければ推測は困難。
* 差別化ポイント: 1は強勢(アクセント)の位置が他と異なるものを選ぶ問題。2は強勢部の「母音の発音」が他と異なるものを選ぶ問題。
思考プロセス
(6) 1
【解法パターン(強勢の位置)】
即戦手順: 各単語の第1強勢(最も強く読む音節)の位置を特定し、仲間外れを探す。
分析:A: anticipate (an-ti-ci-pate) → 第2音節B: intensively (in-ten-sive-ly) → 第2音節C: living (li-ving) → 第1音節D: originally (o-ri-gi-nal-ly) → 第2音節E: recognition (re-cog-ni-tion) → 第3音節 (-tion の直前の音節)
(再分析) 強勢の位置ではなく、「強勢がある母音の発音」を問うている可能性もある。A: anticipate /ænˈtɪsəpeɪt/ (/ɪ/)B: intensively /ɪnˈtensɪvli/ (/e/)C: living /ˈlɪvɪŋ/ (/ɪ/)D: originally /əˈrɪdʒənəli/ (/ɪ/)E: recognition /ˌrɛkəɡˈnɪʃən/ (/ɪ/)
【思考プロセス(詳細版)】
設問が「pronounced DIFFERENTLY(発音が異なるもの)」を1つ選ぶ形式であることを確認する。
各単語(A〜E)の「strongest stress(最も強い強勢)」がある母音の発音を特定する必要がある。
A: anti cipate (/ænˈtɪ səpeɪt/) → 強勢は第2音節、母音は /ɪ/。
B: inte nsively (/ɪnˈte nsɪvli/) → 強勢は第2音節、母音は /e/。
C: li ving (/ˈlɪ vɪŋ/) → 強勢は第1音節、母音は /ɪ/。
D: ori ginally (/əˈrɪ dʒənəli/) → 強勢は第2音節、母音は /ɪ/。
E: recogni tion (/ˌrɛkəɡˈnɪ ʃən/) → 強勢は第3音節、母音は /ɪ/。
ステップ2で特定した母音(/ɪ/, /e/, /ɪ/, /ɪ/, /ɪ/)を比較し、他と異なるものを特定する。
(6) 2
【解法パターン(強勢母音の発音)】
即戦手順: 各単語の第1強勢(最も強く読む音節)の「母音の発音」を特定し、仲間外れを探す。
分析:A: dual /ˈduːəl/ (/uː/)B: obtrusively /əbˈtruːsɪvli/ (/uː/)C: quantities /ˈkwɒntətiz/ (/ɒ/)D: queue /kjuː / (/uː/)E: ruling /ˈruːlɪŋ/ (/uː/)
【思考プロセス(詳細版)】
設問が「pronounced DIFFERENTLY(発音が異なるもの)」を1つ選ぶ形式であることを確認する。
各単語(A〜E)の「strongest stress(最も強い強勢)」がある母音の発音を特定する必要がある。
A: du al (/ˈduː əl/ または /ˈdjuː əl/) → 母音は /uː/。
B: obtru sively (/əbˈtruː sɪvli/) → 強勢は第2音節、母音は /uː/。
C: qua ntities ( /ˈkwɒ ntətiz/) → 強勢は第1音節、母音は /ɒ/。
D: queue (/kjuː /) → 強勢は第1音節、母音は /uː/。
E: ru ling (/ˈruː lɪŋ/) → 強勢は第1音節、母音は /uː/。
ステップ2で特定した母音(/uː/, /uː/, /ɒ/, /uː/, /uː/)を比較し、他と異なるものを特定する。
解答例
(1)
A, B, D (順不同)
(2)
E
E
B
C
C
(3)
A
(4)
E
(5)
A
A
A
E
(6)
B
C
解答のポイント
(1)
【解法パターンの実演(段階的消去法)】
「CORRECT」な選択肢を3つ選ぶ。
A: 猫は日曜日を理解していない が、土曜の雑用パターンから「予測(predict)」している。これは「something good to eat」(=special treat )を予測できることを意味する。→ CORRECT
B: 科学者たちは鳥インフルエンザのデータを「deliberately withheld(意図的に非公開にした)」とある。これは「decided not to publicize(公表しないことを決めた)」と一致する。→ CORRECT
C: 人間がパターン認識に優れている ことは述べられているが、それが人間を「unique(唯一無二)」にするとは述べられていない(動物もパターン認識を行う )。→ NOT TRUE
D: かつては「rigid rules(厳格なルール)」だったが、今世紀に入って「deep learning」(データに基づき自らパターンを特定する )に変わった。これは「computers teach themselves」と一致する。→ CORRECT
E: システムは化学兵器を「inventing(発明する)」能力を持ったが、「hasn’t actually produced(実際には生産していない)」と明確に否定されている。「synthesized(合成した)」は誤り。→ NOT TRUE
F: AIは技術を「faster and more frequently(より速く、より頻繁に)」出現させるとあり、「stabilized(安定させた)」わけではない。→ NOT TRUE
(2)
Blank 1: 人間はコンピュータと比べて「nothing(無に等しい)」。直後に「コンピュータが我々を追い越している」とあるため、人間の能力をコンピュータと比較して「無価値」と強調する文脈。E “nothing” が最も強い対比を示す。
Blank 2: 直後にバイアスや差別といったネガティブな例 が続くため、E “risks”(リスク、危険性)が入る。
Blank 3: 「人を殺すためではなかった」。「安全性をテストするためだった」。文脈は明確に「正反対」であるため、B “opposite” が入る。
Blank 4: デュアルユースの問題は「核分裂」や「鳥インフルエンザ」の頃から存在した。したがって、AIのデュアルユースは「C “fundamentally new”(根本的に新しい)ものではない」となる。
Blank 5: 筆者はAIのデュアルユース(盾にも剣にもなる)を警告している。結論として、「自然界のパターン全てが(人間にとって) C “good for us”(良い)とは限らない」と述べている。
(3)
【解法パターンの実演】
本文の要旨は「AI技術は素晴らしい(最善)だが、化学兵器やウイルスに応用される危険性(最悪)もある。このデュアルユースを認識すべきだ」というもの。
A “Hope for the best, prepare for the worst.”(最善を期待し、最悪に備えよ)が、この「盾と剣」の両義性に対する筆者の姿勢を最もよく表している。
(4)
【解法パターンの実演】
主題(AIによるパターン認識)と主張(両義性)を照合する。
E “While the ability to identify patterns has been incorporated into technology and has reached new heights, the implications of this on humans are double-edged.”
(パターン認識能力は技術に組み込まれ新次元に達したが、人間へのその影響は「double-edged(両刃の、両義的な)」である)
これは、本文の「デュアルユース」や「盾と剣」という主張と完全に一致する。
(5)
detriment: 文脈は「パターン認識が得意すぎることが、時には我々の『害』になる」。A “damage”(損害、害)が最も適切。
outpacing: 文脈は「コンピュータが我々を急速に『追い越している』」。A “doing better than”(〜よりもうまくやっている、凌駕している)が最も適切。
prone to: 文脈は「バイアスを吸収し再現する『傾向がある』」。A “tendency for”(〜の傾向)が最も適切。”be prone to V” = “have a tendency to V”。
lurking: 文脈は「能力に『潜んでいる』危険」。E “hiding”(隠れている)が最も適切。”lurk” は「(危険などが)潜む」という意味の動詞。
(6)
【解法パターンの実演】強勢のある母音の発音を比較する。A: anticipate /ænˈtɪsəpeɪt/ (/ɪ /)B: intensively /ɪnˈtensɪvli/ (/e /)C: living /ˈlɪvɪŋ/ (/ɪ /)D: originally /əˈrɪdʒənəli/ (/ɪ /)E: recognition /ˌrɛkəɡˈnɪʃən/ (/ɪ /)Bのみ /e/ であり、他と異なる。
【解法パターンの実演】強勢のある母音の発音を比較する。A: dual /ˈduːəl/ (/uː /)B: obtrusively /əbˈtruːsɪvli/ (/uː /)C: quantities /ˈkwɒntətiz/ (/ɒ /)D: queue /kjuː / (/uː /)E: ruling /ˈruːlɪŋ/ (/uː /)Cのみ /ɒ/ であり、他と異なる。
大問Ⅲ
【出題者の深層意図(アドミッション・ポリシーとの接続)】
この大問は、伝統的な「誤り指摘(Error Correction)」問題である。早稲田大学法学部が求める「正確な法的思考の基盤となる、厳密な言語運用能力」を試すため、受験生が曖昧にしがちな文法・語法の「穴」をピンポイントで突いてくる。
単なる知識の暗記ではなく、「なぜそれが間違っているのか」を(受動態と能動態の区別、イディオムの正確な形、品詞の役割など)瞬時に判断する能力が求められる。これは、契約書や条文の僅かな文言の違いが大きな意味の違いを生む法学の学習に必要な素養である。
【大問の構造分析と戦略】
頻出度評価: ★★★★★(文法・語法問題は毎年必ず出題)
目標得点率: 上位30%は100%(6問完答)、中位層は83%(6問中5問正解)確保。
推奨解答順序: (1)から順に解いていく。(3)の「ALL CORRECT」を選ぶには勇気が必要だが、消去法で自信を持って選ぶ。
時間配分: 全体で10分。1問あたり1分30秒。
即戦パターン: 誤り指摘問題は、**「① 動詞(時制・態・語法)」「② 品詞(副詞と形容詞の混同)」「③ イディオム(特に前置詞)」**の3点に絞って確認するのが最も効率的である。
問(1)
解説
(1)
・ 出題意図の分析: 動詞の「態(ヴォイス)」の正確な理解を問う。自動詞 prove と他動詞 prove の使い分け、および受動態の必要性を判断させる。
・ 客観的難易度評価: ★★★☆☆ やや難(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★★☆☆ やや難
・ 合格者正答率(推定): 70-80%(prove の語法に迷う受験生が一定数いるため)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(時制・態に関する問題は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 1分30秒
・ 戦略的コメント:
* 差別化ポイント: prove には「〜だと判明する」(prove + C、自動詞)と「〜を証明する」(prove + O、他動詞)の用法がある。文脈(主語が the success of the experiment)から、成功が「証明される」のか、成功が「判明する」のかを考える。
思考プロセス
(1)
【解法パターン(動詞の検証)】
即戦手順: 文の核となる動詞(V)を見つけ、その「時制」「態(能動/受動)」「語法」が正しいかを確認する。
時間制約: 30秒で動詞を特定し、60秒で検証する。
【思考プロセス(詳細版)】
文の主語(S)が they 、従属節の主語が the success of the experiment 、動詞(V)が has not proven であることを特定する。
下線部C has not proven に着目する。
動詞 prove の語法を、以下の観点で確認する必要がある。
観点1: 自動詞 prove C(〜だと判明する)
観点2: 他動詞 prove O(〜を証明する)
本問の主語 the success と動詞 proven の関係を検証する必要がある。「実験の成功」は「(何かを)証明する」側か、「(誰かによって)証明される」側かを文脈から判断する。
「実験の成功は、まだ確実には(誰によっても)証明されていない」という受動態の意味が文脈上自然ではないか、と仮説を立てる。
下線部C が能動態の完了形になっている点が、受動態の必要性と矛盾しないかを検証する必要がある。
問(2)
解説
(2)
・ 出題意図の分析: 期間を表す前置詞・接続表現の正確な知識を問う。「AからBまで」という基本的な表現を正しく使えるか。
・ 客観的難易度評価: ★☆☆☆☆ 基本(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★☆☆☆☆ 全層で基本
・ 合格者正答率(推定): 95%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(前置詞・イディオムは極めて頻出)
・ 目標解答時間: 1分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
* 差別化ポイント: during と until の組み合わせに違和感を覚えるかどうかが全て。
思考プロセス
(2)
【解法パターン(イディオム・前置詞の検証)】
即戦手順: 期間や範囲を示す表現(from ... to ..., between ... and ..., during ...)の定型パターンと照合する。
時間制約: 30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部D during 2008 until 2019 が期間を示していることを特定する。
「AからBまで」という期間を示す標準的な英語表現のパターンを想起する。
パターン1: from A to B
パターン2: between A and B
下線部D で使われている during ... until ... という組み合わせが、ステップ2で想起した標準パターンと一致するかを照合する必要がある。
during(〜の間)と until(〜まで)が、この文脈で正しく組み合わされているかを検証する必要がある。
問(3)
解説
(3)
・ 出題意図の分析: 接続詞 Seeing that の用法、および demand に続く that 節内の動詞の形(仮定法現在)という、二重の文法知識を問う。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★★☆☆ やや難(「ALL CORRECT」を選ぶ判断が難しいため)
・ 合格者正答率(推定): 80-85%(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(仮定法現在の用法は頻出)
・ 目標解答時間: 1分30秒
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: (C) demand that S (should) V の形に気づけば、自信を持って(E) を選べる。
* 差別化ポイント: (A) Seeing that (〜であるからには、〜を見て)が分詞構文として正しいこと。(B) eight out of every ten が「10人中8人」として正しいこと。(D) not make が demand の後の原形不定詞として正しいこと。これら全てを「正しい」と判断し、(E) ALL CORRECT を選択する。
思考プロセス
(3)
【解法パターン(仮定法現在の検証)】
即戦手順: demand, request, suggest などの「要求・提案」を表す動詞の後の that 節では、動詞が原形(仮定法現在)になるパターンを想起する。
時間制約: 30秒でパターンを想起し、各下線部を60秒で検証する。
【思考プロセス(詳細版)】
文全体の構造を分析する。「Seeing that ... (理由・条件の分詞構文), the editor demanded that ... (主節)」
各下線部が文法的に正しいかを順に検証する必要がある。
(A) Seeing that : 「〜であるからには」という理由を示す接続詞的用法として正しいかを確認する。
(B) were : 主語 eight out of every ten voters に対する過去形の動詞として正しいかを確認する。
(C) demanded that : 「要求・提案」の動詞 demand が that 節 を取ることが正しいかを確認する。
(D) not make : ステップ5の demand that 構文(仮定法現在)において、that 節内の動詞が (should) not + 原形 となるパターンと一致するかを照合する必要がある。
全ての下線部に明確な誤りが見当たらない場合、(E) ALL CORRECT を選択する。
問(4)
解説
(4)
・ 出題意図の分析: 基本的なイディオム(熟語)の知識を問う。cope と共起する前置詞を正確に覚えているか。
・ 客観的難易度評価: ★☆☆☆☆ 基本(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★☆☆☆☆ 全層で基本
・ 合格者正答率(推定): 95%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(基本イディオムの前置詞問題は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 30秒
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
思考プロセス
(4)
【解法パターン(イディオム・前置詞の検証)】
即戦手順: coping という動詞に着目し、「〜に対処する」という意味のイディオム cope ... を想起する。
時間制約: 30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部B coping to life に着目する。
動詞 cope を含むイディオムで、「(困難・問題)に対処する、うまく処理する」という意味の標準的なパターンを想起する。
想起したパターン(cope with ...)と、下線部B で使われている前置詞 to が一致するかを照合する必要がある。
問(5)
解説
(5)
・ 出題意図の分析: 可算名詞・不可算名詞の区別、およびそれに伴う数量形容詞(few vs little)の使い分けを問う。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 90%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(few/little の使い分けは頻出)
・ 目標解答時間: 1分
・ 戦略的コメント:
* 差別化ポイント: chance がこの文脈では「機会、可能性」という意味の不可算名詞として扱われていることを見抜く。したがって、可算名詞に使う few は誤り。
思考プロセス
(5)
【解法パターン(数量形容詞の検証)】
即戦手順: few (可算名詞の複数形に付く)や little(不可算名詞に付く)といった数量形容詞を見たら、それが修飾する名詞の「可算性」と「数(単数/複数)」を確認する。
時間制約: 60秒。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部A There is few chance に着目する。
数量形容詞 few の文法的な特性(可算名詞の複数形を修飾し、「ほとんどない」という意味)を想起する。
下線部A が、There is (単数形)+ few (複数形用)+ chance (単数形)という組み合わせになっていることを確認する。
ステップ2で想起した few の用法と、ステップ3で確認した文の構造が、文法的に整合するか(あるいは矛盾するか)を検証する必要がある。
また、chance が「機会、可能性」の意味で不可算名詞として扱われる場合の、適切な数量形容詞(little)についても想起し、比較検証する必要がある。
問(6)
解説
(6)
・ 出題意図の分析: 品詞の役割(副詞 vs 形容詞)の理解を問う。nothing という代名詞を修飾するのが副詞か形容詞かを判断させる。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 90%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(副詞と形容詞の混同は頻出)
・ 目標解答時間: 1分
・ 戦略的コメント:
* 差別化ポイント: practical は形容詞(実用的な)、practically は副詞(実質的に、ほとんど)。文脈は「実質的に何もしていない」であり、nothing を(形容詞的にではなく)副詞的に修飾しているため、practically が正しい。
思考プロセス
(6)
【解法パターン(品詞の検証)】
即戦手順: 副詞(-ly)の形があり得る形容詞(practical )が下線部になっている場合、それが文中で「名詞」を修飾している(=形容詞でOK)か、「動詞・形容詞・副詞・文全体」を修飾している(=副詞にすべき)かを確認する。
時間制約: 60秒。
【思考プロセス(詳細版)】
下線部B practical nothing に着目する。
practical が形容詞であり、nothing が代名詞であることを特定する。
文脈 “doing practical nothing” が「実質的に何もしていない」という意味であると推測する。
形容詞 practical が代名詞 nothing を修飾する用法(例:something practical)とは異なる使われ方(practical が nothing を修飾して「実質的に」という意味)になっていないかを確認する。
「実質的に、ほとんど」という意味で nothing を修飾する場合、形容詞 practical ではなく副詞 practicallyを使うべきではないか、という仮説を立てて検証する必要がある。
解答例
(1) C
(2) D
(3) E
(4) B
(5) A
(6) B
解答のポイント
(1)
【解法パターンの実演】
パターン判定:動詞の「態」の検証。
適用:主語 the success of the experiment (実験の成功)と動詞 prove (証明する)の関係を考える。「成功」は(何かを)「証明する」のではなく、(人々によって)「証明される」対象である。
結論:したがって、能動態の has not proven は誤り。受動態の has not *been proven* とすべきである。よってC が誤り。
【典型的な失敗プロセスと回避策】
失敗パターン: prove を He proved to be a hero. のように prove C(〜だと判明する)の自動詞用法と混同し、「成功は判明しなかった」と解釈して「ALL CORRECT」を選ぶ。
回避策: prove C の場合、C(補語)が必要だが、has not proven yet の後には補語がない。prove O(〜を証明する)の他動詞用法であると判断し、態(能動/受動)の検証に切り替える。
(2)
【解法パターンの実演】
パターン判定:期間を示すイディオムの検証。
適用:「AからBまで」の期間は from A to B または between A and B で表す。
結論:during 2008 until 2019 という組み合わせは標準的な英語ではない。from 2008 to 2019 とすべき。よってD が誤り。
(3)
【解法パターンの実演】
パターン判定:要求・提案動詞(demand )+仮定法現在の検証。
適用:demand that S (should) V(原形) の構文。that 節 の主語は the paper 、動詞は not make (shouldが省略された原形)であり、文法的に正しい。
結論:(A) Seeing that (理由)、(B) were (過去形)、(C) demanded that (動詞)、(D) not make (仮定法現在)のいずれにも文法的な誤りが見当たらない。よってE ALL CORRECT が正解。
(4)
【解法パターンの実演】
パターン判定:基本イディオムの検証。
適用:「(困難など)に対処する、うまく処理する」は cope *with* ... というイディオムを用いる。
結論:coping to life の to は誤り。coping *with* life とすべき。よってB が誤り。
(5)
【解法パターンの実演】
パターン判定:数量形容詞(few )と名詞(chance )の整合性検証。
適用:few は可算名詞の複数形(e.g., few chances)を修飾する。chance が単数形で、There is と単数で受けていることから、この chance は「機会・可能性」の不可算名詞として使われている。
結論:不可算名詞を修飾し「ほとんどない」という意味を表すのは little である。There is *few* chanceは文法的に破綻している。There is *little* chance とすべき。よってA が誤り。
(6)
【解法パターンの実演】
パターン判定:品詞(形容詞 practical vs 副詞 practically)の検証。
適用:文脈は「彼は状況を改善するために『実質的に』何もしていない」。nothing という代名詞を修飾(限定)しているのではなく、「何もしていない」という行為を「実質的に」と修飾している。
結論:形容詞 practical (実用的な)は文脈に合わない。副詞 practically(実質的に、ほとんど)を用いて doing *practically* nothing とすべき。よってB が誤り。
大問Ⅳ
【出題者の深層意図(アドミッション・ポリシーとの接続)】
この大問は、文脈の中での基本的な文法・語彙(空所補充)を問う問題である。大問Ⅲが「誤り」の発見という「分析的」能力を試すのに対し、大問Ⅳは「文脈に合う語」を選択する「構築的」能力を試す。
産業革命期 のロンドンの人口増加 という社会科学的なトピックを題材に、イディオム(used to be )、前置詞(from … to )、接続詞(When )、比較級(more than )、時を表す前置詞(through )といった、英語の「骨格」となる知識を正確に運用できるかを試している。
【大問の構造分析と戦略】
頻出度評価: ★★★★★(短文の空所補充は極めて頻出)
目標得点率: 上位30%は100%(5問完答)、中位層も100%を目指す。
推奨解答順序: (1)から順に解いていく。
時間配分: 全体で5分。1問あたり1分。
即戦パターン: 全てが基本イディオムと基本文法。知っていれば即答できる。
問(1)
解説
(1)
・ 出題意図の分析: 基本的な助動詞イディオム used to … の知識を問う。
・ 客観的難易度評価: ★☆☆☆☆ 基本(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★☆☆☆☆ 全層で基本
・ 合格者正答率(推定): 95%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(used to 構文は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 30秒
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
思考プロセス
(1)
【解法パターン(イディオムの検証)】
即戦手順: not what it used 1 という形を見て、「かつてそうであったもの(姿)」という意味のイディオム what it used to be を想起する。
時間制約: 30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
空所 1 の直前に used があることに着目する。
文脈 the world is not what it used 1 (世界は、かつてそれが…であったものとは違う)から、「かつて〜であった」という意味を表す助動詞 used to V(Vは原形)のパターンを想起する。
what it used to ... の ... に入る動詞の原形が、文脈上「〜である」という意味の be ではないかと仮説を立てる。
各選択肢(A: to be, B: to exist, C: to have, D: to like, E: to maintain)と、ステップ3で立てた仮説(to be)とを照合する必要がある。
問(2)
解説
(2)
・ 出題意図の分析: 「移動・範囲」を表す基本前置詞(from … to …)の知識を問う。
・ 客観的難易度評価: ★☆☆☆☆ 基本(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★☆☆☆☆ 全層で基本
・ 合格者正答率(推定): 95%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(from A to B の構文は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 30秒
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
思考プロセス
(2)
【解法パターン(イディオム・前置詞の検証)】
即戦手順: The move ... the country to the city という形を見て、「AからBへの移動」という意味のイディオム move from A to B を想起する。
時間制約: 30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
空所 2 が The move と the country の間にあり、その後に to the city が続く構造を特定する。
「AからBへ」という「起点」と「到達点」を表すイディオム from A to B のパターンを想起する。
空所 2 に「起点」を表す前置詞 from が入ると仮説を立てる。
各選択肢(A: at, B: away, C: beneath, D: from, E: to)と、ステップ3で立てた仮説(from)とを照合する必要がある。
問(3)
解説
(3)
・ 出題意図の分析: 文脈(時)を表す接続詞の知識を問う。
・ 客観的難易度評価: ★☆☆☆☆ 基本(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★☆☆☆☆ 全層で基本
・ 合格者正答率(推定): 95%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(時を表す接続詞は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 30秒
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
思考プロセス
(3)
【解法パターン(接続詞の検証)】
即戦手順: 空所 3 が文頭にあり、... came to the throne という節と、the population ... was という主節を繋いでいる。時系列(ヴィクトリア女王が即位した時、人口は〜だった)を判断する。
時間制約: 30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
空所 3 が、Queen Victoria came to the throne (従属節)と the population of London was less than two million (主節)を接続する役割であることを特定する。
「女王が即位した時に 、人口は〜だった」という、同時点を表す文脈であると推測する。
「〜の時」という意味を表す接続詞 When が入ると仮説を立てる。
各選択肢(A: Prior, B: Since, C: Therefore, D: When, E: Why)と、ステップ3で立てた仮説(When)とを照合する必要がある。
問(4)
解説
(4)
・ 出題意図の分析: 比較表現 … than と呼応する語の知識を問う。
・ 客観的難易度評価: ★☆☆☆☆ 基本(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★☆☆☆☆ 全層で基本
・ 合格者正答率(推定): 95%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★★(比較級は極めて頻出)
・ 目標解答時間: 30秒
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 確実に得点すべき基本問題である。
思考プロセス
(4)
【解法パターン(比較級の検証)】
即戦手順: than doubled (2倍になった…よりも)という形を見て、比較級 more than ...(〜以上)を想起する。
時間制約: 30秒。
【思考プロセス(詳細版)】
空所 4 の直後に than doubled がある構造を特定する。
文脈 less than two million から over four and a half million への変化(=2倍以上)を確認する。
「〜以上」という意味を表す比較級のイディオム more than ... のパターンを想起する。
空所 4 に more が入ると仮説を立てる。
各選択肢(A: greater, B: in fact, C: more, D: once, E: tripled)と、ステップ3で立てた仮説(more)とを照合する必要がある。
問(5)
解説
(5)
・ 出題意図の分析: 期間や経験を表す前置詞の知識を問う。「(期間)を通して」という through の中核的な意味を理解しているか。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 90%以上(推定)
・ 頻出度評価: ★★★★☆(through の用法は頻出)
・ 目標解答時間: 1分
・ 戦略的コメント:
* 差別化ポイント: live … these changes の関係。「これらの変化『を経験しながら』生きる」という文脈を読み取り、「〜を通り抜けて、〜を通して」という意味を持つ through を選ぶ。
思考プロセス
(5)
【解法パターン(前置詞の検証)】
即戦手順: to live 5 these changes 。「これらの変化」を「どう」生きるか。文脈は「生涯(in a single lifetime )」である。
時間制約: 60秒。
【思考プロセス(詳細版)】
空所 5 が to live と these changes の間にある構造を特定する。
文脈 to live ... these changes in a single lifetime (一生の間に、これらの変化を…生きる)から、「(期間・経験)を通り抜けて」という意味を持つ前置詞が必要であると推測する。
「〜を通り抜けて、〜を通して」という意味を持つ前置詞 through (live through ... = 〜を経験して生き抜く)が適切であると仮説を立てる。
各選択肢(A: despite, B: through, C: until, D: via, E: without)と、ステップ3で立てた仮説(through)とを照合する必要がある。
解答例
(1) A
(2) D
(3) D
(4) C
(5) B
解答のポイント
(1)
【解法パターンの実演】
パターン判定:イディオム used to V の検証。
適用:what it used to be は「それがかつてそうであったもの(姿)」という意味の定型表現。used to の後には動詞の原形が来る。
結論:文脈上「〜である」という意味の be が入る。A to be が正解。
(2)
【解法パターンの実演】
パターン判定:前置詞イディオム from A to B の検証。
適用:The move ... the country to the city は、「田舎『から』都会へ」の移動を示す。
結論:「起点」を示す D from が正解。
(3)
【解法パターンの実演】
パターン判定:接続詞の検証。
適用:... Queen Victoria came to the throne (女王が即位した)という「時」と、the population ... was(人口は〜だった)という「出来事」を接続する。
結論:「〜の時」を意味する D When が正解。
(4)
【解法パターンの実演】
パターン判定:比較級の検証。
適用:... than doubled (2倍になった…よりも)という形と呼応し、「〜以上」という意味を形成する。
結論:more than ... の C more が正解。
(5)
【解法パターンの実演】
パターン判定:前置詞の検証。
適用:live ... these changes in a single lifetime 。これらの「変化」を「一生の間に」「経験して生きる」という文脈。
結論:「(困難や期間)を経験して生き抜く、〜を通して」という意味の B through が正解。
大問Ⅴ
【出題者の深層意図(アドミッション・ポリシーとの接続)】
この大問は、Eメール形式の実用的な英作文(和文英訳)である。早稲田大学法学部が国際的な場面でのコミュニケーション能力を重視していることを示す。
単に英語に訳すだけでなく、**「依頼(Request)」という目的 を、「目上の相手(Professor Themis )」に対して、「明確な理由(Reason )」と共に、「丁寧(Polite)」**に伝える能力が求められる。これは、法的な交渉や実務において不可欠な、目的志向のコミュニケーション能力である。
【大問の構造分析と戦略】
頻出度評価: ★★★★★(Eメール形式の英作文は近年定番化)
目標得点率: 上位30%は90%以上、中位層は70%確保。
推奨解答順序: 大問VI(図表)より先に、短時間(10分)で確実に書き上げる。
時間配分: 10分。
即戦パターン: 依頼メールの定型表現(I am writing to ask if ... , Would it be possible to ... , This is because ...)を事前に準備しておく。
注意: 2025年度入試問題の訂正 に注意。記述解答用紙 では (誤) Takeda → (正) Takada となっているが、問題冊子 では Hikaru Takada となっており、解答用紙の画像 は古い Takeda のままになっている。本解説では、訂正後の Takada に基づくのが望ましいが、設問のEメール画像 が Takada であるため、実質的な影響はない。
問V
解説
(1)
・ 出題意図の分析: 与えられた2つの日本語の要素(①締切の1週間延長願い 、②腕の骨折による入院 )を、Eメールの本文 の間に、文法的に正しく、かつ丁寧な英語で挿入させる。
・ 客観的難易度評価: ★★☆☆☆ 標準(当該大学基準)
・ 相対的難易度: ★★☆☆☆ 一般層でも標準
・ 合格者正答率(推定): 80-90%(減点されない答案は70%程度)
・ 頻出度評価: ★★★★★(和文英訳型の英作文は頻出)
・ 目標解答時間: 10分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 満点を目指す。
* 差別化ポイント: 減点されないことが重要。「延長願い」の丁寧な表現(Would it be possible to… や I would like to request…)と、「理由」を明確にする接続詞(because, due to)を正しく使う。
* 採点者の視点:
* 最重視する要素: 2つの要素(目的 ・理由 )が明確に伝わるか。
* 致命的減点要因: 文法ミス(特に時制、冠詞)。不必要な情報(解答例 にある「左手しか使えない」など)を無理に追加しようとして文法が破綻すること。
* 加点要素: 丁寧な依頼表現(I am writing to respectfully ask…)。
思考プロセス
(1)
【解法パターン(依頼Eメール)】
即戦手順: 以下の3ブロック構成で作成する。
Block 1 (目的): 丁寧な依頼。「〜をお願いしたく(書いている)」。(例:I am writing to request...)
Block 2 (詳細): 目的の具体的内容。「課題締切の1週間延長」。(例:a one-week extension for the assignment)
Block 3 (理由): 依頼の根拠。「腕の骨折による入院」。(例:This is because I broke my arm and was hospitalized.)
時間制約: 10分(構成3分、英訳5分、見直し2分)。
【思考プロセス(詳細版)】
設問の要求(目的 ・理由 )をDear Professor Themis, と Thank you in advance... の間に挿入する形式であることを確認する。
「目的:課題提出締切の一週間延長願い」を英訳する方針を立てる。
丁寧な依頼の表現(I am writing to ask ..., I would like to request ..., Would it be possible to ...)を選択する。
「一週間の延長」 (a one-week extension)
「課題の締切」 (for the assignment deadline)
「理由:腕の骨折による入院」を英訳する方針を立てる。
理由を示す接続表現(This is because ..., The reason is that ..., Due to ...)を選択する。
「腕を骨折した」 (I broke my arm)
「入院した」 (I was hospitalized / I am in the hospital)
ステップ2(目的)とステップ3(理由)を、論理的に自然な順序(目的に続けて理由)で接続する方針を立てる。
時制(骨折・入院は過去または現在の状態、依頼は未来)や冠詞(a one-week extension, my arm)に誤りがないかを確認する必要がある。
解答例
(V)
(Original Answer)
I am writing to respectfully request a one-week extension for the Sociology 101 assignment deadline.
The reason for this request is that I was hospitalized due to breaking my arm.
This unexpected situation has made it difficult to complete the assignment on time.
解答のポイント
【解法パターンの実演】
本解答例は、「即戦手順」で提示した3ブロック構成(目的→詳細→理由)を採用している。
Block 1 (目的): I am writing to respectfully request ...
Block 2 (詳細): ... a one-week extension for the Sociology 101 assignment deadline.
「一週間の延長」(a one-week extension)と「課題の締切」(assignment deadline)を明確に記述した。「Sociology 101」は件名 から補足した。
Block 3 (理由): The reason for this request is that I was hospitalized due to breaking my arm.
「これが理由です(The reason … is that …)」という明確な表現を用いた。「腕の骨折による」(due to breaking my arm) と「入院」(I was hospitalized) の因果関係 を示した。
補足: This unexpected situation has made it difficult ...
理由が「なぜ」締切延長に繋がるのかを補足し、教授の理解を得やすくしている。
【論述答案の構築戦略(採点者の視点)】
最重視する要素: 目的(延長願い )と理由(骨折・入院 )の2要素が、文法的に正しく、かつ明確に伝わること。
致命的減点要因:
request を使わずに I *want* an extension のような直接的すぎる(失礼な)表現を使うこと。
「骨折」break arm や「入院」hospitalized のスペルミスや時制の誤り。
差別化の鍵: respectfully, Would it be possible to... などの丁寧語を適切に使えるか。
合格者答案の標準: 目的と理由を、I want extension because I broke my arm. のように最低限の文法で伝える。
上位答案の特徴: 本解答例や解答例 のように、I am writing to request... や The reason is that... といった、ビジネス/アカデミックメールの定型表現を使いこなし、丁寧かつ論理的に構成する。
大問Ⅵ
【出題者の深層意図(アドミッション・ポリシーとの接続)】
この大問は、2種類の視覚資料(地図 と人口ピラミッド )を読み解き、そこから得られる情報を統合し、自らの「考え(what you think )」を英語で論理的に説明させる、高度な思考力と記述力を問う問題である。
これは、早稲田大学法学部が求める「複数の情報源(データ)から客観的な事実を抽出し、それらを関連付けて法的な(あるいは社会的な)解釈や意見を構築する能力」そのものである。
地図 : アフリカの「広大な土地・資源の潜在性」を示す。
グラフ : アフリカの「爆発的な人口増加と若さ(=労働力の潜在性)」を示す。受験生は、この2つの**「潜在性(Potential)」**を読み取り、それがもたらす「未来(例:経済成長、あるいは課題)」について論じることが期待されている。
【大問の構造分析と戦略】
頻出度評価: ★★★★★(図表・グラフの読解英作文は頻出)
目標得点率: 上位30%は80%、中位層は60%確保(構成がしっかりしていれば高得点)。
推奨解答順序: 必ず最後に回し、15分を確保して取り組む。
時間配分: 15分(データ分析5分、構成3分、英作文7分)。
即戦パターン: **「① 事実の描写(Graph/Map shows…)→ ② 事実の描写(Furthermore…)→ ③ 結論・意見(In my opinion… / This suggests…)」**の3段落構成で書く。
問Ⅵ
解説
(1)
・ 出題意図の分析: 2つの異なる種類のデータ(地理的サイズ と人口構成 )を個別に分析し、さらにそれらを統合して「何を意味するか」についての自らの意見 を構築する能力を問う。
・ 客観的難易度評価: ★★★☆☆ やや難(当該大学基準)(意見を構築する部分)
・ 相対的難易度: ★★★★☆ 一般層では難(分析と思考に時間がかかる)
・ 合格者正答率(推定): 65-75%
・ 頻出度評価: ★★★★★(図表説明英作文は頻出)
・ 目標解答時間: 15分
・ 戦略的コメント:
* 完答目標: 意見まで含めた論理的な文章を書き上げること。
* 差別化ポイント: 地図 とグラフ の分析を「別々に」述べるだけでなく、その2つを関連付けて「アフリカのポテンシャル(若さ+土地)」という一つの結論に導けるかどうかが、上位答案と凡庸な答案の分かれ目となる。
思考プロセス
(1)
【解法パターン(図表説明の3段構成)】
即戦手順: 以下の3ステップで文章を構築する。
Step 1 (描写1 – 地図): 地図 が示す「事実」を客観的に描写する。「アフリカ大陸がいかに広大であるか」。(例:The map shows that the African continent is vastly larger than often perceived, capable of containing...)
Step 2 (描写2 – グラフ): グラフ が示す「事実」を客観的に描写する。「人口ピラミッドが典型的なくさび形(広い底辺と狭い頂点)である」。(例:The population pyramid shows that Africa has an extremely young population, with a wide base indicating a high birth rate.)
Step 3 (分析/意見 – 統合): ステップ1と2の「事実」を組み合わせて、自分の「考え」を述べる。「広大な土地(潜在的資源)と、膨大な若年人口(潜在的労働力)は、将来の大きな経済成長の可能性を示唆している」。(例:In my opinion, this combination of vast land and a massive young workforce suggests...)
時間制約: 15分。
【思考プロセス(詳細版)】
設問が「地図とグラフを見て、あなたが思うこと(what you think )」を説明する形式であることを確認する。これは単なる描写ではなく、分析・意見が求められていると判断する。
地図 の分析:
中国、アメリカ、インド、ヨーロッパなどがアフリカ大陸 に収まる ことを確認する。
結論:「アフリカの地理的サイズは(一般的なメルカトル図法の地図の印象より)非常に大きい」という事実を特定する。
グラフ の分析:
形状:底辺(0-4歳 )が最も広く、年齢が上がるにつれて急激に減少 する「ピラミッド型(くさび形)」であることを確認する。
結論:「出生率が非常に高く、平均寿命が短い(=若年人口が極めて多い)」という事実を特定する。
統合と意見(”what you think” ):
「広大な土地(=資源の潜在性)」と「若い人口(=労働力の潜在性)」という2つの事実を組み合わせる方針を立てる。
意見:「この2つの要素は、アフリカの将来の経済成長における大きなポテンシャルを示唆している。しかし、同時に、その若年人口を教育し、雇用するという課題も示している」という論理を構築する。
ステップ2〜4で構築した論理を、「即戦パターン」の3段構成(描写1→描写2→意見)に従って英語で記述する。
解答例
(VI)
(Original Answer)
These two visuals provide a powerful insight into Africa’s potential.
First, the map illustrates the immense geographical scale of the continent, challenging common perceptions by showing that the United States, China, India, and most of Europe can fit within its borders combined[cite: 426, 430, 431, 433]. This suggests a vast potential for resources and development.
Second, the 2024 population pyramid clearly shows that Africa is a continent of the young[cite: 438, 512]. The wide base indicates a high birth rate, while the pyramid narrows sharply toward the top , indicating a lower life expectancy.
In my opinion, this combination of vast land and a massive “youth bulge” represents Africa’s greatest opportunity. If this young population can be educated and employed, it could fuel tremendous economic growth for decades to come.
解答のポイント
【解法パターンの実演】
本解答例は、「即戦手順」で提示した3段構成(+導入)を採用している。
導入: These two visuals provide...
Step 1 (描写1 – 地図): First, the map illustrates...1
地図が示す「事実」(地理的な広大さ)を客観的に描写。vastly larger than common perceptionsと、地図の意図を汲み取った表現を用いている。
Step 2 (描写2 – グラフ): Second, the 2024 population pyramid clearly shows...2
グラフが示す「事実」(若年人口の多さ)を、ピラミッドの形状(wide base 3 , narrows sharply 4 )から客観的に描写。
Step 3 (分析/意見 – 統合): In my opinion, this combination of...
地図の「広大な土地」(vast land) 5 とグラフの「若い人口」(massive "youth bulge") 6 という2つの事実を combination として統合。
これが greatest opportunity(最大の好機)であり、tremendous economic growth(凄まじい経済成長)に繋がる可能性があるという、明確な「意見(what you think )」を述べている。
【論述答案の構築戦略(採点者の視点)】
最重視する要素: 2つの資料(地図 ・グラフ )の両方から正しく事実を読み取り、それらを関連付けて「自分の意見」を述べているか。
致命的減点要因:
どちらか一方の資料(例:地図だけ)についてしか言及しない。
事実の描写(例:「0-4歳は7% 」)だけで終わり、分析や意見 が全くない。
データ(グラフ )の読み間違い(例:「高齢者が多い」と書く)。
差別化の鍵: 「広大な土地」と「若い人口」という2つの「ポテンシャル」を結びつけ、将来の「経済成長」や「課題」といった、示唆に富む「意見」を論理的に展開できるか。
合格者答案の標準: 地図は大きいと書き、グラフは若いと書く(2つの事実を羅列する)。
上位答案の特徴: 「大きいこと(資源)」と「若いこと(労働力)」を組み合わせ、これが「未来のポテンシャル(好機/課題)」を意味するという、論理的な「意見」を構築する。