はじめに
明確に入試対策と銘打ってない場合、どんな風に学習を進めるだろうか。おそらく多くの人は、提示されたカリキュラムや課題に沿って学習を進めるのではないだろうか。確かに、中学校までは与えられた課題をクリアすることで、定期テスト対策は可能であるし、大抵の高校に合格することもできる。なぜなら、どんな子であっても同じ問題の対策を同じようにすることが基本となっているからだ。しかし、大学受験の場合は、そうではない。大学個別の対策をする必要性が大きくなる。最難関国立大学は大学ごとに、最難関私立大学は学部ごとに、対策をすることが基本である。であるならば、そうした対策の必要性を含めたゴールを予め設定する必要があるのではないだろうか。
これが、逆算思考、である。ゴールが示されているのだから、何が必要なのかを考え、そのゴールに向かって学習を進めるのである。
Step : 1 目標を設定する
逆算思考の最初のステップは、目標設定、である。目指すべきゴールを明確にすることによって、やるべきことを明確にすることができる。また、早ければ早いほどいい。闇雲に学習する期間を少しでも減らすことができるし、向かう先が明確になっているとモチベーションにもつながる。
受験科目
大学入試は受験科目が大学や学部によって大きく変わる。国公立大学と国立と公立を一括りにする傾向があるが、国立は5教科7科目を課す大学が多いが、公立は3科目で受けれたりと、様々である。また、私立に関しては、学部によって受験科目の制限がある場合もある。法学部の数学、政治経済の選択不可、理系学部の特定の理科科目の受験必須などである。
出題分野・出題傾向
出題分野・出題傾向は大学によって大きく異なる。数学には整数という分野がある。例えば、この分野は大学によって明確に毎年出題する大学とそうでない大学に分かれている。さらにいうと、難関大では頻出であるが、そうでない大学では出題頻度は高くない。
難易度
いわゆるコスパに直結する部分。よく、「〇〇という参考書で、〇〇大学の対策ができますか」というのをネット上で見かけるが、これは自分で判断しなければならない、と考えている。そもそも、問題の難易度が分かっていないということは、科目に対する基礎知識が全く抜けている状態であるから、そもそもスタート地点にも立っていない。
もう少し言うと、入試問題の難易度は、基礎・標準・難関、の3段階に分けられると考えている。基礎は教科書レベル、公式や法則を当てはめるだけで簡単に解ける問題。標準は一般的に応用問題と言われる類の問題。難関は問題集などにはあまり載っていないような問題。例えば、二次関数の最小値・最大値を求める問題(そもそも分野的に簡単、かつ単独で入試に出ることはほぼない)で考える。基礎は全て実数の問題。標準は変域に文字が含まれており、場合わけが必要となる問題(回答に文字が含まれる)。応用は特定の文字式をXなどで置き換えたり、sinやcosなどの変形を伴うもの。正直、二次関数レベルであると、この区分でいう応用も問題集で扱われるのだが、模試などで回答することができれば、おそらく偏差値が65は超える程度の水準になると思う。
Step : 2 現状を把握する
基本的は方向性として、「何が分かっていて何が分かっているかを診断し、分かっていないものを学習する」というのがある。もちろん、定期診断として、本当に分かっているかの確認を適宜行う必要がある。
方法は何も模試に拘る必要はない。日頃の学習でも発見可能である。模試でみるポイントは、分野ごとの正解・不正解、記述模試ならば加点・減点のコメントおよび採点基準、成績(統計)資料の読み込み、の3点である。この3点は時間がなくても、時間をかけて取り組まなければならない。前者2点は絶対評価の観点から、後者1点は相対評価の観点から、重要である。
Step : 3 目標と現状の差を埋める
前提
実行に移る前に、前提条件を確認しなければならない。それは教科・科目・分野、といったものへ対する理解である。例えば、ほぼ全ての受験に必要な英語である。まず、英単語が基本となる。そして、あらゆる問題の土台として英文法がある。この2点の理解ができていなければ話にならない。そして主に英文法が派生するイメージを持っている。英文法問題、英文解釈である。英語長文は文法と解釈の融合分野、英作文は文法と単語の融合問題と考えている。
このように、大枠を把握することによって、個別的な分野ごとの対応が可能となる。基本的には大問ごとに分かれているが、その分野に対して、どのような対策を行えば良いのか、具体的な方法論が示されることは少ない。また、各分野も深度によって内容は大きく分かれる。英単語といっても、多義語や熟語、さらには接頭辞や接尾辞、といったものがある。さらには文法やディスコースマーカーから類推する手法もある。ここまでくると融合分野と捉えてもいいかもしれない。
実施
前提となる知識を理解したところで、目標と現状の差を埋めていく。個別的な対策については記述しない。大きな方向性を示そうと思う。
全ては、どのような知識が必要であったか、事前学習が可能であるか、可能であればどのように学習するのか・不可能であれば試験中にどのように対応するのか、という3ステップで考えることができる。3ステップは2方向に分かれる。
どのような知識が必要であったか
これは、気軽に考えて良い。英語であれば、英単語の意味、文法の法則、などである。ただ、英語長文の内容一致問題は該当箇所へ辿り着く思考を、知識という側面から考えなければならない。なぜなら、X行の〇〇という文、が回答根拠となったことが分かっても、試験中にその回答根拠となる文を見つけ、その文が回答根拠になると判断できなければ意味がない。そのための知識である。
つまり、回答プロセスの再現性を最も重要視しなければいけない。そのために必要な知識である。
事前に対策の可能な知識であるか
これは、大きく2つの視点がある。一つは既学習の枠組みでの確認、もう一つは未学習の枠組みでの確認、である。
既学習の枠組みでの確認とは、具体的には教科書や普段使用している参考書・問題集の確認である。こうしたものを復習して、回答できるのならば、普段の学習が機能していないことを意味する。この場合、知識が足りない以前に、学習姿勢を見直す必要がある。まずは、受験をするだけの学習姿勢の構築である。
未学習の枠組みでの確認とは、具体的には教科書や普段使用してない参考書・問題集の確認である。基本的には、書店での立ち読みになるだろう。難しければ、ECサイトなどのレビュー情報から内容の推測をしても良い。この場合に意識することは、相対評価である。最低ラインで考えるならば、他の受験生が知っていることを知らないことはダメだが、他の受験生も知らないのであれば知らなくてもよい。そのため、有名であったり、人気であったりするものは一通り目を通しておくこおが望ましい。誰も知らないのであれば、知る必要はない。一般的な学習で回答が出来ないと判断した場合は、試験中にどうやって対応していくか、という視点になる。
おわりに
一部の有名進学校では、塾・予備校の受験指導よって、もはや当たり前となっている考え方である。こうした考え方の差が、学力の差となっていると感じている。よく逆転合格という宣伝文句を聞くが、当然、多くの場合は成績の低い有名校の出身者を対象としている一方で、本当に逆転合格をしている場合もある。この本当の逆転合格の仕組みは、塾・予備校側が逆算思考を代行しているに他ならない。目標設定・現状分析、どちらも品質は高校生よりは高くなるだろう。そして、差を埋める授業も、不満が出るレベルでなければ、成績は上がる。
受験勉強は参考者や問題集、塾や予備校、の選び方が重要であるかのような印象があるが、結局、学ぶのは暗記知識ではなくて、考え方であるように思う。