| 項目 | 内容 |
| 大学・学部 | 明治大学・全学部統一日程 |
| 科目 | 英語 |
| 年度 | 2022年度 |
| 試験時間 | 60分 |
| 配点 | 100点 |
本試験は全学部統一日程として全学部共通の枠組みで実施された。大問数は4題、総解答数は44問であり、全問がマークシート方式による客観式設問である。試験時間60分に対して44問の処理が求められるため、1問あたりに割くことのできる平均時間は約1分20秒にとどまる。迅速な知識想起と論理的読解の双方が要求される構成である。
本年度の試験の性格
2022年度の明治大学全学部統一英語は、基礎的知識の網羅的確認から長文読解における複合的論理把握までを極めて均整の取れた構成で測定する総合試験である。近年の同大学全学部統一入試では長文読解を中心とする出題形式が定着しているが、本年度においては大問〔Ⅰ〕に22問という大規模な短文空所補充形式が配置され、大問〔Ⅱ〕に対話文完成、大問〔Ⅲ〕および大問〔Ⅳ〕にまとまった分量の論説的長文読解が配される構成となっている。
大問〔Ⅰ〕の短文空所補充は、語彙、熟語、動詞の語法、文法構造(時制・仮定法・受動態・前置詞・接続詞・比較等)の広範な知識を問うものであり、小問1問あたり30秒前後での処理が想定されている。ここでいかに時間を浪費せずに正確な解答を積み上げられるかが、後半の大問〔Ⅲ〕および大問〔Ⅳ〕に充当できる思考時間を直接左右する。
大問〔Ⅱ〕の対話文完成問題は、日常的な状況設定における発話意図の追跡と、登場人物の感情や論理の整合性を問う設問であり、会話特有の定型表現のみならず、前後の発話連鎖に基づく文脈的推論能力を測定する。
大問〔Ⅲ〕および大問〔Ⅳ〕の長文読解は、自然科学分野(海洋生態系におけるサンゴ礁の再生技術)と社会科学・心理学分野(都市政策における幸福度測定と笑顔の社会的効用)からそれぞれ出題された。いずれも論旨が明快な論説文でありながら、専門的な語彙の文脈依存的意味判定、指示対象の正確な同定、パラグラフ間の論理展開の追跡、そして本文の記述を精密に言い換えた選択肢の識別が要求される。知識の単なる暗記ではなく、文脈の中で知識を機能させる総合的な英語運用能力を測定する試験として設計されている。
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
| 試験時間 | 60分 |
| 配点 | 100点(学部により換算される場合がある) |
| 大問構成 | 大問4題 |
| 解答形式 | 全問マークシート方式(選択式) |
| 本年度の実施上の特記事項 | 大問〔Ⅰ〕問9において問題文の訂正が事前周知された |
設問数は大問〔Ⅰ〕が22問、大問〔Ⅱ〕が3問、大問〔Ⅲ〕が11問、大問〔Ⅳ〕が8問の計44問である。大問ごとの配点は公表されていないが、設問数と長文の分量から判断して、大問〔Ⅰ〕および〔Ⅱ〕に全体の約40〜45%、大問〔Ⅲ〕および〔Ⅳ〕に約55〜60%の比重が置かれていると推定される。
本年度の出題内容の分析
第1問:文法・語法・語彙の短文空所補充(問1〜22)
出題形式:短文中の空所に4つの選択肢から最も適切な1語または1句を補充する形式であり、全22問からなる。
出題内容:熟語・句動詞(run out of, have no choice but to do, be worth doing等)、動詞の語法(ask you something, meet the deadline, care for等)、前置詞の用法(familiar with, is on me等)、文法構造(未来完了形、仮定法過去、使役動詞の受動態、no sooner … than … 等)、語彙の文脈的選択(challenge, falls, rarely等)など、英語の基幹的知識が多角的に問われた。
小問構成:文法・語法・イディオム・語彙が特定の順序に偏ることなく配列されており、設問ごとに要求される知識領域を素早く切り替える柔軟性が求められる。
難度:私立標準レベルが中心であるが、be of help のような機能的前置詞の把握、The dinner is on me のような口語的慣用表現、care for の否定文における意味など、教科書的な文法規則の丸暗記では判断に迷う設問が含まれており、確固たる語法理解が差を生む。
特筆すべき点:問9において「by Friday」が「by this coming Friday」へと事前訂正された。この訂正により、未来の特定の完了期日を示す副詞句としての性格がより明確化され、未来完了形を選択する論理的必然性が高められた。
第2問:日常会話文の文脈空所補充(問23〜25)
出題形式:大学生同士の日常的な対話文を素材とし、文脈中の空所3箇所に適切な発話または語句を補充する形式である。
出題内容:エレベーターのドアに挟まれたという友人の災難に対するリアクション(問23:Again?)、自身が自動ドアに挟まれやすい体質であるという主張の帰結(問24:be caught between them)、相手の不運に巻き込まれたくないという冗談交じりの拒絶(問25:want to experience what you keep going through)が問われた。
小問構成:空所23は一言の応答表現、空所24は文中の動詞句補充、空所25は文末の節の完成であり、空所の構造的役割が段階的に変化している。
難度:使われている語彙は平易であるが、単なる会話定型表現の暗記ではなく、対話全体のユーモラスな文脈と登場人物の意図を正確に読み取らなければ正解を確定できない。
特筆すべき点:対話の論理的整合性が極めて厳密に設計されており、前後の発話から必然的に導かれる論理的帰結を選択させる構成となっている。
第3問:長文読解(海洋生態系・サンゴ礁の音響再生)(問26〜36)
出題形式:約700語の自然科学系論説文を素材とし、内容説明4問、文脈完成2問、下線部語彙の類義語選択5問の計11問で構成される。
出題内容:地球温暖化と海水温上昇によって白化・破壊が進むオーストラリアのグレートバリアリーフにおいて、健康なサンゴ礁の環境音(エビや魚の発する音)をスピーカーで水中に再生することで、生態系回復に不可欠な若い魚を呼び戻す「音響強化(acoustic enrichment)」の実験とその成果を報告した記事(The Washington Post 掲載記事)が素材である。
小問構成:(1) 質問応答型内容把握4問(問26〜29)、(2) 文脈完成型内容把握2問(問30〜31)、(3) 語彙類義語選択5問(問32〜36)。
難度:自然科学系の語彙が含まれるものの、文末に専門用語の注釈が付されており、論旨自体は極めて明確である。ただし、問27のような推論設問や、問29・問32〜36のような文脈依存的な語彙言い換え設問では、文脈に即した正確な語義判断が求められる。
特筆すべき点:下線部語彙問題の比重が高く、degraded, juvenile, expelled, fixed, dummy といった語の、当該文脈における正確な意味の把握が直接的に得点に反映される。
第4問:長文読解(社会心理学・都市政策と笑顔の波及)(問37〜44)
出題形式:約650語の社会科学・心理学系論説文を素材とし、質問応答型内容把握4問、文脈完成型内容把握4問の計8問で構成される。
出題内容:オーストラリアのメルボルン近郊ポートフィリップ市において実施された「10 Smiles Per Hour Zone」の標識設置やストリートパーティーの開催といった、住民同士の交流と笑顔を促進する公共政策を紹介し、心理学者アイゼンとレヴィンによる公衆電話ボックスでの実験(10セント硬貨を見つけた人が困っている人を助ける確率が劇的に上昇する現象、いわゆる「善意の輝き glow of goodwill」)を援用しながら、小さな好意や友好的な環境づくりが市民の幸福度や治安の向上に寄与することを論じた文章(ピーター・シンガーの論説)が素材である。
小問構成:(1) 質問応答型内容把握4問(問37〜40)、(2) 文脈完成型内容把握4問(問41〜44)。語彙単独設問はなく、すべて文章の読解と論理的帰結の把握に特化している。
難度:抽象的な社会哲学・心理学的考察を含むが、具体例と実験結果の記述が豊富であり、議論の骨格は明瞭である。問39のように市の意図を論理的に推論する設問や、問42のように常識的法規範と文脈を照合する設問において、文章全体の意図を正しく掴んでいるかが問われる。
特筆すべき点:設問文および選択肢の英文が正確な論理関係で構築されており、本文の語句をそのまま使った浅薄な選択肢を誤答として排除し、意味的な同値性を正しく表現した選択肢を選び取る能力が試される。
本年度で問われた判断原理
本年度の試験全体を貫く中核的な判断原理は、第一に「構文的・語法的制約に基づく即時的確定原理」、第二に「談話の流れと発話意図の整合性判定原理」、第三に「文脈依存的意味の同定原理」、そして第四に「選択肢の論理的検証と誤答排除原理」の4点に集約される。
第一の「構文的・語法的制約に基づく即時的確定原理」は、大問〔Ⅰ〕の短文空所補充において全面的に要求される。英文中の特定の動詞、形容詞、名詞が要求する前置詞や補文の構造(例:run out of, familiar with, be of help, meet the deadline, care for)を、文構造の解析を通じて即座に同定する処理である。文全体の意味を曖昧に訳出するのではなく、統語的なスロットに要求される語形や前置詞の結合価を文法規則に基づいて一意に確定することが求められた。
第二の「談話の流れと発話意図の整合性判定原理」は、大問〔Ⅱ〕の対話文完成において中核をなす。会話は孤立した文の羅列ではなく、前後の発話が互いに前提や理由、反応として機能する連鎖関係にある。相手の直前の発話に含まれる情報(エレベーターのドアに挟まれた事実)と、過去の出来事への言及(オリエンテーションの日にも同じことが起きたこと)を統合し、自然な談話の展開として成立する発話を導出する判断である。
第三の「文脈依存的意味の同定原理」は、大問〔Ⅲ〕の語彙設問および両長文の読解において作用する。英語の多義語や派生語は、辞書的な第1義を機械的に適用するだけでは文脈に合致しない場合が多い。たとえば大問〔Ⅲ〕の fixed や dummy、degraded といった語は、それぞれ「修理された」ではなく「取り付けられた」、「馬鹿な」ではなく「偽の・音の出ない」、「堕落した」ではなく「破壊された・劣化した」という文脈上の意味を持つ。前後の主語・目的語や修飾関係から、当該文脈において語が担っている具体的機能を同定する能力が試された。
第四の「選択肢の論理的検証と誤答排除原理」は、大問〔Ⅲ〕および〔Ⅳ〕の内容把握設問を正解に至らしめる決定的な判断である。正解となる選択肢は、本文の表現を抽象化または同義語置換によって言い換えたものである一方、誤答選択肢は「本文に書かれていない情報の付加」「本文の因果関係の逆転」「極端な限定詞(only, completely等)の挿入」「本文の事実関係の部分的な不整合」によって精巧に作られている。選択肢の字面が本文と似ているか否かではなく、命題としての真偽を本文の記述に照らして厳密に検証する論理的姿勢が不可欠であった。
本年度の誤答パターンと時間配分の実態
本年度の試験において受験生が陥りやすい典型的な誤答パターンは、以下の三点に類型化される。
第一に、大問〔Ⅰ〕における「日本語の直訳意識による誤選択」である。たとえば問2において「あなたの靴について尋ねてもいいですか」という日本語の語順に引きずられ、ask の語法(ask you something about…)を無視して question whether や request a question といった破綻した構文を選んでしまう誤答や、問13の「おごりだ」という表現に対して on 以外の前置詞(for や at)を推測で選んでしまう誤答である。英語の語法体系に基づかず、日本語の訳語を英語の単語に一対一で対応させようとする姿勢が誤答を誘発している。
第二に、長文読解における「字面の一致に惑わされる浅薄な選択」である。大問〔Ⅲ〕の問27において、本文に「33 experimental reef patches」とあるのを見て選択肢C(33 researchers)を選んでしまったり、大問〔Ⅳ〕の問44において「glow of goodwill」という魅力的なフレーズに飛びついて選択肢Aを選んでしまったりするパターンである。選択肢作成者は、本文中の印象的な名詞や表現をあえて誤答選択肢に散りばめて罠を構築している。語句の一致ではなく、主語と述語がなす命題内容の整合性を確認しない読み方が失点に直結している。
第三に、時間配分の崩壊に伴う「後半長文の精読機会の喪失」である。60分という試験時間の中で、大問〔Ⅰ〕の22問に20分以上を費やしてしまうと、大問〔Ⅱ〕に5分、大問〔Ⅲ〕と〔Ⅳ〕にそれぞれ17〜18分しか残されない。大問〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕は合わせて1,300語以上の英文量を誇り、設問文および選択肢の吟味を含めると、各大問に最低でも20〜22分を確保しなければ安定した得点は望めない。大問〔Ⅰ〕で立ち止まり、不確かな知識に対して長考を重ねた結果、後半の長文を本文と照合することなく勘でマークせざるを得なくなる時間配分の失敗が、合格ラインを割り込む最大の実態的要因となっている。
対応するカリキュラムの構成
本年度の試験で問われた各設問形式および判断課題は、明治大学全学部統一英語特化モジュール群(M01〜M11)と以下のように直接対応している。
第1問(短文空所補充):
問1、問5、問12、問13、問20などの前置詞・イディオムおよび動詞の結合価の判定は、[個別 M04]「前置詞・イディオムの空所判定」において確立する判断手順に直結する。また、問7、問8、問14などの名詞・動詞の選択は、[個別 M01]「基本語彙の文脈依存的意味判定」の運用であり、問9、問10、問17、問18、問21などの文法構文の識別は、基礎体系 [基礎 M01]「文型の判定と述語構造の確定」および [基礎 M06]「時制とアスペクトの選択原理」、[基礎 M10]「仮定法と反事実表現」で確立された統語的判断原理の高速適用である。
第2問(日常会話文完成):
問23から問25までの対話文空所補充は、[個別 M06]「文間論理配列の判断」における談話構造の追跡手法、および [個別 M07]「指示語・言い換えの照応特定」における文脈的情報の同定手順に対応する。日常的な対話の中で生じる論理的帰結と感情的反応を前後の文脈から演繹する判断を体系的に養成する。
第3問(自然科学系長文読解):
問26から問31までの内容把握設問は、[個別 M08]「内容一致判定の情報照合」が扱う中核的課題である。本文の該当箇所を素早く特定し、情報の過不足や因果の反転を検証する手順がそのまま機能する。問32から問36までの下線部語彙問題は、[個別 M01]「基本語彙の文脈依存的意味判定」および [個別 M02]「熟語・比喩表現の文脈判定」の直接的な適用場面であり、未知語や多義語を前後の修飾・被修飾関係から確定する技法を用いる。
第4問(社会科学系長文読解):
問37から問44までの論説文読解は、[個別 M08]「内容一致判定の情報照合」に加えて、設問文の要求する論理構造を正確に捉える [個別 M09]「英問英答の要旨把握」の手法が中核となる。さらに、本文全体の議論展開を統合して選択肢を精査するプロセスにおいては、横断技能モジュールである [個別 M11]「選択肢言い換え判定と誤答排除の判断体系」で確立する消去法と積極的同定の論理が決定的な役割を果たす。
【前提知識】
前置詞の機能的用法と結合価
名詞や動詞が特定の前置詞と結びついて意味を形成するコロケーション、および「of + 抽象名詞 = 形容詞句」(例:of help = helpful)のように、前置詞句が文中で補語や修飾語として機能する統語的性質を理解しておく必要がある。文構造の中で動詞が要求する文型と、名詞が要求する前置詞のパターンを瞬時に識別できる基礎力が前提となる。
参照: [基礎 M04]
時制・モダリティと反事実的条件法
過去完了形を用いた完了表現、助動詞と完了形を組み合わせた過去推量、そして「If + 主語 + 過去形 …, 主語 + would / could + 原形 …」に代表される仮定法過去の形式と意味の対応関係を正確に把握していることが不可欠である。特に、現在の事実と異なる仮定を表す際に助動詞の過去形が果たす論理的機能を理解していなければならない。
参照: [基礎 M06]
論理的結束性と談話標識
文章や対話において文と文を結ぶ論理的関係(順接、逆接、譲歩、例示、因果等)を示す接続副詞や接続詞の体系を把握しておく必要がある。また、代名詞や指示詞が指し示す内容を前後の文脈から正確に復元する照応関係の特定手順が、長文読解および対話文読解の共通の前提能力となる。
参照: [基礎 M15]
大問別解説
第1問 解説
【戦略的情報】
出題意図:英文法、語法、イディオム、語彙の網羅的習得度と、それらを短文の文脈において迅速かつ正確に適用できるかを測定する。
難易度:標準
目標解答時間:11分(22問、1問あたり約30秒)
【思考プロセス】
状況設定
試験開始直後の大問であり、ここでリズムを掴み、時間を節約することが後半の長文読解の成否を分ける。22問の設問に対し、1問あたり30秒以内で即座に解答を確定していく処理速度が求められる。
レベル1:初動判断
空所の前後の語句と文構造を走査し、当該設問が「文法構文」「動詞・名詞の語法」「前置詞・イディオム」「語彙の意味選択」のいずれを主たる検証対象としているかを瞬時に分類する。
即座に確認すべき箇所(優先順位順):
- 空所前後の品詞と文型(動詞の型、受動態の有無、前置詞の要否)
- 時制・条件を示すマーカー(by this coming Friday, If I were you, than 等)
- 特定の構文を決定づける呼応関係(No sooner … than, have no choice but to 等)スキップしてよい箇所:文法・語法的に一意に定まる設問における、文末の修飾節や文脈全体の過度な日本語訳出。
レベル2:情報の取捨選択
判断フロー(所要時間:各問10〜15秒)
検証軸:空所に要求される統語的役割の特定 → 選択肢の文法的不適格の排除 → 残った選択肢の語法・意味的適合性の確認。
判断手順ログ
問1:run と of に挟まれた空所。熟語 run out of(〜を使い果たす)の成句判断。
問2:may I の後続。文末 where you bought them を受ける動詞句。ask + 人 + 物 の二重目的語構文の適格性を判定。
問3:文頭から than に至る構造。Rather than doing(〜するよりはむしろ)の定型判断。
問4:In fact に続く副詞の選択。前文「秘書は本日不在」と meetings に出席する頻度の論理的整合性(滅多に出席しない)から rarely を選定。
問5:familiar の後続前置詞。人が主語で物事について「精通している」を表す be familiar with の語法。
問6:two smartphones を受け、both work well と肯定される文脈。2つのうち「どちらでも」を表す either の選定。
問7:It is quite a ( ) to raise a family… の名詞選択。「子育てと仕事の両立」という困難な課題を表す challenge の選定。
問8:The temperature を主語とする述語動詞。「氷点下に下がる」を表す自動詞 fall の選定。
問9:by this coming Friday という未来の完了期日を示す副詞句に着目。未来の完了を表す will have finished の選定。
問10:If I were you という仮定法過去の条件節に着目。帰結節に要求される would not go の選定。
問11:Amy を主語とし a lot of good を目的語とする動詞。熟語 do good(善行を行う、ためになる)の三人称単数現在形 does の選定。
問12:be ( ) help の成句構文。「of + 抽象名詞 = 形容詞」の原理により、helpful と同義となる of help の選定。
問13:The dinner is ( ) me. の前置詞選択。「〜のおごりで」を表す慣用表現 on me の選定。
問14:the deadline(締め切り)を目的語にとる動詞のコロケーション。meet the deadline(締め切りに間に合う)の選定。
問15:Dan had to wait と the doctor was ready… を結ぶ接続詞。「〜するまで待つ」の継続の終点を表す until の選定。
問16:A ( ) many people の定型表現。可算名詞の複数形を修飾して「非常に多くの」を表す a great many の選定。
問17:The passengers were ( ) stay… の受動態構文。原形不定詞 stay を従える使役動詞 make の受動態(be made to do)の選定。
問18:have no choice ( ) の定型構文。「〜するよりほかに選択肢がない」を表す but to agree の選定。
問19:be worth の後続形式。動名詞を目的語にとる be worth doing(〜する価値がある)の選定。
問20:She doesn’t care ( ) coffee without milk. の前置詞。否定文で「〜を好む」を表す care for の選定。
問21:( ) had they returned home than… の倒置構文。than と呼応して「〜するやいなや」を表す No sooner の選定。
問22:if you ( ) need help の副詞選択。条件節内で「万一にも、これまでに」の意味を強める ever の選定。
レベル3:解答構築
各問において確定した記号を即座にマークし、次の設問へと移る。
【解答例】
問1:B(out)
問2:C(ask you something)
問3:D(Rather)
問4:D(rarely)
問5:D(with)
問6:C(either)
問7:A(challenge)
問8:A(falls)
問9:D(will have finished)
問10:D(would not go)
問11:B(does)
問12:D(of)
問13:A(on)
問14:B(meet)
問15:D(until)
問16:A(great)
問17:C(made to)
問18:B(but to agree)
問19:B(reading)
問20:A(for)
問21:B(No sooner)
問22:B(ever)
【解答のポイント】
問1:run out of 〜 は「〜を使い果たす、切らす」という意味の重要成句である。空所には out が入る。A の run down は「停止する、批判する」、C の run through は「目を通す、使い果たす(目的語を直後にとる)」、D の run up は「駆け上がる、借金を重ねる」であり文脈に合致しない。
問2:空所の後には about your shoes という前置詞句が続き、さらに直後に where you bought them を知りたいという文が続く。動詞 ask は「ask + 人 + 物」の第4文型を取り得るため、ask you something about your shoes(あなたの靴について何か尋ねる)が完全に成立する。A は question whether の後に名詞句が直接続かず、B の request a question は語法として不自然、D は get to know anything about… だと「何か知るようになる」となって依頼の文脈に合わない。
問3:文頭で ( ) than upset her mother とあり、主節で「少女は帰宅後すぐに宿題をした」とある。母親を怒らせることを避けて宿題をしたという文脈である。Rather than A(Aするよりはむしろ)の構文を作る Rather が適切である。A の Better than だと原形不定詞 upset との比較構文として成立せず、C の Other than は通常「〜を除いて」の意味で前置詞的に名詞や動名詞を従える。
問4:前文で「大統領(または社長)の秘書は本日ここに来ない」と述べられ、In fact(実際)でその理由や背景を補足している。文脈上、この種の会議には普段から出席しないという頻度を表す必要がある。rarely は「滅多に〜ない」という準否定の頻度副詞であり文脈に合致する。A の frequently(頻繁に)や B の often(しばしば)では前文と論理が逆転し、C の once(かつて)では現在の習慣的動作を表せない。
問5:be familiar with 〜 は「(人が)〜をよく知っている、〜に精通している」を表す基本語法である。主語が人(I)であり、対象がことわざ(that proverb)であるため with が正解となる。be familiar to 〜 だと「(物事が)〜に知られている」となり主語に物事を取る。
問6:空所の直後に of these two smartphones とあり、直後に because both work well(両方とも性能が良いので)と肯定的な理由が述べられている。2つの選択肢のうち「どちらを使っても」という意味になるため、either が適切である。neither は全否定、couple や double は of を伴って単独で代名詞的に用いる文脈として不適格である。
問7:家庭を築くこととキャリアで成功することを同時に達成することは「並大抵ではない試練・やりがいのある課題」であるという文脈である。challenge は「困難だがやりがいのあること、難題」を意味し、quite a challenge で「なかなかの難事」を表す。B の disagreement(不一致)、C の trouble(不可算名詞として扱われることが多く a trouble とはしにくい)、D の work(可算名詞として「仕事」の意味では使えない)は不適格である。
問8:主語は The temperature(気温)である。気温が「氷点下に下がる」を表す動詞は fall または drop である。A の falls が正解。B の levels は水平を保つ、C の loses は失う、D の reduces は他動詞「〜を減らす」であり目的語が必要となるため不可。
問9:事前訂正により「by this coming Friday(今度の金曜日までに)」と期日が明示された。未来の完了期限を表す副詞句があるため、時制は未来完了形(will have finished)が必然的に選ばれる。A は現在完了、B は受動態、C は未来進行受動態となり意味が成立しない。
問10:If I were you という仮定法過去の条件節(現在の事実に反する仮定)に対応する帰結節である。「もし私があなたなら、彼に助けを求めに行かないだろう」という現在の推量・意志を表すため、「助動詞の過去形 + 動詞の原形」である would not go が正解となる。A は過去の事実に反する仮定の帰結(could not have gone)、B は直接法現在、C は未来完了の形であり不適格。
問11:a lot of good を目的語にとり、「善行を行う、大いに役立つ」を表す表現は do good である。主語が Amy(三人称単数)であるため、現在形の does が正解。make good は「成功する、補償する」などの意味になり a lot of good と結びつかない。
問12:be of help は「of + 抽象名詞 = 形容詞」の用法で、helpful(役に立つ)と同義である。I am simply glad that I could be of help で「お役に立ててただ嬉しい」となる。for, in, but ではこの構造と意味を形成できない。
問13:The dinner is on me. は日常会話における極めて頻出の成句で、「夕食代は私のおごりだ(私が支払う)」を意味する。費用や支払いの責任が誰にあるかを示す前置詞 on の用法である。
問14:the deadline(締め切り)と結びついて「締め切りに間に合う」を表す動詞は meet である。meet the deadline は重要コロケーションである。end, put, take は締め切りに間に合うという意味を形成しない。
問15:ダンは医師が診察の準備ができる「まで待たなければならなかった」という時間の継続の終点を示す接続詞が求められている。until(〜までずっと)が正解。lest は「〜しないように」、unless は「〜でない限り」、how は様態を表し不適格。
問16:a great many + 複数名詞 で「非常に多くの〜」を表す慣用表現である。選択肢の中でこの位置に入って many を修飾できるのは great のみである(a good many も同様の表現)。large や big, huge は通常 many を直接修飾して a large many のような形をとることはできない。
問17:文脈は「乗客たちは悪天候のため何時間も空港に滞在させられた」という受動態である。使役動詞 make は受動態にすると to不定詞を伴い「be made to do(〜させられる)」となるため、made to が正解。let は受動態にすることができず、通常 be allowed to do で代用される。
問18:have no choice but to do は「〜するよりほかに選択肢がない、〜せざるを得ない」を表す重要構文である。ここでの but は前置詞「〜を除いて」として機能し、直後に to不定詞をとる。したがって but to agree が正解。
問19:be worth doing で「〜する価値がある」を表す構文である。worth は前置詞的形容詞として直後に動名詞をとる。受動の意味であっても能動の動名詞 reading を用いる点が文法的な重要ポイントである。
問20:care for 〜 は否定文や疑問文で「〜を好む(like)」の意味を表す。直後に「彼女はコーヒーを決してブラックで飲まない」とあるため、ミルクなしのコーヒーを「好まない」という文脈に合致する。
問21:空所の直後に had they returned home と倒置が起こっており、文中に than the police called がある。No sooner had + 主語 + 過去分詞 … than + 主語 + 過去形 で「〜するやいなや…」を表す構文である。したがって No sooner が正解。Not until や Not only は than と呼応しない。
問22:if you ever need help で「もし万一助けが必要になったら」の意味を表す。条件節における ever は「いつか、万一にも」と条件を強調する用法を持つ。any は副詞としてこの位置に入らず、many times や whenever は接続詞 if の直後の副詞として不適切である。
【着眼点と解法の方針】
本大問を短時間で正確に解き進めるための着眼点は、設問の「構文的トリガー」を瞬時に見極めることにある。短文空所補充は、文全体を漫然と和訳するのではなく、空所を含む統語的単位に存在する決定的な手がかりに視線を走らせる必要がある。
具体的には、以下の3つの着眼点に基づいて解法の方針を起動する。
第一に、「構文的呼応の発見」である。問3の than、問18の have no choice、問21の had they … than などは、文全体を見渡せば一瞬で呼応関係が特定できる設問である。問21では文頭に空所があり、直後に had they returned という疑問文の語順(倒置)が存在し、さらに後半に than が現れている。この三要素が揃った時点で、検討すべき選択肢は No sooner 以外に存在しない。
第二に、「品詞・前置詞の結合価の同定」である。問1の run ( ) of、問5の familiar ( )、問11の ( ) a lot of good、問12の be ( ) help、問14の ( ) the deadline、問20の care ( ) などは、動詞・形容詞と前置詞・名詞との特定の結びつき(コロケーション)である。たとえば問14では、目的語が the deadline であることを見た瞬間に、動詞の選択肢の中から deadline と共起可能な語として meet を引き出せなければならない。
第三に、「時制・条件の文法マーカーの特定」である。問9では by this coming Friday という未来の完了期日、問10では If I were you という仮定法過去の条件節が明示されている。これらのマーカーを確認した瞬間に、文法規則に基づいて選択肢の時制・法を絞り込む。
【初見・類題への対応】
初見の表現や記憶が曖昧なイディオムに遭遇した場合、以下の思考手順で正解を絞り込む。
手順1:文型と品詞の厳密な確認
空所に入るべき語の品詞(名詞、動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞)を文構造から特定する。たとえば問12において、could be の後に名詞 help があり、文末に位置している。be動詞の直後に裸の不可算名詞が置かれることは意味的に「主語 = 助け」とならない限り不自然である。ここから「前置詞 + 名詞」によって全体として形容詞句を形成している構造を見抜き、of + 抽象名詞 のパターンへと帰着させる。
手順2:前置詞の空間的・中核的イメージからの推論
問13の The dinner is on me. のように、慣用表現としての記憶が不確かな場合、前置詞 on のもつ「接触・負荷・帰属」の中核的イメージを想起する。支払いの負担が「私の上に乗っている」というイメージから、on me を導き出す。
手順3:選択肢の統語的不適格性の排除
問2において、動詞 ask, question, request の語法の差異が問われている。question は他動詞として直接目的語をとるか whether節をとるが、question whether you about… とはならない。request は「request that節」または「request A of B」の形をとり、request a question about… とは言わない。消去法によって第4文型(人 + 物)を素直に構成できる ask you something を選定する。
類似問題への適用例:
類題1:The concert was put ( ) due to the heavy rain.
着眼点:put off(延期する)と put out(消火する)の識別。文脈「大雨のため」から「延期された」と判断し off を選択する。
類題2:Hardly ( ) the station when the train left.
着眼点:Hardly had + 主語 + 過去分詞 … when / before … の倒置構文。No sooner … than … と完全に同型の判断原理で処理できる。
【誤答回避と精度向上】
大問〔Ⅰ〕における失点を防ぎ、解答精度を向上させるためのチェックポイントは以下の通りである。
- 日本語の直訳による干渉の排除「〜の価値がある」を英語にする際、日本語の「読む価値がある」という受動的ニュアンスに引きずられて be worth being read や be worth to read を選んではならない(問19)。be worth の後には能動態の動名詞が来るという文法規則を、直訳の感覚よりも優先させる。
- 能動態と受動態の構文変化の確認使役動詞 make は能動態では原形不定詞をとるが(make him stay)、受動態では to不定詞が復活する(he was made to stay)(問17)。能動態の知識だけで「make の後ろは原形」と短絡的に記憶していると、受動態の設問で誤答を選ぶことになる。主語と動詞の態の関係を必ず検証する。
- 準否定語の確実な意味把握rarely や seldom は否定語(not)を含まないが、意味的には「滅多に〜ない」という否定を表す(問4)。文脈の肯定的・否定的論理の方向性を正確に読み取り、選択肢のプラス・マイナスの符号を見誤らないようにする。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件:
空所を含む文が単文または重文・複文であり、文脈の広範な解釈よりも文構造の解析および語法・成句の知識が直接の判断根拠となる短文空所補充問題全般。
自己検証ポイント:
- 空所を含む文の主語、述語動詞、修飾語の構造が完全に説明できるか。
- 選んだ選択肢が、直前直後の前置詞や接続詞と文法的に矛盾なく結合しているか。
- 仮定法や完了形の場合、それを決定づける時制マーカーを文中に明確に指摘できるか。
【参照】
[個別 M04]
└ 前置詞・成句の空所補充において文脈と結合価から即座に語を確定する手順
[基礎 M04]
└ 前置詞の意味体系と動詞・形容詞との結合原理
【該当学習項目】
[個別 M04]
└ レベル1の統語的トリガー特定および前置詞結合価の同定で使用
【関連学習項目】
[基礎 M01]
└ 5文型の確定と動詞の語法・結合価の判定原理
[基礎 M06]
└ 時制・アスペクトの選択原理および未来完了形の適用
[基礎 M10]
└ 仮定法と反事実表現における条件節・帰結節の呼応関係
第2問 解説
【戦略的情報】
出題意図:日常会話における発話連鎖を把握し、文脈全体のトーン、前提知識、および発話者の意図に合致する適切な発話や節を推論・補完できるかを測定する。
難易度:標準
目標解答時間:4分(3問、1問あたり約1分20秒)
【思考プロセス】
状況設定
大学のキャンパス等での二人の学生(リサとレイシー)による親しい間柄の対話。レイシーがエレベーターのドアに挟まれて怪我をした様子であるのに対し、リサが驚き、過去の同様の出来事に言及しつつ、自動ドアに対するレイシーの奇妙な体質について軽口を交えて会話が展開する。
レベル1:初動判断
各空所の直前および直後の発話内容を精査し、どのような情報的・感情的ギャップが存在するかを特定する。
即座に確認すべき箇所:
- 空所23:直後の「新入生オリエンテーションの日にも同じことが起きなかったっけ?」というリサの質問との整合性。
- 空所24:直前の「自動開閉するドアが2つあったら、私はほぼ確実に( )」という条件節の帰結。
- 空所25:直前の「あなたが自動ドアを通るときは絶対に隣を歩かないように注意してね」というリサの発話の理由。
レベル2:情報の取捨選択
判断フロー(所要時間:各問30〜40秒)
検証軸:直前の発話に対する応答としての自然さ → 会話全体のトーン(災難に対する同情とユーモアの交錯)との合致 → 選択肢の構文的整合性。
判断手順ログ
問23:
直前のレイシーの発話「エレベーターから降りようとしたまさにその瞬間にドアが閉まって、数秒間挟まれた」に対し、リサは「新入生オリエンテーションの日にも同じことが起きた」と過去の同一の災難を想起している。したがって、今回が初めてではなく「またなの?」というニュアンスの発話が不可欠である。選択肢Aの「Again?(またなの?)」が直後の疑問文と完璧に連結する。Bの「Is it?」は相手の叙述に対する事実確認で不自然、Cの「My fault!」はリサに過失がないため不合理、Dの「It’s none of your business!」は「余計なお世話だ」という攻撃的な拒絶表現であり文脈を破壊する。
問24:
レイシーは「エレベーターやスーパーの自動ドアは私を嫌っている」と述べ、「自動で開閉するドアが2つあれば、私はほぼ確実に( )」と続けている。直前でエレベーターのドアに挟まれた体験(I was trapped between them)を述べており、さらに「私の人生はずっとそうだった」と述べていることから、ドアに挟まれる被害に遭うという内容が入る必然性がある。受動態の成句表現 be caught between them(ドアの間に挟まれる)を含むCが正解となる。Aの「修理してほしいと思う」やDの「閉じこもる」は文脈から外れ、Bの「close in on them」はドアに向かって包囲・接近することになり主客が転倒している。
問25:
リサはレイシーの体質を聞いて、「そういうことなら、あなたが自動ドアを通るときは絶対に隣を歩かないように言ってね」と冗談交じりに提案している。その理由として「私は( )したくないから」と述べている。隣を歩いていれば、レイシーがドアに挟まれる巻き添えを食らう可能性があるため、「あなたが経験し続けているような災難を自分も経験したくはない」という内容が論理的に導かれる。Cの「want to experience what you keep going through(あなたが経験し続けていることを自分も経験したいとは思わない)」が完璧に合致する。Aの「エレベーターを意地でも避けるように私を騙そうとしていると思う」やBの「同じ罠に騙されて引っかかる」、Dの「階段のほうが危険が少ないとあなたが言うのを信じる」は、対話で言及されていない突飛な要素(騙す、階段等)を含んでおり排除される。
レベル3:解答構築
対話全体の論理的結束性を確認し、マーク欄23〜25に解答を記入する。
【解答例】
問23:A(Again?)
問24:C(be caught between them)
問25:C(want to experience what you keep going through)
【解答のポイント】
問23:正解は A。直後の Didn’t that happen to you on the day of freshman orientation?(新入生オリエンテーションの日にもあなたにそれ起きなかった?)という発話から、今回が初めての事故ではなく、以前にも同様の事態があったことをリサが想起していることが分かる。したがって「Again?(またなの?/前にもあったよね?)」と驚きを込めて聞き返すのが唯一論理的に整合する。B(Is it?)は相手の発話に対する付加疑問的な反応として意味をなさない。C(My fault!)は自分の非を認める発話だが、エレベーターのドアが閉まったことにリサは何の責任もないため文脈上完全に不適格である。D(It’s none of your business!)は親しい友人同士の会話において「あなたには関係ないでしょ!」と突き放す表現であり、親身に心配している会話の流れに反する。
問24:正解は C。レイシーは自虐的に「自動ドアが私を嫌っている」と語り、二枚の自動ドアがあれば「ほぼ確実に挟まれる」と述べている。直前の I was trapped between them(ドアの間に挟まれた)の言い換えとして、be caught between them(それらの間に挟まれる)が正確に対応する。A の want them repaired は「ドアを修理してもらいたい」となり、ドアに嫌われているという自虐的ユーモアの文脈と合致しない。B の close in on them は「ドアに包囲して迫る」という意味になり、ドアが迫ってくるのではなく自分がドアに迫ることになってしまうため主客が転倒する。D の shut myself up は「閉じこもる」という意味であり、物理的にドアに挟まれる状況を表現していない。
問25:正解は C。リサの「あなたが自動ドアを通るときは絶対に隣を歩かないように私に注意してね」という発話に続く文である。隣を歩いていると、レイシーが挟まれる際に自分まで巻き添えを食らう危険があるため、「あなたがいつも経験しているような目に自分は遭いたくない」という理由が続くのが最も自然である。I don’t の後に want to experience what you keep going through(あなたが経験し続けていることを経験したいとは思わない)を補うことで完璧な論理的整合性が成立する。A は「あなたが私を騙してどんな犠牲を払ってでもエレベーターを避けさせようとしている」という妄想的な内容であり文脈にない。B の have to be tricked into the same trap は「同じ罠に騙し込まれなければならない」となり不自然。D の believe you when you say that stairs are less dangerous は「階段のほうが危険が少ないとあなたが言うのを信じる」であるが、本文中に階段(stairs)に関する言及は一切存在しない。
【着眼点と解法の方針】
対話文完成問題における着眼点は、「発話の機能的連鎖」と「情報の照応関係」の把握にある。
第一に、「直後の発話による制約の特定」である。対話文における空所は、直前の発話に対する応答であると同時に、直後の発話に対する前提・導入としても機能している。問23では、空所の直後に置かれた「新入生オリエンテーションの日にも同じことが起きなかったっけ?」という疑問文が強力な制約として働く。この疑問文が成立するためには、空所において「過去の事象の反復」を認識する表現(Again?)が置かれなければならない。
第二に、「パラフレーズ(言い換え)の追跡」である。問24では、冒頭でレイシーが述べた I was trapped between them という客観的事実が、後半の I am almost sure to ( 24 ) において一般化・反復されている。trap(閉じ込める、挟む)と catch(挟む、捕らえる)の意味的同値性に着目することで、be caught between them という正解を迷いなく導くことができる。
第三に、「冗談・皮肉を含む語用論的意味の把握」である。問25において、リサは本気でレイシーを拒絶しているのではなく、彼女の奇妙な「不運体質」に巻き込まれたくないというユーモアとして「隣を歩かないように注意して」と述べている。この会話のトーンを理解していれば、突飛な陰謀論めいた選択肢(AやB)や、言及されていない名詞を含む選択肢(Dのstairs)を即座に排除し、文脈の要約として最も素直なCを選択できる。
【初見・類題への対応】
日常対話文で初見の口語表現や、一見すると複数の選択肢が成立しそうに見える設問に直面した場合の思考手順:
手順1:話者のスタンス(肯定・否定・同情・皮肉等)の極性を特定する
発話者が相手に対して共感しているのか、驚いているのか、あるいはからかっているのかという感情的・論理的極性をプラス/マイナスで判定する。問25では、リサのスタンスは「災難の巻き添え回避」という明確な動機に基づいている。
手順2:未言及の「新情報」を含む選択肢の消去
選択肢の中に、対話内で全く触れられていない名詞や概念が含まれている場合、それは典型的な誤答トラップである。問25の D(stairs:階段)や A(trick into avoiding elevators:エレベーターを避けさせる策略)などは、本文に根拠のない飛躍した新情報であるため、内容の妥当性を深く検討するまでもなく消去できる。
類似問題への適用例:
類題:
A: I lost my wallet for the third time this month.
B: ( ) You really need to be more careful.
選択肢:A. Not again! / B. Never mind. / C. Here you are. / D. My pleasure.
着眼点:「今月3回目」という情報の反復に着目。「またなの?/いい加減にして」という反復への呆れを表す Not again! を選択する。明治大学の問23と完全に同一の思考プロセスである。
【誤答回避と精度向上】
対話文における典型的な誤答を回避するための検証観点は以下の通りである。
- 定型表現の機械的当てはめの禁止「挨拶には挨拶」「謝罪には許し」といった表面的な定型パターンだけで選択肢を見ていると、文脈の細やかなニュアンスのズレを見落とす。問23において、相手が怪我をしたという発話に対して反射的に「My fault!(私のせいだ)」を選んでしまうような誤りを防ぐため、必ず登場人物間の因果関係を確認する。
- 選択肢末尾の代名詞の指示対象確認問24の選択肢 B(close in on them)と C(be caught between them)のように、同一の代名詞 them を含む選択肢が並んでいる場合、them が何を指しているのか(the elevator and supermarket doors)、そして動詞との関係において主語(I)が「能動」なのか「受動」なのかを構文的に厳密に検証する。自分がドアを挟むのではなく、自分がドアに挟まれるのであるから、受動態のCが必然となる。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件:
親しい間柄の日常対話文であり、登場人物の共通認識、過去の共有エピソード、および発話のユーモアや感情の推移が正解の根拠となる会話空所補充問題全般。
自己検証ポイント:
- 空所を埋めた状態で対話全体を通読したとき、感情の流れや論理の展開に不自然な断絶が生じていないか。
- 正解として選んだ選択肢の根拠となる記述(言い換え元や理由)を、直前または直後の発話から明確に指し示すことができるか。
【参照】
[個別 M06]
└ 文間論理配列の判断および談話の結束性に基づく空所補完手順
[基礎 M18]
└ 文間の結束性と指示語・照応表現の追跡原理
【該当学習項目】
[個別 M06]
└ レベル1の談話構造追跡および発話連鎖の整合性判定で使用
【関連学習項目】
[個別 M07]
└ 代名詞および言い換え表現の照応先同定手順
[基礎 M23]
└ 会話文における含意と前提の読み取り原理
第3問 解説
【戦略的情報】
難易度:標準
目標解答時間:18分
内訳:本文通読8分、設問解答10分(小問11問:設問(1)・(2)の各問に約1分、設問(3)の語彙5問に計2分30秒)
出題形式:自然科学系(海洋生物学・環境保全)の論説文読解。小問11問(問26〜36)。設問構成は(1)質問応答形式4問、(2)文完成形式2問、(3)下線部同義語判定5問。
出題意図:地球温暖化によるサンゴ礁の衰退に対する先進的な保全技術(音響強化技術)を扱った報道記事を題材とし、事実関係の正確な把握、文脈に基づく指示対象の追跡、語彙の文脈適合的意味の識別、および実験手法と結果の因果関係を論理的に読み解く能力を測定する。
【思考プロセス】
状況設定
試験時間60分の中で配点・分量ともに大きな比重を占める長文読解問題である。大問〔Ⅰ〕の短文空所補充(22問)と大問〔Ⅱ〕の会話文完成(3問)を合計20分から22分程度で通過した後に本問へ着手する設計が要求される。本問に配分できる時間は18分前後であり、語彙問題5問を文脈走査の中で迅速に処理しつつ、実験の「目的・手法・結果・意義・限界」という論理骨格に即して読解を進める必要がある。
レベル1:初動判断
大問全体の設問構成を確認する。設問(1)は本文の内容に関する4つの独立した問い(問26〜29)、設問(2)は文完成形式の内容一致設問(問30・31)、設問(3)は下線部語彙の文脈上の意味を問う5問(問32〜36)である。
即座に確認すべき箇所(優先順位順):
- 設問(3)の下線部語句(32: degraded, 33: Juvenile, 34: expelled, 35: fixed, 36: dummy)の本文中での出現段落と構文的役割を把握する。
- 設問(1)および(2)の設問文に含まれるキーワード(問26: researchers are using to bring back coral reefs, 問27: must one assume to be true, 問28: them in the third-to-last paragraph, 問29: robust, 問30: played healthy coral reef sounds, 問31: severe coral bleaching in 2016 and 2017)を特定する。
- 本文全体の構成を走査し、第1段落〜第3段落が研究の導入と新手法の提示、第4段落〜第7段落が実験結果とその意義、第8段落〜第11段落がサンゴ礁の白化現状と実験の詳細な設定、第12段落〜第14段落が実験結果の評価と保全上の位置づけ・限界であることを把握する。スキップしてよい箇所:魚の具体的な生態分類(scavengers, herbivoresなどの注記語句)の個別暗記や、研究者の所属大学名・共同研究者名などの詳細な書誌情報は、設問で直接問われない限り確認を省略し、論旨の骨格に注力する。
レベル2:情報の取捨選択
判断フロー(所要時間:読解と並行して各問30秒〜1分)
検証軸1(設問(3) 語彙問題の即時判定):
下線部前後の文構造とコロケーションから、文脈に最も合致する同義語を選択する。
検証軸2(事実関係の局所照合):
問26、問30、問31のように特定の段落に直接の根拠がある設問は、該当箇所を正確にスキャンして照合する。
検証軸3(代名詞と語彙の機能判定):
問28の指示対象判定、問29の類義語判定は、前後の文脈における意味的整合性と文法的一致を検証する。
検証軸4(推論・全体的仮定の検証):
問27の「真であると仮定されなければならないもの」は、本文に明示された実験手法の成立条件から論理的に必然となる事実を抽出する。
判断手順ログ
- 読解開始直後、第2段落で下線部32(degraded reefs)を捉える。第1段落のdevastation of climate change(気候変動による破壊)を受け、サンゴが「損なわれた、劣化した」状態を指すため、32はdamagedを候補とする。
- 問26の選択肢を検証する。第2段落冒頭にIn the Caribbean, researchers are cultivating coral “nurseries”… And in Hawaii, scientists are trying to specially breed corals to be more resilient against rising ocean temperatures.とある。選択肢AのBreeding coral that can live in warmer waterがこの記述と一致することを確認する。
- 第6段落末尾のImportantly, the fish that arrived at the patches tended to stay there.を捉え、これが問30の核心情報であることを記録する。到着した魚がその場所に留まる傾向があったという記述から、問30のC(many of the fish that arrived at those patches did not leave)を確定する。
- 第7段落で下線部33(Juvenile fish)を捉える。直後にwhen they’re looking for a place to settle(定住する場所を探しているとき)とあり、生活史の初期段階にある「幼魚」を意味することから、33はYoungを特定する。
- 第9段落で2016年と2017年の白化現象の記述と下線部34(expelled)を通過する。白化はextreme heat waves(極端な熱波)によって引き起こされたとあり、問31の根拠(extreme heat waves)を捕捉する。また、熱ストレスによって藻類が「外に追い出される」という機序から、34はdriven outを確定する。
- 第11段落で下線部35(fixed)および第12段落で下線部36(dummy)を捉える。スピーカーを「固定した」文脈から35はattached、音を出さない「偽の」スピーカーであることから36はfakeを選択する。
- 第13段落(下から3段落目)のThe acoustically enriched reefs attracted fish faster and maintained them longer than the reefs without a healthy soundtrackにおいて、themの指示対象を検証する。動詞attractedとmaintainedの目的語として並列されていることから、魚(fish)を指すことを確認し、問28のBを決定する。
- 第14段落(下から2段落目)でrobust populations of fishの記述を確認する。回復のためには魚の「頑健な、健全で強力な」個体群が必要である文脈から、問29はstrong and soundを選択する。
- 最後に問27を検討する。海中の死んだサンゴの区画にスピーカーを設置し、healthy reefsの録音音声を再生した実験設定から、「健康なサンゴ礁で再生された音源は、海中で録音されたものでなければならない」という論理的前提(D)を導出する。
レベル3:解答構築
各設問の選択肢を吟味し、誤答選択肢が含む「本文の記述との矛盾」「本文にない極端な情報の付加」を明確に排除してマークを完了する。
【解答例】
(1)
問26:A
問27:D
問28:B
問29:D
(2)
問30:C
問31:C
(3)
問32:A
問33:D
問34:B
問35:A
問36:C
【解答のポイント】
問26(正解:A)
- 正解の論拠:第2段落に、ハワイにおいて研究者たちが海水温上昇に対してより回復力のあるサンゴを特別に繁殖させようと試みている(scientists are trying to specially breed corals to be more resilient against rising ocean temperatures)と明記されている。選択肢AのBreeding coral that can live in warmer waterは、この記述を完全に言い換えたものである。
- 誤答の論拠:B(Growing new patches of dead or dying coral)は、死んだサンゴを育てるという矛盾した記述であり本文に反する。C(Increasing the loudness of coral reef fish sounds by 50 percent)は、第6段落の魚の種数が50パーセント増加した(the number of species… increased by 50 percent)という記述の数値を音量にすり替えた誤答である。D(Teaching adult fish… to sing)は、成魚に歌を教えるという本文に一切存在しない架空の内容である。
問27(正解:D)
- 正解の論拠:研究チームは海中にスピーカーを沈め、健康なサンゴ礁から録音した音声(audio recordings taken from healthy reefs / recordings from a healthy reef)を再生して幼魚を誘引した。魚が誘引される生物学的音響景観(エビの破裂音や魚の鳴き声)を死んだサンゴ礁で忠実に再現するためには、使用された音源自体が海中で録音されたものであることが論理的必然として前提とされる。
- 誤答の論拠:A(Fish and shrimp ghosts…)は、第15段落の比喩的表現ghostly quiet(幽霊のように静まり返った)からghost(幽霊)を文字通りに誤用した不適切な選択肢である。B(Only fish that like music…)は、音楽を好む魚のみが誘引されたとする極端な限定であり本文の趣旨(自然の生物音の模倣)に反する。C(The experimental reef patches were built by 33 researchers)は、第11段落の33 experimental reef patches(33箇所の実験用サンゴ区画)という数字を研究者の人数と混同させた数値すり替えの誤答である。
問28(正解:B)
- 正解の論拠:該当箇所の文構造は、The acoustically enriched reefs(主語S) attracted(動詞V1) fish(目的語O1) faster and maintained(動詞V2) them(目的語O2) longer… である。二つの他動詞attractedとmaintainedが等位接続詞andで結ばれており、スピーカーによって「魚を引き寄せ」、その引き寄せた「魚をより長く留まらせた」という文脈であるため、themは先行する複数名詞fish(単複同形)を指す。
- 誤答の論拠:A(study periods)は期間を維持したという意味になり不整合である。C(damaged corals)はサンゴを維持したのではなく、集まってきた魚を維持した文脈であるため不適切である。D(the acoustically enriched reefs)は主語自身であり、再帰代名詞themselvesが用いられていないことからも文法的に排除される。
問29(正解:D)
- 正解の論拠:第14段落において、Degraded reefs have a better shot at recovery if they have robust populations of fishと述べられている。劣化しかけたサンゴ礁が回復する見込みを高めるためには、魚の個体群が「豊富で、力強く健全である」必要がある。robustは「頑強な、強固な、健全な」を意味するため、strong and soundが最も適切な同義表現となる。
- 誤答の論拠:A(clean and innocent:清潔で無実な)は個体群の規模や強さに関係しない。B(flavorful and delicious:風味豊かで美味しい)は食用としての魚の性質であり生態学的文脈に反する。C(neat and tidy:きちんとした、整然とした)は魚の個体数や生命力の充節を示す語として不適切である。
問30(正解:C)
- 正解の論拠:第6段落末尾にImportantly, the fish that arrived at the patches tended to stay there(重要なことに、その区画に到着した魚はその場所に留まる傾向があった)と記述されている。選択肢Cのmany of the fish that arrived at those patches did not leave(到着した魚の多くは立ち去らなかった)は、tended to stay thereの忠実な言い換えである。
- 誤答の論拠:A(most fish did not stay…)およびD(more fish left those patches than arrived there)は、留まる傾向があったという本文の記述と正反対の内容を述べているため排除される。B(most fish arrived at those patches…)は、大半の魚が到着したかどうかという不特定の母集団全体への言及に変質しており、焦点を外している。
問31(正解:C)
- 正解の論拠:第9段落にSevere coral bleaching triggered by extreme heat waves killed off 50 percent of the Great Barrier Reef… in 2016 and 2017と明記されている。2016年と2017年の大規模な白化現象の直接の引き金(triggered)は極端な熱波(extreme heat waves)であったため、選択肢Cが完全に合致する。
- 誤答の論拠:A(it has happened four times previously since the 1980s)は、第9段落末尾のoccurring four times as frequently as they did in the 1980s(1980年代の4倍の頻度で発生している)という頻度の比較を、過去に4回発生したという回数の記述に誤認させたものである。B(the algae… could only be colored white)は、藻類が白化するのではなく、熱ストレスによって色と栄養を提供する藻類がサンゴから放出される(expelled)ことでサンゴが白くなるという本文の因果説明に反する。D(The Washington Post reported that it had happened)は、同紙が報道したことは事実の伝達手段にすぎず、白化現象自体の自然科学的な原因ではない。
問32(正解:A)
- 正解の論拠:第2段落のdegraded reefsにおいて、気候変動や環境悪化によって健全性を失った「劣化した、傷んだ」サンゴ礁を指している。degradeは「品質や状態を低下させる」という意味であり、damaged(損傷した)が最も近い。
- 誤答の論拠:B(defined:定義された)、C(delighted:大喜びした)、D(depressed:意気消沈した、鬱状態の)はいずれも文脈上の意味をなさない。
問33(正解:D)
- 正解の論拠:第7段落のJuvenile fish home in on these sounds when they’re looking for a place to settleにおいて、定住場所を探している段階の「幼魚、若い魚」を指す。juvenileは「青少年の、幼体の」という意味であり、Youngが合致する。
- 誤答の論拠:A(Aged:年老いた)は正反対である。B(Criminal:犯罪の)はjuvenile delinquency(非行)などの連想を誘う罠である。C(Rough:乱暴な、粗い)は不整合である。
問34(正解:B)
- 正解の論拠:第9段落の…algae that live in corals are expelled because of heat stressにおいて、サンゴの体内に共生している藻類が熱ストレスによって「体外へ排出される、追い出される」現象を指す。expelは「追い出す、排出する」を意味し、driven outが最も適切である。
- 誤答の論拠:A(attracted:引き付けられた)およびC(lured:誘い込まれた)は正反対の動作である。D(plucked out:引き抜かれた)は物理的に摘み取る動作を指し不自然である。
問35(正解:A)
- 正解の論拠:第11段落のThey then fixed underwater loudspeakers to the center of the patchesにおいて、研究者たちが実験区画の中央に水中スピーカーを「取り付けた、固定した」ことを指す。fixは「固定する、取り付ける」を意味し、attachedが合致する。
- 誤答の論拠:B(focused:焦点を合わせた)、C(moved:移動させた)、D(repaired:修理した)は、実験装置を所定の位置に設置・固定した文脈に適合しない。
問36(正解:C)
- 正解の論拠:第12段落のthey used dummy speakers that emitted no soundsにおいて、音を出さない対照実験用の「ダミーの、模擬の、偽の」スピーカーを指す。dummyは「模造の、偽の」を意味し、fakeが同義である。
- 誤答の論拠:A(basic:基本的な)、B(broken:壊れた)、D(smart:高性能な、賢い)はいずれも「意図的に音を出さない対照群として設置された模造品」という意味を表せない。
【着眼点と解法の方針】
自然科学系の論説文を処理する際の根本的な着眼点は、文章全体の「問題提起(環境危機)→ 新規仮説・技術の提示 → 実験の具体的設計(対照実験)→ データの定量的検証 → 意義と限界」という学術論証の基本骨格を迅速に認識することである。
- 実験パラダイムの構造的把握:第3段落でBritish and Australian researchers rolled out another unorthodox strategy… broadcasting the sounds of healthy reefs in dying ones(死にかけたサンゴ礁で健康なサンゴ礁の音を流すという型破りな戦略)が提示された段階で、本研究の独立変数が「音響刺激の有無」、従属変数が「魚の誘引・定着度」であることを即座に整理する。
- 対照実験(Control Group)の把握:第11段落から第12段落にかけて記述される実験設計では、以下の3つの群が明確に対比されている。
- 実験群:健康なサンゴ礁の録音を流す区画(played recordings from a healthy reef)
- 対照群1:音を出さない模造スピーカーを設置した区画(dummy speakers that emitted no sounds)
- 対照群2:スピーカーを一切設置せずそのままにした区画(left a third group of patches untouched)この対比に着眼することで、問36のdummyの意味(fake)や、第6段落の数値比較(50パーセント増、2倍の魚の誘引)が対照群との比較に基づくものであることが明瞭に把握できる。
- 語彙問題の解法の起動点:設問(3)の下線部語彙は、単語単体の機械的な訳語を思い出すのではなく、必ず下線部を含む一文のSVO/SVC構造を同定し、主語や目的語との意味的親和性から解法を起動する。例えば問32のdegradedは主語であるcoral reefsの状態を表し、気候変動の壊滅的影響(devastation)を受けた結果であるという因果関係から「損傷した(damaged)」と確定する。問35のfixedは「スピーカーを区画の中央に(to the center)」という前置詞句との結びつきから「取り付けた(attached)」と絞り込む。
【初見・類題への対応】
未知の自然科学系読解素材に直面した際、以下の判断手順を適用することで安定した正答率を確保できる。
第1ステップ:対比構造と実験パラメータの抽出
未知の科学実験を扱った文章では、研究者が「何を操作し(操作変数)」「何を測定し(測定変数)」「何と比較したか(対照群)」を段落冒頭のトピックセンテンスから抽出する。本文中ではbroadcast soundsとno soundsの対比が軸となっている。
第2ステップ:生態系・環境問題に関する語彙ネットワークの活用
環境論説文では、degrade(劣化する)、devastation(破壊)、resilient(回復力のある)、bleaching(白化)、recruitment(補充、加入)、juvenile(幼体)といった語彙群が頻出する。これらの語彙が持つ肯定・否定のトーン(極性)を即座に分類し、文脈の展開を予測する。
第3ステップ:条件変化への適応
仮に実験結果として「魚は集まったが定着しなかった」という記述があった場合、設問の正誤判断は反転する。本問ではImportantly, the fish… tended to stay thereと肯定的な結果が明記されていたため問30でCが正解となったが、類題では逆接詞(However, but)の直後にデータの限界が提示されるケースが極めて多い。結論を急がず、段落ごとの評価語(promising, significant positive impact, acknowledged that… will not reverse the damage by itself)に注目して筆者の客観的なスタンスを追跡する。
類題例:
海洋環境におけるマイクロプラスチックの影響調査、あるいは森林伐採地域における人工樹洞による鳥類生息数の回復実験など、環境破壊に対する工学的・生態学的介入を検証する出題において、全く同一の対照実験構造と論証ステップが用いられる。
【誤答回避と精度向上】
選択肢を吟味する際、マーク式試験で高頻度に作成される典型的な誤答パターンを識別・排除する技術が精度向上に直結する。
- 本文記述の部分的一致を利用したすり替えの回避:問26の選択肢C(50 percent)や問27の選択肢C(33 researchers)のように、本文中に実在する数値(50 percent increase in species / 33 patches)を全く異なる対象(音量 / 研究者数)に結びつけた選択肢は、部分的な単語の合致に頼って解答する受験生を捕捉する典型的な罠である。数値や固有名詞を見かけた際は、それが「何を修飾しているか」を主語・目的語のレベルで厳格に検証する。
- 比喩的表現の文字通りの誤読の回避:問27の選択肢Aのように、ghostly quiet(静まり返った)という比喩的表現からghosts(幽霊)という実体概念を捏造した選択肢は即座に除外しなければならない。評論文における修辞的表現(metaphor)と客観的証拠(evidence)を峻別する。
- 記述の反転(Contradiction)の検知:問30のA(most fish did not stay)やD(more fish left than arrived)のように、本文の肯定命題(tended to stay)を否定命題へ完全に反転させた選択肢は、設問文の否定語の見落としや本文の逆読破を誘発する。動詞部分の肯定・否定の極性を明確に対比させる。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件:
- 自然科学、環境問題、社会科学の実験的調査を扱った学術報道記事および論説文。
- 専門用語の注記が多く含まれ、対照実験や統計的数値の比較が論証の主軸となっている設問形式。
類題:
- 同種形式の過去問:明治大学全学部統一入試における過年度の環境・生命科学系長文(海洋酸性化、森林生態系の保全などを扱った年度)。
- 他大学の類題:立教大学全学部日程の科学論説文、青山学院大学の環境系総合長文。
自己検証ポイント:
- 選択肢の語句が本文のどの語句の言い換えであるかを1対1で指摘できるか。
- 単に「本文に書いてあった単語が含まれている」という理由だけで選択肢を選んでいないか。
【参照】
[個別 M01]
└ 下線部語彙の文脈依存的意味判定において、多義語の基本義から文脈に合致する意味を確定する手順を用いる
[基礎 M21]
└ 自然科学系論説文の論理構造把握において、問題提起から実験結果・考察に至る議論の展開を追跡する手順を用いる
[基礎 M30]
└ 多義語・語法の文脈判断において、degradeやfixなどの多義的動詞が取る統語関係から語義を決定する手順を用いる
【該当学習項目】
[個別 M08]
└ 設問(1)および(2)の内容照合において、選択肢の記述を本文該当箇所と突き合わせて誤答の罠を排除する判断ステップで使用
【関連学習項目】
[個別 M07]
└ 問28の代名詞themの指示対象特定において、文脈上の照応関係を特定する判断手順を適用
[個別 M11]
└ 誤答選択肢の類型(数値すり替え、反転、無根拠な付加)を体系的に識別して消去する手順を適用
第4問 解説
【戦略的情報】
難易度:標準
目標解答時間:18分
内訳:本文通読8分、設問解答10分(小問8問:各問に約1分15秒)
出題形式:社会倫理・公共政策・行動科学に関するエッセイ読解。小問8問(問37〜44)。設問構成は(1)質問応答形式4問(問37〜40)、(2)文完成形式4問(問41〜44)。
出題意図:哲学者ピーター・シンガーのエッセイを題材とし、地域の幸福度向上を目的とした地方自治体のユニークな取り組み(笑顔の推奨区域やストリート・パーティー支援)と、それを支える行動心理学の実験結果(好意の波及効果)を通じて、筆者の主張、政策の意図、心理学実験の意義、および具体的施策の因果関係を正確に把握する読解運用力を測定する。
【思考プロセス】
状況設定
試験の最終大問であり、残された時間は最大でも18分程度である。大問〔Ⅲ〕と同様に相応の英文量があるが、設問数が8問と大問〔Ⅲ〕の11問より少ないため、一問あたりに投入できる思考時間はやや長めに確保できる。しかし、抽象的な倫理的主張や社会政策の理念が絡むため、表面的な単語の一致ではなく、筆者の論理展開(問題提起→政策事例→政策思想の比較→心理学的根拠→成果の検証)を深く追跡することが要求される。
レベル1:初動判断
設問全体の形式を確認する。設問(1)の問37〜40は具体的な質問に対する回答の選択、設問(2)の問41〜44は本文の論旨に整合する文完成の選択である。語彙問題は独立して設置されておらず、すべての設問が本文の内容理解と論理的含意の読み取りに直結している。
即座に確認すべき箇所(優先順位順):
- 設問文の指定箇所とキーワードを確認する。
- 問37:第2段落のsmiling is a universal human practiceの意味
- 問38:ポート・フィリップ市がstreet partiesを促進する理由
- 問39:ポート・フィリップ市が住民に好ましいと考える行動
- 問40:地域の生活の質(neighborhood quality of life)に影響を与える要素
- 問41:顔を上げ開かれた表情で歩く(walk with your face up and have an open expression)ことの意味
- 問42:10 Smiles Per Hour Zoneで笑顔を見せない歩行者を警察が処罰できない理由
- 問43:IsenとLevinの研究における電話ボックスの硬貨(finding of money)が表すもの
- 問44:市のプログラムが成功している理由・証拠
- 段落ごとの論理的役割を走査する。
- 第1〜3段落:笑顔の普遍性とポート・フィリップ市の「時速10笑顔ゾーン」の標識設置の試み。
- 第4〜5段落:ストリート・パーティーの支援と持続可能なコミュニティの包括的理念。
- 第6〜7段落:伝統的自治体(ゴミ収集や企業誘致)とポート・フィリップ市の長期的視点(将来世代への生活の質の継承)の対比。
- 第8段落:犯罪防止優先の政策に対する、安価で効果の高い友好促進政策の優位性(リチャード・レイヤードの主張)。
- 第9〜11段落:アイゼンとレヴィンによる電話ボックス実験(10セント硬貨を拾った人の人助け行動)と「好意の輝き(glow of goodwill)」。
- 第12段落:施策の定量的成功指標(笑顔を返す人の割合が8%から10%へ上昇)。
レベル2:情報の取捨選択
判断フロー(所要時間:各問1分程度)
検証軸1(普遍性の定義の換言):
第2段落冒頭のuniversal human practiceの語義・論理的射程を捉え、例外なく全人類に共通する行動であることを同定する。
検証軸2(行政施策の目的の抽出):
第4段落において、ストリート・パーティーの開催支援が「近隣住民同士が顔見知りになること(get its residents to know each other)」を目指している記述を捕捉する。
検証軸3(自治体の価値観と好ましい行動の照合):
第6段落において、自家用車の所有減少と公共交通機関の利用増加、徒歩や自転車の利用を推奨している記述から、市の選好を特定する。
検証軸4(因果関係と制度的常識の確認):
第3段落の防犯への影響(reduces fear of crime)、および標識が法的強制力を持たない単なる試み・啓発である点(法律違反ではないこと)を論理的に整理する。
検証軸5(心理学実験の概念的抽象化):
第9〜11段落の小銭を見つける体験が、人々の気分を良くする「ささやかな肯定的な経験(Very small positive experiences)」の具体例であることを抽出する。
検証軸6(成果の定量的評価の照合):
最終段落に明記された笑顔の割合の増加(8%から10%への上昇)を成功の根拠として同定する。
判断手順ログ
- 問37の検討:第2段落冒頭のSmiling is a universal human practice, although readiness to smile at strangers varies according to culture.を確認する。universalは「全人類に普遍的な」を意味するため、選択肢D(Smiling is something that all humans do)が直接の同義表現であることを判定する。
- 問38の検討:第4段落冒頭のIn a related effort to get its residents to know each other, the city government also facilitates street parties.および末尾のMany people… meet each other for the first time at a street partyに着目する。住民同士が互いを知り交流する機会を与えることが目的であるため、選択肢A(To give people a chance to interact with their neighbors)を確定する。
- 問39の検討:第6段落のInstead of seeing private car ownership as a sign of prosperity, the city hails a declining number of cars and rising use of public transport… を検証する。自家用車の所有を繁栄の象徴とみなすのではなく、車の減少を歓迎していることから、選択肢B(View private car ownership as something to be avoided if possible)を導出する。
- 問40の検討:第3段落末尾のSmiling, she adds, encourages people to feel more connected with each other and safer, so it reduces fear of crime an important element in the quality of life of many neighborhoods.に着目する。犯罪への恐怖の軽減、すなわち住民がどれほど安全だと感じるかが生活の質の重要要素であるため、選択肢D(How safe residents feel living there)を特定する。
- 問41の検討:第1段落の問いかけ(walk… with your face up and an open expression)と第2段落のopen and friendly to strangersの連関を捉える。顔を上げ開かれた表情でいることは、他者に対して友好的で受け入れ可能であることを示すため、選択肢C(approachable and approving of others)を確定する。
- 問42の検討:第3段落のputting up the signs is an attempt to encourage people to smile… および標識が「制限速度の標識に似ている(look like speed limits, but…)」という記述から、これが法的な義務や速度違反のような処罰対象ではなく、単なる推奨・啓発であることを把握する。したがって警察が逮捕や罰金を科せないのは「法律を破っていないから(選択肢D)」であると論理的に帰結する。
- 問43の検討:第9段落冒頭のVery small positive experiences can make people not only feel better about themselves, but also be more helpful to others.の直後に実験が導入されている構造に着目する。10セント硬貨を見つけることは「ごく小さな肯定的体験」の実験的操作であるため、選択肢A(a positive experience)を選択する。
- 問44の検討:第12段落(最終段落)のHere is one measure of success: over the past year and a half, the proportion of people who smile at you in Port Phillip has risen, from 8 percent to 10 percent.に着目する。笑顔を見せる人の割合が以前より増加したことが成功の具体的尺度として挙げられているため、選択肢B(have been found to smile more now than they did previously)を確定する。
レベル3:解答構築
全問について、本文の語句の直接の言い換え関係を確認し、飛躍や主観的解釈を含む選択肢を排除して解答欄をマークする。
【解答例】
(1)
問37:D
問38:A
問39:B
問40:D
(2)
問41:C
問42:D
問43:A
問44:B
【解答のポイント】
問37(正解:D)
- 正解の論拠:第2段落第1文のSmiling is a universal human practice(笑顔は普遍的な人間の営みである)において、universalは「普遍的な、すべての人間・場所に当てはまる」を意味する。直後に「見知らぬ人に対して笑顔を向ける度合いは文化によって異なる」と対比されていることからも、文化的な差を超えて「すべての人間が行うこと」を指している。選択肢DのSmiling is something that all humans doが正確な換言である。
- 誤答の論拠:A(Humans are not naturally good at smiling)は、人間が生来笑顔が得意ではないという本文に反する記述である。B(Humans learn how to smile properly)は、笑顔を適切に学習するという後天的な習得を強調しておりuniversalの本質から外れる。C(Our universe requires smiling humans)は、universe(宇宙・世界)が笑顔の人間を要求しているという無根拠で誇張された誤答である。
問38(正解:A)
- 正解の論拠:第4段落第1文にIn a related effort to get its residents to know each other, the city government also facilitates street parties(住民たちがお互いを知るようになるための関連した取り組みとして、市当局はストリート・パーティーも促進している)とある。また同段落末尾でも「同じ通りに長年住んでいた多くの人々が、ストリート・パーティーで初めて顔を合わせる」と述べられている。選択肢AのTo give people a chance to interact with their neighbors(近隣住民と交流する機会を与えるため)がこの目的に完全に合致する。
- 誤答の論拠:B(To improve neighborhood organizational advice)は、アドバイスを提供することは手段の一部にすぎず、主目的ではない。C(To provide food to people…)は、バーベキューの貸し出しを行っている記述から連想させた歪曲であり、食料提供そのものが目的ではない。D(To teach people how to be happy…)は、パーティーで幸せになる方法を教えるという本文にない内容である。
問39(正解:B)
- 正解の論拠:第6段落にInstead of seeing private car ownership as a sign of prosperity, the city hails a declining number of cars and rising use of public transport as a sign of progress in reducing greenhouse gas emissions…(自家用車の所有を繁栄の兆候とみなす代わりに、市は自動車の減少と公共交通機関の利用増加を温室効果ガス削減における前進の兆候として歓迎している)と明記されている。市は住民が車を減らし、徒歩や自転車、公共交通機関を利用することを望んでいるため、選択肢BのView private car ownership as something to be avoided if possible(自家用車の所有を可能な限り避けるべきものとみなす)が趣旨と合致する。
- 誤答の論拠:A(Stay home if they cannot travel…)は、公共交通機関を使えないなら家にいろという極端な排除であり本文に存在しない。C(Inform the city government about the details of their street parties)は、第4段落でIt leaves the details to the locals(詳細は地域住民に委ねている)と述べられており、詳細を報告させることとは正反対である。D(Stop walking or riding bicycles…)は、徒歩や自転車の利用を止めるという本文の推奨と正反対の記述である。
問40(正解:D)
- 正解の論拠:第3段落末尾にSmiling… encourages people to feel more connected with each other and safer, so it reduces fear of crime an important element in the quality of life of many neighborhoods(笑顔は人々がよりつながりを感じ、より安全だと感じるように促し、それによって多くの近隣地域の生活の質における重要な要素である犯罪への恐怖を軽減する)と明記されている。生活の質に直接影響を与える要素として「犯罪の恐怖の軽減(安全性の実感)」が挙げられているため、選択肢DのHow safe residents feel living there(住民がそこに住んでいてどれほど安全だと感じるか)が正解となる。
- 誤答の論拠:A(How long the street parties last)は、パーティーの継続時間であり生活の質の直接の指標として言及されていない。B(How much volunteers are paid…)は、第2段落でボランティアを用いて調査したとあるが、彼らに税金からいくら支払われたかは問題にされていない(ボランティアは無償奉仕が通例であり、税金の無駄遣いかという問いは第3段落冒頭で標識設置に関して提起されているにすぎない)。C(How often greeting standards like “G’day” are used)は、挨拶を交わす頻度そのものではなく、それによってもたらされる安全性やつながり感が生活の質の構成要素である。
問41(正解:C)
- 正解の論拠:第1段落で「顔を上げて開かれた表情で歩いた場合(walk… with your face up and an open expression)」という状況が提示され、第2段落でオーストラリアにおいて「見知らぬ人に対してオープンでフレンドリーであることは珍しくない(being open and friendly to strangers is not unusual)」と述べられている。顔を上げて開かれた表情をしている人物は、近寄りやすく、他者に対して好意的・受容的であると受け止められる。選択肢Cのapproachable and approving of others(近寄りやすく他者に対して受容的である)が、open and friendlyの意味を的確に言い換えている。
- 誤答の論拠:A(sensitive and shocked…:敏感でショックを受けている)、B(decisive and determined to be judged…:断固として判断されることを決意している)、D(recognizable and ready to debate…:見分けがつき見知らぬ人と議論する準備ができている)はいずれもopen expressionの持つ友好的・受容的なニュアンスから大きく逸脱している。
問42(正解:D)
- 正解の論拠:第2段落末尾から第3段落にかけて、「時速10笑顔ゾーン」という制限速度標識に似た標識は、人々に笑顔や挨拶を促すための試み(an attempt to encourage people to smile)であると市長が説明している。これは道路交通法上の法定制限速度のような法的拘束力を持つ規則ではなく、笑顔を見せないことは法律違反(crime / breaking laws)には当たらない。したがって警察が取り締まる権限を持たない理由は、選択肢Dのthose pedestrians would not be breaking any laws(そうした歩行者は何の法律も破っていないから)である。
- 誤答の論拠:A(it is simply impossible for anyone to smile that much…)は、1時間に10回笑うことが不可能であるという主観的判断であり根拠にならない。B(it is too difficult for the police to confirm…)は、警察が確認するのが困難だからという技術的理由であり論点と異なる。C(the police are not allowed to attend…)は、警察がストリート・パーティーへの参加を禁じられているという本文にない架空の設定である。
問43(正解:A)
- 正解の論拠:第9段落第1文にVery small positive experiences can make people not only feel better about themselves, but also be more helpful to others(ごく小さな肯定的な経験は、人々が自分自身に対してより良い気分を感じるだけでなく、他者に対してより協力的になることにもつながる)とあり、その直後に第2文でIn the 1970s, American psychologists Alice Isen and Paula Levin conducted an experiment in which… と実験の記述が始まっている。電話ボックスで偶然10セント硬貨を見つけるという状況は、被験者に意図的に生じさせた「ごく小さな肯定的体験」を具現化したものである。したがって選択肢Aのa positive experienceが正解である。
- 誤答の論拠:B(a random selection)は、被験者が無作為に選ばれたことであり硬貨自体の意味ではない。C(an act of theft)は窃盗行為であり、実験者が意図的に残した硬貨を拾う心理的効果と正反対の解釈である。D(an opportunity for friendship)は友情の機会ではなく、個人の気分を向上させる偶発的幸運の演出である。
問44(正解:B)
- 正解の論拠:最終段落(第12段落)にHere is one measure of success: over the past year and a half, the proportion of people who smile at you in Port Phillip has risen, from 8 percent to 10 percent(成功の一つの尺度がここにある。過去1年半にわたり、ポート・フィリップにおいて通りすがりに笑顔を向けてくれる人の割合が8パーセントから10パーセントへと上昇した)と明記されている。プログラムの有効性・成功を示す具体的な証拠として笑顔の割合の増加が示されているため、選択肢Bのhave been found to smile more now than they did previously(以前よりも現在の方がより多く笑顔を見せることが判明している)が合致する。
- 誤答の論拠:A(glow brightly with goodwill)は、第11段落の心理学用語glow of goodwill(好意の輝き)を文字通りに解釈し、人々が物理的に明るく輝いているとしたナンセンスな選択肢である。C(calculate their yearly success rates of smiles)は、住民が自分自身の笑顔の成功率を毎年計算しているという本文にない内容である。D(are more willing than ever to mail addressed letters…)は、第10段落の実験の別のバージョン(手紙を投函する実験)の内容をポート・フィリップ市の住民の行動として混同させた誤答である。
【着眼点と解法の方針】
エッセイ・社会倫理的文章を処理する際の着眼点は、「個別事例の提示(ポート・フィリップ市の標識)→ 背景にある行政哲学(生活の質の重視)→ 学術的理論による裏付け(リチャード・レイヤード、アイゼンらの実験)→ 定量的成果による検証」という具体と抽象の往還構造を正確に捉えることである。
- 設問の要求する抽象度の判定:問37のuniversalや問43のfinding of moneyのように、具体的な単語や実験操作が「概念として何を表しているか」を問う設問では、直前・直後のトピックセンテンスに立ち返る。第9段落第1文のVery small positive experiencesが第2文以降の硬貨実験を包括する上位概念であることを把握できれば、問43は瞬時にAと確定できる。
- 自治体の対比構造の整理:第7段落における自治体の類型化に着眼する。
- 従来の自治体A:ゴミ収集、道路維持などの基本的行政サービスのみを提供する狭い視野。
- 従来の自治体B:企業誘致による税収と雇用の増大を狙う経済優先の視野。
- ポート・フィリップ市:将来世代の生活の質(持続可能性、社会的公平性、文化的一体感、友好性)を包括的に重視する長期的視野。この対比を把握することで、問39の自家用車に対する姿勢(環境配慮と持続可能性の重視)や問40の安全性の重視が、単なる思いつきの施策ではなく一貫した行政哲学から導出されていることが理解できる。
- 心理学実験の構造の解読:第9段落から第11段落の実験では、「硬貨を見つけた群(16人中14人が援助行動)」と「見つけなかった群(25人中1人のみが援助行動)」の対比が行われている。この実験が示す本質的命題は、「良い気分(good mood)になると自己肯定感が高まり他者への援助行動が促進される(glow of goodwill)」という点にある。この論理の帰結として、行政が小さな肯定的体験(笑顔を促す標識やパーティー)を仕掛けることの正当性が主張されている。
【初見・類題への対応】
未知の社会論説文・倫理的エッセイを読み解く手順:
第1ステップ:筆者の問題提起と価値判断の同定
エッセイ形式の文章では、冒頭に常識的な疑問や挑発的な問い(第3段落のFrivolous nonsense? A waste of taxpayers’ money?)が置かれることが多い。筆者はこれに対して単なる肯定や否定をするのではなく、政策の背景にある深い意図を擁護する立場を取ることが多い。本問でも市長の発言や経済学者・心理学者の知見を引用しながら、一見くだらない施策が持つ合理性を擁護する論理展開となっている。
第2ステップ:引用されている権威・研究の役割判定
文章中に登場する研究者(Richard Layard, Alice Isen, Paula Levin)の役割を特定する。彼らは筆者の独自の意見に客観的妥当性を付与するための「学術的論拠」として機能している。レイヤードは「友情の促進は安価で効果が高い」という政策論を、アイゼンらは「小さな幸福体験が利他行動を誘発する」という心理学的機序をそれぞれ支えている。
第3ステップ:結論と成果指標の確認
文章の終盤において、その施策が実際にどのような成果をもたらしたかを確認する。本問では第12段落の数値(8%から10%への上昇)がその検証として置かれている。類題においても、政策論の帰結として定量的データが示されるパターンが多く、設問の最終問の根拠となりやすい。
類題例:
ナッジ理論(行動経済学)を用いた公共政策の事例紹介(健康診断の受診率向上、環境配慮行動の促進など)、あるいはコミュニティ・ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が地域防犯や防災に与える影響を論じた文章において、本問と全く同一の論理構成が用いられる。
【誤答回避と精度向上】
本問の選択肢における誤答の罠パターンと回避法:
- 異なる段落の情報の混交(Contamination)の排除:問44の選択肢Dは、第10段落の「電話ボックスの手紙投函実験」の要素を、第12段落のポート・フィリップ市の成功指標に混入させた典型的な混交の罠である。設問が「どの段落の何を根拠としているか」を厳格に指定し、他の実験の内容を安易に結論に結びつけない。
- 極端な表現(Extreme Language)の検知:問39の選択肢A(Stay home if they cannot travel using public transport)のように、本文の意図を過激化させた選択肢は即座に排除する。本文は「公共交通機関の利用増加を歓迎している」のであり、「公共交通機関を使えない者は家に留まれ」と主張しているわけではない。
- 比喩表現の誤認の回避:問44の選択肢A(glow brightly with goodwill)は、比喩的な心理表現(好意の輝き)を文字通りの物理現象として捉えた誤答である。英語の比喩的表現が本文でどのように定義されているか(makes people feel better about themselves and more likely to help others)を常に実体概念に引き直して判断する。
【再現性チェック】
この解法が有効な条件:
- 哲学、倫理学、行動科学、社会政策に関するエッセイ・評論。
- 具体的な社会実験や政策事例の紹介から始まり、その理論的・思想的根拠を学術研究から援用する形式の文章。
類題:
- 明治大学全学部統一入試における過年度の社会論説文(利他行動の進化、幸福の経済学、都市計画と人間関係などを扱った年度)。
- 早稲田大学文化構想学部・文学部における思想・文化論エッセイ。
自己検証ポイント:
- 筆者の論旨の展開(具体例→反論への応答→理論的根拠→結論)の各段階と設問が正しく対応しているか。
- 単語の辞書的定義ではなく、本文中での文脈的定義(universal, positive experience等)に基づいて解答を導出できているか。
【参照】
[個別 M08]
└ 内容一致判定の情報照合において、選択肢の記述と本文の記述を精密に対比させ、無根拠な付加や極端化を排除する手順を用いる
[基礎 M16]
└ 代名詞・指示語と照応において、文章中の指示語や名詞句の指し示す範囲を文脈から特定する手順を用いる
[基礎 M21]
└ 論理的文章の読解において、具体的事例から政策理念や心理学的原理へと抽象化される議論の階層を追跡する手順を用いる
【該当学習項目】
[個別 M09]
└ 設問文が要求する論理的核(理由、普遍的意味、実験の意図)を正確に把握し、該当段落から根拠を抽出する英問英答の要旨把握ステップで使用
【関連学習項目】
[個別 M11]
└ 比喩の文字通り解釈や別段落情報の混交といった誤答選択肢の構成原理を見破り排除する手順を適用
[基礎 M23]
└ 筆者の暗示的主張や心理学実験が象徴する概念(positive experience)を文脈から読み取る推論手順を適用
総括
【出題傾向の展望】
2022年度の明治大学全学部統一入試における英語は、大問〔Ⅰ〕の短文空所補充(文法・語法・語彙・熟語・成句判定22問)、大問〔Ⅱ〕の対話文完成(空所補充3問)、大問〔Ⅲ〕の長文読解(自然科学系論説文11問)、大問〔Ⅳ〕の長文読解(社会倫理系エッセイ8問)という合計4大問・44問の構成で実施された。複数年度にわたる傾向分析についてはカテゴリ概要に詳述されているが、本年度の出題内容と設問構造を精査すると、次年度以降の試験設計に関して極めて明瞭な示唆と展望を読み取ることができる。
第一に、大問〔Ⅰ〕および各大問内の語彙問題に代表されるように、知識の単なる暗記量ではなく「文脈の中で機能する語彙力・統語力」を一貫して問う設計思想が完全に定着している点である。大問〔Ⅰ〕ではrun out of、familiar with、no choice but to agree、worth readingといった標準的な成句・構文が並ぶ一方で、設問7のchallenge、設問8のfall、設問14のmeet the deadlineのように、基本動詞・名詞が特定の文脈で取る適切なコロケーションの識別が高頻度に要求された。この傾向は大問〔Ⅲ〕の語彙問題(degraded, juvenile, expelled, fixed, dummy)にも通底しており、辞書的な第1義の機械的丸暗記では対応できず、文全体の構造と前後の意味関係から文脈適合的な語義を導出する能力が測定されている。次年度以降においても、独立した文法問題のみならず長文読解の内部においても文脈依存的な語彙・語法判断の比重が高水準で維持されることは確実である。
第二に、長文読解における素材の多様性と学術的論証構造の明確化である。本年度の大問〔Ⅲ〕は海洋環境の再生をめぐる実験科学の報道記事、大問〔Ⅳ〕は公共政策と行動科学を結びつけた倫理的エッセイであり、自然科学と社会人文学の均衡が厳密に保たれている。いずれの文章も、事実の単なる羅列ではなく、「問題提起→解決策の提示→対照群を設けた科学的実験→結果の定量的検証→政策的・保全的意義と限界」という極めて洗練された論理骨格を有している。設問設計もこの論理骨格と完全に連動しており、実験の対照群の意味(大問〔Ⅲ〕問36)、数値データの正しい解釈(大問〔Ⅲ〕問31、大問〔Ⅳ〕問44)、実験操作の抽象的概念化(大問〔Ⅳ〕問43)が的確に問われている。このことから、次年度以降の受験生に求められるのは、単なる逐語訳の積み上げではなく、段落間の機能関係を把握し、実験や政策の「論理的枠組み」を俯瞰的に図式化しながら読み進める高度な情報整理能力である。
第三に、設問形式における「選択肢の精緻化」と「誤答パターンの定型化」である。本年度の読解設問における誤答選択肢を分析すると、本文中に登場する単語をそのまま流用しながら修飾関係や因果関係をすり替えた選択肢、本文の極性を反転させた選択肢、および本文に書かれていない無根拠な拡大解釈を含む選択肢が極めて論理的に配置されている。紛らわしい選択肢であっても、本文該当箇所の構文と正確に対比させれば論理的なキズが明確に露出するように設計されており、悪問や曖昧な正解は排除されている。次年度以降もこの高精度な設問設計が継続されると考えられ、感覚的な選択を排し、本文根拠に基づく論理的な消去法を高速で実行できる受験生が高得点を獲得する構造が揺らぐことはない。
【次の学習への指針】
本年度の出題内容と要求された判断原理を踏まえ、今後の学習において実践すべき具体的な行動指針を提示する。
- 基本動詞・多義語のコロケーションネットワークの再構築:大問〔Ⅰ〕および大問〔Ⅲ〕で失点した受験生は、単語帳の見出し語と一対一の日本語訳を暗記する学習から脱却しなければならない。具体的には、meet a deadline(締切に間に合う)、fall below freezing(氷点下に下がる)、fix A to B(AをBに取り付ける)、expel A from B(AをBから追い出す)のように、動詞が取る典型的な目的語や前置詞との結びつきをセットでインプットし、英文読解中にその組み合わせを即座に認識できる処理速度を養成する。復習に際しては、基礎体系モジュール[基礎 M30](多義語・語法と文脈依存的語義判断)に立ち返り、語の持つ根源的なイメージから文脈ごとに分岐する意味の派生プロセスを論理的に整理することが不可欠である。
- 科学実験・社会調査型論説文におけるパラグラフ・リーディングの確立:大問〔Ⅲ〕や大問〔Ⅳ〕のような学術的英文に対しては、1文ずつ日本語に訳しながら読む手法では60分の制限時間内に完答することは不可能である。各段落のトピックセンテンスを特定し、その段落が「仮説」「実験手法」「対照群」「肯定的データ」「限界・課題」のいずれを担っているかをマッピングしながら読む訓練を積む必要がある。特に、however, importantly, instead of, althoughといった論理マーカーに着目し、筆者の主張の重心がどこにあるかを常に意識する読解姿勢を確立する。これには[基礎 M19](パラグラフの構造と主題文)および[基礎 M21](論理的文章の読解)の反復演習が極めて有効である。
- 選択肢照合における「3大誤答パターン」の即時識別訓練:過去問演習を行う際は、単に正解を選んで終えるのではなく、不正解とした3つの選択肢がそれぞれどのような論理的欠陥(①本文に記述がない情報の付加、②因果関係や主述の反転、③過度の一般化や数値のすり替え)を持っているかを余白に言語化して書き込む訓練を義務づける。このプロセスを通じて、出題者の意図する「罠の構造」をメタ認知できるようになり、本番の時間圧下でも瞬時に誤答を排除できるようになる。特化モジュール[個別 M11](選択肢言い換え判定と誤答排除の判断体系)の手順を徹底して内在化させることが推奨される。
【身につけるべき力のまとめ】
明治大学全学部統一の英語を攻略するために確立すべき力は、以下の3つの階層的運用能力に集約される。
第一の力は「高速かつ精密な文法・語法識別力」である。大問〔Ⅰ〕の22問を12〜14分程度で8割以上の精度を維持して解き切るためには、文構造(5文型、関係詞、仮定法、準動詞、比較)の破綻を瞬時に見抜き、成句の空所に要求される前置詞や動詞の語形を直観的かつ論理的に確定できなければならない。これは読解の基礎体力であり、後半の長文読解に充てる時間を生み出すための絶対的前提である。
第二の力は「学術的論証構造の追跡力と情報局所化能力」である。大問〔Ⅲ〕や大問〔Ⅳ〕のような約700〜900語の長文を前にした際、文章全体を漫然と読むのではなく、設問文で要求された問いの核心(白化の引き金、実験の目的、政策の狙い、硬貨の象徴的意味)を明確に保持した上で、本文中の該当段落をピンポイントでスキャンし、精密に照合する力である。この「問いの保持」と「スキャニング」の連動こそが、読解のスピードと正答率を両立させる核となる。
第三の力は「抽象的命題と具体的事実の往還把握力」である。ピーター・シンガーのエッセイに顕著なように、現代の入試英語では「電話ボックスで小銭を拾う」という極めて具体的な事象が、「他者に対する援助行動を促進するごく小さな肯定的体験」という高度に抽象的な社会倫理的命題へと昇華される。この具体と抽象の架橋を正確に読み取り、選択肢の抽象的な言い換え(approachable and approving of others, positive experienceなど)を正解として確信を持って選択できる概念操作力が、合否を分ける最高位の能力となる。
【得点戦略】
満点(100点)に対する目標得点率は、文系・理系学部の上位合格ラインを視野に入れた場合、85パーセント(85点)以上を設定すべきである。この得点を安定して達成するための大問別・難易度別の得点配分戦略は以下の通りである。
大問〔Ⅰ〕(短文空所補充・22問):
目標正答数19〜20問(得点率85〜90%)。基本的な成句(run out of, worth reading等)や文法(仮定法、使役動詞の受動態、no sooner〜than等)は全問正解が必須である。語彙・語法の識別で迷う問題があっても、消去法により2択まで絞り込んで失点を最小限に抑える。
大問〔Ⅱ〕(会話文完成・3問):
目標正答数3問(得点率100%)。エレベーターに挟まれるという身近な場面の対話であり、文脈の感情や論理的展開(再び挟まれたことへの驚き、自動ドアの開閉トラブル、巻き添えの拒否)を追えば全問正解が極めて容易である。ここで満点を確保することが精神的・時間的余裕を生む。
大問〔Ⅲ〕(長文読解・11問):
目標正答数9〜10問(得点率80〜90%)。下線部語彙5問(問32〜36)は満点を狙う。読解設問(問26〜31)のうち、事実照合問題(問26, 30, 31)を確実に得点し、推論や指示対象(問27, 28, 29)で慎重な照合を行って1問以内の失点にとどめる。
大問〔Ⅳ〕(長文読解・8問):
目標正答数7〜8問(得点率85〜100%)。抽象度の高いエッセイであるが、設問文の論理展開が本文のパラグラフ順序と完全に一致しているため、パラグラフごとの精読照合を徹底すれば極めて高得点が狙いやすい。問42の法的推論や問43の概念化で正確な判断を下し、失点を防ぐ。
全体として、大問〔Ⅰ〕で2〜3問、長文2題で合計2〜3問の失点にとどめることで、85点以上の安全圏を確実に確保する戦略が最も合理的である。
【時間配分の振り返り】
試験時間60分に対する理想的な時間配分と、本年度問題における各フェーズの運用実態を振り返る。
- 0分〜14分(大問〔Ⅰ〕短文空所補充・22問):1問あたり平均35〜40秒で解き進める。知識として即座に出る問題は15秒でマークし、思考を要する語法問題に1分を割く。14分を経過した時点で解けていない問題があっても一旦マークして大問〔Ⅱ〕へ進む規律が求められる。
- 14分〜18分(大問〔Ⅱ〕会話文完成・3問):対話のシチュエーションを把握し、空所前後の発話の論理的整合性を確認する。1問あたり1分強、全体で4分以内に完答する。
- 18分〜36分(大問〔Ⅲ〕長文読解・11問):本文通読に8分、設問解答に10分を配分する。通読と同時に下線部語彙(問32〜36)を解き、読解完了直後に問26〜31を処理する。対照実験の構造を素早く整理できたかどうかが、18分以内で収めるための分岐点となる。
- 36分〜54分(大問〔Ⅳ〕長文読解・8問):本文通読に8分、設問解答に10分を配分する。設問文を先に読んで検索ターゲットを定めてから本文を読み、該当段落を通過する都度、設問(問37〜44)を順次解答していく「段落並行処理」を採用することで、読み直しの時間を劇的に削減できる。
- 54分〜60分(最終見直し・マーク確認・6分):マークの段ズレがないか、特に大問ごとの開始番号(1, 23, 26, 37)と解答用紙の番号の合致を厳格に確認する。また、保留にしていた大問〔Ⅰ〕の難問や大問〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕の照合を再確認し、ケアレスミスを完全に根絶する。本年度の分量設定では、読解速度が1分間あたり120〜140語程度あれば十分に上記時間配分を完遂できる設計となっており、時間配分の破綻が生じた場合は、大問〔Ⅰ〕で1問に固執して2分以上浪費したか、長文を設問の目的意識を持たずに漫然と2度読みしたことが主因である。
【次年度への示唆】
2022年度の出題を経験した受験生が、次年度以降の入試に向けて準備すべき事項は以下の3点である。
第一に、会話文や新傾向形式に対する柔軟な適応力の維持である。本年度の大問〔Ⅱ〕は平易な3問の対話文であったが、添付目次および過年度分析にも示されている通り、明治大学全学部統一では年度によってインタビュー形式の読解や語句選択型空所補充、整序英作文、文整序といった多様な形式が導入される。特定の形式のみを想定した固定的な対策に依存せず、いかなる形式が出現しても「文法的一致」「論理的結束性」「文脈適合性」という普遍的判断原理に基づいて即座に対処できるよう、形式横断的な演習を積んでおく必要がある。
第二に、環境・生命科学系および社会思想系の学術的英文に対する背景知識と語彙ネットワークの拡充である。サンゴの白化や音響生態学、行動経済学的なナッジ施策や幸福の測定といったテーマは、明治大学のみならず近年の私立上位大学・国公立大学で極めて高頻度に出題されるホットトピックである。日頃からThe Washington Postなどの海外報道記事や良質な科学・社会論説文に触れ、学術的議論の典型的な展開パターンに慣れ親しんでおくことが、初見時の読解負荷を劇的に軽減させる。
第三に、時間圧下における「割り切り」と「精査」の戦略的切り替えである。60分で44問という高密度な試験において、全問に均等な時間を割くことは不可能である。知識問題は瞬時に判断し、読解の核心設問には腰を据えて1分30秒を投入するという、問題の難易度と配点価値に応じた時間資源の傾斜配分を、普段の過去問演習から厳格に体得しておくことが極めて重要である。
重点学習領域
[個別 M01]
└ 第1問の語法空所補充および第3問の下線部語彙問題において、多義語の文脈依存的意味を確定する判断が合否の直結要因となったため再確認する
[個別 M08]
└ 第3問および第4問の内容照合設問において、本文の記述と選択肢の緻密な対比による誤答排除が要求され、読解精度の根幹をなすため強化する
[個別 M09]
└ 第4問の質問応答形式において、設問の要求する論理的核(理由・普遍性・心理実験の意図)を的確に把握する要旨把握手順を再整理する